JP2015137372A - コネクタピン用Cu−Fe系合金線材及びコネクタ - Google Patents
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Abstract
【課題】加工性と強度との双方に優れ、材料コストの安価なコネクタピン用Cu−Fe系合金線材を提供する。【解決手段】コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、10質量%以上のFeを含有し、残部がCu及び不可避不純物よりなる化学成分を有している。また、コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有している。また、Fe系粒子は、伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上である。【選択図】図1
Description
本発明は、コネクタピン用Cu−Fe系合金線材及びそれを用いたコネクタピンを有するコネクタに関する。
自動車用PCB(Printed Circuit Board)コネクタや自動車用中継コネクタ等のコネクタには、例えば黄銅などの、銅に数質量%程度の金属を添加した銅合金よりなるコネクタピンを備えたものがある。近年、コネクタ全体の軽量化、小型化及び低コスト化のために、より高い剛性を有すると共に、材料コストを低減できるコネクタピンが望まれている。そこで、材料の強度が高く、材料コストの低い銅合金として、Cu(銅)にFe(鉄)を添加したCu−Fe系合金をコネクタピンの素材として用いることが検討されている。
例えば特許文献1には、0.05〜5質量%の炭素が固溶した10〜70質量%のFeと、残部がCu及び不可避不純物との合金からなるばね部材の例が開示されている。かかる化学成分を有するCu−Fe系合金は、従来の銅合金よりも高い強度を有するものとなりやすい。また、Cu−Fe系合金は、Cuよりも地金代の安価なFeを含有しているため、Feの含有量を多くすることにより材料コストを容易に低減することができる。
このように、Cu−Fe系合金は、コネクタピンの素材として十分な強度と、材料コストとを両立する可能性を有する材料である。
しかしながら、従来公知のCu−Fe系合金は、コネクタピンを作製する場合に加工性と強度を両立させることが困難である。つまり、従来のCu−Fe系合金は、Feの含有量が少ない場合には、Fe成分がCu系母相に固溶するため、Fe系析出物の析出量が不十分となり易い。それ故、例えば曲げ加工等を施す際の加工性に優れる反面、析出強化が不十分となり、強度が高くならない傾向がある。そのため、Feの含有量が少ないCu−Fe系合金は、より強度を要求するような用途での使用には適さない。また、Feの含有量が少ない場合には、材料コストの低減が困難である。
一方、Feの含有量を多くしたCu−Fe系合金は、強度が高くなりやすく、材料コストを低減し易いものの、曲げ加工を施す際の加工性が悪化するという問題がある。そのため、強度の高いCu−Fe系合金は、コネクタピンの作製工程において曲げ加工を施した後に、屈曲部に割れが生じ易い。
このように、従来公知のCu−Fe系合金をコネクタピンの素材として採用するためには、材料コストを低減すると共に、高い強度と優れた加工性とを両立させることが必要である。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、加工性と強度の双方に優れ、材料コストの安価なコネクタピン用Cu−Fe系合金線材及びこれを用いたコネクタピンを有するコネクタを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、10質量%以上のFeを含有し、残部がCu及び不可避不純物よりなる化学成分を有し、
Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有しており、
上記Fe系粒子は、上記伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、上記伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上であることを特徴とするコネクタピン用Cu−Fe系合金線材にある。
Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有しており、
上記Fe系粒子は、上記伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、上記伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上であることを特徴とするコネクタピン用Cu−Fe系合金線材にある。
また、本発明の他の態様は、上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材より構成されたコネクタピンを有するコネクタにある。
上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材(以下、適宜「線材」と省略することがある。)は、10質量%以上のFeを含有し、残部がCu及び不可避不純物よりなる化学成分を有している。そのため、上記線材は、従来の銅合金と同等以下の材料コストを容易に実現できる。
また、上記線材は、Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有している。また、上記Fe系粒子は、上記伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、上記伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上である。このような金属組織を有する上記線材は、伸線方向への延性が大きくなりやすい。それ故、上記線材に曲げ加工を施す際に、屈曲部分に割れが生じにくくなる。このように、上記線材は、優れた曲げ加工性を示すため、曲げ加工に伴う割れの発生を抑制することができる。
また、上記線材は、Cuを主成分とするCu系母相を有しているため、従来の銅合金と同等以上の導電率を容易に確保することができる。また、上記線材は、はんだ濡れ性を向上させるためのSnめっき処理が可能である。これらの結果、上記線材は、コネクタピンに要求される電気的特性を満たすことができる。
また、上記線材は、上記特定の化学成分と、上述した金属組織とを具備していることにより、従来の銅合金よりも強度を高くすることができる。
以上のように、上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、加工性と強度の双方に優れ、材料コストの安価なものとなる。
また、上述したように、上記線材は、優れた曲げ加工性を有しているため、上記線材から作製したコネクタピンは、曲げ加工により形成される屈曲部に割れやクラックが生じにくい。その結果、上記コネクタピンを有するコネクタは、優れた品質を有する。
上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、10質量%以上のFeを含有している。上述したように、Cu−Fe系合金は、Feの含有量が多くなるほど強度が高くなる傾向がある。そのため、上記線材は、Feの含有量を10質量%以上とすることにより、コネクタピンの素材に要求される強度を十分に満足することができる。また、上記線材は、Feの含有量を10質量%以上とすることにより、従来の銅合金よりも材料コストを低減することができる。それ故、強度をより強くし、材料コストをより低減する観点から、Feの含有量は10質量%以上とする。同じ観点から、Feの含有量は20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
一方、Feの含有量が過度に多くなると、上述したように加工性が悪化するため、上記線材を用いてコネクタピン等を作製する際に割れ等が生じ易くなる。また、Fe系粒子はCu系母相に比べて導電率が低いため、Feの含有量が過度に多い場合には、得られるコネクタピン用Cu−Fe系合金線材の導電率が低くなりやすい。それ故、Feの含有量が過度に多い場合には、コネクタピンの素材に要求される導電率を満足することが困難となるおそれがある。これらの問題を回避するためには、例えば、Feの含有量を70質量%以下に規制することが好ましく、Feの含有量を60質量%以下に規制することがより好ましい。
以上のように、上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、Feの含有量を10質量%以上とし、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%とすることにより、コネクタピンの素材に要求される強度、加工性、導電性等の諸特性を満足し、材料コストの安価な材料となる。
また、上記金属組織は、例えば、鋳造の際に生じるFeを主成分とする晶出物や、熱処理等により生じるFeを主成分とする析出物を、伸線方向に引き伸ばされた状態で上記Cu系母相中に有している。つまり、上記晶出物や上記析出物は、冷間引抜や冷間圧延等の冷間加工時の加工力を受けることにより、伸線方向に引き伸ばされるよう塑性変形する。これにより、伸線方向に伸びた上記Fe系粒子が生じる。
なお、上述した「主成分」とは、最も含有量の多い元素であることを意味している。そして、上記Cu系母相は主成分のCuの他に微量のFeあるいは不純物を含有する場合がある。また、Fe系粒子は主成分のFeの他に微量のCuあるいは不純物を含有する場合がある。
上記Fe系粒子は、伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、上記伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上である。上記幅の平均値及び長さの平均値の双方を上記特定の範囲に制御することにより、上記Fe系粒子がCu系母相中に均一に分散し易くなり、上記線材の金属組織が均一になりやすい。そして、均一な金属組織を有する上記線材は、優れた加工性を有するものとなりやすい。
上記幅が1μmを超えるFe系粒子が過度に多く存在する場合には、Fe系粒子の分布に偏りが生じやすく、金属組織が不均一となるおそれがある。そして、不均一な金属組織を有する線材は、曲げ加工時に応力集中が生じ易くなり、加工性が悪化するおそれがある。このような問題は、上記幅の平均値が0.5μm以下となるように上記金属組織を制御することにより回避できる。
一方、上記幅が0.1μm未満となるFe系粒子が過度に多く存在する場合には、上記Fe系粒子による強度向上効果が不十分となり、ひいては上記線材の強度が不十分となるおそれがある。上記Fe系粒子による強度向上効果を十分に得るためには、上記幅の平均値が0.1μm以上となるように上記金属組織を制御することが好ましい。
以上のように、加工性と強度とを両立させる観点から、幅が1μmを超える上記Fe系粒子及び0.1μm未満となる上記Fe系粒子の両方の含有量を低減することが好ましい。同じ観点から、上記Fe系粒子の幅の平均値が0.1〜0.5μmの範囲内になるように上記金属組織を制御することがより好ましい。
また、上記長さが4μm未満となる上記Fe系粒子が過度に多く存在する場合には、Fe系粒子による強度向上効果が不十分となるおそれがあり、ひいては上記線材の強度が不十分となるおそれがある。この問題は、上記長さの平均値が4μm以上となるように上記金属組織を制御することにより回避できる。
一方、上記長さが30μmを超えるFe系粒子が過度に多く存在する場合には、Fe系粒子の分布に偏りが生じやすく、金属組織が不均一となるおそれがある。そして、不均一な金属組織を有する線材は、曲げ加工時に応力集中が生じ易くなり、加工性が悪化するおそれがある。上記線材の金属組織を均一にし、加工性を向上させる観点からは、上記長さの平均値が30μm以下となるように上記金属組織を制御することが好ましい。
以上のように、加工性と強度とを両立させる観点から、長さが30μmを超える上記Fe系粒子及び4μm未満となる上記Fe系粒子の両方の含有量を低減することが好ましい。同じ観点から、上記Fe系粒子の長さの平均値が4〜30μmの範囲内になるように上記金属組織を制御することがより好ましい。
なお、上記Fe系粒子の大きさは、例えば、鋳造時等に生じる析出物や晶出物の大きさの調整、あるいは、伸線加工工程における加工率の調整により制御することができる。
また、上記線材は、引張強さが700MPa以上であることが好ましい。従来のCu−Fe系合金は、上述したように加工性と強度とを両立させることが困難である。そのため、引張強さが700MPa以上となる高強度のCu−Fe系合金は、コネクタピンの素材として用いることがほとんど不可能であった。これに対し、上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、上記特定の化学成分と上記特定の金属組織とを共に備えることにより、黄銅材(引張強さ450〜500MPa)やコルソン系銅合金(引張強さ600〜650MPa)よりも高い強度を備え、かつ、加工性に優れたものとなる。それ故、上記線材は、より線径を細くしてもコネクタピンの素材として十分な強度を有し、ひいてはコネクタ全体の小型化、軽量化に有利なものとなる。
また、上記線材は、伸びが2%以上であることが好ましい。この場合には、上記線材は、延性が十分に高いものとなるため、曲げ加工を施す場合に、屈曲部分における割れの発生をより抑制し易くなる。その結果、上記線材は、より優れた加工性を有する。
また、上記線材は、導電率が30%IACS以上であることが好ましい。この場合には、上記線材は、黄銅材等の銅合金と同等の導電率を有するものとなる。そのため、上記線材は、コネクタピンに要求される導電率を満足でき、コネクタピンの素材として好適に用いることができる。
また、上記線材は、伸線方向に直交する断面が長方形状を呈していてもよい。従来の銅合金を用いた角線材は、コネクタピンに要求される剛性を形状的に確保するため、伸線方向に直交する断面が正方形状を呈するように成形する必要がある。これに対し、上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、従来の銅合金よりも高い強度を有するため、伸線方向に直交する断面を長方形状に成形しても、コネクタピンに要求される剛性を十分に確保することができる。
そして、上記断面が長方形状を呈するコネクタピンは、上記断面における長辺同士が互いに向かい合うようにして複数のコネクタピンを一列に配列することにより、正方形状の断面を有するコネクタピンに比べて配置スペースを省スペース化することができる。その結果、上記線材は、コネクタピンの配置スペースの省スペース化がより容易となり、ひいてはコネクタ全体の小型化、軽量化に有利なものとなる。
(実施例1)
上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材の実施例を、図1を用いて説明する。コネクタピン用Cu−Fe系合金線材(以下、適宜「線材」と省略することがある。)は、10質量%以上のFeを含有し、残部がCu及び不可避不純物よりなる化学成分を有しているまた、図1に示すように、線材は、Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有している。そして、Fe系粒子は、伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上である。以下、線材の作製方法及び詳細な構成について説明する。
上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材の実施例を、図1を用いて説明する。コネクタピン用Cu−Fe系合金線材(以下、適宜「線材」と省略することがある。)は、10質量%以上のFeを含有し、残部がCu及び不可避不純物よりなる化学成分を有しているまた、図1に示すように、線材は、Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有している。そして、Fe系粒子は、伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上である。以下、線材の作製方法及び詳細な構成について説明する。
<コネクタピン用Cu−Fe系合金線材の作製方法>
線材は、従来公知の銅合金線材と同様の工程により作製することができる。すなわち、線材は、化学成分を所望の比率に調整したビレットを鋳造した後、熱間押出や熱間引抜などの熱間加工、溶体化処理や時効処理等のための熱処理及び冷間加工を適宜組み合わせることにより作製することができる。また、線材の作製工程は、Cu系母相中に、略柱状のFe系粒子が伸線方向に連なって分布する金属組織を生じさせるために、最終工程(伸線加工工程)において、冷間引抜または冷間圧延等の冷間加工を行う必要がある。
線材は、従来公知の銅合金線材と同様の工程により作製することができる。すなわち、線材は、化学成分を所望の比率に調整したビレットを鋳造した後、熱間押出や熱間引抜などの熱間加工、溶体化処理や時効処理等のための熱処理及び冷間加工を適宜組み合わせることにより作製することができる。また、線材の作製工程は、Cu系母相中に、略柱状のFe系粒子が伸線方向に連なって分布する金属組織を生じさせるために、最終工程(伸線加工工程)において、冷間引抜または冷間圧延等の冷間加工を行う必要がある。
また、上記金属組織をより効率的に生じさせるためには、伸線加工工程に供する中間材に急冷処理を施すように作製工程が構成されていることが好ましい。
本例においては、Feを50質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる試験材1と、C2600−H材よりなる試験材2との2種類の試験材を作製した。なお、試験材1及び試験材2は、一辺が0.64mmの正方形状断面を有する角線である。
これらの試験材を用いて金属組織観察、機械特性及び導電率の評価を行った。以下に、その詳細について説明する。
<金属組織観察>
・Fe系粒子の形態観察
まず、試験材1を伸線方向に沿って切断し、露出した断面を研磨した。その後、当該断面を電子顕微鏡により観察した。これにより得られた断面の電子顕微鏡写真を図1に示す。図1より知られるように、試験材1に含まれるFe系粒子は、伸線方向に伸びた繊維状を呈していた。
・Fe系粒子の形態観察
まず、試験材1を伸線方向に沿って切断し、露出した断面を研磨した。その後、当該断面を電子顕微鏡により観察した。これにより得られた断面の電子顕微鏡写真を図1に示す。図1より知られるように、試験材1に含まれるFe系粒子は、伸線方向に伸びた繊維状を呈していた。
・Fe系粒子の寸法分布の評価
集束イオンビーム−走査型電子顕微鏡複合装置(FIB−SEM、FEI社製「Helion NanoLab600」)を用いて、FIB加工による断面形成とSEMによる断面観察とを繰り返し行い、多数のSEM像を取得した。次いで、得られた多数のSEM像を再構成し、金属組織の3次元像を作成した。そして、得られた3次元像に基づいて、個々のFe系粒子の上記幅及び上記長さを測定し、これらの平均値を算出した。
集束イオンビーム−走査型電子顕微鏡複合装置(FIB−SEM、FEI社製「Helion NanoLab600」)を用いて、FIB加工による断面形成とSEMによる断面観察とを繰り返し行い、多数のSEM像を取得した。次いで、得られた多数のSEM像を再構成し、金属組織の3次元像を作成した。そして、得られた3次元像に基づいて、個々のFe系粒子の上記幅及び上記長さを測定し、これらの平均値を算出した。
本例においては、縦10μm×横10μmの正方形状の視野を伸線方向に沿って0.2μm間隔で掘り下げることにより、直方体状の上記3次元像を作成した。そして、試験材1の3次元像中に存在する全てのFe系粒子について上記幅及び上記長さの測定を行った。その結果、3次元像中の全てのFe系粒子は、上記幅が0.1〜0.5μmの範囲内であり、かつ、上記長さが4〜30μmの範囲内であった。
<機械特性評価>
・引張試験
JIS Z 2241に準じた方法により、試験材1及び試験材2の引張試験を行った。
・引張試験
JIS Z 2241に準じた方法により、試験材1及び試験材2の引張試験を行った。
表1に、引張試験により得られた各試験材の引張強さ及び0.2%耐力を示す。
表1より知られるように、試験材1の引張強さは700MPa以上であり、従来の銅合金(C2600−H材)よりなる試験材2に比べて高い強度を示した。
・剛性評価
線材を用いて作製したコネクタピンの剛性を評価するため、以下の方法により剛性評価を行った。
線材を用いて作製したコネクタピンの剛性を評価するため、以下の方法により剛性評価を行った。
まず、試験材が水平となるようにして試験材の一方の端部をバイスにより固定し、他方の端部をバイスから突出させた。次いで、試験材の突出部分における、バイスから3mm離れた位置にプッシュプルゲージを上方から当接させた。その後、プッシュプルゲージを一定速度で鉛直下方に移動させ、試験材が変形した時点でプッシュプルゲージを停止させ、試験を完了した。以上の試験において、プッシュプルゲージに加わった最大荷重を測定した。なお、各々の試験材について10回の測定を行った。
10回の測定により得られた最大荷重の平均値、最小値及び最大値を表2に示す。
表2より知られるように、試験材1は、従来の銅合金(C2600−H材)よりなる試験材2に比べて最大荷重が大きくなった。
以上の機械特性評価の結果から、線材よりなるコネクタピンは、従来の銅合金よりなるコネクタピンに比べて高い剛性を有するものとなることがわかる。
<導電率測定>
4端子法を用いて試験材1及び試験材2の導電率を測定した。その結果、試験材1の導電率は30.9%IACSであり、試験材2の導電率は28%IACSであった。この結果から、線材よりなるコネクタピンは、従来の銅合金と同等以上の導電率を示すことがわかる。
4端子法を用いて試験材1及び試験材2の導電率を測定した。その結果、試験材1の導電率は30.9%IACSであり、試験材2の導電率は28%IACSであった。この結果から、線材よりなるコネクタピンは、従来の銅合金と同等以上の導電率を示すことがわかる。
次に、本例の作用効果を説明する。コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、10質量%以上のFeを含有し、残部がCu及び不可避不純物よりなる化学成分を有している。そのため、線材は、従来の銅合金と同等以下の材料コストを容易に実現できる。
また、線材は、Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有している。また、Fe系粒子の幅の平均値及び長さの平均値が上記特定の範囲内である。そのため、線材は、優れた曲げ加工性を示し、曲げ加工に伴う割れの発生を抑制することができる。
また、線材は、Cuを主成分とするCu系母相を有しているため、はんだ濡れ性を向上させるためのSnめっき処理が可能である。それ故、線材は、コネクタピンに要求される電気的特性を満足することができる。
また、線材は、特定の化学成分と、上述した金属組織との両方を具備していることにより、従来の銅合金よりも高い強度を有するものとなり易い。
また、線材は、引張強さが700MPa以上である。そのため、線材は、従来の銅合金よりなる線材よりも線径を細くしても、コネクタピンの素材として十分な強度を有し、ひいてはコネクタ全体の小型化、軽量化に有利なものとなる。
また、線材は、導電率が30%IACS以上である。そのため、線材は、コネクタピンに要求される導電率を満足でき、コネクタピンの素材として好適に用いることができる。
以上のように、コネクタピン用Cu−Fe系合金線材は、加工性と強度の双方に優れ、材料コストの安価なものとなる。
(実施例2)
本例は、上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材を用いて作製したコネクタピン11を有するコネクタ10の例である。図2及び図3に示すように、コネクタ10は、凹部41を備えたハウジング4と、ハウジング4を貫通して配置された複数のコネクタピン11とを有している。そして、コネクタピン11は、実施例1における試験材1に相当する線材より形成されている。
本例は、上記コネクタピン用Cu−Fe系合金線材を用いて作製したコネクタピン11を有するコネクタ10の例である。図2及び図3に示すように、コネクタ10は、凹部41を備えたハウジング4と、ハウジング4を貫通して配置された複数のコネクタピン11とを有している。そして、コネクタピン11は、実施例1における試験材1に相当する線材より形成されている。
ハウジング4は、図2及び図3に示すように略直方体状を呈しており、コネクタピン11が貫通する底壁部42と、底壁部42の外周縁部から立設された側壁部43とを有している。そして、底壁部42及び側壁部43により囲まれた空間が凹部41を構成している。
コネクタピン11は、図2及び図3に示すように略棒状を呈しており、その一端に端子接続部111を有し、他端にはんだ付け部112を有している。本例のコネクタピン11は、図3に示すように、凹部41内に配置された端子接続部111を基端として底壁部42へ向けて延設されている。また、コネクタピン11は、底壁部42を貫通してハウジング4の外方へ突出し、底壁部42とはんだ付け部112との間において90°曲げ加工が施され、コネクタピン11の長手方向と直角方向に屈曲される。すなわち、本例のコネクタピン11は、コネクタ10に配設された状態において、端子接続部111とはんだ付け部112とが互いに直角方向となるように屈曲されている。
かかる構成において、90°曲げ加工により形成される屈曲部113の表面を観察したところ、90°曲げ加工に伴う割れやクラックの発生は認められなかった。このように、コネクタピン用Cu−Fe系合金線材1は、コネクタピン11の素材として好適に用いることができる。
なお、本例においては、0.64mm角の正方形状断面を有する線材1を用いてコネクタピン11を形成したが、例えば図4〜図6に示すように、断面形状を種々の形状に変形することも可能である。コネクタピン11の断面形状としては、例えば、略円形、略長方形(図4参照)、台形(図5参照)、あるいは四角形状の断面において、互いに向かい合う端面の中央部を内側に窪ませた形状(図6参照)等が考えられる。
図4に示す断面形状が長方形状を呈するコネクタピン11(11b)は、伸線方向の断面における長辺114に対応する面同士が互いに向かい合うようにして複数のコネクタピン11bを一列に配列することにより、正方形状の断面を有するコネクタピン11に比べて配置スペースを省スペース化することができる。その結果、コネクタ10全体の小型化、軽量化をより容易に行うことができる。
10 コネクタ
11 コネクタピン
4 ハウジング
11 コネクタピン
4 ハウジング
Claims (6)
- 10質量%以上のFeを含有し、残部がCu及び不可避不純物よりなる化学成分を有し、
Feを主成分とし、伸線方向に伸びた繊維状を呈するFe系粒子がCuを主成分とするCu系母相に分布している金属組織を有しており、
上記Fe系粒子は、上記伸線方向と直角な方向に測定して得られる幅の平均値が0.5μm以下であり、かつ、上記伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が4μm以上であることを特徴とするコネクタピン用Cu−Fe系合金線材。 - 上記Fe系粒子は、上記伸線方向と平行な方向に測定して得られる長さの平均値が30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタピン用Cu−Fe系合金線材。
- 引張強さが700MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタピン用Cu−Fe系合金線材。
- 導電率が30%IACS以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタピン用Cu−Fe系合金線材。
- 上記伸線方向に直交する断面が長方形状を呈することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタピン用Cu−Fe系合金線材。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のコネクタピン用Cu−Fe系合金線材より構成されたコネクタピンを有するコネクタ。
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