最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る電波センサは、横断歩道の開始部分のエリアであって、上記横断歩道の全部を含まないエリアである第1エリアに照射範囲を制限して電波を第1アンテナから送信可能な送信部と、上記第1エリアからの電波を受信する受信部と、上記受信部によって受信された電波に基づいて上記第1エリアにおける対象物を検出する検出部とを備える。
このように、たとえば、車両が位置する可能性が低い第1エリアに照射範囲を制限して電波を第1アンテナから送信する構成により、受信部により受信される電波に車両からの電波が含まれる可能性を低くすることができるので、車両からの電波および人間からの電波を同時に受信することにより対象物を精度よく検出することが困難となってしまう状況を回避することができる。したがって、横断歩道における対象物としてたとえば人間を精度よく検出することができる。
また、たとえば、第1エリアにおいて横断歩道を渡ろうとする人間を対象物として検出することができるので、当該人間が第1エリア外へ移動して、当該人間を検出することができなくなった後においても、移動後の当該人間が横断歩道のうち横断歩道の開始部分と異なるエリアに位置することを推定することができる。
また、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。
(2)好ましくは、上記送信部は、さらに、上記横断歩道のうち、上記第1エリアよりも上記電波センサから離れた部分を含む第2エリアに照射範囲を制限して電波を第2アンテナから送信可能であり、上記受信部は、さらに、上記第2エリアからの電波を受信し、上記検出部は、さらに、上記受信部によって受信された上記第2エリアからの電波に基づいて上記第2エリアにおける対象物を検出する。
このように、第1エリアに加えて第2エリアに照射範囲を制限して電波を第2アンテナから送信し、第2エリアにおける対象物を検出する構成により、たとえば、車両および人間が位置し得る横断歩道である第2エリアにおける車両および人間の存在状況をさらに把握することができる。
また、たとえば、第2エリアにおいて人間および車両が混在する場合において、第2エリアにおける対象物を精度よく検出することが困難であるときにおいても、第1エリアにおける対象物の検出結果に基づいて第2エリアにおける対象物の検出精度を高めることができる。
(3)より好ましくは、上記送信部は、上記第1アンテナからの電波の送信と上記第2アンテナからの電波の送信とを時間的に切り替える。
このように、第1アンテナから電波が送信されている期間と第2アンテナから電波が送信されている期間とを分離する構成により、第1アンテナから送信される電波および第2アンテナから送信される電波間の干渉を防ぐことができるので、干渉による受信特性の劣化を簡易な処理で回避することができる。
(4)好ましくは、上記電波センサは、さらに、所定の電波の周波数成分と上記受信部によって受信された電波である受信電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号、または上記受信電波、の周波数分布に関する情報である周波数分布情報を作成する分析部を備え、上記検出部は、上記分析部によって作成された上記周波数分布情報に基づいて上記対象物を検出する。
このように、対象物における各表面部分の電波センサに対する相対速度の成分のうち、電波センサに対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分である検出対象速度の分布についての情報である周波数分布情報を用いる構成により、周波数分布情報の内容は横断歩道における対象物に応じて異なることから、横断歩道における対象物を精度よく検出することができる。
(5)より好ましくは、上記検出部は、周波数および強度によって規定される基準範囲と上記周波数分布情報における上記周波数分布との関係に基づいて上記対象物として人間を検出する。
このように、基準範囲を用いて横断歩道における人間を検出する構成により、基準範囲と周波数分布との関係に基づいて横断歩道における人間を簡易かつ精度よく検出することができる。
(6)より好ましくは、上記検出部は、上記周波数分布における各周波数成分の強度と所定のしきい値との大小関係に基づいて、上記周波数分布の一部または全部である対象波形を取得し、取得した上記対象波形が上記基準範囲に継続して含まれる場合、上記対象物として人間を検出する。
横断歩道における人間からの反射波による対象波形は基準範囲に含まれる場合が多い。このため、横断歩道における人間をより精度よく検出することができる。
(7)より好ましくは、上記検出部は、上記対象波形が上記基準範囲に含まれ、かつ上記対象波形のピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値未満である場合、上記対象波形が上記基準範囲に含まれ、かつ上記ピークの強度軸方向の変動が継続して所定値未満である場合、または上記対象波形が上記基準範囲に含まれ、上記ピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値未満であり、かつ上記ピークの強度軸方向の変動が継続して所定値未満である場合のいずれか1つにおいて、上記対象物として人間を検出する。
横断歩道における人間からの反射波による対象波形のピークの周波数軸方向の変動および強度軸方向の変動の少なくとも一方は小さい場合が多い。このため、横断歩道における人間をさらに精度よく検出することができる。
(8)より好ましくは、上記検出部は、周波数および強度によって規定される基準範囲と上記周波数分布情報における上記周波数分布との関係に基づいて上記対象物として車両を検出する。
このように、基準範囲を用いて横断歩道における車両を検出する構成により、基準範囲と周波数分布との関係に基づいて横断歩道における車両を簡易かつ精度よく検出することができる。
(9)より好ましくは、上記検出部は、上記周波数分布における各周波数成分の強度と所定のしきい値との大小関係に基づいて、上記周波数分布の一部または全部である対象波形を取得し、取得した上記対象波形の少なくとも一部が上記基準範囲に継続して含まれない場合、上記対象物として車両を検出する。
横断歩道における車両からの反射波による対象波形の少なくとも一部は基準範囲に含まれない場合が多い。このため、横断歩道における車両をより精度よく検出することができる。
(10)より好ましくは、上記検出部は、上記対象波形が上記基準範囲に含まれ、かつ上記対象波形のピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値以上である場合、上記対象波形が上記基準範囲に含まれ、かつ上記ピークの強度軸方向の変動が継続して所定値以上である場合、または上記対象波形が上記基準範囲に含まれ、上記ピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値以上であり、かつ上記ピークの強度軸方向の変動が継続して所定値以上である場合のいずれか1つにおいて、上記対象物として車両を検出する。
横断歩道における車両からの反射波による対象波形のピークの周波数軸方向の変動および強度軸方向の変動の少なくとも一方は大きい場合が多い。このため、横断歩道における車両をさらに精度よく検出することができる。
(11)より好ましくは、上記検出部は、上記周波数分布における各周波数成分の強度と所定のしきい値との大小関係に基づいて、上記周波数分布の一部または全部である対象波形を取得し、取得した上記対象波形に含まれるピークの数に基づいて上記対象物を検出する。
横断歩道における車両からの反射波による対象波形に含まれるピークの数は多い場合が多く、また、横断歩道における人間からの反射波による対象波形に含まれるピークの数は少ない場合が多い。このため、対象波形に含まれるピークの数に基づいて対象物をより精度よく検出することができる。
(12)好ましくは、上記第1アンテナの指向性の方向は、上記横断歩道の横断方向に沿っている。
このような構成により、対象物の種類ごとに対象物の検出処理に適した検出対象速度を取得することができるので、対象物をより正確に検出することができる。
(13)本発明の実施の形態に係る電波センサは、横断歩道の一部または全部を含むエリアである対象エリアへ電波を送信する送信部と、上記対象エリアからの電波を受信する受信部と、所定の電波の周波数成分と上記受信部によって受信された電波である受信電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号、または上記受信電波、の周波数分布に関する情報である周波数分布情報を作成する分析部と、上記分析部によって作成された上記周波数分布情報に基づいて、上記対象エリアにおける対象物を検出する検出部とを備える。
このように、対象物における各表面部分の検出対象速度の分布についての情報である周波数分布情報を用いる構成により、周波数分布情報の内容は横断歩道における対象物に応じて異なることから、横断歩道における対象物を精度よく検出することができる。
また、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。
(14)本発明の実施の形態に係る検知方法は、電波センサにおける検知方法であって、横断歩道の開始部分のエリアであって、上記横断歩道の全部を含まないエリアである第1エリアに照射範囲を制限して電波を第1アンテナから送信するステップと、上記第1エリアからの電波を受信するステップと、受信した電波に基づいて上記第1エリアにおける対象物を検出するステップとを含む。
このように、たとえば、車両が位置する可能性が低い第1エリアに照射範囲を制限して電波を第1アンテナから送信する構成により、受信部により受信される電波に車両からの電波が含まれる可能性を低くすることができるので、車両からの電波および人間からの電波を同時に受信することにより対象物を精度よく検出することが困難となってしまう状況を回避することができる。したがって、横断歩道における対象物としてたとえば人間を精度よく検出することができる。
また、たとえば、第1エリアにおいて横断歩道を渡ろうとする人間を対象物として検出することができるので、当該人間が第1エリア外へ移動して、当該人間を検出することができなくなった後においても、移動後の当該人間が横断歩道のうち横断歩道の開始部分と異なるエリアに位置することを推定することができる。
また、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。
(15)本発明の実施の形態に係る検知方法は、電波センサにおける検知方法であって、横断歩道の一部または全部を含むエリアである対象エリアへ電波を送信するステップと、上記対象エリアからの電波を受信するステップと、所定の電波の周波数成分と受信した電波である受信電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号、または上記受信電波、の周波数分布に関する情報である周波数分布情報を作成するステップと、作成した上記周波数分布情報に基づいて、上記対象エリアにおける対象物を検出するステップとを含む。
このように、対象物における各表面部分の検出対象速度の分布についての情報である周波数分布情報を用いる構成により、周波数分布情報の内容は横断歩道における対象物に応じて異なることから、横断歩道における対象物を精度よく検出することができる。
また、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る信号制御システムの構成を示す図である。
図1を参照して、信号制御システム201は、電波センサ101と、信号制御装置151と、歩行者用信号灯器161とを備える。信号制御システム201における信号制御装置151および歩行者用信号灯器161は、交通信号機を構成し、たとえば交差点CS1の近傍に設置される。
電波センサ101は、対象エリアA1において移動する対象物Tgtを検知する動体検知センサとして機能する。ここで、対象エリアA1は、たとえば、電波センサ101の設置者であるセンサ設置者が設定するエリアである。
具体的には、図1に示すように、センサ設置者は、たとえば、道路Rd1を隔てて設置された歩道Pv1,Pv2の間に位置する横断歩道PC1を移動する歩行者Tgt2および自動車Tgt1を対象物Tgtとする場合、横断歩道PC1の全部を含むエリアを対象エリアA1として設定する。なお、センサ設置者は、たとえば、横断歩道PC1の一部を含むエリアを対象エリアA1として設定してもよい。また、センサ設置者は、たとえば、電波センサ101が自動車に取り付けられる場合において、当該自動車の前方に位置する歩行者Tgt2および自動車Tgt1を対象物Tgtとするとき、当該自動車の前方の所定範囲を対象エリアA1として設定する。
電波センサ101は、たとえば交差点CS1へ延びる道路Rd1付近に設置されている。具体的には、電波センサ101は、たとえば道路Rd1付近に設置された支柱P1に固定されている。
歩行者用信号灯器161および信号制御装置151は、たとえば支柱P1に固定されている。電波センサ101および信号制御装置151は、たとえば図示しない信号線で接続されている。信号制御装置151および歩行者用信号灯器161は、たとえば図示しない信号線で接続されている。なお、電波センサ101は、道路Rd1上に設置されてもよいし、自動車に搭載されてもよい。
電波センサ101は、対象エリアA1における対象物Tgtを検出し、検出した対象物Tgtの種類を判別する。より詳細には、電波センサ101は、たとえば信号制御装置151の制御に従って、横断歩道PC1を含む対象エリアA1へ電波を送信する。対象物Tgtは、具体的には、自動車Tgt1および歩行者Tgt2等である。対象物Tgtは、たとえば対象エリアA1内において移動しており、電波センサ101から送信される電波を反射する。
電波センサ101は、たとえば対象物Tgtにより反射された電波に基づいて対象エリアA1における対象物Tgtを検出し、検出した対象物Tgtの種類を判別する。より詳細には、電波センサ101は、たとえば対象物Tgtの種類として車両および人間を判別する。電波センサ101は、判別結果を信号制御装置151へ送信する。
歩行者用信号灯器161は、信号制御装置151の制御に従って、たとえば横断歩道PC1を横断する歩行者Tgt2に対して「すすめ」または「とまれ」を点灯して表示する。
信号制御装置151は、電波センサ101から判別結果を受信すると、受信した判別結果に基づいて歩行者用信号灯器161を制御する。
たとえば、信号制御装置151は、歩行者用信号灯器161において「すすめ」を点灯する残り時間が少ない場合、対象物Tgtの種類に応じた処理を行う。具体的には、信号制御装置151は、たとえば、電波センサ101から受信した判別結果が対象物Tgtの種類が人間であることを示すとき、残り時間の延長を行う。なお、信号制御装置151は、たとえば、「すすめ」を点灯する残り時間が少ない旨を歩行者Tgt2に音声で通知してもよい。また、信号制御装置151は、たとえば、判別結果が対象物Tgtの種類が車両であることを示すとき、残り時間の延長を行わない。
また、信号制御装置151は、たとえば、歩行者用信号灯器161において「とまれ」を点灯している場合において、判別結果が対象物Tgtの種類が人間であることを示すとき、危険である旨を歩行者Tgt2に音声で警告する。
なお、信号制御装置151は、電波センサ101から受信する判別結果に基づいて自動車Tgt1に対してサービスを提供してもよい。具体的には、信号制御装置151は、判別結果が対象物Tgtの種類が人間であることを示すとき、たとえば、横断歩道PC1における歩行者Tgt2に注意すべき旨の警告を自動車Tgt1に与える。
[電波センサの構成]
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る信号制御システムにおける電波センサの構成を示す図である。
図2を参照して、電波センサ101は、送信アンテナ1と、受信アンテナ6と、電波処理部11と、信号処理部14と、初期値設定部17とを備える。信号処理部14は、検出部41と、FFT(Fast Fourier Transform)処理部(分析部)43とを含む。なお、送信アンテナ1および受信アンテナ6は、電波センサ101の外部に設けられてもよい。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおける電波処理部の構成を示す図である。
図3を参照して、電波処理部11は、送信波処理部(送信部)21と、受信波処理部(受信部)22とを含む。送信波処理部21は、ミリ波生成部23と、方向性結合器24と、パワーアンプ25とを含む。ミリ波生成部23は、電圧発生部26と、電圧制御発振器27とを含む。受信波処理部22は、ローノイズアンプ28と、差分信号生成部29と、A/Dコンバータ(ADC)30とを含む。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る受信波処理部における差分信号生成部の構成を示す図である。
図4を参照して、差分信号生成部29は、ミキサ31と、IF(Intermediate Frequency)アンプ32と、ローパスフィルタ33とを含む。
図2〜図4を参照して、初期値設定部17は、歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の上限値および下限値、ならびに周波数軸方向の上限値および下限値を保持する。なお、歩行者範囲Rgpの詳細については後述する。
送信波処理部21は、対象エリアA1へ電波を送信アンテナ1経由で送信する。具体的には、送信波処理部21におけるミリ波生成部23は、たとえば24GHz帯の周波数を有する電波すなわちミリ波を生成し、生成したミリ波を方向性結合器24へ出力する。なお、ミリ波生成部23は、たとえば60GHz帯、76GHz帯または79GHz帯の周波数を有する電波を生成してもよい。また、ミリ波生成部23は、たとえばミリ波帯より周波数の低いマイクロ波帯の周波数を有する電波を生成してもよいし、また、ミリ波帯より周波数の高いテラヘルツ帯の周波数を有する電波を生成してもよい。
より詳細には、ミリ波生成部23における電圧発生部26は、たとえば、定電圧を生成し、生成した定電圧を電圧制御発振器27へ出力する。電圧制御発振器27は、具体的にはVCO(Voltage−controlled oscillator)であり、電圧発生部26から受ける定電圧に応じた周波数を有するミリ波帯の送信波を生成し、生成した送信波を方向性結合器24へ出力する。
方向性結合器24は、ミリ波生成部23から受ける送信波をパワーアンプ25および受信波処理部22へ分配する。パワーアンプ25は、方向性結合器24から受ける送信波を増幅し、送信アンテナ1へ出力する。
送信アンテナ1は、パワーアンプ25から受ける送信波を対象エリアA1へ送信する。送信アンテナ1は、図1に示すように、たとえば送信波の指向性の方向Dirが横断歩道PC1の横断方向に沿うように設置される。ここで、送信波の指向性の方向Dirは、たとえば電波センサ101から対象エリアA1の中心Ctrへの方向である。
好ましくは、送信アンテナ1は、たとえば、横断歩道PC1面に対して送信波の指向性の方向Dirを当該面の法線方向に射影した方向と、歩行者Tgt2が対象エリアA1における横断歩道PC1を移動する方向vmすなわち方向vm2とが平行または反平行になるように設置される。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る送信アンテナ、受信アンテナおよび対象物の配置の一例を示す図である。
図5を参照して、受信波処理部22は、対象エリアA1からの電波を受信アンテナ6経由で受信する。具体的には、受信波処理部22は、対象エリアA1からのミリ波すなわち反射波を受信アンテナ6経由で受信する。ここで、受信アンテナ6は、たとえば、対象エリアA1における対象物Tgtが送信アンテナ1から送信される送信波T1(t)を反射することにより生成される反射波R1(t)を受信可能な構成であればよい。
具体的には、受信アンテナ6は、送信アンテナ1と同じアンテナであってもよいし、異なるアンテナであってもよい。なお、送信アンテナ1および受信アンテナ6が別々のアンテナである場合、受信アンテナ6は、送信アンテナ1から離れた位置に配置されてもよいが、電波センサ101の構成を簡易にするために送信アンテナ1の近傍に配置されることが好ましい。
より詳細には、受信アンテナ6が受信する反射波には、たとえば、対象エリアA1内に位置する対象物Tgtの表面の一部である表面部分Piが送信アンテナ1により送信された送信波を反射することによって発生する部分反射波が含まれる。
ここで、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った表面部分Piの移動速度を検出対象速度vdiと定義する。言い換えると、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った受信アンテナ6に対する表面部分Piの相対速度の成分が検出対象速度vdiである。
たとえば、受信アンテナ6に対する表面部分Piの相対速度を部分速度vpiと定義すると、検出対象速度vdiは、表面部分Piから受信アンテナ6への方向の単位ベクトルndiと部分速度vpiとの内積で表される。なお、電波センサ101は、たとえば支柱P1等の地面に対して動かないものに固定されていてもよいし、地面に対して動くものに固定されていてもよい。たとえば電波センサ101が支柱P1に固定されている場合、受信アンテナ6および対象エリアA1は地面に対して固定されるので、部分速度vpiは、表面部分Piの地面に対する相対速度でもある。
対象物Tgtは、形状を維持する剛体であってもよいし、形状を変える非剛体であってもよい。具体的には、対象物Tgtが自動車Tgt1である場合、対象物Tgtは剛体であり、また、対象物Tgtが歩行者Tgt2である場合、対象物Tgtは非剛体である。
受信アンテナ6が受信する対象物Tgtにおける表面部分Piからの部分反射波の周波数f1riは、送信波の周波数f1に対して、表面部分Piに対応する検出対象速度vdiに応じてシフトする。また、部分反射波の振幅は、表面部分Piの反射断面積σiに応じた振幅となる。
より詳細には、送信波T1(t)が以下の式(1)により表される場合において、たとえば受信アンテナ6が送信アンテナ1の近傍に配置されているとき、部分反射波R1i(t)は、四分一 浩二、外2名、”拡大するミリ波技術の応用”、[online]、[平成26年1月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.spc.co.jp/spc/pdf/giho21_09.pdf〉(非特許文献1)、または稲葉 敬之、桐本 哲郎、”車載用ミリ波レーダ”、自動車技術、2010年2月、第64巻、第2号、P.74−79(非特許文献2)に示すように以下の式(2)により表される。
ここで、φ1は初期位相である。Aは送信波の振幅である。Liは受信アンテナ6および表面部分Pi間の距離である。cは光速である。aiはたとえば振幅A、送信アンテナ1および受信アンテナ6のアンテナゲイン、送信波の波長、距離Liならびに反射断面積σi等により定まる値である。
部分反射波R1i(t)の周波数f1riは、式(2)に示すように、送信波T1(t)の周波数f1に対して、f1×(2×vdi/c)を加えた周波数となる。具体的には、表面部分Piが受信アンテナ6へ近づく方向へ移動するとき、vdiが正となるので周波数f1riは周波数f1より高くなり、また、表面部分Piが受信アンテナ6から遠ざかる方向へ移動するとき、vdiが負となるので周波数f1riは周波数f1より低くなる。
全対象物、具体的には自動車Tgt1および歩行者Tgt2からのドップラー反射波R1d(t)は、以下の式(3)により表される。
ここで、Jは全対象物における表面部分Piの数である。また、受信アンテナ6が受信する反射波R1(t)には、一般に、ドップラー反射波R1d(t)、および対象物Tgt以外の部分からの非ドップラー反射波R1nd(t)が含まれる。したがって、反射波R1(t)は、ドップラー反射波R1d(t)および非ドップラー反射波R1nd(t)の重ね合わせとなり、以下の式(4)により表される。
ここで、対象物Tgt以外の部分の検出対象速度がゼロである状況、すなわち非ドップラー反射波R1nd(t)の周波数が送信波T1(t)の周波数f1と同じである状況を想定する。
再び図2〜図4を参照して、受信波処理部22におけるローノイズアンプ28は、受信アンテナ6が受信した反射波R1(t)を増幅し、差分信号生成部29へ出力する。
差分信号生成部29は、所定の電波、具体的には方向性結合器24から受ける送信波T1(t)と、ローノイズアンプ28から受ける反射波R1(t)とを乗算し、差分信号および和周波信号を生成する。差分信号生成部29は、生成した差分信号および和周波信号のうち差分信号をA/Dコンバータ30へ出力する。
より詳細には、差分信号生成部29におけるミキサ31は、送信波T1(t)と反射波R1(t)とを乗算し、送信波T1(t)の周波数成分と反射波R1(t)の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号および両周波数成分の和の周波数成分を有する和周波信号を生成する。
ミキサ31において、送信波T1(t)と反射波R1(t)に含まれる部分反射波R1i(t)とから生成される部分差分信号B1i(t)は、以下の式(5)により表される。
ここで、K1iは部分差分信号の振幅である。−4π×f1×Li/cが遅延位相θ1iである。2×f1×vdi/cがドップラー周波数f1diである。また、ドップラー反射波R1d(t)に基づくドップラー差分信号B1d(t)は、以下の式(6)により表される。
ここで、Jは、式(3)の場合と同様に、全対象物における表面部分Piの数である。また、非ドップラー反射波R1nd(t)に基づく差分信号は、非ドップラー反射波R1nd(t)の周波数が送信波T1(t)の周波数f1と同じであるため、直流成分DC1となる。したがって、反射波R1(t)に基づく差分信号B1(t)は、以下の式(7)により表される。
IFアンプ32は、たとえば低周波数帯から中間周波数帯にかけて大きな増幅率を有するアンプであり、ミキサ31において生成された差分信号B1(t)および和周波信号のうち差分信号B1(t)を大きな増幅率で増幅し、増幅した差分信号B1(t)をローパスフィルタ33へ出力する。
ローパスフィルタ33は、IFアンプ32において増幅された差分信号B1(t)の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分、たとえば1kHz以上の成分を減衰させる。
A/Dコンバータ30は、たとえば所定のサンプリング周波数を用いて差分信号B1(t)のサンプリング処理を行う。より詳細には、A/Dコンバータ30は、差分信号生成部29から受ける差分信号B1(t)を、たとえば所定のサンプリング周波数を用いてmビット(mは2以上の自然数)のデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を信号処理部14へ出力する。
信号処理部14は、受信波処理部22から受けるデジタル信号を処理する。より詳細には、信号処理部14におけるFFT処理部43は、A/Dコンバータ30から受けるデジタル信号に基づいて、差分信号B1(t)の周波数分布に関する情報である周波数分布情報を作成する。
具体的には、FFT処理部43は、たとえば、A/Dコンバータ30から受けるデジタル信号を所定の観測時間Tobs、具体的には100ミリ秒蓄積する。蓄積されたデジタル信号は、観測時間Tobsに含まれる各サンプリングタイミングtsにおける差分信号B1(ts)の振幅、すなわち時間スペクトルを示す。
FFT処理部43は、時間スペクトルを高速フーリエ変換し、観測時間Tobsにおける差分信号B1(t)の周波数スペクトルに関する情報を周波数分布情報として作成する。以下、当該周波数スペクトルをドップラースペクトルDS1とも称する。具体的には、ドップラースペクトルDS1は、観測時間Tobsにおける差分信号B1(t)に含まれる各周波数成分の振幅を示す。また、周波数分布情報は、たとえばドップラースペクトルDS1の各ポイントを示す座標データである。
より詳細には、ドップラースペクトルDS1の横軸はたとえばドップラー周波数f1dである。ここで、式(5)に基づいてドップラー周波数f1dから検出対象速度vdをc×f1d/2/f1として算出することが可能である。なお、ドップラースペクトルDS1では、ドップラー周波数f1dが正の値を有するので、検出対象速度vdは正の値を有する。言い換えると、ドップラー周波数f1dから検出対象速度vdの大きさを算出することが可能である。したがって、ドップラースペクトルDS1の横軸を検出対象速度vdの大きさに変換することが可能である。
また、ドップラースペクトルDS1の縦軸は、たとえば受信波処理部22が対象エリアA1から受信アンテナ6経由で受信する反射波の強度すなわち反射強度Irである。
また、ドップラースペクトルDS1は、対象物Tgtにおける各表面部分の検出対象速度vdiの分布を示す。言い換えると、ドップラースペクトルDS1において、たとえばドップラー周波数f1dkにおける反射強度Irkは、ドップラー周波数f1dkに応じた検出対象速度を有する各表面部分からの反射波を重ね合わせた場合の強度である。
FFT処理部43が高速フーリエ変換処理の対象とする時間スペクトルは離散的なデータであるので、ドップラースペクトルDS1は、離散的なデータにより構成される。以下、ドップラースペクトルDS1を構成する離散的なデータをDS信号Sf[n]とも称する。なお、FFT処理部43は、たとえば、連続的な時間スペクトルを高速フーリエ変換処理の対象としてもよい。
DS信号Sf[n]は、たとえばインデックスnを有する配列である。インデックスnは、たとえばゼロから(nmax−1)までの整数である。nmaxは、たとえばDS信号Sf[n]の長さである。DS信号Sf[n]のデータ間隔dfすなわちドップラースペクトルの分解能は、たとえば観測時間Tobsの逆数程度である。また、インデックスnに対応する周波数は、たとえばdf×nである。したがって、DS信号Sf[n]は、たとえば周波数(df×n)における反射強度Irを示す。
FFT処理部43は、作成したドップラースペクトルDS1に関する情報すなわち周波数分布情報を検出部41へ出力する。
(歩行者のドップラースペクトルの特徴)
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおけるFFT処理部が生成する歩行者のドップラースペクトルの一例を示す図である。
図6には、たとえば、対象エリアA1において対象物Tgtである歩行者Tgt2、具体的には1または複数の歩いている人間および1または複数の走行中の自転車が、図1に示す横断歩道PC1の横断方向に沿って移動している場合のドップラースペクトルDS1mが示される。横軸は、ドップラー周波数f1dすなわち検出対象速度vdの大きさを示し、縦軸は、反射強度Irを示す。
歩行者Tgt2は、たとえば、横断歩道PC1の横断方向すなわち送信波の指向性の方向Dirに沿ってほぼ一定の速度で移動するため、歩行者Tgt2の検出対象速度vdの大きさすなわち|vd|は、継続して一定の範囲に含まれる。ここで、|vd|は、検出対象速度vdの絶対値を表す。
具体的には、歩行者Tgt2の|vd|すなわちドップラー周波数f1dは、たとえば、ドップラースペクトルDS1mにおける周波数軸方向、具体的にはドップラー周波数f1d軸方向における50Hz以上かつ700Hz以下の範囲に継続して含まれる。ここで、50Hzおよび700Hzのドップラー周波数f1dは、たとえば、1.1キロメートル毎時および15キロメートル毎時の|vd|にそれぞれ相当する。
また、たとえば、歩行者Tgt2の反射断面積は、自動車Tgt1の反射断面積と比べて小さいので、歩行者Tgt2の反射強度Irは、一定のレベル以下になる場合が多い。具体的には、歩行者Tgt2の反射強度Irは、たとえば、−90dBm以上かつ−60dBm以下の範囲に継続して含まれる。
以下、図6に示すように、ドップラー周波数f1dが50Hz以上かつ700Hz以下を満たし、かつ反射強度Irが−90dBm以上かつ−60dBm以下を満たす範囲を基準範囲すなわち歩行者範囲Rgpと定義する。
なお、歩行者範囲Rgpは、上記範囲に限定されるものではない。たとえば、電波センサ101が用いる送信波T1(t)の周波数に応じて、歩行者範囲Rgpの周波数軸方向の下限値および上限値を適宜設定してもよい。また、たとえば、電波センサ101の位置および向き、ならびに電波センサ101の送信特性および受信特性等に応じて、歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向、具体的には反射強度Ir軸方向の下限値および上限値を適宜設定してもよい。
[対象波形の定義]
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおけるFFT処理部が生成するドップラースペクトルの一例を模式的に示す図である。
図7を参照して、ドップラースペクトルを構成するDS信号Sf[n]において、所定のしきい値Tha、具体的には歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の下限値である−90dBm以上の反射強度Irを有し、かつ連続するDS信号Sf[n]を対象波形Wと定義する。
また、しきい値Thaと対象波形Wとの2つの交点NL,NUにおけるドップラー周波数f1dのうち、低周波側の交点NLにおけるドップラー周波数f1dを下限周波数fLと定義する。また、高周波側の交点NUにおけるドップラー周波数f1dを上限周波数fUと定義する。
言い換えると、下限周波数fL以上かつ上限周波数fU以下の周波数範囲におけるDS信号Sf[n]が対象波形Wである。
たとえば、図7に示す対象波形Wには2つのピークが含まれる。なお、対象波形Wには、1つのピークが含まれてもよいし、3つ以上のピークが含まれてもよい。
対象波形Wに含まれるピークのうち、反射強度Irが最大のピークをメインピークMpと定義する。また、対象波形Wに含まれるピークのうち、メインピークMp以外のピークをサブピークSpと定義する。また、メインピークMpの反射強度Irを対象波形強度と定義する。以下、下限周波数fL、上限周波数fUおよび対象波形強度を対象波形Wの波形特性とも称する。
対象波形Wの波形特性が以下の所定条件すなわち波形包含条件を満たす場合、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれると定義する。
すなわち、下限周波数fLが歩行者範囲Rgpの周波数軸方向の下限値以上であり、上限周波数fUが歩行者範囲Rgpの周波数軸方向の上限値以下であり、かつ対象波形強度が歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の上限値以下である場合、対象波形Wの波形特性が波形包含条件を満たし、図7に示すように、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれる。
再び図6を参照して、ドップラースペクトルDS1mには、ドップラー周波数が60〜70Hz、100〜130Hzおよび410〜475Hzにおいて、それぞれWm1、Wm2およびWm3の3つの対象波形が含まれる。
対象波形Wm1〜Wm3の波形特性は波形包含条件を満たすので、対象波形Wm1〜Wm3は、歩行者範囲Rgpに含まれる。対象波形Wm1,Wm3には、1つのメインピークMpがそれぞれ含まれる。また、対象波形Wm2には、1つのメインピークMpおよび1つのサブピークSp1が含まれる。
上述したように、歩行者Tgt2は、たとえば、横断歩道PC1の横断方向に沿ってほぼ一定の速度で移動するため、ある一定の時間において、歩行者Tgt2による対象波形Wの波形特性は波形包含条件を継続して満たす場合が多い。すなわち、歩行者Tgt2による対象波形Wは、継続して歩行者範囲Rgpに含まれる場合が多い。
(自動車のドップラースペクトルの特徴)
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおけるFFT処理部が生成する自動車のドップラースペクトルの一例を示す図である。
図8には、たとえば、対象エリアA1において対象物Tgtである自動車Tgt1が移動している場合のドップラースペクトルDS1cが示される。横軸は、ドップラー周波数f1dすなわち|vd|を示し、縦軸は、反射強度Irを示す。なお、図8に示す横軸および縦軸のスケールは、図6に示す横軸および縦軸のスケールとそれぞれ同じである。
ドップラースペクトルDS1cにおいて、ドップラー周波数が10〜60Hz、110〜520Hzおよび590〜620Hzにおいて、それぞれWc1、Wc2およびWc3の3つの対象波形が含まれる。対象波形Wc1,Wc3には、1つのメインピークMpがそれぞれ含まれる。また、対象波形Wc2には、1つのメインピークMpと9つのサブピークSp1〜Sp9とが含まれる。
また、対象波形Wc1,Wc2の波形特性は波形包含条件を満たさないので、対象波形Wc1,Wc2の少なくとも一部は、歩行者範囲Rgpに含まれない。また、対象波形Wc3の波形特性は波形包含条件を満たすので、対象波形Wc3は、歩行者範囲Rgpに含まれる。
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサに対する自動車の検出対象速度の変化の一例を示す図である。
図9を参照して、たとえば、自動車Tgt1が一定の速度vc2で横断歩道PC1を直角に横切る場合、電波センサ101に対する自動車Tgt1の検出対象速度vdが自動車Tgt1の位置に応じて変化する。具体的には、自動車Tgt1が移動することにより位置をPosc1、Posc2およびPosc3に変える際、検出対象速度vdは、それぞれvcd1、ゼロおよびvcd3と変化する。
したがって、自動車Tgt1が位置をPosc1からPosc2へ変える際、自動車Tgt1による対象波形は高周波側から低周波側へ移動する。その後、自動車Tgt1が位置をPosc2からPosc3へ変える際、自動車Tgt1による対象波形は、低周波側から高周波側へ移動する。
すなわち、ドップラースペクトルDC1における自動車Tgt1による対象波形は、時間と共に高周波側から低周波側へ移動し、その後低周波側から高周波側へ移動する。なお、自動車Tgt1によるドップラースペクトルDC1を観測する場合において、時間と共に高周波側から低周波側へ移動する対象波形だけ観測されたり、時間と共に低周波側から高周波側へ移動する対象波形だけ観測されたりするときもある。
より詳細には、たとえば、自動車Tgt1が電波センサ101の送信波の指向性の方向Dirの先に位置するPosc2の近傍を移動する場合、電波センサ101に対する自動車Tgt1の|vd|がほぼゼロであるため、図8に示す対象波形Wc1のように下限周波数fLが歩行者範囲Rgpの周波数軸方向の下限値より低周波側に観測される。
また、自動車Tgt1の反射断面積は歩行者Tgt2の反射断面積より大きいため、図8に示す対象波形Wc2のように対象波形強度が歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の上限値より大きくなることが多い。
また、たとえば、トラック等の全長の長い自動車Tgt1では自動車Tgt1の前部の表面部分PfがPosc2に位置する場合において、自動車Tgt1の後部の表面部分PrがPosc1に位置するときがある。このとき、表面部分Pfに対応する|vd|がゼロであるのに対して、表面部分Prに対応する|vd|が|vd1|になるので、ドップラースペクトルDC1における周波数軸方向において、ゼロから2×f1×|vd1|/cにわたる幅の広い対象波形が観測される。具体的には、たとえば図8に示す対象波形Wc2のような幅が広い対象波形である。また、自動車Tgt1では、各表面部分の反射断面積が大きく異なる場合が多い。このため、たとえば図8に示す対象波形Wc2のように、自動車Tgt1による対象波形に含まれるピークの数が多くなる場合が多い。
また、図9に示すような、自動車Tgt1が一定の速度vc2で横断歩道PC1を直角に横切る場合と異なり、たとえば、交差点CS1において自動車Tgt1が右折または左折を行うことにより横断歩道PC1を斜めに横切る場合、電波センサ101に対する自動車Tgt1の|vd|が大きくなる。このため、自動車の対象波形の上限周波数fUが歩行者範囲Rgpの周波数軸方向の上限値より高周波側に観測されることがある。
以上をまとめると、自動車Tgt1による対象波形の波形特性は、波形包含条件を瞬間的にまたは継続して満たさない場合が多い。言い換えると、自動車Tgt1による対象波形の少なくとも一部は、瞬間的にまたは継続して歩行者範囲Rgpに含まれない場合が多い。また、自動車Tgt1による対象波形には、歩行者Tgt2による対象波形と比べて、より多数のピークが含まれる場合が多い。
また、ドップラースペクトルDC1において、自動車Tgt1による対象波形のピークの周波数軸方向の変動は、歩行者Tgt2による対象波形の周波数軸方向の変動と比べて大きい場合が多い。
具体的には、たとえば、自動車Tgt1による対象波形のメインピークMpのドップラー周波数fMpの増分の大きさは、歩行者Tgt2による対象波形のメインピークMpのドップラー周波数fMpの増分の大きさと比べて大きい場合が多い。
また、ドップラースペクトルDC1において、自動車Tgt1による対象波形のピークの反射強度軸方向の変動は、歩行者Tgt2による対象波形のピークの反射強度軸方向の変動と比べて大きい場合が多い。
具体的には、たとえば、自動車Tgt1による対象波形の対象波形強度の増分の大きさは、歩行者Tgt2による対象波形のピークの対象波形強度の増分の大きさと比べて大きい場合が多い。
より詳細には、自動車Tgt1による対象波形では、当該対象波形が歩行者範囲Rgpに含まれる場合においても、当該対象波形のピークの周波数軸方向の変動が所定の周波数変化許容値Qf以上、および当該ピークの反射強度軸方向の変動が所定の強度変化許容値Qi以上の少なくとも一方を満たす場合が多い。
一方、歩行者Tgt2による対象波形では、当該対象波形が歩行者範囲Rgpに含まれ、当該対象波形のピークの周波数軸方向の変動が継続して周波数変化許容値Qf未満であり、かつ当該ピークの反射強度軸方向の変動が継続して強度変化許容値Qi未満である場合が多い。
これは、歩行者Tgt2は横断歩道PC1の横断方向に沿ってほぼ一定の速度で移動するのに対して、自動車Tgt1は、|vd|を大きく変化させながら横断歩道PC1を横切るためである。
[歩行者範囲Rgpに基づく対象物の検出処理]
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る信号処理部における検出部の構成を示す図である。
図10を参照して、検出部41は、スペクトル解析部51と、バッファ52と、カウンタ53と、種類確定部54とを含む。スペクトル解析部51は、対象波形取得部55と、波形包含条件判定部56と、ピーク変動取得部57とを含む。カウンタ53は、カウント結果としてカウント値Cntを出力する。
検出部41は、たとえば、FFT処理部43によって作成されたドップラースペクトルDS1に関する情報に基づいて対象物Tgtを検出する。具体的には、検出部41は、ドップラー周波数f1dおよび反射強度Irによって規定される歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1との関係に基づいて対象物Tgtとして人間または車両を検出する、言い換えると、対象エリアA1において対象物Tgtとして人間または車両のいずれが存在するかを判断する。
より詳細には、検出部41におけるバッファ52は、ドップラースペクトルDS1に関する情報を保持する。バッファ52に保持されたドップラースペクトルDS1の内容は、たとえば、100ミリ秒ごとにFFT処理部43から受けるドップラースペクトルDS1の内容に更新される。
スペクトル解析部51は、たとえば、バッファ52に保持されたドップラースペクトルDS1の内容が更新されるたびに、更新された内容のドップラースペクトルDS1を解析する。
より詳細には、スペクトル解析部51における対象波形取得部55は、たとえば初期値設定部17が保持する歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の下限値、具体的には−90dBmをしきい値Thaとして設定する。
そして、対象波形取得部55は、ドップラースペクトルDS1における各周波数成分の反射強度Irとしきい値Thaとの大小関係に基づいて、ドップラースペクトルDS1の一部または全部である対象波形Wを取得する。
具体的には、対象波形取得部55は、バッファ52に保持されたドップラースペクトルDS1を構成するDS信号Sf[n]において、しきい値Tha以上の反射強度Irを有し、かつ連続するDS信号Sf[n]を対象波形Wとして取得する。なお、対象波形取得部55は、たとえば、1つの対象波形Wを取得してもよいし、複数の対象波形Wを取得してもよい。
対象波形取得部55は、取得した対象波形Wを波形包含条件判定部56およびピーク変動取得部57へ出力する。
また、対象波形取得部55は、たとえば、ドップラースペクトルDS1において、しきい値Tha以上の反射強度Irを有するDS信号Sf[n]がないために対象波形Wを取得できない場合、リセット通知をピーク変動取得部57へ出力するとともに、カウンタ53のカウント値Cntをゼロにリセットする。
波形包含条件判定部56は、対象波形取得部55から対象波形Wを受けると、受けた対象波形Wが、初期値設定部17が保持する歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の上限値および下限値、ならびに周波数軸方向の上限値および下限値により定まる歩行者範囲Rgp、に含まれるか否かを判定する。
また、波形包含条件判定部56は、たとえば、対象波形取得部55から複数の対象波形Wを受ける場合、受けた複数の対象波形Wのすべてが歩行者範囲Rgpに含まれるか否かを判定する。
具体的には、波形包含条件判定部56は、たとえば、対象波形Wの下限周波数fL、上限周波数fUおよび対象波形強度すなわち波形特性を取得し、歩行者範囲Rgpに基づいて、取得した波形特性が波形包含条件を満たすか否かを判定する。
波形包含条件判定部56は、たとえば、対象波形Wの波形特性が波形包含条件を満たすと判定する場合、対象波形Wの波形特性が波形包含条件を満たす旨を示す条件適合通知をピーク変動取得部57へ出力する。
一方、波形包含条件判定部56は、たとえば、対象波形Wの波形特性が波形包含条件を満たさないと判定する場合、すなわち取得した対象波形Wの少なくとも一部が歩行者範囲Rgpに含まれない場合、カウンタ53のカウント値Cntをデクリメントする。
ピーク変動取得部57は、対象波形取得部55から対象波形Wを受けると、受けた対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動Vfおよび当該ピークの反射強度軸方向の変動Viを取得する。
具体的には、ピーク変動取得部57は、たとえば、対象波形Wに含まれるメインピークMpを特定し、特定したメインピークMpの反射強度Irすなわち対象波形強度、およびメインピークMpのドップラー周波数fMpを取得する。ピーク変動取得部57は、たとえば、取得した対象波形強度およびドップラー周波数fMpを保存する。
そして、ピーク変動取得部57は、たとえば、波形包含条件判定部56から受ける条件適合通知が、対象波形取得部55からリセット通知を受けてから最初の条件適合通知である場合、ゼロを変動VfおよびViとして取得する。
また、ピーク変動取得部57は、たとえば、波形包含条件判定部56から受ける条件適合通知が、対象波形取得部55からリセット通知を受けてから2回目以降の条件適合通知である場合、以下の処理を行う。
すなわち、ピーク変動取得部57は、たとえば、前回条件適合通知を受けたときに保存したドップラー周波数fMpと今回取得したドップラー周波数fMpとの差の絶対値すなわち増分の大きさを変動Vfとして取得する。同様に、ピーク変動取得部57は、たとえば、前回条件適合通知を受けたときに保存した対象波形強度と今回取得した対象波形強度との差の絶対値すなわち増分の大きさを変動Viとして取得する。
ピーク変動取得部57は、たとえば、取得した変動Vfが周波数変化許容値Qf未満であり、かつ変動Viが強度変化許容値Qi未満である場合、カウンタ53のカウント値Cntをインクリメントする。
一方、ピーク変動取得部57は、たとえば、取得した変動Vfが周波数変化許容値Qf以上であるか、または変動Viが強度変化許容値Qi以上である場合、カウンタ53のカウント値Cntをデクリメントする。
種類確定部54は、カウンタ53のカウント値Cntを監視し、カウント値Cntに基づいて対象物Tgtの種類を確定する。
具体的には、たとえば、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、変動Vfが周波数変化許容値Qf未満であり、かつ変動Viが強度変化許容値Qi未満である状態が継続することにより、カウンタ53のカウント値Cntが、たとえば正の値を有する所定のしきい値Thmより大きくなる。この場合、種類確定部54は、対象物Tgtの種類を人間と確定し、確定結果を信号制御装置151へ送信する。
また、たとえば、対象波形Wの少なくとも一部が歩行者範囲Rgpに継続して含まれないことにより、カウンタ53のカウント値Cntがたとえば負の値を有する所定のしきい値Thcより小さくなる。あるいは、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、変動Vfが周波数変化許容値Qf以上であり、かつ変動Viが強度変化許容値Qi以上である状態が継続することにより、カウンタ53のカウント値Cntがたとえば負の値を有する所定のしきい値Thcより小さくなる。これらの場合、種類確定部54は、対象物Tgtの種類を車両と確定し、確定結果を信号制御装置151へ送信する。
なお、種類確定部54は、対象波形Wの少なくとも一部が歩行者範囲Rgpに継続して含まれない場合に、対象物Tgtの種類を車両と確定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。種類確定部54は、たとえば、対象波形Wの少なくとも一部が歩行者範囲Rgpに含まれなくなったタイミングにおいて、対象物Tgtの種類を車両と確定する構成であってもよい。具体的には、種類確定部54は、たとえば、カウンタ53のカウント値Cntがデクリメントされたタイミングにおいて、対象物Tgtの種類を車両と確定してもよい。
また、ピーク変動取得部57は、メインピークMpの変動に基づいてカウンタ53のカウント値Cntのインクリメントまたはデクリメントを行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。ピーク変動取得部57は、たとえば、対象波形WのメインピークMpの変動、およびサブピークSpの変動を総合的に判断し、総合的に判断した結果に基づいてカウンタ53のカウント値Cntのインクリメントまたはデクリメントを行う構成であってもよい。
また、ピーク変動取得部57は、連続して作成されたドップラースペクトルにおいて、対象波形Wのピーク周波数の増分の大きさを対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動として取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。ピーク変動取得部57は、たとえば、連続して作成されたドップラースペクトルにおいて、対象波形Wのピーク周波数の増加割合を対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動として取得する構成であってもよい。
また、ピーク変動取得部57は、連続して作成されたドップラースペクトルにおいて、対象波形Wの反射強度Irの増分の大きさを対象波形Wのピークの反射強度軸方向の変動として取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。ピーク変動取得部57は、たとえば、連続して作成されたドップラースペクトルにおいて、対象波形Wの反射強度Irの増加割合を対象波形Wのピークの反射強度軸方向の変動として取得する構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る検出部41は、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動が継続して周波数変化許容値Qf未満であり、かつ当該ピークの反射強度軸方向の変動が継続して強度変化許容値Qi未満である場合、対象物Tgtとして人間を検出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。検出部41は、たとえば、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値未満である場合、または対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ対象波形Wのピークの反射強度軸方向の変動が継続して所定値未満である場合のいずれか一方において、対象物Tgtとして人間を検出する構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る検出部41は、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動が継続して周波数変化許容値Qf以上であり、かつ当該ピークの反射強度軸方向の変動が継続して強度変化許容値Qi以上である場合、対象物Tgtとして車両を検出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。検出部41は、たとえば、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値以上である場合、または対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ対象波形Wのピークの反射強度軸方向の変動が継続して所定値以上である場合のいずれか一方において、対象物Tgtとして車両を検出する構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る検出部41は、歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1との関係に基づいて対象物Tgtとして人間および車両を検出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。検出部41は、たとえば、歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1との関係に基づいて対象物Tgtとして人間および車両のいずれか一方を検出可能な構成であってもよい。
[ピークの数に基づく対象物の検出処理]
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る信号処理部における検出部の変形例の構成を示す図である。
図11を参照して、検出部41の変形例である検出部44は、ピーク数カウント部46と、比較部47と、種類確定部48と、バッファ52と、対象波形取得部55とを含む。バッファ52および対象波形取得部55の動作は、図10に示すバッファ52および対象波形取得部55とそれぞれ同様である。
検出部44は、対象波形Wに含まれるピークの数に基づいて対象物Tgt、具体的には車両または歩行者を検出する、言い換えると、対象エリアA1において対象物Tgtとして人間または車両のいずれが存在するかを判断する。
より詳細には、検出部44におけるバッファ52は、ドップラースペクトルDS1を保持する。対象波形取得部55は、たとえば初期値設定部17が保持する歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の下限値、具体的には−90dBmをしきい値Thaとして設定する。
そして、対象波形取得部55は、バッファ52に保持されたドップラースペクトルDS1を構成するDS信号Sf[n]において、しきい値Tha以上の反射強度Irを有し、かつ連続するDS信号Sf[n]を対象波形Wとして取得し、取得した対象波形Wをピーク数カウント部46へ出力する。
ピーク数カウント部46は、対象波形取得部55から対象波形Wを受けると、受けた対象波形Wに含まれるピークの数を算出する。具体的には、ピーク数カウント部46は、たとえば、図6に示すドップラースペクトルDS1mにおける対象波形Wm1,Wm2,Wm3を対象波形取得部55から受けると、受けた対象波形Wm1,Wm2,Wm3のそれぞれに1個,2個,1個のピークが含まれると判断する。
また、ピーク数カウント部46は、たとえば、図8に示すドップラースペクトルDS1cにおける対象波形Wc1,Wc2,Wc3を対象波形取得部55から受けると、受けた対象波形Wc1,Wc2,Wc3のそれぞれに1個,10個,1個のピークが含まれると判断する。ピーク数カウント部46は、算出したピークの数を比較部47へ出力する。
比較部47は、ピーク数カウント部46からピークの数を受けると、受けたピークの数と所定のしきい値Thpとを比較する。より詳細には、比較部47は、たとえば、ピーク数カウント部46から受けるピークの数がしきい値Thpより小さい場合、ピーク数不足通知を種類確定部48へ出力する。また、比較部47は、たとえば、ピーク数カウント部46から受けるピークの数がしきい値Thp以上である場合、ピーク数充足通知を種類確定部48へ出力する。
たとえば、図6に示す歩行者Tgt2による対象波形Wm1,Wm2,Wm3に含まれるピークの数は、それぞれ1個,2個,1個と少ないため、各ピークの数がしきい値Thpより小さくなり、比較部47は、ピーク数不足通知を種類確定部48へ出力する。また、図8に示す自動車Tgt1による対象波形Wc1,Wc2,Wc3のうち、対象波形Wc2に含まれるピークの数は10個と多いため、対象波形Wc2に含まれるピークの数がしきい値Thp以上となり、比較部47は、ピーク数充足通知を種類確定部48へ出力する。
種類確定部48は、比較部47におけるピークの数としきい値Thpとの比較結果に基づいて対象物Tgtの種類を確定する。具体的には、種類確定部48は、たとえば、対象波形Wに含まれるピークの数がしきい値Thpより小さい旨を示すピーク数不足通知を比較部47から受けると、対象物Tgtの種類を人間と確定し、確定結果を信号制御装置151へ送信する。また、種類確定部48は、たとえば、対象波形Wに含まれるピークの数がしきい値Thp以上である旨を示すピーク数充足通知を比較部47から受けると、対象物Tgtの種類を車両と確定し、確定結果を信号制御装置151へ送信する。
なお、比較部47は、ピーク数カウント部46から受けるピークの数と1種類のしきい値Thpとを比較する構成であるとしたが、これに限定するものではない。比較部47は、たとえば、ピーク数カウント部46から受けるピークの数と2種類以上のしきい値とを比較する構成であってもよい。具体的には、比較部47は、たとえば、ピークの数が所定のしきい値Thpc以上である場合、ピーク数充足通知を種類確定部48へ出力し、また、ピークの数がしきい値Thpcより小さい所定のしきい値Thpm以下である場合、ピーク数不足通知を種類確定部48へ出力してもよい。
また、ピーク数カウント部46は、対象波形Wに含まれるピークの数を算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。ピーク数カウント部46は、たとえば、対象波形Wに含まれるサブピークの数を算出する構成であってもよい。
[動作]
図12は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサが対象エリアにおける対象物を検出する際の動作手順を定めたフローチャートである。信号制御システム201における電波センサ101は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図12を参照して、まず、電波センサ101は、横断歩道PC1の一部または全部を含むエリアである対象エリアA1へ送信波T1(t)を送信する(ステップS2)。
次に、電波センサ101は、対象エリアA1から反射波R1(t)を受信する(ステップS4)。
次に、電波センサ101は、受信した電波である反射波R1(t)と送信波T1(t)との差分信号B1(t)を生成し、生成した差分信号B1(t)を高速フーリエ変換処理することにより、差分信号B1(t)の周波数分布であるドップラースペクトルDS1に関する情報すなわち周波数分布情報を作成する(ステップS6)。
次に、電波センサ101は、作成したドップラースペクトルDS1に関する情報に基づいて対象エリアA1における対象物Tgtを検出する(ステップS8)。
図13は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおける検出部が対象エリアにおける対象物を検出する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図13は、図12のステップS8において、検出部41による対象エリアA1における対象物Tgtの検出動作の詳細を示している。
電波センサ101では、たとえば、観測時間Tobsが1つの観測サイクルであり、1つの観測サイクルの間に送信した送信波T1(t)に対する反射波R1(t)に基づいてドップラースペクトルDS1が作成される。電波センサ101における検出部41は、たとえば、ドップラースペクトルDS1が作成されるごとに、作成されたドップラースペクトルDS1を解析し、解析結果に基づいて対象物Tgtを検出する。
まず、検出部41における対象波形取得部55は、たとえば、バッファ52におけるドップラースペクトルDS1の内容が更新されると、更新されたドップラースペクトルDS1において、しきい値Tha以上の反射強度Irを有し、かつ連続するDS信号Sf[n]を対象波形Wとして取得する(ステップS102)。
次に、対象波形取得部55は、たとえば、対象波形Wを取得できない場合(ステップS102でNO)、カウンタ53のカウント値Cntをゼロにリセットし、バッファ52の内容が更新されるまで待機する(ステップS104)。
一方、波形包含条件判定部56は、対象波形取得部55により対象波形Wが取得された場合(ステップS102でYES)、当該対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれるか否かを判定する(ステップS106)。
次に、ピーク変動取得部57は、波形包含条件判定部56により対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれると判定された場合(ステップS106でYES)、対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動Vfおよび当該ピークの反射強度軸方向の変動Viを取得する(ステップS108)。
次に、ピーク変動取得部57は、取得した変動Vfが周波数変化許容値Qf未満であり、かつ変動Viが強度変化許容値Qi未満である場合(ステップS112でYES)、カウンタ53のカウント値Cntをインクリメントする(ステップS114)。
一方、ピーク変動取得部57は、取得した変動Vfが周波数変化許容値Qf以上であるか、または変動Viが強度変化許容値Qi以上である場合(ステップS112でNO)、カウンタ53のカウント値Cntをデクリメントする(ステップS116)。
また、ピーク変動取得部57は、波形包含条件判定部56により対象波形Wの少なくとも一部が歩行者範囲Rgpに含まれないと判定された場合(ステップS106でNO)、カウンタ53のカウント値Cntをデクリメントする(ステップS116)。
次に、種類確定部54は、カウンタ53のカウント値Cntがしきい値Thmより大きい場合(ステップS118でYES)、対象物の種類を人間と確定する(ステップS120)。
また、種類確定部54は、カウンタ53のカウント値Cntがしきい値Thcより小さい場合(ステップS118でNOおよびステップS122でYES)、対象物Tgtの種類を車両と確定する(ステップS124)。
また、種類確定部54は、カウンタ53のカウント値がしきい値Thm以下かつしきい値Thc以上である場合(ステップS118でNOおよびステップS122でNO)、対象物Tgtの種類の確定処理を保留する(ステップS126)。
なお、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、送信波および反射波から生成される差分信号に基づいてドップラースペクトルを作成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電波センサは、たとえば、送信波と異なる所定の電波の周波数成分と反射波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号を生成し、生成した差分信号に基づいて中間周波数帯の周波数スペクトルIFFSを作成する構成であってもよい。また、電波センサは、たとえば、ミリ波帯の周波数スペクトルMWFSを反射波から直接作成する構成であってもよい。
周波数スペクトルIFFSまたはMWFSでは、非ドップラー反射波に基づく差分信号が直流成分にならないため、電波センサに近づく対象物Tgtからのドップラー反射波の振幅が当該差分信号の周波数fndより高周波領域に位置し、また、電波センサから遠ざかる対象物Tgtからのドップラー反射波の振幅が周波数fndより低周波領域に位置する。
したがって、電波センサは、周波数スペクトルIFFSまたはMWFSにおいて、たとえば、周波数fndに対して高周波領域および低周波領域における歩行者範囲Rgpと対象波形とに基づいて対象エリアA1における対象物Tgtを検知する。
ところで、特許文献1に記載の物体識別装置では、音波または電磁波の照射処理および検出処理と、画像処理とを用いて物体の種別を識別するため、装置の構成が複雑になり、かつコストがかかるという問題がある。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、送信波処理部21は、横断歩道PC1の一部または全部を含むエリアである対象エリアA1へ電波を送信する。受信波処理部22は、対象エリアA1からの電波を受信する。FFT処理部43は、送信波の周波数成分と受信波処理部22によって受信された電波である受信電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号B1(t)の周波数分布すなわちドップラースペクトルDS1に関する情報である周波数分布情報を作成する。そして、検出部41は、FFT処理部43によって作成された周波数分布情報に基づいて、対象エリアA1における対象物Tgtを検出する。
このように、対象物Tgtにおける各表面部分の検出対象速度の分布についての情報である周波数分布情報を用いる構成により、周波数分布情報の内容は横断歩道PC1における対象物Tgtに応じて異なることから、横断歩道PC1における対象物Tgtを精度よく検出することができる。
また、画像処理を行うことなく対象物Tgtを検知することができるので、電波センサ101を低コストかつ簡易な構成にすることができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検出部41は、ドップラー周波数f1dおよび反射強度Irによって規定される基準範囲すなわち歩行者範囲Rgpと周波数分布情報におけるドップラースペクトルDS1との関係に基づいて対象物Tgtとして人間を検出する。
このように、歩行者範囲Rgpを用いて横断歩道PC1における人間を検出する構成により、歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1との関係に基づいて横断歩道PC1における人間を簡易かつ精度よく検出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検出部41は、ドップラースペクトルDS1における各周波数成分の反射強度Irと所定のしきい値Thaとの大小関係に基づいて、ドップラースペクトルDS1の一部または全部である対象波形Wを取得する。そして、検出部41は、取得した対象波形Wが歩行者範囲Rgpに継続して含まれる場合、対象物Tgtとして人間を検出する。
横断歩道PC1における人間からの反射波による対象波形Wは歩行者範囲Rgpに含まれる場合が多い。このため、横断歩道PC1における人間をより精度よく検出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検出部41は、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値未満である場合、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ当該ピークの反射強度軸方向の変動が継続して所定値未満である場合、または対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、当該ピークの周波数軸方向の変動が継続して周波数変化許容値Qf未満であり、かつ当該ピークの反射強度軸方向の変動が継続して強度変化許容値Qi未満である場合のいずれか1つにおいて、対象物Tgtとして人間を検出する。
横断歩道PC1における人間からの反射波による対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動および反射強度軸方向の変動の少なくとも一方は小さい場合が多い。このため、横断歩道PC1における人間をさらに精度よく検出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検出部41は、ドップラー周波数f1dおよび反射強度Irによって規定される基準範囲すなわち歩行者範囲Rgpと周波数分布情報におけるドップラースペクトルDS1との関係に基づいて対象物Tgtとして車両を検出する。
このように、歩行者範囲Rgpを用いて横断歩道PC1における車両を検出する構成により、歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1との関係に基づいて横断歩道PC1における車両を簡易かつ精度よく検出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検出部41は、ドップラースペクトルDS1における各周波数成分の反射強度Irと所定のしきい値Thaとの大小関係に基づいて、ドップラースペクトルDS1の一部または全部である対象波形Wを取得する。そして、検出部41は、取得した対象波形Wの少なくとも一部が歩行者範囲Rgpに継続して含まれない場合、対象物Tgtとして車両を検出する。
横断歩道PC1における車両からの反射波による対象波形Wの少なくとも一部は歩行者範囲Rgpに含まれない場合が多い。このため、横断歩道PC1における車両をより精度よく検出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検出部41は、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動が継続して所定値以上である場合、対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、かつ当該ピークの反射強度軸方向の変動が継続して所定値以上である場合、または対象波形Wが歩行者範囲Rgpに含まれ、当該ピークの周波数軸方向の変動が継続して周波数変化許容値Qf以上であり、かつ当該ピークの反射強度軸方向の変動が継続して強度変化許容値Qi以上である場合のいずれか1つにおいて、対象物Tgtとして車両を検出する。
横断歩道PC1における車両からの反射波による対象波形Wのピークの周波数軸方向の変動および強度軸方向の変動の少なくとも一方は大きい場合が多い。このため、横断歩道PC1における車両をさらに精度よく検出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検出部41は、ドップラースペクトルDS1における各周波数成分の反射強度Irと所定のしきい値Thaとの大小関係に基づいて、ドップラースペクトルDS1の一部または全部である対象波形Wを取得する。そして、検出部41は、取得した対象波形Wに含まれるピークの数に基づいて対象物Tgtを検出する。
横断歩道PC1における車両からの反射波による対象波形Wに含まれるピークの数は多い場合が多く、また、横断歩道PC1における人間からの反射波による対象波形Wに含まれるピークの数は少ない場合が多い。このため、対象波形Wに含まれるピークの数に基づいて対象物をより精度よく検出することができる。
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る電波センサと比べて、横断歩道の特定部分に電波の照射範囲を制限するアンテナを含む電波センサに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る電波センサと同様である。
[課題]
(歩行者および自動車が混在する場合におけるドップラースペクトル)
図14は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおけるFFT処理部が生成する、歩行者および自動車が混在する場合におけるドップラースペクトルの一例を示す図である。
図14には、たとえば、図1に示すように、対象エリアA1において対象物Tgtとして自動車Tgt1および歩行者Tgt2が混在している場合のドップラースペクトルDS1hが示される。横軸は、ドップラー周波数f1dすなわち|vd|を示し、縦軸は、反射強度Irを示す。
たとえば図6および図8に示すように、歩行者Tgt2による対象波形Wは、自動車Tgt1による対象波形Wと比べて、対象波形強度が小さくかつ対象波形Wの幅が狭い場合が多い。したがって、図14に示すドップラースペクトルDS1hのように、対象エリアA1において自動車Tgt1および歩行者Tgt2が混在するために歩行者Tgt2による対象波形Wおよび自動車Tgt1による対象波形Wが重なる場合、対象物Tgtとして歩行者Tgt2を検出することが困難になることがある。
そこで、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサでは、以下のような構成および動作により、このような課題を解決する。
[信号制御システムの構成]
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る信号制御システムの構成を示す図である。図15は、電波センサ102が設置された交差点CS1付近を上から見た図である。
図16は、図15に示す信号制御システムを道路から交差点方向へ見た状態を示す図である。
図15および図16を参照して、信号制御システム202は、電波センサ102と、信号制御装置151と、歩行者用信号灯器161とを備える。電波センサ102は、本体部111と、遠方用送信アンテナ2と、遠方用受信アンテナ7と、直近用送信アンテナ3と、直近用受信アンテナ8とを含む。本体部111と直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8とは、たとえば図示しない信号線で接続されている。また、遠方用送信アンテナ2および遠方用受信アンテナ7は、たとえば本体部111の直接取り付けられている。
信号制御装置151および歩行者用信号灯器161の動作は、本発明の第1の実施の形態に係る信号制御装置151および歩行者用信号灯器161とそれぞれ同様である。
電波センサ102は、直近対象エリアAn1および遠方対象エリアAf1の少なくともいずれか一方において移動する対象物Tgtを検知する動体検知センサとして機能する。ここで、直近対象エリアAn1および遠方対象エリアAf1は、たとえば、電波センサ102のセンサ設置者が設定するエリアである。
センサ設置者は、たとえば、横断歩道PC1を渡ろうとする歩行者Tgt2および横断歩道PC1を渡り終えた歩行者Tgt2を対象物Tgtとする場合、横断歩道PC1の開始部分のエリアであって、横断歩道PC1の全部を含まないエリアを直近対象エリアAn1として設定する。直近対象エリアAn1は、たとえば横断歩道PC1を渡ろうとする歩行者Tgt2が位置する待機ゾーンでもある。
具体的には、センサ設置者は、たとえば図15に示すように、横断歩道PC1の開始部分のエリアとして、道路Rd1に対して電波センサ102側の歩道Pv1の一部と横断歩道PC1の歩道Pv1側の一部とを含むエリアを直近対象エリアAn1として設定する。
また、センサ設置者は、たとえば、横断歩道PC1のうち、直近対象エリアAn1以外のエリアを移動する歩行者Tgt2および自動車Tgt1を対象物Tgtとする場合、横断歩道PC1のうち、直近対象エリアAn1よりも電波センサ102から離れた部分を含むエリアを遠方対象エリアAf1として設定する。
具体的には、センサ設置者は、たとえば図15に示すように、横断歩道PC1のうち、直近対象エリアAn1に対して歩道Pv1の反対側の部分を含むエリアを遠方対象エリアAf1として設定する。
なお、センサ設置者は、たとえば、直近対象エリアAn1の一部と重なるように遠方対象エリアAf1を設定してもよいし、直近対象エリアAn1を含むように遠方対象エリアAf1を設定してもよい。
[電波センサの構成]
図17は、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサの構成を示す図である。
図17を参照して、電波センサ102は、図2に示す第1の実施の形態に係る電波センサ101と比べて、送信アンテナ1、受信アンテナ6および信号処理部14の代わりに、遠方用送信アンテナ2、直近用送信アンテナ3、遠方用受信アンテナ7、直近用受信アンテナ8および信号処理部15を備え、さらに、電波処理部12を備える。信号処理部15は、信号処理部14と比べて、さらに、直近エリア検出部42を含む。なお、遠方用送信アンテナ2、直近用送信アンテナ3、遠方用受信アンテナ7および直近用受信アンテナ8は、電波センサ102の外部に設けられてもよい。また、信号処理部15は、検出部41の代わりに検出部44を含む構成であってもよい。
電波処理部11の動作は、図3に示す電波処理部11と同様である。信号処理部15における検出部41およびFFT処理部43の動作は、図2に示す信号処理部14における検出部41およびFFT処理部43とそれぞれ同様である。
図18は、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサにおける電波処理部の構成を示す図である。
図18を参照して、電波処理部12は、送信波処理部(送信部)81と、受信波処理部(受信部)34とを含む。送信波処理部81は、ミリ波生成部83と、方向性結合器84と、パワーアンプ85とを含む。ミリ波生成部83は、電圧発生部86と、電圧制御発振器87とを含む。受信波処理部34は、移相器35と、A/Dコンバータ36,90と、差分信号生成部37,89と、ローノイズアンプ88とを含む。
送信波処理部81におけるミリ波生成部83、方向性結合器84およびパワーアンプ85の動作は、図3に示す送信波処理部21におけるミリ波生成部23、方向性結合器24およびパワーアンプ25とそれぞれ同様である。ミリ波生成部83における電圧発生部86および電圧制御発振器87の動作は、図3に示すミリ波生成部23における電圧発生部26および電圧制御発振器27とそれぞれ同様である。
受信波処理部34におけるローノイズアンプ88、差分信号生成部37,89およびA/Dコンバータ36,90の動作は、図3に示す受信波処理部22におけるローノイズアンプ28、差分信号生成部29およびA/Dコンバータ30とそれぞれ同様である。
図15〜図19を参照して、直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8は、直近対象エリアAn1において移動する歩行者Tgt2の移動方向を取得するために、たとえば図15および図16に示すように、直近対象エリアAn1に対して横断歩道PC1の反対側、すなわち直近対象エリアAn1に対して歩道Pv2の反対側に設置される。
これにより、直近対象エリアAn1において、横断歩道PC1を渡ろうとする歩行者Tgt2および横断歩道PC1を渡り終えた歩行者Tgt2を、歩行者Tgt2の検出対象速度vdの向きすなわち検出対象速度vdの符号に基づいて識別することができる。
より詳細には、たとえば、歩行者Tgt2が横断歩道PC1から歩道Pv1へ向かって移動する場合、歩行者Tgt2の直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8に対する検出対象速度vdは正の値を有する。この場合、直近用受信アンテナ8が受信する歩行者Tgt2からの反射波の周波数は、直近用送信アンテナ3が送信する送信波の周波数より高くなる。
一方、たとえば、歩行者Tgt2が歩道Pv1から横断歩道PC1へ向かって移動する場合、歩行者Tgt2の直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8に対する検出対象速度vdは負の値を有する。この場合、直近用受信アンテナ8が受信する歩行者Tgt2からの反射波の周波数は、直近用送信アンテナ3が送信する送信波の周波数より低くなる。
すなわち、送信波の周波数に対する反射波の周波数の高低に基づいて、歩行者Tgt2が移動する方向を認識することができる。
電波処理部12における送信波処理部81は、直近対象エリアAn1に照射範囲を制限して電波を直近用送信アンテナ3から送信可能である。具体的には、たとえば、送信波処理部81が出力する電波の送信電力、および直近用送信アンテナ3の指向性等の送信特性を設定することにより、直近用送信アンテナ3から送信される電波の照射範囲が直近対象エリアAn1に制限される。送信波処理部81および直近用送信アンテナ3は、たとえば24GHz帯の周波数を有するミリ波帯の電波を直近対象エリアAn1へ送信する。
直近用送信アンテナ3は、図15に示すように、たとえば送信波の指向性の方向Dirnが横断歩道PC1の横断方向に沿うように設置される。ここで、直近用送信アンテナ3から送信される送信波の指向性の方向Dirnは、たとえば直近用送信アンテナ3から直近対象エリアAn1の中心Ctrnへの方向である。
好ましくは、直近用送信アンテナ3は、たとえば、横断歩道PC1面に対して送信波の指向性の方向Dirnを当該面の法線方向に射影した方向と、歩行者Tgt2が対象エリアA1における横断歩道PC1を移動する方向vm3とが平行または反平行になるように設置される。ここで、方向vm3は、たとえば図1に示す歩行者Tgt2が対象エリアA1における横断歩道PC1を移動する方向vmに相当する。
電波処理部12における受信波処理部34は、直近対象エリアAn1からの電波を直近用受信アンテナ8経由で受信する。受信波処理部34は、たとえば、送信波処理部81により生成された電波を用いて、受信した電波を直交復調する。
より詳細には、受信波処理部34におけるローノイズアンプ88は、直近用受信アンテナ8により受信された反射波を増幅し、差分信号生成部89,37へ出力する。
差分信号生成部89は、送信波処理部81により生成される送信波の周波数成分とローノイズアンプ88から受ける反射波の周波数成分との差の周波数成分を有するI(In−phase)成分の差分信号Bi1(t)を生成し、生成した差分信号Bi1(t)をA/Dコンバータ90へ出力する。
A/Dコンバータ90は、たとえば、差分信号生成部89が出力する差分信号Bi1(t)のサンプリング処理を行うことによりデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号を信号処理部15へ出力する。
移相器35は、たとえば、送信波処理部81により生成される送信波の位相をπ/2ずらし、位相をずらした送信波を差分信号生成部37へ出力する。
差分信号生成部37は、位相がπ/2ずれた送信波の周波数成分とローノイズアンプ88から受ける反射波の周波数成分との差の周波数成分を有するQ(Quadrature)成分の差分信号Bq1(t)を生成し、生成した差分信号Bq1(t)をA/Dコンバータ36へ出力する。
A/Dコンバータ36は、A/Dコンバータ90と同様に、たとえば、差分信号生成部37が出力する差分信号Bq1(t)のサンプリング処理を行うことによりデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号を信号処理部15へ出力する。
再び図3および図17を参照して、電波処理部11における送信波処理部21は、遠方対象エリアAf1に照射範囲を制限して電波を遠方用送信アンテナ2から送信可能である。具体的には、たとえば、送信波処理部21が出力する電波の送信電力、および遠方用送信アンテナ2の指向性等の送信特性を設定することにより、遠方用送信アンテナ2から送信される電波の照射範囲が遠方対象エリアAf1に制限される。送信波処理部21および遠方用送信アンテナ2は、たとえば直近用送信アンテナ3から送信される電波と同じ周波数すなわち24GHz帯の周波数を有するミリ波帯の電波を遠方対象エリアAf1へ送信する。なお、送信波処理部21および遠方用送信アンテナ2は、たとえば直近用送信アンテナ3から送信される電波と異なる周波数を有する電波を遠方対象エリアAf1へ送信してもよい。
遠方用送信アンテナ2は、図15に示すように、たとえば送信波の指向性の方向Dirfが横断歩道PC1の横断方向に沿うように設置される。ここで、遠方用送信アンテナ2から送信される送信波の指向性の方向Dirfは、たとえば遠方用送信アンテナ2から遠方対象エリアAf1の中心Ctrfへの方向である。
好ましくは、遠方用送信アンテナ2は、たとえば、横断歩道PC1面に対して送信波の指向性の方向Dirfを当該面の法線方向に射影した方向と、歩行者Tgt2が対象エリアA1における横断歩道PC1を移動する方向vm4とが平行または反平行になるように設置される。ここで、方向vm4は、たとえば図1に示す歩行者Tgt2が対象エリアA1における横断歩道PC1を移動する方向vmに相当する。
電波処理部11における受信波処理部22は、遠方対象エリアAf1からの電波を遠方用受信アンテナ7経由で受信する。受信波処理部22は、送信波処理部21により送信される電波の周波数成分と受信した電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号B1(t)を生成する。そして、受信波処理部22は、生成した差分信号B1(t)のサンプリング処理を行うことによりデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号を信号処理部15へ出力する。
信号処理部15は、電波処理部11および電波処理部12から受けるデジタル信号を処理する。より詳細には、信号処理部15におけるFFT処理部43は、たとえば、電波処理部11から受けるデジタル信号を所定の観測時間Tobs、具体的には100ミリ秒蓄積する。
そして、FFT処理部43は、蓄積したデジタル信号に基づいて、差分信号B1(t)の周波数分布であるドップラースペクトルDS1に関する情報である周波数分布情報をたとえば100ミリ秒ごとに作成し、作成した周波数分布情報を検出部41へ出力する。
検出部41は、たとえば、電波処理部11および遠方用受信アンテナ7によって受信された遠方対象エリアAf1からの電波に基づいて、遠方対象エリアAf1における対象物Tgtを検出する。より詳細には、検出部41は、FFT処理部43によって作成された周波数分布情報に基づいて対象物Tgtを検出する。
具体的には、検出部41は、ドップラー周波数f1dおよび反射強度Irによって規定される歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1との関係に基づいて対象物Tgtの種類を車両または人間と確定し、確定結果を信号制御装置151へ送信する。
また、FFT処理部43は、電波処理部12から受けるデジタル信号を所定の観測時間Tobs、具体的には100ミリ秒蓄積する。そして、FFT処理部43は、蓄積したデジタル信号に基づいて、差分信号Bi1(t),Bq1(t)のそれぞれの周波数分布であるドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報すなわち周波数分布情報をたとえば100ミリ秒ごとに作成する。FFT処理部43は、作成した周波数分布情報を直近エリア検出部42へ出力する。
[歩行者範囲Rgpに基づく直近対象エリアにおける対象物の検出処理]
図19は、本発明の第2の実施の形態に係る信号処理部における直近エリア検出部の構成を示す図である。
図19を参照して、直近エリア検出部42は、スペクトル解析部61と、I成分バッファ62と、カウンタ63と、種類確定部64と、Q成分バッファ68と、移動方向判定部69と、総合判断部70とを含む。スペクトル解析部61は、対象波形取得部65と、波形包含条件判定部66と、ピーク変動取得部67とを含む。
スペクトル解析部61、カウンタ63および種類確定部64の動作は、図10に示す検出部41におけるスペクトル解析部51、カウンタ53および種類確定部54とそれぞれ同様である。スペクトル解析部61における対象波形取得部65、波形包含条件判定部66およびピーク変動取得部67の動作は、スペクトル解析部51における対象波形取得部55、波形包含条件判定部56およびピーク変動取得部57とそれぞれ同様である。
直近エリア検出部42は、たとえば、電波処理部12および直近用受信アンテナ8によって受信された直近対象エリアAn1からの電波に基づいて、直近対象エリアAn1における対象物Tgtを検出する。より詳細には、直近エリア検出部42は、FFT処理部43によって作成された周波数分布情報に基づいて対象物Tgtを検出する。具体的には、直近エリア検出部42は、ドップラー周波数f1dおよび反射強度Irによって規定される歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1との関係に基づいて対象物Tgtとして人間または車両のいずれが存在するかを判断する。
具体的には、直近エリア検出部42は、歩行者範囲RgpとドップラースペクトルDS1iまたはDS1qとの関係に基づいて対象物Tgtとして人間を検出するとともに、ドップラースペクトルDS1iおよびDS1qに基づいて対象物Tgtすなわち歩行者Tgt2の移動方向を検出する。直近エリア検出部42は、上記検出結果に基づいて、横断歩道PC1を渡ろうとする歩行者Tgtが直近対象エリアAn1に位置するか否かを総合的に判断する。
より詳細には、直近エリア検出部42におけるI成分バッファ62は、差分信号Bi1(t)に基づいて作成されたドップラースペクトルDS1iに関する情報を保持する。I成分バッファ62に保持されるドップラースペクトルDS1iの内容は、たとえば、100ミリ秒ごとにFFT処理部43から受けるドップラースペクトルDS1iの内容に更新される。
Q成分バッファ68は、I成分バッファ62と同様に、差分信号Bq1(t)に基づいて作成されたドップラースペクトルDS1qに関する情報を保持する。Q成分バッファ68に保持されるドップラースペクトルDS1qの内容は、たとえば、100ミリ秒ごとにFFT処理部43から受けるドップラースペクトルDS1qの内容に更新される。
スペクトル解析部61は、たとえば、I成分バッファ62に保持されたドップラースペクトルDS1iの内容が更新されるたびに、更新された内容のドップラースペクトルDS1iを解析し、解析結果に基づいてカウンタ63のカウント値Cntのリセット、インクリメントまたはデクリメントを行う。
スペクトル解析部61は、たとえば、ドップラースペクトルDS1iの代わりにドップラースペクトルDS1qを解析し、解析結果に基づいてカウンタ63のカウント値Cntのリセット、インクリメントまたはデクリメントを行ってもよい。
種類確定部64は、カウンタ63のカウント値Cntを監視し、たとえばカウント値Cntがしきい値Thmより大きくなると対象物Tgtの種類を人間と確定し、確定結果を総合判断部70へ出力する。また、種類確定部64は、たとえばカウント値Cntがしきい値Thcより小さくなると対象物Tgtの種類を車両と確定し、確定結果を総合判断部70へ出力する。
移動方向判定部69は、ドップラースペクトルDS1iおよびDS1qに基づいて対象物Tgtすなわち直近対象エリアAn1に位置する歩行者Tgt2の移動方向を検出する、すなわち判定する。より詳細には、移動方向判定部69は、たとえば、対象波形取得部65が取得する対象波形Wごとに、対応の対象物Tgtの移動方向を判定する。
具体的には、移動方向判定部69は、たとえば、対象波形取得部65からドップラースペクトルDS1iに基づく対象波形Wを取得する。そして、移動方向判定部69は、たとえば取得した対象波形Wの対象波形強度すなわちI成分強度、およびメインピークMpのドップラー周波数fMpを取得する。
そして、移動方向判定部69は、たとえば、Q成分バッファ68に保持されたドップラースペクトルDS1qを参照し、取得したドップラー周波数fMpに基づいて、ドップラースペクトルDS1qにおけるドップラー周波数fMpの反射強度IrすなわちQ成分強度を取得する。
移動方向判定部69は、たとえば、I成分強度の符号およびQ成分強度の符号の関係に基づいて、上記対象波形Wに対応する対象物Tgtの移動方向を判定する。移動方向判定部69は、判定結果を総合判断部70へ出力する。
総合判断部70は、種類確定部64から受ける対象物Tgtの種類の確定結果、および移動方向判定部69から受ける対象物Tgtの移動方向の判定結果に基づいて、横断歩道PC1を渡ろうとする歩行者Tgtが直近対象エリアAn1に位置するか否かを総合的に判断する。
具体的には、総合判断部70は、たとえば、種類確定部64から対象物Tgtの種類が人間である旨を示す確定結果を受け、かつ移動方向判定部69から対象物Tgtすなわち歩行者Tgt2の移動方向が図15に示す歩道Pv1から横断歩道PC1への方向である旨を示す判定結果を受けると、以下の判断を行う。すなわち、総合判断部70は、横断歩道PC1を渡ろうとする歩行者Tgtが直近対象エリアAn1に位置すると判断する。
また、総合判断部70は、たとえば、種類確定部64から対象物Tgtの種類が人間である旨を示す確定結果を受け、かつ移動方向判定部69から対象物Tgtすなわち歩行者Tgt2の移動方向が図15に示す横断歩道PC1から歩道Pv1への方向である旨を示す判定結果を受けると、以下の判断を行う。すなわち、総合判断部70は、横断歩道PC1を渡り終えた歩行者Tgt2が直近対象エリアAn1に位置すると判断する。総合判断部70は、判断結果を信号制御装置151へ送信する。
[ピークの数に基づく直近対象エリアにおける対象物の検出処理]
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る信号処理部における直近エリア検出部の変形例の構成を示す図である。
図20を参照して、直近エリア検出部42の変形例である直近エリア検出部45は、I成分バッファ62と、対象波形取得部65と、Q成分バッファ68と、移動方向判定部69と、総合判断部70と、ピーク数カウント部71と、比較部72と、種類確定部73とを含む。
I成分バッファ62、対象波形取得部65、Q成分バッファ68、移動方向判定部69および総合判断部70の動作は、図19に示す直近エリア検出部42におけるI成分バッファ62、対象波形取得部65、Q成分バッファ68、移動方向判定部69および総合判断部70とそれぞれ同様である。ピーク数カウント部71、比較部72および種類確定部73の動作は、図11に示す検出部44におけるピーク数カウント部46、比較部47および種類確定部48とそれぞれ同様である。
直近エリア検出部45は、対象波形Wに含まれるピークの数に基づいて直近対象エリアAn1における対象物Tgt、具体的には車両または歩行者を検出する。言い換えると、直近エリア検出部45は、対象波形Wに含まれるピーク数に基づいて直近対象エリアAn1における対象物Tgtとして人間または車両のいずれが存在するかを判断する。
より詳細には、直近エリア検出部45における対象波形取得部65は、たとえば初期値設定部17が保持する歩行者範囲Rgpの反射強度軸方向の下限値、具体的には−90dBmをしきい値Thaとして設定する。
そして、対象波形取得部65は、設定したしきい値Thaを用いて、I成分バッファ62に保持されたドップラースペクトルDS1iから対象波形Wを取得し、取得した対象波形Wをピーク数カウント部71へ出力する。
ピーク数カウント部71は、対象波形取得部65から対象波形Wを受けると、受けた対象波形Wに含まれるピークの数を算出し、算出したピークの数を比較部72へ出力する。
比較部72は、ピーク数カウント部71からピークの数を受けると、たとえば、受けたピークの数がしきい値Thpより小さい場合、ピーク数不足通知を種類確定部73へ出力する。また、比較部72は、たとえば、当該ピークの数がしきい値Thp以上である場合、ピーク数充足通知を種類確定部73へ出力する。
種類確定部73は、たとえば、対象波形Wに含まれるピークの数がしきい値Thpより小さい旨を示すピーク数不足通知を比較部72から受けると、対象物Tgtの種類を人間と確定し、確定結果を総合判断部70へ出力する。また、種類確定部73は、たとえば、対象波形Wに含まれるピークの数がしきい値Thp以上である旨を示すピーク数充足通知を比較部72から受けると、対象物Tgtの種類を車両と確定し、確定結果を総合判断部70へ出力する。
移動方向判定部69は、ドップラースペクトルDS1iおよびDS1qに基づいて対象物Tgtすなわち直近対象エリアAn1に位置する歩行者Tgt2の移動方向を判定し、判定結果を総合判断部70へ出力する。
総合判断部70は、種類確定部73から受ける対象物Tgtの種類の確定結果、および移動方向判定部69から受ける対象物Tgtの移動方向の判定結果に基づいて、横断歩道PC1を渡ろうとする歩行者Tgtが直近対象エリアAn1に位置するか否かを総合的に判断し、判断結果を信号制御装置151へ送信する。
[動作]
図21は、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサが直近対象エリアにおける対象物を検出する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図21を参照して、まず、電波センサ102は、横断歩道PC1の開始部分であって、横断歩道PC1の全部を含まないエリアである直近対象エリアAn1に照射範囲を制限して送信波T1(t)を直近用送信アンテナ3から送信する(ステップS202)。
次に、電波センサ102は、直近対象エリアAn1から反射波R1(t)を直近用受信アンテナ8経由で受信する(ステップS204)。
次に、電波センサ102は、送信波T1(t)および位相がπ/2ずれた送信波と反射波R1(t)との差分信号Bi1(t),Bq1(t)をそれぞれ生成し、生成した差分信号Bi1(t),Bq1(t)を高速フーリエ変換処理することにより、差分信号Bi1(t),Bq1(t)のそれぞれの周波数分布であるドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報すなわち周波数分布情報を作成する(ステップS206)。
次に、電波センサ102は、たとえば、作成したドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報に基づいて直近対象エリアAn1における対象物Tgtを検出する(ステップS208)。
図22は、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサが遠方対象エリアにおける対象物を検出する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図22を参照して、まず、電波センサ102は、横断歩道PC1のうち、直近対象エリアAn1よりも電波センサ102から離れた部分を含む遠方対象エリアAf1に照射範囲を制限して送信波T1(t)を遠方用送信アンテナ2から送信する(ステップS302)。
次に、電波センサ102は、遠方対象エリアAf1から反射波R1(t)を遠方用受信アンテナ7経由で受信する(ステップS304)。
次に、電波センサ102は、送信波T1(t)と反射波R1(t)との差分信号B1(t)を生成し、生成した差分信号B1(t)を高速フーリエ変換処理することにより、差分信号B1(t)の周波数分布であるドップラースペクトルDS1に関する情報すなわち周波数分布情報を作成する(ステップS306)。
次に、電波センサ102は、たとえば、作成したドップラースペクトルDS1に関する情報に基づいて遠方対象エリアAf1における対象物Tgtを検出する(ステップS308)。
[電波センサ102の変形例]
電波センサ102では、直近対象エリアAn1および遠方対象エリアAf1へ電波が同時に送信され、かつ直近対象エリアAn1および遠方対象エリアAf1からの電波を同時に受信する。
このため、電波処理部11および遠方用送信アンテナ2によって送信される電波が、直近用受信アンテナ8および電波処理部12における受信処理にノイズとして影響を与えてしまう場合がある。また、電波処理部12および直近用送信アンテナ3によって送信される電波が、遠方用受信アンテナ7および電波処理部11における受信処理にノイズとして影響を与えてしまう場合がある。
したがって、電波処理部11、遠方用送信アンテナ2および遠方用受信アンテナ7と電波処理部12、直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8との間において電波の漏えいが発生しないように十分にシールドする必要があるため、設計コストおよび生産コスト等が上昇してしまう。そこで、電波センサ102の変形例では、以下のような構成により、このような課題を解決する。
図23は、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサの構成を示す図である。
図23を参照して、図17に示す電波センサ102の変形例である電波センサ103は、電波センサ102と比べて、電波処理部11および信号処理部15の代わりに、信号処理部16を備え、さらに、アンテナ切替部(送信部)20およびスイッチ切替部38を備える。信号処理部16は、検出部41と、直近エリア検出部42と、FFT処理部43とを含む。なお、遠方用送信アンテナ2、直近用送信アンテナ3、遠方用受信アンテナ7および直近用受信アンテナ8は、電波センサ103の外部に設けられてもよい。また、信号処理部16は、検出部41の代わりに検出部44を含む構成であってもよい。また、信号処理部16は、直近エリア検出部42の代わりに直近エリア検出部45を含む構成であってもよい。
遠方用送信アンテナ2、直近用送信アンテナ3、遠方用受信アンテナ7、直近用受信アンテナ8、電波処理部12、検出部41および直近エリア検出部42の動作は、図17に示す電波センサ102における遠方用送信アンテナ2、直近用送信アンテナ3、遠方用受信アンテナ7、直近用受信アンテナ8、電波処理部12、検出部41および直近エリア検出部42とそれぞれ同様である。
電波センサ103におけるスイッチ切替部38は、所定時間たとえば100ミリ秒ごとにスイッチ切替信号、具体的にはハイレベルおよびローレベルの信号をアンテナ切替部20および信号処理部16へ出力する。
アンテナ切替部20は、直近用送信アンテナ3からの電波の送信と遠方用送信アンテナ2からの電波の送信とを時間的に切り替える。具体的には、アンテナ切替部20は、スイッチ切替部38から受けるスイッチ切替信号に基づいて、たとえば100ミリ秒ごとに直近用送信アンテナ3からの電波の送信と遠方用送信アンテナ2からの電波の送信とを切り替える。
より詳細には、アンテナ切替部20は、たとえば、スイッチ切替部38からローレベルのスイッチ切替信号を受けている期間(以下、直近期間とも称する)、電波処理部12における送信波処理部81と直近用送信アンテナ3とを電気的に接続し、かつ電波処理部12における受信波処理部34と直近用受信アンテナ8とを電気的に接続する。
また、アンテナ切替部20は、たとえば、スイッチ切替部38からハイレベルのスイッチ切替信号を受けている期間(以下、遠方期間とも称する)、電波処理部12における送信波処理部81と遠方用送信アンテナ2とを電気的に接続し、かつ電波処理部12における受信波処理部34と遠方用受信アンテナ7とを電気的に接続する。
すなわち、電波処理部12における送信波処理部81は、直近期間において直近対象エリアAn1に照射範囲を制限して電波を直近用送信アンテナ3から送信する。また、電波処理部12における受信波処理部34は、直近期間において直近対象エリアAn1からの電波を直近用受信アンテナ8経由で受信する。
受信波処理部34は、直近期間において、送信波処理部81により生成された電波を用いて、受信した電波を直交復調し、差分信号Bi1(t),Bq1(t)を生成する。受信波処理部34は、生成した差分信号Bi1(t),Bq1(t)のサンプリング処理を行うことによりデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号を信号処理部16へ出力する。
また、電波処理部12における送信波処理部81は、遠方期間において遠方対象エリアAf1に照射範囲を制限して電波を遠方用送信アンテナ2から送信する。また、電波処理部12における受信波処理部34は、遠方期間において遠方対象エリアAf1からの電波を遠方用受信アンテナ7経由で受信する。
受信波処理部34は、遠方期間において、送信波処理部81により生成された電波の周波数成分と受信した電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号B1(t)を生成する。そして、受信波処理部34は、生成した差分信号B1(t)のサンプリング処理を行うことによりデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号を信号処理部16へ出力する。
信号処理部16は、直近用受信アンテナ8によって受信された直近対象エリアAn1からの電波の処理と、遠方用受信アンテナ7によって受信された遠方対象エリアAf1からの電波の処理とを時間的に切り替える。
具体的には、信号処理部16は、たとえば、スイッチ切替部38から受けるスイッチ切替信号に基づいて直近期間および遠方期間を認識する。信号処理部16におけるFFT処理部43は、たとえば、直近期間において、電波処理部12から受けるデジタル信号を所定の観測時間Tobs、具体的には100ミリ秒蓄積する。そして、FFT処理部43は、蓄積したデジタル信号に基づいてドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報を作成する。
また、FFT処理部43は、たとえば、遠方期間において、たとえば、電波処理部12から受けるデジタル信号を所定の観測時間Tobs、具体的には100ミリ秒蓄積し、蓄積したデジタル信号に基づいてドップラースペクトルDS1に関する情報を作成する。
すなわち、FFT処理部43は、たとえば、ドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報とドップラースペクトルDS1に関する情報とを100ミリ秒ごとに交互に作成する。FFT処理部43は、たとえば、作成したドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報を直近エリア検出部42へ200ミリ秒ごとに出力する。また、FFT処理部43は、たとえば、作成したドップラースペクトルDS1に関する情報を検出部41へたとえば200ミリ秒ごとに出力する。
直近エリア検出部42は、たとえばFFT処理部43から200ミリ秒ごとに受けるドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報に基づいて対象物Tgtを検出する。また、検出部41は、たとえばFFT処理部43から200ミリ秒ごとに受けるドップラースペクトルDS1に関する情報に基づいて対象物Tgtを検出する。
なお、本発明の第2の実施の形態に係る信号制御システムでは、直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8を直近対象エリアAn1に対して横断歩道PC1の反対側、すなわち直近対象エリアAn1に対して歩道Pv2の反対側に設置する構成であるとしたが、これに限定するものではない。信号制御システム202では、たとえば、直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8を直近対象エリアAn1に対して横断歩道PC1側、すなわち直近対象エリアAn1に対して歩道Pv2側に設置する構成であってもよい。このような構成においても、送信波の周波数に対する反射波の周波数の高低に基づいて、直近対象エリアAn1において歩行者Tgt2が移動する方向を認識することができる。
また、信号制御システム202では、たとえば、直近用送信アンテナ3および直近用受信アンテナ8を直近対象エリアAn1の上方に設置する構成であってもよい。このような構成では、直近対象エリアAn1において歩行者Tgt2が移動する方向を認識することが困難となる場合があるが、直近対象エリアAn1において移動する歩行者Tgt2を検出することができる。
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサでは、電波処理部12における送信波処理部81は、横断歩道PC1の開始部分のエリアであって、横断歩道PC1の全部を含まないエリアである直近対象エリアAn1に照射範囲を制限して電波を直近用送信アンテナ3から送信可能である。電波処理部12における受信波処理部34は、直近対象エリアAn1からの電波を受信する。そして、直近エリア検出部42は、電波処理部12における受信波処理部34によって受信された電波に基づいて、直近対象エリアAn1における対象物Tgtを検出する。
このように、たとえば、車両が位置する可能性が低い直近対象エリアAn1に照射範囲を制限して電波を直近用送信アンテナ3から送信する構成により、受信波処理部34により受信される電波に車両からの電波が含まれる可能性を低くすることができるので、車両からの電波および人間からの電波を同時に受信することにより対象物Tgtを精度よく検出することが困難となってしまう状況を回避することができる。したがって、横断歩道PC1における対象物Tgtとしてたとえば人間を精度よく検出することができる。
また、たとえば、直近対象エリアAn1において横断歩道PC1を渡ろうとする人間を対象物Tgtとして検出することができるので、当該人間が直近対象エリアAn1外へ移動して、当該人間を検出することができなくなった後においても、移動後の当該人間が横断歩道PC1のうち横断歩道PC1の開始部分と異なるエリアに位置することを推定することができる。
また、画像処理を行うことなく対象物Tgtを検知することができるので、電波センサ102,103を低コストかつ簡易な構成にすることができる。
また、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサでは、電波処理部11における送信波処理部21は、横断歩道PC1のうち、直近対象エリアAn1よりも電波センサ102から離れた部分を含む遠方対象エリアAf1に照射範囲を制限して電波を遠方用送信アンテナ2から送信可能である。電波処理部11における受信波処理部22は、遠方対象エリアAf1からの電波を受信する。そして、検出部41は、電波処理部11における受信波処理部22によって受信された遠方対象エリアAf1からの電波に基づいて、遠方対象エリアAf1における対象物Tgtを検出する。
このように、直近対象エリアAn1に加えて遠方対象エリアAf1に照射範囲を制限して電波を遠方用送信アンテナ2から送信し、遠方対象エリアAf1における対象物Tgtを検出する構成により、たとえば、車両および人間が位置し得る横断歩道PC1である遠方対象エリアAf1における車両および人間の存在状況をさらに把握することができる。
また、たとえば、遠方対象エリアAf1において人間および車両が混在する場合において、遠方対象エリアAf1における対象物Tgtを精度よく検出することが困難であるときにおいても、直近対象エリアAn1における対象物Tgtの検出結果に基づいて遠方対象エリアAf1における対象物Tgtの検出精度を高めることができる。
具体的には、たとえば、遠方対象エリアAf1における車両が遠方対象エリアAf1における人間からの電波の障害物になったり、車両からの電波および人間からの電波を同時に受信したりすることにより遠方対象エリアAf1における人間を一時的に検出できなくなった場合においても、横断歩道PC1を渡ろうとする人間が直近対象エリアAn1に位置していたことを示す検出結果に基づいて、遠方対象エリアAf1に人間が位置することを推定することができる。
また、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサでは、アンテナ切替部20は、直近用送信アンテナ3からの電波の送信と遠方用送信アンテナ2からの電波の送信とを時間的に切り替える。
このように、直近用送信アンテナ3から電波が送信されている期間と遠方用送信アンテナ2から電波が送信されている期間とを分離する構成により、直近用送信アンテナ3から送信される電波および遠方用送信アンテナ2から送信される電波間の干渉を防ぐことができるので、干渉による受信特性の劣化を簡易な処理で回避することができる。
また、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサでは、FFT処理部43は、送信波の周波数成分と受信波処理部22および受信波処理部34によって受信された電波である受信電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号B1(t)およびBi1(t),Bq1(t)のそれぞれの周波数分布すなわちドップラースペクトルDS1およびDS1i,DS1qに関する情報である周波数分布情報を作成する。そして、検出部41は、FFT処理部43によって作成されたドップラースペクトルDS1に関する情報に基づいて対象物Tgtを検出する。また、直近エリア検出部42は、FFT処理部43によって作成されたドップラースペクトルDS1i,DS1qに関する情報に基づいて対象物Tgtを検出する。
このように、対象物Tgtにおける各表面部分の検出対象速度の分布についての情報である周波数分布情報を用いる構成により、周波数分布情報の内容は横断歩道PC1における対象物Tgtに応じて異なることから、横断歩道PC1における対象物Tgtを精度よく検出することができる。
また、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサでは、直近用送信アンテナ3の指向性の方向Dirnは、横断歩道PC1の横断方向に沿っている。
このような構成により、対象物Tgtの種類、具体的には自動車Tgt1および歩行者Tgt2ごとに、対象物Tgtの検出処理に適した検出対象速度を取得することができるので、対象物Tgtをより正確に検出することができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
電波センサであって、
横断歩道の開始部分のエリアであって、前記横断歩道の全部を含まないエリアである第1エリアに照射範囲を制限して電波を第1アンテナから送信可能な送信部と、
前記第1エリアからの電波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された電波に基づいて前記第1エリアにおける対象物を検出する検出部とを備え、
前記第1エリアは、道路に対して前記電波センサ側の歩道の一部と前記横断歩道の前記歩道側の一部とを含むエリアであり、
前記検出部は、前記第1エリアにおける前記対象物として人間を検出し、
前記送信部は、さらに、前記横断歩道のうち、前記第1エリアよりも前記電波センサから離れた部分を含む第2エリアに照射範囲を制限して電波を第2アンテナから送信可能であり、
前記受信部は、さらに、前記第2エリアからの電波を受信し、
前記検出部は、さらに、前記受信部によって受信された前記第2エリアからの電波に基づいて前記第2エリアにおける対象物を検出し、
前記第2エリアは、前記横断歩道のうち、前記第1エリアに対して前記歩道の反対側の部分を含むエリアであり、
前記検出部は、前記第2エリアにおける前記対象物として人間および車両の少なくともいずれか一方を検出する、電波センサ。
[付記2]
横断歩道の一部または全部を含むエリアである対象エリアへ電波を送信する送信部と、
前記対象エリアからの電波を受信する受信部と、
所定の電波の周波数成分と前記受信部によって受信された電波である受信電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号、または前記受信電波、の周波数分布に関する情報である周波数分布情報を作成する分析部と、
前記分析部によって作成された前記周波数分布情報に基づいて対象物を検出する検出部とを備え、
前記分析部は、前記送信部によって送信される電波の周波数成分と前記受信部によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する前記差分信号を生成し、生成した前記差分信号の周波数スペクトルに関する情報を前記周波数分布情報として作成し
前記検出部は、周波数および強度によって規定される歩行者範囲と前記分析部によって作成された前記周波数スペクトルとの関係に基づいて前記対象物として人間および車両の少なくともいずれか一方を検出する、電波センサ。