JP2015156852A - 多層ゼリーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な方法によって、明確な層を形成した多層ゼリーの製造方法を提供する。【解決手段】ゲル化剤を用いて調製し細分化したゲル化物と、ゲル化剤を分散させた、細分化した前記のゲル化物とは比重が異なる常温のゼリー原料液とを容器内に充填し、細分化したゲル化物に添加したゲル化剤及び水に分散させたゲル化剤の双方が溶解する温度以上で加熱した後に冷却することによって多層ゼリーを製造する。【選択図】 図1

Description

本発明は、2種以上のゲル化物からなる多層ゼリーの製造方法に関する。詳しくは、予め細分化したゲル化物と、細分化したゲル化物とは比重が異なる、ゲル化剤を分散させた常温のゼリー原料液とを、容器内に充填し加熱冷却処理を行うことにより調製される多層ゼリーの製造方法に関する。
複数の風味を楽しむことができ、見た目もよく食欲をそそる多層ゼリーを調製する方法として、(1)各層を構成するゼリーの原料液を調製し、順番に容器へ充填、冷却させゼリーをゲル化させ、次に該ゲル化したゼリーの上部へ次の層のゼリーの原料液を充填し、これを繰り返して調製する方法が挙げられる。或いは、(2)比重等の異なるゲル化剤を含むゼリーの原料液を個別に調製し、これを容器内へ順次または同時に充填し、比重差により層状に分離した状態で冷却し、ゲル化剤を固化させゼリーとする方法がある。さらには、(3)粘性の異なるゲル化性のゾルを同時または連続的に充填して層が形成された後ゲル化させる方法がある。そして(4)ゲル化温度の違うゲル化剤を使用し、一方のゲル化剤を用いたゼリーを調製し、該ゼリーをもう一方のゲル化温度のより低いゲル化剤を加熱溶解した液と混合して容器へ充填することで、二層ゼリーを調製する方法がある。
具体的には、(1)の例として、多種の成分を調合して加温、ろ過、殺菌、予冷した溶液を55℃以上で容器に充填し、容器内の溶液が35〜58℃の範囲にまで冷めてゲル化を開始したときに他の溶液を65℃以上で充填するようにしたことを特徴とする多層プリン及びババロアの製造法(特許文献1)等が挙げられる。
(2)の例として、融解したゲル化性組成物を容器に充填・静置し、これにその温度におけるその粘度が約200cps以上高く、かつ比重が約0.05以上大きい第2の融解状ゲル化性組成物を注加・沈降させ、その容器に比重・粘度の大きいものを下層に、それらの小さいものを上層に、と2層を形成させ、これを冷却しゲル化させた容器入り多層ゼリー状食品(特許文献2)、塩類とゲル化剤を含有する溶液、及び、これとは別の塩類とゲル化剤を含有する溶液を、1種又はそれ以上接触せしめて異種溶液間で反応せしめ、ゲル化することを特徴とする異種ゲルの混在するゲル化食品の製造方法(特許文献3)、ベースとなる流動状食品調合物と、これよりも比重が大きくベース上に積層される流動状又は固形の食品調合物とを容器に充填し、次いで容器開口部を密封の上、容器を反転し、前記積層される食品調合物を沈降させた後、前記ベースとなる流動状食品を硬化させることを特徴とした容器入り多層食品の製造方法(特許文献4)、上層液を先に充填した後、前記上層液よりも粘度及び比重の高い下層液を充填して二層状態を形成させ、冷却固化させる二層状デザートの製造方法(特許文献5)、少なくとも1層がゲルである2層以上からなり、各層のうち少なくとも1層に高甘味度甘味料を含有し、各層の比重がいずれも1.15を超えず、各層間の比重差が0.008以上である多層状甘味食品(特許文献6)等が挙げられる。
(3)の例として、A:ゲル化剤を水に溶解した水性液、B:キサンタンガムとグルコマンナンを水に溶解した水性液 を混合し冷却した2層ゼリー(特許文献7)、上下2層間に界面を有する多層デザートであって、上下2層の両方又はどちらか一層に少なくともポリグリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルを含有し、上層部の粘度が30〜200mPa・s、下層部の粘度が90〜2000mPa・sで、上層部の比重は下層部の比重より0.01〜0.05低いことを特徴とする多層デザート(特許文献8)等が挙げられる。
(4)の例として、融点の異なる2種のゲル化剤を使用した二層ゼリーの製造方法であって、高融点ゲル化剤と用いたゼリーはいったん溶解・凝固させた後破砕して充填し、また低融点ゲル化剤を用いたゼリーはゾル状態のまま充填する気泡入り二層ゼリーの製造方法(特許文献9)、少なくとも1種以上のゲル化製物質を予めゲル化及び細分化すると共に、細分化したゲル化物と、前記ゲル化物とは比重が異なる溶解した状態のゲル化性物質とを容器内に充填し、さらに前記ゲル化物が溶解するまで加熱した後、冷却する方法(特許文献10)、第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該ゼリー容器に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする際に、該第2のゼリー液がゲル化する前に、該第1のゲルを上下反転させる工程を含む容器入り二層ゼリーの製造方法(特許文献11)等が挙げられる。
特開昭48−72362号公報 特開昭50−36652号公報 特開昭63−230041号公報 特開昭61−1349号公報 特開2004−357582号公報 特開2003−33144号公報 特開平7−79715号公報 特開2006−6127号公報 特開平2−257841号公報 特開平10−150932号公報 特開2008−61573号公報
しかしながら、上記多層ゼリーの調製方法(1)については、一層目がゲル形成されるのを待ってから次の層を形成するゼリー原料液を充填する必要があるため、工程の連続性が損なわれ、生産性が低くなるという根本的な欠点を有する。
(2)については、具体的には砂糖、異性化液糖や水飴等の糖類の配合量において層間に差をつけることによって比重差を生じさせるものであり、この方法は、食品において層間に比重差を生じさせる現実的な方法であると考えられる。しかし、ゼリー原料液が溶液の状態で混ざり合うため、複数の風味を有するゼリーに明確な層を形成させるためには、ゲルが形成されるまで静置する等の製造上の条件が厳しく求められることとなり、製造コストの増加や層の不十分な形成による商品価値の低下が問題となっていた。層の形成をより良好なものとし、層間の明瞭な区別ができるように調製するためには、一方の層への糖類の添加量を極端に増すことが必要となり、その結果甘味が強くなりすぎる、みずみずしさに欠けるといった弊害が生じていた。他方の層では、逆に比重を低くすることとなるために糖類の添加量が抑えられ、甘味が弱い、風味の発現が悪くなるという欠点が生じ、食品全体としてみると、明確な層の形成のために風味が損なわれてしまうこととなっていた。
(3)では、原理的には(2)で問題となる層間の比重差、即ち固形物量の差を必ずしも必要としないため、各層の甘味を最適なものとすることができるものの、充填時におけるゾルの粘性の差は、食感的なアンバランスや違和感、明瞭な層の形成に影響を及ぼしていた。
(4)では、あとから充填するゼリー液に含まれるゲル化剤が加熱溶解された状態で容器へ充填されるため、その製造工程においてゼリー液の温度を一定以上に保つ必要があり、充填後再度殺菌処理を行う等、加熱操作を頻繁に行う必要があった。
本発明は上記課題を解決し、複数の異なる性状を有するゼリーを簡便に層状に構成する方法を提供するものであり、具体的には、ゲル化剤を用いて調製した第1、第2ゼリー原料液を冷却固化して細分化したゲル化物と、第1、第2ゼリー原料液とは比重が異なる、ゲル化剤を分散させた常温の第3ゼリー原料液とを、容器内に充填し、第1、第2ゼリー原料液を冷却固化して細分化したゲル化物、及び第3ゼリー原料液に分散させたゲル化剤の双方が溶解する温度以上で加熱した後に冷却することを特徴とする多層ゼリーの製造方法である。
具体的には、本発明は次の態様を有する多層ゼリーの製造方法である;
項1
(1)ゲル化剤溶液を用いて調製した第1ゼリー原料液を冷却固化し、それをカットしたゲル化物と、
(2)ゲル化剤溶液を用いて調製した、第1ゼリー原料液よりも比重が大きい第2ゼリー原料液を冷却固化し、それをカットしたゲル化物と、
(3)ゲル化剤を分散させた、第1ゼリー原料液よりも比重が小さい第3ゼリー原料液を、それぞれ容器内に充填し、(1)及び(2)のゲル化物並びに(3)のゲル化剤が溶解するまで加熱した後に冷却することを特徴とする、多層ゼリーの製造方法。
項2
(1)及び(3)のみを用いる、項1記載の多層ゼリーの製造方法。
項3
(1)のゲル化物が、長径2mm以上にカットされたものである、請求項1又は2に記載の多層ゼリーの製造方法。
項4
各ゼリー原料液間の比重差が、それぞれ0.02以上異なるものである、項1乃至3に記載の多層ゼリーの製造方法。
項5
各ゼリー原料液に用いるゲル化剤が、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、マンナン、寒天、ゼラチン及びペクチンから選ばれる1種以上である、項1乃至4に記載の多層ゼリーの製造方法。
項6
さらに、各ゼリー原料液に安定剤として、カラギナン、キサンタンガム、マンナン、ゼラチン、ペクチン、グァーガム、大豆多糖類及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上の水溶液を(3)の第3ゼリー原料液に添加する、項1乃至5に記載の多層ゼリーの製造方法。
尚、前述の先行技術文献である特許文献10の特許請求の範囲には、「少なくとも1種以上のゲル化性物質を予めゲル化及び細分化すると共に、細分化したゲル化物と、前記ゲル化物とは比重が異なる溶解した状態のゲル化性物質とを容器内に充填し」とあるのに対し、本願発明はゲル化性物質を溶解した状態で充填せず、容器に充填後、加熱溶解せしめている点で明確に区別できる技術である。細分化したゲル化物とゲル化性物質を混合した後、容器に充填するまでの工程において、特許文献10のようにゲル化性物質が溶解した状態の場合は、ゲル化性物質が冷却によりゲル化せず、更に細分化したゲル化物が溶解しない温度帯を保持する必要がある。しかし、本願発明のようにゲル化性物質を溶解せずに利用できる場合、温度は細分化したゲル化物の溶解温度以下(常温)であればよく、製造上の管理が容易であり、特殊な設備も必要としない点で工業的にも優れている。
本発明によれば、簡便な方法によって多層ゼリーを調製することが可能となる。
本発明は、比重、大きさの異なる細分化したゼリー(第1、第2ゼリー原料液から調製)を、溶解していないゲル化剤を含む第3ゼリー原料液とともに容器に充填し加熱溶解することにより、多層ゼリーを製造する方法を提供するものである。
本発明で使用できるゲル化剤は、熱可逆的にゲル化・ゾル化するものであれば制限なく利用することができる。例えば、寒天、ゼラチン、カラギナン、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等の所謂ゲル化剤の1種又は2種以上を組み合わせたものを、多層ゼリーの各層を構成するゼリー原料液に添加すればよい。
各層を構成するゼリー原料液は、各層間に比重差があることが必須となる。この比重差がないと明瞭に層が形成されず、各層が混ざり合ったままゼリーが形成されてしまう。少なくともこの比重差は0.02以上を要し、好ましくは0.04以上である。そして比重差を大きくすることで、より明瞭に層分けができるようになるので、その上限は任意の値とすることができる。特に制限するものではないが、比重差を0.08程度とすれば、本発明の効果を十分に得ることができる。
各層を構成するゼリー原料液の比重差は、ゼリー原料液に添加する固形物量によって調整すればよい。具体的な方法としては、砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖、水飴、デキストリン、糖アルコール、ポリデキストロース等の概ね砂糖に近いか、それより低甘味の糖質類や果汁、蜂蜜等の糖質含有素材から選ばれる1種以上を、各層に添加混合し、それぞれの層が目標とする比重となるように添加すればよい。
また、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アリテーム、ソーマチン等の高甘味度甘味料の一種以上を組み合わせて使用することもできる。
或いは、本発明の効果を妨げない範囲で、比重調整に果汁、果肉、着色料、香料といったゼリーを調製する際に一般的に利用されている素材を用いることができる。
本発明の多層ゼリーを構成する第1及び第2のゼリー原料液は、上記のゲル化剤等を含み調製されたものである。調製は、各成分を水に溶解し加熱攪拌等、通常のゼリーを調製する常法に従い行えばよい。そして得られたゲル化物(ゼリー)をフードミキサーやフードカッター等を用いて、ゲル化物の大きさが長径2mm以上、好ましくは3mm以上となるよう細分化すればよい。その形状も特に制限はなく、サイコロ状、不規則な形状のいずれでもよい。2種類以上のゲル化物を併用する場合は、各ゲル化物の大きさに差(好ましくは3mm以上)を付けることで、明確な層の形成が可能となる。
ゲル化物を2種使用することにより、後述する第3のゼリー原料液と合わせてゼリーを調製することにより、全体として3層のゼリーとすることができるが、ゲル化物を1種のみ使用することで、2層のゼリーとすることも任意である。
また、第3ゼリー原料液に対し、安定剤を添加することもできる。安定剤を添加することにより、第3ゼリー原料液中に添加した溶解していないゲル化剤を均一に分散させることができる。これによって、製造工程においてゲル化剤の分散状態を保つことが容易になり、製造設備中のタンク内でのゲル化剤の沈殿や不均一状態に起因する、個々の充填品で生じるゲル化剤濃度の個体差等のリスクが回避でき、安定的に高品質の製品を製造できる。
安定剤として第3ゼリー原料液に添加する成分は、カラギナン、キサンタンガム、マンナン、ゼラチン、ペクチン、グァーガム、大豆多糖類及びアルギン酸エステルから選ばれる一種以上であればよい。これらは、各ゼリー原料液において使用されるものと共通するものもあるが、その使用態様は上述の通りゲル化剤として添加してもよい。
第3ゼリー原料液への安定剤の添加方法は、安定剤として使用する成分を他の成分と同様に添加すればよく、その添加方法に制限はない。安定剤の添加量は、第3ゼリー原料液に対し0.01質量部以上、好ましくは0.02質量部以上である。かかる範囲以下では安定剤としての効果が十分に得ることができない。安定剤の添加量の上限は、調製する多層ゼリーに応じて任意の値とすることができ、特に制限するものではないが、その最大値は添加するゲル化剤の添加量を超えない量であることが望ましい。添加量が多くなると細分化したゲル化物の沈殿をも妨げ、層の形成に支障が生じる可能性がある。添加量の範囲は、調製する多層ゼリーの各層間の比重差、ゲル化物の大きさ、安定剤の種類及び製造設備に応じて、適正な添加量を調整することが好ましい。
本発明によって得られる多層ゼリーとして、ドリンクゼリー、ゼリー、ムース、プリン、ババロア、フラン及びブランマンジェ等の洋菓子、寒天ゼリー、水羊羹、わらび餅、ういろう、羊羹等の和菓子が例示でき、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。組み合わせも、異なるフレーバーや色調のゼリーを層積するだけでなく、コーヒーとクリームをそれぞれゼリーで調製し層積したゼリーや、わらび餅や水羊羹等を層積することで異なる食感を一度に楽しめる和菓子等、様々な組み合わせによる楽しみ方も可能である。
本発明にかかる多層ゼリーの製造方法について説明する。
本発明は、ゲル化剤を用いて調製した第1、第2ゼリー原料液を冷却固化して細分化したゲル化物と、前記ゲル化剤とは比重が異なるゲル化剤を分散させた常温の水によって調製した第3ゼリー原料液とを容器内に充填し、第1、第2ゼリー原料液を冷却固化して細分化したゲル化物を沈殿せしめた後、該ゲル化物に添加したゲル化剤及び第3ゼリー原料液に分散させたゲル化剤の双方が溶解する温度以上で加熱した後に冷却することを特徴とする多層ゼリーの製造方法である。
ゲル化剤を用いて調製した第1、第2ゼリー原料液を冷却固化して細分化したゲル化物とは、各種ゼリーの原料を添加した水(ゼリー原料液)にゲル化剤を添加し、定法により調製・固化したゼリー等のゲル化物を指す。ゼリー原料液の具体例としては、砂糖や着色料、香料を水に添加し、目標とする比重に調製したゼリー原料液に、カラギナンやローカストビーンガム等のゲル化剤を添加して加温溶解し、冷却固化したものを細分化することにより得られる。細分化したゲル化物は、多層を構成するゼリー原料液中で沈殿できる大きさが無くてはならず、その長径が2mm以上、好ましくは3mm以上とし、2種類以上のゲル化物を併用する場合は、各ゲル化物の大きさに差(好ましくは3mm以上)を付けることで、明確な層の形成が可能となる。ゲル化物の大きさが2mmより小さいと、上述のようにゼリー原料液中で沈殿せず、最終的に多層ゼリーとなった際に、上下層が混ざりあってしまい好ましくない。また、ゲル化物が大きいと、充填時にゲル化物の充填量が不均一となるため、適度な大きさや形状とすることが好ましい。
細分化にはフードミキサーやフードカッター等、ゲル化物を長径2mm以上の大きさにカットできるものであれば制限なく利用することができる。その形状も特に制限はなく、サイコロ状、不規則な形状のいずれでもよい。
細分化したゲル化物と異なる層を構成するゼリー層を構成する第3ゼリー原料液についても、上記と同様の組成物、処方等によって調製すればよいが、下層部を形成するゼリー原料液との比重差を0.02以上となるように調整する必要がある。このときの比重差が0.02未満では、層積した際に明確な層の区別がつかないため好ましくない。
そして得られた第3ゼリー原料液(上層部のゼリーとなる)を、細分化したゲル化物(下層部のゼリーとなる)と容器に充填する。このときに、香料や果汁等の他の成分と、安定剤の水溶液を第3ゼリー原料液に添加してもよい。容器への充填は、第3ゼリー原料液及びゲル化物を同時に或いは一方ずつでもよく、特に製造工程上制限を受けるものではない。このときの液温は、添加したゲル化剤が溶解する温度にする必要はなく、常温、具体的には1〜30℃でよい点で利便性が高い。次いで、細分化したゲル化物、第3ゼリー原料液を充填した容器を加温するが、このときの加温は、細分化したゲル化物(下層部のゼリーとなる)及び他方の層(上層部のゼリーとなる)を形成する第3ゼリー原料液に添加したゲル化剤が溶解する温度と時間以上とする。この加温工程を経ることにより、予めゲル化物となっていた層が溶解し、比重差により溶解したままの状態で下層へ滞留し、そこで層状を成すこととなる。そして冷却することにより、明確に層別された層状ゼリーを得ることができる。
具体例をあげると、最下層部分となるゼリーとなる細分化されたゲル化物を5mm程度にカットし、比重を1.09程度に調製する。次いでその上層部分になるゲル化物を比重1.06に調整し、大きさを2mm程度となるようにカットする。最上層部のゼリーを構成するゼリー原料液を、比重1.02程度となるように調整し、これらを容器に充填し加温、次いで冷却することで、三層のゼリーを得ることができる。
以下、実施例により本発明の多層ゼリーの製造方法の一例を説明する。但し、これらによって本願発明が限定されるものではない。尚、下記処方の単位は特に言及しない限り「部」は質量部を、「%」は質量%を意味するものとする。文中「*」のものは三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品を意味し、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
<試作例1>
次の処方に従い、本発明にかかる多層ゼリーを製造した。本処方における下層部となるゼリーの比重は、各成分を混合し加熱溶解した際に、また上層部となるゼリー原料液の比重は水分散時に測定した。
処方 (第1ゼリー原料液(予めゲル化物として調製し、下層部のゼリーとなる))
(kg)
1 砂糖 4
2 果糖ぶどう糖液糖 12
3 デキストリン(松谷化学工業株式会社 TK-16) 16
4 ブラックカラント濃縮果汁 0.56
5 クエン酸(無水) 0.25
6 クエン酸三ナトリウム 0.05
7 ゲル化剤(ゲルアップ※WM-1(F)*) 1
8 乳酸カルシウム 0.15
9 L-アスコルビン酸 0.03
10 着色料(リコピンベースNo.34824*) 0.4
水にて合計 100 L

製造
(1)水と2に1、7の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解した。
(2)3〜6、8(8は予め湯溶解)、9、10を加え攪拌溶解後、水にて全量補正し、冷却固化させた。
(3)固化した第1ゼリーのゲルを2〜3mm程度の大きさにカットした。
尚、第1ゼリー原料液の比重は、1.13であった。

処方 (第3ゼリー原料液(上層部のゼリーとなる))
製造
(4) 水と2に1、4〜6の粉体混合物を加え、室温で10分間攪拌し分散液を調製した。尚、ゲルアップ(商標)WM−1(F)はカラギナンとローカストビーンガムを含む製剤、ビストップ(商標)D−3000−E−Sはキサンタンガム100%の製剤、ビストップ(商標)D−2029はグァーガム100%の製剤である。
(5) 3、7〜10を加え、攪拌溶解後、水にて全量補正した。
尚、第2ゼリー原料液の比重は、1.06であった。

2層ゼリーの調製
(6) 下層部のカットゼリーを30部、上層部のゲル化剤分散液70部を混合し、容器に充填した。
(7) 5分間静置し、カットゼリーが容器下部に沈殿後、75℃20分間加熱殺菌した。
(8) 冷却固化させた。

結果
実施例1〜3は、いずれもゼリーを形成し、明瞭に層が区別できる状態となっていた。
試作例1に対する比較例として、次のものを同様の手順で調製した。
比較例1 下層部となる第1ゼリー原料液の処方からデキストリンを除き(比重1.06)、上下層の比重差が0.02未満となった多層ゼリー
比較例2 ホモジナイザーで下層部となるゼリーを、1mm未満の細かいゼリーとしてから調製した多層ゼリー
結果
比較例1で得た多層ゼリーは、明確な二層に区分されなかった。
比較例2で得た多層ゼリーは、細かくカットしたゼリーが上層部となるゼリーの原料液中に分散してしまい、加熱溶解時に分散した状態のまま溶解し、二層が明確に分かれなかった。
<試作例2>
表2と処方に基づき、安定剤として知られるグァーガム、キサンタンガムを用いて、安定剤の添加量による効果を検証した。尚、カラギニン(商標)CSK−1(F)はカラギナン100%の製剤、ビストップ(商標)D−2050はローカストビーンガム100%の製剤である。
処方
(基本配合) kg
1 ゲル化剤部
カラギニンCSK-1(F)*(κカラギナン) 0.14
ビストップ※D-2050*(ローカストビーンガム) 0.09
2 安定剤 下記表2参照
3 塩化カリウム 0.1
4 乳酸カルシウム 0.1
水にて合計 100.0L

製造方法・評価基準
基本配合にある成分を攪拌混合し、ガラス瓶に充填して静置し、5分後、30分後、1時間後の分散状態を目視により評価した。評価の基準は次の通りである。
×:沈殿・上透きを生じた(分散安定性に欠ける)
○:沈殿・上透きを生じていない(分散安定性あり)
△:ごく少量の上透きを生じた

・粘度の測定条件
回転式粘度計(回転数60rpm、測定時間30sec、20℃)
結果
上記試験より、安定剤としてグァーガムを使用するのであれば0.2%以上(望ましくは0.3%以上)、キサンタンガムを使用するのであれば0.01%以上(望ましくは0.02%以上)を添加することにより、経時的なゲル化剤の沈殿を防止できることが分かった。これによって、製造工程においてゲル化剤の分散状態を保つことが容易になり、安定的に高品質の製品を製造できる。
<試作例3>
次の表3〜4の処方に基づいて、三層ゼリーを調製した。
処方
製法
(下・中間層部)
(1)水と1に5の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解した。
(2)2〜4、6、7 (7は予め湯溶解)、8、9を加え攪拌溶解後、全量補正し、冷却固化させた。
(3)固化したAのゲルを5mm程度、Bのゲルを2mm程度の大きさにカットする。

(上層部)
(4) 水と1に5、6の粉体混合物を加え、室温で10分間攪拌し分散液を調製した。
(5) 2〜4、7〜9を加え、攪拌溶解後、全量補正した。

(充填、殺菌)
(6) 下層部のカットゼリーAを18部、中間層部のカットゼリーBを18部、上層部のゲルとなるゼリー原料液64部を混合し、容器に充填した。
(7) 5分静置し、カットゼリーが容器下部に沈殿後、75℃20分間加熱殺菌した。
(8) 冷却固化させた。
結果
得られた三層ゼリーは、図1にあるように明瞭な層分けがされたゼリーを得ることができた。
本発明にかかる多層ゼリーによれば、層を構成する原料液をカットゼリーの形状で容器へ充填できるという簡便さが挙げられる。また、層を構成するカットゼリーを増やすことにより、ゼリーを多層化することができるが、その際に留意する点はカットゼリーの比重の差が0.02以上になるようにし、カットゼリーの大きさに留意するだけでよい。多層ゼリーの製造方法も、ゼリーを構成する層の数のカットゼリーを、比重差とゼリーの大きさを考慮して調製し、それを容器内に充填し、最後の層を形成するゼリー原料液を充填、容器を密封し、使用しているゲル化剤のゲル化温度以上に加熱することによって、目的とする多層ゼリーを得ることができる。このとき、最後に添加するゼリー原料液中に添加するゲル化剤は溶解する必要がない点が本発明の特徴である。さらに、当該ゼリー原料液に安定剤を併用することによって、製造工程においてゲル化剤との分散状態を保つことが容易になり、安定的に高品質の製品を製造できる。
三層ゼリーの外観

Claims (6)

  1. (1)ゲル化剤溶液を用いて調製した第1ゼリー原料液を冷却固化し、それをカットしたゲル化物と、
    (2)ゲル化剤溶液を用いて調製した、第1ゼリー原料液よりも比重が大きい第2ゼリー原料液を冷却固化し、それをカットしたゲル化物と、
    (3)ゲル化剤を分散させた、第1ゼリー原料液よりも比重が小さい第3ゼリー原料液を、それぞれ容器内に充填し、(1)及び(2)のゲル化物並びに(3)のゲル化剤が溶解するまで加熱した後に冷却することを特徴とする、多層ゼリーの製造方法。
  2. (1)及び(3)のみを用いる、請求項1記載の多層ゼリーの製造方法。
  3. (1)のゲル化物が、長径2mm以上にカットされたものである、請求項1又は2に記載の多層ゼリーの製造方法。
  4. 各ゼリー原料液間の比重差が、それぞれ0.02以上異なるものである、請求項1乃至3に記載の多層ゼリーの製造方法。
  5. 各ゼリー原料液に用いるゲル化剤が、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、マンナン、寒天、ゼラチン及びペクチンから選ばれる1種以上である、請求項1乃至4に記載の多層ゼリーの製造方法。
  6. さらに、各ゼリー原料液に安定剤として、カラギナン、キサンタンガム、マンナン、ゼラチン、ペクチン、グァーガム、大豆多糖類及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上の水溶液を(3)の第3ゼリー原料液に添加する、請求項1乃至5に記載の多層ゼリーの製造方法。

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