JP2733286B2 - チョコレート類の固化助剤、並びに該固化助剤を含有するチョコレート類及びその製造法 - Google Patents

チョコレート類の固化助剤、並びに該固化助剤を含有するチョコレート類及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、チョコレート類の固化助剤、並びに該固化
助剤を含有するチョコレート類及びその製造法に関す
る。本発明のチョコレート類の固化助剤によれば、より
容易に良質のチョコレート類を製造することができる。
本発明のチョコレート類の固化助剤は、一般的なチョコ
レートの他に、チョコレートと同様の油脂組成をもつク
リーム類等にも適用できる。本明細書では、以下これら
のクリーム類を含めてチョコレート類という。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
従来のチョコレート類の製造方法において特に固化成
型する際には、テンパリングという手段が用いられる。
このテンパリングプロセスは、チョコレートの温度をコ
ントロールすることにより、適切な質と量の油脂結晶核
を発生させるプロセスである。このテンパリングプロセ
スの後、モウルド、エンロービング等を行い、冷却固化
して、チョコレートを製造する方法が一般的である。
また、テンパリングプロセスの別の方法としては、固
型のカカオバター、固型のカカオバター類似油脂又は固
型のチョコレートの粉砕物等をシーディング剤として、
溶解されたチョコレートに添加、混合する方法、つま
り、シーディング−テンパリング方法もよく知られてい
る。
温度のコントロールによるテンパリングプロセスで
は、温度のコントロールが非常に困難で、時々、テンパ
リング不良の製品ができる場合がある。また、温度を正
確にコントロールするためには、特別の装置、つまり、
テンパリングマシンが必要となる。
一方、シーディング−テンパリング方法は、厳密な温
度のコントロールがそれほど必要ではなく、より簡単な
装置でテンパリングできる利点がある。しかしながら、
シーディング剤を同量添加しても、テンパリングの程度
にバラツキがあるという欠点があったり、細まく粉砕さ
れていない粒子がチョコレート中に混入し、チョコレー
トの食感を低減させるという欠点がある。また、微細な
粒子を形成するためには、凍結粉砕等のコストの高いプ
ロセスが必要となる。
また、特開昭63−240745号公報には、テンパリング改
善のためのチョコレート添加剤が提案されている。しか
しながら、上記公報に記載のチョコレート添加剤は、そ
れ自体粉末状粒子からなる添加剤で、用いられる分散媒
も、チョコレート生地成分の粉末、即ち、糖類、粉乳、
カカオマス、ココアパウダー、カカオ脂、ハードバタ
ー、乳化剤等であって、基本的に粉末状を呈するもので
あり、チョコレートに対する添加量も最低0.1%を要す
る。
従って、本発明の目的は、上述のような従来の粉末状
添加剤とは基本的に異なるタイプの添加剤で、チョコレ
ートに対する添加量が少量でもテンパリングプロセスを
改善でき、良質のチョコレート類を製造できるチョコレ
ート類の固化助剤を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結
果、液状油中に特定の油脂結晶を分散させた油脂結晶分
散体をチョコレート類の固化助剤、つまりシーディング
剤として用いることにより、従来のシーディング−テン
パリングの欠点を解消しうること、即ち、テンパリング
のバラツキがなくなり、また、チョコレートの食感を低
減させることもなく、且つ少量の添加でもテンパリング
プロセスを改善でき、良質のチョコレート類を製造でき
ること、しかも、上記油脂結晶分散体は安価に製造でき
ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、液状油
中に主に対称型トリグリセリドからなる油脂結晶を分散
させた油脂結晶分散体からなることを特徴とするチョコ
レート類の固化助剤を提供するものである。
また、本発明は、上記の本発明の固化助剤を含有する
チョコレート類を提供するものである。
また、本発明は、上記の本発明のチョコレート類の製
造法として、上記の本発明の固化助剤を、溶解されたチ
ョコレート類に添加し、該チョコレート類を固化させる
ことを特徴とするチョコレート類の製造法を提供するも
のである。
以下、本発明のチョコレート類の固化助剤について詳
述する。
本発明で用いられる好ましい対称型トリグリセリド
は、1−位置及び3−位置に飽和脂肪酸(主として炭素
鎖C16〜C24)基を有し、2−位置に不飽和脂肪酸(主と
してオレイン酸、リノール酸など)基を有するトリグリ
セリドである。上記対称型トリグリセリドは、天然油脂
から精製分別等により、あるいは選択的エステル交換等
により製造することができる。
本発明で用いられる主に対称型トリグリセリドからな
る油脂結晶は、該結晶中に上記対称型トリグリセリドが
50重量%以上、好ましくは70重量%以上含むものが適当
である。
本発明の固化助剤を構成する油脂結晶分散体は、上記
の主に対称型トリグリセリドからなる油脂結晶を液状油
に添加し、ホモミキサー等で単に撹拌、分散させること
により、製造することができる。
また、上記油脂結晶分散体は、主に対称型トリグリセ
リドからなる油脂を液状油に溶解し、これを冷却するこ
とによっても得ることできる。
上記液状油としては、常温で液状を呈する食用油脂で
あれば全て利用することができ、例えば、大豆油、ナタ
ネ油、ハイオレサフラワー油、サフラワー油、ハイオレ
サンフラワー油又は分別液状油(軟部油)などを用いる
ことができる。
また、上記液状油に溶解させる上記の主に対称型トリ
グリセリドからなる油脂としては、シア脂、シア中部
油、サル脂、サル分別脂、カカオ脂、コクム脂、あるい
は酵素処理によって対称型トリグリセリドを生成させた
各種油脂などを用いることができる。
このようにして得られる油脂結晶分散体からなる本発
明の固化助剤は、主に対称型トリグリセリドからなる油
脂結晶が3〜50重量%、好ましくは5〜20重量%で、液
状油が97〜50重量%、好ましくは95〜80重量%から構成
されていることが好ましい。
本発明の固化助剤は、通常テンパー型チョコレートに
配合されるものであるが、その他非テンパー型チョコレ
ートに配合することを排除するものではない。
本発明の固化助剤は、チョコレート類の種類や製造目
的に応じて適宜量チョコレート類に配合することができ
るが、一般的には、チョコレート類に対して、固化助剤
中の主に対称型トリグリセリドからなる油脂結晶が0.00
5〜10重量%、好ましくは0.01〜3重量%となるように
配合することにより、良質のチョコレート類を得ること
ができる。
また、本発明のチョコレート類は、上述の本発明の固
化助剤を好ましくは上記範囲の量を配合されたもので、
例えば、上述の油脂結晶分散体からなる本発明の固化助
剤を、溶解されたチョコレート類に添加混合し、これを
冷却固化させることにより製造することができる。
〔作用〕
本発明のチョコレート類の固化助剤は、従来公知のシ
ーディング剤と比較して、より細かい油脂結晶としてチ
ョコレート類に添加でき且つ液状油に油脂結晶が分散し
ているため、チョコレート類への分散性が非常に良くな
るものと想定される。
〔実施例〕
以下に実施例をあげ、本発明を更に詳細に説明する。
実施例1 ステアリン酸と高オレイン酸ヒマワリ油をリパーゼを
用いてグリセリドの1,3−位選択的なエステル交換反応
を行い、この反応物より脂肪酸を除去し、更に溶剤分別
して中融点部を得た。
この中融点部のトリグリセリド組成は、HPLC分析によ
れば、SOO6.4%(重量%、以下同じ)、POS6.0%、SOS7
6.8%、その他10.8%であった。上記中融点部を常法に
より漂白及び脱臭した。脱臭した中融点部を20℃,12時
間、32℃,12時間を1サイクルとする温度サイクルにて3
0サイクルにかけた。次に、この中融点部1部(重量
部、以下同じ)と高オレイン酸ヒマワリ油9部を混合
し、ホモミキサーにて撹拌し、該中融点部の細かい結晶
が分散した油脂結晶分散体からなる本発明の固化助剤を
得た。
実施例2 実施例1で用いた脱臭した中融点部1部と高オレイン
酸ヒマワリ油9部を混合溶解した後冷却し、微細な結晶
を分散させた油脂結晶分散体を得た。次いで、この油脂
結晶分散体を、20℃,12時間、30℃,12時間のサイクルで
5サイクル調温処理し、安定化させた後、更にホモミキ
サーにかけ、本発明の固化助剤を得た。
実施例3〜7 砂糖45部、全脂粉乳15部、カカオマス20部、カカオ脂
20部及びレシチン0.4部の混合物を常法通りロール掛
け、コンチングしてチョコレートペーストを製造した。
このチョコレートペーストを完全溶解状態から33℃ま
で冷却し、これに実施例1で得られた固化助剤をそれぞ
れ、0.1部(実施例3)、0.2部(実施例4)、0.5部
(実施例5)、1部(実施例6)及び5部(実施例7)
添加混合した。その後、すぐに型流し、冷却、剥離し、
板チョコレートをそれぞれ調製した。得られたチョコレ
ートは、いずれも品質の良好なチョコレートであった。
また、得られたチョコレートは何れも、その後の経日
変化のテストでもブルームの発生は認められず、本発明
の固化助剤がチョコレートの固化助剤として優れている
ことが判る。
尚、上記の実施例で、固化助剤をそれぞれ0.1部、0.2
部、0.5部、1部及び5部添加したが、中融点部の添加
量はそれぞれ、0.01部、0.02部、0.05部、0.1部及び0.5
部に相当する。
実施例8〜12 実施例3で用いたチョコレートペーストを完全溶解状
態から33℃まで冷却し、これに実施例2で得られた本発
明の固化助剤をそれぞれ、0.05部(実施例8)、0.1部
(実施例9)、0.2部(実施例10)、0.5部(実施例11)
及び1部(実施例12)を添加混合した。その後、すぐに
型流し、冷却、剥離し、板チョコレートをそれぞれ調製
した。得られたチョコレートはいずれも品質の良好なチ
ョコレートであった。
また、得られたチョコレートはいずれも、その後の経
日変化のテストでもブルームの発生は認められなかっ
た。
実施例13 実施例1と同様に、ベヘン酸と高オレイン酸ヒマワリ
油を原料として、エステル交換反応、脂肪酸除去、溶剤
分別して中融点部を得た。この中融点部のトリグリセリ
ド組成は、HPLC分析によれば、BOB75.0%、BOO5.8%、S
OS2.9%、SOB2.3%、その他14%であった。上記中融点
部を常法により漂白及び脱臭した。脱臭した中融点部1
部と高オレイン酸サフラワー油9部を混合、溶解後、急
冷し微細な結晶を生成分散させ、次に、20℃,12時間、3
6℃,12時間のサイクルで20サイクル調温処理した後、更
に、ホモミキサーにかけ、均一な油脂結晶分散体からな
る本発明の固化助剤を得た。
実施例14〜17 実施例3で用いたチョコレートペーストを完全溶解状
態から33℃まで冷却し、これに実施例13で得られた本発
明の固化助剤をそれぞれ、0.1部(実施例14)、0.2部
(実施例15)、0.5部(実施例16)及び1部(実施例1
7)添加混合した。その後、すぐに型流し、冷却、剥離
し、板チョコレートをそれぞれ調製した。得られたチョ
コレートはいずれも品質の良好なチョコレートであっ
た。
また、得られたチョコレートはいずれも、その後の経
日変化のテストでもブルームの発生は認められなかっ
た。
〔発明の効果〕
本発明のチョコレート類の固化助剤によれば、従来の
シーディング剤に比べ、添加量が少量(従来のシーディ
ング剤では数%程度の添加が必要であったが、本発明の
固化助剤は数100ppm程度、あるいはそれ以下の添加量で
も良い)でもテンパリングプロセスを改善でき、良質の
チョコレート類を製造できる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液状油中に主に対称型トリグリセリドから
    なる油脂結晶を分散させた油脂結晶分散体からなること
    を特徴とするチョコレート類の固化助剤。
  2. 【請求項2】請求項(1)記載の固化助剤を含有するこ
    とを特徴とするチョコレート類。
  3. 【請求項3】請求項(1)記載の固化助剤を、溶解され
    たチョコレート類に添加し、該チョコレート類を固化さ
    せることを特徴とするチョコレート類の製造法。
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