最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る電波センサは、横断歩道を含む対象エリアにおける対象物を検知可能な電波センサであって、複数種類の変調方式を用いてそれぞれ生成した複数種類の電波を前記対象エリアへ送信する送信部と、電波を受信する受信部と、前記受信部によって受信された電波に基づいて、前記変調方式を用いて前記対象エリアにおけるサブエリアごとに前記対象物を検知する検知部とを備え、前記検知部は、各前記サブエリアのうち、少なくともいずれか1つの前記サブエリアにおいて、複数種類の前記変調方式を用いて前記対象物を検知する。
このような構成により、たとえば、ある変調方式では検知することが困難な状態にある対象物であっても、他の変調方式を用いて当該対象物を検知することができるので、横断歩道における対象物の検知精度を向上させることができる。また、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、横断歩道における対象物を精度よく検知することができる。
(2)好ましくは、前記検知部は、前記各サブエリアのうち、交差点へ流入する車両が通過する道路の部分と前記横断歩道との重複エリアの少なくとも一部を含む前記サブエリアである流入エリアにおいて、複数種類の前記変調方式を用いて前記対象物を検知する。
このような構成により、たとえば、車両が停止線を越えて停止している状態の発生し得る流入エリアにおいて、1つの変調方式を用いる場合、当該車両を歩行者として検知してしまうことがあるが、複数種類の変調方式を用いることで、当該車両を歩行者と区別して正しく検知することができる。
(3)より好ましくは、前記検知部は、前記流入エリアにおいて、FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式および2周波CW方式を用いて前記対象物を検知する。
このような構成により、停止している車両と同一距離帯に存在する歩行者を検知することが困難である一方で、停止車両および電柱といった停止している物体を検知可能なFM−CW方式、ならびに停止している物体を検知することが困難である一方で、停止している車両と同一距離帯に存在する歩行者を検知することが可能な2周波CW方式を用いて流入エリアにおける対象物を検知する構成により、これらの方式の弱点を互いに補完することができるので、たとえば、車両が停止線を越えて停止している状態であっても、当該車両を歩行者と区別して正しく検知することができる。
(4)より好ましくは、前記検知部は、前記受信部によって受信された前記流入エリアからの電波の前記FM−CW方式に基づく復調後の信号の大きさが所定条件を満たす場合、前記2周波CW方式を用いて前記流入エリアにおける前記対象物を検知する。
このような構成により、流入エリアにおいて、たとえば、FM−CW方式を用いた車両または歩行者の判定が困難な状況において上記所定条件が満たされる場合、2周波CW方式を用いて車両または歩行者の判定を適切に行うことができる。
(5)好ましくは、前記検知部は、前記受信部によって受信された電波のFM−CW方式に基づく復調後の信号である復調信号の大きさが、前記サブエリアにおいて前記対象物が存在しないとした状態における前記復調信号の大きさに基づくしきい値より小さい場合、前記サブエリアにおいて前記対象物が存在しないと判定する。
このような構成により、電柱または信号機等の背景に対する変化を検知することができるので、サブエリアにおいて、たとえば、歩行者が停止しているため、対象物が存在しないと誤って判定してしまうことを回避することができる。
(6)好ましくは、前記電波センサは、さらに、前記対象物の位置の時間変化を示す軌跡を推定する推定部を備え、前記検知部は、前記受信部によって受信された、交差点から流出する車両が通過する道路の部分と前記横断歩道との重複エリアの少なくとも一部を含む前記サブエリアである流出エリアからの電波の復調後の信号の大きさが所定条件を満たす場合、前記推定部によって推定された前記軌跡に基づいて、前記流出エリアにおける前記対象物を検知する。
このような構成により、電波センサが、交差点を右折または左折した車両からの反射波、および横断歩道を移動する歩行者からの反射波を同時に受信し、歩行者からの反射波に基づく信号の検出が困難な場合においても、推定した軌跡に基づいて、流出エリアにおける歩行者を正しく検知することができる。
(7)本発明の実施の形態に係る検知プログラムは、電波を受信し、横断歩道を含む対象エリアにおける対象物を検知可能な電波センサにおいて用いられる検知プログラムであって、コンピュータを、複数種類の変調方式を用いてそれぞれ生成した複数種類の電波を前記対象エリアへ送信する送信部と、前記電波センサによって受信された電波に基づいて、前記変調方式を用いて前記対象エリアにおけるサブエリアごとに前記対象物を検知する検知部と、として機能させるためのプログラムであり、前記検知部は、各前記サブエリアのうち、少なくともいずれか1つの前記サブエリアにおいて、複数種類の前記変調方式を用いて前記対象物を検知する。
このような構成により、たとえば、ある変調方式では検知することが困難な状態にある対象物であっても、他の変調方式を用いて当該対象物を検知することができるので、横断歩道における対象物の検知精度を向上させることができる。また、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、横断歩道における対象物を精度よく検知することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムの構成を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムの交差点における設置例を斜め上方から見た状態を示す図である。
図1および図2を参照して、安全運転支援システム301は、電波センサ101と、中継装置141と、信号制御装置151と、無線送信装置152と、アンテナ153と、歩行者用信号灯器161とを備える。安全運転支援システム301における信号制御装置151および歩行者用信号灯器161は、交通信号機を構成し、たとえば交差点CS1の近傍に設置される。
[交差点付近について]
たとえば、図2に示すように、交差点CS1付近において横断歩道PC1が設けられている。ここで、横断歩道PC1が設けられている道路を対象道路Rd1と定義する。対象道路Rd1は、交差点CS1を形成する。また、交差点CS1において対象道路Rd1と交差する道路を交差道路Rd2と定義する。
すなわち、対象道路Rd1および交差道路Rd2が交差する部分が交差点CS1である。言い換えると、交差点CS1は、対象道路Rd1と重複し、かつ交差道路Rd2と重複している。なお、交差点CS1において、さらに多数の道路が交差してもよい。
対象道路Rd1は、交差点CS1から流出する図示しない自動車Tgt1が走行する流出道路Rdeと、交差点CS1へ流入する自動車Tgt1が走行する流入道路Rdiとを含む。流出道路Rdeおよび流入道路Rdiの間に、たとえば車線TLが設けられている。
流出道路Rdeに対する流入道路Rdiの反対側の端には、たとえば対象道路Rd1に沿って延伸するように歩道Pv1が設けられている。歩道Pv1は、交差点CS1の近傍において円弧形状の隅切りCCeに沿って延伸することにより対象道路Rd1に沿う方向から交差道路Rd2に沿う方向へ延伸方向を変える。
また、流入道路Rdiに対する流出道路Rdeの反対側の端には、たとえば対象道路Rd1に沿って延伸するように歩道Pv2が設けられている。歩道Pv2は、交差点CS1の近傍において円弧形状の隅切りCCiに沿って延伸することにより対象道路Rd1に沿う方向から交差道路Rd2に沿う方向へ延伸方向を変える。
たとえば、電波センサ101の設置者であるセンサ設置者は、横断歩道PC1を用いて道路を横断する横断対象物の検知対象エリアとして、複数のサブエリアを設定する。ここで、横断対象物は、たとえば歩行者Tgt2である。また、歩行者Tgt2は、歩いている人間に限定されず、自転車等を含む。
具体的には、センサ設置者は、たとえば、サブエリアSAes、SAerおよびSAirの3つのサブエリアを設定する。なお、サブエリアの個数は、3つに限らず、2つまたは5つ以上でもよい。
サブエリアSAesは、たとえば歩道Pv1の一部であって横断歩道PC1に隣接する部分を含む。サブエリアSAesは、たとえば歩行者Tgt2の待機エリアである。
サブエリアSAesは、たとえば四角形状を有している。以下、サブエリアSAesにおける四隅のうち、対象道路Rd1の反対側における2つの隅の位置を、交差点CS1側から順に指標位置C1,C2とも称する。また、サブエリアSAesにおける四隅のうち、対象道路Rd1側における2つの隅の位置を、交差点CS1側から順に指標位置C3,C4とも称する。
サブエリアSAerは、たとえば、交差点CS1から流出する車両が通過する道路の部分と横断歩道PC1との重複エリアの少なくとも一部を含む。具体的には、サブエリアSAerは、たとえば、横断歩道PC1および流出道路Rdeが重複するエリアを含む。サブエリアSAerは、たとえば、歩行者用信号灯器161が「すすめ」を点灯しているときに、歩行者Tgt2が横断歩道PC1に沿って通過するエリアであり、かつ交差道路Rd2から右折または左折した図示しない自動車Tgt1が対象道路Rd1に沿って通過するエリアである。以下、サブエリアSAerを、流出エリアとも称する。
サブエリアSAerは、たとえば、四角形状を有しており、指標位置C3,C4を結ぶ線を介してサブエリアSAesと隣接している。以下、サブエリアSAerにおける四隅のうち、歩道Pv1の反対側における2つの隅の位置を、交差点CS1側から順に指標位置C5,C6とも称する。
サブエリアSAirは、たとえば、交差点CS1へ流入する車両が通過する道路の部分と横断歩道PC1との重複エリアの少なくとも一部を含む。具体的には、サブエリアSAirは、たとえば、横断歩道PC1および流入道路Rdiが重複するエリアを含む。サブエリアSAirは、たとえば、歩行者用信号灯器161が「すすめ」を点灯しているときに、歩行者Tgt2が横断歩道PC1に沿って通過するエリアである。以下、サブエリアSAirを、流入エリアとも称する。
サブエリアSAirは、たとえば、四角形状を有しており、指標位置C5,C6を結ぶ線を介してサブエリアSAerと隣接している。以下、サブエリアSAirにおける四隅のうち、歩道Pv1の反対側における2つの隅の位置を、交差点CS1側から順に指標位置C7,C8とも称する。
なお、歩道Pv2側の待機エリアとして、歩道Pv2の一部であって横断歩道PC1に隣接する部分を含むサブエリアを設けてもよい。
電波センサ101は、横断歩道PC1を含む対象エリアA1における対象物Tgtを検知することが可能である。たとえば、電波センサ101は、サブエリアSAes、SAerおよびSAirを含む対象エリアA1における対象物Tgtを検知することが可能である。ここで、対象物Tgtには、上述の横断対象物の他に、対象道路Rd1に沿って走行して横断歩道PC1を通過する自動車Tgt1が含まれる。
[電波センサの設置位置]
電波センサ101は、たとえば対象道路Rd1付近に設置されている。具体的には、電波センサ101は、たとえば歩道Pv1に対して対象道路Rd1の反対側に設置された支柱PWに固定されている。より詳細には、電波センサ101は、たとえば、横断歩道PC1の歩道Pv1側への延長線上に設けられている。
中継装置141は、たとえば支柱PWに固定されている。電波センサ101および中継装置141は、図2では図示していないがたとえば信号線で接続されている。中継装置141は、たとえば、電波センサ101から受信した情報を信号制御装置151へ送信する中継処理を行う。
信号制御装置151および無線送信装置152は、たとえば歩道Pv2に対して対象道路Rd1の反対側に設置された支柱PVに固定されている。また、アンテナ153は、たとえば支柱PVの頂部に固定されている。
2つの歩行者用信号灯器161は、支柱PWおよびPVにそれぞれ固定されている。信号制御装置151と、無線送信装置152、中継装置141および2つの歩行者用信号灯器161とは、図2では図示していないがたとえば信号線でそれぞれ接続されている。無線送信装置152およびアンテナ153は、図2では図示していないがたとえば信号線で接続されている。
たとえば、電波センサ101は、対象エリアA1へ電波を送信する。対象エリアA1内に位置する対象物Tgtは、たとえば電波センサ101から送信される電波を反射する。電波センサ101は、対象物Tgtにより反射された電波を受信する。
電波センサ101は、受信した電波に基づいて、サブエリアごとに対象物Tgtを検知し、たとえば検知結果を中継装置141経由で信号制御装置151へ送信する。
歩行者用信号灯器161は、信号制御装置151の制御に従って、たとえば横断歩道PC1を横断する歩行者Tgt2に対して「すすめ」または「とまれ」を点灯して表示する。
たとえば、信号制御装置151は、歩行者用信号灯器161において「すすめ」を点灯する残り時間が少ない場合において、サブエリアSAirおよびSAerの少なくともいずれか一方において歩行者Tgt2を検知したことを検知結果が示すとき、残り時間の延長を行う。なお、信号制御装置151は、たとえば、「すすめ」を点灯する残り時間が少ない旨を歩行者Tgt2に音声で通知してもよい。
また、信号制御装置151は、たとえば、歩行者用信号灯器161において「とまれ」を点灯している場合において、サブエリアSAirおよびSAerの少なくともいずれか一方において歩行者Tgt2を検知したことを検知結果が示すとき、危険である旨を歩行者Tgt2に音声で警告する。
また、信号制御装置151は、電波センサ101から受信する検知結果に基づいて自動車Tgt1に対してサービスを提供する。
具体的には、信号制御装置151は、たとえば、SAerにおいて歩行者Tgt2を検知したことを検知結果が示すとき、またはサブエリアSAirまたはSAesにおける歩行者Tgt2がサブエリアSAerへ進入し得ることを検知結果が示すとき、横断歩道PC1における歩行者Tgt2に注意すべき旨を示す歩行者警戒情報を作成し、作成した歩行者警戒情報を無線送信装置152へ送信する。
無線送信装置152は、たとえば、信号制御装置151から歩行者警戒情報を受信すると、受信した歩行者警戒情報を含む電波を生成し、生成した電波をアンテナ153経由で送信することにより、交差点CS1周辺に位置する自動車Tgt1へ歩行者警戒情報を報知する。
たとえば、交差道路Rd2から右折または左折して横断歩道PC1を通過しようとする図示しない自動車Tgt1は、無線送信装置152から送信された電波を受信すると、受信した電波に含まれる歩行者警戒情報を取得し、取得した歩行者警戒情報に基づいて、横断歩道PC1における横断対象物に注意すべき旨を当該自動車Tgt1の運転者に通知する。
[電波センサの構成]
図3は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムにおける電波センサの構成を示す図である。
図3を参照して、電波センサ101は、送信部1と、受信部2と、差分信号生成部3と、制御部4と、信号処理部5と、検知部(推定部)7とを備える。
送信部1は、送信アンテナ21と、パワーアンプ22と、方向性結合器23と、VCO(Voltage−Controlled Oscillator)24と、電圧発生部25と、スイッチ26とを含む。
受信部2は、受信アンテナ31A,31B,31C,31Dと、ローノイズアンプ32A,32B,32C,32Dとを含む。以下、受信アンテナ31A,31B,31C,31Dの各々を、受信アンテナ31とも称する。ローノイズアンプ32A,32B,32C,32Dの各々を、ローノイズアンプ32とも称する。
ローノイズアンプ32は、たとえば受信アンテナ31に対応して設けられている。図3では、受信アンテナ31および対応のローノイズアンプ32の4つの組を代表的に示しているが、2つ、3つまたは5つ以上の当該組が設けられてもよい。
差分信号生成部3は、ミキサ33A,33B,33C,33Dと、IF(Intermediate Frequency)アンプ34A,34B,34C,34Dと、ローパスフィルタ35A,35B,35C,35Dと、A/Dコンバータ(ADC)36A,36B,36C,36Dとを含む。
以下、ミキサ33A,33B,33C,33Dの各々を、ミキサ33とも称する。IFアンプ34A,34B,34C,34Dの各々を、IFアンプ34とも称する。ローパスフィルタ35A,35B,35C,35Dの各々を、ローパスフィルタ35とも称する。ADコンバータ36A,36B,36C,36Dの各々を、ADコンバータ36とも称する。
ミキサ33、IFアンプ34、ローパスフィルタ35およびA/Dコンバータ36は、たとえば受信アンテナ31に対応して設けられている。図3では、ミキサ33、IFアンプ34、ローパスフィルタ35およびA/Dコンバータ36の4つの組を代表的に示しているが、2つ、3つまたは5つ以上の当該組が設けられてもよい。
電波センサ101は、たとえば、非特許文献1(四分一 浩二、外2名、”拡大するミリ波技術の応用”、[online]、[平成27年9月20日検索]、インターネット〈URL:http://www.spc.co.jp/spc/pdf/giho21_09.pdf〉)および非特許文献2(稲葉 敬之、桐本 哲郎、”車載用ミリ波レーダ”、自動車技術、2010年2月、第64巻、第2号、P.74−79)に記載された、FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式および2周波CW方式を用いて対象物Tgtを検知するレーダである。
電波センサ101における制御部4は、たとえば、信号制御装置151から中継装置141経由で測定開始命令を受信すると、受信した測定開始命令に従って、自己の電波センサ101における対象物Tgtの検知処理を開始させる。
図4は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムにおける電波センサが送信および受信する電波の周波数の時間変化の一例を示す図である。
なお、図4において、横軸は時間を示し、縦軸は周波数を示す。また、送信する電波の周波数Ftは実線で表され、また、受信する電波の周波数Frは破線で表されている。図4では、送信電波に対する受信電波の遅延が示されている。
図4を参照して、電波センサ101では、たとえば、2周波CW方式を用いて生成された電波を送信する送信期間P1、およびFM−CW方式を用いて生成された電波を送信する送信期間P2が交互に繰り返される。ここで、送信期間P1およびP2の間には、たとえば電波センサ101が電波の送信を行わないガード期間Pgが設けられている。また、送信期間P1では、たとえば、周波数F1の電波が時間Ttfの間送信された後、周波数F1より小さい周波数F2の電波が時間Ttfの間送信される。
図3および図4を参照して、制御部4は、たとえば、FM−CW方式において用いる周波数掃引幅Δfおよび送信期間P2の長さである掃引時間Tsを初期設定値として送信部1および検知部7へ出力する。
たとえば、制御部4は、送信期間P1、ガード期間Pg、送信期間P2およびガード期間Pgをこれらの順で繰り返し設定する。ここで、時間的に連続する送信期間P1、ガード期間Pg、送信期間P2およびガード期間Pgを、単位シーケンスUSと定義する。
より詳細には、制御部4は、たとえば、送信期間P1の開始タイミングにおいて、制御信号Ss1を生成して送信部1および信号処理部5へ出力する。
また、制御部4は、たとえば、送信期間P1の開始タイミングから時間Ttf経過したタイミングにおいて、制御信号St1を生成して送信部1および信号処理部5へ出力する。
また、制御部4は、たとえば、制御信号St1を出力してから時間Ttf経過したタイミングすなわち送信期間P1の終了タイミングにおいて、制御信号Se1を生成して送信部1および信号処理部5へ出力する。
また、制御部4は、たとえば、送信期間P2の開始タイミングおよび終了タイミングにおいて、制御信号Ss2およびSe2をそれぞれ生成し、生成した制御信号Ss2およびSe2を送信部1および信号処理部5へ出力する。
送信部1は、複数種類の変調方式を用いてそれぞれ生成した複数種類の電波を対象エリアA1へ送信する。より詳細には、送信部1は、たとえば、当該複数種類の電波を時分割送信する。ここで、複数種類の変調方式は、たとえば2周波CW方式およびFM−CW方式である。
なお、複数種類の変調方式は、FM−CW方式および2周波CW方式に限らず、2周波ICW(Interrupted CW)方式またはパルス方式等の他の変調方式であってもよい。また、変調方式は、2種類に限らず、3種類以上であってもよい。
たとえば、2周波ICW方式またはパルス方式を用いる場合、不連続波を用いるので、電波の送信が開始または停止されるタイミングに基づいて電波センサ101と対象物Tgtとの間の距離を算出することができ、また、マルチパスの影響を低減することができる。
また、2周波CW方式を用いる場合、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った物体の移動速度が略同じ2つの物体を分離して検知することが困難である。一方、2周波ICW方式を用いる場合、当該2つの物体間の距離が離れているとき、当該2つの物体を分離して検知することができる。
以下、送信部1が2周波CW方式を用いて生成した周波数F1およびF2の電波を、それぞれ送信波RFt1aおよびRFt1bとも称する。また、送信部1がFM−CW方式を用いて生成した電波を、送信波RFt2とも称する。また、送信波RFt1a、RFt1bおよびRFt2の各々を、送信波RFtとも称する。
たとえば、送信部1におけるVCO24は、電圧発生部25から受ける電圧の大きさに応じた周波数を有する送信波RFtを生成する。
たとえば、電圧発生部25は、制御部4から制御信号Ss1を受けると、制御部4から制御信号St1を受けるまで大きさV1aの電圧を生成してVCO24へ出力する。VCO24は、たとえば、電圧発生部25から大きさV1aの電圧を受けている間、周波数F1を有する24GHz帯の送信波RFt1aを生成してスイッチ26へ出力する。
また、たとえば、電圧発生部25は、制御部4から制御信号St1を受けると、制御部4から制御信号Se1を受けるまで大きさV1bの電圧を生成してVCO24へ出力する。VCO24は、たとえば、電圧発生部25から大きさV1bの電圧を受けている間、周波数F2を有する24GHz帯の送信波RFt1bを生成してスイッチ26へ出力する。
また、たとえば、電圧発生部25は、制御部4から制御信号Ss2を受けると、初期設定値として予め制御部4から受けた周波数掃引幅Δfおよび掃引時間Tsを用いて、制御部4から制御信号Se2を受けるまで大きさが一定の割合で増加する電圧すなわちFM変調電圧を生成してVCO24へ出力する。
VCO24は、たとえば、電圧発生部25から受けるFM変調電圧に応じて、周波数掃引幅Δfが180MHzである24GHz帯の送信波RFt2を生成してスイッチ26へ出力する。
スイッチ26は、VCO24に接続された第1端と、方向性結合器23に接続された第2端とを有する。スイッチ26は、たとえば、制御部4から制御信号Ss1またはSs2を受けると、第1端および第2端を電気的に接続する。また、スイッチ26は、たとえば、制御部4から制御信号Se1またはSe2を受けると、第1端および第2端を電気的に絶縁する。これにより、VCO24が出力する送信波RFtは、送信期間P1,P2において方向性結合器23へ伝送され、かつガード期間Pgにおいて方向性結合器23へ伝送されない。
方向性結合器23は、たとえば、VCO24から受ける送信波RFtをパワーアンプ22および差分信号生成部3へ分配する。
パワーアンプ22は、たとえば方向性結合器23から受ける送信波RFtを増幅し、増幅後の送信波RFtを送信アンテナ21経由で対象エリアA1へ送信する。
図5は、本発明の実施の形態に係る送信アンテナおよび受信アンテナの、上方から見た場合における配置の一例を示す図である。
図3および図5を参照して、受信アンテナ31A〜31Dは、たとえば送信アンテナ21の近傍に位置する。より詳細には、受信アンテナ31A〜31Dは、たとえば、送信アンテナ21と略同じ高さにおいて、対象道路Rd1の横断方向Dcに対して直交する方向Dlに沿って水平に並べて配置される。各受信アンテナ31は、たとえば、交差点CS1側から受信アンテナ31A〜31Dの順番で間隔dを空けて並べられている。
なお、受信アンテナ31A〜31Dは、送信アンテナ21から離れた位置に配置されてもよいが、電波センサ101の構成を簡易にするために、送信アンテナ21の近傍に配置されることが好ましい。
また、受信アンテナ31A〜31Dは、たとえば、並べられた受信アンテナ31A〜31Dの中間位置を指標位置C2,C4,C6,C8を含む直線E1が通るように配置される。
ここで、対象物Tgtからの反射波の受信アンテナ31への入射角φを、たとえば横断方向Dcが0°になり、かつ受信アンテナ31の上方から見て時計回りに増加するように定義する。
なお、送信アンテナ21および複数の受信アンテナ31が別々のアンテナである構成に限らず、複数の受信アンテナ31のうちのいずれか1つのアンテナを送信アンテナとして用いる構成であってもよい。
図3を参照して、受信部2は、対象エリアA1等からの電波を受信する。より詳細には、受信部2が受信する電波には、対象物Tgtによって反射された電波、および対象物Tgt以外の物体である構造物、たとえばガードレールおよびポールによって反射された電波、ならびに電波を送信する電波送信体からの電波等が含まれる。受信部2における受信アンテナ31A〜31Dは、対象エリアA1等からの電波をそれぞれ受信する。
ローノイズアンプ32A〜32Dは、たとえば、受信アンテナ31A〜31Dがそれぞれ受信した電波である受信波RFr1〜RFr4を増幅し、差分信号生成部3へ出力する。
差分信号生成部3は、たとえば、送信部1によって送信される電波の周波数成分と受信部2によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号を生成する。
より詳細には、差分信号生成部3におけるミキサ33A〜ミキサ33Dは、たとえば、送信部1から受ける送信波RFtとローノイズアンプ32A〜32Dからそれぞれ受ける受信波RFr1〜RFr4との差の周波数成分を有する差分信号Ba1〜Ba4を生成する。ミキサ33A〜ミキサ33Dは、たとえば、生成した差分信号Ba1〜Ba4をIFアンプ34A〜34Dへそれぞれ出力する。
IFアンプ34A〜34Dは、たとえば、それぞれ、ミキサ33A〜ミキサ33Dから受ける差分信号Ba1〜Ba4を増幅し、ローパスフィルタ35A〜35Dへ出力する。
ローパスフィルタ35A〜35Dは、IFアンプ34A〜34Dにおいてそれぞれ増幅された差分信号Ba1〜Ba4の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分を減衰させる。
A/Dコンバータ36Aは、たとえば所定のサンプリング周波数fsmplで差分信号Ba1のサンプリング処理を行う。より詳細には、A/Dコンバータ36Aは、たとえば、ローパスフィルタ35Aを通過したアナログ信号である差分信号Ba1を、サンプリング周期である(1/fsmpl)ごとにqビット(qは2以上の整数)のデジタルの差分信号Bd1に変換する。
同様に、A/Dコンバータ36B〜36Dは、たとえば、サンプリング周波数fsmplでそれぞれ差分信号Ba2〜Ba4のサンプリング処理を行い、アナログの差分信号Ba2〜Ba4をデジタルの差分信号Bd2〜Bd4に変換する。
A/Dコンバータ36A〜36Dは、たとえば、変換後の差分信号Bd1〜Bd4をそれぞれ信号処理部5へ出力する。
図6は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける信号処理部の構成を示す図である。
図6を参照して、信号処理部5は、メモリ41と、FFT(Fast Fourier Transform)処理部42と、DBF(Digital Beamforming)処理部43と、合成部44とを含む。
信号処理部5におけるメモリ41は、たとえば、A/Dコンバータ36A〜36Dからそれぞれ受ける差分信号Bd1〜Bd4を蓄積する。
FFT処理部42は、たとえば、制御部4から受ける制御信号Ss1,St1,Se1,Ss2,Se2に基づいて、送信波RFt1a、RFt1bまたはRFt2に対応する差分信号Bd1〜Bd4のメモリ41における蓄積状況を認識する。
FFT処理部42は、たとえば、送信波RFt1aに対応する差分信号Bd1〜Bd4のメモリ41における蓄積が完了すると、メモリ41に蓄積された差分信号Bd1〜Bd4を取得し、取得した差分信号Bd1〜Bd4に対してそれぞれFFT処理を行う。
より詳細には、FFT処理部42は、たとえば、差分信号Bd1に対してFFT処理を行うことにより、パワースペクトルFS1および位相スペクトルPS1を生成する。ここで、パワースペクトルFS1は、たとえば、時間Ttfの間蓄積された差分信号Bd1に含まれる各周波数成分の振幅を示す。また、位相スペクトルPS1は、たとえば、時間Ttfの間蓄積された差分信号Bd1に含まれる各周波数成分の位相を示す。
同様に、FFT処理部42は、たとえば、それぞれ、差分信号Bd2〜Bd4に対してFFT処理を行うことにより、パワースペクトルFS2および位相スペクトルPS2、パワースペクトルFS3および位相スペクトルPS3、ならびにパワースペクトルFS4および位相スペクトルPS4を生成する。
FFT処理部42は、たとえば、生成したパワースペクトルFS1〜FS4および位相スペクトルPS1〜PS4に、送信波RFt1aに対応するスペクトルであることを示す識別子ID1aを付してDBF処理部43へ出力する。
FFT処理部42は、送信波RFt1bおよびRFt2に対応する差分信号Bd1〜Bd4についても同様にFFT処理を行い、送信波RFt1bおよびRFt2にそれぞれ対応するスペクトルであることを示す識別子ID1bおよびID2を付した、パワースペクトルFS1〜FS4および位相スペクトルPS1〜PS4をDBF処理部43へ出力する。
DBF処理部43は、たとえば、FFT処理部42から受ける位相スペクトルPS1〜PS4に対してデジタルビームフォーミング処理を行うことにより、遅延位相スペクトルDPS1〜DPS4をそれぞれ生成する。
より詳細には、DBF処理部43は、たとえば、計算対象の入射角φとして対象角度φcを複数種類設定する。具体的には、対象角度φcは、たとえば−90°〜+90°の範囲において15°刻みである。
DBF処理部43は、たとえば、設定した対象角度φcごとに、受信アンテナ31A〜31Dの遅延位相をそれぞれ算出する。ここで、遅延位相は、たとえば、ある波長を有する平面波の電波が入射角φcで受信アンテナ31A〜31Dに向かって伝搬する場合において、受信アンテナ31A〜31Dが当該電波をそれぞれ受信する際の位相の遅れである。
DBF処理部43は、たとえば、対象角度φcごとに、受信アンテナ31Aに対応する遅延位相を用いて、位相スペクトルPS1から遅延位相スペクトルDPS1を生成する。同様に、DBF処理部43は、たとえば、対象角度φcごとに、受信アンテナ31B〜31Cに対応する遅延位相を用いて、位相スペクトルPS2〜PS4から遅延位相スペクトルDPS2〜DPS4をそれぞれ生成する。この際、DBF処理部43は、たとえば、位相スペクトルPS1〜PS4に付された識別子を遅延位相スペクトルDPS1〜DPS4に付す。
DBF処理部43は、たとえば、対象角度φcごとの遅延位相スペクトルDPS1〜DPS4、およびパワースペクトルFS1〜FS4を合成部44へ出力する。
たとえば、合成部44は、対象角度φcごとに、当該対象角度φcに対応する遅延位相スペクトルDPS1〜DPS4、およびパワースペクトルFS1〜FS4を合成することにより合成パワースペクトルおよび合成位相スペクトルを生成する。
より詳細には、合成部44は、たとえば、DBF処理部43から識別子を付された、対象角度φcごとの遅延位相スペクトルDPS1〜DPS4、およびパワースペクトルFS1〜FS4を受けると、以下の処理を行う。
すなわち、合成部44は、たとえば、識別子ごとかつ対象角度φcごとに、遅延位相スペクトルDPS1〜DPS4の位相をパワースペクトルFS1〜FS4にそれぞれ反映させ、位相が反映されたパワースペクトルFS1〜FS4を合成して合成パワースペクトルおよび合成位相スペクトルを生成する。この際、合成部44は、たとえば、合成パワースペクトルおよび合成位相スペクトルに当該識別子を付す。
以下、識別子ID1aの付された対象角度φcごとの合成パワースペクトルを、合成パワースペクトル[F1,φall]とも称する。また、合成パワースペクトル[F1,φall]のうち、対象角度φcについての合成パワースペクトルを、合成パワースペクトル[F1,φc]とも称する。
また、識別子ID1bの付された対象角度φcごとの合成パワースペクトルを、合成パワースペクトル[F2,φall]とも称する。また、合成パワースペクトル[F2,φall]のうち、対象角度φcについての合成パワースペクトルを、合成パワースペクトル[F2,φc]とも称する。
また、識別子ID2の付された対象角度φcごとの合成パワースペクトルを、合成パワースペクトル[FM,φall]とも称する。また、合成パワースペクトル[FM,φall]のうち、対象角度φcについての合成スペクトルを、合成パワースペクトル[FM,φc]とも称する。
合成部44は、たとえば、合成パワースペクトル[F1,φall]、[F2,φall]および[FM,φall]、ならびにこれらに対応する合成位相スペクトルを検知部7へ出力する。
再び図3を参照して、検知部7は、受信部2によって受信された電波に基づいて、上記変調方式すなわち送信部1において用いられた変調方式を用いて対象エリアA1におけるサブエリアごとに対象物Tgtを検知する。
ここで、検知部7は、たとえば、サブエリアSAes、SAerおよびSAirの位置を認識している。サブエリアSAes、SAerおよびSAirの位置は、たとえば、電波センサ101を原点とする場合における、指標位置C1〜C8の座標である。
検知部7は、たとえば、指標位置C1〜C8の直交座標系における座標および極座標系における座標を保持している。指標位置C1〜C8の座標は、たとえばセンサ設置者が初期設定を行う際に設定される。
また、検知部7は、たとえば、サブエリアにおいて対象物Tgtが存在しないとした状態における復調信号の大きさを保持している。ここで、サブエリアにおいて対象物Tgtが存在しないとした状態における復調信号の大きさは、たとえば対象角度φcごとの背景スペクトルである。
対象角度φcごとの背景スペクトルは、以下のように測定される。すなわち、センサ設置者は、たとえば、サブエリアSAes、SAerおよびSAirにおいて対象物Tgtが存在しない状態であると判断した場合において、電波センサ101を動作させて送信波RFt2を対象エリアA1へ送信する。
そして、検知部7は、合成部44から受ける合成パワースペクトル[FM,φall]を対象角度φcごとの背景スペクトルとして保持する。
以下、対象角度φcごとの背景スペクトルを、背景スペクトル[BK,φall]とも称する。また、背景スペクトル[BK,φall]のうち、対象角度φcについての背景スペクトルを、背景スペクトル[BK,φc]とも称する。
検知部7は、たとえば、受信部2によって受信された電波のFM−CW方式に基づく復調後の信号である復調信号の大きさが、サブエリアにおいて対象物Tgtが存在しないとした状態における復調信号の大きさに基づくしきい値より小さい場合、当該サブエリアにおいて対象物Tgtが存在しないと判定する。
より詳細には、検知部7は、たとえば、対象角度φcごとに、合成パワースペクトル[FM,φc]における各周波数成分が、背景スペクトル[BK,φc]に対して所定の演算処理を施したスペクトルにおける各周波数成分よりそれぞれ小さい場合、当該サブエリアにおいて対象物Tgtが存在しないと判定する。この例では、上記所定の演算処理として、たとえば背景スペクトル[BK,φc]における各周波数成分に対して所定値Thfm1が加えられる。
具体的には、検知部7は、たとえば、合成パワースペクトル[F1,φall]、[F2,φall]および[FM,φall]をこの順に合成部44から受けると、単位シーケンスUSが完了したと認識し、以下のダーク処理を行う。
すなわち、検知部7は、たとえば、合成パワースペクトル[FM,φall]および背景スペクトル[BK,φall]を用いてダーク処理を行うことにより対象角度φcごとの処理スペクトルを生成する。
以下、対象角度φcごとの処理スペクトルを、処理スペクトル[PR,φall]とも称する。また、処理スペクトル[PR,φall]のうち、対象角度φcについての処理スペクトルを、処理スペクトル[PR,φc]とも称する。
より詳細には、検知部7は、たとえば、対象角度φcごとに、合成パワースペクトル[FM,φc]の各周波数成分から背景スペクトル[BK,φc]の各周波数成分を差し引くことにより、対象角度φcごとの処理スペクトルすなわち処理スペクトル[PR,φall]を生成する。
検知部7は、たとえば、処理スペクトル[PR,φall]に対してFMピーク検出処理を行う。より詳細には、検知部7は、たとえば、処理スペクトル[PR,φall]を解析し、しきい値Thfm1以上の強度を有するピークの検出を試みる。
検知部7は、たとえば、FMピーク検出処理においてピークを検出できなかった場合、サブエリアSAes、SAerおよびSAirにおいて対象物Tgtが存在しないと判定する。
一方、検知部7は、たとえば、FMピーク検出処理において1または複数のピークを検出できた場合、対象エリアA1において対象物Tgtが存在すると認識し、検出した1または複数のピークに対応する距離Lpを算出する。
より詳細には、検知部7は、たとえば、検出した1または複数のピークに対応する周波数Fbを処理スペクトル[PR,φall]から取得し、取得した周波数Fb、ならびに制御部4から受けた周波数掃引幅Δfおよび掃引時間Tsを以下の式(1)に代入することにより距離Lpを算出する。
ここで、cは光速である。検知部7は、たとえば、検出した1または複数のピークのうち、距離Lpの値が同じ程度のピークをグループ化し、グループ化した各ピークの中で最大の強度を有するピークを対象ピークとして取得する。対象ピークの個数は、1つの場合もあるし、複数の場合もある。
検知部7は、たとえば、対象ピークを取得すると、以下の対象ピーク処理を行う。すなわち、検知部7は、たとえば、対象ピークに対応する距離Lpすなわち対象距離Lpd、および対象ピークの含まれる処理スペクトル[PR,φcd]に対応する対象角度すなわちφcdを取得し、取得した対象距離Lpdおよび対象角度φcdによって定まる位置を対象物Tgtの位置(図5参照)として特定する。
検知部7は、たとえば、算出した距離Lpdおよび対象角度φcdを含む極座標系の座標を変換し、対象物Tgtの位置を示す直交座標系の座標(以下、対象直交座標とも称する。)を算出する。
検知部7は、たとえば、対象直交座標、および保持している指標位置C1〜C8の直交座標系における座標に基づいて、対象物TgtがサブエリアSAes、SAerおよびSAirのいずれに位置するかを確認する。
検知部7は、たとえば、対象物TgtがサブエリアSAes、SAerおよびSAirのいずれにも位置しない場合、サブエリアSAes、SAerおよびSAirにおいて対象物Tgtが存在しないと判定する。
一方、検知部7は、たとえば、対象物TgtがサブエリアSAes、SAerおよびSAirのいずれかに位置する場合、対象物Tgtが位置するサブエリアを特定する。
[待機エリア処理および軌跡推定処理]
検知部7は、たとえば、対象物Tgtが位置するサブエリアをSAesすなわち待機エリアと特定した場合、以下の待機エリア処理を行う。すなわち、検知部7は、たとえば、待機エリアでは対象物Tgtが歩行者Tgt2に限定されるので、待機エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する。
また、検知部7は、たとえば、推定部として、対象物Tgtの位置の時間変化を示す軌跡を推定する。具体的には、検知部7は、たとえば、m秒間連続で歩行者Tgt2が待機エリアに位置すると判断した場合、以下の軌跡推定処理を行う。すなわち、検知部7は、たとえば、当該m秒間における対象直交座標の示す位置の軌跡(以下、過去軌跡とも称する。)が歩行者Tgt2の移動の軌跡として妥当であるとき、当該m秒間において測定された歩行者Tgt2の位置の時間変化に基づいて、未来のn秒間の歩行者Tgt2の軌跡(以下、未来軌跡とも称する。)を推定する。
より詳細には、過去軌跡は、たとえば、軌跡推定処理を行うタイミングを基準とした直近の過去m秒間における、歩行者Tgt2の位置と当該歩行者Tgt2が当該位置に存在した時刻との関係を示す。また、未来軌跡は、たとえば、当該タイミングを基準とした直近の未来のn秒間における、歩行者Tgt2が存在すると推定した位置と当該歩行者Tgt2が当該位置に存在するであろう時刻との関係を示す。
ここで、検知部7は、過去軌跡が歩行者Tgt2の移動の軌跡として妥当であるか否かの判断を、以下のように行う。すなわち、検知部7は、たとえば、m秒間連続で対象物Tgtが待機エリアに位置すると判定するたびに、過去軌跡を蓄積する。そして、検知部7は、たとえば、過去軌跡が十分に蓄積されると、蓄積した過去軌跡を統計処理することにより、歩行者Tgt2がm秒間に動き得る範囲を有効範囲として導出する。
検知部7は、たとえば、過去軌跡が有効範囲に含まれる場合、当該過去軌跡が歩行者Tgt2の移動の軌跡として妥当であると判断する。
検知部7は、推定した未来軌跡を、たとえば、当該未来軌跡を推定したタイミングからn秒経過したタイミングで破棄する。すなわち、未来軌跡の有効期間は、当該未来軌跡が推定されたタイミングからn秒間である。
また、検知部7は、たとえば、待機エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定し、かつ判定したタイミングにおける歩行者Tgt2の位置が未来軌跡に含まれる場合、以下の処理を行う。すなわち、検知部7は、たとえば、当該未来軌跡を、当該タイミングまでのm秒間のデータに基づいて推定した未来軌跡に更新する。
[流入エリア処理および軌跡推定処理]
検知部7は、各サブエリアのうち、少なくともいずれか1つのサブエリアにおいて、複数種類の変調方式を用いて対象物Tgtを検知する。
たとえば、検知部7は、各サブエリアのうち、交差点CS1へ流入する車両が通過する道路の部分と横断歩道との重複エリアの少なくとも一部を含むサブエリアである流入エリアにおいて、複数種類の変調方式、具体的にはFM−CW方式および2周波CW方式を用いて対象物Tgtを検知する。
たとえば、検知部7は、対象角度φcごとのしきい値Thfmi[φc]を保持している。しきい値Thfmi[φc]は、たとえば、サブエリアSAirすなわち流入エリアにおいて、自動車Tgt1からの反射波に基づく対象ピークの強度、および歩行者Tgt2からの反射波に基づく対象ピークの強度を区別するためのしきい値である。
検知部7は、たとえば、対象物Tgtが位置するサブエリアを流入エリアと特定した場合、流入エリアでは対象物Tgtとして自動車Tgt1および歩行者Tgt2が混在する可能性があるので、以下の流入エリア処理を行う。
すなわち、検知部7は、たとえば、受信部2によって受信された流入エリアからの電波のFM−CW方式に基づく復調後の信号の大きさが所定条件Ci1を満たす場合、2周波CW方式を用いて流入エリアにおける対象物Tgtを検知する。
より詳細には、所定条件Ci1は、たとえば、対象ピークの強度がしきい値Thfmi[φcd]より大きいことである。
この場合、検知部7は、たとえば、2周波CW方式により取得された合成パワースペクトル[F1,φcd]に対して2Fピーク検出処理を行う。より詳細には、検知部7は、たとえば、合成パワースペクトル[F1,φcd]を解析し、所定の強度しきい値Thp以上の強度、および所定の周波数しきい値Thf以上の周波数を有するピークの検出を試みる。
ここで、周波数しきい値Thfは、たとえば対象物Tgtの検出対象速度vtに基づいて定められる。検出対象速度vtは、たとえば、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った対象物Tgtの移動速度である。
検知部7は、たとえば、2Fピーク検出処理においてピークが検出できなかった場合、流入エリアにおいて移動している対象物Tgtが存在しないと判断し、流入エリアにおいて歩行者Tgt2なしと判定する。
一方、検知部7は、たとえば、2Fピーク検出処理において1または複数のピークを検出できた場合、合成パワースペクトル[F1,φcd]および[F2,φcd]にそれぞれ対応する各合成位相スペクトルにおいて、検出した1または複数のピークに対応する位相をそれぞれ取得する。
そして、検知部7は、たとえば、非特許文献1および2に記載された方法に従って、取得した各位相に基づいて、1または複数のピークに対応する距離を算出する。検知部7は、算出した距離、および対象角度φcdの示す位置が流入エリアに含まれる場合、流入エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する。
また、検知部7は、たとえば、受信部2によって受信された流入エリアからの電波のFM−CW方式に基づく復調後の信号の大きさが所定条件Ci1を満たさない場合、具体的には、対象ピークの強度がしきい値Thfmi[φcd]以下である場合、流入エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する。
また、検知部7は、たとえば、m秒間連続で歩行者Tgt2が流入エリアに位置すると判断した場合、待機エリアに対して行う上述の軌跡推定処理を流入エリアに対して同様に行う。
[流出エリア処理および歩行者推定処理]
検知部7は、たとえば、対象角度φcごとのしきい値Thfme[φc]を保持している。しきい値Thfme[φc]は、たとえば、サブエリアSAerすなわち流出エリアにおいて、自動車Tgt1からの反射波に基づくピーク強度、および歩行者Tgt2からの反射波に基づくピーク強度を区別するためのしきい値である。
検知部7は、たとえば、受信部2によって受信された流出エリアからの電波の復調後の信号の大きさが所定条件を満たす場合、推定した軌跡に基づいて、流出エリアにおける対象物Tgtを検知する。
より詳細には、検知部7は、たとえば、受信部2によって受信された流出エリアからの電波のFM−CW方式に基づく復調後の信号の大きさが所定条件を満たす場合、推定した軌跡に基づいて、流出エリアにおける対象物Tgtを検知する。なお、変調方式は、FM−CW方式に限定されるものではなく、たとえば前述のような他の変調方式であってもよい。
具体的には、検知部7は、たとえば、対象物Tgtが位置するサブエリアを流出エリアと特定した場合、流出エリアでは対象物Tgtとして自動車Tgt1および歩行者Tgt2が混在する可能性があるので、以下の流出エリア処理を行う。
すなわち、検知部7は、たとえば、対象ピークの強度がしきい値Thfme[φcd]以下である場合、流出エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する。
一方、検知部7は、たとえば、対象ピークの強度がしきい値Thfme[φcd]より大きい場合、以下の歩行者推定処理を行う。
すなわち、検知部7は、たとえば、過去に行った軌跡推定処理において推定した未来軌跡に基づいて、当該未来軌跡における歩行者Tgt2が現在流出エリアに位置することが推定される場合、流出エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する。
一方、検知部7は、たとえば、当該未来軌跡における歩行者Tgt2が現在流出エリアに位置しないことが推定される場合、流出エリアにおいて歩行者Tgt2なしと判定する。
検知部7は、たとえば判定結果を検知結果として中継装置141経由で信号制御装置151へ送信する。
[動作]
電波センサ101は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下に示すフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図7は、本発明の実施の形態に係る電波センサが単位シーケンスにおいて対象物の検知を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図7を参照して、電波センサ101が、背景スペクトル[BK,φall]を保持している状況を想定する。
まず、電波センサ101は、送信期間P1において、送信波RFt1aを時間Ttfの間対象エリアA1へ送信した後、送信波RFt1bを時間Ttfの間対象エリアA1へ送信する(ステップS102)。
次に、電波センサ101は、送信期間P2において、送信波RFt2を掃引時間Tsの間対象エリアA1へ送信する(ステップS104)。
次に、電波センサ101は、受信した電波に基づいて合成パワースペクトル[FM,φall]を作成し、作成した合成パワースペクトル[FM,φall]、および背景スペクトル[BK,φall]を用いてダーク処理を行うことにより処理スペクトル[PR,φall]を生成する(ステップS106)。
次に、電波センサ101は、生成した処理スペクトル[PR,φall]に対してFMピーク検出処理を行うことにより、しきい値Thfm1以上の強度を有するピークの検出を試みる(ステップS108)。
次に、電波センサ101は、しきい値Thfm1以上の強度を有するピークを検出できなかった場合(ステップS110でNO)、サブエリアSAes、SAerおよびSAirにおいて対象物Tgtが存在しないと判定する(ステップS116)。
一方、電波センサ101は、しきい値Thfm1以上の強度を有する1または複数のピークを検出できた場合(ステップS110でYES)、検出した1または複数のピークに対応する距離Lp、および当該1または複数のピークの強度に基づいて、当該1または複数のピークから対象ピークを取得する(ステップS112)。
次に、電波センサ101は、取得した対象ピークに対して対象ピーク処理を行う(ステップS114)。
図8は、本発明の実施の形態に係る電波センサが対象ピーク処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図8は、図7のステップS114における動作の詳細を示している。
図8を参照して、電波センサ101が、対象ピークを1つ取得した状況を想定する。なお、電波センサ101が複数の対象ピークを取得した場合、電波センサ101は、取得した対象ピークごとに以下の処理を繰り返し行う。
まず、電波センサ101は、対象ピークに対応する対象距離Lpdおよび対象角度φcdを取得し、取得した対象距離Lpdおよび対象角度φcdによって定まる位置を対象物Tgtの位置として特定する(ステップS202)。
次に、電波センサ101は、特定した位置を示す対象直交座標、および保持している指標位置C1〜C8の直交座標系における座標に基づいて、対象物TgtがサブエリアSAes、SAerおよびSAirのいずれに位置するかを確認する(ステップS204)。
次に、電波センサ101は、対象物TgtがサブエリアSAes、SAerおよびSAirのいずれにも位置しない場合(ステップS206でNO、ステップS210でNOおよびステップS214でNO)、サブエリアSAes、SAerおよびSAirにおいて対象物Tgtが存在しないと判定する(ステップS218)。
一方、電波センサ101は、対象物Tgtが位置するサブエリアを待機エリアと特定した場合(ステップS206でYES)、待機エリア処理および軌跡推定処理を行う(ステップS208)。
また、電波センサ101は、対象物Tgtが位置するサブエリアを流入エリアと特定した場合(ステップS206でNOおよびステップS210でYES)、流入エリア処理および軌跡推定処理を行う(ステップS212)。
また、電波センサ101は、対象物Tgtが位置するサブエリアを流出エリアと特定した場合(ステップS206でNO、ステップS210でNOおよびステップS214でYES)、流出エリア処理および歩行者推定処理を行う(ステップS216)。
図9は、本発明の実施の形態に係る電波センサが待機エリア処理および軌跡推定処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図9は、図8のステップS208における動作の詳細を示している。
図9を参照して、まず、電波センサ101は、待機エリアすなわちサブエリアSAesでは対象物Tgtが歩行者Tgt2に限定されるので、待機エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する(ステップS302)。
次に、電波センサ101は、待機エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定したタイミングにおける歩行者Tgt2の位置が未来軌跡に含まれる場合(ステップS304でYES)、当該未来軌跡を更新する(ステップS312)。
一方、電波センサ101は、待機エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定したタイミングにおける歩行者Tgt2の位置が未来軌跡に含まれない場合(ステップS304でNO)、以下の処理を行う。
すなわち、電波センサ101は、m秒間連続で歩行者Tgt2が待機エリアに位置すると判断し、かつ過去軌跡が歩行者Tgt2の移動の軌跡として妥当である場合(ステップS306でYESおよびステップS308でYES)、当該m秒間において測定された歩行者Tgt2の位置の時間変化に基づいて未来軌跡を推定する(ステップS310)。
一方、電波センサ101は、m秒間連続で歩行者Tgt2が待機エリアに位置しないと判断した場合(ステップS306でNO)、または過去軌跡が歩行者Tgt2の移動の軌跡として妥当でない場合(ステップS308でNO)、未来軌跡の推定を行わない。
図10は、本発明の実施の形態に係る電波センサが流入エリア処理および軌跡推定処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図10は、図8のステップS212における動作の詳細を示している。
図10を参照して、まず、電波センサ101は、対象ピークの強度がしきい値Thfmi[φcd]より大きい場合(ステップS402でYES)、2周波CW方式により取得された合成パワースペクトル[F1,φcd]に対して2Fピーク検出処理を行うことにより、強度しきい値Thp以上の強度、および周波数しきい値Thf以上の周波数を有するピークの検出を試みる(ステップS404)。
次に、電波センサ101は、ピークを検出できなかった場合(ステップS406でNO)、流入エリアすなわちサブエリアSAirにおいて歩行者Tgt2なしと判定する(ステップS414)。
一方、電波センサ101は、1または複数のピークを検出できた場合(ステップS406でYES)、検出した1または複数のピークに対応する距離を算出する(ステップS408)。
次に、電波センサ101は、算出した距離、および対象角度φcdの示す位置が流入エリアに含まれない場合(ステップS410でNO)、流入エリアにおいて歩行者Tgt2なしと判定する(ステップS414)。
一方、電波センサ101は、算出した距離、および対象角度φcdの示す位置が流入エリアに含まれる場合(ステップS410でYES)、または対象ピークの強度がしきい値Thfmi[φcd]以下である場合(ステップS402でNO)、流入エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する(ステップS412)。
次に、電波センサ101は、流入エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定したタイミングにおける歩行者Tgt2の位置が未来軌跡に含まれる場合(ステップS416でYES)、当該未来軌跡を更新する(ステップS424)。
一方、電波センサ101は、流入エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定したタイミングにおける歩行者Tgt2の位置が未来軌跡に含まれない場合(ステップS416でNO)、以下の処理を行う。
すなわち、電波センサ101は、m秒間連続で歩行者Tgt2が流入エリアに位置すると判断し、かつ過去軌跡が歩行者Tgt2の移動の軌跡として妥当である場合(ステップS418でYESおよびステップS420でYES)、当該m秒間において測定された歩行者Tgt2の位置の時間変化に基づいて未来軌跡を推定する(ステップS422)。
一方、電波センサ101は、m秒間連続で歩行者Tgt2が流入エリアに位置しないと判断した場合(ステップS418でNO)、または過去軌跡が歩行者Tgt2の移動の軌跡として妥当でない場合(ステップS420でNO)、未来軌跡の推定を行わない。
図11は、本発明の実施の形態に係る電波センサが流出エリア処理および歩行者推定処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図11は、図8のステップS216における動作の詳細を示している。
図11を参照して、まず、電波センサ101は、対象ピークの強度がしきい値Thfme[φcd]より大きい場合(ステップS502でYES)、過去において推定された軌跡、具体的には軌跡推定処理において推定した未来軌跡において、歩行者Tgt2が現在流出エリアに位置することが推定されるか否かを判断する(ステップS504)。
電波センサ101は、歩行者Tgt2が現在流出エリアに位置することが推定されると判断した場合(ステップS504でYES)、流出エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する(ステップS506)。
一方、電波センサ101は、歩行者Tgt2が現在流出エリアに位置することが推定されないと判断した場合(ステップS504でNO)、流出エリアにおいて歩行者Tgt2なしと判定する(ステップS508)。
また、電波センサ101は、対象ピークの強度がしきい値Thfme[φcd]以下である場合(ステップS502でNO)、流出エリアにおいて歩行者Tgt2ありと判定する(ステップS506)。
なお、本発明の実施の形態に係る送信部は、変調方式の異なる複数種類の電波を時分割で対象エリアA1へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。送信部1は、当該複数種類の電波を並行して対象エリアA1へ送信する構成であってもよい。この場合、送信部1は、たとえば、各種類の電波の周波数帯を、フィルタ等で分離可能な周波数帯に設定する。
ところで、特許文献1に記載の物体識別装置では、音波または電磁波の照射処理および検出処理と、画像処理とを用いて物体の種別を識別するため、装置の構成が複雑になり、かつコストがかかるという問題がある。
これに対して、本発明の実施の形態に係る電波センサは、横断歩道PC1を含む対象エリアA1における対象物Tgtを検知可能である。送信部1は、複数種類の変調方式を用いてそれぞれ生成した複数種類の電波を対象エリアA1へ送信する。受信部2は、電波を受信する。検知部7は、受信部2によって受信された電波に基づいて、上記変調方式を用いて対象エリアA1におけるサブエリアごとに対象物Tgtを検知する。そして、検知部7は、各サブエリアのうち、少なくともいずれか1つのサブエリアにおいて、複数種類の変調方式を用いて対象物Tgtを検知する。
このような構成により、たとえば、ある変調方式では検知することが困難な状態にある対象物Tgtであっても、他の変調方式を用いて当該対象物Tgtを検知することができるので、横断歩道PC1における対象物Tgtの検知精度を向上させることができる。また、画像処理を行うことなく対象物Tgtを検知することができるので、電波センサ101を低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、横断歩道における対象物を精度よく検知することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、検知部7は、各サブエリアのうち、交差点CS1へ流入する車両が通過する道路の部分と横断歩道PC1との重複エリアの少なくとも一部を含むサブエリアである流入エリアにおいて、複数種類の変調方式を用いて対象物Tgtを検知する。
このような構成により、たとえば、車両が停止線を越えて停止している状態の発生し得る流入エリアにおいて、1つの変調方式を用いる場合、当該車両を歩行者Tgt2として検知してしまうことがあるが、複数種類の変調方式を用いることで、当該車両を歩行者Tgt2と区別して正しく検知することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、検知部7は、流入エリアにおいて、FM−CW方式および2周波CW方式を用いて対象物Tgtを検知する。
このような構成により、停止している車両と同一距離帯に存在する歩行者Tgt2を検知することが困難である一方で、停止車両および電柱といった停止している物体を検知可能なFM−CW方式、ならびに停止している物体を検知することが困難である一方で、停止している車両と同一距離帯に存在する歩行者Tgt2を検知することが可能な2周波CW方式を用いて流入エリアにおける対象物Tgtを検知する構成により、これらの方式の弱点を互いに補完することができるので、たとえば、車両が停止線を越えて停止している状態であっても、当該車両を歩行者Tgt2と区別して正しく検知することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、検知部7は、受信部2によって受信された流入エリアからの電波のFM−CW方式に基づく復調後の信号の大きさが所定条件Ci1を満たす場合、2周波CW方式を用いて流入エリアにおける対象物Tgtを検知する。
このような構成により、流入エリアにおいて、たとえば、FM−CW方式を用いた車両または歩行者Tgt2の判定が困難な状況において上記所定条件Ci1が満たされる場合、2周波CW方式を用いて車両または歩行者Tgt2の判定を適切に行うことができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、検知部7は、受信部2によって受信された電波のFM−CW方式に基づく復調後の信号である復調信号の大きさが、サブエリアにおいて対象物Tgtが存在しないとした状態における復調信号の大きさに基づくしきい値より小さい場合、サブエリアにおいて対象物Tgtが存在しないと判定する。
このような構成により、電柱または信号機等の背景に対する変化を検知することができるので、サブエリアにおいて、たとえば、歩行者Tgt2が停止しているため、対象物Tgtが存在しないと誤って判定してしまうことを回避することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、検知部7は、対象物Tgtの位置の時間変化を示す軌跡を推定する。そして、検知部7は、受信部2によって受信された流出エリアからの電波の復調後の信号の大きさが所定条件を満たす場合、推定した軌跡に基づいて、流出エリアにおける対象物Tgtを検知する。
このような構成により、電波センサ101が、交差点CS1を右折または左折した自動車Tgt1からの反射波、および横断歩道PC1を移動する歩行者Tgt2からの反射波を同時に受信し、歩行者Tgt2からの反射波に基づく信号の検出が困難な場合においても、推定した軌跡に基づいて、流出エリアにおける歩行者Tgt2を正しく検知することができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
横断歩道を含む対象エリアにおける対象物を検知可能な電波センサであって、
複数種類の変調方式を用いてそれぞれ生成した複数種類の電波を前記対象エリアへ送信する送信部と、
電波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された電波に基づいて、前記変調方式を用いて前記対象エリアにおけるサブエリアごとに前記対象物を検知する検知部とを備え、
前記検知部は、各前記サブエリアのうち、少なくともいずれか1つの前記サブエリアにおいて、複数種類の前記変調方式を用いて前記対象物を検知し、
前記対象物は、人間、自転車または自動車であり、
前記横断歩道は、交差点付近に設けられ、
前記横断歩道が設けられている道路は、前記交差点から流出する自動車が走行する流出道路、および前記交差点へ流入する自動車が走行する流入道路を含み、
前記流出道路に対する前記流入道路の反対側の端には、前記道路に沿って延伸するように第1歩道が設けられ、
前記サブエリアは、前記流出道路および前記横断歩道の重複エリアを含むエリア、前記流入道路および前記横断歩道の重複エリアを含むエリア、および前記横断歩道に隣接する前記第1歩道の一部を含むエリアであり、
前記送信部は、前記複数種類の電波を時分割で前記対象エリアへ送信し、
前記複数種類の変調方式は、FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式、および2周波CW方式を含み、
前記受信部は、4つのアンテナを含み、
前記検知部は、前記4つのアンテナによりそれぞれ受信された電波に基づいて、前記FM−CW方式を用いて前記電波センサから前記対象エリアにおける前記対象物への方向、および前記電波センサと前記対象物との間の距離を算出し、
前記検知部は、算出した前記方向および前記距離に基づいて、前記対象物が位置する前記サブエリアを特定する、電波センサ。