JP5892925B2 - 加飾成形用シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、三次元形状に成形された成形体の表面が皮革様の外観を有する加飾シートで加飾された成形体に関する。三次元成形体の表面加飾の方法としては、成形体の表面に粘着剤を用いて皮革様の外観を有する加飾シートを接着する方法(AMD)、皮革様の外観を有する加飾シートをプレス加工、真空成形、圧空成形等で三次元構造のプレフォーム成形体に成形した後に、プレフォーム成形体を射出成形の際に金型にインサートして、射出インサート成形する方法(IML)があり、AMD用加飾シート、IML用プレフォーム成形体、IML成形体および加飾シートの製造方法に関する。
携帯電話、モバイル機器、家電製品の筐体や、車両、航空機等の内装部品、建材、家具等の外装部材として、加飾インサート成形体が知られている。
例えば、下記特許文献1は、特定の極細繊維束の繊維絡合体と高分子弾性体とからなる加飾成形用シートを三次元形状に成形したプレフォーム成形体を成形し、得られたプレフォーム成形体を金型キャビィティに配置して射出インサート成形することにより、表面に皮革様の外観が付与された加飾インサート成形体を開示する。
特開2010−235858号公報
特許文献1に開示された加飾成形用シートでプレフォーム成形体を成形する場合、次のような問題があった。
特許文献1に開示されたような加飾成形用シートで深絞り形状のプレフォーム成形体を成形した場合、図8(a)のRで示すような山の裾野の立ち上がり部分の角や頂面に接する角をくっきりとした折り角がついたように賦形することが困難であり、図8(b)に示すような丸みを帯びたような角に仕上がることが多かった。そしてくっきりとした折り角がつかない場合には、腰がなく頂面が撓んだような形状安定性が低い深絞り形状のプレフォーム成形体しか得られなかった。そしてこのようなプレフォーム成形体を金型キャビィティに嵌合させて射出インサート成形した場合、得られる加飾インサート成形体の角も同様に丸みを帯びていた。
また、特許文献1に開示されたような加飾成形用シートで深絞り形状のプレフォーム成形体を成形した場合、表面にあらびとも呼ばれる荒れが生じたり、柔軟な風合いが失われたりするという問題もあった。なお、あらびとは、表面に繊維のむらが表出して微凹凸が生じたような外観を意味する。
本発明は、上述した問題、すなわち、賦形性及び表面の外観や風合いに優れた深絞り形状のプレフォーム成形体を得ることができる加飾成形用シートを提供すること、また、得られたプレフォーム成形体を用いた外観性に優れた加飾インサート成形体を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃の変性ポリエステルからなる極細繊維束の繊維絡合体と前記繊維絡合体に含浸された架橋ポリウレタンからなる基材の表面に銀面層が積層された加飾インサート成形用プレフォーム成形体を成形するための加飾成形用シートであって、加飾成形用シートまたは基材の240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、加飾成形用シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmであることを特徴とする加飾成形用シートである。このような加飾成形用シートは、基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、加飾成形用シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmであることにより、繊維の密度むらが抑制され、表面のあらび欠点が少なく平滑性の良好な成形品が得られる点から好ましい。また、不織布を形成する極細繊維はガラス転移温度(Tg)が100〜120℃の変性ポリエステルからなる。このような極細繊維は比較的低い温度で軟化し、軟化したときには容易に延伸するために、プレフォーム成形体の賦形性が向上する。また、架橋されたポリウレタンを含有することにより、非架橋ポリウレタンを含有する場合のようにプレフォーム成形時の離形後の弾性回復による変形が抑制される。
このような架橋されたポリウレタンとしては水系ポリウレタンエマルジョンに由来する架橋された非発泡ポリウレタンであることが賦形性に優れる点で好ましい。
加飾成形用シートは、裏面に粘着層が積層されていることが好ましい。粘着層を介して三次元成形体の表面に接着することで、皮革様の外観に加飾することができる。本発明の加飾成形用シートは、加飾成形用シートを所望のパーツに切断しても寸法変化や加工時の形態安定性が良好でかつ薄物化が可能であるため、高品位な加飾が実現できる。
加飾成形用シートの伸長特性としては、150℃における30%伸長応力が50N/25mm以下であることが賦形性に優れる点から好ましい。
また、加飾成形用シートは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS系樹脂からなる群から選ばれる樹脂フィルムが積層されていることが好ましい。このような構成によれば、得られるプレフォーム成形体を用いてインサート成形する場合に、加飾成形用シートの表面に直接溶融樹脂が接したときの熱や圧力の影響を緩和することにより、表面が荒れることを抑制することができる。
また、本発明の他の一局面は、上述した加飾成形用シートを三次元形状に成形した加飾インサート成形用プレフォーム成形体である。このようなプレフォーム成形体は、目的とする形状に正確に賦形され、且つ形状安定性にも優れている。そのために、インサート成形において、金型内のキャビティの所定の位置に正確に配置することができる。従って、インサート用ハンドリングロボット等により自動化してプレフォーム成形体を配置する際の連続生産性を向上させることができる。
また、本発明の他の一局面は、インサート成形により成形される成形体本体と、成形体本体の表層に一体化されて配置された上述したようなインサート成形用プレフォーム成形体とを、備える加飾インサート成形体である。このようなインサート成形体は、表面の外観や触感に優れた皮革様の加飾表面を有する。
また、加飾成形用シートが粘着層を介して成形体本体と一体化されてなる加飾成形体は、加飾成形用シートが寸法安定性に優れることから正確に成形体本体と一体化されて、加飾成形体の最終製品としての外観に優れる。
また、本発明の他の一局面は、下記(1)〜(6)の工程、または(1)、(2)、(4)〜(6)の工程を順次含む加飾インサート成形用プレフォーム成形体を成形するための加飾成形用シートの製造方法である。
(1)ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃の変性ポリエステルを島成分とする海島型繊維からなるウェブを製造する工程、
(2)得られたウェブを絡合してウェブ絡合シートを製造する工程、
(3)得られたウェブ絡合シートに架橋されたポリウレタンを含浸する工程、
(4)ウェブ絡合シートの海島型繊維の海成分を除去して極細繊維束化して基材を製造する工程、
(5)得られた基材の少なくとも一方の表面に高分子弾性体から成る銀面層を積層する工程、
(6)工程(5)の前または後で、240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、基材の厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmとなるよう加熱プレスする工程、
本発明によれば、皮革様の加飾成形用シートを用いて深絞り形状のプレフォーム成形体を成形する場合において、優れた賦形性を維持し、また、優れた触感や表面外観を有するプレフォーム成形体を得ることができる。
また、成形体の表面に粘着層を介して皮革様の外観を有する加飾成形用シートを接着する場合においても、粘着層形成以降の加工時の工程張力や形態変化を抑制することで形態安定性が良好である。そして薄物(厚みの薄いシート)化によっても上記した効果が十分発揮可能であるため、高品位な加飾が実現できる。
図1は、本実施形態の加飾成形用シート10の模式断面図である。 図2は、深絞り形状のプレフォーム成形体を成形するための金型5の型面形状の一例を示す模式図である。 図3は、加飾成形用シート10を用いてプレフォーム成形体20を成形する工程を説明する工程説明図である。 図4は、プレフォーム成形体20を用いた射出インサート成形を説明するための工程説明図である。 図5は、従来の加飾成形用シートを用いて射出インサート成形したときに生じる問題点を説明するための模式断面図である。 図6は、樹脂フィルム7が積層された加飾成形用シート10の模式断面図である。 図7は、実施例における賦形性評価を説明するための説明図である。 図8は、従来のプレフォーム成形体の賦形性を説明する模式図である。
以下、本発明に係る加飾成形用シート、プレフォーム成形体及びインサート成形体の好ましい実施形態を説明する。
図1は本実施形態の加飾成形用シート10の模式断面図である。図1中、1はガラス転移温度(Tg)が100〜120℃のポリエステルからなる極細単繊維1aからなる繊維束1bの絡合体であり、2は水系ポリウレタンエマルジョンに由来する架橋されたポリウレタンであり、3は空隙である。また、4は加飾成形用シート10の表面に必要に応じて設けられる銀面層である。ポリウレタン2は繊維絡合体1に含浸一体化されている。そして、繊維絡合体1の見かけ密度は0.47g/cm3以上である。
極細単繊維1aは、平均繊度が0.9dtex以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、0.05〜0.5dtex、特に好ましくは0.07〜0.1dtexの単繊維繊度を有する。
極細単繊維1aの平均繊度が0.9dtexを超える場合には、加飾成形用シートをプレフォーム成形する際に、加熱による軟化時の延伸性が低下して、金型形状を正確に転写しにくくなり賦形性が低下する。また、平均繊度が低すぎる場合には、極細単繊維の製造が困難になる。
また、極細単繊維1aはガラス転移温度(T)が100〜120℃、好ましくは105〜115℃であるポリエステルからなる。ポリエステルのTが120℃を超える場合には、軟化時の延伸性が低下して成形性が低下する。また、ポリエステルのTが100℃未満の場合には、プレフォーム成形の際に軟化しすぎて固化に時間がかかるために表面性が低下する。
ポリエステルのTは、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、レオロジ社製FTレオスペクトラDDVIV)を用いて、幅5mm、長さ30mmの試験片を間隔20mmのチャック間に固定して、測定領域30〜250℃、昇温速度3℃/min、歪み5μm/20mm、測定周波数10Hzの条件で動的粘弾性挙動を測定することにより得られる。
このようなポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートの構成単位に直鎖の構造を乱す共重合成分を構成単位として含有する変性ポリエチレンテレフタレート、特に、イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の非対称型芳香族カルボン酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合成分として所定割合で含有する変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。さらに具体的には、モノマー成分としてイソフタル酸単位を2〜12モル%含有する変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
加飾成形用シート10またはその基材の240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、好ましくは93〜100%である。厚み比が90%を下回る場合は、くっきりとした折り角がつかず、加飾インサート成形用プレフォーム成形体としてプレフォーム成形時に得られるシートに腰がなく頂面や側面が撓んだような形状安定性が低いものになる。基材の厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmであり、好ましくは0〜8μmである。これにより、繊維の密度むらが抑制され、表面のあらび欠点が少なく平滑性の良好でかつ、厚みの薄い成形品が好適に得られる。10μmを超える場合は、表面にあらびとも呼ばれる面荒れが生じ、また表面の平滑性が失われる。
加飾成形用シート10の基材の荷重240gf/cm荷重時の厚みの測定方法は、JISL1096に準じて荷重240gf/cmのJIS厚み測定器(株式会社尾崎製作所製 ピーコック定圧厚み測定機)で測定した厚みの値である。そして、前記厚み測定器で測定した箇所の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影し、写真から任意に3点選択した厚みを測定し、それを平均した値である。
計算式
基材の荷重時厚み/無荷重時の厚み×100≧90(%)
シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値は、以下の方法で測定した値とする。シートの厚み方向に平行な任意の断面においてシートの厚み方向に垂直な861μmの範囲を走査電子顕微鏡(SEM)150倍で全層撮影し、78〜81μm、好ましくは80μmの間隔でシートの厚み方向に平行に線を10本記入し、個々に記入した線上にある隣接した繊維束間距離(繊維束の外周同士の間の距離)の合計を個々に求め、そして記入した線10本分の全ての繊維束間距離の合計距離(A)を求める。次に、10本全ての線上にある極細繊維束の数の合計を求め、その束の数の合計から10引いた数を(B)とし、(B)で合計距離(A)を除した値である。
即ち、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値=(A)μm/(B)本数となる。
そして、任意の10点のそれぞれの線上における繊維束間距離の平均値全てが0〜10μmであることが好ましく、0〜8μmであることがより好ましい。
その場合の極細繊維束間距離の平均値の求め方は、上記と考え方は同じであり、個々の線上にある隣接した繊維束間距離(繊維束の外周同士の間の距離)の合計をそれぞれ求め、個々の線上にある極細繊維束の数の合計から1引いた数で除した値である。
断面方向における繊維束のカウント方法は、円形の形状をした繊維束のみならず、斜めに伸びる楕円の形状をした繊維束もカウントする。但し、一定の島数があることを基準とする。
加飾成形用シート10またはその基材を上記厚み変化と繊維束間距離の範囲に調整する方法としては、後述のとおり、長繊維であることや収縮処理を行いうこと、緻密化処理を行うこと等が好ましく、さらに加熱加圧処理することが重要である。加熱加圧処理する方法として一般的に熱エンボスロールでのプレスが知られている。プレス条件としては、温度・圧力・時間で決定される。まず、エンボスロールの表面温度は100〜180℃が好ましく、さらに好ましくは、130〜150℃である。圧力は0.1〜1.0MPaが好ましく、さらに好ましくは、0.4〜0.8MPaである。処理速度は0.5〜5m/minが好ましく、さらに好ましくは1〜3m/minである。この条件でプレス処理することで、表面状態がフィルム化せずフラットになり、繊維の密度斑も解消され、成形した場合くっきりとした折り角が形成される。
繊維絡合体1をこのように荷重時と無荷重時の厚みの比率を90%以上とするため、または極細繊維束間距離の平均値を10μm以下にするためには、極細単繊維1aは、複数本の極細単繊維1aが集束してなる繊維束1bとして存在することが好ましい。具体的には、例えば、5〜1000本、さらには5〜200本、特に好ましくは10〜50本、最も好ましくは10〜30本の極細単繊維1aが繊維束1bとして集束して存在していることが好ましい。このように極細単繊維1aが繊維束1bを形成して存在することにより、繊維絡合体1の240gf/cm荷重時と無荷重時の厚み比率を90以上および極際繊維束間距離の平均値を8μm以下にする事ができる。
また、繊維束1bは長繊維の極細単繊維1aから形成されていることが、繊維絡合体1の240gf/cm荷重時と無荷重時の厚み比率を90%以上および極細繊維束間距離の平均値を10μm以下にしやすい点から好ましい。ここで、長繊維とは、所定の長さで切断処理された短繊維ではないことを意味する。長繊維の長さとしては、100mm以上、さらには、200mm以上であることが、繊維束1bの繊維密度を充分に高めることができる点から好ましい。極細単繊維1aの長さが短すぎる場合には、繊維束の高密度化が困難になり、それにともなって240gf/cm荷重時と無荷重時の厚み比率や極細繊維束間距離の平均値を本発明の範囲とすることが困難になる傾向がある。上限は、特に限定されないが、例えば、スパンボンド法により製造された不織布に由来する繊維絡合体を含有する場合には、連続的に紡糸された数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。また、これらの繊維は単独ではなく数種の繊維が混合したものでもよい。
次に、繊維絡合体1に含浸一体化される架橋されたポリウレタン2について、詳しく説明する。
ポリウレタン2は、水系ポリウレタンエマルジョンに由来する架橋されたポリウレタンである。このような架橋されたポリウレタンは、プレフォーム成形体の成形時において、未架橋のポリウレタンに比べて金型から離形した後の弾性回復による変形が抑制される。未架橋のポリウレタンを用いた場合には、金型から離形された後に弾性回復により変形してしまうために、型通りに賦形しても離形後に変形する傾向がある。特に深絞り形状のプレフォーム成形体を成形する場合、図8(b)に示すような角が丸みを帯びたような賦形になる傾向がある。上述したような架橋されたポリウレタンを用いた場合には、架橋構造により金型内で形がセットされるために、離形した後の弾性回復による変形が抑制されると思われる。
このような架橋されたポリウレタン2は、架橋性のポリウレタンの水系エマルジョンを用いて形成されることが好ましい。このような架橋性のポリウレタンの水系エマルジョンの具体例としては、例えば、乾燥後に架橋構造を形成する、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンの水系エマルジョンが挙げられる。
架橋されたポリウレタン2の含有割合は、5〜40質量%、さらには、8〜35質量%、とくには12〜30%の範囲で含有させることが好ましい。架橋されたポリウレタン2の含有割合が5質量%未満の場合には形状安定性が低下し、プレフォーム成形体を成形した場合に表面のあらびが悪化する傾向がある。また、40質量%を超える場合には、表面の柔軟な風合いが低下する傾向がある。
加飾成形用シート10はその表面に銀面層4を有することが好ましい。銀面層4は、加飾成形用シート10の表層に銀面様の外観を付与するために必要に応じて設けられる。
銀面層4を形成するための樹脂成分は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等の各種ポリウレタン系樹脂や、アクリル系樹脂、ポリウレタンアクリル複合樹脂、ポリ塩化ビニル、合成ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。これらの中では、ポリウレタン系樹脂が接着性や、耐磨耗性や耐屈曲性等の機械物性が優れる点から好ましい。
このような銀面層4は、繊維絡合体1と架橋されたポリウレタン2との複合体からなる層の表面に銀面層を形成するための樹脂成分の溶液を塗布した後、乾燥凝固することにより形成される。また、離型紙上で予め形成した銀面層を形成するための膜を、接着層を介して上記シートの表面に転写して貼り合せてもよい。また、銀面層4は、接着性を高めることを目的としてアンカーコート層を設けたり、表面にトップコート層を設けたような積層構造であってもよい。
銀面層4の厚みは10〜500μm、さらには20〜150μm、特に40〜120μmの範囲であることが好ましい。
銀面層4の表面は、必要に応じて公知のエンボス機を用いることにより、エンボス模様が形成されていてもよい。このような模様を付与することにより、表面をさらに皮革に似たような外観を実現することができる。熱プレス工程は、銀面層を形成する前後どちらでもあっても良い。銀面層を形成する前に熱プレスする条件としては、温度が130〜150℃であり、圧力は0.2〜0.5MPaであり、時間は1〜3m/minが好適であり、この範囲では、表面状態がフィルム化せずフラットになり、繊維の密度斑も解消され、成形した場合くっきりとした折り角が形成される。銀面層を形成した後に熱プレスする条件としては、銀面層がクッションの役割を果たすため、強めの条件にした方が好ましい。温度は140〜160℃であり、圧力は0.4〜0.8MPaであり、時間は1〜3m/minが好適である。この範囲では表面状態が熔融せず、皮革に似たような外観を実現することができ、さらに好みの柄を形成でき、繊維の密度斑が解消され、成形した場合くっきりとした折り角が形成される。
このような加飾成形用シート10の厚み(銀面層4の厚みを含む)は、0.30〜1.00mm、さらには0.30〜0.80mmであることが好ましい。また、加飾成形用シート10から銀面層4の厚みを除いた、繊維絡合体1と架橋されたポリウレタン2との複合体からなる部分の層の厚みは、0.25〜0.95mm、さらには0.25〜0.75mmであることが好ましい。
このようにして得られた加飾成形用シートは、熱成形する温度付近である150℃における30%伸長時の応力が50N/25mm以下、さらには40N/25mm以下であることが好ましい。150℃において30%伸長時の応力が大きすぎる場合には、プレフォーム成形において延伸性が低下することにより賦形性が低下する傾向がある。
なお、30%伸長時の応力は、例えば、JIS L1096の6.12「引張り強度試験」に準じて、25mm幅、長さ200mmの長方形の試験片を、掴み間隔50mmとなるよう引張試験機に取り付け、応力−歪み曲線から30%伸長時の応力を読み取ることにより求められる。
また、加飾成形用シート10の見かけ密度は0.50g/cm3以上、さらには0.50〜0.85g/cm3、とくには0.60〜0.80g/cm3であることが好ましい。加飾成形用シート10は、このように高い見かけ密度で充実感があるために、得られるプレフォーム成形体の形状安定性に優れる。また、成形時に圧縮されて厚みが薄くなることにより柔軟性を失うことが抑制される。加飾成形用シート10の見かけ密度が低すぎる場合には、プレフォーム成形体やインサート成形体の成形時に密度斑による浮模様が表出する。また、見かけ密度が高すぎる場合には、表面の柔軟な風合いが低下する傾向がある。
次に加飾成形用シート10を三次元形状に熱プレス成形することによりプレフォーム成形体を製造する方法の一例について説明する。なお、本実施形態においては、プレス成形について詳しく説明するが、プレス成形の代わりに、従来から知られた、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等その他のプレフォーム成形法を用いてもよい。
図2は頂面が略正方形で断面が台形の深絞り形状のプレフォーム成形体を成形するための金型5の斜視模式図である。図2中、5aは雄型である上金型、5bは雌型である下金型である。
図3を参照して、加飾成形用シート10を金型5を用いてプレフォーム成形する工程について説明する。プレフォーム成形においては、はじめに、図3(a)に示すように、加熱により軟化された加飾成形用シート10を、銀面層4が下金型5bに対向するようにして、上金型5aと下金型5bとの間に配置する。そして、図3(b)に示すように上金型5aと下金型5bとを型締めすることにより、軟化された加飾成形用シート10に賦形する。加熱により軟化するための温度は、例えば、極細単繊維のガラス転移温度以上で融点温度以下の温度であることが好ましい。具体的には、例えば、120〜180℃程度で軟化させることが好ましい。
そして、図3(c)に示すように上金型5aと下金型5bとを型開きし、得られたプレフォーム成形体20’を図3(d)に示すように離形する。そして、図3(e)に示すように、射出インサート成形の金型のキャビティの形状に沿うように、プレフォーム成形体20’の周囲の不要な部分をトリミングして除去する。このようにして、射出インサート成形の金型のキャビティの形状に沿うように成形されたプレフォーム成形体20が得られる。
次に、プレフォーム成形体20を射出インサート成形の金型のキャビティにインサートし、プレフォーム成形体20の裏面に樹脂を射出することにより成形する射出インサート成形する工程を図4を参照して説明する。
図4中の射出成形の金型15は、インサート部を有するキャビティ15dを備える可動側金型15aと、固定側金型15bと、形成されるスプルーランナー22を隔離するためのスペーサープレート15cとを備える。
図4(a)に示すように、はじめに、プレフォーム成形体20をキャビティ15dに配置する。そして、図4(b)に示すように可動側金型15aと固定側金型15bとを型締めし、射出成型機のノズル16を固定側金型15bのスプルーブッシュ15fに接触するまで前進させて、射出成形機のシリンダ内で溶融された溶融樹脂を金型15内に射出する。射出された溶融樹脂は、樹脂流路を流れてゲート15gからキャビティ内に流入する。そして、射出終了後、冷却工程を経て、図4(c)に示すように金型15を型開きして離型することにより、可動側金型15aと固定側金型15bとスペーサープレート15cとが隔離される。そして、プレフォーム成形体20と射出成形により成形された成形体本体21とが一体化された、表面が皮革様に加飾されたインサート成形体30が得られる。
射出インサート成形で射出される、成形体本体21を形成するための樹脂としては、各種熱可塑性樹脂が特に限定なく用いられ、用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂やABS系樹脂等の耐衝撃性に優れた樹脂が挙げられる。
なお、従来、射出インサート成形する際には、次のような問題が生じることがあった。射出樹脂として溶融温度及び溶融粘度が高いポリカーボネートのような樹脂を用いた場合、樹脂圧及び樹脂温の影響によりプレフォーム成形体の表面が荒れやすくなるという問題があった。とくに、近年、携帯電話、モバイル機器、家電製品の軽量化が求められている観点から、厚みが1mm以下のような薄肉の筐体が求められている。薄肉のインサート成形においては、射出成形時の金型内の樹脂ピーク圧が著しく立って高くなる。このような場合においては、プレフォーム成形体に高温高圧が掛かる。そのために、プレフォーム成形体の表面に射出樹脂の高温高圧の影響による荒れが発生することがあった。
さらに、射出インサート成形で薄肉の成形体を成形する場合、溶融樹脂の流動を原因とする次のような問題があった。射出インサート成形時の金型のキャビティにプレフォーム成形体を配設して溶融樹脂を金型内に射出する場合、薄肉部や長尺部を有する成形品を成形する場合には、図4にも示したような、複数のゲートから溶融樹脂を注入する多点ゲートの金型が採用される。多点ゲートの場合、通常、異なる流路から流れてきた溶融樹脂の先端が合流した部分にウエルドラインが形成される。
図5(a)に示すように、金型15内の、異なる流路から矢印方向に流れてきて会合する溶融樹脂32のウエルドライン形成部WL付近においては、溶融樹脂32とプレフォーム成形体20との摩擦抵抗によりウエルドライン形成部WLを挟んでプレフォーム成形体20の表面が互いに逆方向に引っ張られて溶融樹脂が固化することにより、皺Sが形成されることがあった。また、薄肉部に完充填するために高速高圧で射出した場合には、図5(b)に示すように、金型15のキャビティの端面においてプレフォーム成形体の端面Eが伸ばされて成形のショットごとに端面Eの長さが変わり、生産安定性が不安定になるという問題があった。
上述したような問題を解決するために、図6に示すように、加飾成形用シート10の溶融樹脂32と接する側の面に耐熱性の高い樹脂フィルム7を貼り合せることが好ましい。このように加飾成形用シート10に耐熱性の高い樹脂フィルム7を貼り合せることにより、プレフォーム成形体20を射出インサート成形する際に加飾成形用シート10に溶融樹脂32が直接接触することを抑制することができる。また、型内に掛かる樹脂圧が加飾成形用シート10と樹脂フィルム7との界面で緩和される。その結果、加飾成形用シート10の表面が溶融樹脂32の樹脂圧及び樹脂温の影響を受けて荒れることを抑制できる。また金型内を流動する溶融樹脂は樹脂フィルム7と接するために、溶融樹脂との摩擦抵抗は樹脂フィルム7の表面のみに掛かるために加飾成形用シート10が摩擦抵抗で引っ張られることが抑制される。その結果、プレフォーム成形体20の表面のウエルドライン付近で皺Sが生じたり、端面Eが摩擦抵抗により伸びたりすることが抑制される。
このような加飾成形用シート10に貼り合わされる樹脂フィルム7としては、プレフォーム成形において加飾成形用シート10の変形に追随することが可能であり、且つ、射出インサート成形において、射出樹脂と同等かそれよりも高い熱に対する軟化特性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。
その具体例としては、例えば、ABS系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS系樹脂とポリカーボネートとのアロイ等の樹脂フィルムが挙げられる。これらは、射出インサート成形において射出される樹脂の種類に応じて、適宜選択される。具体的には、例えば、ABS系樹脂を射出成形する場合にはABS系樹脂またはABS系樹脂とポリカーボネートとのアロイからなる樹脂フィルムが、また、ポリカーボネートを射出成形する場合にはポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルムまたはポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートとのアロイからなる樹脂フィルムが選ばれることが好ましい。
樹脂フィルム7の厚みとしては、50〜350μm、さらには100〜300μm程度であることが好ましい。樹脂フィルム7が厚すぎる場合には皮革様の風合い等が低下したり、プレフォーム成形の成形性が低下する傾向があり、樹脂フィルム7が薄すぎる場合には、射出成型の際に型内で溶融樹脂の温度で軟化または溶融されすぎて樹脂フィルムを配置する効果が充分に得られなくなる傾向がある。
加飾成形用シート10に樹脂フィルム7を積層する方法としては、樹脂フィルム7に接着剤を介して加飾成形用シート10を貼り合わされたり、熱圧着したりするドライラミネートが好ましく用いられる。接着剤としては、二液硬化型接着剤や熱により延伸可能なホットメルト型接着剤が好ましく用いられる。
本発明の加飾成形用シートをAMDとしての加飾に用いる場合、加飾成形用シートの裏面に粘着層を積層して加飾成形体とすることが好ましい。粘着層としては、支持体に粘着剤が付与された両面テープが好ましい。そして、両面テープを加飾成形用シートの裏面に接着して使用する。加飾成形用シートは仕様に合わせてスリットし、離型材付きの粘着剤が付与された両面テープをラミネート機を用いて貼り合わせ、更に、所定のサイズに裁断する。次いで、レーザー等の方法で所望の形状にカットしプラスチック等の成形体本体の表面に貼る事で、加飾成形用シートとして使用される。
本発明は、加飾成形用シートが粘着層を介して成形体本体と一体化して加飾成形体とするが、一体化の方法は手貼り等公知の方法が用いられる。
本発明の加飾成形シートは形態安定性に優れるので、スリット加工や両面テープとの積層時にテンション等による伸びの影響が少なく、寸法ズレ防止効果が得られる。
次に、本実施形態の加飾成形用シート10の製造方法の一例について説明する。加飾インサート成形用プレフォーム成形体を成形するための加飾成形用シート10は、下記(1)〜(6)の工程、または(1)、(2)、(4)〜(6)の工程を順次含む製造方法である。
(1)ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃の変性ポリエステルを島成分とする海島型繊維からなるウェブを製造する工程、
(2)得られたウェブを絡合してウェブ絡合シートを製造する工程、
(3)得られたウェブ絡合シートに架橋されたポリウレタンを含浸する工程、
(4)ウェブ絡合シートの海島型繊維の海成分を除去して極細繊維束化して基材を製造する工程、
(5)得られた基材の少なくとも一方の表面に高分子弾性体から成る銀面層を積層する工程、
(6)工程(5)の前または後で、240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、基材の厚み方向における極細繊維束間距離が0〜10μmとなるよう加熱プレスする工程、
なお、工程(2)の後に、ウェブ絡合シートを湿熱収縮させる湿熱収縮処理工程を備えることが、加飾成形用シートを緻密な構造として、加飾成形用シートまたは基材の240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、加飾成形用シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmとし易い点で好ましく用いられる。以下に各工程について、詳しく説明する。
(1)ウェブ製造工程
本工程においては、はじめに、溶融紡糸により海島型繊維からなる長繊維ウェブを製造する。長繊維ウェブは、例えば、いわゆるスパンボンド法を用いて、海島型繊維を溶融紡糸法を用いて紡糸し、これを切断せずにネット上に捕集してウェブを形成する方法が好ましく用いられる。
海島型繊維の海成分は、ウェブ絡合シートを形成させた後の適当な段階で抽出または分解されて除去される。この分解除去または抽出除去により極細単繊維からなる繊維束を形成させることができる。
海島型繊維の島成分を構成する熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度(T)が100〜120℃のポリエステルが用いられる。一方、海島型繊維の海成分を構成する熱可塑性樹脂としては、島成分を構成する樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。
海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、スチレンアクリル共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。中でも、湿熱や熱水で収縮し易い点でポリビニルアルコール系樹脂、特にエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
海島型繊維の紡糸およびウェブ形成には、スパンボンド法が用いられる。具体的には、多数のノズル孔が、所定のパターンで配置された複合紡糸用口金を用いて、海島型繊維を個々のノズル孔からコンベヤベルト状の移動式のネット上に連続的に吐出させ、高速気流を用いて冷却しながら堆積させる。このような方法によりウェブが形成される。ネット上に形成されたウェブには融着処理が施されることが好ましい。融着処理により形態安定性が付与される。融着処理の具体例としては、例えば、熱プレス処理が挙げられる。熱プレス処理としては、例えば、カレンダーロールを使用し、所定の圧力と温度をかけて処理する方法を採用することができる。
熱プレス処理する温度は、海島型繊維の海成分を構成する成分の融点より10℃以上低いことが好ましい。10℃以上低いと、ウェブの良好な形態安定性を維持しながら、積重後のウェブを絡合する際の絡合不良や針穴の形成を防ぎ、高品位な不織布とすることができる。熱プレス後のウェブの目付けとしては、20〜60g/mの範囲であることが好ましい。20〜60g/mの範囲にあることで、次の積重工程において良好な形態保持性を維持させることができる。
(2)ウェブ絡合工程
次に、得られた長繊維ウェブを4〜100枚程度重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成する。ウェブ絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いて長繊維ウェブに絡合処理を行うことにより形成される。以下に、ニードルパンチによる絡合処理について詳しく説明する。
はじめに、長繊維ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。その後、ニードルパンチにより三次元的に繊維を絡合させる絡合処理を行う。ニードルパンチ処理を行うことにより、繊維密度が高く、繊維の抜けを起こしにくいウェブ絡合シートが得られる。ウェブ絡合シートの目付量は、目的とする厚みに応じて適宜選択されるが、具体的には、例えば、500〜2000g/mの範囲であることが取扱い性に優れる点から好ましい。
(3)熱収縮処理工程
次に、ウェブ絡合シートを熱収縮させることにより、ウェブ絡合シートの繊維密度および絡合度合を高める。なお、本工程においては、長繊維を含有するウェブ絡合シートを熱収縮させることにより、短繊維を含有するウェブ絡合シートを熱収縮させる場合に比べて、ウェブ絡合シートを大きく収縮させることができる。熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、繊維密度が高められてもよい。
熱収縮処理工程におけるウェブ絡合シートの目付量の変化としては、収縮処理前の目付量に比べて、1.1倍(質量比)以上、さらには、1.3倍以上で、2.0倍以下、さらには1.6倍以下であることが好ましい。
(4)ポリウレタン含浸工程
ウェブ絡合シートの形態安定性を高める目的で、ウェブ絡合シートの極細繊維化処理を行う前または後に、収縮処理されたウェブ絡合シートにポリウレタンの水系エマルジョンを含浸させた後、ポリウレタンを凝固及び架橋させる。
ウェブ絡合シートにポリウレタンの水系エマルジョンを含浸させる方法としては、ウェブ絡合シートを水系エマルジョンで満たされた浴中へ浸した後、プレスロール等で所定の含浸状態になるように絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法が好ましく用いられる。また、その他の方法として、バーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法等を用いてもよい。
本実施形態におけるポリウレタンとしては、DMF浸漬に対する質量減少率が5質量%以下である架橋されたポリウレタンが用いられる。
ポリウレタンの水系エマルジョンとしては、高分子ポリオール、有機ジイソシアネート、及び、必要に応じて鎖伸長剤を所望の割合で含有する成分を、乳化重合法などにより重合して得られる公知の熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
高分子ポリオールは用途や必要性能に応じて公知の高分子ポリオールから選択される。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)、ポリ(メチルペンタン)ジオールなどのポリエーテル系ポリオール及びその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオール及びその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(ポリヘキシレンカーボネートジオール)、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオール及びその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオールなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができるが、この内ポリオキシエチレン単位(−CH−CH−O−単位)の含有量は、として10meq/g以下であることが好ましい。
高分子ポリオールの平均分子量は500〜3000であるのが好ましい。得られる布帛や、人工皮革の耐光堅牢性、耐熱堅牢性、耐NOx黄変性、耐汗性、耐加水分解性などの耐久性をより良好にする場合には、2種以上の高分子ポリオールを使用することが好ましい。
有機ジイソシアネートは用途や必要性能に応じて公知のジイソシアネート化合物から選択すればよい。例えば、芳香環を有しない脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(無黄変型ジイソシアネート)、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添メチレンジイソシアネート(4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)などや、芳香環ジイソシアネート、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど挙げることができる。特に、光や熱での黄変が起こりにくいことから、無黄変型ジイソシアネートを使用することが好ましい。
鎖伸長剤は、用途や必要性能に応じて公知のウレタン樹脂の製造に鎖伸長剤として用いられている活性水素原子を2個有する低分子化合物から選択すれば良い。例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミン等のトリアミン類;トリエチレンテトラミン等のテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。中でも、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、エチレントリアミンなどのトリアミンの中から2〜4種類を併用することが好ましい。
特に、ヒドラジン及びその誘導体は酸化防止効果を有するので、耐久性が向上する。
また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
熱可塑性ポリウレタンのソフトセグメント(ポリマージオール)とハードセグメント(有機ジイソシアネート)の合計量に対して、ソフトセグメントの含有量は90〜15質量%、ハードセグメントの含有量は10〜85質量%であることが好ましい。鎖伸長剤を使用する場合、その使用量はソフトセグメントとハードセグメントの合計量に対して1〜50質量%であることが好ましい。
ポリウレタンの水系エマルジョンをウェブ絡合シートに含浸し、ポリウレタンを湿式法等により凝固させることにより、ポリウレタンをウェブ絡合シートに固定する。なお、凝固させたポリウレタンを架橋させるために、凝固及び乾燥後に加熱処理してキュア処理を行うことが好ましい。
水系ポリウレタンエマルジョンは、最終的に得られる加飾成形用シートの性質を損なわない範囲で、染料や顔料などの着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、無機微粒子、導電剤などをさらに含有してもよい。
(5)極細繊維束形成工程
ウェブ絡合シート中の海島型繊維は、海成分を水や溶剤等で抽出または分解除去することにより極細繊維束に変換される。ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂を海成分に用いた海島型繊維の場合においては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより海成分が除去される。
本工程においては、海島型繊維から海成分を溶解して極細繊維を形成する際に、極細繊維が大きく捲縮される。この捲縮により繊維密度が緻密になるために、高密度の繊維絡合体が得られる。高密度にすることで、加飾成形用シートまたは基材の240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、加飾成形用シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmにし易い。以上のような工程により、好ましくは300〜1800g/mの目付を有する加飾成形用シートの中間体シートが得られる。
(6)加熱プレス工程
上記極細繊維束形成工程の後または、銀面層形成工程の後で、240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、基材の厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmとなるよう加熱プレスする工程を行うことが重要である。
加飾成形用シート10の基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が90〜100%であり、好ましくは93〜100%である。厚み比が90%を下回る場合は、くっきりとした折り角がつかず、腰がなく頂面が撓んだような形状安定性が低いものになる。シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmであり、好ましくは0〜8μmである。これにより、繊維の密度むらが抑制され、表面のあらび欠点が少なく平滑性が良好でかつ、厚みの薄い薄物成形品に好適に使用可能である。10μmを超える場合は、表面にあらびとも呼ばれる荒れが生じ表面の平滑性が失われる。
銀面層を形成する前に加熱プレスの条件としては、温度が130〜150℃であり、圧力は0.2〜0.5MPaであり、時間は1〜3m/minが好適であり、この範囲では、表面状態がフィルム化せずフラットになり、繊維の密度斑も解消され、成形した場合くっきりとした折り角が形成される。
(7)銀面層形成工程
銀面層を形成する方法は、公知の方法が用いらる。そして、銀面層の表面は、必要に応じて公知のエンボス機を用いることにより、エンボス模様が形成されていてもよい。このような模様を付与することにより、表面をさらに皮革に似たような外観を実現することができる。銀面層を形成した後に加熱プレスする条件としては、銀面層がクッションの役割を果たすため、強めの条件にした方が好ましい。温度は140〜160℃であり、圧力は0.4〜0.8MPaであり、時間は1〜3m/minが好適である。この範囲では表面状態が熔融せず、皮革に似たような外観を実現することができ好みの柄を形成でき、繊維の密度斑が解消され、成形した場合くっきりとした折り角が形成される。
このようにして得られた加飾成形用シートの中間体シートは、乾燥後、厚さ方向に垂直な方向に複数枚にスライスしたり研削することにより、厚さ調節や表面状態を調整されて加飾成形用シートに仕上げられる。加飾成形用シートの表面には、必要に応じて銀面層を設けてもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール(エチレン単位の含有量8.5モル%、重合度380、ケン化度98.7モル%)、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸単位の含有量6.0モル%)を、それぞれ個別に溶融させた。そして、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成しうるような、多数のノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に、それぞれの溶融樹脂を供給した。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。そして、口金温度260℃に設定されたノズル孔より吐出させた。
そして、ノズル孔から吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように気流の圧力を調節したエアジェット・ノズル型の吸引装置で吸引することにより延伸し、平均繊度が2.1dtexの海島型長繊維を紡糸した。紡糸された海島型長繊維は、可動型のネット上に、ネットの裏面から吸引しながら連続的に堆積された。堆積量はネットの移動速度を調節することにより調節された。そして、表面の毛羽立ちを抑えるために、ネット上の堆積された海島型長繊維を42℃の金属ロールで軽く押さえた。そして、海島型長繊維をネットから剥離し、表面温度75℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させることにより、線圧200N/mmで熱プレスした。このようにして、表面の繊維が格子状に仮融着された目付34g/mの長繊維ウェブが得られた。
次に、得られた長繊維ウェブの表面に、帯電防止剤を混合した油剤をスプレー付与した後、クロスラッパー装置を用いて長繊維ウェブを10枚重ねて総目付が340g/mの重ね合せウェブを作成し、更に、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、重ね合せウェブをニードルパンチングすることにより三次元絡合処理した。具体的には、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmで積層体の両面から交互に3300パンチ/cmのパンチ数でニードルパンチした。このニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は415g/mであった。
得られた絡合ウェブは、以下のようにして湿熱収縮処理されることにより、緻密化された。具体的には、18℃の水を絡合ウェブに対して10質量%均一にスプレーし、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中で3分間張力が掛からない状態で放置して熱処理することにより湿熱収縮させて見かけの繊維密度を向上させた。この湿熱収縮処理による面積収縮率は45%であり、緻密化された絡合ウェブの目付は750g/mであり、見かけ密度は0.52g/cmであった。そして、絡合ウェブをさらに緻密化するために乾熱ロールプレスすることにより、見かけ密度0.60g/cmに調整した。
次に、緻密化された絡合ウェブに、DMF浸漬に対する質量減少率が0.5質量%である、架橋型のポリウレタンを以下のようにして含浸させた。ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンを主体とする架橋型の水系ポリウレタンエマルジョン(固形分濃度30%、)を緻密化された絡合ウェブ含浸させた。そして、150℃の乾燥炉で水分を乾燥し、さらにポリウレタンを架橋させた。このようにして、ポリウレタン/絡合ウェブの質量比が18/82のポリウレタン絡合ウェブ複合体を形成した。
次に、ポリウレタン絡合ウェブ複合体を95℃の熱水中に20分間浸漬することにより海島型長繊維に含まれる海成分を抽出除去し、120℃の乾燥炉で乾燥することにより、厚さ約1.0mmのシートが得られた。
得られたシートに含有される繊維絡合体の見かけ密度は0.53g/cm3であり、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比は22/78であった。また、繊維絡合体の極細単繊維の平均単繊維繊度は0.08dtexであった。
そして得られたシートを厚み方向に2分割し、0.45mmに研削した後、銀面層としてシリコン変性ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を表皮とする厚み110μmの乾式造面層を形成した。繊維束間距離の平均値を小さくするために、銀面層を形成する前に熱プレスをした。熱プレス方式は温度140℃、圧力0.4MPa、時間2m/minでエンボスにより形成した。このようにして、加飾成形用シートを得た。得られた加飾成形用シートの比重は0.76であった。また、150℃における30%伸長応力が29N/25mmであった。極細繊維不織布基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が93.5%であり、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が6.18μmであった。
次に、得られた加飾成形用シート用いて、図7に示すような形状の断面が台形状の山形の3次元形状のキャビティ―を有する金型を用いてプレフォーム成形体を成形した。具体的には、温度150℃に加熱された一対の金型の下金型に加飾成形用シートAを配置し、0.4MPaの圧力でプレスして成形した。このようにしてプレフォーム成形体を得た。
そして、得られたプレフォーム成形体の賦形性、成形前後の厚さ保持率、あらびの発生を以下のような基準で評価した。
(賦形性)
図7に示した部分を光学顕微鏡で側面から観察し写真を撮影した。そして、プレフォーム成形体の山の裾野の立ち上がり部分の角度θを測定し、賦形率(%)=(153/θ)×100 の式により金型の山の裾野の立ち上がり部分の角度に対するプレフォーム成形体の山の裾野の立ち上がり部分の角度の割合を算出した。
(厚さ保持率)
プレフォーム成形体の山の頂面の中央部の厚みを測定した。そして、加飾成形用シートAの厚みに対する山の頂面の中央部の厚みを算出した。
(あらび)
プレフォーム成形体の表面状態を以下の基準で判定した。
5級:あらびがほとんど現れない。
3〜4級:少しあらびが現れる。
1〜2級:あらびが激しく現れる。
[実施例2]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが120であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして加飾成形用シートを得、また、プレフォーム成形体を得た。そして、同様にして評価した。極細繊維不織布基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が93.5%であり、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が5.12μmであった。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが100℃であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして加飾成形用シートを得、また、プレフォーム成形体を得た。そして、同様にして評価した。極細繊維不織布基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が96.9%であり、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が4.84μmであった。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、繊維絡合体の見かけ密度を0.53g/cm3に調整する代わりに、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比を29/71とすることにより繊維絡合体の見かけ密度を0.69g/cm3に調整した以外は実施例1と同様にして加飾成形用シートを得、また、プレフォーム成形体を得た。そして、同様にして評価した。極細繊維不織布基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が93.8%であり、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が4.58μmであった。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、緻密化された絡合ウェブに、DMF浸漬に対する質量減少率が0.5質量%である、架橋型のポリウレタンを含浸させる代わりに、DMFに対する重量減少率が100質量%である、未架橋型の発泡ポリウレタンを形成するためのポリウレタンのDMF溶液(固形分20%)を含浸させ、湿式凝固させることにより、発泡ポリウレタン/絡合ウェブの質量比が18/82のポリウレタン絡合ウェブ複合体を形成した。上記変更以外は実施例1と同様にして加飾成形用シートを得、また、プレフォーム成形体を得た。そして、同様にして評価した。極細繊維不織布基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が78.8%であり、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が26.49μmであった。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが130℃であるポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして加飾成形用シートを得、また、プレフォーム成形体を得た。そして、同様にして評価した。極細繊維不織布基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が81.1%であり、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が17.30μmであった。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、繊維絡合体の見かけ密度を0.53g/cm3に調整する代わりに、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比を8/92とすることにより繊維絡合体の見かけ密度を0.48g/cm3に調整した以外は実施例1と同様にして加飾成形用シートを得、また、プレフォーム成形体を得た。そして、同様にして評価した。極細繊維不織布基材の荷重時の厚みが無荷重時の厚みに対して比が83.3%であり、シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が32.48μmであった。結果を表1に示す。
Figure 0005892925
本発明に係る実施例1〜4の加飾成形用シートを成形して得られたプレフォーム成形体は賦形性に優れ、成形前後の厚さ保持率も高く、あらびの発生も少なかった。一方、非架橋発泡ポリウレタンを用いた比較例1の加飾成形用シートを成形して得られたプレフォーム成形体は賦形性に劣り、また、厚さ保持率も低く、あらびの発生も多かった。また、Tgが130℃であるポリエチレンテレフタレートからなる極細繊維の繊維絡合体を用いた比較例2の加飾成形用シートを成形して得られたプレフォーム成形体は賦形性が劣っていた。また、繊維絡合体の見かけ密度が低い比較例3の加飾成形用シートを成形して得られたプレフォーム成形体は厚さ保持率が低かった。
本発明は、携帯端末本体(スマートフォン、タブレットPC)およびそのケース、カバーなどのアクセサリ、カメラグリップ、車両内装材、化粧品ケースなどの樹脂成形体の表面を皮革用表面で加飾するインサート成形に用いられる。
1 繊維絡合体
1a 極細単繊維
1b 繊維束
2 ポリウレタン
4 銀面層
5 プレフォーム用金型
5a 上金型
5b 下金型
7 樹脂フィルム
10 加飾成形用シート
15 射出成形金型
15a 可動側金型
15b 固定側金型
15c スペーサープレート
15dキャビティ
15f スプルーブッシュ
15g ゲート
16 ノズル
20 プレフォーム成形体
21 成形体本体
22 スプルーランナー
30 インサート成形体
32 溶融樹脂
E 端面
S 皺
WL ウエルドライン形成部

Claims (9)

  1. ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃の変性ポリエステルからなる極細繊維束の繊維絡合体と前記繊維絡合体に含浸された架橋ポリウレタンからなる基材の表面に銀面層が積層された加飾インサート成形用プレフォーム成形体を成形するための加飾成形用シートであって、加飾成形用シートまたは基材の240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、加飾成形用シートの厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmであることを特徴とする加飾成形用シート。
  2. 前記架橋されたポリウレタンが、水系ポリウレタンエマルジョンに由来する請求項1に記載の加飾成形用シート。
  3. 150℃における30%伸長応力が50N/25mm以下である請求項1または2に記載の加飾成形用シート。
  4. ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS系樹脂からなる群から選ばれる樹脂フィルムが積層された請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾成形用シート。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の加飾成形用シートを三次元形状に成形したことを特徴とする加飾インサート成形用プレフォーム成形体。
  6. インサート成形により成形される成形体本体と、前記成形体本体の表層に一体化されて配置された請求項5に記載のプレフォーム成形体とを備えることを特徴とする加飾インサート成形体。
  7. 粘着層が積層された請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾成形用シート。
  8. 前期請求項7に記載の加飾成形用シートが粘着層を介して成形体本体と一体化されてなる加飾成形体。
  9. 下記(1)〜(6)の工程、または(1)、(2)、(4)〜(6)の工程を順次含む加飾インサート成形用プレフォーム成形体を成形するための加飾成形用シートの製造方法。

    (1)ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃の変性ポリエステルを島成分とする海島型繊維からなるウェブを製造する工程、
    (2)得られたウェブを絡合してウェブ絡合シートを製造する工程、
    (3)得られたウェブ絡合シートに架橋されたポリウレタンを含浸する工程、
    (4)ウェブ絡合シートの海島型繊維の海成分を除去して極細繊維束化して基材を製造する工程、
    (5)得られた基材の少なくとも一方の表面に高分子弾性体から成る銀面層を積層する工程、
    (6)工程(5)の前または後で、240gf/cm荷重時の厚みが無荷重時の厚みの90〜100%であり、基材の厚み方向における極細繊維束間距離の平均値が0〜10μmとなるよう加熱プレスする工程、
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