JP2015133954A - 油脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】チョコレートのシーディングに利用できる程度に耐熱性の高められた油脂を提供することである。また、簡便なシーディング法を利用して調製されたテンパー型の融液状チョコレート生地でありながら、経時的な生地粘度の上昇が抑制されることにより、その取扱いが容易となる、チョコレート生地、及び、該生地を冷却固化することにより得られるチョコレートを提供することである。
【解決手段】3鎖長β型SOS結晶を含むSOSを10〜80質量%含有し、
前記3鎖長β型SOS結晶は、3.95〜4.05Åの面間隔に対応するX線回折ピークA、3.80〜3.95Åの面間隔に対応するX線回折ピークB、3.70〜3.80Åの面間隔に対応するX線回折ピークC、及び3.60〜3.70Åの面間隔に対応するX線回折ピークDを示し、
前記回折ピークDの回折強度に対する回折ピークCの回折強度の割合が0.35以下である、油脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、油脂及び該油脂を使用したチョコレートの製造方法に関する。
チョコレートは、カカオ豆を主原料とし、優れた香味および口どけを有する嗜好性の高い食品である。特に、テンパー型チョコレート(カカオ豆に含まれるココアバターのみを油脂分として含むチョコレート等)は、一般的なチョコレートとして知られている。このテンパー型チョコレートは、通常、チョコレート原料から得られた融液状のチョコレート生地を、テンパリング操作により処理した後、該処理されたチョコレート生地を冷却固化することにより得られる。テンパリング操作とは、融液状のチョコレート生地中のココアバターに、安定結晶の結晶核を生じさせるための操作である。テンパリング操作は、様々な結晶構造をとり得るココアバター結晶のうち安定な結晶がより多く生じるようにして、チョコレート生地を冷却固化させるために、必要な操作である。具体的なテンパリング操作としては、例えば、40〜50℃で融解しているチョコレート生地の品温を27〜28℃程度まで下げた後に、再度29〜31℃程度まで加温する操作が知られている。
テンパリング操作により生じる安定結晶の量が適正であれば、チョコレート生地の冷却時における固化速度が速くなる。また、チョコレート生地が固化する際に、十分な体積収縮が生じる。さらに、固化後のチョコレートが成形型から良好に剥離する(つまり、型抜けが良い)。ファットブルーム(チョコレート表面に白い油脂結晶が生成する現象を指す。以下、「ブルーム」という。)の発生も抑制される。得られたチョコレートは、優れた光沢を有するばかりでなく、チョコレートの、その保存中におけるブルーム耐性にも優れる。こうした適正なテンパリング状態は「プロパーテンパー」と呼ばれる。
他方、テンパリング操作により生じる安定結晶の量が少なすぎると、多くの場合、ブルームが発生する。また、得られたチョコレートの保存中における、当該チョコレートブルーム耐性が低下する。そのため、保存中のチョコレートに、短期間でブルームが発生してしまう可能性がある。こうしたテンパリング状態は「アンダーテンパー」と呼ばれる。また、テンパリング操作で生じる安定結晶の量が多すぎると、得られるチョコレートのキメが粗くなる。そのため、チョコレートの、その保存中における、ブルーム耐性が低下する可能性がある。こうしたテンパリング状態は「オーバーテンパー」と呼ばれる。チョコレートの製造においては、アンダーテンパーおよびオーバーテンパーを回避するため、テンパリング状態を適切に管理することが重要である。
テンパリング状態を管理する方法としては、テンパリング操作により処理されたチョコレート生地を冷却する過程での、チョコレート生地に含まれる油脂の結晶化による発熱量を経時的にパターン化する、テンパーメーターの使用が挙げられる。この方法では、テンパーメーターから得られるデータに基づき、テンパリング機の条件が調整されることにより、テンパリング状態が管理される。しかし、この方法では、測定操作が煩雑であり、時間もかかる。また、チョコレート生地の種類が変わるたびに、テンパーメーターでの測定をやり直し、その測定結果に基づいてテンパリング機の運転条件を再調整する必要がある。また、たとえ、テンパーメーターを用いて、プロパーテンパーの状態にあるチョコレート生地が調製されたとしても、その生地の調製後、経時的に生地に含まれる油脂の結晶化が進行することにより、生地の粘度が上昇する。そのため、生地のハンドリング性が低下するという、別の問題も生じうる。
一方で、複雑なテンパリング操作を簡略化等したチョコレートの成形法は、「シーディング法」と呼ばれる。このシーディング法では、チョコレートの粉末等をシーディング剤としてチョコレート生地に添加混合される。シーディング剤は、安定結晶の結晶核として機能する。そのため、テンパリングが促進される。シーディング剤としては、例えば、1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロール(SOS)、および、1,3−ジベヘニル−2−オレオイルグリセロール(BOB)の結晶等を添加する方法が開発されている(例えば、特開昭63−240745号公報、特開昭64−60330号公報、特開平2−406号公報、および特開平2−242639号公報)。
上記の結晶等を使用したシーディング法を用いれば、テンパリング操作を簡略化等できる。よって、この方法は利便性の高い方法であるといえる。しかし、テンパリング操作により処理すべきチョコレート生地は、通常約30℃に保持されている。よって、このような生地温度を有する生地を、上記の結晶等を使用したシーディング法により処理すると、チョコレート生地の粘度が経時的に上昇する。そのため、チョコレート生地のハンドリング性が低下してしまうことが知られている。
チョコレート生地の粘度上昇は、チョコレート生地の生地温度を上げることで低減できる。しかし、この場合、シーディング法において使用する結晶等に耐熱性が要求される。上記で例示した結晶のうち、BOB結晶(β2−3型結晶)の融点は53℃であり、SOS結晶(β2−3型結晶)の融点は41℃であることが知られている。つまり、BOB結晶の方がSOS結晶よりも耐熱性が高い。そのため、BOB結晶は、高い生地温度下で行うシーディング法において使用されるシーディング剤として好ましいと考えられてきた。例えば、特開昭63−240745号公報の記載によれば、36℃のチョコレート生地に、シーディング剤として、いずれも安定型結晶であるBOB結晶及びSOS結晶が、それぞれチョコレート生地の油脂分に対して5%添加されている。このとき、BOB結晶を添加した場合は、型抜けし易く、艶のあるチョコレートが得られた。これに対し、SOS結晶を添加した場合は、製造されたチョコレートの型抜けが困難であったことが記載されている。
しかしながら、上記BOB結晶は比較的高価な油脂である。しかも、チョコレート生地の油脂分に対して5%もの量を添加する必要があるため、実用化は困難であった。
従って、チョコレートのシーディングに利用できる程度に耐熱性の高められた油脂の開発が望まれていた。あわせて、簡便なシーディング法を利用して調製され、かつ、シーディング後でも安定した生地粘度を有する融液状チョコレート生地の開発が望まれていた。
特開昭63−240745号公報 特開昭64−60330号公報 特開平2−406号公報 特開平2−242639号公報
本発明の課題は、チョコレートのシーディングに利用できる程度に耐熱性の高められた油脂を提供することである。また、簡便なシーディング法を利用して調製されたテンパー型の融液状チョコレート生地でありながら、経時的な生地粘度の上昇が抑制されることにより、その取扱いが容易となる、チョコレート生地を提供することである。さらに、該生地を冷却固化することにより得られるチョコレートを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のX線回折パターンを示す、3鎖長β型1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロール(以下、SOSとも称する)結晶を含有する油脂をチョコレートのシーディングに利用した場合、耐熱性が大きく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の態様の1つは、3鎖長β型SOS結晶を含むSOSを10〜80質量%含有し、前記3鎖長β型SOS結晶は、3.95〜4.05Åの面間隔に対応するX線回折ピークA、3.80〜3.95Åの面間隔に対応するX線回折ピークB、3.70〜3.80Åの面間隔に対応するX線回折ピークC、及び3.60〜3.70Åの面間隔に対応するX線回折ピークDを示し、前記回折ピークDの回折強度に対する回折ピークCの回折強度の割合が0.35以下である、油脂である(ただし、SOSは1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロールを表す。)。
また、好ましい態様としては、さらに、XU2とU3とを合計で10〜70質量%含有する、油脂である(ただし、Xは炭素数が16以上の飽和脂肪酸、Uは炭素数18以上の不飽和脂肪酸、XU2はXに由来する1つのアシル基、および、Uに由来する2つのアシル基を含むトリアシルグリセロール、および、U3はUに由来するが3つのアシル基を含むトリアシルグリセロールを表す。)。
また、好ましい態様としては、上記油脂が、SOSを40質量%以上含有する油脂と、さらに、XU2とU3とを合計で40質量%以上含有する油脂とを含む、油脂である。
本発明のまた別の態様の1つは、以下の第1〜第4工程を含む、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂の製造方法である。
第1工程:SOSを10〜80質量%含有する油脂を調製する工程
第2工程:上記第1工程を経た油脂の油脂結晶を完全に融解する工程
第3工程:上記第2工程を経た油脂を、35℃以下に冷却することにより、油脂結晶を析出させる工程、および、
第4工程:上記第1工程を経た油脂の融点を基準として−2〜+4℃の温度範囲内に、上記第3工程を経た油脂を保持する工程
本発明のまた別の態様の1つは、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加する工程を含む、シーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法である。
また、好ましい態様としては、上記シーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する工程を含む、シーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法である。
本発明のまた別の態様の1つは、上記方法によりシーディング済み融液状チョコレート生地を製造する工程、および、このシーディング済み融液状チョコレート生地を冷却固化する工程を含む、チョコレートの製造方法である。
本発明のまた別の態様の1つは、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加したシーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する操作を含む、シーディング済み融液状チョコレート生地の粘度上昇抑制方法である。
本発明により、チョコレートのシーディングに利用できる程度に耐熱性の高められた油脂が提供される。また、簡便なシーディング法を利用して調製されたテンパー型の融液状チョコレート生地でありながら、経時的な生地粘度の上昇が抑制されることにより、その取扱いが容易となるチョコレート生地、及び、該生地を冷却固化することにより得られるチョコレートの製造方法が提供される。また、融液状チョコレート生地の粘度上昇を抑制する方法が提供される。
図1は、異なる生地温度を有するチョコレート生地における、添加工程後の生地粘度の経時変化を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
[本発明の油脂]
本発明の油脂は、3鎖長β型SOS結晶を含むSOSを10〜80質量%含有する油脂である。本発明の油脂のSOS含量は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは13〜50質量%、更に好ましくは15〜40質量%である。本発明において使用される3鎖長β型SOS結晶は、3つの分子鎖を含む鎖長構造を有する1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロール(SOS)の安定型結晶である。この安定型結晶はβ型の三斜晶系の副格子有する。SOS結晶型が3鎖長β型であるか否かは、X線回折(粉末法)の測定により得られる回折ピークに基づいて判定される。すなわち、油脂結晶の短面問隔を、2θが17〜26度となる範囲で、X線回折により測定する。このとき、4.5〜4.7Åの面間隔に対応する強い回折ピークが検出され、かつ、4.1〜4.3Åの面間隔及び3.8〜3.9Åの面間隔に対応する回折ピークが検出されない、あるいは、検出されたとしても微小な回折ピークである場合、その油脂結晶がβ型結晶であると判定される。また、油脂結晶の長面間隔を、2θが0〜8度の範囲で測定する。このとき、60〜65Åの面間隔に対応する強い回折ピークが検出される場合、その油脂結晶が3鎖長構造であると判定される。
本発明の油脂に含有される3鎖長β型SOS結晶の、20℃以下(0〜20℃)で実施されるX線回折によって得られる、4.1〜4.3Åの面間隔に対応する回折ピークG’の回折強度と、4.5〜4.7Åの面間隔に対応する回折ピークGの回折強度との強度比(ピークG’強度/ピークG強度)は、好ましくは0〜0.3、より好ましくは0〜0.2、さらに好ましくは0〜0.1である。X線回折ピークの強度比が上記範囲にあると、3鎖長β型SOS結晶がシーディング剤として有効に機能する。
本発明の油脂は、上記X線回折ピーク特性を有する3鎖長β型SOS結晶を含有する。さらに、この3鎖長β型SOS結晶は、以下のX線回折ピーク特性をも有する。すなわち、この結晶のX線回折測定では、3.95〜4.05Åの面間隔に対応する回折ピークA、3.80〜3.95Åの面間隔に対応する回折ピークB、3.70〜3.80Åの面間隔に対応する回折ピークC、及び3.60〜3.70Åの面間隔に対応する回折ピークDが観測される。そして、回折ピークCの回折強度の、回折ピークDの回折強度に対する割合(ピークCの強度/ピークDの強度)が0.35以下であるという特性を有する。この回折ピークCの回折ピークDに対する回折強度比は、0.33以下であることが好ましく、0.30以下であることがより好ましく、0.25以下であることが更に好ましい。本発明の油脂に含まれるSOS結晶のX線回折ピークが上記値の範囲であると、この油脂がチョコレートのシーディングに利用された場合、その高い耐熱性が示されるので、好ましい。なお、X線回折測定は、結晶が融解しない温度で行うのが適切である。具体的には、20℃以下(0〜20℃)で行うのが適切である。定常的には、10℃で行えばよい。また、X線回折の測定により得られる回折ピークの強度解析においては、油脂の非晶質部分がベースラインに及ぼす影響を除くための補正を行うのが適切である。例えば、Sonneveld−Visser法等による、バックグラウンド除去処理を行うのが適切である。
本発明の油脂の調製には、SOSの由来として、SOSを含有する油脂(以下、SOS含有油脂とも称する)を使用することが好ましい。SOS含有油脂としては、例えば、カカオ代用脂の原料油脂として使用される、サル脂、シア脂、モーラー脂、マンゴー核油、アランブラッキア脂、及びペンタデスマ脂等の油脂、並びに、それらを分別することにより得られる高融点部および中融点部が挙げられる。また、SOS含有油脂を得るために、既知の方法に基づいて、ハイオレイックヒマワリ油とステアリン酸エチルエステルとの混合物中で、1,3位選択性リパーゼ製剤を用いてエステル交換反応を行っても良い。得られた反応生成物から、蒸留により脂肪酸エチルエステルを除去することにより得られる油脂、及びそれを分別することにより得られる高融点部および中融点部は、本発明の油脂の調製に供される。SOS含有油脂のSOS含量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60〜90質量%である。また、SOS含有油脂の融点は30℃以上であることが好ましい。
本発明の油脂は、また、SOSの他に、XU2とU3とを合計で10〜70質量%含有することが好ましい。ここで、Xは炭素数が16以上の飽和脂肪酸、Uは炭素数18以上の不飽和脂肪酸、XU2は、Xに由来する1つのアシル基、および、Uに由来する2つのアシル基を含むトリアシルグリセロールを表す。同様に、U3は、Uに由来する3つのアシル基を含むトリアシルグリセロールを表す。Xは、好ましくは炭素数16〜22の飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数16〜18の飽和脂肪酸である。Uは、好ましくは炭素数18〜22の不飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数18の不飽和脂肪酸である。
本発明の油脂は、XU2とU3とを合計で、好ましくは15〜65質量%、より好ましくは25〜60質量%、さらに好ましくは30〜60質量%含有する。また、U3含量に対するXU2含量の質量比(XU2/U3)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2〜10である。本発明の油脂に含まれるXU2とU3との合計含量、及び含量比(XU2/U3)が上記範囲にあると、油脂中に3鎖長β型SOS結晶を好適に均一分散させることができる。
本発明の油脂の調製には、XU2とU3の由来として、XU2およびU3の含量が高い油脂(以下、XU2+U3含有油脂とも称する)を使用することが好ましい。XU2+U3含有油脂に含まれるXU2とU3との合計含量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55〜100質量%である。また、XU2+U3含有油脂の融点は、好ましくは30℃未満である。
上記XU2およびU3の含量が高い油脂(XU2+U3含有油脂)の好ましい例として、パーム系油脂が挙げられる。パーム系油脂とは、パーム油あるいはその分別油、及びそれらの加工油を意味する。具体的には、(1)パーム油の1段分別油である、パームオレイン及びパームステアリン、(2)パームオレインを分別することにより得られる分別油(2段分別油)である、パームオレイン(パームスーパーオレイン)及びパームミッドフラクション、(3)パームステアリンを分別することにより得られる分別油(2段分別油)である、パームオレイン(ソフトパーム)及びパームステアリン(ハードステアリン)、を挙げることができる。特に、好ましくは沃素価62〜72のパームスーパーオレイン、より好ましくは沃素価64〜70のパームスーパーオレインが使用される。
上記XU2+U3含有油脂としては、また、常温(25℃)で液状である植物油脂が好ましい。具体的には、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、胡麻油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、および亜麻仁油等、並びに、それら含有する複数混合油があげられる。さらに、これら単独の油および複数混合油の水素添加油、エステル交換油、および分別油等の加工油も挙げることができる。かかる液状植物油脂の中でも、5℃においても液状であって、かつ、透明性を有する油脂がより好ましい。
上記XU2+U3含有油脂としては、また、上記パーム系油脂と上記常温(25℃)で液状である植物油脂との混合油に由来するエステル交換油が好ましい。この混合油に含まれる上記パーム系油脂と液状植物油脂との混合比(質量比)は、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20である。エステル交換の方法は、特に制限されない。通常のエステル交換法を用いることができる。例えば、ナトリウムメトキシド等の合成触媒を使用した化学的エステル交換、およびリパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法を用いることができる。特に、1,3位選択性を有するリパーゼを触媒とした酵素的エステル交換が好ましい。
本発明の油脂のSOS含量は、10〜80質量%である。本発明の油脂としては、食用に適したものであれば、どのような油脂を使用しても差し支えない。本発明の油脂の好ましい実施の態様としては、上記SOS含有油脂と上記XU2+U3含有油脂とを使用して、そのSOS含量が10〜80質量%、XU2とU3との合計含量が10〜70質量%となるように、油脂を調製することが挙げられる。SOS含有油脂とXU2+U3含有油脂との割合が、質量比で、15:85〜95:5の範囲内となるように、両者を混合することが好ましい。20:80〜80:20の割合で混合することがより好ましく、30:70〜60:40の割合で混合することが更に好ましい。
[本発明の油脂の製造方法]
本発明の油脂を製造する好ましい実施の態様によれば、本発明の油脂は、少なくとも以下の第1〜第4工程を経て調製される。
上記第1工程は、10〜80質量%のSOSを含有する油脂を調製するための工程である。SOS含量が10〜80質量%であり、食用に適したものであれば、どのような油脂を使用して調製しても差し支えない。上記第1工程の好ましい態様は、すでに述べたとおりである。
上記第2工程は、第1工程を経た油脂に含まれる油脂結晶を完全に融解するための工程である。油脂結晶を完全に融解させる手段に特に制限はない。例えば、油脂を、好ましくは40〜100℃程度、より好ましくは50〜100℃程度に加熱することにより、油脂に含まれる結晶を完全に融解させてもよい。
上記第3工程は、第2工程を経た油脂を、35℃以下(好ましくは10〜30℃)に冷却することにより、油脂結晶を析出させる工程である。冷却には、ボテーター、コンビネーター、およびオンレーター等の公知の冷却装置を使用することができる。チョコレートのシーディングに使用する際の取扱いを容易にするためには、冷却中の油脂に混捏をかけることにより、油脂をペースト状あるいは可塑性状にすることが好ましくい。また、冷却混捏中、油脂に窒素等のガスを吹き込んでもよい。吹き込みに用いられるガスの量は、油脂に対して、好ましくは5〜40体積%、より好ましくは15〜40体積%である。この工程により、油脂に含まれるSOSが結晶として析出する。
上記第4工程は、第1工程を経た油脂の融点を基準として−2〜+4℃の温度範囲(保持温度範囲)に、第3工程を経た油脂の温度を保持する工程である。保持温度範囲は、第1工程により調製された油脂の融点を基準として−1〜+3℃の温度であることが好ましい。例えば、第1工程により調製された油脂の融点が32℃である場合、油脂は30〜36℃の温度範囲で保持される。第1工程により調製された油脂の融点(上昇融点)は、例えば、基準油脂分析法2.2.4.2−1996、及びAOCS法に準じて測定することができる。また、油脂の融点を測定しない場合は、油脂を30.5〜38℃(より好ましくは31〜36℃)で保持してもよい。第4工程において、油脂を上記所定の温度範囲に保持する時間は、好ましくは12時間以上、より好ましくは12〜48時間、さらに好ましくは15〜36時間である。
上記第4工程を経ることにより、油脂に含まれるSOS結晶を、3鎖長β型とすることができる。すなわち、このSOS結晶のX線回折測定では、3.95〜4.05Åの面間隔に対応する回折ピークA、3.80〜3.95Åの面間隔に対応する回折ピークB、3.70〜3.80Åの面間隔に対応する回折ピークC、及び3.60〜3.70Åの面間隔に対応する回折ピークDが観測される。そして、回折ピークCの回折強度の、回折ピークDの回折強度に対する割合が0.35以下である。
本発明の油脂には、本発明の効果を損なわない程度において、通常の食用油脂に使用される各種添加物を添加することができる。例えば、保存安定性向上、酸化安定性向上、熱安定性向上、および油脂の結晶調製等を目的として用いられる、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、レシチン等の乳化剤、トコフェロール、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、オリザノール、茶抽出物、ルチン等の抗酸化剤、および香料が挙げられる。各種添加物の添加量は、好ましくは油脂に対して3質量%以下である。各種添加物は、上記第2工程で、好ましくは融解した油脂に添加することが好ましい。
[本発明の油脂の用途]
本発明の油脂は、フィリング、バタークリーム、スプレッド、およびソフトチーズ等の、油脂の連続相を含む油性食品に使用される。油性食品の全油脂中に、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上本発明の油脂が含有される。これにより、飽和脂肪酸含量およびトランス型脂肪酸含量が低いにもかかわらず、得られる油性食品は、耐熱性に優れ、液体油の分離が見られず、優れた口どけを有する。
また、本発明の油脂は、チョコレートのシーディング剤として有用である。シーディング剤は、本発明の油脂の他、糖類、および蛋白類等の固形分を含有していても構わない。特に、本発明の油脂を可塑性状態もしくはペースト状態として使用するのが好ましい。その場合、糖類、蛋白類等の固形分の油脂に対する含量は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0質量%である。本発明の油脂を使用したシーディング剤に含まれる油脂の結晶径は、30℃にて20μm未満であることが好ましい。
[本発明のチョコレート生地及びチョコレートの製造方法]
本発明は、また、上記本発明の3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂がシーディング剤として使用されるチョコレート生地の製造方法を提供する。すなわち、融液状態にあるチョコレート生地に、本発明の3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加する工程(シーディング工程)を含む、シーディング剤含有融液状チョコレート生地の製造方法を提供する。
本発明の「チョコレート生地」とは、チョコレートの原材料の粉砕およびコンチングを経て得られた液状のチョコレートを指す。この液状チョコレート、すなわち「チョコレート生地」が、後の段階で完全に冷却固化されて、最終的に固形のチョコレートとなる。本発明における「融液状態」にあるチョコレート生地とは、融解した油脂を含むチョコレート生地を指す。チョコレート生地が融液状態にあるか否かは、該チョコレート生地を冷却固化することにより得られたチョコレートが容易に型抜けするか否かを確認することにより判定できる。上記得られたチョコレートが成形型から型抜けしない場合(具体的には、成形型からのチョコレートの離型率が70%未満である場合)、当該チョコレートの由来するチョコレート生地が融液状態にあったと判定される。なお、本発明における「チョコレート生地に含まれる油脂」とは、ココアバター等の油脂単体のみならず、カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等のチョコレート生地の原料中に含まれる油脂の全てを指す。例えば、一般的に、カカオマスの油脂(ココアバター)含量(含油率)は55質量%であり、ココアパウダーの油脂(ココアバター)含量(含油率)は11質量%であり、全脂粉乳の油脂(乳脂)含量(含油率)は25質量%であるから、チョコレート生地に含まれる油脂は、各原料のチョコレート生地に含まれる配合量(質量%)に含油率を掛け合わせたものを合計した値となる。
本発明におけるチョコレート生地に含まれる油脂のSOS含量は、好ましくは24〜70質量%である。チョコレート生地のSOS含量が上記範囲にあると、生地の冷却固化後に得られるチョコレートに耐熱性が付与される。のみならず、得られるチョコレートの口どけ及びブルーム耐性が良好となる。また、本発明の油脂をチョコレートのシーディング剤として高温域(32〜40℃)で使用する場合に、シーディング効果が得られ易くなるので好ましい。本発明におけるチョコレート生地に含まれる油脂のSOS含量は、より好ましくは26〜70質量%、更に好ましくは27〜60質量%、より更に好ましくは30〜55質量%、最も好ましくは34〜55質量%である。
本発明におけるチョコレート生地は、シーディングの効果を効率良く得るために、テンパー型であることが好ましい。テンパー型のチョコレート生地としては、チョコレート生地に含まれる油脂に対して40〜90質量%のXOX型トリアシルグリセロール(以下、「XOX」ともいう)を含むチョコレート生地が挙げられる。ここで、XOX型トリアシルグリセロールとは、グリセロール骨格の1,3位に飽和脂肪酸(X)に由来するアシル基が、2位にオレイン酸(O)に由来するアシル基が結合したトリアシルグリセロールである。飽和脂肪酸(X)の炭素数は、好ましくは16以上、より好ましくは16〜22、さらに好ましくは16〜18である。本発明におけるチョコレート生地に含まれる油脂のXOX含量は、より好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜90質量%である。
上記3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加する工程における、チョコレート生地の温度(生地温度)は32〜40℃であってもよい。この生地温度は、シーディング法における通常の生地温度(約30℃)より高い。生地温度を32〜40℃に保持することにより、チョコレート生地の粘度の増加を抑制でき、かつ、シーディング剤(本発明の油脂)に含まれる3鎖長β型SOS結晶以外の低融点の油脂成分が融解する。よって、3鎖長β型SOS結晶がチョコレート生地中に均一に分散され易くなる。その結果、安定したシーディング効果が得られうる。添加工程における上記生地温度は、好ましくは34〜39℃、より好ましくは35〜39℃、さらに好ましくは37〜39℃である。添加工程における上記生地温度が高い場合、シーディング剤の添加量を増やすことにより、効率的にシーディングを行うことができる。
上記3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加する工程では、融液状態にあるチョコレート生地に3鎖長β型SOS結晶が添加される。この添加されるSOS結晶の量は、チョコレート生地に含まれる油脂に対して、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜4.5質量%、さらに好ましくは0.2〜4質量%である。3鎖長β型SOS結晶の添加量が上記範囲であると、上記生地温度が高温(例えば、32〜40℃)であっても、また、このような高温下でチョコレート生地を保持しても、安定したシーディング効果が期待できる。3鎖長β型SOS結晶をチョコレート生地に添加した後に、攪拌等により3鎖長β型SOS結晶をチョコレート生地中に均一に分散させてもよい。
なお、本発明の油脂の3鎖長β型SOS結晶含量は、先に述べたX線回折測定によって得られる4.1〜4.3Åの面間隔に対応する回折ピークG’の回折強度と、4.5〜4.7Åの面間隔に対応する回折ピークGの回折強度との強度比(ピークG’強度/ピークG強度)が、0〜0.3であれば、油脂のSOS含量に等しいものと見なすことができる。
本発明におけるチョコレート生地の生地粘度の上昇を抑制するために、上記の添加工程後、融液状態にあるチョコレート生地を10分以上、32〜40℃の生地温度に保持してもよい。チョコレート生地に3鎖長β型SOS結晶を添加した後も、チョコレート生地を32〜40℃で10分以上保持することにより、チョコレート生地の粘度の上昇を効果的に抑制できる。3鎖長β型SOS結晶を添加した後のチョコレート生地を保持する温度は、好ましくは34〜39℃、より好ましくは35〜39℃、さらに好ましくは37〜39℃である。チョコレート生地に3鎖長β型SOS結晶を添加後、チョコレート生地を32〜40℃に保持する時間(保持時間)は、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1〜24時間、より更に好ましくは2〜12時間、最も好ましくは3〜8時間である。
保持時間が上記の範囲内にあると、添加工程後の生地粘度が、3鎖長β型SOS結晶添加時の生地粘度の1.15倍以下(より好ましくは1.1倍以下)に抑制されうる。よって、被覆(エンローバー)用途等におけるチョコレート生地の取り扱いが容易となる。本発明によれば、チョコレート生地に3鎖長β型SOS結晶を添加後、チョコレート生地を30分以上にわたって、3鎖長β型SOS結晶の添加時における生地粘度の1.2倍以下に抑制することもできる。なお、3鎖長β型SOS結晶の添加時の生地粘度と添加工程後の生地粘度とは、同一の温度条件で測定して比較する。
本発明におけるチョコレート生地の粘度は、例えば、回転型粘度計であるBH型粘度計を用いて、測定温度にてNo.6のローターを4rpmで回転させ、3回転後の読み取り数値に装置係数を乗じて求められる塑性粘度として計測できる。
本発明におけるチョコレートは、上記の3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂の添加工程後、チョコレート生地を冷却固化することにより得られる。本発明において「チョコレート」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)又は法規上の規定等により規定されているチョコレートに限定されない。すなわち、本発明におけるチョコレートは、食用油脂、糖類を主原料とする。主原料には、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、および乳化剤等が加えられる。このチョコレートは、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、および冷却工程等)の一部又は全部を経て製造される。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、およびミルクチョコレートのほか、ホワイトチョコレートおよびカラーチョコレート等も含む。
また、本発明におけるチョコレートに含まれる油脂分(上記の「チョコレート生地に含まれる油脂」の定義同様、チョコレートに含まれる全油脂の合計を指す)は、作業性および風味の点から25〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。
本発明におけるチョコレート生地及びチョコレートには、油脂のほかに、通常チョコレートに使用されるカカオマス、ココアパウダー、糖類、乳製品(乳固形類等)、乳化剤、香料、および色素等のほか、澱粉類、ガム類、熱凝固性蛋白、および各種粉末類等の食品改質材等が含まれていてもよい。チョコレート生地は、常法に従い、原材料の混合、ロールリファイニング等による微粒化、および必要に応じてコンチング処理等を行うことにより製造することができる。コンチング処理等における加熱により、油脂結晶が完全に融解した状態のチョコレート生地を本発明におけるチョコレート生地として使用できる。チョコレートの風味を損なわないように、コンチング処理における加熱は、40〜60℃で行うことが好ましい。なお、本発明におけるチョコレート生地は、水、果汁、各種洋酒、牛乳、濃縮乳、生クリーム等を含有する含水物であってもよい。また、このチョコレート生地の含水物は、O/W乳化型、W/O乳化型のいずれであってもよい。
本発明のチョコレートの製造方法における好ましい態様の1つとして、以下の方法が挙げられる。(1)油脂、カカオマス、糖類、乳製品(乳固形類等)、および乳化剤等を混合する。得られた混合物をロールリファイニングにより微細化、次いでコンチング処理することにより、32〜40℃の融液状態にあるチョコレート生地を調製する。(2)得られたチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する本発明の油脂(シーディング剤)を、3鎖長β型SOS結晶の正味量として融液状態のチョコレート生地に含まれる油脂に対して0.05〜5質量%添加(シーディング)する。シーディング後も、チョコレート生地を継続して32〜40℃で30分以上保持する。(3)得られたシーディング済み融液状チョコレート生地を、成形型へ注入する、又は、焼き菓子等に薄く被覆することにより、チョコレート生地を冷却固化することにより、チョコレートを得る。冷却固化の条件は、製造するチョコレートの形態にあわせて適宜調整することができる。また、冷却固化の工程において、必要に応じてチョコレート生地を含気させてもよい。
本発明におけるチョコレートは、型抜きされたチョコレートをそのまま食することができる。そのほかにも、製菓製パン製品、例えば、パン、ケーキ、洋菓子、焼き菓子、ドーナツ、シュー菓子用の、コーティング、フィリング、又は、生地へ混ぜ込むチップ材料として、本発明におけるチョコレートを使用することができる。そのため、本発明におけるチョコレートを利用することにより、多彩なチョコレート複合食品を得ることができる。
特に、本発明におけるチョコレート生地は、ココアバターがリッチなテンパー型チョコレート生地であったとしても、経時的な生地粘度の上昇を抑制することができる。したがって、本発明におけるチョコレート生地は、チョコレート風味豊かなチョコレート被覆菓子等のチョコレート被覆食品の製造に適している。
以下に、実施例を提示することにより、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、油脂の各トリアシルグリセロール含量、融点、X線回折測定、及び各温度におけるチョコレート生地の粘度の測定は、以下の方法により実施した。
(トリアシルグリセロール含量)
各トリアシルグリセロール含量を、ガスクロマトグラフィー法により測定した。また、トリアシルグリセロールの対称性を、銀イオンカラムクロマトグラフィー法により測定した。
(融点の測定)
油脂の融点を基準油脂分析法2.2.4.2−1996に従って測定した。
(X線回折測定)
油脂のX線回折測定は、X線回折装置UltimaIV(株式会社リガク社製)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96〜30.0°、および測定速度2°/分の条件で測定した。
(チョコレート生地の粘度)
チョコレート生地の粘度を、BH型粘度計(東機産業社製)を使用し、No.6のローターを4rpmで回転させ、3回転後の読み取り数値に装置係数(2500)を乗じて求めた。
[SOS含有油脂Aの調製]
既知の方法に従って、ハイオレイックヒマワリ油40質量部と、ステアリン酸エチルエステル60質量部とを混合し、得られた混合物に、1,3位選択性リパーゼ製剤を添加した。このリパーゼ製剤含有混合物中で、エステル交換反応を行った。反応生成物から、ろ過処理によりリパーゼ製剤を除去した。ろ過処理後の反応生成物を用いて薄膜蒸留を実施することにより、反応物から脂肪酸エチルを除去した。蒸留後に得られた蒸留残渣から、乾式分別により高融点部を除去した。得られた低融点部から、さらにアセトン分別により2段目の低融点部を除去することにより、中融点部を得た。得られた中融点部から常法によりアセトンを除去した。次いで、この中融点部を脱色処理および脱臭処理することにより、SOS含有油脂Aを得た。得られた油脂のSOS含量は、67.3質量%であった。
[XU2+U3含有油脂Aの調製]
既知の方法に従って、パーム油65質量部と菜種油35質量部との混合油中で、1,3位選択性リパーゼ製剤を用いてエステル交換反応を行った。得られた反応生成物から、リパーゼ製剤を除去することによりエステル交換油を得た。得られたエステル交換油を脱色処理および脱臭処理することにより、XU2+U3含有油脂Aを得た。得られた油脂のXU2含量は41.0質量%、U3含量は20.7質量%であった。
[3鎖長β型SOS結晶(シーディング剤)の調製−1]
以下の方法に従って、3鎖長β型SOS結晶を含む油脂を、シーディング剤A及びシーディング剤aとして調製した。得られたシーディング剤のX線回折測定結果、及び、3鎖長β型SOS結晶含量を表1にまとめた。
(シーディング剤A)
25質量部の SOS含有油脂Aと、75質量部のXU2+U3含有油脂Aとを混合した。得られた混合油を加温することにより、60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、この混合油に、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度16℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して15体積%であった。次いで、24時間、混合油の温度を30.5℃に維持することにより、ペースト状のシーディング剤Aを得た。
(シーディング剤a)
25質量部のSOS含有油脂Aと、75質量部のXU2+U3含有油脂Aとを混合した。得られた混合油を加温することにより、60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、この混合油に、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度16℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して15体積%であった。次いで、24時間、油脂混合物の温度を27℃に維持することにより、ペースト状のシーディング剤aを得た。
なお、25質量部のSOS含有油脂Aと、75質量部のXU2+U3含有油脂Aとを混合して得られる混合油の融点は、30.6℃であった。
Figure 2015133954
[チョコレート生地へのシーディング評価−1]
表2の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が35℃である融液状チョコレート生地A(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Aに、シーディング剤Aを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.168質量%)添加した。また、同様に調製された別の融液状チョコレート生地Aにシーディング剤aを油脂に対して10.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して1.68質量%)添加した。引き続き、これら生地Aを攪拌しながら、35℃にて保持した。シーディング剤を添加してから、60分後にチョコレート生地Aの一部を採取した。採取された生地Aでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、これら型に充填された生地Aを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化することにより、評価用試料を作製した(実施例1、比較例1)。また、シーディング剤を添加する代わりに、50℃に加温した融液状チョコレート生地Aを、通常のテンパリング機(小型テンパリング機(Pavioni社製、Minitemper)を使用して、30℃まで冷却し、次いで、1分間30℃に保持した後、32℃で3分間保持した。このようにして生地Aを冷却固化することにより、対照としての評価用試料を作製した(参考例1)。さらに、シーディング剤の添加もテンパリング操作も行わず、35℃の融液状チョコレート生地Aをそのまま冷却固化することにより、評価用試料を作製した(比較例2)。
上記で作製した比較例1、2、実施例1、及び参考例1のチョコレートにつき、以下の評価基準に従って、品質評価を行った。また、比較例1、2、及び実施例1では、チョコレート生地の採取時に、35℃にて生地粘度の測定を行った。これら評価結果を表3に示す。

(型抜け評価)
10℃での冷却固化後15分後の離型率(型から抜くことができたチョコレートの割合)
◎ 非常に良好 (離型率90%以上)
○ 良好 (離型率70%以上90%未満)
△ 一部剥がれない部分有り(離型率0%を超え70%未満)
× 不可 (離型率0%)

(固化表面の状態評価)
10℃での冷却固化後15分後に型抜けしたチョコレートの外観
◎ 非常に良好 (ブルームの発生が無く、優れた光沢を持つ)
○ 良好 (ブルームの発生は無いが、一部光沢に乏しい)
△ 不良 (ブルームの発生は無いが、光沢に乏しい)
× 不可 (ブルームが発生)

(ブルーム耐性評価)
型抜けしたチョコレートを20℃で1週間保管した。引き続き、同チョコレートを32℃にて12時間保管し、次いで20℃にて12時間保管する操作を1サイクルとして、この操作を繰り返した。各サイクルが経過する毎に、保管したチョコレートにおけるブルームの発生の有無を目視により観察した。チョコレートにブルームが最初に認められるまでに経過したサイクル数を参照して、そのチョコレートのブルーム耐性を以下の基準に基づき評価した。
◎ 非常に良好 (6サイクル以上)
○ 良好 (4〜5サイクル)
△ 不良 (2〜3サイクル)
× 不可 (0〜1サイクル)
Figure 2015133954
Figure 2015133954
*;シーディング後の保持時間(単位:分)
−;評価不能
+;比較例2の生地粘度を1としたときの倍数
表3の結果より、高温(35℃)でのシーディングにおいて、本発明の油脂であるシーディング剤Aは、従来のシーディング剤aの10倍程度のシーディング効果を発揮することが分る。
[SOS含有油脂Bの調製]
既知の方法に従って、40質量部のハイオレイックヒマワリ油と、60質量部のステアリン酸エチルエステルとを混合し、得られた混合物に、1,3位選択性リパーゼ製剤を添加した。このリパーゼ製剤含有混合物中で、エステル交換反応を行った。反応生成物から、ろ過処理によりリパーゼ製剤を除去した。ろ過処理後の反応生成物を用いて薄膜蒸留を実施することにより、反応物から脂肪酸エチルを除去した。蒸留後に得られた蒸留残渣から、乾式分別により高融点部を除去した。得られた低融点部から、さらにアセトン分別により2段目の低融点部を除去することにより、中融点部を得た。得られた中融点部から常法によりアセトンを除去した。次いで、この中融点部を脱色処理および脱臭処理することにより、SOS含有油脂Bを得た。得られた油脂のSOS含量は、74.8質量%であった。
[XU2+U3含有油脂Bの調製]
パームオレイン(沃素価65、XU2含量56.3質量%、U3含量7.8質量%)を、XU2+U3含有油脂Bとして用いた。
[XU2+U3含有油脂Cの調製]
ハイオレイックヒマワリ油(XU2含量21.5質量%、U3含量77.5質量%)を、XU2+U3含有油脂Cとして用いた。
[3鎖長β型SOS結晶(シーディング剤)の調製−2]
以下の方法に従って、3鎖長β型SOS結晶を含む油脂を、シーディング剤B及びシーディング剤bとして調製した。得られたシーディング剤のX線回折測定結果、及び、3鎖長β型SOS結晶含量を表4にまとめた。
(シーディング剤B)
50質量部のSOS含有油脂Bと、45質量部のXU2+U3含有油脂Bと、5質量部のXU2+U3含有油脂Cとを混合した。得られた混合油を加温することにより、60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度25℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して35体積%であった。次いで、24時間、混合油の温度を34℃に維持することにより、可塑性状のシーディング剤Bを得た。
(シーディング剤b)
50質量部のSOS含有油脂Bと、45質量部のXU2+U3含有油脂Bと、5質量部のXU2+U3含有油脂Cとを混合した。60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、この混合油に、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度25℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して35体積%であった。次いで、24時間、油脂混合物の温度を30℃に維持することにより、可塑性状のシーディング剤bを得た。
なお、50質量部のSOS含有油脂Bと、45質量部のXU2+U3含有油脂Bと、5質量部のXU2+U3含有油脂Cとを混合して得られる混合油の融点は、31.5℃であった。
Figure 2015133954
[チョコレート生地へのシーディング評価−2]
表2の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が36℃である融液状チョコレート生地A(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Aに、シーディング剤Bを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.374質量%)添加した。また、同様に調製された別の融液状チョコレート生地Aにシーディング剤bを油脂に対して5.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して1.87質量%)添加した。引き続き、これら生地Aを攪拌しながら、36℃にて保持した。シーディング剤を添加してから60分後にチョコレート生地Aの一部を採取した。採取された生地Aでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、これら型に充填された生地Aを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化することにより、評価用試料を作製した(実施例2、比較例3)。また、シーディング剤の添加もテンパリング操作も行わず、36℃の融液状チョコレート生地Aをそのまま冷却固化することにより評価用試料を作製した(比較例4)。
上記で作製した比較例3、4、及び実施例2のチョコレートにつき、[チョコレート生地へのシーディング評価−1]と同様の評価基準に従って、品質評価を行った。また、チョコレート生地の採取時に、36℃にて生地粘度の測定を行った。これら評価結果を表5に示す。なお、表5中、「*」はシーディング後の保持時間(単位:分)を示し、「−」は評価不能であったことを示し、さらに「+」は比較例4の生地粘度を1としたときの倍数を示す。
Figure 2015133954
*;シーディング後の保持時間(単位:分)
−;評価不能
+;比較例4の生地粘度を1としたときの倍数
表5の結果より、高温(36℃)でのシーディングにおいて、本発明の油脂であるシーディング剤Bは、従来のシーディング剤bの5倍程度のシーディング効果を発揮することが分る。
[チョコレート生地へのシーディング評価−3]
表2の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が30℃である融液状チョコレート生地A(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Aにシーディング剤bを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.374質量%)添加した。引き続き、この生地Aを攪拌しながら、30℃にて保持した。シーディング剤の添加前、および、シーディング剤の添加後10分、20分、30分、40分、50分の各時点においてチョコレート生地Aの一部を試料として採取した。採取した試料の各時点における粘度を測定した(比較例5〜10)。結果を表6に示す。なお、表6中、「*」はシーディング後の保持時間(単位:分)を示し、「−」は評価不能であったことを示し、さらに「+」は比較例5の生地粘度を1としたときの倍数を示す。
また、上記比較例5〜10のチョコレート生地の粘度変化(表6)を、上記[チョコレート生地へのシーディング評価−2]における実施例2のチョコレート生地の粘度変化(生地温度36℃、保持時間0分および60分)とともに、図1に示した。
図1によれば、従来のシーディング剤bを含む比較例5〜10のチョコレート生地をそのシーディング温度(30℃)にて保持しているあいだに、その生地粘度が著しく上昇していることが分かる。このことから、このチョコレート生地のシーディング処理後の取り扱いが困難となることが予想される。一方、本発明のシーディング剤Bを含む実施例2のチョコレート生地をそのシーディング温度(36℃)にて60分保持した後も、その生地粘度の著しい上昇は見られない。このことから、本発明のシーディング剤Bを含むチョコレート生地は、シーディング処理後も容易に取り扱えることが期待される。
Figure 2015133954
表6の結果より、通常のシーディング温度(30℃)では、シーディング効果に劣るシーディング剤bを使用したにもかかわらず、粘度が速やかに上昇することが分る。
[BOB含有油脂の調製]
既知の方法に従って、40質量部のハイオレイックヒマワリ油と、60質量部のベヘン酸エチルエステルとを混合し、得られた混合物に、1,3位選択性リパーゼ製剤を添加した。このリパーゼ製剤含有混合物中で、エステル交換反応を行った。反応生成物から、ろ過処理によりリパーゼ製剤を除去した。ろ過処理後の反応生成物を用いて薄膜蒸留を実施することにより、反応物から脂肪酸エチルを除去した。蒸留後に得られた蒸留残渣から、乾式分別により高融点部を除去した。得られた低融点部から、さらにアセトン分別により2段目の低融点部を除去することにより、中融点部を得た。得られた中融点部から常法によりアセトンを除去した。次いで、この中融点部を脱色脱臭処理することにより、BOB含有油脂を得た。得られた油脂のBOB含量は、65.0質量%であった。
[3鎖長β型BOB結晶(シーディング剤)の調製]
以下の方法に従って、3鎖長β型BOB結晶を含む油脂を、シーディング剤Cとして調製した。得られたシーディング剤CのX線回折測定結果、及び、3鎖長β型BOB結晶含量を表7にまとめた。
(シーディング剤C)
BOB含有油脂を加温することにより、同油脂に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、BOB含有油脂を20℃まで冷却することにより油脂を結晶化させた。その後、BOB含有油脂の温度を30℃にて12時間、次いで、50℃にて12時間に保持する操作を1調温サイクルとして、この操作を14調温サイクル実施した。その後、結晶化させたBOB含有油脂を−20℃で粉砕した。その後、粉砕された結晶化油脂を、篩にかけることにより、平均粒径が100μmの粒子を含む粉末状のシーディング剤Cを得た。得られたシーディング剤Cの結晶型をX線回折により確認した。その結果、シーディング剤Cに含まれる結晶は、3鎖長(70〜75Åに対応する回折ピーク)であり、β型(4.5〜4.7Åに対応する、非常に強い回折ピーク)であることが確認できた。
Figure 2015133954
[チョコレート生地へのシーディング評価−3]
表8の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が38℃である融液状チョコレート生地B(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Bに、シーディング剤Bを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として、融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.374質量%)添加した。引き続き、この生地Bを攪拌しながら、38℃にて保持した。シーディング剤を添加してから60分後にチョコレート生地Bの一部を採取した。採取された生地Bでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、この型に充填された生地Bを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化した(実施例3)。また、同様に、生地温度が38℃である融液状チョコレート生地Bにシーディング剤Cを対油1.0質量%(3鎖長β型BOB結晶として、融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.65質量%)添加した。引き続き、生地Bを攪拌しながら、38℃にて保持した。シーディング剤を添加してから60分後にチョコレート生地Bの一部を採取した。採取された生地Bでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、この型に充填された生地Bを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化することにより、評価用試料を作製した(比較例5)。また、シーディング剤の添加もテンパリング操作も行わず、38℃の融液状チョコレート生地Bをそのまま冷却固化することにより、評価用試料を作製した(比較例6)。
上記で作製した比較例5、6、及び実施例3のチョコレートにつき、[チョコレート生地へのシーディング評価−1]と同様の評価基準に従って、品質評価を行った。また、チョコレート生地の採取時に、38℃にて生地粘度の測定を行った。結果を表9に示す。なお、表9中、「*」はシーディング後の保持時間(単位:分)を示し、「−」は評価不能であったことを示し、「+」は比較例6の生地粘度を1としたときの倍数を示す。
Figure 2015133954
Figure 2015133954
*;シーディング後の保持時間(単位:分)
−;評価不能
+;比較例6の生地粘度を1としたときの倍数
表9の結果より、高温(38℃)でのシーディングにおいて、比較例5で用いられた、シーディング剤Cとしての3鎖長β型BOB結晶は、同温度で60分保持後にシーディング効果を示さなかった。一方、実施例3で用いられた、本発明の油脂であるシーディング剤Bは安定したシーディング効果を発揮した。
また、本発明に係る油脂は、以下の第1〜3の油脂であってもよい。
上記第1の油脂は、油脂中のSOS含量が10〜80質量%であって、X線回折の測定により、3.95〜4.05Åの面間隔に対応する回折ピークA、3.80〜3.95Åの面間隔に対応する回折ピークB、3.70〜3.80Åの面間隔に対応する回折ピークC及び3.60〜3.70Åの面間隔に対応する回折ピークDを有し、上記回折ピークCの回折強度が上記回折ピークDの回折強度に対して0.35以下である、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂である。(ただし、SOSは1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロールを表す)
上記第2の油脂は、上記3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂が、XU2とU3とを合計で10〜70質量%含有する、上記第1の3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂である。(ただし、Xは炭素数が16以上の飽和脂肪酸、Uは炭素数18以上の不飽和脂肪酸、XU2はXが1つとUが2つ結合したトリアシルグリセロール、U3はUが3つ結合したトリアシルグリセロールを表す)
上記第3の油脂は、上記3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂が、SOSを40質量%以上含有する油脂と、XU2とU3とを合計で40質量%以上含有する油脂とを含む、上記第1または第2の3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂である。
また、本発明に係る油脂の製造方法は、以下の第1〜第4工程を含む、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂の製造方法であってもよい。
第1工程:SOSを10〜80質量%含有する油脂を調製する工程。
第2工程:第1工程による油脂の油脂結晶を完全に融解する工程。
第3工程:第2工程による油脂を、35℃以下に冷却して油脂結晶を析出させる工程。
第4工程:第1工程による油脂の融点を基準として−2〜+4℃の温度に、第3の工程による油脂を保持する工程。
また、本発明に係るシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法は、以下の第1〜2のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法であってもよい。
上記第1のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法は、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加する工程を含む、シーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法である。
上記第2のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法は、上記シーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する工程を含む、上記第1のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法である。
また、本発明に係るチョコレートの製造方法は、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加したシーディング済み融液状チョコレート生地を冷却固化する、チョコレートの製造方法であってもよい。
また、本発明に係るシーディング済み融液状チョコレート生地の粘度上昇抑制方法は、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加したシーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する、シーディング済み融液状チョコレート生地の粘度上昇抑制方法であってもよい。

Claims (8)

  1. 3鎖長β型SOS結晶を含むSOSを10〜80質量%含有し、
    前記3鎖長β型SOS結晶は、3.95〜4.05Åの面間隔に対応するX線回折ピークA、3.80〜3.95Åの面間隔に対応するX線回折ピークB、3.70〜3.80Åの面間隔に対応するX線回折ピークC、及び3.60〜3.70Åの面間隔に対応するX線回折ピークDを示し、
    前記回折ピークDの回折強度に対する回折ピークCの回折強度の割合が0.35以下である、油脂。
    (ただし、SOSは1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロールを表す)
  2. さらに、XU2とU3とを合計で10〜70質量%含有する、請求項1に記載の油脂。
    (ただし、Xは炭素数が16以上の飽和脂肪酸、Uは炭素数18以上の不飽和脂肪酸、XU2はXに由来する1つのアシル基、および、Uに由来する2つのアシル基を含むトリアシルグリセロール、および、U3はUに由来するが3つのアシル基を含むトリアシルグリセロールを表す)
  3. SOSを40質量%以上含有する油脂と、さらに、XU2とU3とを合計で40質量%以上含有する油脂とを含む、請求項2に記載の油脂。
  4. 以下の第1〜第4工程を含む、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂の製造方法。
    第1工程:SOSを10〜80質量%含有する油脂を調製する工程、
    第2工程:前記第1工程を経た油脂の油脂結晶を完全に融解する工程、
    第3工程:前記第2工程を経た油脂を、35℃以下に冷却することにより、油脂結晶を析出させる工程、および、
    第4工程:前記第1工程を経た油脂の融点を基準として−2〜+4℃の温度範囲内に、前記第3工程を経た油脂を保持する工程
  5. 融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加する工程を含む、シーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法。
  6. 前記シーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する工程を含む、請求項5に記載のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載の方法によりシーディング済み融液状チョコレート生地を製造する工程、および、このシーディング済み融液状チョコレート生地を冷却固化する工程を含む、チョコレートの製造方法。
  8. 融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加したシーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する操作を含む、シーディング済み融液状チョコレート生地の粘度上昇抑制方法。
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