JP2015143401A - 物品表面加飾シート、物品表面加飾用貼布、加飾成形体、及び物品表面加飾シートの製造方法 - Google Patents

物品表面加飾シート、物品表面加飾用貼布、加飾成形体、及び物品表面加飾シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】薄さを維持しながら、熱エンボス加工により高低差の大きい凹凸模様が正確に転写される、皮革様の外観を有する物品表面加飾シートを提供する。【解決手段】エンボス部を有する物品表面加飾シートであって、不織布基材と、高分子弾性体を主体とする1〜100μmの表面層と、不織布基材と表面層とを接着するホットメルト型接着剤を主体とする厚さ10〜150μmの中間層とを含み、不織布基材は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、少なくともエンボス部における、厚み方向断面の繊維束間の距離の平均値が0〜10μmである物品表面加飾シート。【選択図】図1

Description

本発明は、シボ模様のようなエンボス部を有する皮革様外観を、物品の表面に付与するための物品表面加飾シート等に関する。
携帯電話、モバイル機器、家電製品の筐体や、車両、航空機等の内装部品、建材、家具等の外装部材として皮革様外観を付与された加飾インサート成形体が知られている。
例えば、下記特許文献1は、ポリエステル極細繊維の繊維束を絡合させた不織布に第一のポリウレタンを含浸付与させた基材層と、基材層の表面に形成された第二のポリウレタンを含む銀面層とを備え、基材層の厚さが0.5mm以下で、銀面層が全厚さの10〜40%の割合を占め、不織布が最も延伸されている方向をMD方向、MD方向に面方向に垂直な方向をTD方向とした場合、TD方向に対するMD方向の20%引張応力の比(MD/TD)が1.9〜2.5であるプレフォーム成形用シートを開示する。そして、このようなプレフォーム成形用シートを用いて射出インサート成形に供されるプレフォーム成形体を成形し、得られたプレフォーム成形体を用いてインサート成形することにより、皮革様表面を有する加飾インサート成形体が得られることを開示する。また、特許文献1は、銀面層の表面に、エンボス機を用いることによりエンボス模様を形成してもよいことを開示している。
銀面層にシボ模様のようなエンボス部を付与しようとした場合、従来、次のような問題があった。
銀面層を有するシートに、例えば、シボ模様のようなエンボス部を形成する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。一つ目は、はじめに、ポリウレタン等の高分子弾性体を含む樹脂液の塗膜をシボ模様を有する離型紙表面に形成した後、高分子弾性体を凝固させることにより銀面層を形成する。そして、銀面層を基材層に接着した後、離型紙を剥離することにより、基材層の表面にシボ模様を有する銀面層が形成されたシートが得られる。しかしながら、このような方法の場合、高低差の大きいシボ模様を形成しようとした場合には、銀面層を厚くしなければならなかった。
また、二つ目は、高分子弾性体を含む樹脂液の塗膜を平滑な離型紙表面に形成した後、高分子弾性体を凝固させることにより平滑な銀面層を形成する。そして、形成された銀面層を基材層に接着した後、離型紙を剥離することにより、基材層に積層された表面平滑な銀面層を有するシートが形成される。そして、シボ模様を有するエンボスロールを用いて、平滑な銀面層を有するシートに熱エンボス加工する。しかしながら、高低差の大きいシボ模様を有するエンボスロールを用いて熱エンボス加工した場合、シボ模様が正確に転写されにくいという問題があった。
ところで、バスケットボール用原反,服飾用原反,靴用原反等に用いられる皮革様シートの表面層にシボ模様を正確に転写する技術は知られている。例えば、下記特許文献2は、繊維質基体層と仕上層との中間部を構成する表面層に、他の層の構成材料より低温で軟化成形あるいは溶融成形のできるポリウレタンを主体とする重合体を用いることによって、鮮明な賦型を行わせることができる皮革様シートを開示する。具体的には、繊維質基体層の少なくとも一面に、軟化成形温度が130〜185℃であり、かつ該基体層を構成する主体繊維および主体重合体の軟化温度より少なくとも30℃低い軟化成形温度を有するポリウレタンを主体とする重合体で構成された表面層と、該表面層を構成する重合体より少なくとも30℃高い軟化成形温度を有する重合体で構成された仕上層とを積層し、得られるシートを、表面層を構成する重合体が軟化成形される温度であって、かつ仕上層を構成する重合体を流動変形させない温度でエンボス加工することを開示する。
特開2013−209780号公報 特開平02−061181号公報
例えば、成形体の表面に粘着剤や接着剤でシールのように貼り合せて用いられるような物品表面加飾シートの場合、成形体の曲面等に正確に貼り合せるためにより薄い厚みが求められる。引用文献2は、熱エンボス加工による凹凸を付与するための充分な厚さとして、100〜2000μmの厚さの軟化成形温度130〜185℃のポリウレタンを主体とする樹脂層を形成することを開示している。しかしながら、引用文献2に開示された技術では、軟化成形温度130〜185℃のポリウレタンを主体とする樹脂層のみに凹凸が付与されるために、例えば高低差が150μm以上であるような凹凸を正確に形成しようとした場合には、必然的に樹脂層も厚くなってしまうという問題があった。
本発明は、薄さを維持しながら、高低差の大きいシボ模様のようなエンボス部が正確に転写された、皮革様の外観を有する物品表面加飾シートを提供することを目的とする。
本発明の一局面は、エンボス部を有する物品表面加飾シートであって、不織布基材と、高分子弾性体を主体とする1〜100μmの表面層と、不織布基材と表面層とを接着するホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの中間層とを含み、不織布基材は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、少なくともエンボス部における、厚み方向断面の繊維束間の距離の平均値が0〜10μmである物品表面加飾シートである。このような構成の物品表面加飾シートにおいては、10〜150μmの中間層はホットメルト型接着剤を主体とするために熱転写性に優れている。また、高低差の大きいエンボス部を形成した場合には、表面層及び中間層だけではなく不織布基材にまで凹凸模様が転写される。その場合には、不織布基材は、厚み方向断面の繊維束間の距離の平均値が0〜10μmとなるように高密度化される。
また、ホットメルト型接着剤は、極細繊維のガラス転移温度(Tg)よりも0〜30℃高い軟化温度を有することが好ましい。このような場合には、極細繊維のTgとホットメルト型接着剤の軟化温度が近いために、熱エンボス加工により、中間層及び不織布基材に明瞭に凹凸模様が転写される。また、極細繊維が100〜120℃のTgを有する変性ポリエステルを含む場合には、一般的なエンボス加工により極細繊維を容易に延伸することができる。
また、表面層と中間層との厚さの合計よりも、エンボス部と非エンボス部との高低差の方が大きい、具体的には、高低差が、表面層と中間層との厚さの合計に対して、1.1倍以上である場合、または高低差が150μm以上である場合には、不織布基材にまで凹凸模様がより明瞭に転写されやすくなって輪郭が正確に表現される。
また、物品表面加飾シートが、少なくともエンボス部において、走査型顕微鏡(SEM)で測定された厚さに対する240gf/cm2に設定した定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合が90%以上である場合には、高低差の大きい凹凸であっても正確に転写されているといえる。
また、不織布基材が架橋された非多孔性の高分子弾性体を5〜40質量%含有する場合には、熱エンボスの際の圧力が不織布基材に充分に付与されるために、不織布をより高密度化しやすくなる点から好ましい。
また、物品表面加飾シートの厚さが300〜1000μmである場合には、曲面を含むような物品の表面を加飾する場合に正確に貼り合せられるシートとして好ましく用いられる。
また、本発明の他の一局面は、上記何れかの物品表面加飾シートと、裏面側に積層された粘着層又は接着層(以下、これらをまとめて粘接着層とも称する)とを有する物品表面加飾用貼布である。
また、本発明の他の一局面は、上記何れかの物品表面加飾シートを成形体の表面に接着して形成された加飾成形体である。
また、本発明の他の一局面は、下記工程を備える物品表面加飾シートの製造方法である。
(1)Tgが100〜120℃の変性ポリエステルを含む繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材と、高分子弾性体を含む厚さ1〜100μmの表面層と、不織布基材と表面層とを接着する、前記Tgよりも0〜30℃高い軟化温度を有するホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの中間層とを含む被熱転写シートを準備する工程と、(2)少なくともエンボス部における、厚み方向断面の繊維束間の距離の平均値が0〜10μmになるように被熱転写シートに熱エンボス加工する工程と、を備える。また、工程(1)は、(1a)不織布基材を準備する工程と、(1b)離型紙の表面に高分子弾性体を主体とする厚さ1〜50μmの表面層を形成する工程と、(1c)離型紙の表面に形成された表面層に、乾燥時の厚さが10〜150μmになるようにホットメルト型接着剤の溶液の塗膜を形成する工程と、(1d)塗膜に不織布基材を圧着し、塗膜中の溶媒を除去しながら不織布基材とホットメルト型接着剤とを接着させ、離型紙を除去することにより被熱転写シートを形成する工程と、を備えることが好ましい。また、熱エンボス加工に用いられるエンボス型の表面温度は、ホットメルト型接着剤の軟化温度よりも10〜30℃高いことが好ましい。
本発明によれば、薄さを維持しながら、熱エンボス加工により高低差の大きいシボ模様のようなエンボス部が正確に転写された、皮革様の外観を有する物品表面加飾シートが得られる。
図1は、本実施形態の物品表面加飾シート20を用いて得られた加飾成形体40の模式断面図である。 図2は、本実施形態の被熱転写シート10の模式断面図である。 図3は、実施例1の物品表面加飾シートのエンボス部のSEMの画像である。
本発明に係る物品表面加飾シート、物品表面加飾用貼布、及び加飾成形体の一実施形態について説明する。
図1は、物品表面加飾シート20を成形体本体31の表面に粘着剤層または接着剤層(以下、これらをまとめて粘接着層とも称する)14を介して接着して形成された加飾成形体40の模式図であり、図1(a)は上面、図1(b)は図1(a)のI−I'断面の模式図を示す。物品表面加飾シート20は、不織布基材1と、高分子弾性体を含む厚さ1〜100μmの表面層2と、不織布基材1と表面層2との間に配置されたホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの中間層3とを備える。また、物品表面加飾シート20には、熱エンボス加工により転写された凹凸模様を形成するエンボス部Hを有する。物品表面加飾シート20は、表面が平滑な被熱転写シート10に熱エンボス加工により凹凸模様を転写して得られる。物品表面加飾シート20はその裏面に粘接着層14を備えることにより物品表面加飾用貼布30を形成する。
図2は、物品表面加飾シート20の製造に用いられる被熱転写シート10の模式断面図である。被熱転写シート10は、不織布基材11と、高分子弾性体を含む厚さ1〜100μmの表面層12と、不織布基材11と表面層12との間に配置されたホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの中間層13とを含む。不織布基材11は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む。さらに、不織布基材11の繊維間の空隙には、必要に応じて高分子弾性体が付与されている。
図3は、本実施形態の物品表面加飾シートのエンボス部の一例の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像である。図3中、1aは不織布基材を形成する繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束であり、繊維束の一部に輪郭を付しており、点線は補助線である。
図3に示すように、繊維束は複数の極細繊維が集束するように形成されている。そして、極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材は、厚み方向断面における少なくともエンボス部の繊維束間の距離の平均値が0〜10μmであり、好ましくは0〜8μmである。このような狭い繊維束間の距離は、熱エンボス加工により不織布基材を形成する繊維束が高密度化されて形成される。
厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値の測定方法及び算出方法を図3を参照して説明する。図3に示すような、不織布基材の厚み方向に平行な任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で150倍で撮影する。そして、撮影された画像に対して、シートの厚み方向に対して平行に、ほぼ等間隔で10本の補助線を引く。そして、10本の補助線を通過させた全ての繊維束間(繊維束の外周同士間)の距離合計(A)を求める。そして、10本の補助線を通過させた繊維束数の合計を求め、繊維束数の合計から10を引いた数を繊維束間数(B)とする。そして、距離合計(A)を繊維束間数(B)で除した値、すなわち、(A)/(B)を厚み方向における繊維束間距離の平均値として算出する。なお、断面方向における繊維束のカウント方法は、円形の形状をした繊維束のみならず、斜めに伸びる楕円の形状をした繊維束もカウントする。但し、実質的に束を形成している繊維束を数えるものとする。そして、任意の10点のそれぞれの線上における繊維束間距離の平均値全てが0〜10μmであることが好ましく、0〜8μmであることがより好ましい。
繊維束を形成する極細繊維の本数としては、5〜1000本、さらには5〜200本、とくには10〜50本、ことには10〜30本であることが好ましい。また、繊維束の平均直径としては、1〜50μm、さらには10〜30μmであることが好ましい。繊維束を形成する極細繊維の本数が多すぎる又は繊維束の平均直径が大きすぎる場合には、熱エンボス加工により不織布基材を形成する繊維束が高密度化されにくくなり、繊維束間の距離の平均値を0〜10μmに調整しにくくなる傾向がある。また、繊維束を形成する極細繊維の本数が少なすぎる又は繊維束の平均直径が小さすぎる場合にも、熱エンボス加工により不織布基材を形成する繊維束が高密度化されにくくなる傾向がある。なお、繊維束の平均直径とは、物品表面加飾シートの厚み方向の断面をSEMで撮影した画像において、平均的に100個の繊維束の外形を特定し、その外形に囲まれた面積と同等の面積を有する円の直径を意味するものとする。
極細繊維の繊度は0.8dtex以下であり、0.5dtex以下、さらには、0.1dtex以下、とくには0.08dtex以下であることが好ましい。なお、下限は特に限定されないが、0.01dtex程度であることが好ましい。極細繊維の繊度が0.8dtexを超える場合には、繊維の嵩高性が上がり、熱エンボス加工により不織布基材を形成する繊維束が高密度化されにくくなる。その結果、高低差の大きい凹凸模様が正確に転写されにくくなる。
不織布基材を形成する繊維束は長繊維の極細繊維から形成されていることが、熱エンボス加工により不織布基材を形成する繊維束が高密度化されて、繊維束間の距離の平均値を0〜10μmに調整しやすくなる点から好ましい。ここで、長繊維とは、所定の長さに切断処理された短繊維ではないことを意味する。長繊維の長さとしては、100mm以上、さらには、200mm以上であることが、繊維束の繊維密度を充分に高めることができる点から好ましい。極細繊維が短すぎる場合には、繊維束の高密度化が困難になる傾向がある。上限は、特に限定されないが、例えば、スパンボンド法により製造された不織布の場合には、連続的に紡糸された数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。また、これらの繊維は単独ではなく数種の繊維が混合したものでもよい。
極細繊維を形成する樹脂は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,芳香族ポリアミド,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;オレフィン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等繊維形成能を有する合成樹脂から形成された繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂が、溶融紡糸性に優れている点から好ましい。また、とくには、ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃、さらには105〜115℃であるポリエステルが好ましい。
gが100〜120℃のポリエステルを含む極細繊維は、得られる被熱転写シートに熱転写加工する際の加熱による軟化時の延伸性に優れているために、高低差の大きい凹凸模様の転写性が優れている。なお、Tgが100℃未満の場合には熱転写後の固化に時間がかかる傾向がある。
gは、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、レオロジ社製FTレオスペクトラDDVIV)を用いて、幅5mm、長さ30mmの試験片を間隔20mmのチャック間に固定して、測定領域30〜250℃、昇温速度3℃/min、歪み5μm/20mm、測定周波数10Hzの条件で動的粘弾性挙動を測定することにより得られる。
gが100〜120℃のポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートの構成単位に直鎖の構造を乱す共重合成分を構成単位として含有する変性ポリエチレンテレフタレート、特に、イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の非対称型芳香族カルボン酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合成分として所定割合で含有する変性ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。さらに具体的には、モノマー成分としてイソフタル酸単位を2〜12モル%含有する変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
不織布基材の繊維間または繊維束間の空隙には、形状安定性を付与したり充実感を付与したりすることを目的として、必要に応じて高分子弾性体を含んでもよい。高分子弾性体の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル、合成ゴム等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが接着性や機械特性が優れる点から好ましい。また、高分子弾性体には必要に応じて公知の各種添加剤を配合してもよい。なお、高分子弾性体としては、架橋された高分子弾性体、とくにはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)浸漬に対する質量減少率が5質量%以下である架橋性のポリウレタンが好ましい。架橋された高分子弾性体は熱プレス後の弾性回復による変形が少ないために、熱エンボス加工により繊維束間の距離の平均値を0〜10μmになるように高密度化しやすくなる。
このような架橋されたポリウレタンは、架橋性の非多孔質のポリウレタンの水系エマルジョンを用いて形成されることが好ましい。このような架橋性のポリウレタンの水系エマルジョンの具体例としては、例えば、乾燥後に架橋構造を形成する、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンの水系エマルジョンが挙げられる。
不織布基材中の高分子弾性体の含有割合としては、5〜40質量%、さらには、10〜35質量%、とくには15〜30質量%であることが、熱エンボス加工により繊維束間の距離の平均値を0〜10μmになるように高密度化しやすくなる点から好ましい。
不織布基材の見かけ密度は0.50g/cm3以上、さらには0.50〜
0.85g/cm3、とくには0.50〜0.80g/cm3であることが好ましい。このように高い見かけ密度の場合には、高い充実感が得られる。
不織布基材の厚さは特に限定されないが、200〜1000μm、さらには、300〜700μm、とくには350〜500μmであることが、薄い物品表面加飾シートが得られる点から好ましい。
物品表面加飾シートの表面層または被熱転写シートの表面層は、高分子弾性体を主体とする厚さ1〜100μmの層である。
表面層を形成するための高分子弾性体の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル弾性体、合成ゴム等が挙げられる。これらの高分子弾性体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリウレタンが接着性や、耐磨耗性や耐屈曲性等の機械物性が優れる点から好ましい。また、高分子弾性体は必要に応じて公知の各種添加剤を含有してもよい。
なお、表面層を形成する高分子弾性体は一液型の非架橋性の高分子弾性体であることが好ましい。架橋された高分子弾性体は、後の熱転写工程において可塑化しにくいために、型押し性が低下する。表面層は、接着性を高めることを目的としてアンカーコート層を設けたり、表面にトップコート層を設けたような積層構造であってもよい。
表面層の厚さは1〜100μmであり、15〜80μm、さらには20〜50μmであることが好ましい。表面層の厚さが1μm未満の場合には、得られる物品表面加飾シートの表面の耐熱性が低下したり、耐摩耗性が低下したりする傾向がある。また、表面層の厚さが100μmを超える場合には、物品表面加飾シートが厚くなるために好ましくない。
物品表面加飾シート及び被熱転写シートは、不織布基材と表面層とを接着するホットメルト型接着剤を主体とする厚さ10〜150μmの中間層を含む。ホットメルト型接着剤は、硬化前は熱可塑性を有する。このようなホットメルト型接着剤を主体とする厚さ10〜150μmの中間層は、被熱転写シートに熱エンボス加工する際の熱転写性の向上に寄与する。
ホットメルト型接着剤は、加熱することにより溶融し、その後に冷却されることにより再固化する、従来から知られたホットメルト型接着剤であれば、特に限定なく用いられる。具体的には、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、アクリル系、酢酸ビニル系、ポリスチレン系、エポキシ系等のホットメルト型接着剤が挙げられる。また、ホットメルト型接着剤としては、架橋タイプ、半架橋タイプ、非架橋タイプのいずれでもよいが、熱転写性に優れる点から非架橋タイプが好ましい。また、被熱転写シートの熱転写性と耐熱性や耐摩耗性等とのバランスに優れる点から軟化温度が150℃以下、さらには130℃以下であるようなホットメルト型ウレタン接着剤がとくに好ましい。なお、軟化温度は、例えば、50μmの乾式フィルムを作成したのち、定荷重を加えながら、一定温度で昇温し、目視で急激に伸び始める温度もしくは急激に切断する温度を特定することにより測定することができる。
また、ホットメルト型接着剤の軟化温度は、極細繊維のTgよりも0〜30℃、さらには、10〜20℃高いことが好ましい。このような場合には、極細繊維のTgとホットメルト型接着剤の軟化温度が近いために、熱エンボス加工により、中間層及び不織布基材に明瞭に凹凸模様が転写されやすくなる。ホットメルト型接着剤の軟化温度が高すぎる場合には、中間層に対する転写性が低下し、中間層に明瞭に転写するために熱エンボス加工の温度を高めすぎた場合には、極細繊維同士が融着してフィルム化することにより風合いが低下する。また、ホットメルト型接着剤の軟化温度が低すぎる場合には、不織布基材に対する転写性が低下し、不織布基材に明瞭に転写するために熱エンボス加工の温度を高めすぎた場合には、ホットメルト型接着剤が溶融したり分解したりするおそれがある。
中間層の厚さは10〜150μmであり、20〜130μm、さらには30〜120μmであることが好ましい。中間層の厚さが150μmを超える場合には、物品表面加飾シートの厚みが厚くなる。
なお、各層の厚みは熱エンボスのためのプレス工程で付与される圧力の違い等により、各領域に応じて多少異なるが、本実施形態においては、圧縮率の最も低い領域、すなわち非エンボス部の厚さの平均厚さを厚さの基準とする。
本実施形態の物品表面加飾シート及び被熱転写シートの厚さは、300〜1000μm、さらには300〜800μmであることが、曲面を含む物品の表面を加飾する場合においても正確に貼り合せられる点から好ましい。
本実施形態の物品表面加飾シートは、被熱転写シートの表面層側に、エンボスロール等を用いて凹凸模様を熱転写することによりエンボス部と非エンボス部とを含む図柄が形成されて製造される。
また、表面層と中間層との厚さの合計としては、40〜180μm、さらには50〜100μmであることが好ましい。表面層と中間層との厚さの合計が薄すぎる場合には耐摩耗性等の表面特性が不充分になり、表面層と中間層との厚さの合計が厚すぎる場合には、物品表面加飾シート全体が厚くなりすぎて意匠性が低下したり、貼り合わせにくくなったりする傾向がある。
また、エンボス部と非エンボス部との高低差としては、100〜500μm、さらには150〜400μm、さらには160〜350μmであることが好ましい。高低差が小さすぎる場合には形押しにより形成される輪郭が不明瞭になり、高低差が大きすぎるものは製造が困難になる傾向がある。
また、表面層と中間層との厚さの合計よりも、エンボス部と非エンボス部との高低差の方が大きい、具体的には、エンボス部と非エンボス部との高低差が、表面層と中間層との厚さの合計に対して、1.1倍以上、さらには2倍以上である場合には、不織布基材にまで凹凸模様がより明瞭に転写されて輪郭が正確に表現される点から好ましい。
本実施形態の物品表面加飾シート20においては、図1に示すように、熱エンボス加工により高低差の大きい凹凸模様を形成した場合には、表面層2及び中間層3だけではなく不織布基材1にまで達するように凹凸模様が転写される。その結果、少なくともエンボス部Hが形成された領域Rにおいて、不織布基材1が極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmであるように高密度化される。
なお、物品表面加飾シート20は、熱エンボス加工により高密度化された不織布基材を備えるために充実感に優れている。具体的には、240gf/cm2の荷重を掛けて定圧厚み測定器で測定したときの厚さが、無荷重状態のSEMで測定された厚みの90%以上を維持するような領域を備える。
なお、240gf/cm2の荷重を掛けて定圧厚み測定器で測定したときの厚さは、JISL1096に準じて荷重240gf/cm2のJIS厚み測定器(例えば、(株)尾崎製作所 JIS定圧厚み測定機)により測定することができる。また、無荷重状態の走査型顕微鏡(SEM)により測定された厚みは、定圧厚み測定器で測定する箇所の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影し写真から平均的に選択された3点における厚さを平均して算出される。
図1に示したように、物品表面加飾シート20は、例えば、成形体本体31の表面に接着して用いられる。物品表面加飾シート20の裏面に粘接着層14を設けることにより物品表面加飾用貼布が得られる。物品表面加飾用貼布は、例えば、物品表面加飾シートの不織布基材の裏面側に粘接着層を積層し、成形体本体の表面に粘接着層で貼り合せて接着して用いられる。成形体本体の表面に物品表面加飾用貼布を貼り合せることにより、立体感のある皮革様の意匠を表層に有する加飾成形体が容易に製造できる。
次に、物品表面加飾シートの製造方法の一例を説明する。
(1)繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材を準備する工程
本工程においては、はじめに、海島型複合繊維からなる長繊維のウェブを溶融紡糸により製造する。例えば、海島型複合繊維を溶融複合紡糸し、いわゆるスパンボンド法を用いて海島型複合繊維を切断せずにネット上に捕集してウェブを形成する方法が挙げられる。海島型複合繊維の海成分は、後の適当な段階で抽出または分解されて除去される。この分解除去または抽出除去により繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束が形成される。
海島型複合繊維の紡糸およびウェブ形成には、スパンボンド法が好ましく用いられる。具体的には、多数のノズル孔が、所定のパターンで配置された複合紡糸用口金を用いて、海島型複合繊維を個々のノズル孔からコンベヤベルト状の移動式のネット上に連続的に吐出させ、高速気流を用いて冷却しながら堆積させる。このような方法により長繊維のウェブが形成される。ネット上に形成されたウェブには融着処理が施されることが好ましい。融着処理により形態安定性が付与される。融着処理の具体例としては、例えば、熱プレス処理が挙げられる。熱プレス処理としては、例えば、カレンダーロールを使用し、所定の圧力と温度をかけて処理する方法を採用することができる。
海島型複合繊維の島成分を形成する樹脂としては、上述した極細繊維を形成する繊維が用いられる。一方、海島型複合繊維の海成分を構成する熱可塑性樹脂としては、島成分を構成する樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、スチレンアクリル共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。中でも、湿熱や熱水で収縮し易い点でポリビニルアルコール系樹脂、特にエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
形成されたウェブを融着処理するための熱プレス処理の温度は、海島型複合繊維の海成分を構成する成分の融点より10℃以上低いことが好ましい。熱プレス処理の温度が海成分の融点より10℃以上低い場合には、ウェブの良好な形態安定性を維持しながら、積重後のウェブを絡合する際の絡合不良や針穴の形成を防ぎ、高品位な不織布とすることができる。熱プレス処理後のウェブの目付けとしては、20〜60g/m2の範囲であることが好ましい。20〜60g/m2の範囲にあることで、次のウェブの絡合処理において良好な形態保持性を維持させることができる。
次に、得られたウェブを4〜100枚程度重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成する。ウェブ絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いてウェブに絡合処理を行うことにより形成される。以下に、代表例として、ニードルパンチによる絡合処理について詳しく説明する。
はじめに、ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。その後、ニードルパンチにより三次元的に繊維を絡合させる絡合処理を行う。ニードルパンチを行うことにより、見掛け密度が高く、繊維の抜けを起こしにくいウェブ絡合シートが得られる。ウェブ絡合シートの目付は、目的とする厚みに応じて適宜選択される。具体的には、例えば、500〜2000g/m2の範囲であることが取扱い性に優れる点から好ましい。
次に、必要に応じて、ウェブ絡合シートを熱収縮させることにより、ウェブ絡合シートの見掛け密度及び絡合度合を高める。なお、長繊維を含有するウェブ絡合シートは、短繊維を含有するウェブ絡合シートに比べて熱収縮により大きく収縮する。熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、見掛け密度が高められてもよい。
熱収縮処理によるウェブ絡合シートの目付の変化は、収縮処理前の目付に比べて、1.1倍(質量比)以上、さらには、1.3倍以上で、2.0倍以下、さらには1.6倍以下であることが好ましい。
なお、必要に応じて、後述する極細繊維化処理の前または後に、ウェブ絡合シートに高分子弾性体を付与してもよい。
ウェブ絡合シートに高分子弾性体を付与する方法としては、高分子弾性体の溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに含浸させた後、高分子弾性体を凝固させる方法が挙げられる。高分子弾性体の溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに含浸させる方法としては、溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに所定の含浸状態になるように浸漬し、プレスロール等で絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法が好ましく用いられる。また、その他の方法として、バーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法等を用いてもよい。
高分子弾性体の溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに含浸し、高分子弾性体を凝固させることにより、高分子弾性体をウェブ絡合シートに固定する。なお、架橋性の高分子弾性体を架橋させるためには、凝固及び乾燥後に加熱処理してキュア処理を行うことが好ましい。
なお、高分子弾性体の溶液またはエマルジョンは、本発明の効果を損なわない範囲で、染料や顔料などの着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、無機微粒子、導電剤などを含有してもよい。
ウェブ絡合シート中の海島型複合繊維は、海成分を水や溶剤等で抽出または分解除去することにより極細繊維束に変換される。ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂を海成分に用いた海島型複合繊維の場合においては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより海成分が除去される。
以上のような工程を経て、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材が準備される。このようにして得られた不織布基材は、通常、スライスや研削により、目的とする厚みに調整される。
(2)離型紙の表面に高分子弾性体を含む厚さ1〜100μmの表面層を形成する工程
本工程においては、はじめに、離型紙の表面に、表面層となる高分子弾性体を主体とするシートを形成する。
離型紙の表面に、表面層となる高分子弾性体を含むシートを形成する方法は特に限定されないが、例えば、離型紙上に高分子弾性体の溶液やエマルジョンを塗布した後、乾燥凝固させる、いわゆる乾式造面法や、離型紙上にTダイを用いて溶融させた高分子弾性体の塗膜を形成し、冷却して固化させる方法が挙げられる。
(3)離型紙の表面に形成された表面層に、乾燥時の厚さが10〜150μmになるようにホットメルト型接着剤の溶液の塗膜を形成し、塗膜に不織布基材を圧着し、塗膜中の溶媒を除去しながら不織布基材とホットメルト型接着剤とを接着させ、離型紙を除去することにより被熱転写シートを形成する工程
離型紙上に形成された表面層となる、高分子弾性体を含むシートの表面に、厚さ10〜150μmの中間層を形成するためのホットメルト型接着剤を主体とする樹脂成分を塗布する。
ホットメルト型接着剤の性状は、通常、常温で固体状である。従って、形成される中間層も固体状である。このようなホットメルト型接着剤は、通常、無溶剤タイプの固体状のホットメルト型接着剤を塗布可能な粘度に調整して塗布される。表面層を形成するための高分子弾性体のシートに溶融されたホットメルト型接着剤を塗布した場合には、高分子弾性体のシートが熱履歴を受ける。このような熱履歴を避けるために、固体状のホットメルト型接着剤を溶剤に溶解した溶液タイプのホットメルト型接着剤を用いて塗膜を形成することが好ましい。
離型紙上に形成された表面層を形成するためのシートの表面に、溶液タイプのホットメルト型接着剤を用いて塗膜を形成し、その溶液中の溶媒が完全に乾燥する前に、予め準備された不織布基材を貼り合せて溶剤を乾燥除去することにより、不織布基材と表面層とが一体化される。この際、必要に応じて、接着させる際にホットメルト型接着剤が硬化しない程度の温度で熱プレスしてもよい。そして、ホットメルト型接着剤と不織布基材とが接着された後、表面層から離型紙を剥離することにより、被熱転写シートが形成される。
(4)被熱転写シートに熱エンボス加工により型押しする工程
被熱転写シートに、表面層が積層された側から熱エンボス加工により型押しすることにより、シボ模様のような凹凸模様を有する加飾シートが得られる。
熱エンボス加工としては、加熱された表面に凹凸で形成されている型押しパターンを有するエンボスロールと表面平滑なバックアップロールとの間に、被熱転写シートの表面層がエンボスロールに押圧されるように通過させる。
エンボスロールの表面に形成された凹凸の高低差は、被熱転写シートの表面層及び中間層の厚み等に応じて適宜選択されるが、具体的には、例えば、100〜500μm、さらには150〜400μmであることが、明瞭なエンボス模様が形成される点から好ましい。
また、エンボスロールの温度や圧力は、被熱転写シートに充分に型押しされるような条件であれば特に限定されない。例えば、極細繊維のTg以上で融点未満の温度が挙げられる。このようにして、物品表面加飾シートが得られる。
被熱転写シートに、表面層が積層された側から熱エンボス処理等により凹凸模様を熱転写することにより、シボ模様のような凹凸模様を有する皮革様外観を有する物品表面加飾シートが得られる。
熱エンボス加工の条件は特に限定されないが、少なくともエンボス部において、厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値が0〜10μmになるように不織布基材を圧縮できる条件が選ばれる。具体的には、例えば、表面の温度が100〜180℃,プレス圧0.1〜1.0MPa,プレス時間1〜3m/minの条件、さらには、温度が130〜150℃,プレス圧0.2〜0.5MPa,プレス時間1〜3m/minの条件、とくには、温度が130〜150℃,プレス圧0.4〜0.8MPa,プレス時間1〜3m/minの条件で、ロールプレスするような方法が好ましく用いられる。ロールプレスの場合、処理速度としては、例えば、0.5〜5m/min、さらには1〜3m/min程度であることが好ましい。また、表面の温度は、ホットメルト型接着剤の軟化温度よりも10〜30℃、さらには、15〜25℃高いことが転写性に優れる点から好ましい。なお、プレス温度やプレス圧が高すぎる場合には、繊維が溶融してフィルム化してしまうことがある点から好ましくない。このような処理により、少なくともエンボス部において、不織布基材の厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値を0〜10μmになるように調整する。
このようにして得られた物品表面加飾シートは、その裏面に粘接着層が形成され、成形体や各種物品の表面に貼り合される。粘接着層は、例えば、物品表面加飾シートの裏面側に両面テープを貼り合せるようにして形成できる。このような物品表面加飾シートを成形体本体に貼り合せることにより、表面にシボ模様のような立体感のある皮革様の外観を有する加飾成形体が得られる。本実施形態の物品表面加飾シートは、薄さの要求される用途、具体的には、例えば、一眼レフカメラの筐体やカメラグリップの表面、携帯端末本体の筐体やカバー、車両内装材、化粧品ケース等の加飾に好ましく用いられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール(エチレン単位の含有量8.5モル%、重合度380、ケン化度98.7モル%)、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸単位の含有量6.0モル%)を、それぞれ個別に溶融させた。そして、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成しうるような、多数のノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に、それぞれの溶融樹脂を供給した。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。そして、口金温度260℃に設定されたノズル孔より吐出させた。
そして、ノズル孔から吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように気流の圧力を調節したエアジェット・ノズル型の吸引装置で吸引することにより延伸し、平均繊度が2.1dtexの海島型長繊維を紡糸した。紡糸された海島型長繊維は、可動型のネット上に、ネットの裏面から吸引しながら連続的に堆積された。堆積量はネットの移動速度を調節することにより調節された。そして、表面の毛羽立ちを抑えるために、ネット上の堆積された海島型長繊維を42℃の金属ロールで軽く押さえた。そして、海島型長繊維をネットから剥離し、表面温度75℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させることにより、線圧200N/mmで熱プレスした。このようにして、表面の繊維が格子状に仮融着された目付34g/m2の長繊維ウェブが得られた。
次に、得られた長繊維ウェブの表面に、帯電防止剤を混合した油剤をスプレー付与した後、クロスラッパー装置を用いて長繊維ウェブを10枚重ねて総目付が340g/m2の重ね合せウェブを作成し、更に、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、重ね合せウェブをニードルパンチングすることにより三次元絡合処理した。具体的には、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmで積層体の両面から交互に3300パンチ/cm2のパンチ数でニードルパンチした。このニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は415g/m2であった。
得られた絡合ウェブは、以下のようにして湿熱収縮処理されることにより、緻密化された。具体的には、18℃の水を絡合ウェブに対して10質量%均一にスプレーし、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中で3分間張力が掛からない状態で放置して熱処理することにより湿熱収縮させて見かけの繊維密度を向上させた。この湿熱収縮処理による面積収縮率は45%であり、緻密化された絡合ウェブの目付は750g/m2であり、見かけ密度は0.52g/cm3であった。そして、絡合ウェブをさらに緻密化するために乾熱ロールプレスすることにより、見かけ密度0.60g/cm3に調整した。
次に、緻密化された絡合ウェブに、DMF浸漬に対する質量減少率が0.5質量%である、架橋性の無孔質のポリウレタンを以下のようにして含浸させた。ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンを主体とする架橋型の水系ポリウレタンエマルジョン(固形分濃度30%)を緻密化された絡合ウェブ含浸させた。そして、150℃の乾燥炉で水分を乾燥し、さらにポリウレタンを架橋させた。このようにして、ポリウレタン/絡合ウェブの質量比が18/82のポリウレタン絡合ウェブ複合体を形成した。
次に、ポリウレタン絡合ウェブ複合体を95℃の熱水中に20分間浸漬することにより海島型長繊維に含まれる海成分を抽出除去し、120℃の乾燥炉で乾燥することにより、厚さ約1000μmの不織布基材が得られた。
得られた不織布基材のポリウレタン/繊維絡合体の質量比は22/78であり、その見かけ密度は0.53g/cm3であった。また、繊維絡合体の極細繊維の繊度は0.08dtexであった。
そして得られた不織布基材を厚み方向に2分割し、370μmに研削した。
一方、離形紙上に、表面層として非架橋性のシリコン変性ポリカーボネート系ポリウレタンのDMF溶液を塗布し、乾燥することにより厚さ30μmの表面層シートを形成した。
そして、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるように、固形分約50%のポリカーボネート系ホットメルト型接着剤の溶液を塗布した。なお、ポリカーボネート系ホットメルト型接着剤は、非架橋タイプであり、軟化温度120℃であった。
そして、表面層シート上に形成されたポリカーボネート系ホットメルト型接着剤のDMF溶液の塗膜に、不織布基材を貼り合せ、軽く押さえながら塗膜中の溶媒を乾燥させた。このようにして被熱転写シートが得られた。得られた被熱転写シートの厚さは411μmであった。
そして、得られた被熱転写シートに対して、高低差200μmで台形状の凸部を表面に有するエンボスロールを使用して、ロール温度140℃、プレス圧力0.4MPa、処理速度2m/分で型押しを行うことにより、高低差176μmのシボ模様のエンボス部を有する皮革様の意匠を備えた物品表面加飾シートを得た。
得られた物品表面加飾シートのエンボス部の断面の200倍のSEM画像を撮影した。そして、図3及び以下に示すような方法により、厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値を求めた。
図3に示すように、物品表面加飾シートの幅方向の861μmの範囲に約80μmの間隔で、厚み方向に平行な補助線を10本引いた。そして、各線が通過する複数の繊維束の輪郭間の繊維束間距離(繊維束の外周同士の間の距離)の合計を各線毎に求めた。そして10本の線における繊維束間距離の距離合計(A)を求めた。一方、10本の線上にある極細繊維束の数の合計を求め、その数の合計から10を引いた繊維束間数(B)を求めた。そして、距離合計(A)を繊維束間数(B)で除することにより、極細繊維束間距離の平均値を算出した。その結果、得られた物品表面加飾シートの極細繊維束間距離の平均値は、2.75μmであった。
また、物品表面加飾シートのエンボス部の厚みをJISL1096に準じて、荷重240gf/cm2のJIS厚み測定器((株)尾崎製作所 定圧厚み測定機)で測定したところ、厚さ227μmであった。一方、SEMで測定された同じ個所の厚さは235μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合は96.5%であった。
得られた物品表面加飾シートの凹凸模様の転写性を以下のようにして評価した。結果を表1に示す。
〈転写性の評価〉
シボ模様のエンボス部を転写した塩ビシートの見本と比較して、シボ模様の転写性を目視で以下の基準により3段階で判定した。
1級…シボ深さが深く、シボ頂点から最底辺までシボ形状が明瞭に転写されていた。
2級…シボ深さは深いが、シボ頂点の2/3付近の高さから最底辺までの範囲にのみ輪郭が賦形されており、それ以外の部分は輪郭が不鮮明であった。
3級…シボ深さが浅く、また、シボ頂点の1/2付近の高さから最底辺までの範囲にのみ輪郭が賦形されており、それ以外の部分は輪郭が不鮮明であった。
[実施例2]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが120℃であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが100℃であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比22/78に代えて、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比を29/71にした見かけ密度0.69g/cm3の不織布基材を用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが10μmになるようにポリカーボネート系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリカーボネート系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが150μmになるようにポリカーボネート系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、離形紙上に、乾燥後の厚さが30μmの表面層シートを形成する代わりに、乾燥後の厚さが15μmになるように表面層シートを形成した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1において、離形紙上に、乾燥後の厚さが30μmの表面層シートを形成する代わりに、乾燥後の厚さが50μmになるように表面層シートを形成した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例1において、不織布基材に、DMF浸漬に対する質量減少率が0.5質量%である、無孔質ポリウレタンを含浸させる代わりに、DMFに対する重量減少率が100質量%である、発泡ポリウレタンを形成するためのポリウレタンのDMF溶液(固形分20%)を含浸させ、湿式凝固させることにより、発泡ポリウレタン/繊維絡合体の質量比が18/82の不織布基材を形成した。上記変更以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが130℃であるポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、表面層シートに、軟化温度120℃のポリカーボネート系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、ホットメルト型接着剤ではない、
軟化温度150℃の一液型ポリカーボネート系接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが8μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
表1の結果から、ホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの中間層を含み、繊維束間の距離の平均値が0〜10μmである本発明に係る実施例1〜9の物品表面加飾シートには、いずれも深いシボ模様が形成されていた。一方、Tgが130℃であるPETの極細繊維を用いた比較例1の物品表面加飾シートには、浅いシボ模様しか形成されなかった。また、軟化温度150℃の一液型ポリカーボネート系接着剤を中間層として含む比較例2の物品表面加飾シートにも、浅いシボ模様しか形成されなかった。また、厚さ8μmの中間層を含む比較例3の物品表面加飾シートにも、浅いシボ模様しか形成されなかった。なお、ホットメルト型接着剤の軟化温度と極細繊維のTgの差が10〜20℃の実施例1,3は、ホットメルト型接着剤の軟化温度と極細繊維のTgの差が0℃の実施例2よりも輪郭が明瞭になり賦形性に優れていた。
本発明は、携帯端末本体(スマートフォン、タブレットPC)およびそのケース、カバーなどのアクセサリ、カメラグリップ、車両内装材、化粧品ケースなどの樹脂成形体の表面を皮革用表面で加飾するインサート成形に用いられる。
1,11 不織布基材
1a 極細繊維の繊維束
2,12 表面層
3,13 中間層
10 被熱転写シート
20 物品表面加飾シート
30 物品表面加飾用貼布
31 成形体本体
40 加飾成形体
H エンボス部

Claims (13)

  1. エンボス部を有する物品表面加飾シートであって、
    不織布基材と、高分子弾性体を含む1〜100μmの表面層と、前記不織布基材と前記表面層とを接着するホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの中間層とを含み、
    前記不織布基材は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、少なくとも前記エンボス部における、厚み方向断面の前記繊維束間の距離の平均値が0〜10μmであることを特徴とする物品表面加飾シート。
  2. 前記ホットメルト型接着剤が、前記極細繊維のガラス転移温度(Tg)よりも0〜30℃高い軟化温度を有する請求項1に記載の物品表面加飾シート。
  3. 前記極細繊維が100〜120℃のTgを有する変性ポリエステルを含む請求項2に記載の物品表面加飾シート。
  4. 前記表面層と前記中間層との厚さの合計よりも、前記エンボス部と非エンボス部との高低差の方が大きい請求項1〜3の何れか1項に記載の物品表面加飾シート。
  5. 前記高低差が、前記表面層と前記中間層との厚さの合計に対して、1.1倍以上である請求項4に記載の物品表面加飾シート。
  6. 前記高低差が150μm以上である請求項4または5に記載の物品表面加飾シート。
  7. 前記不織布基材が架橋された高分子弾性体を5〜40質量%含有する請求項1〜6の何れか1項に記載の物品表面加飾シート。
  8. 少なくとも前記エンボス部において、走査型顕微鏡(SEM)で測定された厚さに対する240gf/cm2に設定した定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合が90%以上である請求項1〜7の何れか1項に記載の物品表面加飾シート。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載の物品表面加飾シートと、裏面側に積層された粘着層又は接着層とを有することを特徴とする物品表面加飾用貼布。
  10. 請求項1〜9の何れか1項に記載の物品表面加飾シートを成形体の表面に接着して形成されたことを特徴とする加飾成形体。
  11. (1)Tgが100〜120℃の変性ポリエステルを含む繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材と、高分子弾性体を含む厚さ1〜100μmの表面層と、前記不織布基材と前記表面層とを接着する、前記Tgよりも0〜30℃高い軟化温度を有するホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの中間層とを含む被熱転写シートを準備する工程と、
    (2)少なくともエンボス部における、厚み方向断面の前記繊維束間の距離の平均値が0〜10μmになるように前記被熱転写シートに熱エンボス加工する工程と、を備えることを特徴とする物品表面加飾シートの製造方法。
  12. 前記工程(1)が、
    (1a)前記不織布基材を準備する工程と、
    (1b)離型紙の表面に前記高分子弾性体を含む厚さ1〜50μmの表面層を形成する工程と、
    (1c)前記離型紙の表面に形成された表面層に、乾燥時の厚さが10〜150μmになるように前記ホットメルト型接着剤の溶液の塗膜を形成する工程と、
    (1d)前記塗膜に前記不織布基材を圧着し、前記塗膜中の溶媒を除去しながら前記不織布基材と前記ホットメルト型接着剤とを接着させ、前記離型紙を除去することにより被熱転写シートを形成する工程と、を備える請求項11に記載の物品表面加飾シートの製造方法。
  13. 前記熱エンボス加工に用いられるエンボス型の表面温度が、前記ホットメルト型接着剤の軟化温度よりも10〜30℃高い請求項11または12に記載の物品表面加飾シートの製造方法。
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