JP6401437B2 - 多層食品の製造方法 - Google Patents
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Description
また、下層を充填後、上層部分を脈流させながら充填することで、冷却工程等の大規模な設備を用いることなく、配合上の制約を極力抑えたうえで、工業的かつ効率的に多層化できる製造方法が知られている(特許文献2)。
また、特許文献2の製造方法は、充填物を脈状にして充填することで、工業的かつ効率的に多層食品を調製できる技術であるが、上層部や下層部を充填する際の原料の配合条件および充填条件によって層間での混ざり込みの程度が異なり、目的とする製品の外観や積層状態を得るための条件が不明確であるという課題があった。
{(D×v×ρU 2×ηU)/(ρL×ηL 2)}<300 ・・・(1)
(ここで、
D:一脈の充填量から算出される上層部の食品の液の直径(m)
v:充填時に上層部の食品の液が下層部に衝突する時の速度(m/s)
ρU:上層部の食品の密度(kg/m3)
ρL:下層部の食品の密度(kg/m3)
ηU:上層部の食品の粘度(Pa・s)
ηL:下層部の食品の粘度(Pa・s)
とする。)
従来、特許文献2に記載されるような製造方法により、複数の層を備える多層食品は知られており、充填物を脈流させることにより充填することで二層間の混合を防止することで積層を可能としている。ここで、下層部の粘度ηLと、上層部の粘度ηUの関係がηL≧ηUのとき、さらに下層部の密度ρLと、上層部の密度ρUの関係が、ρL≧ρUのときに積層の状態がより好ましくなるとされている。
ここでいう積層とは、二層が分離しているということを意味している。二層間の分離の程度は、各層を充填する時の粘度や密度だけでなく、脈流における一つの脈がもつ充填量や、上層部が衝突する際の速度によって変化する。そのため、それらの充填量や速度を制御することにより、上記の条件を満たさない条件、すなわち、ηL<ηUである場合や、ρL<ρUである条件においても、二層間を明瞭に分離することが可能となる。
本発明では、充填物を脈流させながら充填する場合において、二層が分離し、さらに界面が明瞭となる条件を、上層部を下層部に充填する際の各層の食品の粘度および密度と、上層部の食品が下層部に当たる速度と、そして一脈の充填量を変えることで制御できることを見出した。
また、一回の充填において、流量が周期的に変化するとき、図1に示すように一周期のうち瞬間の流量が低い二点間を一脈とし、一脈と一脈の間が繋がっている状態を脈流という。
以下に、式(1)を再び記載する。
{(D×v×ρU 2×ηU)/(ρL×ηL 2)}<300 ・・・(1)
前述したとおり、式(1)においては、
D:一脈の充填量から算出される上層部の食品の液の直径(m)
v:充填時に上層部の食品の液が下層部に衝突する時の速度(m/s)
ρU:上層部の食品の密度(kg/m3)
ρL:下層部の食品の密度(kg/m3)
ηU:上層部の食品の粘度(Pa・s)
ηL:下層部の食品の粘度(Pa・s)
を示す。
左辺の値は、上層部の充填する時に上層部の食品が下層部へと混ざり込む程度を示す無次元数であり、この値が大きくなるほど、上層部の充填量に伴い上層部の食品が下層部に深く入り込み、上層部と下層部との界面の状態が不良となる。一方で、左辺の値が低くなるほど、上層部の食品の下層部への混ざり込みは少なくなり、界面の状態が良好となる。
本発明においては、容器に下層部を充填した後、式(1)の各因子を調整しながら上層部の食品を下層部の上に充填し、式(1)の左辺の値と、充填された上層部と下層部との界面の状態を評価した。その結果、界面の状態を判断する閾値として、左辺の値を300未満にすることで上下層が分離した状態の多層食品が得られることを見出した。好ましくは、左辺値を50未満にすることで、上層部と下層部が混ざり込んでいる幅を上下層全体の幅の1/4未満に抑えることができる。さらに好ましくは、左辺値を3未満にすることで、上層部と下層部の界面で混ざり込みが無い状態を確保することができる。
Dの値を制御するには、例えば、1回の充填における上層部の食品の充填量、脈数、または上層部の食品を充填する装置の多孔ノズルの口数の変更等による方法がある。充填量やノズルの口数を変える場合、容器に対する上層部の食品の平均充填速度の変化を伴うため、充填速度を維持しながらDの値のみを設定する際は、充填機から供給される脈数を変更する方法が有効である。脈数は多ければ多いほどDの値を下げることができるが、これは、充填機の機械的負荷を考慮した値以下にする必要がある。
二層を有する食品を製造するにあたり、上層部ミックス(ゲル化性溶液)として、粉末水あめ、寒天、インスタントコーヒー、ローカストビーンガムを表1のとおり配合し、充填時の粘度および密度を調整することで、密度が同一で粘度の異なる(1)〜(4)の4種類のゲル化性溶液を用いた。
下層部ミックス(ゲル化性溶液)として、粉末水あめ、脱脂粉乳、生クリーム、寒天、インスタントコーヒー、ローカストビーンガムを表1のとおり配合し、充填時の粘度および密度を調整することで、密度が同一で粘度の異なるA〜Dの4種類のゲル化性溶液を用いた。
上層部ミックスおよび下層部ミックスを水に分散させ95℃まで加熱して溶解し、下層部のみ100kgf/cm2の圧で均質をかけ、60℃まで冷却し保存した。充填方法は、最初に60gの下層部ミックスを容器に充填した。そして、下層部ミックスを充填した直後に、ピストンシリンダーと多孔ノズルを用いて上層部ミックス50gを下層部の上に充填した。このとき、多孔ノズルのそれぞれの孔から吐出される上層部ミックスの充填について、脈流で充填を行い、一脈の充填量にかかるDの値を、充填の脈数を調整することで、5.3mm、6.6mm、8.4mmの3段階に設定した。また、上層部ミックスが下層部に衝突する速度vを、充填時間および多孔ノズルの高さを調整することで、1m/s、1.4m/s、1.72m/sの3段階に設定し、下層部ミックスの上に上層部ミックスを充填した。
上層部の充填が完了した後すぐに5℃の冷蔵に入れて、そのまま一晩保存してゲル化させた後、中身である多層食品を容器から取り出し、上層部と下層部との界面に対し垂直方向に分割し、目視にて界面の状態を観察し、以下の4段階の評価を行った(図2)。
◎ : 上層部と下層部の界面で混ざり込みが無い状態
○ : 上層部と下層部が混ざり込んでいる幅が、上下層全体の幅の1/4未満
△ : 上層部と下層部が混ざり込んでいる幅が、上下層全体の幅の1/4以上
× : 上層部が下層部の下にもぐりこむ、あるいは下層部が上層部の上に浮上し、積層不良である状態
v=1m/sの結果を表2に、v=1.4m/sの結果を表3に、v=1.7m/sの結果を表4に、それぞれ示す。
表2〜4のそれぞれの左側と右側の結果をみると、式(1)の左辺値が大きくなるにつれて界面の状態が不良となる傾向を示していることがわかる。評価の区分に従って、上下層の界面において混ざり込みがほとんどないものは、式1の左辺の値が3未満、混ざり込んでいる幅が上下層全体の幅の1/4未満の場合は50未満、混ざり込んでいる幅が上下層全体の幅の1/4以上の場合は300未満、上下層間での混ざり込みが大きく、積層不良であるものは300以上であった。
上層部ミックスと下層部ミックスとの密度の差による界面における混ざり込みへの影響を確認するため、実施例1に比べて、上下層の密度の差が大きい多層食品を製造した。
上層部ミックス(ゲル化性溶液)は、表5のとおり、試験例1と同じ原材料を用いて同じ配合量とした。
下層部ミックス(ゲル化性溶液)は、表5のとおり、試験例1と同じ原材料を用いて試験例1に比べて充填時の密度が高くなるように調整した。
上層部ミックスおよび下層部ミックスを水に分散させ95℃まで加熱して溶解し、下層部のみ100kgf/cm2の圧で均質をかけ、60℃まで冷却し保存した。実施例1と同じく、下層部ミックス60gを容器に充填した直後に、ピストンシリンダーと多孔ノズルを用いて上層部ミックス50gを下層部の上に充填した。このとき、多孔ノズルのそれぞれの孔から吐出される充填について、脈流で充填を行い、一脈の充填量に依存する量Dを、充填の脈数を調整することで、D=5.3mmに設定した。また、上層部が下層部に衝突する速度vを、充填時間およびノズルの高さを調整することで、1m/sに設定した。
充填後に5℃の冷蔵で一晩保存してゲル化させた後、中身を容器から取り出し、試験例1と同様に評価を行った。
結果を表6に示す。
上層部ミックスと下層部ミックスとの密度の大小関係による界面における混ざり込みへの影響を確認するため、上層部ミックスの密度が下層部ミックスの密度より高い多層食品を製造した。
上層部ミックス(ゲル化性溶液)および下層部ミックス(ゲル化性溶液)として、それぞれ、粉末水あめ、寒天、インスタントコーヒー、ローカストビーンガムを表7のとおり配合し、充填時の粘度および密度を調整した。
各ミックスを水に分散させ95℃まで加熱して溶解し、下層部のみ100kgf/cm2の圧で均質をかけ、60℃まで冷却し保存した。下層部ミックス60gを容器に充填した直後に、ピストンシリンダーと多孔ノズルを用いて上層部ミックス50gを下層部の上に充填した。このとき、多孔ノズルのそれぞれの孔から吐出される充填について、脈流で充填を行い、一脈の充填量に依存する量Dを、充填の脈数を調整することで、5.3mmに設定した。また、上層部が下層部に衝突する速度vを、充填時間およびノズルの高さを調整することで、1m/sに設定し、試験を行った。
充填後は5℃の冷蔵で一晩保存してゲル化させた後、中身を容器から取り出し、上下層界面に対し垂直方向に割り、目視にて内部の状態を観察し、評価を行った。評価の方法は、試験例1と同じである。結果を表8に示す。
(コーヒーゼリー/コーヒーソース/プリン)
上層部ミックス(コーヒーゼリー)として、砂糖ぶどう糖液糖15% 、液状水飴6.8%、ぶどう糖4.5%、コーヒーエキス2.0%、インスタントコーヒー0.8%、ローカストビーンガム0.3%、カラギーナン0.1%、ペクチン0.1%、ゼラチン0.05%、乳酸カルシウム0.02%とし、充填時の粘度が50mPa・s (目標充填温度60℃)となるように調整した。また、比重を1.080とした。
下層部ミックス(プリン)として、脱脂粉乳8.0%、マスカルポーネ3.0%、液状水飴27.0%、グラニュー糖5.0%、生クリーム2.5%、バター2.0%、加糖卵黄4.0%、ゼラチン0.4%、寒天0.15%、ローカストビーンガム0.5%とし、充填時の粘度をそれぞれ150mPa・s(目標充填温度50℃)となるように調整した。また、比重が1.14となるように調整した。
各ミックスを水に分散させ95℃まで加熱して溶解し、下層部のみ100kgf/cm2の圧で均質をかけ、60℃まで冷却し保存した。下層部ミックス60gを容器に充填した直後に、ピストンシリンダーと多孔ノズルを用いて上層部ミックス50gを下層部の上に充填した。このとき、多孔ノズルのそれぞれの孔から吐出される充填について、脈流で充填を行い、一脈の充填量に依存する量Dを、充填の脈数を調整することで、5.3mmに設定した。また、上層部が下層部に衝突する速度vを、充填時間およびノズルの高さを調整することで、1m/sに設定し、試験を行った。
式(1)左辺値は、上記条件において12であり、界面の状態として、混ざり込んでいる幅が上下層全体の幅の1/4未満で積層されていた。
(カスタードプリン/マロンプリン)
上層部ミックス(カスタードプリン)として、脱脂粉乳6.0% 、バター5.0 %、グラニュー糖7.5%、粉末水飴4.0%、加糖卵黄4.0%、ローカストビーンガム1.0%、キサンタンガム0.2%とし、充填時の粘度が1000mPa・s (目標充填温度60℃)となるように調整した。また、比重を1.073とした。
下層部ミックス(マロンプリン)として、脱脂粉乳5.0%、バター2.0%、粉末水飴14.0%、グラニュー糖6.0%、ヤシ油2.5%、マロンペースト8.0%、マロン果肉10.0%、寒天0.15%、キサンタンガム0.2%、ローカストビーンガム0.2%、カラメル色素0.1%とし、充填時の粘度を400mPa・s(目標充填温度50℃)となるように調整した。また、比重が1.08となるように調整した。
各ミックスを水に分散させ95℃まで加熱して溶解し、100kgf/cm2の圧で均質をかけ、60℃まで冷却し保存した。下層部ミックス60gを容器に充填した直後に、ピストンシリンダーと多孔ノズルを用いて上層部ミックス50gを下層部の上に充填した。このとき、多孔ノズルのそれぞれの孔から吐出される充填について、脈流で充填を行い、一脈の充填量に依存する量Dを、充填の脈数を調整することで、5.3mmに設定した。また、上層部が下層部に衝突する速度vを、充填時間およびノズルの高さを調整することで、1m/sに設定し、試験を行った。
式(1)左辺値は、上記条件において35であり、界面の状態として、上下層が分離しているものの、混ざり込んでいる幅が1/4以上で積層されていた。
(ゼリー/発酵乳)
上層部ミックス(ゼリー)として、粉末水飴12.0%、ローカストビーンガム0.4%、キサンタンガム0.3%とし、充填時の粘度が50mPa・s (目標充填温度60℃)となるように調整した。また、比重を1.045とした。
下層部ミックス(発酵乳)として、生乳60.0%、脱脂粉乳6.0%、生クリーム1.0%、粉末水飴6.5%、スターター0.02%を用いて、43℃で5時間発酵させた発酵乳を調製し、比重が1.07となるように調整した。また、充填時の粘度は、高速ミキサーの攪拌により、充填時の粘度が3000mPa・s(充填目標温度10℃)となるように調整した。
上層部ミックスを水に分散させ95℃まで加熱して溶解し、100kgf/cm2の圧で均質をかけ、60℃まで冷却し保存した。下層部ミックスは10℃まで冷却し、60gを容器に充填した直後に、ピストンシリンダーと多孔ノズルを用いて上層部ミックス50gを下層部の上に充填した。このとき、多孔ノズルのそれぞれの孔から吐出される充填について、脈流で充填を行い、一脈の充填量に依存する量Dを、充填の脈数を調整することで、5.3mmに設定した。また、上層部が下層部に衝突する速度vを、充填時間およびノズルの高さを調整することで、1m/sに設定し、試験を行った。
式(1)左辺値は、上記条件において0.03であり、界面の状態として、上下層が混ざり込むことなく、明瞭な界面をもって積層化されていた。
Claims (1)
- 下層部となるゲル化性食品または流動食品で構成される食品を容器に充填する工程と、
前記下層部の上に、上層部となるゲル化性食品または流動食品からなる食品を、下記式を充足する条件で脈流させながら充填する工程と、を有することを特徴とする多層食品の製造方法。
{(D×v×ρU 2×ηU)/(ρL×ηL 2)}<3・・・(1)
(ここで、
D:一脈の充填量から算出される上層部の食品の液の直径(m)
v:充填時に上層部の食品の液が下層部に衝突する時の速度(m/s)
ρU:上層部の食品の密度(kg/m3)
ρL:下層部の食品の密度(kg/m3)
ηU:上層部の食品の粘度(Pa・s)
ηL:下層部の食品の粘度(Pa・s)
0.0053≦D≦0.0084
1≦v≦1.7
0.025≦ρ L −ρ U ≦0.075
ηU ≦ηL
とする。)
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