JP2015161052A - 物品表面加飾シート、物品表面加飾用貼布及び加飾成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱エンボス加工により図柄を転写されたエンボス調外観を有する物品表面加飾シートにおいて、薄さの要求される用途においても、図柄が正確に転写され、また、明瞭に視認される物品表面加飾シートを提供することを目的とする。
【解決手段】エンボス部と非エンボス部から形成された図柄を有する物品表面加飾シートであって、着色剤で着色された不織布基材と、厚さ1〜100μmの表面層と、不織布基材と表面層とを接着する厚さ10〜150μmのホットメルト型接着層とを含み、不織布基材は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、エンボス部における、厚み方向断面における前記繊維束間の距離の平均値が10μm未満であり、非エンボス部における、繊維束間の距離の平均値が10μm以上30μm以下であり、表面層とホットメルト型接着層との積層体の全光線透過率が5%以上である物品表面加飾シート。
【選択図】図1
【解決手段】エンボス部と非エンボス部から形成された図柄を有する物品表面加飾シートであって、着色剤で着色された不織布基材と、厚さ1〜100μmの表面層と、不織布基材と表面層とを接着する厚さ10〜150μmのホットメルト型接着層とを含み、不織布基材は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、エンボス部における、厚み方向断面における前記繊維束間の距離の平均値が10μm未満であり、非エンボス部における、繊維束間の距離の平均値が10μm以上30μm以下であり、表面層とホットメルト型接着層との積層体の全光線透過率が5%以上である物品表面加飾シート。
【選択図】図1
Description
本発明は、エンボス調外観を、物品の表面に付与するための物品表面加飾シートに関する。
携帯電話、モバイル機器、家電製品の筐体や、車両、航空機等の内装部品、建材、家具等の外装部材として皮革様外観を付与されたインモールド成形体が知られている。
例えば、下記特許文献1は、ポリエステル極細繊維の繊維束を絡合させた不織布に第一のポリウレタンを含浸付与させた基材層と、基材層の表面に形成された第二のポリウレタンを含む銀面層とを備え、基材層の厚さが0.5mm以下で、銀面層が全厚さの10〜40%の割合を占め、不織布が最も延伸されている方向をMD方向、MD方向に面方向に垂直な方向をTD方向とした場合、TD方向に対するMD方向の20%引張応力の比(MD/TD)が1.9〜2.5であるプレフォーム成形用シートを開示する。そして、このようなプレフォーム成形用シートを用いて射出インモールド成形に供されるプレフォーム成形体を成形し、得られたプレフォーム成形体を用いてインモールド成形することにより、皮革様表面を有するインモールド成形体が得られることを開示する。また、特許文献1は、銀面層の表面に、エンボス機を用いることによりエンボス模様を形成してもよいことを開示している。
特許文献1に開示された技術により得られる銀面層を有するシートにエンボス模様を付与しようとした場合、エンボス模様の形成に関して次のような問題があった。
銀面層を有するシートにエンボス模様を形成する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。一つ目は、はじめに、ポリウレタン等の高分子弾性体を含む樹脂液の塗膜をエンボス模様を有する離型紙表面に形成した後、高分子弾性体を凝固させることにより銀面層を形成する。そして、銀面層を基材層に接着した後、離型紙を剥離することにより、シート表面にエンボス模様を有する銀面層が形成される。しかしながら、このような方法の場合、凹凸の高低差の大きいシボ模様を形成しようとした場合には、銀面層を厚くしなければならなかった。
また、二つ目は、平滑な離型紙表面に高分子弾性体を含む樹脂液の塗膜を形成した後、高分子弾性体を凝固させることにより平滑な銀面層を形成する。そして、形成された銀面層を基材層に接着した後、離型紙を剥離することにより、基材層に積層された表面平滑な銀面層を有するシートが形成される。そして、エンボスロールを用いて、平滑な銀面層を有するシートに熱エンボス加工する。しかしながら、高低差の大きい凹凸柄を有するエンボスロールを用いて熱エンボス加工した場合、凹凸柄が正確に転写されにくいという問題があった。
ところで、バスケットボール用原反,服飾用原反,靴用原反等に用いられる皮革様シートの表面層にエンボス柄を正確に転写する技術は知られている。例えば、下記特許文献2は、繊維質基体層と仕上層との中間部を構成する表面層に、他の層の構成材料より低温で軟化成形あるいは溶融成形のできるポリウレタンを主体とする重合体を用いることによって、鮮明な賦型を行わせることができる皮革様シートを開示する。具体的には、繊維質基体層の少なくとも一面に、軟化成形温度が130〜185℃であり、かつ該基体層を構成する主体繊維および主体重合体の軟化温度より少なくとも30℃低い軟化成形温度を有するポリウレタンを主体とする重合体で構成された表面層と、該表面層を構成する重合体より少なくとも30℃高い軟化成形温度を有する重合体で構成された仕上層とを積層し、得られるシートを、表面層を構成する重合体が軟化成形される温度であって、かつ仕上層を構成する重合体を流動変形させない温度でエンボス加工することを開示する。
例えば、成形体の表面に貼り合せて用いられるような物品表面加飾シートの場合、成形体の曲面等に正確に貼り合せるためにより薄い厚みが求められる。引用文献2には、熱エンボス加工による凹凸を付与するための充分な厚さとして、100〜2000μmの厚さの軟化成形温度130〜185℃のポリウレタンを主体とする樹脂層を形成することを開示している。しかしながら、引用文献2に開示された技術では、軟化成形温度130〜185℃のポリウレタンを主体とする樹脂層のみに凹凸が付与されるために、例えば高低差が100μm以上であるような凹凸を正確に形成しようとした場合には、必然的に樹脂層も厚くなってしまうという問題があった。とくに、文字や細かな模様を転写しようとした場合、それらの輪郭が正確に転写されにくいという問題があった。
本発明は、熱エンボス加工により図柄を転写された物品表面加飾シートにおいて、薄さの要求される用途においても、図柄が正確に転写され、また、エンボス部と非エンボス部の色の濃淡差を有することで図柄が明瞭に視認される物品表面加飾シートを提供することを目的とする。
本発明の一局面は、熱エンボス加工することによりエンボス部と非エンボス部とを有する図柄を型押しされた物品表面加飾シートであって、着色剤で着色された不織布基材と、高分子弾性体を主体とする厚さ1〜100μmの表面層と、不織布基材と表面層とを接着する厚さ10〜150μmのホットメルト型接着層とを含み、不織布基材は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、型押しにより形成された、厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値が、10μm未満であるエンボス部と、10μm以上30μm以下である非エンボス部とを備えており、表面層とホットメルト型接着層との積層体の全光線透過率が5%以上である物品表面加飾用シートである。
このような構成の物品表面加飾シートには、表面層とホットメルト型接着層との積層体の光透過性を維持するとともに、着色された不織布基材を用いることにより、外部から不織布基材を視認できる。この場合において、熱エンボス加工により、表面層及びホットメルト型接着層だけではなく、繊維束も圧し潰されることにより、着色された不織布基材の繊維束間の距離が10μm未満に緻密化される。その結果、エンボス部は非エンボス部に比べてより濃色を呈する。すなわち、エンボス部は相対的に濃色になり、非エンボス部は相対的に淡色になる。そして、このような濃淡差により、熱エンボス加工により付与された図柄が、その凹凸の高低差に加えて、色の濃淡の差も有することにより、極めて明瞭に視認される。さらに、ホットメルト型接着層は型押し性に優れているために、薄い厚みであっても高低差の大きい凹凸が熱エンボス加工により正確に転写される。また、高低差の大きい凹凸を形成した場合には、表面層及び中間層だけではなく不織布基材にまで凹凸模様が転写され、不織布基材が厚み方向断面のエンボス部における繊維束間の距離の平均値が10μm未満になるように高密度化されている。このような物品表面加飾シートは、物品の表面にエンボス部と非エンボス部の差違が明瞭に表現される。
また、物品表面加飾用シートの走査型顕微鏡(SEM)で測定された厚さに対する240gf/cm2に設定した定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合が、エンボス部で90%以上であることが好ましい。このような場合には、不織布基材が、高い充実感を有し、圧縮されにくいために、薄い厚みでも熱エンボス加工の圧力が分散しにくくなり、凹凸が正確に型押しされやすくなり、濃淡差がより明瞭になる。
また、極細繊維がガラス転移温度(Tg)が100〜120℃のポリエステルからなり、ホットメルト型接着剤の軟化温度が150℃以下である場合には、より細かな文字や模様でもその輪郭をつぶさずに正確に表現できる。
また、物品表面加飾シートの厚さが300〜1000μmである場合には、曲面を含むような物品の表面を加飾する場合に正確に貼り合せられるシートとして好ましく用いられる。
また、物品表面加飾シートに形成された図柄を形成するエンボス部と非エンボス部との平均高低差が100μm以上であることが、より立体感のあるエンボス調の外観を付与できる点から好ましい。
また、本発明の他の一局面は、上述した物品表面加飾シートの不織布基材の裏面側に粘着層又は接着層(以下、これらをまとめて粘接着層とも称する)を設けて形成される物品表面加飾用貼布である。
また、本発明の他の一局面は、上記何れかの物品表面加飾シートを成形体の表面に接着して形成された加飾成形体である。
本発明によれば、熱エンボス加工により図柄を転写された外観を有する物品表面加飾シートにおいて、薄さの要求される用途においても、図柄が正確に転写されるとともに、図柄が色の濃淡の差により極めて明瞭に表現される。
[第1実施形態]
本発明に係る物品表面加飾シート(以下単に加飾シートとも称する)、物品表面加飾用貼布及び加飾成形体の第一実施形態について説明する。
本発明に係る物品表面加飾シート(以下単に加飾シートとも称する)、物品表面加飾用貼布及び加飾成形体の第一実施形態について説明する。
図1は、熱エンボス加工によりエンボス部Hからなるシボ模様の図柄が形成された加飾成形体40の模式図である。加飾成形体40は、成形体本体31の表面に加飾シート20を接着して形成されている。図1(a)は上面、図1(b)は図1(a)のI−I'断面の模式図を示す。加飾シート20は、不織布基材1と、高分子弾性体を主体とする厚さ1〜100μmの表面層2と、不織布基材1と表面層2との間に配置されたホットメルト型接着剤を主体とする厚さ10〜150μmのホットメルト型接着層3と、成形体本体31に接着させる粘接着層14とを備える。不織布基材1は着色剤で着色されており、また、表面層2とホットメルト型接着層3との積層体は、全光線透過率が5%以上である。加飾シート20には、熱転写によりエンボス部Hが形成されている。加飾シート20は、図2に示すような、表面が平滑な被熱転写シート10に熱エンボス加工によりエンボス部Hが型押しされて形成される。また、不織布基材1のエンボス部Hの繊維束間距離は、熱エンボス加工により高密度化されており、エンボス部Hにおける繊維束間の距離の平均値が10μm未満であり、その周囲の非エンボス部における繊維束間の距離の平均値が10μm以上30μm以下である。また、加飾シート20は粘接着層14を裏面に備えることにより物品表面加飾用貼布30を形成する。
図2は、物品表面加飾シート20の製造に用いられる被熱転写シート10の模式断面図である。被熱転写シート10は、着色剤で着色された不織布基材11と、高分子弾性体を主体とする表面層12と、不織布基材11と表面層12との間に配置されたホットメルト型接着剤を主体とするホットメルト型接着層13とを含む。そして、表面層12とホットメルト型接着層13との積層体の全光線透過率が5%以上である。また、不織布基材11は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む。さらに、不織布基材11の繊維間の空隙には、必要に応じて高分子弾性体、好ましくは架橋された高分子弾性体が付与されている。
図3は、本実施形態の一例の物品表面加飾シートのエンボス部の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像である。図3中、1aは不織布基材を形成する繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束であり、繊維束の一部に輪郭を付しており、点線は補助線である。
図3に示すように、繊維束は複数の極細繊維が集束するように形成されている。そして、極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材は、厚み方向断面におけるエンボス部の繊維束間の距離の平均値が10μm未満であり、好ましくは8μm以下である。このような狭い繊維束間の距離は、熱エンボス加工により不織布基材を形成する繊維束が高密度化されて形成される。また、非エンボス部における繊維束間の距離の平均値は10μm以上30μm以下であり、10μm以上20μm以下であることが好ましい。
このように、繊維束間の距離の平均値が10μm未満に緻密化された部分では着色された不織布基材が高密度化されることで不織布基材の色が相対的に濃色に視認される。一方、不織布基材のエンボス部の周囲の非エンボス部では、不織布基材が高密度化されないため、相対的に淡色に視認される。その結果、エンボス部が際だって明瞭に視認される。
厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値の測定方法及び算出方法を図3を参照して説明する。図3に示すような、不織布基材の厚み方向に平行な任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で200倍で撮影する。そして、撮影された画像に対して、シートの厚み方向に対して平行に、ほぼ等間隔で10本の補助線を引く。そして、10本の補助線を通過させた全ての繊維束間(繊維束の外周同士間)の距離合計(A)を求める。そして、10本の補助線を通過させた繊維束数の合計を求め、繊維束数の合計から10を引いた数を繊維束間数(B)とする。そして、距離合計(A)を繊維束間数(B)で除した値、すなわち、(A)/(B)を厚み方向における繊維束間距離の平均値として算出する。なお、断面方向における繊維束のカウント方法は、円形の形状をした繊維束のみならず、斜めに伸びる楕円の形状をした繊維束もカウントする。但し、実質的に束を形成している繊維束を数えるものとする。そして、任意の10点のそれぞれの線上における繊維束間距離の平均値を求める。任意の10点のそれぞれの線上における繊維束間距離の平均値全てが上述のような範囲であることがより好ましい。
繊維束を形成する極細繊維の本数としては、5〜1000本、さらには5〜200本、とくには10〜50本、ことには10〜30本であることが好ましい。また、繊維束の平均直径としては、1〜50μm、さらには10〜30μmであることが好ましい。繊維束を形成する極細繊維の本数が少なすぎる又は繊維束の平均直径が大きすぎる場合には、厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値を小さくしにくくなる傾向がある。また、繊維束を形成する極細繊維の本数が多すぎる又は繊維束の平均直径が小さすぎる場合にも、厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値を小さく調整しにくくなる傾向がある。なお、繊維束の平均直径とは、得られた被熱転写シートの厚み方向の断面をSEMで撮影した画像において、平均的に100個の繊維束の外形を特定し、その外形に囲まれた面積と同等の面積を有する円の直径を意味するものとする。
極細繊維の繊度は0.8dtex以下であり、0.5dtex以下、さらには、0.1dtex以下、とくには0.08dtex以下であることが好ましい。なお、下限は特に限定されないが、0.01dtex程度であることが好ましい。極細繊維の繊度が0.8dtexを超える場合には、繊維の延伸性が低下して、熱エンボス加工により不織布基材を形成する繊維束が高密度化されにくくなる。その結果、高低差の大きい凹凸模様が正確に転写されにくくなる。
不織布基材を形成する繊維束は長繊維の極細繊維から形成されていることが、厚み方向断面における繊維束間の距離を上述のように調整しやすくなる点から好ましい。ここで、長繊維とは、所定の長さに切断処理された短繊維ではないことを意味する。長繊維の長さとしては、100mm以上、さらには、200mm以上であることが、繊維束の繊維密度を充分に高めることができる点から好ましい。極細繊維の長さが短すぎる場合には、繊維束の高密度化が困難になる傾向がある。上限は、特に限定されないが、例えば、スパンボンド法により製造された不織布の場合には、連続的に紡糸された数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。また、これらの繊維は単独ではなく数種の繊維が混合したものでもよい。
また、不織布基材は着色剤で着色されている。なお、一般的な人工皮革においては、不織布基材を隠蔽するために、高濃度に顔料を添加した樹脂層により不織布基材を隠蔽するが、本実施形態の物品表面加飾シートにおいては、不織布基材を着色し、その着色を視認させるように不織布基材に積層される表面層及び接着層に光透過性を保持させている。
不織布基材を着色する方法は特に限定されない。具体的には、例えば、不織布基材を製造する際の繊維の溶融紡糸時に顔料を配合して繊維自身を着色しても、不織布基材を染料で染色しても、また、顔料とバインダとなる高分子弾性体とを含む顔料混合液を不織布基材に含浸させた後、顔料混合液を乾燥させることにより不織布基材に顔料を高分子弾性体で固着させるような方法であってもよい。これらの中では、製造性の点からは不織布を染色する方法が好ましく、着色堅牢度が高い点からは、顔料を高分子弾性体で固着させる方法が好ましい。
着色後の色調は、白色、白黄色、半透明色、透明色のような繊維本来のナチュラル色よりも濃色の色調であることが好ましく、茶、青、橙、赤、緑のような有彩色がより濃色効果を発揮する点から好ましい。
また、不織布基材の繊維間または繊維束間の空隙には、形状安定性を付与したり、上述したように顔料を固定したり、充実感を付与したりすることを目的として、必要に応じて高分子弾性体を含んでもよい。高分子弾性体の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル、合成ゴム等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが接着性や機械特性が優れる点から好ましい。また、高分子弾性体には必要に応じて公知の各種添加剤を配合してもよい。なお、高分子弾性体としては、架橋された高分子弾性体、とくにはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)浸漬に対する質量減少率が5質量%以下である架橋性のポリウレタンが好ましい。架橋された高分子弾性体は熱プレス後の弾性回復による変形が小さいために、熱エンボス加工により、少なくともエンボス部の繊維束間の距離の平均値を10μm未満になるように高密度化しやすくなる点から好ましい。
また、このような架橋されたポリウレタンは、架橋性の非多孔質のポリウレタンの水系エマルジョンを用いて形成されることが好ましい。このような架橋性のポリウレタンの水系エマルジョンの具体例としては、例えば、乾燥後に架橋構造を形成する、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンの水系エマルジョンが挙げられる。
不織布基材中の高分子弾性体の含有割合としては、5〜40質量%、さらには、8〜35質量%、とくには12〜30質量%であることが、熱エンボス加工により、エンボス部の繊維束間の距離の平均値を10μm未満になるように高密度化しやすくなる点から好ましい。
また、不織布基材の見かけ密度は0.50g/cm3以上、さらには0.50〜0.85g/cm3、とくには0.50〜0.80g/cm3であることが好ましい。このように高い見かけ密度の場合には、高い充実感が得られる。
不織布基材の厚さは特に限定されないが、300〜1000μm、さらには、300〜800μm、とくには300〜600μmであることが、薄い被熱転写シートが得られる点から好ましい。
表面層を形成するための高分子弾性体の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル弾性体、合成ゴム等が挙げられる。これらの高分子弾性体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリウレタンが接着性や、耐磨耗性や耐屈曲性等の機械物性が優れる点から好ましい。また、高分子弾性体は耐光剤等の添加剤を含有してもよい。
なお、表面層は一液型の非架橋性の高分子弾性体を用いて形成することが好ましい。架橋された高分子弾性体は、後の熱転写工程において可塑化しにくいために、型押し性が低下する傾向がある。表面層は、接着性を高めることを目的としてアンカーコート層を設けたり、表面にトップコート層を設けたような積層構造を有したりしてもよい。
物品表面加飾シートの表面層2または被熱転写シート10の表面層12の厚みは1〜100μmであり、15〜80μm、さらには20〜50μmであることが好ましい。表面層の厚みが1μm未満の場合には、得られる物品表面加飾シートの表面の耐熱性が低下したり、耐摩耗性が低下したりする傾向がある。また、表面層の厚みが100μmを超える場合には、物品表面加飾シートの厚みが厚くなって、シャープに型が入らないなど、意匠性が低下する。
被熱転写シートに、このような熱可塑性を有するホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmのホットメルト型接着層を配置することにより、得られる被熱転写シートの熱エンボス加工による型押し性が向上する。
ホットメルト型接着層を形成するためのホットメルト型接着剤は、加熱することにより溶融し、その後に冷却されることにより再固化する、従来から知られたホットメルト型接着剤であれば、特に限定なく用いられる。具体的には、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、アクリル系、酢酸ビニル系、ポリスチレン系、エポキシ系等のホットメルト型接着剤が挙げられる。また、ホットメルト型接着剤としては、架橋タイプ、半架橋タイプ、非架橋タイプのいずれでもよいが、接着性に優れる点から架橋タイプが好ましい。また、得られる被熱転写シートの凹凸模様の熱転写性と耐熱性や耐摩耗性等とのバランスに優れる点から軟化点が150℃以下、さらには130℃以下であるようなホットメルト型ウレタン接着剤がとくに好ましい。なお、軟化点は、例えば、融点測定装置(YANACOMP−500V)を用いて、目視で溶融し始める温度を特定することにより測定することができる。
ホットメルト型接着層の厚さは10〜150μmであり、20〜130μm、さらには30〜120μmであることが好ましい。中間層の厚みが10μm未満の場合には、熱エンボス時の転写性が低下する。また、中間層の厚みが150μmを超える場合には、物品表面加飾シートの耐熱性が低下したり、機械的特性が低下したりする傾向があり、また、物品表面加飾シートの厚みが厚くなるために好ましくない。
表面層とホットメルト型接着層との積層体は、その全光線透過率が5%以上であり、8%以上、さらには10%以上、とくには20%以上であることが好ましい。表面層とホットメルト型接着層との積層体の全光線透過率が5%以上であることにより、不織布基材を隠蔽することなく、その着色を視認できるとともに、熱エンボス加工により型押しされたエンボス部と非エンボス部との間に濃淡を発現させることができる。なお、表面層及びホットメルト型接着層の色は、無色透明、有色透明、無色半透明、有色半透明のいずれであってもよい。
なお、本発明における「全光線透過率」とは、JIS−K7136に規定される全光線透過率(%)測定法に準拠して測定された全光線透過率である。
また、表面層とホットメルト型接着層はそれぞれ、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて公知の各種添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、染料や微細な顔料等の着色剤、難燃剤、酸化防止剤、架橋剤等が挙げられる。
本実施形態の物品表面加飾シートの厚さは特に限定されないが、圧縮率が最も低い領域、すなわち最も厚い領域の厚さが300〜1000μm、さらには300〜600μmであることが、曲面を含む物品の表面を加飾する場合においても正確に貼り合せられる物品表面加飾シートが得られる点から好ましい。
物品表面加飾シートは、エンボス部の極細繊維束間距離の平均値が10μm未満であるような緻密な不織布基材を備えるために、充実感に優れている。具体的には、エンボス部において、240gf/cm2の荷重を掛けて定圧厚み測定器で測定したときの厚さが、無荷重状態のSEMで測定された厚みの割合は、90%以上、とくには93%以上であることが好ましい。また、非エンボス部において、240gf/cm2の荷重を掛けて定圧厚み測定器で測定したときの厚さが、無荷重状態のSEMで測定された厚みの割合は、80〜89%、さらには82〜88%であることが好ましい。
なお、240gf/cm2の荷重を掛けて定圧厚み測定器で測定したときの厚さは、JISL1096に準じて荷重240gf/cm2のJIS厚み測定器により測定することができる。また、無荷重状態のSEMにより測定された厚さは、定圧厚み測定器で測定する箇所の断面をSEMで撮影し写真から平均的に選択された3点における厚さを平均して算出される。
本実施形態の加飾シートは、被熱転写シートの表面層側から、エンボスロール等を用いて熱エンボス加工により図柄を型押しすることにより得られる。このような加飾シートは、熱エンボス加工により、不織布基材1のエンボス部Hの繊維束間の距離の平均値が10μm未満となり、より高密度化されている。その結果、繊維束間の距離の平均値が10μm未満に緻密化された部分では着色された不織布基材が高密度化されることで不織布基材1の色が相対的に濃色に視認される。一方、不織布基材1のエンボス部の周囲の非エンボス部では、不織布基材1が高密度化されないため、相対的に淡色に視認される。その結果、エンボス部が際だって明瞭に視認される。
熱エンボス加工により型押しされたエンボス部と非エンボス部との平均高低差としては、100μm以上、さらには130μm以上、とくには150μm以上であることがこのましい。このようなエンボス部と非エンボス部との大きな高低差は、立体感のある意匠性に富んだ外観を与える。
図1に示したように、加飾シート20は、例えば、成形体本体31の表面に接着して用いられる。加飾シート20の裏面に粘接着層14を設けることにより物品表面加飾用貼布30が得られる。物品表面加飾用貼布は、例えば、物品表面加飾シートの不織布基材の裏面側に粘接着層を積層し、成形体本体の表面に粘接着層で貼り合せて接着して用いられる。成形体本体の表面に物品表面加飾用貼布を貼り合せることにより、熱エンボス加工により付与された図柄が、その立体感に加えて色の濃淡の差により極めて明瞭に視認できる加飾成形体が得られる。
また、本実施形態の加飾シートは、射出インモールド成形に供されるプレフォーム成形体、または、シートとして用い、成形体本体の成形と同時にその表面に一体化させることによっても、立体感のある熱エンボス加工により付与された図柄を有する加飾成形体が製造される。
次に、加飾シートの製造方法の一例を説明する。以下、各工程について詳しく説明する。
(1)繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材を準備する工程
本工程においては、はじめに、海島型複合繊維からなる長繊維のウェブを溶融紡糸により製造する。例えば、海島型複合繊維を溶融複合紡糸し、いわゆるスパンボンド法を用いて海島型複合繊維を切断せずにネット上に捕集してウェブを形成する方法が挙げられる。海島型複合繊維の海成分は、後の適当な段階で抽出または分解されて除去される。この分解除去または抽出除去により繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束が形成される。
本工程においては、はじめに、海島型複合繊維からなる長繊維のウェブを溶融紡糸により製造する。例えば、海島型複合繊維を溶融複合紡糸し、いわゆるスパンボンド法を用いて海島型複合繊維を切断せずにネット上に捕集してウェブを形成する方法が挙げられる。海島型複合繊維の海成分は、後の適当な段階で抽出または分解されて除去される。この分解除去または抽出除去により繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束が形成される。
なお、不織布基材を着色する方法は特に限定されない。具体的には、例えば、不織布基材を製造する際の繊維の溶融紡糸時に島成分を形成する樹脂に顔料を含有させることにより極細繊維自身を着色しても、不織布基材に付与される高分子弾性体で顔料を固着させても、製造後の不織布基材を染料で染色してもよい。これらの中では、製造性の点からは不織布を染色する方法が好ましく、着色堅牢度が高い点からは、顔料を高分子弾性体で固着する方法が好ましい。
海島型複合繊維の紡糸およびウェブ形成には、スパンボンド法が好ましく用いられる。具体的には、多数のノズル孔が、所定のパターンで配置された複合紡糸用口金を用いて、海島型複合繊維を個々のノズル孔からコンベヤベルト状の移動式のネット上に連続的に吐出させ、高速気流を用いて冷却しながら堆積させる。このような方法により長繊維のウェブが形成される。ネット上に形成されたウェブには融着処理が施されることが好ましい。融着処理により形態安定性が付与される。融着処理の具体例としては、例えば、熱プレス処理が挙げられる。熱プレス処理としては、例えば、カレンダーロールを使用し、所定の圧力と温度をかけて処理する方法を採用することができる。
海島型複合繊維の島成分を形成する樹脂は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,芳香族ポリアミド,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;オレフィン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等繊維形成能を有する合成樹脂から形成された繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂が、溶融紡糸性に優れている点から好ましい。また、とくには、ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃、さらには105〜115℃であるポリエステルが好ましい。
Tgが100〜120℃のポリエステルからなる極細繊維は、熱エンボス加工する際の加熱による軟化時の延伸性に優れているために、高低差の大きい凹凸模様の転写性が優れている。なお、Tgが100℃未満の場合には熱転写後の固化に時間がかかる傾向がある。
Tgは、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、レオロジ社製FTレオスペクトラDDVIV)を用いて、幅5mm、長さ30mmの試験片を間隔20mmのチャック間に固定して、測定領域30〜250℃、昇温速度3℃/min、歪み5μm/20mm、測定周波数10Hzの条件で動的粘弾性挙動を測定することにより得られる。
Tgが100〜120℃のポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートの構成単位に直鎖の構造を乱す共重合成分を構成単位として含有する変性ポリエチレンテレフタレート、特に、イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の非対称型芳香族カルボン酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合成分として所定割合で含有する変性ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。さらに具体的には、モノマー成分としてイソフタル酸単位を2〜12モル%含有する変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
一方、海島型複合繊維の海成分を構成する熱可塑性樹脂としては、島成分を構成する樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、スチレンアクリル共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。中でも、湿熱や熱水で収縮し易い点でポリビニルアルコール系樹脂、特にエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
形成されたウェブを融着処理するための熱プレス処理の温度は、海島型複合繊維の海成分を構成する成分の融点より10℃以上低いことが好ましい。熱プレス処理の温度が海成分の融点より10℃以上低い場合には、ウェブの良好な形態安定性を維持しながら、積重後のウェブを絡合する際の絡合不良や針穴の形成を防ぎ、高品位な不織布とすることができる。熱プレス処理後のウェブの目付けとしては、20〜60g/m2の範囲であることが好ましい。20〜60g/m2の範囲にあることで、次のウェブの絡合処理において良好な形態保持性を維持させることができる。
次に、得られたウェブを4〜100枚程度重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成する。ウェブ絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いてウェブに絡合処理を行うことにより形成される。以下に、代表例として、ニードルパンチによる絡合処理について詳しく説明する。
はじめに、ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。その後、ニードルパンチにより三次元的に繊維を絡合させる絡合処理を行う。ニードルパンチを行うことにより、見掛け密度が高く、繊維の抜けを起こしにくいウェブ絡合シートが得られる。ウェブ絡合シートの目付は、目的とする厚みに応じて適宜選択される。具体的には、例えば、500〜2000g/m2の範囲であることが取扱い性に優れる点から好ましい。
次に、必要に応じて、ウェブ絡合シートを熱収縮させることにより、ウェブ絡合シートの見掛け密度及び絡合度合を高める。なお、長繊維を含有するウェブ絡合シートは、短繊維を含有するウェブ絡合シートに比べて熱収縮により大きく収縮する。熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、見掛け密度が高められてもよい。
熱収縮処理によるウェブ絡合シートの目付の変化は、収縮処理前の目付に比べて、1.1倍(質量比)以上、さらには、1.3倍以上で、2.0倍以下、さらには1.6倍以下であることが好ましい。
なお、必要に応じて、後述する極細繊維化処理の前または後に、ウェブ絡合シートに高分子弾性体を付与してもよい。
ウェブ絡合シートに高分子弾性体を付与する方法としては、高分子弾性体の溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに含浸させた後、高分子弾性体を凝固させる方法が挙げられる。高分子弾性体の溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに含浸させる方法としては、溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに所定の含浸状態になるように浸漬し、プレスロール等で絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法が好ましく用いられる。また、その他の方法として、バーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法等を用いてもよい。
高分子弾性体の溶液またはエマルジョンをウェブ絡合シートに含浸し、高分子弾性体を凝固させることにより、高分子弾性体をウェブ絡合シートに固定する。なお、架橋性の高分子弾性体を架橋させるためには、凝固及び乾燥後に加熱処理してキュア処理を行うことが好ましい。
なお、高分子弾性体の溶液またはエマルジョンは、本発明の効果を損なわない範囲で、染料や顔料などの着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、無機微粒子、導電剤などを含有してもよい。
顔料としては、バインダとなる高分子弾性体により不織布基材に固着されるものであれば、特に限定なく用いられうる。このような顔料の具体例としては、例えば、フタロシアニン系,アントラキノン系,キナクドリン系,ジオキサジン系,ペリレン系,チオインジゴ系,アゾ系等の有機顔料や、酸化チタン,カーボンブラック,べんがら,クロムレッド,モリブデンレッド,リサージ,酸化鉄等の無機顔料が挙げられる。
不織布基材に、高分子弾性体を用いて顔料を固定する方法はとくに限定されないが、例えば、次のような方法が好ましく用いられる。はじめに、バインダとなる高分子弾性体を含むエマルジョンに顔料を分散させた顔料混合液を調製する。顔料混合液の顔料の含有割合は特に限定されず、求める色調に応じて適宜調整されるが、例えば、0.1〜10質量%程度配合することが好ましい。そして、顔料混合液で満たされた浴中にウェブ絡合シートを浸した後、プレスロール等で所定の含浸状態になるように絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法により、所定量の顔料混合液を含浸させる。そして、ウェブ絡合シートに顔料混合液を含浸した後、顔料混合液を乾燥させることにより不織布に顔料をバインダで固着させることができる。
ウェブ絡合シート中の海島型複合繊維は、海成分を水や溶剤等で抽出または分解除去することにより極細繊維束に変換される。ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂を海成分に用いた海島型複合繊維の場合においては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより海成分が除去される。
以上のような工程を経て、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含む、着色された不織布基材が準備される。このようにして得られた不織布基材は、通常、スライスや研削により、目的とする厚みに調整される。
なお、不織布基材はその製造後に後染めすることにより着色されてもよい。染色方法としては、例えば、分散染料、反応染料、酸性染料、金属錯塩染料、硫化染料、硫化建染染料などを主体とした染料を繊維の種類に応じて適宜選択し、パッダー、ジッガー、サーキュラー、ウィンスなど繊維の染色に通常用いられる公知の染色機を使用して行われる。例えば、極細繊維がポリエステル系極細繊維の場合には、分散染料を用いて高温高圧染色により染色することが好ましい。
(2)離型紙の表面に高分子弾性体を主体とする厚さ1〜50μmの表面層を形成する工程
本工程においては、はじめに、離型紙の表面に、表面層となる高分子弾性体を主体とするシートを形成する。
離型紙の表面に、表面層となる高分子弾性体を主体とするシートを形成する方法は特に限定されないが、例えば、離型紙上に高分子弾性体の溶液やエマルジョンを塗布した後、乾燥凝固させる、いわゆる乾式造面法や、離型紙上にTダイを用いて溶融させた高分子弾性体の塗膜を形成し、冷却して固化させる方法が挙げられる。
(3)離型紙の表面に形成された表面層に、乾燥時の厚さが10〜150μmになるようにホットメルト型接着剤の溶液の塗膜を形成し、塗膜に不織布基材を圧着し、塗膜中の溶媒を除去しながら不織布基材とホットメルト型接着剤とを接着させ、離型紙を除去することにより被熱転写シートを形成する工程
離型紙上に形成された表面層となる、高分子弾性体を主体とするシートの表面に、厚さ10〜150μmの中間層を形成するためのホットメルト型接着剤を主体とする樹脂成分を塗布する。
ホットメルト型接着剤の性状は、通常、常温で固体状である。従って、形成されたホットメルト型接着層は固体状である。このようなホットメルト型接着剤は、通常、無溶剤タイプの固体状のホットメルト型接着剤を塗布可能な粘度に調整して塗布される。しかしながら、表面層を形成するための高分子弾性体のシートに溶融されたホットメルト型接着剤を塗布した場合には、高分子弾性体のシートが熱履歴を受ける。そのために、このような熱履歴を避けるために、固体状のホットメルト型接着剤を溶剤に溶解した溶液タイプのホットメルト型接着剤を用いて塗膜を形成することが好ましい。
離型紙上に形成された表面層を形成するためのシートの表面に、溶液タイプのホットメルト型接着剤を用いて塗膜を形成し、その溶液中の溶媒が完全に乾燥する前に、予め準備された不織布基材を貼り合せて溶剤を乾燥除去することにより、不織布基材と表面層とが一体化される。この際、必要に応じて、接着させる際にホットメルト型接着剤が溶融しない程度の温度で熱プレスしてもよい。そして、ホットメルト型接着剤と不織布基材とが接着された後、表面層から離型紙を剥離することにより、被熱転写シートが形成される。
(4)被熱転写シートに熱エンボス加工により型押しする工程
被熱転写シートに、表面層が積層された側から熱エンボス加工により型押しすることにより、シボ模様のような凹凸模様を有する加飾シートが得られる。
熱エンボス加工としては、加熱された表面に凹凸で形成されている型押しパターンを有するエンボスロールと表面平滑なバックアップロールとの間に、被熱転写シートの表面層がエンボスロールに押圧されるように通過させる。エンボスロールの温度や圧力は、被熱転写シートに型押しされるような条件であれば特に限定されない。例えば、極細繊維のTg以上で融点未満の温度が挙げられる。このようにして、物品表面加飾シートが得られる。
熱エンボス加工の条件は特に限定されないが、厚み方向断面におけるエンボス部の繊維束間の距離の平均値が10μm未満になるように不織布基材を圧縮できる条件が選ばれる。具体的には、例えば、温度100〜180℃,プレス圧0.1〜1.0MPa,プレス時間1〜3m/minの条件、さらには、温度130〜150℃,プレス圧0.2〜0.5MPa,プレス時間1〜3m/minの条件、とくには、温度130〜150℃,プレス圧0.4〜0.8MPa,プレス時間1〜3m/minの条件で、ロールプレスするような方法が好ましく用いられる。ロールプレスの場合、処理速度としては、例えば、0.5〜5m/min、さらには1〜3m/min程度であることが好ましい。なお、プレス温度やプレス圧が高すぎる場合には、繊維が溶融してフィルム化してしまうことがある点から好ましくない。このような処理により、エンボス部において、不織布基材の厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値を10μm未満になるように調整する。
このようにして得られた物品表面加飾シートは、その裏面に粘接着層が形成され、成形体や各種物品の表面に貼り合される。粘接着層は、例えば、物品表面加飾シートの裏面側に両面テープを貼り合せるようにして形成できる。このような物品表面加飾シートを成形体本体に貼り合せることにより、表面にシボ模様のような立体感のある皮革様の外観を有する加飾成形体が得られる。本実施形態の物品表面加飾シートは、薄さの要求される用途、具体的には、例えば、一眼レフカメラの筐体やカメラグリップの表面、携帯端末本体の筐体やカバー、車両内装材、化粧品ケース等の加飾に好ましく用いられる。
[第2実施形態]
本発明に係る加飾シート、物品表面加飾用貼布及び加飾成形体の第二実施形態について説明する。なお、本実施形態は、熱エンボス加工により型押しする図柄が、シボ模様のような線状の模様ではなく、文字、図形、記号等の平面的な図柄であること以外は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態においては、第1実施形態と異なる部分のみについて詳しく説明し、同様の要素については説明を省略する。また、同様の符号を付した要素は、第一実施形態と同様の要素とする。
本発明に係る加飾シート、物品表面加飾用貼布及び加飾成形体の第二実施形態について説明する。なお、本実施形態は、熱エンボス加工により型押しする図柄が、シボ模様のような線状の模様ではなく、文字、図形、記号等の平面的な図柄であること以外は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態においては、第1実施形態と異なる部分のみについて詳しく説明し、同様の要素については説明を省略する。また、同様の符号を付した要素は、第一実施形態と同様の要素とする。
図5は、物品表面加飾シート60を成形体本体31の表面に粘接着層14を介して接着して形成された加飾成形体50の模式図であり、図5(a)は上面、図5(b)は図5(a)のII−II'断面の模式図を示す。物品表面加飾シート60は、図5(a)に示すように、上面視したときに溝状の領域Bを有する矩形状の輪郭を有する熱エンボス加工により付与された図柄を有する。また、図5(b)に示すように、断面視したときに互いに圧縮率の異なる、領域A、領域B,及び領域Cを有する略台地状の凸部を形成した熱エンボス加工により付与された図柄を有する。
図5(b)に示すように、加飾シート60は、不織布基材1と、高分子弾性体を主体とする1〜100μmの表面層2と、不織布基材1と表面層2との間に配置されたホットメルト型接着層3を備える。ホットメルト型接着層3はホットメルト型接着剤を含む厚さ10〜150μmの接着層である。そして、加飾シート60は粘接着層14を介して成形体本体31に接着されている。不織布基材1は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、領域A、領域B,及び領域Cの順に繊維束の圧縮率が高くなっている。そして、少なくとも領域Cの厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値が10μm未満である。
不織布基材1は着色剤で着色されており、一方、表面層2とホットメルト型接着層3との積層体は、全光線透過率が5%以上である。
加飾シート60は、不織布基材1が高い圧縮率で圧し潰されており、少なくともエンボス部において、240gf/cm2の荷重を掛けて定圧厚み測定器で測定したときの厚さに対する、無荷重状態の走査型顕微鏡(SEM)で測定された厚さの割合を90%以上を維持することが好ましい。すなわち、不織布基材1の圧縮率が最も高い領域Cは、上記厚さの割合を90%以上維持することが好ましい。また、不織布基材1の圧縮率が最も低い領域Aは上記厚さの割合を80〜89%を維持することが好ましい。このような加飾シートは、充実感が高く圧縮されにくいために、頻繁に人の指で繰り返し圧されるような物品の表面材として用いられても押しつぶされにくい。また、充実感の高い素材に熱エンボス加工により付与された図柄が形成されているために、文字や細かな模様が正確に転写されている。
また、不織布基材1の圧縮率が最も高い領域Cの上記厚さの割合は、90%以上、さらには93%以上であることが好ましい。上記厚さの割合が90%未満の場合には、人の指で触れられるような物品の表面材として用いられた場合に熱エンボス加工により付与された図柄の輪郭が経時的に不鮮明になってくる傾向がある。
不織布基材1の圧縮率が最も低い領域Aの上記厚さの割合は、80〜89%、さらには82〜88%であることが好ましい。不織布基材1の圧縮率が最も低い領域の上記厚さの割合がこのような範囲である場合には、人の指で触れられるような物品の表面材として用いられた場合にエンボス柄の輪郭が鮮明になる。
繊維束は複数の極細繊維が集束するように形成されている。そして、極細繊維の繊維束の絡合体を含む不織布基材は、厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値は、圧縮率が最も高い領域Cで10μm未満であり、0〜8μmであることが好ましく、圧縮率が最も低い領域Aで10μm以上30μm以下であり、10μm以上20μm以下であることが好ましい。本実施形態の物品表面加飾シートは、このように高い圧縮率で圧し潰された不織布基材を含むことにより、充実感が高く、圧し潰されにくいシートになる。
本実施形態の物品表面加飾シートの厚さは特に限定されないが、圧縮率が最も低い領域、すなわち最も厚い領域の厚さが300〜1000μm、さらには300〜600μmであることが、曲面を含む物品の表面を加飾する場合においても正確に貼り合せられる物品表面加飾シートが得られる点から好ましい。また、圧縮率が最も高い領域、すなわち最も薄い領域の厚さは、最も厚い領域に比べて100〜500μm、さらには150〜400μm薄いことが、エンボス柄の立体感がより明瞭に表現され、図柄の輪郭が明確に表現される点から好ましい。
なお、形成される図柄としては、図形、記号、模様、文字等特に限定されない。また、模様や文字を形成する部分は凹部であっても凸部であってもよい。文字及び図形が形成された物品表面加飾シート65の一例の斜視模式図を図6に示す。図6の物品表面加飾シート65においては、66がエンボス部であり、67が非エンボス部であり、非エンボス部が「A」の文字、及び、矢印の図柄が浮き出るように形成されている。
本実施形態の加飾シートは、被熱転写シートの表面層側から、熱エンボス加工により文字、図形、記号等の平面的な図柄を型押しすることにより得られる。このような加飾シートは、不織布基材のエンボス部の繊維束間の距離の平均値が10μm未満となり、より高密度化されている。その結果、繊維束間の距離の平均値が10μm未満に緻密化された部分では着色された不織布基材が高密度化されることで不織布基材の色が相対的に濃色に視認される。一方、不織布基材のエンボス部の周囲の非エンボス部では、不織布基材が高密度化されないため、相対的に淡色に視認される。その結果、文字、図形、記号等の平面的な図柄が際だって明瞭に視認される。
本実施形態の物品表面加飾シートは、薄さの要求される用途であって、例えば頻繁に人の指で繰り返し圧されるような物品の表面材等、さらに具体的には、エレベータや各種家電製品の押しボタンや、情報端末機器やPCのキーボードの表面等に貼り合せる表皮材として好ましく用いられる。また、視覚障碍者に触感により各種情報を認識させるための、点字や方向マークを表示する表面素材等としても好ましく用いられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール(エチレン単位の含有量8.5モル%、重合度380、ケン化度98.7モル%)、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸単位の含有量6.0モル%)を、それぞれ個別に溶融させた。そして、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成しうるような、多数のノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に、それぞれの溶融樹脂を供給した。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。そして、口金温度260℃に設定されたノズル孔より吐出させた。
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール(エチレン単位の含有量8.5モル%、重合度380、ケン化度98.7モル%)、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸単位の含有量6.0モル%)を、それぞれ個別に溶融させた。そして、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成しうるような、多数のノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に、それぞれの溶融樹脂を供給した。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。そして、口金温度260℃に設定されたノズル孔より吐出させた。
そして、ノズル孔から吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように気流の圧力を調節したエアジェット・ノズル型の吸引装置で吸引することにより延伸し、繊度が2.1dtexの海島型長繊維を紡糸した。紡糸された海島型長繊維は、可動型のネット上に、ネットの裏面から吸引しながら連続的に堆積された。堆積量はネットの移動速度を調節することにより調節された。そして、表面の毛羽立ちを抑えるために、ネット上の堆積された海島型長繊維を42℃の金属ロールで軽く押さえた。そして、海島型長繊維をネットから剥離し、表面温度75℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させることにより、線圧200N/mmで熱プレスした。このようにして、表面の繊維が格子状に仮融着された目付34g/m2の長繊維ウェブが得られた。
次に、得られた長繊維ウェブの表面に、帯電防止剤を混合した油剤をスプレー付与した後、クロスラッパー装置を用いて長繊維ウェブを10枚重ねて総目付が340g/m2の重ね合せウェブを作成し、更に、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、重ね合せウェブをニードルパンチングすることにより三次元絡合処理した。具体的には、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmで積層体の両面から交互に3300パンチ/cm2のパンチ数でニードルパンチした。このニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は415g/m2であった。
得られた絡合ウェブは、以下のようにして湿熱収縮処理されることにより、緻密化された。具体的には、18℃の水を絡合ウェブに対して10質量%均一にスプレーし、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中で3分間張力が掛からない状態で放置して熱処理することにより湿熱収縮させて見かけの繊維密度を向上させた。この湿熱収縮処理による面積収縮率は45%であり、緻密化された絡合ウェブの目付は750g/m2であり、見かけ密度は0.52g/cm3であった。そして、絡合ウェブをさらに緻密化するために乾熱ロールプレスすることにより、見かけ密度0.60g/cm3に調整した。
次に、緻密化された絡合ウェブに、DMF浸漬に対する質量減少率が0.5質量%である、無孔質の架橋性のポリウレタンを以下のようにして含浸させた。ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンを主体とする架橋型の水系ポリウレタンエマルジョン(固形分濃度30%)を緻密化された絡合ウェブに含浸させた。そして、150℃の乾燥炉で水分を乾燥し、さらにポリウレタンを架橋させた。このようにして、ポリウレタン/絡合ウェブの質量比が18/82のポリウレタン絡合ウェブ複合体を形成した。
次に、ポリウレタン絡合ウェブ複合体を95℃の熱水中に20分間浸漬することにより海島型長繊維に含まれる海成分を抽出除去し、120℃の乾燥炉で乾燥することにより、厚さ約1000μmmの不織布基材が得られた。
得られた不織布基材のポリウレタン/繊維絡合体の質量比は22/78であり、その見かけ密度は0.53g/cm3であった。また、繊維絡合体の極細単繊維の平均単繊維繊度は0.08dtexであった。
得られた不織布基材を厚み方向に2分割し、370μmに研削を行い、そして、薄茶系の分散染料を用いて薄茶色に染色した。
一方、離形紙上に、表面層として非架橋性のシリコン変性ポリカーボネート系ポリウレタンのDMF溶液を塗布し、乾燥することにより厚み30μmの表面層シートを形成した。
そして、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるように、固形分約50%のポリウレタンからなるホットメルト型接着剤のDMF溶液を塗布した。なお、ポリウレタンからなるホットメルト型接着剤の軟化点120℃であった。
そして、表面層シート上に形成されたポリウレタン系ホットメルト型接着剤のDMF溶液の塗膜に、不織布基材を貼り合せ、軽く押さえながら塗膜中の溶媒を乾燥させた。このようにして被熱転写シートが得られた。得られた被熱転写シートの厚さは411μmであった。なお、離型紙上に表面層とポリウレタン系ホットメルト型接着剤の層との積層体を形成し、離型紙から剥離して形成された積層体の全光線透過率を測定したところ、9%であった。なお、全光線透過率は、JIS−K7136に規定される全光線透過率(%)測定法に準拠して測定した。
そして、得られた被熱転写シートに対して、高低差600μmでシボ状の凸部を表面に有するエンボスロールを使用して、ロール温度150℃、プレス圧力3MPa、処理速度1m/分で型押しを行うことにより、高低差179μmのシボ状の模様を有する皮革様の意匠を備えた物品表面加飾シートを得た。
また、得られた被熱転写シートの断面の200倍のSEM画像を撮影した。そして、図3はエンボス部、図4は非エンボス部の画像である。以下に示すような方法により、エンボス部及び非エンボス部それぞれの厚み方向断面における繊維束間の距離の平均値を求めた。
図3及び図4に示すように、物品表面加飾シートの幅方向の861μmの範囲に約80μmの間隔で、厚み方向に平行な補助線を10本引いた。そして、各線が通過する複数の繊維束の輪郭間の繊維束間距離(繊維束の外周同士の間の距離)の合計を各線毎に求めた。そして10本の線における繊維束間距離の距離合計(A)を求めた。一方、10本の線上にある極細繊維束の数の合計を求め、その数の合計から10を引いた繊維束間数(B)を求めた。そして、距離合計(A)を繊維束間数(B)で除することにより、極細繊維束間距離の平均値を算出した。その結果、得られた物品表面加飾シートのエンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.18μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は18.75μmであった。
また、物品表面加飾シートのエンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJISL1096に準じて、荷重240gf/cm2のJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は217μmであり、非エンボス部は355μmであった。一方、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ232μm、411μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で93.5%、非エンボス部で86.5%であった。
そして、得られた加飾シートを以下のようにして評価した。結果を表1に示す。
〈転写性の評価〉
深絞り形状(エッジ、シャープさ、深さ)を目視で以下の基準で5段階で判定した。
5級:シボ深さが深く、シボ頂点から最底辺まで深絞り形状が入っている。
4級:シボ深さが深く、シボ頂点の2/3の高さから最底辺まで深絞り形状が入っている。
3級:シボ深さが浅く、シボ頂点の1/2の高さから最底辺まで深絞り形状が入っている。
2級:シボ深さが浅く、シボ頂点の1/3の高さから最底辺のみ深絞り形状が入っている。
1級:シボ深さとシボ頂点が全く入っておらず最底辺のみ深絞り形状が入っている。
深絞り形状(エッジ、シャープさ、深さ)を目視で以下の基準で5段階で判定した。
5級:シボ深さが深く、シボ頂点から最底辺まで深絞り形状が入っている。
4級:シボ深さが深く、シボ頂点の2/3の高さから最底辺まで深絞り形状が入っている。
3級:シボ深さが浅く、シボ頂点の1/2の高さから最底辺まで深絞り形状が入っている。
2級:シボ深さが浅く、シボ頂点の1/3の高さから最底辺のみ深絞り形状が入っている。
1級:シボ深さとシボ頂点が全く入っておらず最底辺のみ深絞り形状が入っている。
(図柄の明瞭性)
A:薄茶色の表面において、シボ模様を形成した部分が顕著に濃色を示し、シボ模様以外の部分は淡色を示し、コントラストが際立って視認された。
B:薄茶色の表面において、シボ模様を形成した部分とシボ模様以外の部分のコントラストが明瞭ではなかった。
A:薄茶色の表面において、シボ模様を形成した部分が顕著に濃色を示し、シボ模様以外の部分は淡色を示し、コントラストが際立って視認された。
B:薄茶色の表面において、シボ模様を形成した部分とシボ模様以外の部分のコントラストが明瞭ではなかった。
[実施例2]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが120℃であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は5.12μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は12.77μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は271μmであり、非エンボス部は370μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ290μmと423μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で93.5%、非エンボス部で87.5%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが120℃であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は5.12μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は12.77μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は271μmであり、非エンボス部は370μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ290μmと423μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で93.5%、非エンボス部で87.5%であった。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが100℃であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は4.84μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は14.66μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は234μmであり、非エンボス部は352μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ241μmと406μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で96.9%、非エンボス部で86.6%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが100℃であるイソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は4.84μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は14.66μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は234μmであり、非エンボス部は352μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ241μmと406μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で96.9%、非エンボス部で86.6%であった。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比22/78に代えて、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比を29/71にした見かけ密度0.69g/cm3の不織布基材を用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は4.58μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は14.61μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は219μmであり、非エンボス部は364μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ234μmと410μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で93.8%、非エンボス部で88.9%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比22/78に代えて、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比を29/71にした見かけ密度0.69g/cm3の不織布基材を用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は4.58μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は14.61μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は219μmであり、非エンボス部は364μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ234μmと410μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で93.8%、非エンボス部で88.9%であった。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが10μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.22μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は16.21μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は218μmであり、非エンボス部は311μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ236μmと374μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で92.5%、非エンボス部で83.1%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが10μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.22μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は16.21μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は218μmであり、非エンボス部は311μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ236μmと374μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で92.5%、非エンボス部で83.1%であった。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが150μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.15μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は13.72μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は282μmであり、非エンボス部は437μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ304μmと502μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で92.7%、非エンボス部で87.1%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが150μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.15μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は13.72μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は282μmであり、非エンボス部は437μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ304μmと502μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で92.7%、非エンボス部で87.1%であった。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、不織布基材に、DMF浸漬に対する質量減少率が0.5質量%である、無孔質ポリウレタンを含浸させる代わりに、DMFに対する重量減少率が100質量%である、発泡ポリウレタンを形成するためのポリウレタンのDMF溶液(固形分20%)を含浸させ、湿式凝固させることにより、発泡ポリウレタン/繊維絡合体の質量比が18/82の不織布基材を形成した。上記変更以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.49μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は22.46μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は252μmであり、非エンボス部は334μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ278μmと415μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で90.8%、非エンボス部で80.5%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、不織布基材に、DMF浸漬に対する質量減少率が0.5質量%である、無孔質ポリウレタンを含浸させる代わりに、DMFに対する重量減少率が100質量%である、発泡ポリウレタンを形成するためのポリウレタンのDMF溶液(固形分20%)を含浸させ、湿式凝固させることにより、発泡ポリウレタン/繊維絡合体の質量比が18/82の不織布基材を形成した。上記変更以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.49μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は22.46μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は252μmであり、非エンボス部は334μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ278μmと415μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で90.8%、非エンボス部で80.5%であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが130℃であるポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は17.30μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は17.42μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は308μmであり、非エンボス部は341μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ338μmと420μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で91.1%、非エンボス部で81.3%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを用いる代わりに、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが130℃であるポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は17.30μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は17.42μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は308μmであり、非エンボス部は341μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ338μmと420μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で91.1%、非エンボス部で81.3%であった。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比22/78に代えて、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比を8/92にした見かけ密度0.53g/cm3の不織布基材を用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は15.30μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は19.64μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は282μmであり、非エンボス部は343μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ338μmと418μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で83.3%、非エンボス部で82.1%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比22/78に代えて、ポリウレタン/繊維絡合体の質量比を8/92にした見かけ密度0.53g/cm3の不織布基材を用いた以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は15.30μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は19.64μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は282μmであり、非エンボス部は343μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ338μmと418μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で83.3%、非エンボス部で82.1%であった。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、表面層シートに、ポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、ホットメルト型接着剤ではない、軟化点150℃の一液タイプのポリウレタン接着剤を50μm塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.57μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は15.98μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は308μmであり、非エンボス部は343μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ335μmと412μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で91.9%、非エンボス部で83.2%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、表面層シートに、ポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、ホットメルト型接着剤ではない、軟化点150℃の一液タイプのポリウレタン接着剤を50μm塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.57μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は15.98μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は308μmであり、非エンボス部は343μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ335μmと412μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で91.9%、非エンボス部で83.2%であった。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが8μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.25μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は21.36μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は303μmであり、非エンボス部は313μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ322μmと373μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で94.1%、非エンボス部で84.0%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、表面層シートに、乾燥後の厚さが50μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布する代わりに、乾燥後の厚さが8μmになるようにポリウレタン系ホットメルト型接着剤を塗布した以外は実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は6.25μmであり、非エンボス部の極細繊維束間距離の平均値は21.36μmであった。また、エンボス部及び非エンボス部の厚さをそれぞれJIS厚み測定器で測定したところ、エンボス部は303μmであり、非エンボス部は313μmであった。また、SEMで測定された同じ個所の厚さはそれぞれ322μmと373μmであった。その結果、SEMで測定された厚さに対する、定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合はエンボス部で94.1%、非エンボス部で84.0%であった。結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、不織布基材として、分散染料を用いて薄茶色に染色された不織布基材を用いる代わりに、染色するする工程を省略した、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートの繊維本来のナチュラル色(白色)のままの色味を有する不織布基材を用いた以外は、実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、不織布基材として、分散染料を用いて薄茶色に染色された不織布基材を用いる代わりに、染色するする工程を省略した、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートの繊維本来のナチュラル色(白色)のままの色味を有する不織布基材を用いた以外は、実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例6]
実施例1において、表面層及びホットメルト型接着剤層として、積層体の全光線透過率0%である、顔料で茶色に着色された表面層及びホットメルト型接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、表面層及びホットメルト型接着剤層として、積層体の全光線透過率0%である、顔料で茶色に着色された表面層及びホットメルト型接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして被熱転写シートを得、また、物品表面加飾シートを得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
着色された不織布基材を備え、不織布基材がエンボス部において繊維束間の距離の平均値が10μm未満であり、非エンボス部において10μm以上30μm以下であり、表面層とホットメルト型接着層との積層体の全光線透過率が5%以上である、実施例1〜7の物品表面加飾シートにおいては、いずれもシボ深さが深く、また、不織布基材のシボ模様を形成した部分が顕著に濃色を示し、シボ模様以外の部分は淡色を示していた。その結果、図柄のコントラストが際立って視認された。一方、繊維束間の距離の平均値が10μm超の比較例1及び比較例2で得られた物品表面加飾シートにおいては、いずれもシボ深さが浅く、また、シボ模様を形成した部分が充分に濃色化されなかった。そのために図柄のコントラストが不明瞭に視認された。また、ホットメルト型接着剤ではない、一液タイプのポリウレタン接着剤を用いた比較例3で得られた物品表面加飾シートもシボ深さが浅く、また、シボ模様を形成した部分が充分に濃色化されなかった。さらに、ホットメルト型接着層の厚みが薄い比較例4で得られた物品表面加飾シートは、不織布基材のシボ模様を形成した部分は濃色化したが、シボ深さが浅く、そのために図柄のコントラストが不明瞭に視認された。また、不織布基材を染色するする工程を省略した、ナチュラル色(白色)のままの不織布基材を用いた比較例5の物品表面加飾シートにおいては、全体が白色のままであり、図柄のコントラストが不明瞭に視認された。また、積層体の全光線透過率0%である、顔料で茶色に着色された表面層及びホットメルト型接着剤層を形成した比較例6の物品表面加飾シートにおいては、不織布基材の外観が表層に影響せず、図柄はシボの凹凸のみにより視認されるために、図柄のコントラストが不明瞭であった。
本発明は、携帯端末本体(スマートフォン、タブレットPC)およびそのケース、カバーなどのアクセサリ、カメラグリップ、車両内装材、化粧品ケースなどの樹脂成形体の表面を皮革用表面で加飾するインモールド成形に用いられる。
1,11 不織布基材
1a 極細繊維
2,12 表面層
3,13 ホットメルト型接着層
10 被熱転写シート
31 成形体本体
14 粘接着層
20,60,65 加飾シート
30 物品表面加飾用貼布
40,50 加飾成形体
A 圧縮率が最も低い領域
C 圧縮率が最も高い領域(エンボス部)
H,66 エンボス部
67 非エンボス部
1a 極細繊維
2,12 表面層
3,13 ホットメルト型接着層
10 被熱転写シート
31 成形体本体
14 粘接着層
20,60,65 加飾シート
30 物品表面加飾用貼布
40,50 加飾成形体
A 圧縮率が最も低い領域
C 圧縮率が最も高い領域(エンボス部)
H,66 エンボス部
67 非エンボス部
Claims (9)
- 熱エンボス加工することによりエンボス部と非エンボス部とを有する図柄を型押しされた物品表面加飾シートであって、
着色剤で着色された不織布基材と、高分子弾性体を主体とする厚さ1〜100μmの表面層と、前記不織布基材と前記表面層とを接着する厚さ10〜150μmのホットメルト型接着層とを含み、
前記不織布基材は、繊度0.8dtex以下の極細繊維の繊維束の絡合体を含み、前記エンボス部における、厚み方向断面における前記繊維束間の距離の平均値が10μm未満であり、前記非エンボス部における、繊維束間の距離の平均値が10μm以上30μm以下であり、
前記表面層と前記ホットメルト型接着層との積層体の全光線透過率が5%以上であることを特徴とする物品表面加飾シート。 - 前記不織布基材は、有彩色の着色剤で着色されている請求項1に記載の物品表面加飾シート。
- 前記エンボス部において、走査型顕微鏡(SEM)で測定された厚さに対する240gf/cm2に設定した定圧厚み測定器で測定したときの厚さの割合が、90%以上である請求項1または2に記載の物品表面加飾シート。
- 前記極細繊維は、ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃のポリエステルからなる請求項1〜3の何れか1項に記載の物品表面加飾シート。
- 前記ホットメルト型接着層の軟化温度が150℃以下である請求項1〜4の何れか1項に記載の物品表面加飾シート。
- 厚さが300〜1000μmである請求項1〜5の何れか1項に記載の物品表面加飾シート。
- 前記エンボス部と前記非エンボス部との平均高低差が100μm以上である請求項1〜6の何れか1項に記載の物品表面加飾シート。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載の物品表面加飾シートの前記不織布基材の裏面側に粘着層又は接着層を設けて形成されることを特徴とする物品表面加飾用貼布。
- 請求項1〜8の何れか1項に記載の物品表面加飾シートを成形体の表面に接着して形成されたことを特徴とする加飾成形体。
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