JP2015151131A - 水中油型乳化物を内容物とする包装容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水中油型乳化物が収容された包装容器であって、該水中油型乳化物が接触する容器内面に、油膜が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
特に、油滴が水に分散する水中油型(0/W型)乳化物を内容物とする場合には、この内容物が完全に排出されず、どうしても容器内に内容物が残存してしまうという問題が顕著であり、さらなる改良が望まれている。
即ち、これらは、何れも内容物と非混和性の液体による液層を形成することにより内容物に対する滑り性を従来公知のものに比して格段に向上させることに成功したものであり、容器を倒立或いは傾倒せしめることにより、容器内壁に付着・残存させることなく、内容物を速やかに容器外に排出することが可能となっている。
本発明は、これらで提案されている液層を容器内面に設けるという技術を水中油型乳化物が内容物として収容された包装容器に適用した技術である。
(1)前記水中油型乳化物が、脂質成分を10〜50質量%の量で含むものであること、
(2)前記油膜を形成する油性液体の分子量が、200〜2000の範囲であること、
(3)前記油性液体の表面張力が、16〜40mN/mの範囲であること、
(4)前記油性液体が、食用油、脂肪酸トリグリセライド、フッ素系界面活性剤、或いは、シリコーンオイルであること、
が好適である。
本発明の包装容器は、容器内容物が接触する内面に後述する油膜が形成されている限り、容器の材質は、各種プラスチック、紙、金属、ガラス等であってよいが、一般に、少なくとも内面がプラスチックで形成されていることが好ましい。
例えば、紙容器、ガラス容器や金属容器の内面に、前述した油膜の保持に適した前記プラスチック材料で形成されたプラスチックのコーティング層が形成された態様とすることもできるし、さらには、油膜の保持に適した前記プラスチック材料により容器壁が形成された単層構造或いは多層構造のプラスチック容器とすることもできる。
特に容器壁がプラスチックで形成されたプラスチック容器では、油膜の保持に適した前記プラスチック材料により内面層が形成され、中間層としてエチレン−ビニルアルコール共重合体等からなるガスバリア層を設けた多層構造とすることが好適である。さらには、このような多層構造の容器では、容器を形成する際に生じるスクラップを含むリグラインド層を中間層として設けることもできるし、さらに、多層構造とする場合には、各層との接着性を高めるために、公知の接着剤樹脂層を適宜設けることもできる。
このような容器は、前述した各層を含む層構造の前成形体をそれ自体公知の方法により成形し、これを、ヒートシールによるフィルムの貼り付け、プラグアシスト成形等の真空成形、ブロー成形などの後加工に付して容器の形態とすることができる。
即ち、図1において、全体として10で示されるこのボトルは、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル10に後述する水中油型乳化物が内容物として充填され、次いで、首部11の上端開口部にアルミ箔等の金属箔19をヒートシールにより施し、所定のキャップ20を装着することにより、包装容器(ボトル)として使用に供される。かかる包装ボトルでは、キャップ20を開封し、シール材が塗布された金属箔19を引き剥がし、ボトル10を傾倒乃至倒立させることにより、必要により胴部壁15をスクイズすることにより内容物(水中油型乳化物)の取り出しが行われる。かかるボトル10は、胴部壁15をスクイズ可能であるため、特に内容物が高粘性のペースト状であるときにも、容易に排出することができる。
ところで、上記のような包装容器では、容器内に内容物として収容されている水中油型乳化物を速やかに、しかも容器壁に付着・残存することなく、その全量を排出することが求められる。本発明では、このような要求を満足させるため、容器内面に油膜を設けておくわけである。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (2)
式中、
θは、油膜が形成されている容器の内面について大気圧中で測定された水接触角
であり、
θAは、油膜を形成する油性液体について、大気圧中で測定された水接触角であ
り、
θBは、油膜を支持する容器内面(即ち、プラスチックの下地面)について、大
気圧中で測定された水接触角である、
で算出される液層の被覆率Fが0.5以上、好ましくは0.6以上となるように形成されるべきである。即ち、容器の内表面での水接触角θと油膜上での水の接触角θAが同じである場合には、被覆率Fは1.0であり、容器の内面(プラスチックの下地)の全体が油膜で覆われていることになる。
例えば、被覆率Fが上記範囲よりも小さいと、液量が多量にあっても、表面に油性液体が点在するような形態で油膜が形成され、十分な表面特性を発揮することが困難となってしまう。
τ−1=(γa/ρg)1/2
式中、γaは、油性液体と気体(空気)との間の界面張力であり、
ρは油性液体の密度であり、
gは重力加速度である。
即ち、毛管長(τ−1)以下の範囲内においては重力に比べ、毛管現象(毛管力)が支配的となる。この毛管長は、上記式から理解されるように、親油性表面層の材質にかかわらず、液によって一定であり、従って、液浸透性の凹凸面とするためには、凹部の内径を毛管長(τ−1)以下に設定すればよい。この毛管長は、油膜を形成する油性液体の種類によって異なるが、多くの油性液体で1mmを超える範囲にあるので、1mm以下の内径を有する凹部を親水性表面層の表面全体にわたって分布しておけばよい。この場合、凹部の深さやピッチ及び凹部の密度(単位面積当りの凹部の数)などは、油性液体の種類によっても異なるが、通常、油膜を形成している油性液体の量が0.2乃至50g/m2、好ましくは0.2乃至30g/m2、さらに好ましくは0.5至30g/m2、格段に好ましくは0.5乃至10g/m2の範囲に維持されるように設定しておけばよい。
本発明の包装容器においては、内容物として、油滴が水中に分散している水中油型乳化物が使用される。かかる乳化物は、例えば、日本農林規格(JAS)によりマヨネーズとして定められている食品や半固体状ドレッシングなどが代表的であるが、このような乳化物は、特に容器内に付着残存してしまい、その全量を排出することが困難であり、全量を使い切ることができず、排出されずに容器内に残ってしまう量が多いという問題のあるものである。
本発明の包装容器は、このような水中油型乳化物を内容物として収容されているが、前述した油膜の形成により、その排出性が著しく高められている。水中油型乳化物の代表的な状態は、水相中に油滴が分散した形態(O/W型)であるが、水相中に油滴が分散しており、さらにこの分散した油滴中に水相を有する水中油中水型乳化物(W/O/W型)も挙げられる。本発明においては、いずれの形態でも、油膜との親和性を低くできるため十分な撥液性が発揮可能である。
例えば、分散形態が逆の油中水型乳化物は、油分の特性が表面に多く反映されることに関連して、本発明による油膜ではその排出性を高めることができない。油膜と乳化物の親和性が高く、十分な撥液性を発揮させることができないからである。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び包装体(ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
後述の方法で成形した容量500gのボトルの胴部から10mm×60mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、3μLの純水を試験片にのせ、水接触角θを測定した。得られた水接触角を用いて、下記式(1)より、ボトル内面の潤滑液の被覆率Fを求めた。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (1)
θは、油膜が形成されている容器の内面について大気圧中で測定された水接触角
であり、
θAは、油膜を形成する油性液体について、大気圧中で測定された水接触角であ
り、
θBは、油膜を支持する容器内面(即ち、プラスチックの下地面)について、大
気圧中で測定された水接触角である。
油性液体の被覆率Fを求めるにあたり、θAとθBの値として、下記水接触角の値を用いた。
θA:80.3°
(中鎖脂肪酸トリグリセライドの液膜上での値)
θB:液体を含まずに最内層を有する多層ボトルを後述の実験例とは別途作製し、そ
の値を用いた。
内容物として下記のAからDの水中油型乳化物を用いた。
水中油型乳化物A:脂質含有量=74.7%、粘度=2500mPa・s
水中油型乳化物B:脂質含有量=73.3%、粘度=2100mPa・s
水中油型乳化物C:脂質含有量=34.0%、粘度=1260mPa・s
水中油型乳化物D:脂質含有量=24.0%、粘度=1680mPa・s
なお、粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25℃で測定した値である。
後述の方法で成形した容量500gのボトルに内容物として、水中油型乳化物A〜Dを20℃で500g充填した。
内容物充填後のボトルからシール箔を剥がし、キャップを装着して20℃にて400gの内容物を取り出した後、ボトルを倒立させて室温下で2時間放置した。
2時間放置後、ボトルを倒立した状態にして、胴部を押し、内容物を取り出す操作を2分毎に繰り返し、30分後の重量(残存内容物重量+ボトル重量)を測定した。測定後、ボトル内部に残存した内容物を水洗浄し、洗浄後のボトル重量を測定し、得られた重量の差分を求め、残存量とした。残存量が少ない程、包装体内面での滑り性に優れ、内容物が効率的に使用できる。
後述の方法で成形した多層ボトルの底から50mmの位置での胴部水平断面における層構成を偏光顕微鏡にて観察し、ボトルの胴部層構成を求めた。断面に対し、0°、90°、180°、270°の位置での層構成を観察し、4方向での平均値をボトルの層構成とした。
各種層を形成する樹脂ならびに内面に液層を形成するための油性液体として、以下のものを用意した。
最内層形成用樹脂;
高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR:0.3/10min (190℃、2.16Kg)
密度:0.922g/cm3
環状オレフィン系樹脂(COC);エチレン−テトラシクロドデセン共重合体
MFR:30g/10min (260℃、2.16Kg)
密度:1.02g/cm3
Tg:80℃
最外層形成用樹脂;
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR:0.3g/10min
密度:0.92g/cm3
第2外層用樹脂;
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR:0.3g/10min
密度:0.92g/cm3
接着剤層形成用樹脂;
無水マレイン酸変性ポリエチレン
ガスバリア層形成用樹脂;
エチレンビニルアルコール共重合体
密度:1.19g/cm3
Tg:69℃
油膜形成用油性液体;
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:28.8mN/m(23℃)
粘度:33.8mPa・s(23℃)
沸点:210℃以上(引火点:242℃(参考値))
分子量:504
作製したボトルを用い、前述の液体被覆率の測定、ボトル形状での残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
最外層:40μm
第2外層:250μm
接着材層:10μm
ガスバリア層:20μm
接着材層:10μm
最内層:80μm (最内層比20%)
最内層形成樹脂として、高圧法低密度ポリエチレン(MFR=0.3)とを用意した。
最内層形成用樹脂を、上記の樹脂に変更した以外は実験例1と同様に多層ボトルを成形した。作製したボトルを用い、前述のボトル形状での残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
最外層:60μm
第2外層:250μm
接着材層:10μm
ガスバリア層:20μm
接着材層:10μm
最内層:80μm (最内層比19%)
また、ボトル内面に油膜を形成させることにより、脂質含有量が70%以上である水中油型乳化物では最大で10.6gの残存量が低減可能であるが、脂質含有量が10〜50%の範囲である水中油型乳化物では、油膜の形成により、最大で44.3gの内容物の残存量低減が可能となっており、容器内面に油膜を形成することにより、特に、脂質含有量が10〜50%の範囲にある水中油型乳化物の残存量の低減に多大な効果が発揮できることが分かる。
Claims (5)
- 水中油型乳化物が収容された包装容器であって、該水中油型乳化物が接触する容器内面に油膜が形成されていることを特徴とする包装容器。
- 前記水中油型乳化物が、脂質成分を10〜50質量%の量で含むものである請求項1に記載の包装容器。
- 前記油膜を形成する油性液体の分子量が、200〜2000の範囲である請求項1または2に記載の包装容器。
- 前記油性液体の表面張力が、16〜40mN/mの範囲である請求項3に記載の包装容器。
- 前記油性液体が、食用油、脂肪酸トリグリセライド、フッ素系界面活性剤、或いは、シリコーンオイルである請求項4に記載の包装容器。
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