JP5159139B2 - 長繊維不織布の製造方法および人工皮革用基材の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、人工皮革のようにその表面に平滑な銀面を付与した場合には、積重時のズレや目付け斑といった内部の乱れをごまかすことができず、折り曲げた際のしわの品位が非常に低くなるという問題があった。また、スエード調人工皮革に用いた場合の立毛の均一性が低下するという問題があった。
しかしながら、静摩擦係数がこの範囲にあると、繊維の動きやすさと繊維の損傷に対しては有効であるが、打ち込んだ繊維が元に戻ってしまう傾向にあり、人工皮革の基体として利用可能な不織布物性が得られにくく、充分な解決には至っていない。
すなわち、本発明は、極細繊維発生型長繊維を紡糸し、前記極細繊維発生型長繊維をネット上に捕集してウェブを形成するウェブ形成工程と、前記ウェブに融着処理を施す融着処理工程と、前記融着処理を施したウェブに水を付与する水付与工程と、前記水を付与したウェブを積重して積重ウェブとする積重工程と、前記積重ウェブに絡合処理を施す絡合工程と、を連続して含むことを特徴とする長繊維不織布の製造方法である。
ウェブ形成工程では、極細繊維発生型長繊維を紡糸し、前記極細繊維発生型長繊維をネット上に捕集してウェブを形成する。
ここで、「極細繊維発生型繊維」とは、少なくとも2種類のポリマーからなる多成分系複合繊維をいう。このような多成分系複合繊維としては、繊維外周を複数成分が交互に構成するような花弁形状や重畳形状などの剥離分割型複合繊維;繊維断面において繊維外周を主体として構成する海成分ポリマー中に、これとは異なる種類の島成分ポリマーが分布した断面形態の海島型繊維;が挙げられる。これらの中でも、海島型繊維が好ましい。
海島型繊維は、ニードルパンチ処理で代表される繊維絡合処理を行う際に、割れ、折れ、切断などの繊維損傷が極めて少ない。そのため、より細い繊度の複合繊維を不織布構造体の構成繊維として採用することが可能で、その絡合による緻密化度合いをより高めることができるといった利点がある。
これら島成分ポリマーは、融点が160℃以上であるのが好ましく、180〜330℃の繊維形成性結晶性樹脂であることがより好ましい。島成分ポリマーの融点が160℃以上であれば、極細繊維の形態安定性を満足いくレベルとすることが可能で、特に人工皮革製品において評価される実用的な性能の点からも好ましい。
融着処理工程は、ネット上に形成されたウェブに融着処理を施して、形態安定性を付与する工程である。
融着処理としては、種々の手段を採用することができるが、熱プレス処理が好ましい。熱プレス処理することによりその後の積重、絡合の各工程でのウェブの形態変化をより抑制することが可能となる。
水付与工程は、融着処理後のウェブに水を付与して、静電気の発生を抑制することで、積重工程における積重ズレを防ぐ工程である。
融着処理後のウェブをクロスラッパー等の設備を用いて積重する際には、搬送ベルトとの剥離や擦れによる静電気の発生により、ウェブがベルトに貼り付いて積重のズレが生じたり、静電気で捲れあがったウェブの両側端部が折れ重なって目付け斑を生じたりする問題がある。
積重工程はウェブを積み重ねて積重ウェブとする工程である。当該積重工程では積重ウェブの形態を均一にするために、クロスラッパーを採用することが好ましい。積重枚数としては、目付けムラの低減と良好な生産性を考慮して、5〜100枚程度とすることが好ましい。積重時の雰囲気としては、0〜40℃の温度で50〜90%の相対湿度とすることが好ましい。
絡合工程は、積重ウェブに絡合処理を施す工程である。当該絡合処理には、ニードルパンチを用いることが好ましい。
積重ウェブをニードルパンチ等の絡合処理によって3次元的に絡合させて長繊維不織布とする方法としては、従来公知の設備を用いればよい。
ニードルパンチの条件としては、ニードルのバーブが積重ウェブの両表面まで貫通するような条件でかつニードルパンチ数が400〜8000パンチ/cm2の条件(特に、1000〜4000パンチ/cm2の条件)が好ましい。ニードルパンチの処理方向は、最終製品の感性、物性等必要に応じて片面からのみ行っても構わないが、積重ウェブの両面から行うのが天然皮革用の緻密な外観を得る点で好ましい。
上記のようなニードルパンチ処理によって得られる長繊維不織布は、天然皮革様の充実感ある風合いおよび機械強度に優れる人工皮革の製造に好適である。
例えば、長繊維不織布の製造方法では、繊維の紡出スピードと後の工程のラインスピードを調整するために、熱プレス後のウェブで一旦巻き取ることも可能であるが、本発明の製造方法では巻き取らずに連続して積重工程等を通過する。融着処理後のウェブは、絡合工程で繊維が移動して容易に絡合が可能となる程度に繊維が融着しているのみとなっている。従って、一旦巻き取ったり、巻き出したりする際のウェブ両側端部の繊維のもつれ等に起因して、ウェブの破れに起因する目付け斑やテンション変動による走行位置のズレが生じて均一な積重状態を得ることが困難となる。これに対し、本発明の製造方法では、途中での巻き取り、巻き出しの工程を無くすことにより、品質(特に、折れしわの品位)の高い長繊維不織布を安定して製造することができる。
高分子弾性体付与工程では、例えば、有機溶剤に溶解されたポリウレタンなどの高分子弾性体溶液、あるいは水に分散されたポリウレタンなどの高分子弾性体水分散液などを長繊維不織布に含浸する。その後、湿式あるいは乾式で凝固し、長繊維不織布に高分子弾性体が付与された弾性体含有長繊維不織布が得られる。
また、高品質な不織布とするためには繊維が極細繊維であることが好ましい。繊維の繊度は0.5〜0.001dtexであることが好ましく、0.3〜0.08dtexであることがより好ましい。繊度を上記範囲とすることで、不織布やそれから得られる人工皮革等の風合いが硬くなることを防ぐことができる。
さらに、これらの繊維は単独ではなく数種の繊維が混合したものでも構わない。さらに、長繊維ばかりではなく、短繊維を一部に含むものであってもよい。短繊維を含有することによってさまざまな風合いをとることができる。
ウェブ形成工程、融着処理工程、水付与工程、積重工程、および絡合工程の各工程のおける処理を、ウェブを巻き取ることなく連続して以下の通り実施した。
まず、極細繊維発生型長繊維(海島型繊維)の海成分に水溶性熱可塑性のポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略す。)樹脂(融点 約160℃)を用い、島成分にイソフタル酸変性量6モル%のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。この海島型繊維1本あたりの島数が25島となるような溶融複合紡糸口金を用い、エアージェットノズルで細化しながら、90m/minで移行するネット上に繊度2.50dtexの海島型繊維を捕集しウェブを形成した。なお、紡糸条件は下記の通りである。
・海成分/島成分の質量比:30/70
・温度:250℃
・口金からの単孔吐出量:1.0g/分
・紡糸速度:3600m/分
さらに、下記条件のカレンダーロールを用いて、長繊維からなるウェブを仮接着し、目付け30g/m2のウェブとした。
・温度:80℃
・線圧:70kg/cm
融着処理後のウェブの質量に対して2%の水を両面に均等に付与した。なお、水付与の条件は、下記の通りである。
・水付与手段:幅方向にスプレーノズルを等間隔で設置し、幅方向の付着量が均一になる ように噴霧した。
・水付与時間:ウェブが上記のスプレーノズルの下を90m/minで通過している状態で65g/分となるように噴霧した。
その後、ウェブ12枚相当分を25℃、相対湿度75%の雰囲気下でクロスラッパーにより積み重ねて積重ウェブを作製し、これに針折れ防止油剤をスプレー付与した。
クロスラッパーによる積重時の静電気発生量は非接触型の静電気測定器で測定した結果200Vであり、積重時の折りたたみの位置のズレや皺の発生は皆無であった。
次いで、下記条件にて積重したウェブの両面から交互に2400P/cm2のニードルパンチによりウェブの絡合を行い、長繊維不織布を得た。
・針先端からバーブまでの距離:3mm
・スロートデプス:0.04mm(1バーブ針)
・針深度:8mm
・相対湿度:95%
・温度:70℃
・時間:3分間
人工皮革用基材における極細繊維の単繊度は0.1デシテックスであった。得られた人工皮革用基材の片面をサンドペーパーでバフィングして0.5mm研削した結果、クロスラッパーの積重時のウェブのズレや皺に起因する研削斑は皆無であった。
得られた銀付き調人工皮革は、反発感のないやわらかさと腰の有る風合いを兼ね備えると共に、どの部位においても緻密な折り曲げ皺を有する均一なシートであった。
水付与工程で、水を両面に均等に付与する代わりに、水分含有量が0%のアルキルホスフェート系の帯電防止剤をウェブ重量に対して0.05重量%となるようにスプレー付与した以外は、実施例1と同様にして長繊維不織布を作製した。
Claims (5)
- 極細繊維発生型長繊維を紡糸し、前記極細繊維発生型長繊維をネット上に捕集してウェブを形成するウェブ形成工程と、
前記ウェブに融着処理を施す融着処理工程と、
前記融着処理を施したウェブに水を付与する水付与工程と、
前記水を付与したウェブを積重して積重ウェブとする積重工程と、
前記積重ウェブに絡合処理を施す絡合工程と、
を連続して含み、
前記極細繊維発生型長繊維が、海成分ポリマーがポリビニルアルコール系樹脂である海島型繊維であり、
前記水付与工程における前記水の付与量が、前記融着処理を施したウェブ質量の0.5〜5重量%の範囲であることを特徴とする長繊維不織布の製造方法。 - 前記融着処理工程における前記融着処理が熱プレス処理であって、その処理温度が前記極細繊維発生型長繊維の少なくとも1成分の融点より10℃以上低いことを特徴とする請求項1に記載の長繊維不織布の製造方法。
- 前記融着処理工程における前記熱プレス処理後のウェブの目付けが20〜60g/m2の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の長繊維不織布の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の長繊維不織布の製造方法で得られた長繊維不織布に対し、前記極細繊維発生型長繊維を極細化処理する極細化工程を含むことを特徴とする人工皮革用基材の製造方法。
- 前記極細化工程における極細化処理が収縮処理した長繊維不織布または弾性体含有長繊維を80〜98℃の熱水中に浸漬する処理である請求項4に記載の人工皮革用基材の製造方法。
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