最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る電波センサは、対象エリアへ電波を送信する送信部と、上記対象エリアからの電波を受信する受信部と、上記受信部によって受信される電波に基づいて、上記対象エリアにおける検知対象の移動速度を取得する速度取得部と、上記速度取得部によって取得された上記移動速度の時間的変動に基づいて、上記検知対象の種類を判別する判別処理を行う判別部とを備える。
このような構成により、検知対象の種類に応じた上記時間的変動の差異に基づいて、検知対象の種類を精度よく判別することができる。また、画像処理を行うことなく検知対象の種類を判別することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。
(2)好ましくは、上記判別部は、上記時間的変動を近似した直線または曲線に対する上記移動速度のばらつきに基づいて上記判別処理を行う。
このように、移動速度のばらつきの検知対象の種類に応じた差異を用いる構成により、正確な判別処理を行うことができる。
(3)より好ましくは、上記判別部は、上記時間的変動を所定次数以下の多項式で近似する。
このような構成により、上記多項式に基づく直線または曲線の上記時間的変動に対するトレースを適度に不正確にすることができるので、移動速度のばらつきの検知対象の種類に応じた差異がなくなってしまう状況を回避することができる。これにより、正確な判別処理を行うことができる。
(4)好ましくは、上記判別部は、上記時間的変動の周波数に基づいて上記判別処理を行う。
このように、上記時間的変動の周波数の検知対象の種類に応じた差異を用いる構成により、正確な判別処理を行うことができる。
(5)より好ましくは、上記判別部は、上記時間的変動を示す信号の周波数成分のうち、所定周波数以上の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分に基づいて上記判別処理を行う。
このような構成により、周波数ゼロに近い周波数成分が他の周波数成分より上記信号に多く含まれている場合においても、上記信号の周波数成分の検知対象の種類に応じた差異を適切に抽出することができる。これにより、抽出した差異に基づいて正確な判別処理を行うことができる。
(6)好ましくは、上記速度取得部は、上記対象エリアにおける検知対象の自己の電波センサに対する相対速度の成分のうち、自己の電波センサに対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分を上記移動速度として取得する。
このように、自己の電波センサに対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分を特に用いる構成により、対象エリアにおける検知対象の移動速度の情報を簡易な構成で取得することができる。
(7)好ましくは、上記判別部は、上記判別処理として、上記対象エリアにおける人間および車両を判別する。
このような構成により、移動速度について、数Hzの周期で大きな変動を示す人間と、数Hzの周期で大きな変動を示さない車両とを、移動速度の時間的変動に基づいて精度よく判別することができる。
(8)好ましくは、上記電波センサは、道路上または道路付近に設置され、上記送信部におけるアンテナの指向性の方向は、上記対象エリアにおける検知対象の進行方向と交差する。
このような構成により、移動速度の速い道路上の検知対象の進行方向と移動速度の遅い道路上の検知対象の進行方向とが交差し、両検知対象の電波センサに対する相対速度の各々の成分のうち、電波センサに対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分である検出対象速度が近くなる場合であっても、検知対象の種類に応じた移動速度の時間的変動の差異に基づいて、検知対象の種類を精度よく判別することができる。
(9)本発明の実施の形態に係る検知方法は、電波センサにおける検知方法であって、対象エリアへ電波を送信するステップと、上記対象エリアからの電波を受信するステップと、受信した電波に基づいて、上記対象エリアにおける検知対象の移動速度を取得するステップと、取得した上記移動速度の時間的変動に基づいて、上記検知対象の種類を判別する判別処理を行うステップとを含む。
このような構成により、検知対象の種類に応じた上記時間的変動の差異に基づいて、検知対象の種類を精度よく判別することができる。また、画像処理を行うことなく検知対象の種類を判別することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る信号制御システムの構成を示す図である。
図1を参照して、信号制御システム201は、電波センサ101と、信号制御装置151と、歩行者用信号灯器161とを備える。信号制御システム201における信号制御装置151および歩行者用信号灯器161は、交通信号機を構成し、たとえば交差点CS1の近傍に設置される。
電波センサ101は、対象エリアA1において移動する検知対象Tgtを検知する動体検知センサとして機能する。電波センサ101は、たとえば交差点CS1へ延びる道路Rd1付近に設置されている。具体的には、電波センサ101は、たとえば道路Rd1付近に設置された支柱P1に固定されている。
歩行者用信号灯器161および信号制御装置151は、たとえば支柱P1に固定されている。電波センサ101および信号制御装置151は、たとえば図示しない信号線で接続されている。信号制御装置151および歩行者用信号灯器161は、たとえば図示しない信号線で接続されている。なお、電波センサ101は、道路Rd1上に設置されてもよいし、自動車に搭載されてもよい。
電波センサ101は、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類を判別する。より詳細には、電波センサ101は、たとえば信号制御装置151の制御に従って、横断歩道PC1を含む対象エリアA1へ電波を送信する。検知対象Tgtは、具体的には、自動車Tgt1および歩行者Tgt2等である。検知対象Tgtは、たとえば対象エリアA1内において移動しており、電波センサ101から送信される電波を反射する。
電波センサ101は、たとえば検知対象Tgtにより反射された電波に基づいて検知対象Tgtの種類を判別する。より詳細には、電波センサ101は、たとえば検知対象Tgtの種類として車両および人間を判別する。電波センサ101は、判別結果を信号制御装置151へ送信する。
歩行者用信号灯器161は、信号制御装置151の制御に従って、「すすめ」または「とまれ」を点灯し、たとえば横断歩道PC1を横断する歩行者Tgt2に対して表示する。
信号制御装置151は、電波センサ101から判別結果を受信すると、受信した判別結果に基づいて歩行者用信号灯器161を制御する。
たとえば、信号制御装置151は、歩行者用信号灯器161において「すすめ」を点灯する残り時間が少ない場合、検知対象Tgtの種類に応じた処理を行う。具体的には、信号制御装置151は、たとえば、電波センサ101から受信した判別結果が検知対象Tgtの種類が人間であることを示すとき、残り時間の延長を行う。なお、信号制御装置151は、たとえば、「すすめ」を点灯する残り時間が少ない旨を歩行者Tgt2に音声で通知してもよい。また、信号制御装置151は、たとえば、判別結果が検知対象Tgtの種類が車両であることを示すとき、残り時間の延長を行わない。
また、信号制御装置151は、たとえば、歩行者用信号灯器161において「とまれ」を点灯している場合において、判別結果が検知対象Tgtの種類が人間であることを示すとき、危険である旨を歩行者Tgt2に音声で警告する。
なお、信号制御装置151は、電波センサ101から受信する判別結果に基づいて自動車Tgt1に対してサービスを提供してもよい。具体的には、信号制御装置151は、判別結果が検知対象Tgtの種類が人間であることを示すとき、たとえば、横断歩道PC1における歩行者Tgt2に注意すべき旨の警告を自動車Tgt1に与える。
[課題]
対象エリアA1内に位置する検知対象Tgtの種類を判別するために、たとえば、ビーム幅を0.1°程度に狭めた電波を0.1°ごとに照射し、照射した電波の反射波に基づいて、検知対象Tgtの位置、大きさおよび形状をスキャンするレーダを用いることが考えられる。しかしながら、このようなレーダは高価であるため、多数の交差点に設置することは困難である。
また、たとえば、検出対象速度を測定することが可能なドップラーセンサを用いることが考えられる。検出対象速度は、対象物がドップラーセンサに対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った当該対象物の移動速度である。ドップラーセンサは、自動車Tgt1の検出対象速度と歩行者Tgt2の検出対象速度とが大きく異なる場合、検知対象Tgtの種類を判別することが可能である。
一方、たとえばドップラーセンサが支柱P1に固定されている状態において、図1に示す電波センサ101の場合と同様に自動車Tgt1が交差点CS1を速度vcで右折しながら横断歩道PC1を横切る場合、自動車Tgt1のドップラーセンサに対する検出対象速度vcdは、ドップラーセンサおよび自動車Tgt1を結ぶ軸方向への速度vcの成分となる。また、速度vmで横断歩道PC1を横断する歩行者Tgt2のドップラーセンサに対する検出対象速度vmdは、速度vmとほぼ同じである。したがって、図1に示すような場合には、検出対象速度vmdおよび検出対象速度vcdの差が小さくなるため、ドップラーセンサでは、検知対象Tgtの検出対象速度に基づいて検知対象Tgtの種類を判別することが困難となる。
また、たとえば、照射した電波の反射波の強度を用いて対象エリアA1内に位置する検知対象Tgtの種類を判別するための強度センサを用いることが考えられる。たとえば、強度センサが支柱P1に固定されている状態において、図1に示す電波センサ101の場合と同様に自動車Tgt1が歩行者Tgt2より強度センサから離れた場所に位置する場合、強度センサにおける反射波の強度は、以下のようになる。すなわち、反射断面積の大きい自動車Tgt1からの反射波の強度および反射断面積の小さい歩行者Tgt1からの反射波の強度の差が小さくなる。ここで、反射断面積は、検知対象Tgtが強度センサから照射された電波を反射する表面部分の反射率および面積等により定まる値である。この場合、強度センサでは、検知対象Tgtからの反射波の強度に基づいて検知対象Tgtの種類を判別することが困難となる。
そこで、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、以下のような構成および動作により、このような課題を解決する。
[電波センサの構成]
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る信号制御システムにおける電波センサの構成を示す図である。
図2を参照して、電波センサ101は、送信部1と、受信部2と、差分信号生成部19と、A/Dコンバータ(ADC)23と、速度取得部24と、判別部25とを備える。送信部1は、ミリ波生成部11と、送信アンテナ14と、パワーアンプ15と、方向性結合器16とを含む。ミリ波生成部11は、電圧発生部12と、電圧制御発振器13とを含む。受信部2は、受信アンテナ17と、ローノイズアンプ18とを含む。差分信号生成部19は、ミキサ20と、IF(Intermediate Frequency)アンプ21と、ローパスフィルタ22とを含む。なお、送信アンテナ14および受信アンテナ17は、共通のアンテナであってもよい。
送信部1は、対象エリアA1へ電波を送信する。具体的には、送信部1におけるミリ波生成部11は、たとえば76GHz帯の周波数を有する電波すなわちミリ波を生成し、生成したミリ波を方向性結合器16へ出力する。なお、ミリ波生成部11は、たとえば24GHz帯、60GHz帯または79GHz帯の周波数を有する電波を生成してもよい。
より詳細には、ミリ波生成部11における電圧発生部12は、たとえば、定電圧を生成し、生成した定電圧を電圧制御発振器13へ出力する。電圧制御発振器13は、具体的にはVCO(Voltage−controlled oscillator)であり、電圧発生部12から受ける定電圧に応じた周波数を有するミリ波である送信波を生成し、生成した送信波を方向性結合器16へ出力する。
方向性結合器16は、ミリ波生成部11から受ける送信波をパワーアンプ15および差分信号生成部19へ分配する。パワーアンプ15は、方向性結合器16から受ける送信波を増幅し、送信アンテナ14へ出力する。
送信アンテナ14は、パワーアンプ15から受ける送信波を対象エリアA1へ送信する。送信アンテナ14は、図1に示すように、たとえば送信波の指向性の方向Dirが対象エリアA1における検知対象Tgtの進行方向と交差する方向になるように設置される。ここで、送信波の指向性の方向Dirは、たとえば電波センサ101から対象エリアA1の中心Ctrへの方向である。
具体的には、送信アンテナ14は、たとえば、送信波の指向性の方向Dirが対象エリアA1における横断歩道PC1を自動車Tgt1が横切って進行する方向vcすなわちvc2と交差する方向になるように設置される。
好ましくは、送信アンテナ14は、たとえば、送信波の指向性の方向Dirに対する自動車Tgt1が進行する方向vc2の角度αの絶対値が45度以上かつ135度以下になるように設置される。より好ましくは、送信アンテナ14は、たとえば、角度αの絶対値が略直角、具体的には80度以上かつ100度以下になるように設置される。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る受信アンテナおよび検知対象の配置の一例を示す図である。
図3を参照して、受信部2は、対象エリアA1からの電波を受信する。より詳細には、受信部2における受信アンテナ17は、対象エリアA1からのミリ波すなわち反射波を受信する。受信アンテナ17が受信する反射波には、たとえば、対象エリアA1内に位置する検知対象Tgtの表面が送信アンテナ14により送信された送信波を反射することによって発生するドップラー反射波が含まれる。
ここで、受信アンテナ17に対する検知対象Tgtの速度を相対速度vtと定義する。また、相対速度vtの成分のうち、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分を検出対象速度vdと定義する。言い換えると、検出対象速度vdは、検知対象Tgtから受信アンテナ17への方向の単位ベクトルndと相対速度vtとの内積に相当する。
なお、電波センサ101は、たとえば支柱P1等の地面に対して動かないものに固定されていてもよいし、地面に対して動くものに固定されていてもよい。たとえば電波センサ101が支柱P1に固定されている場合、受信アンテナ17および対象エリアA1は地面に対して固定されるので、相対速度vtは、検知対象Tgtの地面に対する相対速度でもある。
受信アンテナ17が受信する検知対象Tgtにおける表面からのドップラー反射波の周波数f1rは、送信波の周波数f1に対して、検知対象Tgtの検出対象速度vdに応じてシフトする。また、ドップラー反射波の振幅は、検知対象Tgtの反射断面積σに応じた振幅となる。
より詳細には、送信波T1(t)が以下の式(1)により表される場合において、たとえば受信アンテナ17が送信アンテナ14の近傍に配置されているとき、ドップラー反射波R1d(t)は、四分一 浩二、外2名、”拡大するミリ波技術の応用”、[online]、[平成25年10月2日検索]、インターネット〈URL:http://www.spc.co.jp/spc/pdf/giho21_09.pdf〉(非特許文献1)および稲葉 敬之、桐本 哲郎、”車載用ミリ波レーダ”、自動車技術、2010年2月、第64巻、第2号、P.74−79(非特許文献2)に示すように以下の式(2)により表される。
ここで、φ1は初期位相である。Aは送信波の振幅である。Lは受信アンテナ17および検知対象Tgt間の距離である。cは光速である。aはたとえば振幅A、送信アンテナ14および受信アンテナ17のアンテナゲイン、送信波の波長、距離Lならびに反射断面積σ等により定まる値である。
なお、受信アンテナ17は、送信アンテナ14から離れた位置に配置されていてもよいが、電波センサ101の構成を簡易にするために送信アンテナ14の近傍に配置されていることが好ましい。
ドップラー反射波R1d(t)の周波数f1rは、式(2)に示すように、送信波T1(t)の周波数f1に対して、f1×(2×vd/c)を加えた周波数となる。具体的には、検知対象Tgtが受信アンテナ17へ近づく方向へ移動するとき、vdが正となるので周波数f1rは周波数f1より高くなり、また、検知対象Tgtが受信アンテナ17から遠ざかる方向へ移動するとき、vdが負となるので周波数f1rは周波数f1より低くなる。
受信アンテナ17が受信する反射波R1(t)には、一般に、ドップラー反射波R1d(t)、および検知対象Tgt以外の部分からの非ドップラー反射波R1nd(t)が含まれる。したがって、反射波R1(t)は、ドップラー反射波R1d(t)および非ドップラー反射波R1nd(t)の重ね合わせとなり、以下の式(3)により表される。
ここで、検知対象Tgt以外のものの検出対象速度がゼロである状況、すなわち非ドップラー反射波R1nd(t)の周波数が送信波T1(t)の周波数f1と同じである状況を想定する。
再び図2を参照して、ローノイズアンプ18は、受信アンテナ17が受信した反射波R1(t)を増幅し、差分信号生成部19へ出力する。
差分信号生成部19は、方向性結合器16から受ける送信波T1(t)と、ローノイズアンプ18から受ける反射波R1(t)とを乗算し、差分信号および和周波信号を生成する。差分信号生成部19は、生成した差分信号および和周波信号のうち差分信号をA/Dコンバータ23へ出力する。
より詳細には、差分信号生成部19におけるミキサ20は、送信波T1(t)と反射波R1(t)とを乗算し、送信波T1(t)の周波数成分と反射波R1(t)の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号および両周波数成分の和の周波数成分を有する和周波信号を生成する。
ミキサ20において、送信波T1(t)と反射波R1(t)とから生成される差分信号B1(t)は、以下の式(4)により表される。
ここで、B1d(t)は、送信波T1(t)とドップラー反射波R1d(t)とから生成される差分信号である。Kは差分信号B1d(t)の振幅である。−4π×f1×L/cが遅延位相θ1である。2×f1×vd/cがドップラー周波数f1dである。また、DC1は、送信波T1(t)と非ドップラー反射波R1nd(t)とから生成される差分信号であり、非ドップラー反射波R1nd(t)の周波数が送信波T1(t)の周波数f1と同じであるため、直流成分となる。
IFアンプ21は、たとえば低周波数帯から中間周波数帯にかけて大きな増幅率を有するアンプであり、ミキサ20において生成された差分信号B1(t)および和周波信号のうち差分信号B1(t)を大きな増幅率で増幅し、増幅した差分信号B1(t)をローパスフィルタ22へ出力する。
ローパスフィルタ22は、IFアンプ21において増幅された差分信号B1(t)の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分、たとえば1kHz以上の成分を減衰させる。
A/Dコンバータ23は、たとえば所定のサンプリング周波数を用いて差分信号B1(t)のサンプリング処理を行う。より詳細には、A/Dコンバータ23は、ローパスフィルタ22を通過した差分信号B1(t)を、たとえば所定のサンプリング周波数を用いてmビット(mは2以上の自然数)のデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を速度取得部24へ出力する。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおける速度取得部の構成を示す図である。
図4を参照して、速度取得部24は、差分信号処理部51と、ピーク探索部52と、速度算出部53とを含む。
速度取得部24は、A/Dコンバータ23から受けるデジタル信号に基づいて、対象エリアA1における検知対象Tgtの移動速度を取得する。
より詳細には、速度取得部24における差分信号処理部51は、たとえば、A/Dコンバータ23から受けるデジタル信号に基づいて、差分信号B1(t)の周波数分布を示す周波数スペクトルを作成する。具体的には、差分信号処理部51は、たとえば、A/Dコンバータ23から受けるデジタル信号を所定の観測時間Tobs、具体的には100ミリ秒蓄積する。蓄積されたデジタル信号は、観測時間Tobsに含まれる各サンプリングタイミングtsにおける差分信号B1(ts)の振幅、すなわち時間スペクトルを示す。
差分信号処理部51は、時間スペクトルを高速フーリエ変換し、観測時間Tobsにおける差分信号B1(t)の周波数スペクトルを作成する。以下、当該周波数スペクトルをドップラースペクトルDS1とも称する。差分信号処理部51は、作成したドップラースペクトルDS1をピーク探索部52へ出力する。ドップラースペクトルDS1は、観測時間Tobsにおける差分信号B1(t)に含まれる各周波数成分の振幅を示す。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおける差分信号処理部が作成する歩行者のドップラースペクトルの一例を示す図である。図6は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおける差分信号処理部が作成する自動車のドップラースペクトルの一例を示す図である。
図5および図6には、たとえば図1に示すように、対象エリアA1において検知対象Tgtである歩行者Tgt2および自動車Tgt1が移動している場合のドップラースペクトルDS1mおよびDS1cがそれぞれ示される。横軸は、ドップラー周波数f1dを示し、縦軸は、振幅を示す。
ピーク探索部52は、たとえば差分信号処理部51から図5に示すドップラースペクトルDS1mを受けると、最も大きな振幅Pmaxmを有するピークに対応するドップラー周波数f1dmaxを特定し、特定したドップラー周波数f1dmaxを速度算出部53へ出力する。
同様に、ピーク探索部52は、たとえば差分信号処理部51から図6に示すドップラースペクトルDS1cを受けると、最も大きな振幅Pmaxcを有するピークに対応するドップラー周波数f1dmaxを特定し、特定したドップラー周波数f1dmaxを速度算出部53へ出力する。
速度算出部53は、ピーク探索部52から受けるドップラー周波数f1dmaxに基づいて、検知対象Tgtの移動速度すなわち検知対象Tgtの検出対象速度vdを算出する。具体的には、速度算出部53は、式(4)に基づく以下に示す式(5)を用いて、ドップラー周波数f1dmaxから検出対象速度vdを算出する。そして、速度算出部53は、算出した検出対象速度vdを判別部25へ出力する。
なお、本発明の第1の実施の形態に係る速度取得部24は、ドップラースペクトルにおいて、最も大きなピークに対応するドップラー周波数f1dmaxに基づいて検知対象Tgtの移動速度を取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。速度取得部24は、たとえば、図5または図6において、縦軸と平行な線を引いた場合にドップラースペクトルの積分結果を2分する線と横軸との交点に対応するドップラー周波数、およびドップラースペクトルのバンド幅を2分する線と横軸との交点に対応するドップラー周波数等に基づいて検知対象Tgtの移動速度を取得する構成であってもよい。
[移動速度のばらつきに基づく判別処理]
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおける判別部の構成を示す図である。
図7を参照して、判別部25は、バッファ61と、近似式作成部62と、ばらつき算出部63と、判別処理部64とを含む。
判別部25は、速度取得部24によって取得された検出対象速度vdの時間的変動に基づいて、検知対象Tgtの種類を判別する判別処理を行う。より詳細には、判別部25は、判別処理として、対象エリアA1における人間および車両を判別する。
具体的には、判別部25は、たとえば、上記時間的変動を近似した直線または曲線に対する検出対象速度vdのばらつきに基づいて判別処理を行う。
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が処理する歩行者の検出対象速度の時間的変動の一例を示す図である。図9は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が処理する歩行者の検出対象速度の時間的変動の一例を示す図である。図8および図9を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、検出対象速度vdを示す。
図8では、対象エリアA1において速度を維持しながら移動する歩行者Tgt2の検出対象速度vdの時間的変動が速度信号Scmにより示される。また、図9では、対象エリアA1において速度を変化させながら移動する歩行者Tgt2の検出対象速度vdの時間的変動が速度信号Svmにより示される。図8および図9に示すように、速度信号Scm,Svmは、数Hzの周期で変動する。この数Hzの周期の変動は、歩行者Tgt2の速度信号の特徴である。
以下、判別部25が図8に示す速度信号Scmに基づいて判別処理を行う場合について詳細に説明するが、判別部25は図9に示す速度信号Svmに基づいて同様の判別処理を行うことも可能である。
すなわち、判別部25は、速度取得部24から検出対象速度vdをたとえば100ミリ秒ごとに受ける。判別部25におけるバッファ61は、たとえば直近の1秒の間に受ける検出対象速度vdすなわち直近の10個の検出対象速度vdを蓄積する。
図10は、本発明の第1の実施の形態に係るバッファが蓄積する歩行者の速度配列の一例を示す図である。図10を参照して、横軸は、サンプル番号を示し、縦軸は、検出対象速度vdを示す。
バッファ61が蓄積する速度配列Acm[n]には、たとえば図8に示す速度信号Scmについて最新の10個分の検出対象速度vdがインデックスnの昇順に新しくなるように格納される。ここで、nはたとえばサンプル番号を示すゼロから9までの整数である。速度配列Acm[n]は、たとえば速度取得部24から新たな検出対象速度vdを受けるたびに更新される。
近似式作成部62は、バッファ61が蓄積する速度配列Acm[n]すなわち速度信号Scmを近似する所定次数以下の多項式を作成する。具体的には、近似式作成部62は、たとえば、速度配列Acm[n]が更新されるたびに、更新された速度配列Acm[n]を近似する以下の式(6)に示す2次の多項式Pm(n)を作成する。
ここで、V,W,Xは、最小二乗近似法を用いて決定される係数である。より詳細には、V,W,Xは、Pm(n)とAcm[n]との差の二乗を、ゼロから9までのインデックスnについてとった和が最小になるように決定される係数である。近似式作成部62は、作成した多項式Pm(n)をばらつき算出部63へ出力する。
ばらつき算出部63は、近似式作成部62から多項式Pm(n)を受けると、受けた多項式Pm(n)とバッファ61が蓄積する速度配列Acm[n]とに基づいて、速度信号Scmを近似する曲線に対する検出対象速度vdのばらつきを特徴量として算出する。
具体的には、ばらつき算出部63は、たとえば、多項式Pm(n)と速度配列Acm[n]との差の絶対値をインデックスnごとに算出し、算出した絶対値の平均を速度差Dmとして判別処理部64へ出力する。
図11は、本発明の第1の実施の形態に係るばらつき算出部が算出する速度差の時間変化の一例を示す図である。図11を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、速度差を示す。図11には、ばらつき算出部63が、図8に示す速度信号Scmに基づいて算出した直近の10個の速度差Dmが示される。
判別処理部64は、たとえば、100ミリ秒ごとにばらつき算出部63から速度差Dmを受けると、受けた速度差Dmおよび所定のしきい値Thvの大小関係に基づいて、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類が人間であるか、または車両であるかを判別する。
具体的には、判別処理部64は、たとえば、速度差Dmがしきい値Thv具体的には0.20キロメートル毎時以上である場合、検知対象Tgtの種類が人間であると判別する。また、判別処理部64は、たとえば、速度差Dmがしきい値Thvより小さい場合、検知対象Tgtの種類が車両であると判別する。
図11に示すように、速度差Dmは、たとえば0.26キロメートル毎時から0.33キロメートル毎時までの範囲に含まれる。したがって、速度差Dmがしきい値Thv以上であるので、判別処理部64は、検知対象Tgtの種類が人間であると判別する。判別処理部64は、判別結果を信号制御装置151へ送信する。
図12は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が処理する自動車の検出対象速度の時間的変動の一例を示す図である。図13は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が処理する自動車の検出対象速度の時間的変動の一例を示す図である。図12および図13を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、検出対象速度vdを示す。
図12では、対象エリアA1において速度を維持しながら移動する自動車Tgt1の検出対象速度vdの時間的変動が速度信号Sccにより示される。また、図13では、対象エリアA1において速度を変化させながら移動する自動車Tgt1の検出対象速度vdの時間的変動が速度信号Svcにより示される。
図12および図13では、図8および図9に示す歩行者Tgt2の場合と異なり、速度信号Scc,Svcは、歩行者Tgt2の移動速度の時間的変動において特徴的な数Hzの周期的な変動を示さない。通常の自動車Tgt1の運転操作では、速度信号Scc,Svcにおいて、数Hzの周期的な変動を発現させることは困難であると考えられる。
以下、判別部25が図12に示す速度信号Sccに基づいて判別処理を行う場合について、簡単に説明するが、判別部25は図13に示す速度信号Svcに基づいて同様の判別処理を行うことも可能である。
すなわち、バッファ61は、たとえば直近の1秒の間に受ける検出対象速度vdすなわち直近の10個の検出対象速度vdを蓄積する。
図14は、本発明の第1の実施の形態に係るバッファが蓄積する自動車の速度配列の一例を示す図である。図14を参照して、横軸は、サンプル番号を示し、縦軸は、検出対象速度vdを示す。
バッファ61が蓄積する速度配列Acc[n]には、たとえば図12に示す速度信号Sccについて最新の10個分の検出対象速度vdがインデックスnの昇順に新しくなるように格納される。速度配列Acc[n]は、たとえば速度取得部24から新たな検出対象速度vdを受けるたびに更新される。
近似式作成部62は、たとえば、速度配列Acc[n]が更新されるたびに、最小二乗近似法を用いて、更新された速度配列Acc[n]を近似する式(6)と同様の2次の多項式Pc(n)を作成する。そして、近似式作成部62は、作成した多項式Pc(n)をばらつき算出部63へ出力する。
ばらつき算出部63は、近似式作成部62から多項式Pc(n)を受けると、多項式Pc(n)と速度配列Acc[n]との差の絶対値をインデックスnごとに算出し、算出した絶対値の平均を速度差Dcとして判別処理部64へ出力する。
図15は、本発明の第1の実施の形態に係るばらつき算出部が算出する速度差の時間変化の一例を示す図である。図15を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、速度差を示す。図15には、ばらつき算出部63が、図12に示す速度信号Sccに基づいて算出した直近の10個の速度差Dcが示される。
判別処理部64は、たとえば、100ミリ秒ごとにばらつき算出部63から速度差Dcを受けると、受けた速度差Dcおよびしきい値Thvの大小関係に基づいて、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類が人間であるか、または車両であるかを判別する。
具体的には、図15に示すように、速度差Dcは、たとえば0.07キロメートル毎時から0.13キロメートル毎時までの範囲に含まれる。したがって、速度差Dcがしきい値Thvより小さくなるので、判別処理部64は、検知対象Tgtの種類が車両であると判別する。
なお、本発明の第1の実施の形態の係る判別部25では、式(6)に示す2次の多項式で表される曲線で移動速度の時間的変動を近似する構成であるとしたが、これに限定するものではなく、移動速度の時間的変動を近似した線を表す多項式の次数が制限される構成であればよい。たとえば、判別部25は、以下の式(7)に示す1次の多項式P(n)で表される直線で移動速度の時間的変動を近似する構成であってもよいし、3次以上の多項式で表される曲線で移動速度の時間的変動を近似する構成であってもよい。
また、移動速度の時間的変動を近似する多項式の次数が高くなるほど、当該多項式が移動速度の時間的変動をより正確にトレースしてしまう。したがって、判別部25では、式(7)に示す1次の多項式で表される直線、または式(6)に示す2次の多項式で表される曲線を用いて移動速度の時間的変動を近似する構成が好ましい。
また、本発明の第1の実施の形態の係る判別部25では、移動速度の時間的変動を近似した多項式と移動速度との差の絶対値の平均を移動速度のばらつきとして用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。判別部25は、たとえば、上記多項式と移動速度との差についての分散、三乗和および四乗和等を移動速度のばらつきとして用いる構成であってもよいし、移動速度の時間的変動を近似する多項式を最小二乗近似法を用いて作成する際の残差を移動速度のばらつきとして用いる構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態の係る判別部25では、直近の1秒の間に速度取得部24から受ける移動速度に基づいて判別処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、判別部25は、少なくとも直近の数百ミリ秒の間に速度取得部24から受ける移動速度に基づいて判別処理を行うことが可能である。したがって、判別部25は、たとえば、直近の1秒より長い間または短い間、好ましくは数百ミリ秒から数秒の間に速度取得部24から受ける移動速度に基づいて判別処理を行う構成であってもよい。
[移動速度の時間的変動の周波数に基づく判別処理]
図16は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサにおける判別部の変形例の構成を示す図である。
図16を参照して、判別部25の変形例である判別部26は、バッファ61と、FFT(Fast Fourier Transform)処理部65と、ピーク周波数抽出部66と、判別処理部67とを含む。
判別部26は、速度取得部24によって取得された検出対象速度vdの時間的変動の周波数に基づいて、検知対象Tgtの種類を判別する判別処理を行う。より詳細には、判別部26は、検出対象速度vdの時間的変動を示す信号の周波数成分のうち、所定周波数以上の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分に基づいて判別処理を行う。
図17は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が処理する歩行者の検出対象速度の時間的変動の一例を示す図である。図17を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、検出対象速度vdを示す。
以下、判別部26が、図17に示す検出対象速度vdの時間的変動を示す速度信号Ssmの周波数に基づいて判別処理を行う場合について詳細に説明する。
すなわち、判別部26は、速度取得部24から検出対象速度vdをたとえば100ミリ秒ごとに受ける。判別部26におけるバッファ61には、速度信号Ssmを構成するデータとして、検出対象速度vdが所定のサンプリング期間蓄積される。
具体的には、バッファ61には、速度信号Ssmを構成するデータとして、検出対象速度vdがたとえば3200ミリ秒のサンプリング期間蓄積される。すなわち、バッファ61には、サンプリング間隔が100ミリ秒の32個の検出対象速度vdが蓄積される。
図18は、図17に示す速度信号を高速フーリエ変換した周波数スペクトルの一例を示す図である。図18を参照して、横軸は、周波数を示し、縦軸は、振幅を示す。
FFT処理部65は、バッファ61において検出対象速度vdの蓄積が完了すると、速度信号Ssmの周波数成分のうち、所定周波数Fth以上の周波数成分を抽出する。
具体的には、FFT処理部65は、速度信号Ssmを高速フーリエ変換することにより図18に示す周波数スペクトルFSmを作成する。FFT処理部65は、たとえば、周波数スペクトルFSmにおいて、周波数ゼロに近い振幅、具体的には周波数Fthである0.5Hz未満の振幅を無視することにより、速度信号Ssmの周波数成分のうち0.5Hz以上の周波数成分を抽出する。
また、FFT処理部65は、サンプリング間隔が100ミリ秒すなわちサンプリング周期が10Hzであるので、周波数スペクトルFSmにおいて周波数5Hzより大きい振幅を無視する。FFT処理部65は、作成した周波数スペクトルFSmをピーク周波数抽出部66へ出力する。
ピーク周波数抽出部66は、FFT処理部65から受ける周波数スペクトルにおいて、最も大きな振幅を有するピークに対応する周波数を特徴量として抽出する。具体的には、ピーク周波数抽出部66は、FFT処理部65から受ける周波数スペクトルFSmにおいて、最も大きな振幅を有するピークに対応する周波数として、たとえば2.8Hzのピーク周波数を抽出する。そして、ピーク周波数抽出部66は、抽出したピーク周波数を判別処理部67へ出力する。
判別処理部67は、ピーク周波数抽出部66から受けるピーク周波数および所定のしきい値Thpの大小関係に基づいて、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類が人間であるか、または車両であるかを判別する。
具体的には、判別処理部67は、たとえば、ピーク周波数がしきい値Thp以上具体的には1.5Hz以上である場合、検知対象Tgtの種類が人間であると判別する。また、判別処理部67は、たとえば、ピーク周波数がしきい値Thpより小さい場合、検知対象Tgtの種類が車両であると判別する。
上述したように、判別処理部67は、ピーク周波数抽出部66から2.8Hzのピーク周波数を受けるので、検知対象Tgtの種類が人間であると判別する。判別処理部67は、判別結果を信号制御装置151へ送信する。
図19は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が処理する自動車の検出対象速度の時間的変動の一例を示す図である。図19を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、検出対象速度vdを示す。
以下、判別部26が図19に示す検出対象速度vdの時間的変動を示す速度信号Sscの周波数に基づいて判別処理を行う場合について簡単に説明する。
すなわち、判別部26は、速度取得部24から検出対象速度vdをたとえば100ミリ秒ごとに受ける。判別部26におけるバッファ61には、速度信号Sscを構成するデータとして、検出対象速度vdがたとえば3200ミリ秒のサンプリング期間蓄積される。
図20は、図19に示す速度信号を高速フーリエ変換した周波数スペクトルの一例を示す図である。図20を参照して、横軸は、周波数を示し、縦軸は、振幅を示す。
FFT処理部65は、速度信号Sscを高速フーリエ変換することにより図20に示す周波数スペクトルFScを作成する。FFT処理部65は、たとえば、周波数スペクトルFScにおいて、周波数Fthである0.5Hz未満の振幅を無視することにより、速度信号Sscの周波数成分のうち、0.5Hz以上の周波数成分を抽出する。
また、FFT処理部65は、サンプリング周期が10Hzであるので、周波数スペクトルFScにおいて周波数5Hzより大きい振幅を無視する。FFT処理部65は、作成した周波数スペクトルFScをピーク周波数抽出部66へ出力する。
ピーク周波数抽出部66は、FFT処理部65から受ける周波数スペクトルFScにおいて、最も大きな振幅を有するピークに対応する周波数として、たとえば0.6Hzのピーク周波数を抽出する。そして、ピーク周波数抽出部66は、抽出したピーク周波数を判別処理部67へ出力する。
判別処理部67は、ピーク周波数抽出部66から0.6Hzのピーク周波数を受けると、ピーク周波数がしきい値Thpより小さいので、検知対象Tgtの種類が車両であると判別する。
たとえば、高速フーリエ変換の対象となる速度信号が自動車Tgt1に基づく速度信号および歩行者Tgt2に基づく速度信号のいずれであるかにかかわらず、高速フーリエ変換後の周波数スペクトルでは、周波数ゼロに近い振幅、具体的には周波数Fth未満の振幅が周波数Fth以上の振幅と比べて大きくなる場合が多い。この場合、ピーク周波数抽出部66は、周波数Fth未満の周波数をピーク周波数として誤って抽出してしまう可能性が高い。
具体的には、ピーク周波数抽出部66は、たとえば、図18および図20に示す周波数スペクトルFSmおよびFScにおいて、それぞれ2.8Hzおよび0.6Hzのピーク周波数の代わりに周波数Fth未満の周波数をピーク周波数として抽出してしまう。この場合、判別処理部67は、正確な判別処理を行うことができなくなる。
これに対して、FFT処理部65は、速度信号の周波数成分のうち、周波数Fth以上の周波数成分を抽出する。
これにより、ピーク周波数抽出部66は、検知対象Tgtの種類に応じたピーク周波数を抽出することができるので、判別処理部67は、ピーク周波数抽出部66により抽出されたピーク周波数に基づいてより正確な判別処理を行うことができる。
なお、判別部26は、3200ミリ秒のサンプリング期間蓄積した速度信号に基づいて判別処理を行ったが、これに限定するものではない。判別部26は、たとえば、3200ミリ秒より短いサンプリング期間または長いサンプリング期間蓄積した速度信号に基づいて判別処理を行ってもよい。具体的には、判別部26は、たとえば、少なくとも概ね1秒のサンプリング期間蓄積した速度信号に基づいて正確な判別処理を行うことが可能である。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、送信波と反射波とから生成される差分信号に基づいて検知対象Tgtの検出対象速度を取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電波センサは、たとえば、送信波の周波数と異なる周波数を有するローカル信号と反射波とから生成される中間周波数帯の差分信号に基づいて検知対象Tgtの検出対象速度を取得する構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、差分信号から作成されたドップラースペクトルに基づいて検知対象Tgtの検出対象速度を取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電波センサは、たとえば、反射波から直接作成された周波数スペクトルに基づいて検知対象Tgtの検出対象速度を取得する構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検知対象Tgtの検出対象速度vdを移動速度として取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電波センサでは、たとえば、検知対象Tgtの位置の時間変化を測定することにより図3に示す相対速度vtを算出し、算出した相対速度vtを移動速度として取得する構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、判別部は、移動速度の時間的変動を近似した直線または曲線に対する移動速度のばらつき、および移動速度の時間的変動の周波数の両方に基づいて判別処理を行うことも可能である。
[動作]
図21は、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサが対象エリアにおける検知対象の種類を判別する際の動作手順を定めたフローチャートである。信号制御システム201における電波センサ101は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図21を参照して、電波センサ101は、たとえば、観測時間Tobsを1観測サイクルとし、10観測サイクルの間に送信した送信波T1(t)に対する反射波R1(t)に基づいて判別処理を行う。
より詳細には、まず、電波センサ101は、たとえば、信号制御装置151から測定開始命令を受信した場合、観測サイクルをカウントするためのカウント値Ctをゼロに設定し、送信アンテナ14から送信波T1(t)を対象エリアA1へ送信する(ステップS102)。
次に、電波センサ101は、カウント値Ctをインクリメントし、Ct+1回目の観測サイクルを開始する(ステップS104)。
次に、電波センサ101は、Ct+1回目の観測サイクルの間、受信する反射波R1(t)および送信波T1(t)から生成される差分信号B1(t)を蓄積し、蓄積した差分信号B1(t)に基づいて周波数スペクトルすなわちドップラースペクトルDSを作成する(ステップS106)。
次に、電波センサ101は、作成したドップラースペクトルDSを構成するDS信号において、所定値Thaより大きいDS信号がある場合(ステップS108でYES)、以下の処理を行う。すなわち、電波センサ101は、ドップラースペクトルDSにおいて最も大きな振幅を有するピークに対応するドップラー周波数f1dmaxを特定し、特定したドップラー周波数f1dmaxに基づいて、検知対象Tgtの検出対象速度vdを取得する(ステップS110)。
次に、電波センサ101は、Ctが10以上であるか否かを判断する(ステップS112)。
一方、電波センサ101は、DS信号において、所定値Thaより大きいDS信号がない場合(ステップS108でNO)、Ctが10以上であるか否かを判断する(ステップS112)。
次に、電波センサ101は、Ctが10以上である場合において(ステップS112でYES)、直近の10観測サイクルにおいて10個の検出対象速度vdを取得したとき(ステップS114でYES)、取得した10個の検出対象速度vdの時間的変動に基づいて判別処理を行う(ステップS116)。
一方、電波センサ101は、Ctが10以上でない場合(ステップS112でNO)、または直近の10観測サイクルにおいて10個の検出対象速度vdを取得していない場合(ステップS114でNO)、カウント値Ctをインクリメントし、Ct+1回目の観測サイクルを開始する(ステップS104)。
図22は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が移動速度のばらつきに基づいて判別処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図22は、図7に示す判別部25による、図21におけるステップS116の動作の詳細を示している。
図22を参照して、まず、判別部25における近似式作成部62は、たとえばバッファ61に蓄積された10個の検出対象速度vdを近似する多項式を作成する(ステップS202)。
次に、ばらつき算出部63は、近似式作成部62により作成された多項式から算出される値とバッファ61に蓄積された10個の検出対象速度vdとの差の絶対値を算出し、算出した絶対値の平均である速度差を評価値として算出する(ステップS204)。
次に、判別処理部64は、ばらつき算出部63により算出された評価値がしきい値Thvより小さい場合(ステップS206でYES)、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類を車両と判別し、判別結果を信号制御装置151へ送信する(ステップS208)。
一方、判別処理部64は、評価値がしきい値Thv以上である場合(ステップS206でNO)、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類を人間と判別し、判別結果を信号制御装置151へ送信する(ステップS210)。
図23は、本発明の第1の実施の形態に係る判別部が移動速度の時間的変動の周波数に基づいて判別処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図23は、図16に示す判別部26による、図21におけるステップS116の動作の詳細を示している。
図23を参照して、まず、判別部26におけるFFT処理部65は、たとえばバッファ61に蓄積された10個の検出対象速度vdにより構成される速度信号を高速フーリエ変換し、当該速度信号から周波数スペクトルFSを作成する(ステップS302)。
次に、FFT処理部65は、周波数スペクトルFSにおいて、周波数Fth未満の振幅を無視することにより、速度信号の周波数成分のうち、周波数Fth以上の周波数成分を抽出する(ステップS304)。
次に、ピーク周波数抽出部66は、周波数スペクトルFSにおいて、最も大きな振幅を有するピークに対応するピーク周波数を評価値として抽出する(ステップS306)。
次に、判別処理部67は、ピーク周波数抽出部66により抽出された評価値がしきい値Thpより小さい場合(ステップS308でYES)、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類を車両と判別し、判別結果を信号制御装置151へ送信する(ステップS310)。
一方、判別処理部64は、評価値がしきい値Thp以上である場合(ステップS308でNO)、対象エリアA1における検知対象Tgtの種類を人間と判別し、判別結果を信号制御装置151へ送信する(ステップS312)。
ところで、特許文献1に記載の物体識別装置では、音波または電磁波の照射処理および検出処理と画像処理とを用いて物体の種別を識別するため、装置の構成が複雑になり、かつコストがかかるという問題がある。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、送信部1は、対象エリアA1へ送信波T1(t)を送信する。受信部2は、対象エリアA1からの反射波R1(t)を受信する。速度取得部24は、受信部2によって受信される反射波R1(t)に基づいて、対象エリアA1における検知対象Tgtの移動速度を取得する。そして、判別部25,26は、速度取得部24によって取得された移動速度の時間的変動に基づいて、検知対象Tgtの種類を判別する判別処理を行う。
このような構成により、検知対象Tgtの種類に応じた上記時間的変動の差異に基づいて、検知対象Tgtの種類を精度よく判別することができる。また、画像処理を行うことなく検知対象Tgtの種類を判別することができるので、電波センサ101を低コストかつ簡易な構成にすることができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、判別部25は、上記時間的変動を近似した直線または曲線に対する移動速度のばらつきに基づいて判別処理を行う。
このように、移動速度のばらつきの検知対象Tgtの種類に応じた差異を用いる構成により、正確な判別処理を行うことができる。
たとえば、移動速度の時間的変動を近似した直線または曲線として多項式を用いる場合において、当該多項式の次数が高くなるほど、当該多項式が移動速度の時間的変動をより正確にトレースしてしまう。この際、移動速度のばらつきの検知対象Tgtの種類に応じた差異がなくなってしまい、判別部25では、判別処理を正確に行うことができなくなってしまう。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、判別部25は、上記時間的変動を所定次数以下の多項式で近似する。
このような構成により、上記多項式に基づく直線または曲線の上記時間的変動に対するトレースを適度に不正確にすることができるので、移動速度のばらつきの検知対象Tgtの種類に応じた差異がなくなってしまう状況を回避することができる。これにより、正確な判別処理を行うことができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、判別部26は、上記時間的変動の周波数に基づいて判別処理を行う。
このように、上記時間的変動の周波数の検知対象Tgtの種類に応じた差異を用いる構成により、正確な判別処理を行うことができる。
たとえば、移動速度の時間的変動を示す信号には、周波数ゼロに近い周波数成分が他の周波数成分より多く含まれている場合がある。この場合、判別部26では、上記時間的変動の周波数の検知対象Tgtの種類に応じた差異を抽出することが困難となる場合がある。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、判別部26は、上記時間的変動を示す信号の周波数成分のうち、所定周波数以上の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分に基づいて判別処理を行う。
このような構成により、周波数ゼロに近い周波数成分が他の周波数成分より上記信号に多く含まれている場合においても、上記信号の周波数成分の検知対象Tgtの種類に応じた差異を適切に抽出することができる。これにより、抽出した差異に基づいて正確な判別処理を行うことができる。
たとえば、対象エリアA1内を移動する検知対象Tgtの移動速度を取得するために、ビーム幅を0.1°程度に狭めた電波を0.1°ごとに照射し、照射した電波の反射波に基づいて検知対象Tgtの位置を測定可能なレーダを用いることが考えられる。当該レーダを用いて測定した検知対象Tgtの位置の時間変化から検知対象Tgtの移動速度を取得することが可能である。しかしながら、当該レーダは、高価であるため、多数の交差点に設置することは困難である。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、速度取得部24は、対象エリアA1における検知対象Tgtの自己の電波センサ101に対する相対速度の成分のうち、自己の電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分を移動速度として取得する。
このように、自己の電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分を特に用いる構成により、対象エリアA1における検知対象Tgtの移動速度の情報を簡易な構成で取得することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、判別部25,26は、判別処理として、対象エリアA1における人間および車両を判別する。
このような構成により、移動速度について、数Hzの周期で大きな変動を示す人間と、数Hzの周期で大きな変動を示さない車両とを、移動速度の時間的変動に基づいて精度よく判別することができる。
たとえば、道路Rd1上または道路Rd1付近において、自動車Tgt1等の移動速度の大きい検知対象Tgtの進行方向Dcと、歩行者Tgt2等の移動速度の小さい検知対象Tgtの進行方向Dwとが平行に近い場合、進行方向DcまたはDwにおける自動車Tgt1および歩行者Tgt2の検出対象速度が大きく異なるので、検出対象速度の大きさに基づいて検知対象Tgtの種類を容易に判別することが可能である。
一方、図1に示すように、たとえば、進行方向Dcすなわち速度vcの方向と進行方向Dwすなわち速度vmの方向とのなす角度が直角に近づく場合、方向Dirとほぼ平行な進行方向Dwにおける自動車Tgt1および歩行者Tgt2の検出対象速度が近くなるときがある。このとき、検出対象速度の大きさに基づいて検知対象Tgtの種類を判別することが困難となる。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサは、道路Rd1上または道路Rd1付近に設置される。そして、送信部1における送信アンテナ14の指向性の方向Dirは、対象エリアA1における検知対象Tgtの進行方向と交差する。
このような構成により、移動速度の速い道路Rd1上の検知対象Tgtの進行方向Dcと移動速度の遅い道路Rd1上の検知対象Tgtの進行方向Dwとが交差し、両検知対象Tgtの検出対象速度が近くなる場合であっても、検知対象Tgtの種類に応じた移動速度の時間的変動の差異に基づいて、検知対象Tgtの種類を精度よく判別することができる。
なお、本発明の第1の実施の形態に係る電波センサでは、検知対象Tgtとして自動車Tgt1および歩行者Tgt2の種類を判別する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電波センサは、たとえば、自動車Tgt1および歩行者Tgt2に加えて自転車およびオートバイ等の二輪車を含む検知対象Tgtの種類の判別に適用することも可能である。
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る電波センサと比べて、FM−CW(Frequency−Modulated Continuous−Wave)方式に従って、対象エリアにおける検知対象の移動速度を取得する電波センサに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る電波センサと同様である。
[電波センサの構成]
図24は、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサの構成を示す図である。
図24を参照して、電波センサ102は、第1の実施の形態に係る電波センサ101と比べて、速度取得部24の代わりに、速度取得部28を備え、さらに、三角波生成部27を備える。送信部1、受信部2、差分信号生成部19、A/Dコンバータ23および判別部25,26は、図2に示す送信部1、受信部2、差分信号生成部19、A/Dコンバータ23および判別部25,26とそれぞれ同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
図25は、本発明の第2の実施の形態に係る電波センサにおける速度取得部の構成を示す図である。
図25を参照して、速度取得部28は、本発明の第1の実施の形態に係る速度取得部24と比べて、速度算出部53の代わりに速度算出部55を含み、さらに、周波数変化観測部54を含む。差分信号処理部51およびピーク探索部52は、図4に示す差分信号処理部51およびピーク探索部52とそれぞれ同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
電波センサ102は、たとえば、非特許文献1および非特許文献2に記載されたFM−CW方式に従って、対象エリアA1における検知対象Tgtの移動速度を取得し、取得した移動速度の時間的変動に基づいて判別処理を行う。
図26は、本発明の第2の実施の形態に係る三角波生成部が生成する三角波の時間変化、電波センサが送受信する電波の周波数の時間変化、およびピーク探索部が出力する周波数の時間変化の一例を示す図である。
図26を参照して、電波センサ102における三角波生成部27は、送信アンテナ14から送信される送信波の周波数を変調するための周期Tpの三角波Tr(t)を生成し、生成した三角波Tr(t)を送信部1へ出力する。
送信部1における電圧発生部12は、たとえば、三角波生成部27から受ける三角波Tr(t)のレベルに応じた電圧を生成し、生成した電圧を電圧制御発振器13へ出力する。電圧制御発振器13は、たとえば、三角波Tr(t)のレベルに応じた電圧を電圧発生部12から受け、図26に示すように、周波数ftcを中心とする変調幅Δfmの周波数f2(t)を有する送信波T2(t)を生成する。
電圧制御発振器13は、生成した送信波T2(t)を送信アンテナ14へ出力する。電圧制御発振器13から出力された送信波T2(t)は、送信アンテナ14から対象エリアA1へ送信される。
受信部2は、たとえば、図3に示すように、対象エリアA1において受信アンテナ17から距離Lの位置を検出対象速度vdで移動する検知対象Tgtからのドップラー反射波R2d(t)を含む反射波R2(t)を対象エリアA1から受信する。
図26に示すように、ドップラー反射波R2d(t)の周波数f2r(t)は、たとえば、送信波T2(t)の周波数f2(t)に対して2×L/c遅れており、また、周波数f2(t)に対してftc×(2×vd/c)を加えた周波数である。ここで、cは光速である。
差分信号生成部19は、送信部1から受ける送信波T2(t)と、受信部2から受ける反射波R2(t)とを乗算し、送信波T2(t)の周波数成分と反射波R2(t)の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号B2(t)を生成する。差分信号生成部19は、生成した差分信号B2(t)をA/Dコンバータ23へ出力する。
A/Dコンバータ23は、差分信号生成部19から受ける差分信号B2(t)を、たとえば所定のサンプリング周波数を用いてmビット(mは2以上の自然数)のデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を速度取得部28へ出力する。
図25に示す速度取得部28における差分信号処理部51は、たとえば、A/Dコンバータ23から受けるデジタル信号に基づいて、差分信号B2(t)の周波数分布を示す周波数スペクトルFS2を作成する。差分信号処理部51は、作成した周波数スペクトルFS2をピーク探索部52へ出力する。
ピーク探索部52は、たとえば差分信号処理部51から周波数スペクトルFS2を受けると、周波数スペクトルFS2において最も大きな振幅を有するピークに対応する周波数f2maxを特定する。そして、ピーク探索部52は、特定した周波数f2maxを周波数変化観測部54へ出力する。
周波数変化観測部54は、ピーク探索部52から受ける周波数f2maxの時間変化を観測する。具体的には、周波数f2max(t)は、図26に示すように、たとえば、時刻t3〜t4,t7〜t8,t11〜t12において周波数f2hで一定となり、また、時刻t1〜t2,t5〜t6,t9〜t10において周波数f2lで一定となる。周波数変化観測部54は、周波数f2h,f2lを抽出し、速度算出部55へ出力する。
速度算出部55は、周波数変化観測部54から周波数f2h,f2lを受けると、受けた周波数f2h,f2lおよび以下の式(8),(9)から検出対象速度vdを取得し、取得した検出対象速度vdを判別部25へ出力する。
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る電波センサと同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
対象エリアへ電波を送信する送信部と、
前記対象エリアからの電波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信される電波に基づいて、前記対象エリアにおける検知対象の移動速度を取得する速度取得部と、
前記速度取得部によって取得された前記移動速度の時間的変動に基づいて、前記検知対象の種類を判別する判別処理を行う判別部とを備え、
前記判別部は、前記時間的変動を近似した直線または曲線に対する前記移動速度のばらつき、および前記時間的変動の周波数の少なくともいずれか一方に基づいて前記判別処理を行い、
前記判別部は、前記時間的変動を近似した直線または曲線に対する前記移動速度のばらつきに基づいて前記判別処理を行う場合には、前記時間的変動を次数が2以下の多項式で近似し、
前記判別部は、前記時間的変動の周波数に基づいて前記判別処理を行う場合には、前記時間的変動を示す信号の周波数成分のうち、1.5Hz以上の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分に基づいて前記判別処理を行い、
前記速度取得部は、前記対象エリアにおける検知対象の検出対象速度を前記移動速度として取得し、
前記判別部は、前記判別処理として、前記対象エリアにおける人間および車両を判別し、
前記電波センサは、道路上または道路付近に設置され、
前記送信部におけるアンテナの指向性の方向は、前記対象エリアにおける検知対象の進行方向と交差し、前記アンテナは、好ましくは、前記指向性の方向に対する前記検知対象が進行する方向の角度の絶対値が45度以上かつ135度以下になるように設置され、より好ましくは、前記角度の絶対値が略直角になるように設置される、電波センサ。