JP7339108B2 - フレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法 - Google Patents

フレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法、及び該製造方法により得られたフレーク状又は粉末状チョコレートを使用した食品に関するものである。
これまで、粉末チョコレートは、凍結粉砕法、スプレークーリング法、スプレードライ法、含気チョコレートに物理的な力を加えてほぐす等の方法により製造されていた(特許文献1参照)。
一方で、粉末チョコレートは、保存時に固結してしまうという問題があり、かかる問題を解決するために、チョコレート生地に特定の乳化剤、及び水を加えて乳化物とした後、90℃以下で乾燥・粉砕することにより、カカオバターの融点以上の温度でも油脂のにじみ出しによる固結が起きず、保存性に優れた可溶性粉末チョコレートの製造方法が開発されてきた(特許文献2参照)。
また、特定のデキストリン粉末を、転動させながら10~-2℃に冷却し、融解したチョコレート原料の噴霧粒子に被覆させることにより、固結や油のにじみがなく、27℃以上の保管条件でも粉末としての流動性を有する粉末チョコレートが開発されてきた(特許文献3参照)。
特開平6-62744号公報 特開平8-205773号公報 特開2003-47407号公報
本発明は、フレーク状又は粉末状チョコレートの保存時にブロッキングにより生じる塊を、容易に崩壊しやすい塊にすること、又は容易に崩壊しにくい塊であっても塊の発生量を全体量の約3割未満に抑えることにより、計量、小分け、充填等のハンドリング性の点で問題がないフレーク状又は粉末状チョコレートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行った結果、フレーク状又は粉末状チョコレートの原料に、特定の成分Aを使用し、成分Aが融解しない温度で、混合工程(ニーディング)、及び微細化工程(リファイニング)を行うことにより、保存時にブロッキングにより生じる塊の崩壊性が高い(容易に崩壊する)ため、容易に崩壊しない塊を生じるフレーク状又は粉末状チョコレートよりもハンドリング性が良好であることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、以下の態様を含むものである。
〔1〕フレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法において、チョコレート原料を、以下の成分Aが融解しない温度で混合することにより、成分Aを固体の状態で含有するチョコレート原料生地を作る混合工程を有し、得られた生地を、成分Aが融解しない温度で微細化処理する微細化工程を有し、該チョコレート原料中の該成分Aの含量が0.4~7質量%であることを特徴とするフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
成分A:次の粉末油脂組成物。
粉末油脂組成物:グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、該炭素数xは16~22から選択される整数であり、該油脂成分がβ型油脂を含み、該粉末油脂組成物の粒子が板状形状である粉末油脂組成物。
〔2〕前記XXX型トリグリセリドが、前記油脂成分の全質量を100質量%とした場合、50質量%以上含有することを特徴とする〔1〕に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
〔3〕前記粉末油脂組成物の炭素数xが、16~18から選択され選択される整数であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
〔4〕前記成分Aが融解しない温度が、30℃~60℃であることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
〔5〕前記フレーク状又は粉末状チョコレートが、飲料用であることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれか1に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれか1に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートを使用したチョコレート含有食品の製造方法。
〔7〕〔1〕~〔5〕のいずれか1に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートと、水及び/又は牛乳とを混合するチョコレート飲料の製造方法。

本発明によれば、フレーク状又は粉末状チョコレート保存時に、ブロッキングにより生じる塊が、容易に崩壊する塊であるため、又は容易に崩壊しにくい塊であっても塊の発生量が全体量の約3割未満であるため、計量、小分け、充填等のハンドリング性の点で問題がない。
芯物質表面に粉末油脂組成物を付着させたとき顕微鏡写真を模式的に示した図である。図中のAは芯物質で、Bは粉末油脂組成物で、線分abの長さ(芯物質表面に付着した粒子の付着面からの垂直方向の長さ)が、この粉末油脂組成物の厚さの値である。 本発明の製造例1の粉末油脂組成物の顕微鏡写真(100倍)である。 本発明の製造例1の粉用粉末油脂組成物の顕微鏡写真(300倍)である。 本発明の製造例1の粉末油脂組成物をガラスビーズ表面上に付着させたときの顕微鏡写真(1500倍)で、粒子の厚さとして測定した部分を直線で示している(2か所)。 市販の粉末油脂の顕微鏡写真(100倍)である。 市販の粉末油脂の顕微鏡写真(300倍)である。 粉砕前の粉末油脂組成物(製造例4)の外観の写真である。 粉砕前の粉末油脂組成物(製造例4)の電子顕微鏡写真(200倍)である。 粉末油脂組成物(製造例4)の電子顕微鏡写真(1)(1000倍)である。 粉末油脂組成物(製造例4)の電子顕微鏡写真(2)(1000倍)である。
まず、本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法について説明をする。
本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートは、チョコレート原料に、後述する成分Aを特定量使用し、成分Aが融解しない温度で混合することにより、特定量の成分Aを固体の状態で含有するチョコレート原料生地を作る混合工程(ニーディング)を有し、得られた生地を、成分Aが融解しない温度で微細化する微細化工程(リファイニング)を有し、精錬工程(コンチング)を有さない、という条件を満たせば、それ以外は従来公知のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法で製造することができる。
例えば、本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートは、カカオ分、砂糖、乳化剤、砂糖等、及び後述する成分Aを原料とし、成分Aが融解しない温度で混合する混合工程を経て、成分Aが融解しない温度で微細化する微細化工程を経て製造方法することができる。微細化工程の後、冷却工程を経ても良い。また、精錬工程は経ずに製造することが好ましい。
混合工程で、成分Aを固体の状態で含有するチョコレート原料生地を製造するために、混合時の温度は、成分Aが融解しない温度、例えば、35℃~55℃であることが好ましく、40℃~55℃であることがより好ましく、40℃~50℃であることが最も好ましい。
また、微粒化処理を行っている間、生地中の成分Aを溶解させず、固体の状態で存在させるために、原料生地の温度が、成分Aが融解しない温度、例えば、30℃~60℃であることが好ましく、40℃~55℃であることがより好ましく、40℃~50℃であることが最も好ましい。
次に、成分Aについて説明をする。
成分Aは、融点50℃以上の油脂、及び/又は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、該炭素数xは16~22から選択される整数であり、該油脂成分がβ型油脂を含み、該粉末油脂組成物の粒子が板状形状の粉末油脂組成物である。
成分Aとして、融点50℃以上の油脂のみを使用しても良く、上述した粉末油脂組成物のみを使用しても良く、その両方を使用しても良いが、フレーク状又は粉末状チョコレートの保存時に、ブロッキングにより生じる塊の量がより少ない粉末油脂組成物を使用するのが好ましい。
次に、成分Aの融点50℃以上の油脂について説明をする。
油脂Aの融点50℃以上の油脂は、融点が50℃~70℃であることが好ましく、50℃~65℃であることがより好ましく、50℃~60℃であることがさらにより好ましい。
融点50℃以上の油脂として、例えば、パーム極度硬化油、大豆極度硬化油、菜種極度硬化油、ハイエルシン菜種極度硬化油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
融点50℃以上の油脂は、市販品を使用することができ、市販品として、例えば、横関油脂工業株式会社製のフレーク状の菜種極度硬化油、理研ビタミン株式会社製の粉末油脂(商品名「スプレーファットNR100」)等が挙げられる。
融点は、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
次に、成分Aの粉末油脂組成物について説明をする。
粉末油脂組成物は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、該炭素数xは16~22から選択される整数であり、該油脂成分がβ型油脂を含み、該粉末油脂組成物の粒子が板状形状であることを特徴とする粉末油脂組成物である。
また、粉末油脂組成物の融点は、融点50℃以上であることが好ましく、50℃~85℃であることが好ましく、55℃~75℃であることがより好ましく、60℃~70℃であることがさらにより好ましい。
成分Aの粉末油脂組成物には、国際公開第2017/051910号に記載された粉末油脂組成物を使用することができる。
以下、成分Aの粉末油脂組成物について詳細に説明をする。
<油脂成分>
粉末油脂組成物は、油脂成分を含有する。当該油脂成分は、少なくともXXX型トリグリセリドを含み、任意にその他のトリグリセリドを含む。
上記油脂成分はβ型油脂を含む。ここで、β型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ型の結晶のみからなる油脂である。その他の結晶多形の油脂としては、β’型油脂及びα型油脂があり、β’型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ’型の結晶のみからなる油脂である。α型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるα型の結晶のみからなる油脂である。油脂の結晶には、同一組成でありながら、異なる副格子構造(結晶構造)を持つものがあり、結晶多形と呼ばれている。代表的には、六方晶型、斜方晶垂直型及び三斜晶平行型があり、それぞれα型、β’型及びβ型と呼ばれている。また、各多形の融点はα、β’、βの順に融点が高くなり、各多形の融点は、炭素数xの飽和脂肪酸残基Xの種類により異なるので、以下、表1にそれぞれ、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン、トリアラキジン、トリベヘニンである場合の各多形の融点(℃)を示す。なお、表1は、Nissim Garti et al.、”Crystallization and Polymorphism of Fats and Fatty Acids”、Marcel Dekker Inc.、1988、pp.32-33に基づいて作成した。そして、表1の作成にあたり、融点の温度(℃)は小数点第1位を四捨五入した。また、油脂の組成とその各多形の融点がわかれば、少なくとも当該油脂中にβ型油脂が存在するか否かを検出することができる。
Figure 0007339108000001
これらの多形を同定する一般的な手法は、X線回折法があり、回折条件は下記のブラッグの式によって与えられる。
2dsinθ=nλ(n=1,2,3・・・)
この式を満たす位置に回折ピークが現れる。ここでdは格子定数、θは回折(入射)角、λはX線の波長、nは自然数である。短面間隔に対応する回折ピークの2θ=16~27°からは、結晶中の側面のパッキング(副格子)に関する情報が得られ、多形の同定を行なうことができる。特にトリアシルグリセロールの場合、2θ=19、23、24°(4.6Å付近、3.9Å付近、3.8Å付近)にβ型の特徴的ピークが、21°(4.2Å)付近にα型の特徴的なピークが出現する。なお、X線回折測定は、例えば、20℃に維持したX線回折装置((株)リガク、試料水平型X線回折装置UItimaIV)を用いて測定される。X線の光源としてはCuKα線(1.54Å)が最もよく利用される。
さらに、上記油脂の結晶多形は、示差走査熱量測定法(DSC法)によっても予測することができる。例えば、β型油脂の予測は、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、品番BSC6220)によって10℃/分の昇温速度で100℃まで昇温することにより得られるDSC曲線に基づいて油脂の結晶構造を予測することにより行われる。
ここで、油脂成分はβ型油脂を含むもの、又は、β型油脂を主成分(50質量%超)として含むものあればよく、好ましい態様としては、上記油脂成分がβ型油脂から実質的になるものであり、より好ましい態様は上記油脂成分がβ型油脂からなるものであり、特に好ましい態様は、上記油脂成分がβ型油脂のみからなるものである。上記油脂成分のすべてがβ型油脂である場合とは、示差走査熱量測定法によってα型油脂及び/又はβ’型油脂が検出されない場合である。別の好ましい態様としては、上記油脂成分(又は油脂成分を含む粉末油脂組成物)が、X線回折測定において、4.5~4.7Å付近、好ましくは4.6Å付近に回折ピークを有し、表1のα型油脂及び/又はβ’型油脂の短面間隔のX線回折ピークがない、特に、4.2Å付近に回折ピークを有さない場合であり、かかる場合も上記油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断できる。本発明の更なる態様として、上記油脂成分が全てβ型油脂であることが好ましいが、その他のα型油脂やβ’型油脂が含まれていてもよい。ここで、本発明における油脂成分が「β型油脂を含む」こと及びα型油脂+β型油脂に対するβ型油脂の相対的な量の指標は、X線回折ピークのうち、β型の特徴的ピークとα型の特徴的ピークとの強度比率:[β型の特徴的ピークの強度/(α型の特徴的ピークの強度+β型の特徴的ピークの強度)](以下、ピーク強度比ともいう。)から想定できる。具体的には、上述のX線回折測定に関する知見をもとに、β型の特徴的ピークである2θ=19°(4.6Å)のピーク強度とα型の特徴的ピークである2θ=21°(4.2Å)のピーク強度の比率:19°/(19°+21°)[4.6Å/(4.6Å+4.2Å)]を算出することで上記油脂成分のβ型油脂の存在量を表す指標とし、「β型油脂を含む」ことが理解できる。本発明は、上記油脂成分が全てβ型油脂である(即ち、ピーク強度比=1)ことが好ましいが、例えば、該ピーク強度比の下限値が、例えば0.4以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.6以上、さらに好ましくは、0.7以上、特に好ましくは、0.75以上、殊更好ましくは0.8以上であることが適当である。ピーク強度が0.4以上であれば、β型油脂を主成分が50質量%超であるとみなすことができる。該ピーク強度比の上限値は1であることが好ましいが、0.99以下、0.98以下、0.95以下、0.93以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下等であってもかまわない。ピーク強度比は、上記下限値及び上限値のいずれか若しくは任意の組み合わせであり得る。
<XXX型トリグリセリド>
本発明の油脂成分は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む。当該XXX型トリグリセリドは、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各飽和脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは16~22から選択される整数であり、好ましくは16~20から選択される整数であり、より好ましくは16~18から選択される整数であり、最も好ましくは18である。
具体的な飽和脂肪酸残基Xとしては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸であり、さらに好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、及びアラキジン酸であり、殊更好ましくは、パルミチン酸及びステアリン酸であり、殊更最も好ましくは、ステアリン酸である。
当該XXX型トリグリセリドの含有量は、油脂成分の全質量を100質量%とした場合、例えば、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上を下限とし、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、95質量%以下を上限とする範囲である。XXX型トリグリセリドは1種類又は2種類以上用いることができ、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類が用いられる。XXX型トリグリセリドが2種類以上の場合は、その合計値がXXX型トリグリセリドの含有量となる。
<その他のトリグリセリド>
本発明の油脂成分は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。合成油脂としては、トリカプリル酸グリセリル等が挙げられる。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。本発明の油脂成分中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、その他のトリグリセリドは、1質量%以上、例えば、5~50質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリグリセリドの含有量は、例えば、0~30質量%、好ましくは0~18質量%、より好ましくは0~15質量%、更に好ましくは0~8質量%である。
<その他の成分>
粉末油脂組成物は、上記トリグリセリド等の油脂成分の他、任意に乳化剤、香料、着色料、脱脂粉乳、全脂粉乳、ココアパウダー、砂糖、デキストリン等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0~70質量%、好ましくは0~65質量%、より好ましくは0~30質量%である。
但し、本発明の好ましい粉末油脂組成物は、実質的に上記油脂成分のみからなることが好ましく、かつ、油脂成分は、実質的にトリグリセリドのみからなることが好ましい。また、「実質的に」とは、粉末油脂組成物中に含まれる油脂成分以外の成分または油脂成分中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、粉末油脂組成物または油脂成分を100質量%とした場合、例えば、0~15質量%、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%であることを意味する。
<粉末油脂組成物の特性>
粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。
粉末油脂組成物は、粒子が板状形状の形態を有し、その平均粒径(有効径)は、例えば、好ましくは1~200μm、より好ましくは1~100μm、さらに好ましくは1~50μm、さらにより好ましくは1~30μm、殊更好ましくは1~20μm、最も好ましくは1~15μmである。
本発明における平均粒径(有効径)は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて、湿式測定により測定した値(d50:粒度分布における積算値50%の粒径の測定値)である。
有効径とは、測定対象となる結晶の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザー回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状形状であっても球状形状であっても同じ原理で測定することができる。
粉末油脂組成物の特徴は、その粒子のアスペクト比を用いて表現することも可能である。
本発明におけるアスペクト比とは、粒子の長径を厚さで除した値〔=長径/厚さ〕のことである。
粒子が、完全な球形の場合には、アスペクト比の値は1〔=1/1〕であり、粒子の扁平度合いが増す(厚さが薄くなる)ほどアスペクト比の値は大きくなる。
粒子のアスペクト比は、例えば、以下の(a)及び(b)の方法で測定することができる。
(a)粒子の電子顕微鏡写真から、1個1個の粒子について長径、及び厚さを測定できる場合
電子顕微鏡写真に写った1個1個の粒子について、長径及び厚さ(縦及び横)を測定し、それぞれの粒子について、アスペクト比を求め、その平均値を粒子のアスペクト比とする。
例えば、粒子が球形のような場合に、この測定方法を用いることができる。
(b)粒子の電子顕微鏡写真から、1つ1つの粒子について長径、又は厚さを測定できない場合
例えば、粒子が扁平な形や板状形状の場合、電子顕微鏡写真に写った1個1個の粒子について、長径を測定することはできるが、厚さは写真では見えないことが多く、写真からは直接測定することが難しい。
このような場合、粒子をガラスビーズのような芯物質の表面に付着させて電子顕微鏡写真を撮り、芯物質表面に付着した粒子の付着面からの垂直方向の長さを、粒子の厚さとして測定し、この値を厚さとして用いる。
これを図1の模式図で説明すると、図1のAは芯物質、Bはアスペクト比を測定する粒子で、線分abの長さ(芯物質表面に付着した粒子の付着面からの垂直方向の長さ)が、この粒子の厚さの値である。
また、長径の値は、上述のレーザー回折散乱法に基づいて測定した平均粒径(d50)を用いる。
このようにして測定した粒子の長径と厚さの値から、アスペクト比〔=長径/厚さ〕を求めることができる。
粉末油脂組成物の粒子のアスペクト比は、2.5以上であることが好ましく、より好ましくは、2.5~100であり、さらに好ましくは3~50であり、さらにより好ましくは3~20であり、特に好ましくは3~15である。
粉末油脂組成物の特徴は、ゆるめ嵩密度を用いて表現することも可能である。
本発明におけるゆるめ嵩密度とは、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。
ゆるめ嵩密度(g/cm)は、ホソカワミクロン(株)のパウダテスタ(model PT-X)で測定することができる。
具体的には、パウダテスタに試料を仕込み、試料を仕込んだ上部シュートを振動させ、試料を自然落下により下部の測定用カップに落とす。測定用カップから盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100cm)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求める。
ゆるめ嵩密度(g/cm)=A(g)/100(cm
粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、例えば実質的に油脂成分のみからなる場合、好ましくは0.05~0.4g/cmであり、より好ましくは0.1~0.4g/cmであり、さらにより好ましくは0.1~0.3g/cmである。
次に、粉末油脂組成物の製造方法について説明をする。
粉末油脂組成物は、国際公開第2017/051910号に記載された粉末油脂組成物の製造方法により製造することができる。
粉末油脂組成物は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を溶融状態とし、特定の冷却温度に保ち、冷却固化することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、粉末状の油脂組成物(粉末油脂組成物)を得ることができる。より具体的には、(a)上記XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を準備し、任意に工程(b)として、工程(a)で得られた油脂組成物原料を加熱し、前記油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂組成物原料を得、さらに(d)前記油脂組成物原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子の形状が板状である粉末油脂組成物を得る。なお、冷却後に得られる固形物に対して、ハンマーミル、カッターミル等、公知の粉砕加工手段を適用して、該粉末油脂組成物を製造することもできる。
上記工程(d)の冷却は、例えば、溶融状態の油脂組成物原料を、当該油脂組成物原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度であって、かつ、次式:
冷却温度(℃) = 炭素数x × 6.6 ― 68
から求められる冷却温度以上の温度で行われる。このような温度範囲で冷却すれば、β型油脂を効率よく生成でき、細かい結晶ができるので、粉末油脂組成物を容易に得ることができる。なお、前記「細かい」とは、一次粒子(一番小さい大きさの結晶)が、例えば20μm以下、好ましくは、15μm以下、より好ましくは10μmの場合をいう。また、このような温度範囲で冷却しないと、β型油脂が生成せず、油脂組成物原料よりも体積が増加した空隙を有する固形物ができない場合がある。さらに、本発明では、このような温度範囲で冷却することによって、静置した状態でβ型油脂を生成させ、粉末油脂組成物の粒子を板状形状とさせたものであり、冷却方法は、粉末油脂組成物を特定するために有益なものである。
さらに詳細に、粉末油脂組成物の製造方法について説明をする。
粉末油脂組成物は、以下の工程、
(a)XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を準備する工程、
(b)工程(a)で得られた油脂組成物原料を任意に加熱等し、前記油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂組成物原料を得る任意の工程、
(d)前記油脂組成物原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である粉末油脂組成物を得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。さらに、上記工程(d)では、粉砕処理をしてもよい。以下、上記工程(a)~(d)について説明する。
(a)原料準備工程
工程(a)で準備されるXXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む通常のXXX型トリグリセリド等の油脂の製造方法に基づいて製造され、もしくは容易に市場から入手され得る。ここで、上記炭素数x及び飽和脂肪酸残基Xで特定されるXXX型トリグリセリドは、最終的に得られる目的の油脂成分のものと結晶多形以外の点で同じである。当該原料にはβ型油脂が含まれていてもよく、例えば、β型油脂の含有量が0.1質量%以下、0.05質量%以下、又は0.01質量%以下含んでいてもよい。但し、β型油脂は、当該原料を加熱等により溶融状態にすることにより消失するので、当該原料は溶融状態の原料であってもよい。当該原料が、例えば溶融状態である場合に、β型油脂を実質的に含まないことは、XXX型トリグリセリドに限らず、実質的に全ての油脂成分がβ型油脂ではない場合も意味し、β型油脂の存在は、上述したX線回折測定によりβ型油脂に起因する回折ピーク、示差走査熱量測定法によるβ型油脂の確認等によって確認することができる。「β型油脂を実質的に含まない」場合のβ型油脂の存在量は、X線回折ピークのうち、β型の特徴的ピークとα型の特徴的ピークとの強度比率[β型の特徴的ピークの強度/(α型の特徴的ピークの強度+β型の特徴的ピークの強度)](ピーク強度比)から想定できる。上記油脂組成物原料の当該ピーク強度比は、例えば0.2以下であり、好ましくは、0.15以下であり、より好ましくは、0.10以下である。油脂組成物原料には、上述したとおりのXXX型トリグリセリドを1種類又は2種以上含んでいてもよく、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類である。
具体的には、例えば、上記XXX型トリグリセリドは、脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリンを用いた直接合成によって製造することができる。XXX型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Xの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
XXX型トリグリセリドは前述の(i)~(iii)のいずれの方法によっても製造できるが、製造の容易さの観点から、(i)直接エステル合成又は(ii)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(i)直接エステル合成がより好ましい。
XXX型トリグリセリドを(i)直接エステル合成によって製造するには、製造効率の観点から、グリセリン1モルに対して脂肪酸Xまたは脂肪酸Yを3~5モルを用いることが好ましく、3~4モルを用いることがより好ましい。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成における反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、例えば、120℃~300℃が好ましく、150℃~270℃がより好ましく、180℃~250℃がさらに好ましい。反応を180~250℃で行うことで、特に効率的にXXX型トリグリセリドを製造することができる。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、エステル化反応を促進する触媒を用いても良い。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001~1質量%程度であることが好ましい。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物をさらに精製することができる。
上記油脂組成物原料中に含まれるXXX型トリグリセリドの量は、例えば、当該原料中に含まれる全トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、100~50質量%、好ましくは95~55質量%、より好ましくは90~60質量%である。さらに殊更好ましくは85~65質量%である。
<その他のトリグリセリド>
XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料となるその他のトリグリセリドとしては、上記XXX型トリグリセリドの他、本発明の効果を損なわない限り、各種トリグリセリドを含めてもよい。その他のトリグリセリドとしては、例えば、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの1つが脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリド、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの2つが脂肪酸残基Yに置換したXY2型トリグリセリド等を挙げることができる。
上記その他のトリグリセリドの量は、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0~100質量%、好ましくは0~70質量%、より好ましくは1~40質量%である。
また、本発明の油脂組成物原料としては、上記XXX型トリグリセリドを直接合成する代わりに、天然由来のトリグリセリド組成物に対し水素添加、エステル交換又は分別を行ったものを使用してもよい。天然由来のトリグリセリド組成物としては、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、パームステアリン及びこれらの混合物等を挙げることができる。特に、これらの天然由来のトリグリセリド組成物の硬化油、部分硬化油、極度硬化油が好ましいものとして挙げられる。さらに好ましくは、ハードパームステアリン、ハイオレイックヒマワリ油極度硬化油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油が挙げられる。
さらに、本発明の油脂組成物原料としては、市販されている、トリグリセリド組成物又は合成油脂を挙げることができる。例えば、トリグリセリド組成物としては、ハードパームステアリン(日清オイリオグループ株式会社製)、菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)、大豆極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)を挙げることができる。また、合成油脂としては、トリパルミチン(東京化成工業株式会社製)、トリステアリン(シグマアルドリッチ製)、トリステアリン(東京化成工業株式会社製)、トリアラキジン(東京化成工業株式会社製)トリベヘニン(東京化成工業株式会社製)を挙げることができる。
その他、パーム極度硬化油は、XXX型トリグリセリドの含量が少ないので、トリグリセリドの希釈成分として使用できる。
<その他の成分>
上記油脂組成物原料としては、上記トリグリセリドの他、任意に部分グリセリド、脂肪酸、抗酸化剤、乳化剤、水などの溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0~5質量%、好ましくは0~2質量%、より好ましくは0~1質量%である。
上記油脂組成物原料は、成分が複数含まれる場合、任意に混合してもよい。混合は、均質な反応基質が得られる限り公知のいかなる混合方法を用いてもよいが、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー等で行うことができる。
当該混合は、必要に応じて加熱下で混合してもよい。加熱は、後述の工程(b)における加熱温度と同程度であることが好ましく、例えば、50~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃、さらに好ましくは80℃で行われる。
(b)溶融状態の前記油脂組成物を得る工程
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で準備された油脂組成物原料は、準備された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、準備された時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂組成物原料を得る。
ここで、油脂組成物原料の加熱は、上記油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70~200℃、好ましくは、75~150℃、より好ましくは80~100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.1~3時間、好ましくは、0.3~2時間、より好ましくは0.5~1時間継続することが適当である。
(d)溶融状態の油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(a)又は(b)で準備された溶融状態の油脂組成物原料は、さらに冷却固化されて、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である粉末油脂組成物を形成する。
ここで、「溶融状態の油脂組成物原料を冷却固化」するためには、冷却温度の上限値として、溶融状態の油脂組成物原料を、当該油脂組成物原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度に保つことが必要である。「油脂組成物原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度」とは、例えば、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、β型油脂の融点は74℃であるので(表1)、当該融点より1~30℃低い温度(即ち44~73℃)、好ましくは当該融点より1~20℃低い温度(即ち54~73℃)、より好ましくは当該融点より1~15℃低い温度(即ち59~73℃)、特に好ましくは、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃低い温度である。
より好ましくは、β型油脂を得るためには、冷却温度の下限値として、以下の式から求められる冷却温度以上に保つことが適当である。
冷却温度(℃) = 炭素数x × 6.6 ― 68
(式中、炭素数xは、油脂組成物原料中に含まれるXXX型トリグリセリドの炭素数x)
このような冷却温度以上とするのは、XXX型トリグリセリドを含有するβ型油脂を得るために、当該油脂の結晶化の際、冷却温度をβ型油脂以外のα型油脂やβ’型油脂が結晶化しない温度に設定する必要があるためである。冷却温度は、主にXXX型トリグリセリドの分子の大きさに依存するので、炭素数xと最適な冷却温度の下限値との間には一定の相関関係があることが理解できる。
例えば、油脂組成物原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドである場合、冷却温度の下限値は50.8℃以上となる。従って、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、「溶融状態の油脂組成物原料を冷却固化」する温度は、50.8℃以上72℃以下がより好ましいこととなる。
また、XXX型トリグリセリドが2種以上の混合物である場合は、炭素数xが小さい方の冷却温度に合わせてその下限値を決定することができる。例えば、油脂組成物原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が16のパルミチン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドと炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドとの混合物である場合、冷却温度の下限値は小さい方の炭素数16に合わせて37.6℃以上となる。
別の態様として、上記冷却温度の下限値は、XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料の、当該β型油脂に対応するα型油脂の融点以上の温度であることが適当である。例えば、油脂組成物原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドである場合、当該ステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドのα型油脂の融点は55℃であるから(表1)、かかる場合の「溶融状態の油脂組成物原料を冷却固化」する温度は、55℃以上72℃以下が好ましいこととなる。
さらに別の態様として、溶融状態にある油脂組成物原料の冷却は、xが16のときは、好ましくは36~66℃、より好ましくは44~64℃、更に好ましくは52~62℃であり、xが17又は18のときは、好ましくは50~72℃、より好ましくは54~70℃、更に好ましくは58~68℃であり、xが19又は20のときは、好ましくは62~80℃、より好ましくは66~78℃、更に好ましくは70~77℃であり、xが21又は22のときは、好ましくは66~84℃、より好ましくは70~82℃、更に好ましくは74~80℃である。上記最終温度において、例えば、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間以上であって、好ましくは2日間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下、静置することが適当である。
(c)粉末生成促進工程
さらに、工程(d)の前、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂組成物原料に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。これらの任意工程(c1)~(c3)は、いずれか単独で行ってもよいし、複数の工程を組み合わせて行ってもよい。ここで、工程(a)又は(b)と工程(d)との間とは、工程(a)又は(b)中、工程(a)又は(b)の後であって工程(d)の前、工程(d)中を含む意味である。
シーディング法(c1)及びテンパリング法(c2)は、粉末油脂組成物の製造において、溶融状態にある油脂組成物原料をより確実に粉末状とするために、最終温度まで冷却する前に、溶融状態にある油脂組成物原料を処置する粉末生成促進方法である。
ここで、シーディング法(c1)とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂組成物原料の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂組成物原料に、当該油脂組成物原料中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂組成物原料の冷却時、当該油脂組成物原料の温度が、例えば、最終冷却温度±0~+10℃、好ましくは+5~+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂組成物原料100質量部に対して0.1~1質量部、好ましくは0.2~0.8質量部添加することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
また、テンパリング法(c2)とは、溶融状態にある油脂組成物原料の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5~20℃低い温度、好ましくは7~15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10~120分間、より好ましくは30~90分間程度冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
さらに、予備冷却法(c3)とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物原料を、工程(d)にて冷却する前に、前記XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を準備した時の温度と前記油脂組成物原料の冷却時の冷却温度との間の温度で一旦冷却する方法、言い換えれば、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。(c3)予備冷却法に続いて、工程(d)の油脂組成物原料の冷却時の冷却温度で冷却することが行われる。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2~40℃高い温度、好ましくは3~30℃高い温度、より好ましくは4~30℃高い温度、さらに好ましくは5~10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂組成物の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
(粉砕処理)
上記工程(d)の冷却によって粉末油脂組成物を得る工程では、粉砕処理をしてもよい。
詳細に説明すると、まず、上記油脂組成物原料を融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物原料よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。空隙を有する固形物となった油脂組成物は、軽い衝撃を加えることで粉砕でき、固形物が容易に崩壊して粉末状となる。
ここで、軽い衝撃を加える手段は特に特定されないが、振る、篩に掛ける等により、軽く振動(衝撃)を与えて粉砕する(ほぐす)方法が、簡便で好ましい。
なお、該固形物を公知の粉砕加工手段により粉砕してもよい。このような粉砕加工手段の一例としては、ハンマーミル、カッターミル等が挙げられる。
このようにして、粉末油脂組成物を製造することができる。
チョコレート原料中の成分Aの含量は、0.4~7質量%であり、0.8~7質量%であることがより好ましく、0.8~5質量%であることがさらに好ましく、0.8~2質量%であることがさらいより好ましい。
かかる範囲であると、得られるフレーク状又は粉末状チョコレートの保管時のブロッキングがより少なく、また、ブロッキングにより生じた塊が、より容易に崩壊しやすいものとなるからである。
本発明でチョコレートは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上で規定されたチョコレートに限定されない。
本発明でチョコレートは、カカオ分、乳化剤を主原料とし、必要により砂糖等の甘味成分、乳製品、食用油脂、香料等を加えて製造される食品である。なお、本発明でカカオ分は、カカオマス、ココアバター、ココアパウダー、カカオエキスパウダー等のカカオ豆から得られる原料である。
本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートは、水分含量は3質量%以下である。
本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートは、油脂を、好ましくは1~40質量%含有し、より好ましく10~35質量%含有し、さらに好ましく20~35質量%含有し、最も好ましくは20~30質量%含有する。
なお、本発明において、フレーク状又は粉末状チョコレートが含有する油脂は、チョコレートに含まれる全ての油脂を合わせた全油脂分のことを言う(例えば、チョコレート原料に、成分A、カカオマス、大豆油を使用したチョコレートの場合、全油脂分は、成分A中の油脂とカカオマスに含まれるココアバターと大豆油とを合わせたものである。)すなわち、本発明において、フレーク状又は粉末状チョコレートが含有する油脂には、成分A中の油脂、及びチョコレート原料として配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)も含まれる。
成分A以外の本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートの原料に使用する油脂は、一般的にチョコレートの製造に使用される食用油脂で、融点が55℃未満の油脂であれば特に制限されない。
フレーク状又は粉末状チョコレートの製造に使用される食用油脂としては、例えば、ココアバター、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、乳脂等や、これらの加工油脂(水素添加油、分別油、エステル交換油)等が挙げられる。これらの食用油脂は2種以上組み合せて使用することもできる。前述したように、カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等の含油原料を配合することで、フレーク状又は粉末状チョコレートに油脂を配合することもできる。本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造に使用する油脂は、好ましくはココアバターである。
本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートは、カカオマスを好ましくは5~60質量%含有し、より好ましく15~55質量%含有し、さらに好ましく25~53質量%含有し、最も好ましくは40~50質量%含有する。
本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートは、糖類を好ましくは20~75質量%含有し、より好ましくは25~65質量%含有し、さらに好ましくは30~55質量%含有する。なお、本発明で糖類とは、単糖類、二糖類のことである。糖類の具体例は、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖等である。本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造に使用される糖類は、好ましくは砂糖である。
本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートは、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。
具体的には、例えば、ココアパウダー、カカオエキスパウダー等のカカオ分、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール等の糖アルコール、ラフィノース等のオリゴ糖、アスパルテーム、ステビア、サッカリン等の甘味料、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
本発明の製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートは、保存時に、ブロッキングにより生じる塊が、容易に崩壊する塊である、又は容易に崩壊しにくい塊であっても塊の発生量が全体量の約3割未満であるため、計量、小分け、充填等のハンドリング性の点で問題がない。
また、成分Aとして、上述した粉末油脂組成物を、チョコレート原料中に特定量(例えば0.8~7質量%)配合することで、ブロッキングにより生じる塊が容易に崩壊する塊とすることができる。さらに、成分Aとして、上述した粉末油脂組成物を、チョコレート原料中に特定量(例えば0.4~2質量%)配合することで、ブロッキングにより生じる塊の量をより少なくすることができる。
次に、本発明の製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートを使用したチョコレート含有食品について説明をする。
本発明の製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートは、チョコレート使用した各種食品に使用することができる。
かかる食品として、例えば、チョコレート飲料、菓子、ケーキ、パン等が挙げられる。
これらの食品は、原料として、本発明の製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートを使用すること以外、従来公知の食品の製造方法で製造することができる。
本発明の製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートは、それを原料に用いることで、簡単にチョコレート飲料を製造できるため、飲料用として特に有用である。
例えば、本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートと、水及び/又は牛乳とを混合することによりチョコレート飲料を製造することができる。
チョコレート飲料の製造において、本発明のフレーク状又は粉末状チョコレート1質量部に対して、液体の物質を、好ましくは3.3~40質量部、より好ましくは4~30質量部、さらに好ましくは5~25質量部加えることができる。
チョコレート飲料の製造に使用する液体の物質は、一般的にチョコレート飲料の製造に使用される液体の物質であれば特に制限されず、例えば、水、牛乳等であり、好ましくは加温した水(お湯)である。
菓子、ケーキ、及びパンについては、本発明の製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートを、菓子、ケーキ、又はパンで使用されているココアパウダーと同じように使用することができる。
例えば、フレーク状又は粉末状チョコレートを、菓子、ケーキ、又はパンの表面に付着させたり、それらの生地に練り込んだりして使用することができる。
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示し、「部」とは質量部を示す。
[分析方法]
・トリグリセリド組成
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)~(15℃/min)~370℃(4min hold)
・X線回折測定
X線回折装置UltimaIV(株式会社リガク社製)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96~30.0°、測定速度2°/分の条件で測定した。この測定により、XXX型トリグリセリドを含む油脂成分におけるα型油脂、β’型油脂、及びβ型油脂の存在を確認した。4.6Å付近のピークのみを有し、4.1~4.2Å付近のピークを有しない場合は、油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断した。
なお、上記X線回折測定の結果から、ピーク強度比=[β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å))/(α型の特徴的ピークの強度(2θ=21°(4.2Å))+β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å)))]をβ型油脂の存在量を表す指標として測定した。
・アスペクト比
(a)市販の粉末油脂(理研ビタミン株式会社製:商品名「スプレーファットNR100」)の粒子のアスペクト比
この粉末油脂は、ほとんどが球形で、粒子の電子顕微鏡写真から1個1個の粒子について直接長径、及び厚さを測定することができるので、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で撮影した写真に写った1個1個の粒子について、長径及び厚さ(縦及び横)を測定し、それぞれの粒子について、アスペクト比を求め、計20個の粒子のアスペクト比の平均値を、粒子のアスペクト比とした。
(b)油脂組成物の粒子のアスペクト比
粉末油脂組成物は、板状形状であるため、顕微鏡写真から粒子の厚さを測定することが難しい。したがって、粒子の厚さは、粉末油脂組成物をガラスビーズに付着させたときの顕微鏡写真から測定した。また、長径の値は、レーザー回折散乱法に基づいて測定した平均粒径(d50)を用いた。
具体的には、ガラスビーズ(アズワン株式会社製、型番BZ-01、寸法0.105~0.125mmφ)に粉末油脂組成物を添加、混合することで、ガラスビーズ表面に粉末油脂組成物を付着させ、その様子を3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で撮影した。ガラスビーズ表面に付着した1個の粉末油脂組成物の粒子の付着面から垂直方向の長さを、その粒子の厚さとして測定し、計25個の粒子の厚さの平均値を取り、その値を粉末油脂組成物の粒子の厚さの値とした。
図4は、後述する製造例1の粉末油脂組成物の粒子の厚さの測定に使用した電子顕微鏡写真(1500倍)の1つで、この写真では、写真中の直線で示した部分(2か所)の長さ(ガラスビーズ表面に付着した粒子の付着面からの垂直方向の長さ)を、粉末油脂組成物の粒子の厚さとして測定した。
また、長径の値は、上述のレーザー回折散乱法に基づいて測定した平均粒径(d50)を用いた。
このようにして測定した粉末油脂組成物の粒子の長径と厚さの値から、アスペクト比〔=長径/厚さ〕を求めた。
・平均粒径(d50)
粉末油脂組成物、及び粉末油脂の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)で、レーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)基づいて、湿式測定により測定した。
具体的には、粒度分布測定装置に極小容量循環器(日機装株式会社製、装置名:USVR)を取り付け、分散溶媒として水を循環させた。また、100mlビーカーに試料を0.06g、中性洗剤を0.6g入れ、スパチュラで混合し、混合後に水を30ml加え、超音波洗浄器(アイワ医科工業株式会社製、装置名:AU-16C)に1分間供したものを滴下、循環させて測定した。得られた粒度分布における積算値50%の粒径の測定値(d50)を平均粒径とした。
・ゆるめ嵩密度
実施例で使用した粉末油脂組成物、及び粉末油脂のゆるめ嵩密度(g/cm)は、ホソカワミクロン(株)のパウダテスタ(model PT-X)で測定した。
具体的には、パウダテスタに試料を仕込み、試料を仕込んだ上部シュートを振動させ、試料を自然落下により下部の測定用カップに落とす。測定用カップから盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100cm)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めた。
ゆるめ嵩密度(g/cm)=A(g)/100(cm
・顕微鏡観察、顕微鏡写真撮影
粉末油脂組成物の粒子及び粉末油脂の粒子の様子を、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で観察し、粒子を顕微鏡で写真撮影した。
・融点
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
〔成分A:フレーク状油脂〕
融点50℃以上の油脂として、市販のフレーク状油脂である菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製、融点51℃)を使用した。
〔成分A:粉末油脂〕
融点50℃以上の油脂として、市販の粉末油脂(粉末状菜種極度硬化油、理研ビタミン株式会社製:商品名「スプレーファットNR100」)を使用した。
この粉末油脂は、ビーズ状の球形粉末であり、融点68℃、平均粒径は86μmで、X線回折分析の結果、回折ピークは4.6、強度比は0.91であり、粒子のアスペクト比は1.07で、ゆるめ嵩密度は0.53g/cmであった。
なお、X線回折測定回折ピーク、及びピーク強度比から、この粉末油脂は、β型油脂を含むものであることがわかる。
粉末油脂を顕微鏡で観察したところ、粉末油脂の粒子の形状は球状であった。粉末油脂の顕微鏡写真を、図5(100倍)、及び図6(300倍)に示す。
〔成分A:粉末油脂組成物〕
以下に、粉末油脂組成物の製造例を示すが、いずれの粉末油脂組成物も、フレーク状又はフレーク状又は粉末状チョコレートの製造に使用することができる。
(1)製造例1:x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、フレーク状、横関油脂工業株式会社製)1000gを80℃にて約12時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物を機械粉砕することで粉末油脂組成物(平均粒径8.0μm、X線回折測定回折ピーク:4.6Å、ピーク強度比:0.89、粒子のアスペクト比4.6、ゆるめ嵩密度0.18g/cm、融点68℃)を得た。
得られた粉末油脂組成物を顕微鏡で観察したところ、粉末油脂組成物の粒子の形状は板状形状であった。粉末油脂組成物の顕微鏡写真を、図2(100倍)、及び図3(300倍)に示す。
なお、X線回折測定回折ピーク、及びピーク強度比から、得られた粉末油脂組成物の油脂成分は、β型油脂を含むものであることがわかる。
(2)製造例2:x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、フレーク状、横関油脂工業株式会社製)1000gを80℃にて約12時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物を機械粉砕することで粉末油脂組成物(平均粒径6.4μm、X線回折測定回折ピーク:4.6Å、ピーク強度比:0.89、粒子のアスペクト比3.7、ゆるめ嵩密度0.18g/cm、融点68℃)を得た。
得られた粉末油脂組成物を顕微鏡で観察したところ、粉末油脂組成物の粒子の形状は板状形状であった。
なお、X線回折測定回折ピーク、及びピーク強度比から、得られた粉末油脂組成物の油脂成分は、β型油脂を含むものであることがわかる。
(3)製造例3:x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、フレーク状、横関油脂工業株式会社製)1000gを80℃にて約12時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物を機械粉砕することで粉末油脂組成物(平均粒径7.4μm、X線回折測定回折ピーク:4.6Å、ピーク強度比:0.89、粒子のアスペクト比3.5、ゆるめ嵩密度0.17g/cm、融点68℃)を得た。
得られた粉末油脂組成物を顕微鏡で観察したところ、得られた粉末油脂組成物の粒子の形状は板状形状であった。
なお、X線回折測定回折ピーク、及びピーク強度比から、得られた粉末油脂組成物の油脂成分は、β型油脂を含むものであることがわかる。
(4)製造例4:x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、フレーク状、横関油脂工業株式会社製)1000gを80℃にて約12時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物を機械粉砕することで粉末油脂組成物(平均粒径14.4μm、X線回折測定回折ピーク:4.6Å、ピーク強度比:0.90、粒子のアスペクト比:7.2、ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、融点68℃)を得た。X線回折測定回折ピーク、及びピーク強度比から、得られた粉末油脂組成物の油脂成分は、β型油脂を含むものであることがわかった。
粉砕前の粉末油脂組成物を目視で観察したところ、体積が増加した空隙を有する固形物であった。図7は、粉砕前の粉末油脂組成物の外観の写真である。また、粉砕前の粉末油脂組成物を3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で観察したところ、板状形状の粒子が多数重なっていた。図8は、粉砕前の粉末油脂組成物の電子顕微鏡写真(200倍)ある。
また、得られた粉末油脂組成物を3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で観察したところ、粉末油脂組成物の粒子の形状は板状形状であった。図9及び図10は、粉末油脂組成物の電子顕微鏡写真(1000倍)である。
〔粉末状チョコレートの製造(比較例1、2、実施例1~5)〕
表2及び3に示す配合の粉末状チョコレートを製造した。なお、表中の配合の下に、粉末状チョコレート原料100質量%中に含まれるフレーク状油脂、粉末油脂、粉末油脂組成物、カカオマス、油脂、及び糖類の各含量を記載した。
具体的には、すべての原料を、ミキサーを用いて45℃で混合(ニーディング)することでチョコレート原料生地を製造した。得られたチョコレート原料生地を、生地温度が配合した成分Aの融点以上にならないよう調温しながらロールリファイナーで微粒化(リファイニング)することにより、粉末状チョコレートを製造した。なお、精錬処理は行わなかった。
混合(ニーディング)処理は、フレーク状油脂、粉末油脂又は粉末油脂組成物が融解しない温度(45℃)で行ったので、得られた原料生地は、フレーク状油脂、粉末油脂又は粉末油脂組成物は、融解せず、固体の状態で存在している。
また、微粒化(リファイニング)処理も、フレーク状油脂、粉末油脂又は粉末油脂組成物が融解しない温度で行ったので、微粒化処理を行っている間、生地中のフレーク状油脂、粉末油脂又は粉末油脂組成物は、融解せず、固体の状態で存在している。
比較例1、2、実施例1~5の製造直後の粉末状チョコレートは、すべてブロッキングは生じていなかった。また、すべて、水分含量は3質量%以下であった。
なお、フレーク状油脂には、先に説明をした横関油脂工業株式会社製の菜種極度硬化油、粉末油脂には、理研ビタミン株式会社製の商品「スプレーファットNR100」、粉末油脂組成物には、製造例1の粉末油脂組成物を用いた。
Figure 0007339108000002
Figure 0007339108000003
〔粉末状チョコレートのブロッキング状態確認試験〕
得られた粉末状チョコレートをビニール袋に入れ、20℃で1週間保管した。保管後、各粉末状チョコレートをビニール袋から取り出し、ブロッキングの様子を目視で観察し、表4に示す評価基準で評価した。
また、ブロッキングした粉末を手で押さえた時、容易に崩壊するか否かを調べ、表4に示す評価基準で評価した。
粉末状チョコレートの計量、小分け、充填等のハンドリング性の点で、粉末状チョコレートはブロッキングが少なく、かつ、ブロッキングにより生じた塊が容易に崩壊するものが最も好ましく、ブロッキングが多くても生じた塊が容易に崩壊するものがより好ましいが、容易に崩壊しにくい塊であっても、塊の量が約3割未満であれば、ハンドリング性にはほとんど問題がないため、◎印、○印、□印だけでなく、△印、△△印のものも商品価値があると判断した。
試験結果を表5に示す。
Figure 0007339108000004





Figure 0007339108000005
表5の結果から、成分Aとして、菜種極度硬化油を1質量%、又は粉末油脂組成物を1質量%、5質量%配合することで、ブロッキングにより生じる塊が、容易に崩壊する塊になることがわかった。また、成分Aとして、粉末油脂組成物を0.5質量%、1質量%配合することで、ブロッキングにより生じる塊の量がより少なくなることがわかった。
また、成分Aとして、融点50℃以上の油脂と粉末油脂組成物を、同じ量(1質量%)配合した実施例1、2、4を比較すると、粉末油脂組成物を配合した実施例4が、保存時にブロッキングにより生じる塊の量が最も少ないので、成分Aとして、融点50℃以上の油脂よりも粉末油脂組成物を使用するのが好ましいことがわかった。
〔チョコレート飲料の製造(実施例6)〕
実施例4の粉末状チョコレート5gを充填した270mLの透明なカップに、約80℃のお湯100gを注ぎ、1分間攪拌することでチョコレート飲料を製造した。
本発明のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法は、チョコレートを使用した食品の分野において使用することができる。

Claims (7)

  1. フレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法において、チョコレート原料を、以下の成分Aが融解しない温度で混合することにより、成分Aを固体の状態で含有するチョコレート原料生地を作る混合工程を有し、得られた生地を、成分Aが融解しない温度で微細化処理する微細化工程を有し、該チョコレート原料中の該成分Aの含量が0.4~7質量%であることを特徴とするフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
    成分A:次の粉末油脂組成物。
    粉末油脂組成物:グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、該炭素数xは16~22から選択される整数であり、該油脂成分がβ型油脂を含み、該粉末油脂組成物の粒子が板状形状である粉末油脂組成物。
  2. 前記XXX型トリグリセリドが、前記油脂成分の全質量を100質量%とした場合、50質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
  3. 前記粉末油脂組成物の炭素数xが、16~18から選択され選択される整数であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
  4. 前記成分Aが融解しない温度が、30℃~60℃であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
  5. 前記フレーク状又は粉末状チョコレートが、飲料用であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートを使用したチョコレート含有食品の製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載のフレーク状又は粉末状チョコレートの製造方法で製造されたフレーク状又は粉末状チョコレートと、水及び/又は牛乳とを混合するチョコレート飲料の製造方法。
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