最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る電波センサは、所定のパターンの電波を繰り返し送信する送信部と、電波を受信する受信部と、前記送信部によって送信される電波の周波数成分と前記受信部によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する、前記パターンごとの差分信号を生成するパターン信号取得部と、前記パターンにおける複数のタイミングについて、複数の前記パターンにおける対応の前記タイミングの前記差分信号を加算する加算部と、前記加算部によってそれぞれ加算された、前記複数のタイミングの前記差分信号に基づいて対象物を検知する検知部とを備える。
このような構成により、差分信号におけるシグナル成分とノイズ成分との比すなわちSN比を向上させることができるので、たとえば、歩行者によって反射された電波の強度が弱く、また変動している場合においても、当該電波に基づくシグナル成分を差分信号から正しく取得することができる。これにより、歩行者の未検知の発生を抑制することができる。したがって、電波を用いて対象物をより正しく検知することができる。
(2)好ましくは、前記電波センサは、さらに、前記対象物の移動速度を取得する移動速度取得部を備え、前記加算部は、前記移動速度取得部によって取得された前記移動速度に基づいて、加算対象とすべき前記複数のパターンの個数を決定する。
差分信号の形状の時間的な変化度合いは、対象物の移動速度の大きさに応じて変化する。たとえば、移動速度の大きい場合に加算対象とすべきパターンの個数を小さくし、また、移動速度の小さい場合に当該個数を大きくすることにより、積算後の差分信号において、SN比の改善効果が小さくなってしまうことを防ぐことができる。
(3)好ましくは、前記パターンには、周波数が単位時間あたりで所定量増加する第1のサブパターンと周波数が前記単位時間あたりで前記所定量減少する第2のサブパターンとが含まれ、前記加算部は、前記第1のサブパターンにおける複数のタイミングについて、複数の前記第1のサブパターンにおける対応の前記タイミングの前記差分信号を加算した第1の積算信号を算出し、前記加算部は、前記第2のサブパターンにおける複数のタイミングについて、複数の前記第2のサブパターンにおける対応の前記タイミングの前記差分信号を加算した第2の積算信号を算出し、前記加算部は、前記第1の積算信号と前記第2の積算信号とを対応のタイミングごとに加算する。
このような構成により、たとえば、送信波の周波数が三角波のように時間変化する場合において、差分信号を適切に積算することができる。
(4)好ましくは、前記対象物は、停止している物体である。
停止している物体からの電波に基づくシグナル成分は積算時間を大きくしても変化しない一方、移動している物体からの電波に基づくシグナル成分、およびノイズ成分は時間とともに大きく変化する。このため、たとえば、積算時間を大きくして加算対象とするパターンの個数を多く設定する場合において、停止している物体からの電波に基づくシグナル成分を差分信号からより正しく取得することができる。これにより、たとえば、良好な背景スペクトルの取得、および駐停車車両の検知を行うことができる。
(5)本発明の実施の形態に係る検知プログラムは、所定のパターンの電波を繰り返し送信し、電波を受信する電波センサにおいて用いられる検知プログラムであって、コンピュータを、送信した電波の周波数成分と受信した電波の周波数成分との差の周波数成分を有する、前記パターンごとの差分信号を生成するパターン信号取得部と、前記パターンにおける複数のタイミングについて、複数の前記パターンにおける対応の前記タイミングの前記差分信号を加算する加算部と、前記加算部によってそれぞれ加算された、前記複数のタイミングの前記差分信号に基づいて対象物を検知する検知部と、として機能させるためのプログラムである。
このような構成により、差分信号におけるシグナル成分とノイズ成分との比すなわちSN比を向上させることができるので、たとえば、歩行者によって反射された電波の強度が弱く、また変動している場合においても、当該電波に基づくシグナル成分を差分信号から正しく取得することができる。これにより、歩行者の未検知の発生を抑制することができる。したがって、電波を用いて対象物をより正しく検知することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムの構成を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムの交差点における設置例を斜め上方から見た状態を示す図である。
図1および図2を参照して、安全運転支援システム301は、電波センサ101と、中継装置141と、信号制御装置151と、無線送信装置152と、アンテナ153と、歩行者用信号灯器161とを備える。安全運転支援システム301における信号制御装置151および歩行者用信号灯器161は、交通信号機を構成し、たとえば交差点CS1の近傍に設置される。
[交差点付近について]
たとえば、図2に示すように、交差点CS1付近において横断歩道PC1が設けられている。ここで、横断歩道PC1が設けられている道路を対象道路Rd1と定義する。対象道路Rd1は、交差点CS1を形成する。また、交差点CS1において対象道路Rd1と交差する道路を交差道路Rd2と定義する。
すなわち、対象道路Rd1および交差道路Rd2が交差する部分が交差点CS1である。言い換えると、交差点CS1は、対象道路Rd1と重複し、かつ交差道路Rd2と重複している。なお、交差点CS1において、さらに多数の道路が交差してもよい。
対象道路Rd1は、交差点CS1から流出する図示しない自動車Tgt1が走行する流出道路Rdeと、交差点CS1へ流入する自動車Tgt1が走行する流入道路Rdiとを含む。流出道路Rdeおよび流入道路Rdiの間に、車線TrLが設けられている。
流出道路Rdeに対する流入道路Rdiの反対側の端には、対象道路Rd1に沿って延伸するように歩道Pv1が設けられている。歩道Pv1は、交差点CS1の近傍において円弧形状の隅切りCCeに沿って延伸することにより対象道路Rd1に沿う方向から交差道路Rd2に沿う方向へ延伸方向を変える。
また、流入道路Rdiに対する流出道路Rdeの反対側の端には、対象道路Rd1に沿って延伸するように歩道Pv2が設けられている。歩道Pv2は、交差点CS1の近傍において円弧形状の隅切りCCiに沿って延伸することにより対象道路Rd1に沿う方向から交差道路Rd2に沿う方向へ延伸方向を変える。
対象エリアA1は、電波センサ101から送信された電波の照射範囲の少なくとも一部であり、横断歩道PC1のたとえば全部を含むエリアである。
電波センサ101は、対象エリアA1における物体を検知することが可能である。より詳細には、電波センサ101は、対象エリアA1において、横断歩道PC1を用いて道路を横断する歩行者Tgt2を対象物Tgtとして検知する。ここで、歩行者Tgt2は、歩いている人間に限定されず、自転車等を含む。なお、対象物Tgtには、歩行者Tgt2の他に、対象道路Rd1に沿って走行して横断歩道PC1を通過する自動車Tgt1が含まれてもよい。
[電波センサの設置位置]
電波センサ101は、たとえば対象道路Rd1付近に設置されている。具体的には、電波センサ101は、歩道Pv1に対して対象道路Rd1の反対側に設置された支柱PWに固定されている。より詳細には、電波センサ101は、横断歩道PC1の歩道Pv1側への延長線上に設けられている。
中継装置141は、支柱PWに固定されている。電波センサ101および中継装置141は、図2では図示していないがたとえば信号線で接続されている。中継装置141は、電波センサ101から受信した情報を信号制御装置151へ送信する中継処理を行う。
信号制御装置151および無線送信装置152は、歩道Pv2に設置された支柱PVに固定されている。また、アンテナ153は、支柱PVの頂部に固定されている。
2つの歩行者用信号灯器161は、支柱PWおよびPVにそれぞれ固定されている。信号制御装置151と、無線送信装置152、中継装置141および2つの歩行者用信号灯器161とは、図2では図示していないが信号線でそれぞれ接続されている。無線送信装置152およびアンテナ153は、図2では図示していないが信号線で接続されている。
電波センサ101は、対象エリアA1へ電波を送信する。対象エリアA1内に位置する物体、たとえば、自動車Tgt1、歩行者Tgt2および支柱PV等は、電波センサ101から送信された電波を反射する。電波センサ101は、物体により反射された電波を受信する。
電波センサ101は、受信した電波に基づいて、横断歩道PC1における歩行者Tgt2を検知し、検知結果を中継装置141経由で信号制御装置151へ送信する。
歩行者用信号灯器161は、信号制御装置151の制御に従って、横断歩道PC1を横断する歩行者Tgt2に対して「すすめ」または「とまれ」を点灯して表示する。
たとえば、信号制御装置151は、歩行者用信号灯器161において「すすめ」を点灯する残り時間が少ない場合において、横断歩道PC1において歩行者Tgt2を検知したことを検知結果が示すとき、残り時間の延長を行う。なお、信号制御装置151は、「すすめ」を点灯する残り時間が少ない旨を歩行者Tgt2に音声で通知してもよい。
また、信号制御装置151は、歩行者用信号灯器161において「とまれ」を点灯している場合において、横断歩道PC1において歩行者Tgt2を検知したことを検知結果が示すとき、危険である旨を歩行者Tgt2に音声で警告する。
また、信号制御装置151は、電波センサ101から受信した検知結果に基づいて自動車Tgt1に対してサービスを提供する。
具体的には、信号制御装置151は、歩行者Tgt2が横断歩道PC1に存在することを検知結果が示すとき、横断歩道PC1における歩行者Tgt2に注意すべき旨を示す歩行者警戒情報を作成し、作成した歩行者警戒情報を無線送信装置152へ送信する。
無線送信装置152は、信号制御装置151から歩行者警戒情報を受信すると、受信した歩行者警戒情報を含む電波を生成し、生成した電波をアンテナ153経由で送信することにより、交差点CS1周辺に位置する自動車Tgt1へ歩行者警戒情報を報知する。
たとえば、交差道路Rd2から右折または左折して横断歩道PC1を通過しようとする図示しない自動車Tgt1は、無線送信装置152から送信された電波を受信すると、受信した電波に含まれる歩行者警戒情報を取得し、取得した歩行者警戒情報に基づいて、横断歩道PC1における横断対象物に注意すべき旨を当該自動車Tgt1の運転者に通知する。
[電波センサの構成]
図3は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムにおける電波センサの構成を示す図である。
図3を参照して、電波センサ101は、送信部1と、受信部2と、差分信号生成部3と、制御部4と、信号処理部5と、クロック生成回路6と、検知処理部(検知部および移動速度取得部)7とを備える。
送信部1は、送信アンテナ21と、パワーアンプ22と、方向性結合器23と、VCO(Voltage−Controlled Oscillator)24と、電圧発生部25と、スイッチ26とを含む。受信部2は、受信アンテナ31と、ローノイズアンプ32とを含む。
差分信号生成部3は、ミキサ33と、IF(Intermediate Frequency)アンプ34と、ローパスフィルタ35と、A/Dコンバータ(ADC)36とを含む。
電波センサ101は、たとえば、非特許文献1(四分一 浩二、外2名、”拡大するミリ波技術の応用”、[online]、[平成28年5月22日検索]、インターネット〈URL:http://www.spc.co.jp/spc/pdf/giho21_09.pdf〉)および非特許文献2(稲葉 敬之、桐本 哲郎、”車載用ミリ波レーダ”、自動車技術、2010年2月、第64巻、第2号、P.74−79)に記載された、FM−CW方式を用いて対象物Tgtを検知するレーダである。
図4は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける制御部が設定する検知期間および各シーケンスの一例を示す図である。なお、図4において、横軸は時間を示す。
図4を参照して、電波センサ101における制御部4は、たとえば、自己の電波センサ101が対象物Tgtの検知結果を1回出力する検知期間を設定する。
より詳細には、制御部4は、たとえば、対象物Tgtの移動速度に基づいて、長さPmを有する検知期間を設定する。長さPmは、たとえば可変である。検知期間の長さPmの設定方法の詳細については、後述する。
検知期間には、たとえばSeq1〜SeqMのM個のシーケンスが含まれる。ここで、Mは、2以上の整数である。1つのシーケンスにおいて、1つのパターンの電波または1つのサブパターンの電波が送信部1から送信される。
図5は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける制御部およびクロック生成回路がそれぞれ生成するトリガ信号およびクロック信号の各波形の一例を示す図である。なお、図5において、横軸は時間を示し、縦軸は各信号のレベルを示す。
図5を参照して、クロック生成回路6は、たとえばクロック信号を生成する。具体的には、クロック生成回路6は、たとえば、図5に示すように、周期Tcを有する矩形波のクロック信号CSを生成する。クロック生成回路6は、生成したクロック信号CSを制御部4および差分信号生成部3へ出力する。
制御部4は、各シーケンスを設定する。より詳細には、制御部4は、各シーケンスの開始タイミングごとにトリガ信号TSを生成し、生成したトリガ信号TSを送信部1および信号処理部5へ出力する。
具体的には、制御部4は、たとえば、クロック生成回路6から受けるクロック信号CSの立ち上がりエッジの個数をカウントし、当該エッジをNs個カウントするごとにトリガ信号TSを生成して出力する。ここで、Nsは、2以上の整数であり、所定値であってもよいし、可変であってもよい。また、周期TcにNsを乗じた値が、1シーケンスの周期Ttである。この例では、周期Ttが、たとえば0.1ミリ秒〜数ミリ秒になるようにNsの値が設定される。
図6は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける送信部および差分信号生成部がそれぞれ生成する送信波および差分信号の各波形の一例を示す図である。なお、図6において、横軸は時間を示し、縦軸は、紙面の上側から順に、送信電波および受信電波の周波数Ft,Fr、差分信号の周波数Fb、ならびに差分信号の振幅Abを示す。また、送信電波の周波数Ftは実線で表され、受信電波の周波数Frは破線で表されている。図6では、送信電波に対する受信電波の遅延が示されている。
図3および図6を参照して、送信部1は、所定のパターンの電波を繰り返し送信する。具体的には、送信部1は、たとえば、FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアA1へ繰り返し送信する。より詳細には、送信部1は、たとえば、図6に示すように、周波数Ftが単位時間あたりで所定量増加するパターンPt1の電波を対象エリアA1へ繰り返し送信する。
なお、送信部1は、周波数Ftが単位時間あたりで所定量減少するパターンの電波を送信してもよい。また、送信部1が送信する電波のパターンは、図6に示すように周波数の時間変化により定められる構成に限らず、振幅の時間変化により定められる構成であってもよい。
制御部4は、FM−CW方式において用いる送信パラメータを送信部1、信号処理部5および検知処理部7へたとえば検知期間ごとに出力する。ここで、送信パラメータには、掃引開始周波数F2、周波数掃引方向、周波数掃引幅Δf、1シーケンスの長さである周期Tt、掃引時間Ts、および検知期間の長さPmが含まれる。
また、制御部4は、トリガ信号TSを生成してから掃引時間Ts経過したタイミングにおいて、送信部1から電波が送信されないガード期間の開始タイミングを示すガード信号GSを生成して送信部1へ出力する。
ガード信号GSは、クロック信号CSと同期している。ガード期間は、たとえば各シーケンスの後部に設けられ、ガード信号GSが出力されてから次のシーケンスの開始タイミングを示すトリガ信号TSが出力されるまで継続する。なお、ガード期間は、各シーケンスの前部に設けられてもよい。
送信部1における電圧発生部25は、制御部4からトリガ信号TSを受けると、送信パラメータとして予め制御部4から受けた掃引開始周波数F2、周波数掃引方向、周波数掃引幅Δfおよび掃引時間Tsを用いて、制御部4からガード信号GSを受けるまで、大きさが一定の割合で増加する電圧(以下、FM変調電圧とも称する。)を生成してVCO24へ出力する。
VCO24は、電圧発生部25から受ける電圧の大きさに応じた周波数を有する送信波RFtを生成する。
より詳細には、VCO24は、電圧発生部25から受けるFM変調電圧に応じて、周波数掃引幅がΔfである24GHz帯の送信波RFtを生成して方向性結合器23へ出力する。
方向性結合器23は、VCO24から受ける送信波RFtをスイッチ26および差分信号生成部3へ分配する。
スイッチ26は、方向性結合器23に接続された第1端と、パワーアンプ22に接続された第2端とを有する。スイッチ26は、制御部4からトリガ信号TSを受けると、オン状態へ遷移し、第1端および第2端を電気的に接続する。一方、スイッチ26は、制御部4からガード信号GSを受けると、オフ状態へ遷移し、第1端および第2端を電気的に絶縁する。これにより、VCO24が出力する送信波RFtは、ガード期間においてパワーアンプ22へ伝送されず、かつガード期間と異なる期間においてパワーアンプ22へ伝送される。
パワーアンプ22は、スイッチ26から受ける送信波RFtを増幅し、増幅後の送信波RFtを送信アンテナ21経由で対象エリアA1へ送信する。
受信部2は、対象エリアA1等からの電波を受信する。より詳細には、受信部2における受信アンテナ31は、対象エリアA1における対象物Tgt、具体的には、歩行者Tgt2および自動車Tgt1等の移動可能な物体、ならびにガードレールおよび支柱PV等の停止している物体によって反射された電波を受信することが可能である。以下では、対象物Tgtが移動可能な物体である場合に適した、電波センサ101の動作を説明する。
また、受信アンテナ31は、干渉電波を送信する干渉物体が送信した電波を受信することもある。干渉物体は、たとえば、対象エリアA1内または対象エリアA1外に位置する自動車Tgt1に搭載された電子走査型ミリ波レーダ装置等である。
ローノイズアンプ32は、受信アンテナ31が受信した電波である受信波RFr1を増幅し、差分信号生成部3へ出力する。
差分信号生成部3は、送信部1によって送信される電波の周波数成分と受信部2によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号を生成する。
より詳細には、差分信号生成部3におけるミキサ33は、送信部1から受ける送信波RFtとローノイズアンプ32から受ける受信波RFr1との差の周波数成分を有するアナログの差分信号Ba1を生成する。
差分信号Ba1の周波数Fbおよび振幅Abの時間変化は、図6に示される。ミキサ33は、生成した差分信号Ba1をIFアンプ34へ出力する。
IFアンプ34は、ミキサ33から受ける差分信号Ba1を増幅し、ローパスフィルタ35へ出力する。
ローパスフィルタ35は、IFアンプ34において増幅された差分信号Ba1の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分を減衰させる。
A/Dコンバータ36は、たとえばクロック信号CSの周期Tcで差分信号Ba1のサンプリング処理を行う。より詳細には、A/Dコンバータ36は、クロック生成回路6から受けるクロック信号CSの立ち上がりエッジのタイミングに従って、ローパスフィルタ35を通過した差分信号Ba1をサンプリング周期Tcごとにqビット(qは2以上の整数)のデジタルの差分信号Bd1に変換する。
図6では、シーケンスSeq1,Seq2における各サンプリングタイミングが白丸で示されている。各シーケンスにおけるサンプリングタイミングには、サンプリング順を示す1〜12のサンプリング番号が割り当てられている。A/Dコンバータ36は、変換後の差分信号Bd1を信号処理部5へ出力する。
図7は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける信号処理部の構成を示す図である。
図7を参照して、信号処理部5は、メモリ41と、FFT(Fast Fourier Transform)処理部42と、FMCW処理部43と、パターン信号取得部44と、加算部45とを含む。
信号処理部5におけるメモリ41は、A/Dコンバータ36から受ける差分信号Bd1を蓄積する。
パターン信号取得部44は、パターンPt1ごとの差分信号Bd1(以下、パターン信号とも称する。)を生成する。より詳細には、パターン信号取得部44は、制御部4から受けるトリガ信号TSに基づいて、1つのシーケンスの開始タイミングおよび終了タイミングを認識する。
そして、パターン信号取得部44は、たとえば、あるシーケンスが終了するごとに、当該シーケンスにおいてサンプリング周期Tcでサンプリングされた時系列の差分信号Bd1すなわちパターン信号をメモリ41から取り出す。パターン信号取得部44は、取り出したパターン信号を加算部45へ出力する。
加算部45は、パターンPt1における複数のタイミングについて、複数のパターンPt1における対応のタイミングの差分信号を加算する。具体的には、加算部45は、パターンPt1における1〜12のサンプリング番号により示される各サンプリングタイミングについて、複数のパターンPt1における同じサンプリング番号の差分信号を加算する。
より詳細には、加算部45は、たとえば、検知期間ごとに、加算対象とすべき複数のパターンの個数Mを決定する。
たとえば、加算部45は、制御部4から受ける送信パラメータに含まれる検知期間の長さPmおよび周期Ttに基づいて個数Mを決定する。
具体的には、加算部45は、検知期間の長さPmを周期Ttで除した値を個数Mとして決定する。
加算部45は、パターン信号取得部44からパターン信号を繰り返し受ける。具体的には、たとえば、加算部45は、図6に示すシーケンスSeq1が満了したタイミングにおいて、パターン信号をパターン信号取得部44から受けると、受けたパターン信号を対象パターン信号として蓄積する。パターン信号には、サンプリング番号1〜12により示される各サンプリングタイミングにおいてサンプリングされた振幅Abが含まれる。
そして、加算部45は、シーケンスSeq2が満了したタイミングにおいてパターン信号をパターン信号取得部44から受けると、以下の処理を行う。
すなわち、加算部45は、対象パターン信号に含まれる各振幅AbとシーケンスSeq2のパターン信号に含まれる各振幅Abとをサンプリング番号が同じ振幅Ab同士で加算することにより対象パターン信号を更新する。
加算部45は、シーケンスSeq3〜SeqMがそれぞれ満了したタイミングにおいて、対象パターン信号を同様に更新する。加算部45は、更新後の対象パターン信号をFFT処理部42へ出力する。
FFT処理部42は、加算部45から対象パターン信号を受けると、受けた対象パターン信号に対してFFT処理を行うことにより、パワースペクトルFS1および位相スペクトルPS1を生成する。ここで、パワースペクトルFS1は、検知期間において蓄積された差分信号Bd1に含まれる各周波数成分の振幅を示す。また、位相スペクトルPS1は、検知期間において蓄積された差分信号Bd1に含まれる各周波数成分の位相を示す。
FFT処理部42は、生成したパワースペクトルFS1および位相スペクトルPS1をFMCW処理部43へ出力する。
図8は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおけるFMCW処理部が生成する処理スペクトルの一例を示す図である。なお、図8において、縦軸は強度を示し、横軸は電波センサ101から物体までの距離を示す。
FMCW処理部43は、受信部2によって受信された電波に基づいて、物体が存在するか否かを判定する。
具体的には、FMCW処理部43は、たとえば、対象エリアA1において歩行者Tgt2および自動車Tgt1等の移動可能な物体が存在しないとした状態におけるパワースペクトルである背景スペクトルを保持している。
FMCW処理部43は、パワースペクトルFS1および位相スペクトルPS1をFFT処理部42から受けると、受けたパワースペクトルFS1の各周波数成分から背景スペクトルの各周波数成分をそれぞれ差し引くことにより処理スペクトルを生成する。
また、FMCW処理部43は、生成した処理スペクトルの周波数Fbおよび位相スペクトルPS1の周波数Fbを距離Lに換算する。
より詳細には、周波数Fbと距離Lとの関係は、非特許文献1における式(1)に基づいて、以下の式(1)により表される。
ここで、cは光速である。vrは、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った物体の移動速度(以下、検出対象速度とも称する。)である。f0は、掃引開始周波数F2と掃引開始周波数F2に周波数掃引幅Δfを加えた掃引終了周波数F1との平均である。
たとえば、式(1)において、1シーケンスにおいて電波の送信される期間の長さすなわち掃引時間Tsに対して周波数掃引幅Δfが大きい場合、距離Lは、以下の式(2)のように近似して表すことが可能である。
FMCW処理部43は、制御部4から受けた送信パラメータに含まれる周波数掃引幅Δfおよび掃引時間Tsと式(2)とを用いて処理スペクトルおよび位相スペクトルPS1の横軸の周波数Fbを距離Lに換算する。図8には、横軸が周波数から距離に換算された処理スペクトルが示される。
FMCW処理部43は、生成した処理スペクトルに対してピーク検出処理を行う。より詳細には、FMCW処理部43は、処理スペクトルを解析し、所定のしきい値Thfm以上の強度を有するピークの検出を試みる。
FMCW処理部43は、しきい値Thfm以上の強度を有するピークを検出できた場合、物体が存在すると判定する。この例では、FMCW処理部43は、1つのピークPn1を検出し、物体が存在すると判定する。一方、FMCW処理部43は、しきい値Thfm以上の強度を有するピークを検出できなかった場合、物体が存在しないと判定する。
FMCW処理部43は、判定結果、検出したピークPn1の強度、およびピークPn1に対応する距離Lを示す結果情報を検知処理部7へ出力する。
再び図3を参照して、検知処理部7は、加算部45によってそれぞれ加算された、複数のタイミングの差分信号に基づいて対象物Tgtを検知する。
詳細には、検知処理部7は、FMCW処理部43から受ける結果情報に基づいて、対象物Tgtを検知する。
より詳細には、検知処理部7は、たとえば、結果情報の示す判定結果が物体の不存在を示す場合、対象物Tgtが存在しないと判定する。
一方、検知処理部7は、たとえば、結果情報の示す判定結果が物体の存在を示す場合、結果情報の示すピーク強度の大きさに基づいて、対象物Tgtの種類として歩行者Tgt2または自動車Tgt1を特定する。具体的には、検知処理部7は、ピーク強度が大きい場合、対象物Tgtの種類を自動車Tgt1と判定し、また、ピーク強度が小さい場合、対象物の種類を歩行者Tgt2と判定する。
また、検知処理部7は、結果情報の示す距離Lに基づいて、対象物Tgtが横断歩道PC1に存在するか否かを判断する。
検知処理部7は、横断歩道PC1における対象物Tgtの有無、および対象物Tgtの種類を示す検知結果を中継装置141へ送信する。
また、検知処理部7は、たとえば、対象物Tgtの移動速度を取得する。具体的には、検知処理部7は、たとえば、受信部2によって受信された電波に基づいて、対象物Tgtの検出対象速度を移動速度として算出する。
より詳細には、検知処理部7は、検知した対象物Tgtの識別子と自己の電波センサ101から当該対象物Tgtまでの距離との対応関係を検知期間ごとに記録しておき、直近の検知期間において対象物Tgtが移動した距離を、制御部4から受ける送信パラメータに含まれる検知期間の長さPmで除することにより対象物Tgtの検出対象速度を取得する。検知処理部7は、取得した対象物Tgtの検出対象速度すなわち移動速度を示す速度情報を制御部4へ出力する。
制御部4は、たとえば、信号処理部5から受ける速度情報に基づいて検知期間の長さPmを設定する。
より詳細には、制御部4は、たとえば、速度情報、およびA/Dコンバータ36のサンプリング周期Tcに基づいて検知期間の長さPmを設定する。
たとえば、図8に示す処理スペクトルは、サンプリング周期Tcに基づく周波数間隔すなわち距離間隔の離散的な強度データにより構成されている。たとえば、これらの強度データの間隔がXメートルである場合において、検知期間において対象物Tgtの距離LがXメートル変化することは、処理スペクトルにおけるピークの位置が1ポイントずれることに相当する。したがって、検知期間における対象物Tgtの距離Lの変化は、処理スペクトルにおける強度データの間隔より小さいことが好ましい。
たとえば、制御部4は、上記間隔を、速度情報の示す移動速度で除した値を算出し、算出した値に所定の安全率Rsを乗じた値を検知期間の長さPmとして設定する。ここで、安全率Rsは、たとえば1より小さい正の実数である。
具体的には、制御部4は、移動速度が大きいほど検知期間の長さPmとして小さい値を設定し、また、移動速度が小さいほど検知期間の長さPmとして大きい値を設定する。
また、検知期間の長さPmには、所定の上限値および下限値が設けられる。この例では、所定の上限値は、たとえば100ミリ秒である。また、所定の下限値は、たとえば1シーケンスの周期Ttである。
再び図7を参照して、加算部45は、たとえば、検知処理部7によって取得された移動速度に基づいて、加算対象とすべき複数のパターンの個数を決定する。
より詳細には、加算部45は、制御部4から受ける送信パラメータに含まれる検知期間の長さPmおよび周期Ttに基づいて個数Mを更新する。
電波センサ101は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下に示すフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
[動作]
図9は、本発明の実施の形態に係る電波センサが対象物を検知する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図9を参照して、まず、電波センサ101は、デフォルト値たとえば100ミリ秒の長さPmを有する検知期間を設定する(ステップS102)。
次に、電波センサ101は、検知期間におけるM個のシーケンスが満了するまで各シーケンスにおいて1つのパターン信号を生成し(ステップS104でNO)、M個のパターン信号の生成が完了すると(ステップS104でYES)、M個のパターンPt1における同じサンプリング番号の差分信号Bd1を加算することにより対象パターン信号を生成する(ステップS106)。
次に、電波センサ101は、生成した対象パターン信号をFFT処理することにより、パワースペクトルFS1および位相スペクトルPS1を生成する(ステップS108)。
次に、電波センサ101は、パワースペクトルFS1の各周波数成分から背景スペクトルの各周波数成分をそれぞれ差し引くことにより処理スペクトルを生成し、生成した処理スペクトルにおいてピーク検出処理を行う(ステップS110)。
次に、電波センサ101は、処理スペクトルにおいてピークを検出した場合(ステップS112でYES)、検出したピークに基づいて、距離Lおよび移動速度を算出する(ステップS114)。
次に、電波センサ101は、対象エリアA1における物体すなわち対象物Tgtの種類および位置を特定する(ステップS116)。
次に、電波センサ101は、対象物Tgtの移動速度に基づいて、検知期間の長さPmを決定する(ステップS118)。
次に、電波センサ101は、決定した検知期間の長さPmに基づいて、加算対象とすべき複数のパターンPt1の個数Mを決定する(ステップS120)。
次に、電波センサ101は、個数Mを決定するか(ステップS120)、または処理スペクトルにおいてピークを検出しない場合(ステップS112でNO)、新たな検知期間を設定する(ステップS122)。
次に、電波センサ101は、検知期間におけるM個のシーケンスが満了するまで各シーケンスにおいて1つのパターン信号を生成する(ステップS104でNO)。
なお、電波センサ101は、上記ステップS112において複数のピークを検出した場合、すなわち複数の物体を検知した場合、検知した物体ごとに上記ステップS104〜S122を実行してもよい。
[電波センサ101の変形例1]
以下では、対象物Tgtが停止している物体である場合に適した、電波センサ101の動作を説明する。
この変形例では、電波センサ101では、検知期間の長さPmが、数秒から数十時間程度の長い時間に設定され、かつ固定的に運用される。
FFT処理部42は、上記検知期間において積算されたパターン信号である対象パターン信号を加算部45から受けると、受けた対象パターン信号に対してFFT処理を行うことにより、パワースペクトルFS1および位相スペクトルPS1を生成する。
このようにして生成されたパワースペクトルFS1は、背景スペクトルとして用いられる。すなわち、パターン信号に含まれるノイズ、および移動可能な物体からの電波に基づくシグナル成分は、長時間における積算において平滑化される。このため、パワースペクトルFS1に含まれるピークは、停止している物体からの電波に基づくピークである。したがって、このような、パワースペクトルFS1は、背景スペクトルに適している。
[電波センサ101の変形例2]
図10は、本発明の実施の形態に係る電波センサの変形例における送信部および差分信号生成部がそれぞれ生成する送信波および差分信号の各波形の一例を示す図である。なお、図10の見方は、図6と同様である。
この変形例では、送信波の周波数の時間変化が概ね三角波となる。より詳細には、送信部1が送信する電波の周波数パターンには、たとえば、周波数が単位時間あたりで所定量増加するサブパターンSPt1と周波数が当該単位時間あたりで当該所定量減少するサブパターンSPt2とが含まれる。この例では、奇数番目のシーケンスにおいてサブパターンSPt1の周波数を有する電波が送信され、偶数番目のシーケンスにおいてサブパターンSPt2の周波数を有する電波が送信される。
パターン信号取得部44は、たとえば、サブパターンSPt1,SPt2ごとの差分信号Bd1を生成する。より詳細には、パターン信号取得部44は、たとえば、あるシーケンスが終了するごとに、当該シーケンスにおいてサンプリングされた差分信号Bd1をメモリ41から取り出し、取り出した差分信号Bd1すなわちサブパターン信号を加算部45へ出力する。
加算部45は、たとえば、サブパターンSPt1における複数のタイミングについて、複数のサブパターンSPt1における対応のタイミングの差分信号Bd1を加算した積算信号AS1を算出する。
具体的には、加算部45は、サブパターンSPt1における1〜12のサンプリング番号により示される各サンプリングタイミングについて、複数のサブパターンSPt1における同じサンプリング番号の差分信号を加算する。
より詳細には、たとえば、加算部45は、図10に示すシーケンスSeq1が満了したタイミングにおいて、パターン信号取得部44から受けたサブパターン信号を積算信号AS1として蓄積する。
そして、加算部45は、図示しないシーケンスSeq3が満了したタイミングにおいて、パターン信号取得部44からサブパターン信号を受けると、積算信号AS1に含まれる各振幅AbとシーケンスSeq3のサブパターン信号に含まれる各振幅Abとをサンプリング番号が同じ振幅Ab同士で加算することにより積算信号AS1を更新する。
加算部45は、M番目のシーケンスSeqMが満了するまで、奇数番目の各シーケンスがそれぞれ満了したタイミングにおいて、積算信号AS1を同様に更新する。
また、加算部45は、たとえば、サブパターンSPt2における複数のタイミングについて、複数のサブパターンSPt2における対応のタイミングの差分信号Bd1を加算した積算信号AS2を算出する。
具体的には、加算部45は、サブパターンSPt2における1〜12のサンプリング番号により示される各サンプリングタイミングについて、複数のサブパターンSPt2における同じサンプリング番号の差分信号を加算する。
より詳細には、たとえば、加算部45は、図10に示すシーケンスSeq2が満了したタイミングにおいて、パターン信号取得部44から受けたサブパターン信号を積算信号AS2として蓄積する。
そして、加算部45は、図示しないシーケンスSeq4が満了したタイミングにおいて、パターン信号取得部44からサブパターン信号を受けると、積算信号AS2に含まれる各振幅AbとシーケンスSeq4のサブパターン信号に含まれる各振幅Abとをサンプリング番号が同じ振幅Ab同士で加算することにより積算信号AS2を更新する。
加算部45は、M番目のシーケンスSeqMが満了するまで、偶数番目の各シーケンスがそれぞれ満了したタイミングにおいて、積算信号AS2を同様に更新する。
加算部45は、たとえば、積算信号AS1と積算信号AS2とを対応のタイミングごとに加算する。
より詳細には、加算部45は、たとえば、積算信号AS1およびAS2のいずれか一方のサンプリング番号に所定量Qを加える。
ここで、所定量Qは、たとえば登録された整数値である。所定量Qの算出方法については、後述する。
この例では、加算部45は、積算信号AS2のサンプリング番号すなわち1〜12のそれぞれに所定量Qを加えることにより、当該サンプリング番号を(1+Q)〜(12+Q)にそれぞれ再設定する。すなわち、加算部45は、積算信号AS2を所定量Qに応じて時間軸方向に移動させる。
また、加算部45は、積算信号AS1のサンプリング番号すなわち1〜12、および積算信号AS2のサンプリング番号すなわち(1+Q)〜(12+Q)において、互いに一致するサンプリング番号の組を形成できないサンプリング番号のデータを削除する。
具体的には、たとえば、所定量Qが2の場合、加算部45は、積算信号AS1における1,2のサンプリング番号のデータを削除するとともに、積算信号AS2における13,14のサンプリング番号のデータを削除する。
そして、加算部45は、積算信号AS1におけるサンプリング番号3〜12のデータのサンプリングタイミングが、積算信号AS2における再設定後のサンプリング番号3〜12のデータのサンプリングタイミングにそれぞれ対応するものとして、以下の処理を行う。
すなわち、加算部45は、積算信号AS1に含まれる各振幅Abと積算信号AS2に含まれる各振幅Abとをサンプリング番号が同じ振幅Ab同士で加算することにより対象パターン信号を生成する。
ここでは、所定量Qの算出方法について説明する。所定量Qは、たとえば、奇数番目のシーケンスにおける差分信号の位相と偶数番目のシーケンスにおける差分信号の位相との差である。
より詳細には、たとえば、奇数番目のシーケンスにおける差分信号をFFT処理することにより得られるパワースペクトルおよび位相スペクトルにおいて、パワースペクトルにおけるあるピークに対応する位相Ph1を当該位相スペクトルから取得する。また、偶数番目のシーケンスにおける差分信号をFFT処理することにより得られるパワースペクトルおよび位相スペクトルにおいて、当該ピークに対応する位相Ph2を当該位相スペクトルから取得する。
たとえば、所定量Qは、位相Ph1とPh2との差に対応する時間差をサンプリング周期Tcで除することにより得られた数値に最も近い整数として算出される。
なお、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、FMCW処理部43は、受信部2によって受信された電波に基づいて、対象物Tgtの移動速度を算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。FMCW処理部43は、画像センサ等の他のセンサから対象物Tgtの移動速度を取得する構成であってもよい。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、送信部1は、FM−CW方式のパターンの電波を繰り返し送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。送信部1は、パルス方式等の他の変調方式のパターンの電波を繰り返し送信する構成であってもよい。
ところで、特許文献1に記載の歩行者感知器では、検知領域である上記境界を歩道側から車道側に向かって通過する歩行者の有無について検知を行うことが可能である一方で、車道側の横断歩道における歩行者について検知を行うことが困難である。
これに対して、たとえば、横断歩道を含む対象エリアに電波を送信し、対象エリアから受信した電波に基づいて、横断歩道における歩行者について検知を行う方法が考えられる。
しかしながら、歩行者による電波の反射率は、一般に小さく、また変動も大きい。このような歩行者が電波センサから離れた場所に位置する場合、電波センサが受信する歩行者からの反射電波の強度は弱く、また当該強度が安定しない。このため、歩行者が存在しているにもかかわらず電波センサが当該歩行者を検知できない未検知が発生してしまう。
これに対して、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、送信部1は、所定のパターンの電波を繰り返し送信する。受信部2は、電波を受信する。パターン信号取得部44は、送信部1によって送信される電波の周波数成分と受信部2によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する、パターンごとの差分信号を生成する。加算部45は、パターンにおける複数のタイミングについて、複数のパターンにおける対応のタイミングの差分信号を加算する。そして、検知処理部7は、加算部45によってそれぞれ加算された、複数のタイミングの差分信号に基づいて対象物Tgtを検知する。
このような構成により、差分信号におけるシグナル成分とノイズ成分との比すなわちSN比を向上させることができるので、たとえば、歩行者Tgt2によって反射された電波の強度が弱く、また変動している場合においても、当該電波に基づくシグナル成分を差分信号から正しく取得することができる。これにより、歩行者Tgt2の未検知の発生を抑制することができる。したがって、電波を用いて対象物をより正しく検知することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、検知処理部7は、対象物Tgtの移動速度を取得する。そして、加算部45は、検知処理部7によって取得された移動速度に基づいて、加算対象とすべき複数のパターンの個数を決定する。
差分信号の形状の時間的な変化度合いは、対象物Tgtの移動速度の大きさに応じて変化する。たとえば、移動速度の大きい場合に加算対象とすべきパターンの個数を小さくし、また、移動速度の小さい場合に当該個数を大きくすることにより、積算後の差分信号において、SN比の改善効果が小さくなってしまうことを防ぐことができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、パターンには、周波数が単位時間あたりで所定量増加するサブパターンSPt1と周波数が当該単位時間あたりで当該所定量減少するサブパターンSPt2とが含まれる。加算部45は、サブパターンSPt1における複数のタイミングについて、複数のサブパターンSPt1における対応のタイミングの差分信号を加算した積算信号AS1を算出する。加算部45は、サブパターンSPt2における複数のタイミングについて、複数のサブパターンSPt2における対応のタイミングの差分信号を加算した積算信号AS2を算出する。そして、加算部45は、積算信号AS1と積算信号AS2とを対応のタイミングごとに加算する。
このような構成により、たとえば、送信波の周波数が三角波のように時間変化する場合において、差分信号を適切に積算することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、対象物Tgtは、停止している物体である。
停止している物体からの電波に基づくシグナル成分は積算時間を大きくしても変化しない一方、移動している物体からの電波に基づくシグナル成分およびノイズ成分は時間とともに大きく変化する。このため、たとえば、積算時間を大きくして加算対象とするパターンの個数を多く設定する場合において、停止している物体からの電波に基づくシグナル成分を差分信号からより正しく取得することができる。これにより、たとえば、良好な背景スペクトルの取得、および駐停車車両の検知を行うことができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
所定のパターンの電波を繰り返し送信する送信部と、
電波を受信する受信部と、
前記送信部によって送信される電波の周波数成分と前記受信部によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する、前記パターンごとの差分信号を生成するパターン信号取得部と、
前記パターンにおける複数のタイミングについて、複数の前記パターンにおける対応の前記タイミングの前記差分信号を加算する加算部と、
前記加算部によってそれぞれ加算された、前記複数のタイミングの前記差分信号に基づいて対象物を検知する検知部とを備え、
前記対象物は、人間、自転車または自動車であり、
前記送信部は、FM−CW方式またはパルス方式の前記パターンの電波を繰り返し送信し、
前記パターン信号取得部は、前記パターンごとのデジタルの前記差分信号を生成し、
前記加算部は、前記デジタルの差分信号のサンプリング順を示すサンプリング番号を用いて、前記パターンにおける前記複数のタイミングについて、前記複数のパターンにおける前記対応のタイミングの前記差分信号を加算する、電波センサ。