JP2015160485A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性を損なうことなく軽量化の達成された空気入りタイヤ22の提供。
【解決手段】このタイヤ22は、トレッド24、一対のサイドウォール26、一対のクリンチ28、一対のビード30及びカーカス32を備える。ビード30は、コア46とエイペックス48とを備える。カーカス32はカーカスプライ50を備える。カーカスプライ50は、コア46の周りを軸方向内側から外側に向かって折り返される。サイドウォール26の内側部分は、クリンチ28の外側部分と折り返されたカーカスプライ50との間に挿入される。半径方向において、エイペックス48の先端54はサイドウォール26の内端60よりも外側に位置する。エイペックス48の先端54におけるサイドウォール26の厚みTeは、2mm以上である。クリンチ28の厚みTcは、3mm以上10mm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
図3に示されているのは、従来のタイヤ2のビード4の部分である。ビード4は、コア6と、このコア6から半径方向外向きに延びるエイペックス8とを備えている。コア6は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。エイペックス8は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス8は、高硬度な架橋ゴムからなる。タイヤ2では、そのビード4の部分がリム10に嵌め合わされる。
リム10に嵌め合わされたタイヤ2では、軸方向においてビード4の外側に位置するクリンチ12がリム10のフランジ14に当接する。嵌合圧の観点から、クリンチ12には通常、高硬度の架橋ゴムが用いられる。
タイヤ2はさらに、サイドウォール16を備えている。サイドウォール16は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール16は、カーカス18の外傷を防止する。吸収性及び耐カット性の観点から、サイドウォール16には通常、低硬度の架橋ゴムが用いられる。
タイヤ2では、サイドウォール16はクリンチ12と接合される。前述したように、サイドウォール16は低硬度である。このサイドウォール16の剛性は低い。クリンチ12は、高硬度である。このクリンチ12の剛性は高い。タイヤ2の剛性は、サイドウォール16とクリンチ12との境界20を境に急変する。この境界20の部分の剛性は、特異である。耐久性向上の観点から、この境界20の部分の構成について様々な検討がなされている。この検討の一例が、特開平07−137506号公報に開示されている。
特開平07−137506号公報
図3に示されたタイヤ2では、クリンチ12の外側部分がカーカス18とサイドウォール16の内側部分との間に挟まれている。このカーカス18は、エイペックス8とクリンチ12との間に挟まれている。
荷重が付与されると、タイヤ2は撓む。このとき、このタイヤ2のビード4の部分の中でも、フランジ14よりも外側にある部分は、フランジ14に寄りかかるように倒れる。これにより、クリンチ12は圧縮され、エイペックス8は引き延ばされる。前述したように、エイペックス8及びクリンチ12は高硬度である。このため、このタイヤ2の、フランジ14よりも外側にある部分では、カーカス18に歪みが集中しやすい。この歪みの集中は、エイペックス8の先端付近にあるカーカス18において顕著である。歪みの集中は、ルースを招来する恐れがある。このようなタイヤ2は、耐久性に劣る。
タイヤ2の耐久性の観点から、大きな厚みを有するクリンチ12を採用することがある。しかし、大きな厚みのクリンチ12は、タイヤ2の質量を増加させる。質量の増加は、タイヤ2に燃費性能の低下を招来する。
本発明の目的は、質量の増加を抑えつつ、耐久性の向上が達成された空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向内側に位置する一対のクリンチと、それぞれがクリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスとを備えている。上記ビードは、コアとエイペックスとを備えている。このエイペックスは、このコアから半径方向外向きに延びている。上記カーカスは、カーカスプライを備えている。このカーカスプライは、上記コアの周りを軸方向内側から外側に向かって折り返されている。上記サイドウォールの内側部分は、半径方向内向きに先細りな形状を呈している。上記クリンチの外側部分は、半径方向外向きに先細りな形状を呈している。このサイドウォールの内側部分は、このクリンチの外側部分と上記折り返されたカーカスプライとの間に挿入されている。半径方向において、このエイペックスの先端はこのサイドウォールの内端よりも外側に位置している。このエイペックスの先端における上記サイドウォールの厚みTeは、2mm以上である。上記クリンチの厚みTcは3mm以上10mm以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、ビードベースラインから上記エイペックスの先端までの半径方向距離Hfとこのビードベースラインから上記サイドウォールの内端までの半径方向距離Haとの差(Hf−Ha)は5mm以上である。この半径方向距離Hfとこのビードベースラインから上記クリンチの外端までの半径方向距離Hbとの差(Hf−Hb)は5mm以下である。
本発明に係る空気入りタイヤでは、サイドウォールの内側部分がクリンチの外側部分と折り返されたカーカスプライとの間に挿入されており、エイペックスの先端はサイドウォールの内端よりも外側に位置している。このタイヤでは、折り返されたカーカスプライの一部はエイペックスとサイドウォールとの間に挟まれる。このため、このタイヤが撓み、クリンチが圧縮されエイペックスが引き延ばされるように変形しても、このサイドウォールが、このエイペックスの先端の付近にあるカーカスプライへの、歪みの集中を抑制する。歪みが分散されるので、カーカスの損傷(ルース)が防止される。このタイヤは、耐久性に優れる。
このタイヤでは、耐久性の向上を図るために、従来のタイヤのように、クリンチの厚みを増大させる必要がない。クリンチの厚みの低減を図ることができるので、質量の軽減も達成できる。このように、本発明によれば、質量の増加を抑えつつ、耐久性の向上が達成された空気入りタイヤが得られる。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤのビードの部分が示された拡大断面図である。 図3は、従来のタイヤのビードの部分が示された拡大断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。この図1に示されたタイヤ22は、ライトトラック又は乗用車に装着される。このタイヤ22は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ22の赤道面を表す。このタイヤ22の偏平率は、60%以上80%以下である。
このタイヤ22は、トレッド24、サイドウォール26、クリンチ28、ビード30、カーカス32、ベルト34、フィラー36、インナーライナー38及びチェーファー40を備えている。このタイヤ22は、チューブレスタイプである。
トレッド24は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。トレッド24は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド24は、トレッド面42を備えている。このトレッド面42は、路面と接地する。トレッド面42には、溝44が刻まれている。この溝44により、トレッドパターンが形成されている。
サイドウォール26は、トレッド24の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール26は、架橋ゴムからなる。このタイヤ22では、サイドウォール26の硬度Hsは50以上65以下である。このサイドウォール26は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール26は、カーカス32の外傷を防止する。
本明細書では、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬度Hsは、図1に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
クリンチ28は、サイドウォール26よりも半径方向内側に位置している。クリンチ28は、このサイドウォール26に接合されている。クリンチ28は、架橋ゴムからなる。このタイヤ22では、クリンチ28の硬度Hcは55以上70以下である。図示されていないが、このタイヤ22がリム10に嵌め合わされると、クリンチ28がリム10のフランジ14に当接する。これにより、ビード30が保護される。なお、このクリンチ28の硬度HcもJIS−A硬度である。この硬度Hcも、前述された硬度Hsと同様、図1に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
このタイヤ22では、クリンチ28はその硬度Hcが前述のサイドウォール26の硬度Hsよりも大きくなるように構成される。このタイヤ22では、クリンチ28の剛性は高く、サイドウォール26の剛性は低い。
ビード30は、サイドウォール26よりも半径方向略内側に位置している。ビード30は、コア46と、このコア46から半径方向外向きに延びるエイペックス48とを備えている。コア46は、リング状である。コア46は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、コア46にスチール製ワイヤーが用いられる。エイペックス48は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス48は、高硬度な架橋ゴムからなる。このタイヤ22では、このエイペックス48の硬度Haは70以上95以下である。なお、このエイペックス48の硬度HaもJIS−A硬度である。この硬度Haも、前述された硬度Hsと同様、図1に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
カーカス32は、第一カーカスプライ50a及び第二カーカスプライ50bを備えている。言い換えれば、このカーカス32は2枚のカーカスプライ50からなる。図示されているように、第一カーカスプライ50a及び第二カーカスプライ50bは、両側のビード30の間に架け渡されており、トレッド24及びサイドウォール26の内側に沿っている。なお、このカーカス32が1枚のカーカスプライ50から構成されてもよい。このカーカス32が3枚のカーカスプライ50から構成されてもよい。
このタイヤ22では、第一カーカスプライ50aは、コア46の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返された第一カーカスプライ50aの端52aは、半径方向においてエイペックス48の先端54よりも外側に位置している。
このタイヤ22では、第二カーカスプライ50bは、コア46の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返された第二カーカスプライ50bの端52bは、半径方向において前述の第一カーカスプライ50aの端52aよりも内側に位置している。このタイヤ22では、この第二カーカスプライ50bの端52bは、半径方向においてエイペックス48の先端54よりも内側に位置している。
図示されていないが、第一カーカスプライ50a及び第二カーカスプライ50bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス32はラジアル構造を有する。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。バイアス構造のカーカス32が採用されてもよい。
ベルト34は、カーカス32の半径方向外側に位置している。ベルト34は、カーカス32と積層されている。ベルト34は、カーカス32を補強する。ベルト34は、内側層56a及び外側層56bからなる。図示されていないが、内側層56a及び外側層56bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、10°以上35°以下である。内側層56aのコードの傾斜方向は、外側層56bのコードの傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。このタイヤ22では、このベルト34が1つの層56で構成されてもよいし、3つの層56で構成されてもよい。
図1において、実線BBLはビードベースラインを表している。ビードベースラインは、タイヤ22が嵌め合わされるリム(図示されず)のリム径(JATMA参照)を規定する線である。このビードベースラインは、軸方向に延びる。両矢印Hは、このビードベースラインからこのタイヤ22の赤道までの半径方向距離を表している。この半径方向距離Hは、タイヤ22の断面高さである。両矢印Hfは、このビードベースラインからエイペックス48の先端54までの半径方向距離を表している。
このタイヤ22では、距離Hfの断面高さHに対する比は0.2以上0.4以下が好ましい。この比が0.2以上に設定されることにより、このタイヤ22の横剛性が適切に維持されうる。このタイヤ22は、操縦安定性に優れる。この比が0.4以下に設定されることにより、このタイヤ22の縦剛性が適切に維持されうる。このタイヤ22は、乗り心地に優れる。
図2に示されているのは、図1のタイヤ22のビード30の部分である。この図2において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。
図示されているように、このタイヤ22では、サイドウォール26の内側部分は半径方向内向きに先細りな形状を呈している。クリンチ28の外側部分は、半径方向外向きに先細りな形状を呈している。このタイヤ22では、サイドウォール26の内側部分はクリンチ28の外側部分と折り返された第一カーカスプライ50aとの間に挿入されている。図示されているように、サイドウォール26とクリンチ28との境界58は、サイドウォール26の内端60からクリンチ28の外端62まで延びている。この境界58は、軸方向外側に傾斜しつつ半径方向外向きに延在している。このタイヤ22では、軸方向においてサイドウォール26の内端60はクリンチ28の外端62よりも内側に位置している。半径方向において、このサイドウォール26の内端60はクリンチ28の外端62よりも内側に位置している。
本願においては、サイドウォール26とクリンチ28とが軸方向において重複している場合が、サイドウォール26の内側部分がクリンチ28の外側部分と折り返された第一カーカスプライ50aとの間に挿入されていると判断される。したがって、サイドウォール26とクリンチ28との境界58が軸方向に延在している、言い換えれば、この境界58の延在方向が軸方向に対してなす角度の絶対値が2°以下である場合は、サイドウォール26の内側部分はクリンチ28の外側部分と折り返された第一カーカスプライ50aとの間に挿入されていないと判断される。
このタイヤ22では、サイドウォール26の内側部分がクリンチ28の外側部分と折り返された第一カーカスプライ50aとの間に挿入されており、エイペックス48の先端54はサイドウォール26の内端60よりも半径方向外側に位置している。換言すれば、このタイヤ22では、折り返された第一カーカスプライ50a、すなわち、カーカス32の一部はエイペックス48とサイドウォール26との間に挟まれている。このため、このタイヤ22が撓み、クリンチ28が圧縮されエイペックス48が引き延ばされるようにこのタイヤ22が変形しても、このサイドウォール26が、このエイペックス48の先端54の付近にあるカーカス32への、歪みの集中を抑制する。歪みが分散されるので、このカーカス32の損傷(ルース)が防止される。しかも前述したように、このタイヤ22では、サイドウォール26の剛性は低い。このサイドウォール26は、カーカス32におけるルースの発生を効果的に防止する。
このタイヤ22では、耐久性の向上を図るために、従来のタイヤ2のように、クリンチ28の厚みを増大させる必要がない。それどころかクリンチ28の厚みの低減を図ることができるので、このタイヤ22によれば質量の軽減も達成されうる。本発明によれば、質量の増加を抑えつつ、耐久性の向上が達成されたタイヤ22が得られうる。しかもタイヤ22の軽量化は、燃費性能を向上させる。したがって本発明によれば、燃費性能の向上も達成される。
このタイヤ22では、クリンチ28がフランジ14に当接することにより、ビード30の全体が保護される。そして、このクリンチ28とエイペックス45との間にサイドウォール26を挿入して、エイペックス45の先端54の付近にあるカーカス32への歪みの集中を抑制することで、このカーカス32のルースが防止されている。このタイヤ22では、クリンチ28及びサイドウォール26の相乗効果により、このタイヤ22のビード30の部分の耐久性が効果的に高められている。この相乗効果が十分に発揮されうるという観点から、このクリンチ28の複素弾性率E*cのサイドウォール26の複素弾性率E*sに対する比は、1.5以上が好ましく、3.0以下が好ましい。
本明細書では、サイドウォール26の複素弾性率E*s及びクリンチ28の複素弾性率E*cは、「JIS K 6394」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所の「VESF−3」
初期歪み:10%
動歪み:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
このタイヤ22では、サイドウォール26の複素弾性率E*sは2.0MPa以上7.0MPa以下である。このサイドウォール26の剛性は低い。このサイドウォール26は、エイペックス45の先端54の付近にあるカーカス32のルースを効果的に防止する。このタイヤは、耐久性に優れる。
このタイヤ22では、クリンチ28の複素弾性率E*cは6.0MPa以上10MPa以下である。このクリンチ28の剛性は高い。このクリンチ28は、タイヤ22の操縦安定性に寄与しうる。さらにこのクリンチ28は、ビード30を効果的に保護しうる。このタイヤ22は、耐久性に優れる。
図2において、両矢印Teはエイペックス48の先端54におけるサイドウォール26の厚みを表している。本明細書では、この厚みTeは符号P1で示された位置から符号P2で示された位置までの長さを計測することにより得られる。符号P1は、エイペックス48の先端54と半径方向の位置が一致するサイドウォール26の内面上の位置を表している。符号P2は、位置P1におけるこのサイドウォール26の内面に対する垂線(法線)とサイドウォール26の外面との交点である。両矢印Tcは、クリンチ28の厚みを表している。この厚みTcは、クリンチ28の内面に対する垂線に沿って計測されるクリンチ28の厚みのうち、最大厚みにより表される。この厚みTcは、クリンチ28の最大厚みである。
このタイヤ22では、サイドウォール26の内側部分がカーカス32のルースの防止に効果的に寄与しうるという観点から、厚みTeは2mm以上が好ましい。このタイヤ22の剛性、特に、横剛性への、サイドウォール26による影響が抑制されるという観点から、この厚みTeは5mm以下が好ましい。
このタイヤ22では、クリンチ28がビード30の保護に寄与しうるという観点から、厚みTcは3mm以上が好ましい。タイヤ22の軽量化の観点から、この厚みTcは10mm以下が好ましい。
図2において、両矢印Haはビードベースラインからサイドウォール26の内端60までの半径方向距離を表している。両矢印Hbは、このビードベースラインからクリンチ28の外端62までの半径方向距離を表している。なお、前述の通り、両矢印Hfはビードベースラインからエイペックス48の先端54までの半径方向距離を表している。
このタイヤ22では、距離Hfと距離Haとの差(Hf−Ha)は5mm以上が好ましい。これにより、カーカス32とクリンチ28との間に挿入されたサイドウォール26の内側部分が、エイペックス48の先端54の付近にあるカーカス32のルースの防止に効果的に寄与する。このタイヤ22は耐久性に優れる。このタイヤ22では、差(Hf−Ha)は20mm以下が好ましい。これにより、サイドウォール26による、ビード30の部分における剛性への影響が効果的に抑えられる。このタイヤ22では、操縦安定性を適切に維持しつつ、耐久性の向上が達成される。
このタイヤ22では、距離Hfと距離Hbとの差(Hf−Hb)は5mm以下が好ましい。これにより、このカーカス32とクリンチ28との間に挿入されたサイドウォール26による、剛性への影響が効果的に抑えられる。このタイヤ22では、操縦安定性を適切に維持しつつ、耐久性の向上が達成される。このタイヤ22では、差(Hf−Hb)は−15mm以上が好ましい。これにより、クリンチ28による剛性への影響が効果的に抑えられる。このタイヤ22では、乗り心地を適切に維持しつつ、耐久性の向上が達成される。
このタイヤ22では、距離Hbと距離Haとの差(Hb−Ha)は10mm以上が好ましい。これにより、サイドウォール26とクリンチ28との接合面が十分に確保される。このタイヤでは、サイドウォール26とクリンチ28との界面への歪みの集中が効果的に抑えられている。このタイヤ22は、耐久性に優れる。このタイヤ22では、差(Hb−Ha)は20mm以下が好ましい。これにより、カーカス32とクリンチ28との間に挿入されるサイドウォール26のボリュームが十分に確保される。エイペックス48の先端54の付近にあるカーカス32のルースが効果的に防止されるので、このタイヤ22は耐久性に優れる。
このタイヤ22では、ビード30のエイペックス48がタイヤ22の剛性に効果的に寄与しうるという観点から、距離Hfは25mm以上が好ましく、45mm以下が好ましい。サイドウォール26がカーカス32のルースを効果的に防止し、しかもこのサイドウォール26による操縦安定性への影響が抑えられるとの観点から、距離Haは20mm以上が好ましく、35mm以下が好ましい。クリンチ28がビード30を効果的に保護しうるという観点から、距離Hbは35mm以上が好ましく、55mm以下が好ましい。
本発明では、タイヤ22の各部材の寸法及び角度は、タイヤ22が正規リム10に組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ22に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ22には荷重がかけられない。本明細書において正規リム10とは、タイヤ22が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム10TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リム10である。本明細書において正規内圧とは、タイヤ22が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の乗用車用空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、195/80R15とされた。このタイヤでは、ビードのエイペックスの硬度は85とされた。サイドウォールの硬度は、58とされた。クリンチの硬度は、75とされた。サイドウォールの厚みTeは、3mmとされた。クリンチの厚みTcは、7mmとされた。距離Hfのタイヤ断面高さHに対する比は、0.26とされた。距離Hfと距離Haとの差(Hf−Ha)は、7mmとされた。距離Hfと距離Hbとの差(Hf−Hb)は、−5mmとされた。したがって、距離Hbと距離Haとの差(Hb−Ha)は12mmであった。
[実施例2−4及び比較例2]
厚みTeを下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−4及び比較例2のタイヤを得た。
[実施例5−7及び比較例3−4]
厚みTcを下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5−7及び比較例3−4のタイヤを得た。
[比較例5]
厚みTe及び厚みTcを下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、比較例5のタイヤを得た。
[実施例8−12及び比較例6]
差(Hf−Ha)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8−12及び比較例6のタイヤを得た。
[実施例13−18及び比較例7]
差(Hf−Hb)を下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例13−18及び比較例7のタイヤを得た。
[比較例1]
比較例1は、従来のタイヤである。このタイヤのサイズは、195/80R15とされた。このタイヤのビードの部分は、図3に示された構成を備えている。サイドウォールには、実施例1のタイヤのサイドウォールと同等の架橋ゴムが用いられた。エイペックスには、実施例1のタイヤのエイペックスと同等の架橋ゴムが用いられた。クリンチには、実施例1のタイヤのクリンチと同等の架橋ゴムが用いられた。ビードベースラインからエイペックスの先端までの半径方向距離は、実施例1の距離Hfと同等とされた。ビードベースラインからサイドウォールの内端までの半径方向距離は、実施例1の距離Haと同等とされた。ビードベースラインからクリンチの外端までの半径方向距離は、実施例1の距離Hbと同等とされた。
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を450kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、9.56kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行時間を、測定した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど質量が小さいことが示されている。
[燃費性能]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:15×5.5JJ(アルミニウム合金製)
内圧:450kPa
荷重:9.56kN
速度:80km/h
この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく、燃費性能に優れていることが示されている。
[横バネ定数の評価]
下記の条件にて、タイヤの横バネ定数を測定した。
使用リム:15×5.5JJ
内圧:450kPa
荷重:9.56kN
この結果が、比較例1の横バネ定数を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど、縦バネ定数が大きいことが示されている。
[操縦安定性]
タイヤを15×5.5JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が450kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が3000ccであるライトトラックに装着した。ドライバーに、このライトトラックをレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性を評価させた。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど好ましい。
Figure 2015160485
Figure 2015160485
Figure 2015160485
Figure 2015160485
表1から表4に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたビードの部分の構成は、種々のタイヤにも適用されうる。
2、22・・・タイヤ
4、30・・・ビード
6、46・・・コア
8、48・・・エイペックス
12、28・・・クリンチ
14・・・フランジ
16・・・サイドウォール
18、32・・・カーカス
20・・・境界
24・・・トレッド
26・・・サイドウォール
42・・・トレッド面
50a、50b、50・・・カーカスプライ
52a、52b・・・端
54・・・先端
58・・・境界
60・・・内端
62・・・外端

Claims (2)

  1. その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向内側に位置する一対のクリンチと、それぞれがクリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスとを備えており、
    上記ビードが、コアとエイペックスとを備えており、
    このエイペックスが、このコアから半径方向外向きに延びており、
    上記カーカスが、カーカスプライを備えており、
    このカーカスプライが、上記コアの周りを軸方向内側から外側に向かって折り返されており、
    上記サイドウォールの内側部分が、半径方向内向きに先細りな形状を呈しており、
    上記クリンチの外側部分が、半径方向外向きに先細りな形状を呈しており、
    このサイドウォールの内側部分が、このクリンチの外側部分と上記折り返されたカーカスプライとの間に挿入されており、
    半径方向において、このエイペックスの先端がこのサイドウォールの内端よりも外側に位置しており、
    このエイペックスの先端における上記サイドウォールの厚みTeが、2mm以上であり、
    上記クリンチの厚みTcが、3mm以上10mm以下である、空気入りタイヤ。
  2. ビードベースラインから上記エイペックスの先端までの半径方向距離Hfとこのビードベースラインから上記サイドウォールの内端までの半径方向距離Haとの差(Hf−Ha)が5mm以上であり、この半径方向距離Hfとこのビードベースラインから上記クリンチの外端までの半径方向距離Hbとの差(Hf−Hb)が5mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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