JP2023044535A - 改良酸性調味料及びその製造方法 - Google Patents

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典子 村山
Noriko Murayama
徹 戸田
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Abstract

【課題】 本発明の課題は、液体酸性調味料の一種であるドレッシングタイプ調味料について、そのドレッシングタイプ調味料の食感とは異なる新たな食感を有する改良酸性調味料を提供することである。【解決手段】 ドレッシングタイプ調味料と、平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末とを含有する改良酸性調味料であって、該改良酸性調味料中の該油脂粉末の含量が15~30質量%であることを特徴とする改良酸性調味料、及び平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末を15~30質量%含有する改良酸性調味料の製造方法であって、ドレッシングタイプ調味料と該油脂粉末とを混合撹拌することを特徴とする改良酸性調味料の製造方法。【選択図】図3

Description

本発明は、改良酸性調味料及びその製造方法に関する。
これまで、ドレッシングタイプ調味料(ノンオイルドレッシング)、調味酢等の液体酸性調味料は、サラダや酢の物等の食品の味付けに使用されてきた。
そして、酸性調味料は、特有の酸味を有しているために酸味を苦手としている消費者からは敬遠される傾向にあるため、pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持した酸性調味料が開発されてきた(特許文献1)。
また、従来、酢の物を製造するには、材料の塩漬け、水洗い脱塩、脱水後に、調味酢による調味の工程が取られていたが、従来行っていた塩漬け、水洗い脱塩、脱水の工程を必要とせず、食酢や果汁をベースとし、酸度、塩分、糖度、pH、可溶性固形分を特定の範囲に調整した調味液を材料に加えることにより酢の物を作れる方法も開発されてきた(特許文献2)。
このように、酸味が抑制されて味の厚みやコクを保持した酸性調味料や、料理を簡単に作るための調味液の開発は検討されてきたが、液体酸性調味料の食感を変えるという検討はあまりなされていなかった。
特開2015-171328号公報 特開2008-245618号公報
本発明の目的は、液体酸性調味料の一種であるドレッシングタイプ調味料について、そのドレッシングタイプ調味料の食感とは異なる新たな食感を有する改良酸性調味料を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ドレッシングタイプ調味料と、平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末とを特定割合で混合撹拌することで、新たな食感を有する改良酸性調味料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
〔1〕ドレッシングタイプ調味料と、平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末とを含有する改良酸性調味料であって、該改良酸性調味料中の該油脂粉末の含量が15~30質量%であることを特徴とする改良酸性調味料。
〔2〕前記改良酸性調味料の比重が、0.40~0.90g/cmであることを特徴とすることを特徴とする〔1〕に記載の改良酸性調味料。
〔3〕前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、前記炭素数xは16~20から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記油脂粉末の粒子は板状形状を有する油脂粉末である、〔1〕又は〔2〕に記載の改良酸性調味料。
〔4〕乳化剤が配合されていないことを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の改良酸性調味料。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の改良酸性調味料を含有する食品。
〔6〕平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末を15~30質量%含有する改良酸性調味料の製造方法であって、ドレッシングタイプ調味料と該油脂粉末とを混合撹拌することを特徴とする改良酸性調味料の製造方法。
〔7〕前記改良酸性調味料の比重が、0.40~0.90g/cmであることを特徴とすることを特徴とする〔6〕に記載の改良酸性調味料。
〔8〕前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、前記炭素数xは16~20から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記油脂粉末の粒子は板状形状を有する油脂粉末である、〔6〕又は〔7〕に記載の改良酸性調味料。
〔9〕乳化剤を配合しないことを特徴とする〔6〕~〔8〕のいずれか1つに記載の改良酸性調味料の製造方法。
本発明によれば、ドレッシングタイプ調味料について、そのドレッシングタイプ調味料の食感とは異なる新たな食感を有する改良酸性調味料を提供することができる。
また、本発明の改良酸性調味料には乳化剤を含有させることもできるが、乳化剤を含有させなくても、ドレッシングタイプ調味料の食感とは異なる新たな食感を有する改良酸性調味料を提供することができる。
油脂粉末(a)を、2℃/分の昇温速度で加熱したときの吸熱量の変化を測定したDSCチャートである。 製造例1の油脂粉末(a)の電子顕微鏡写真である。 実施例3のペースト状組成物をかけたサラダの写真である。 実施例3のペースト状組成物をのせた冷奴の写真である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明は、ドレッシングタイプ調味料と、平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末とを含有する改良酸性調味料であって、該改良酸性調味料中の該油脂粉末の含量が15~30質量%であることを特徴とする改良酸性調味料である。
ここで、改良とは、原料に使用したドレッシングタイプ調味料の食感を改良したことを意味する。
〔ドレッシングタイプ調味料〕
まず、本発明に使用するドレッシングタイプ調味料について説明をする。
本発明に使用するドレッシングタイプ調味料は、食酢又はかんきつ類の果汁に、食塩、砂糖類等を加えた液体酸性調味料であって、主にサラダに使用するもので、食用油脂を原材料として使用していないものである。いわゆるノンオイルドレッシングも、ドレッシグタイプ調味料に含まれる。
ドレッシングタイプ調味料のpHは、好ましくはpH2.5~pH6.0、より好ましくはpH3.0~pH5.5、さらに好ましくはpH3.0~pH4.5である。
液体酸性調味料として、食用油脂を原材料として使用していないものを使用するのは、食用油脂を原材料として使用した液体酸性調味料を用いても、本発明の効果を奏することができないからである。
なお、食品表示法に基づく「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)で、ドレッシングタイプ調味料は、食酢又はかんきつ類の果汁に、食塩、砂糖類等を加えた調味料であって、主にサラダに使用するもの(食用油脂を原材料として使用していないものに限る。)と定義されている。
ドレッシングタイプ調味料の市販品としては、理研ビタミン(株)販売の商品「リケンのノンオイル青じそ」、キューピー(株)販売の商品「キューピーノンオイル青じそ」等が挙げられる。
〔油脂粉末〕
次に、本発明に使用する油脂粉末について説明をする。
本発明に使用する油脂粉末としては、例えば、油脂を構成する脂肪酸の80質量%以上が炭素数16以上の飽和脂肪酸である油脂の粉末、例えば、パームステアリン、極度硬化パーム油、極度硬化菜種油、極度硬化高エルシン酸菜種油、極度硬化大豆油、極度硬化ひまわり油、極度硬化紅花油等の油脂の粉末が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
油脂粉末の融点は、55℃以上であり、好ましくは58℃以上であり、さらに好ましくは61℃以上で、融点の上限は、好ましくは90℃以下であり、より好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは75℃以下である。
なお、本発明の油脂粉末は、油脂と賦形剤、乳化剤等を含む水溶液を乳化したものを噴霧乾燥して得られる粉末油脂とは異なる。
本発明に使用する油脂粉末の融点は、DSC(示差走査熱量計)測定で求めることができ、油脂粉末を1~5℃(好ましくは2℃)/分の昇温速度で加熱し、吸熱がなくなる温度を融点とした。
具体的には、図1に示すように、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの交点の温度を融点とする。
当該粒子の平均粒径(有効径)は、例えば、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~100μm、さらに好ましくは1~50μm、殊更好ましくは1~30μmであり、殊更より好ましくは1~20μmである。
特に、油脂粉末の平均粒径が、1~20μmであると、食感にざらつきのない改良酸性調味料を得ることができる。
ここで、当該平均粒径(有効径)は、体積平均径〔MV〕を言い、粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、装置名:SALD-2300)でレーザ回折散乱法(ISO13320,JIS Z 8825-1)に基づいて、乾式測定により体積基準粒度分布を測定して体積平均径〔MV〕を求め、得られた体積平均径〔MV〕を平均粒径とした。体積平均径〔MV〕は、粒子の粒径、粒子の体積、及び粒子の体積の総和の各値を使って以下の式から求めることができる。

体積平均径〔MV〕=(粒径×その粒子の体積)の総和/粒子の体積の総和

なお、有効径とは、測定対象となる結晶の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザ回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状形状であっても球状形状であっても同じ原理で測定することができる。
油脂粉末は、任意に乳化剤、香料、着色料等のその他の成分(添加剤)を含んでいてもよい。これらのその他の成分を含ませるには、油脂粉末の原料又は油脂粉末に、その他の成分を添加、混合すれば良い。具体的には、油脂粉末の原料に乳化剤、香料、着色料等のその他の成分を混合したり、油脂粉末を粉砕して製造する際に乳化剤、香料、着色料等のその他の成分を混合したり、又は製造された油脂粉末に、乳化剤、香料、着色料等のその他の成分を混合することにより製造することができる。
ここで、当該その他の成分としての乳化剤としては、例えば、モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等を挙げることができ、香料としては、例えば、リモネン、バニリン、オレンジ、バニラ、ジャスミン等を挙げることができ、着色料としては、例えばウコン色素、クチナシ色素、ベニバナ色素、パプリカ色素、赤キャベツ色素等の天然着色料や、タール系色素等の合成着色料等を挙げることができる。
これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、油脂粉末の全質量を100質量%とした場合、例えば、0~30質量%、好ましくは1~18質量%、より好ましくは2~15質量%、更に好ましくは3~8質量%である。その他の成分は、その90質量%以上が、平均粒径が1000μm以下である粉体であることが好ましく、平均粒径が500μm以下の粉体であることがより好ましい。さらに、20μm以下の細かい粒子は人間の感覚では感じとることが困難であるので、平均粒径が例えば20μm以下、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは1~18μmの粉体であれば、口に含んだ際の粉体の粗いざらついた感触がなくなるので好ましい。
本発明に使用する油脂粉末の製造方法は特に限定されない。
また、融点55℃以上の油脂粉末の原料となる油脂は、食用油脂である限り、特に限定されない。
油脂粉末の製造方法として、例えば、55℃以上の融点を有する油脂粉末の原料を、凍結粉砕、押出造粒、噴霧冷却等の従来公知の方法で粉砕することにより製造することができる。
本発明に使用する油脂粉末には、市販の油脂粉末を使用することができる。市販の油脂粉末としては、例えば、フロイント産業(株)販売の商品「ラブリワックス-102H」、日油(株)販売の商品「TP-9」、理研ビタミン(株)販売の商品「スプレーファットNR-100」等が挙げられる。
また、本発明に使用する油脂粉末には、後述する油脂粉末Aを使用することができる。
〔油脂粉末A〕
本発明に使用する油脂粉末には、次に説明をする油脂粉末Aを使用することができる。
油脂粉末Aは、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、該炭素数xは16~20から選択される整数であり、該油脂成分がβ型油脂を含み、該油脂粉末の粒子の形状は板状形状である。
以下、油脂粉末Aについて詳細に説明をする。
油脂粉末Aは、油脂成分を含有する。当該油脂成分は、少なくともXXX型トリグリセリドを含み、任意にその他のトリグリセリドを含む。
上記油脂成分はβ型油脂を含む。ここで、β型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ型の結晶のみからなる油脂である。その他の結晶多形の油脂としては、β’型油脂及びα型油脂があり、β’型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ’型の結晶のみからなる油脂である。α型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるα型の結晶のみからなる油脂である。油脂の結晶には、同一組成でありながら、異なる副格子構造(結晶構造)を持つものがあり、結晶多形と呼ばれている。代表的には、六方晶型、斜方晶垂直型及び三斜晶平行型があり、それぞれα型、β’型及びβ型と呼ばれている。また、各多形の融点はα、β’、βの順に融点が高くなり、各多形の融点は、炭素数xの脂肪酸残基Xの種類により異なるので、以下、表1にそれぞれ、トリパルミチン、トリステアリン、トリアラキジンである場合の各多形の融点(℃)を示す。なお、表1は、Nissim Garti et al.、”Crystallization and Polymorphism of Fats and Fatty Acids”、Marcel Dekker Inc.、1988、pp.32-33に基づいて作成した。そして、表1の作成にあたり、融点の温度(℃)は小数点第1位を四捨五入した。また、油脂の組成とその各多形の融点がわかれば、少なくとも当該油脂中にβ型油脂が存在するか否かを検出することができる。
Figure 2023044535000002
これらの多形を同定する一般的な手法は、X線回折法があり、回折条件は下記のブラッグの式によって与えられる。

2dsinθ=nλ(n=1,2,3・・・)

この式を満たす位置に回折ピークが現れる。ここでdは格子定数、θは回折(入射)角、λはX線の波長、nは自然数である。短面間隔に対応する回折ピークの2θ=16~27°からは、結晶中の側面のパッキング(副格子)に関する情報が得られ、多形の同定を行なうことができる。特にトリアシルグリセロールの場合、2θ=19、23、24°(4.6Å付近、3.9Å付近、3.8Å付近)にβ型の特徴的ピークが、21°(4.2Å)付近にα型の特徴的なピークが出現する。なお、X線回折測定は、例えば、20℃に維持したX線回折装置((株)リガク、全自動多目的X線回折装置Smart Lab 9 kW)を用いて測定される。X線の光源としてはCuKα線(1.54Å)が最もよく利用される。
油脂成分は、β型油脂を含むもので、ピーク強度比が0.6~1であるもの、あるいはβ型油脂を主成分(油脂粉末A又は油脂成分に対して50質量%超)として含むものである。
油脂成分の好ましい態様としては、上記油脂成分がβ型油脂から実質的になるものであり、より好ましい態様は上記油脂成分がβ型油脂からなるものであり、特に好ましい態様は、上記油脂成分がβ型油脂のみからなるものである。上記油脂成分のすべてがβ型油脂である場合とは、示差走査熱量測定法によってα型油脂及び/又はβ’型油脂が検出されない場合である。
更なる態様として、上記油脂成分が全てβ型油脂であることが好ましいが、その他のα型油脂やβ’型油脂が含まれていてもよい。
具体的には、上述のX線回折測定に関する知見をもとに、β型の特徴的ピークである2θ=19°(4.6Å)のピーク強度とα型の特徴的ピークである2θ=21°(4.2Å)のピーク強度の比率:19°付近のピーク強度/(19°付近のピーク強度+21°のピーク強度)[4.6Å付近のピーク強度/(4.6Å付近のピーク強度+4.2Å付近のピーク強度)]を算出することで上記油脂成分のβ型油脂の存在量を表す指標とし、「β型油脂を含む」ことが理解できる。本発明は、上記油脂成分が全てβ型油脂である(即ち、ピーク強度比=1)ことが理想である。
つまり、このピーク強度比が0であった場合、すべてがα型油脂であるとわかり、ピーク強度比が1であった場合、すべてがβ型油脂であるとわかり、また、ピーク強度比が1に近い数字であると、β型油脂が多いということがわかる。
油脂成分中のβ型油脂がより多い方が好ましいので、ピーク強度比は、1に近い値であることが好ましい。
したがって、ピーク強度比は、好ましくは0.6~1であり、より好ましくは0.7~1であり、さらに好ましくは0.8~1であり、さらにより好ましくは0.9~1であり、特に好ましくは0.95~1である。
油脂粉末A中の油脂成分の含量は、例えば50~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、85~100質量%、92~100質量%、95~100質量%程度であってもよい。
油脂成分は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む。当該XXX型トリグリセリドは、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは16~20から選択される整数であり、好ましくは16~18から選択される整数、より好ましくは18である。
脂肪酸残基Xは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Xとしては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、パルミチン酸及びステアリン酸であり、さらに好ましくは、ステアリン酸である。
当該XXX型トリグリセリドの含有量は、油脂粉末A又は油脂成分の全質量を100質量%とした場合、例えば、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上を下限とし、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、95質量%以下を上限とする範囲である。XXX型トリグリセリドは1種類又は2種類以上用いることができ、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類が用いられる。XXX型トリグリセリドが2種類以上の場合は、その合計値がXXX型トリグリセリドの含有量となる。
油脂成分は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。合成油脂としては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等が挙げられる。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。油脂粉末A又は油脂成分中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、その他のトリグリセリドは、油脂粉末A又は油脂成分の全質量を100質量%とした場合、例えば1質量%以上、あるいは5~50質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリグリセリドの含有量は、油脂粉末A又は油脂成分の全質量を100質量%とした場合、例えば、0~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~30質量%、更に好ましくは15~25質量%である。
油脂粉末Aは、実質的に上記油脂成分のみからなることが好ましく、かつ、油脂成分は、実質的にトリグリセリドのみからなることが好ましい。また、「実質的に」とは、油脂粉末A中に含まれる油脂成分以外の成分又は油脂成分中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂粉末A又は油脂成分を100質量%とした場合、例えば、0~15質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~5質量%であることを意味する。
油脂粉末Aは、常温(20℃)で粉末状の固体で、粒子は、板状形状の形態を有している。
ここで、油脂粉末の粒子が板状形状であるかどうかは、アスペクト比で判定することができる。
板状形状は、アスペクト比が1.1以上であることが好ましく、より好ましくは、1.2以上のアスペクト比であり、さらに好ましくは1.2~3.0、特に好ましくは、1.3~2.5、殊更好ましくは1.4~2.0である。
〔アスペクト比〕
本発明におけるアスペクト比は、粒子図形に対して、面積が最小となるように外接する長方形で囲み、その長方形の長辺の長さと短辺の長さの比と定義される。また、粒子が球状形状の場合は、アスペクト比は1.1より小さくなる。極度硬化油等を常温で固体脂含量の高い油脂を溶解し直接噴霧する方法では、油脂粉末Aの粒子が表面張力によって、球状形状となり、アスペクト比は1.1未満となる。そして、前記アスペクト比は、例えば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などによる直接観察により、任意に選択した粒子について、その長軸方向の長さおよび短軸方向の長さを計測することによって、計測した個数の平均値として求めることができる。
〔ゆるめ嵩密度〕
油脂粉末Aは、ゆるめ嵩密度が、好ましくは0.05~0.6g/cmであり、より好ましくは0.1~0.4g/cmであり、さらにより好ましくは0.1~0.3g/cmである。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)は、粉体の質量を、その粉体の占める嵩体積で割った値、すなわち、単位嵩体積当たりの粉体質量である。
ゆるめ嵩密度の測定は、パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン株式会社製)を使用して行うことができる。パウダテスタPT-Xによる測定では、注入法を採用し、正弦波の振動により容器へ空気を含んだ粉粒体を自由落下させることにより測定を行う。
具体的には、直径7.5cmの目開き1.7mmの円形の篩に粉末サンプルを200~300cm3供し、振幅1.5mmで振動させ、篩から落下させる(正弦波の振動による自由落下)。27cmの高さから自由落下した粉末サンプルは、篩の下に設置してあるステンレス製100cm3カップ(内径約5cm×高さ約5cm)に注入され、粉末サンプルが当該カップから溢れるまで注入された後、篩の振動を止める。その後、長方形のブレードでカップ上の余分な粉体サンプルをカップの上面に沿ってすり切り、カップ中の粉体サンプルの質量(A(g))を測定することでゆるめ嵩密度を下記式(V)から算出する。
ゆるめ嵩密度は、1つのサンプルについて3回測定し、その平均値をそのサンプルのゆるめ嵩密度の値とする。

ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3) (V)
油脂粉末Aのゆるめ嵩密度は、例えば、油脂粉末Aが実質的に油脂成分のみからなる場合、0.05~0.6g/cm3、好ましくは0.1~0.5g/cm3であり、より好ましくは0.1~0.4cm3であり、さらに好ましくは0.1~0.3g/cm3である。
次に、油脂粉末Aの製造方法について説明をする。
油脂粉末Aは、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を溶融状態とし、特定の冷却温度に保ち、冷却固化することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、油脂粉末Aを得ることができる。より具体的には、(a)上記XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を準備し、任意に工程(b)として、工程(a)で得られた油脂粉末Aの原料を加熱し、前記油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂粉末Aの原料を得、さらに(d)前記油脂粉末Aの原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子の形状が板状である油脂粉末Aを得る。なお、冷却後に得られる固形物に対して、ハンマーミル、カッターミル、微粉砕機等、公知の粉砕加工手段を適用して、該油脂粉末Aを製造することもできる。
さらに詳細に、油脂粉末Aの製造方法について説明をする。
油脂粉末Aは、以下の工程、
(a)XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を準備する工程、
(b)工程(a)で得られた油脂粉末Aの原料を任意に加熱等し、前記油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂粉末Aの原料を得る任意の工程、
(d)前記油脂粉末Aの原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である油脂粉末Aを得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。
さらに、上記工程(d)では、冷却後に得られる空隙を有する固形物に衝撃(粉砕する、ほぐす、振動させる、篩にかける等)を加えることにより、油脂粉末Aを得ることもできる。
以下、上記工程(a)~(d)について説明する。
(a)原料準備工程
工程(a)で準備されるXXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む通常のXXX型トリグリセリド等の油脂の製造方法に基づいて製造され、もしくは容易に市場から入手され得る。ここで、上記炭素数x及び飽和脂肪酸残基Xで特定されるXXX型トリグリセリドは、最終的に得られる目的の油脂成分のものと結晶多形以外の点で同じである。当該原料にはβ型油脂が含まれていてもよく、例えば、β型油脂の含有量が0.1質量%以下、0.05質量%以下、又は0.01質量%以下含んでいてもよい。但し、β型油脂は、当該原料を加熱等により溶融状態にすることにより消失するので、当該原料は溶融状態の原料であってもよい。当該原料が、例えば溶融状態である場合に、β型油脂を実質的に含まないことは、XXX型トリグリセリドに限らず、実質的に全ての油脂成分がβ型油脂ではない場合も意味し、β型油脂の存在は、上述したX線回折測定によりβ型油脂に起因する回折ピーク、示差走査熱量測定法によるβ型油脂の確認等によって確認することができる。「β型油脂を実質的に含まない」場合のβ型油脂の存在量は、X線回折ピークのうち、β型の特徴的ピークとα型の特徴的ピークとの強度比率[β型の特徴的ピークの強度/(α型の特徴的ピークの強度+β型の特徴的ピークの強度)](ピーク強度比)から想定できる。上記油脂粉末Aの原料の当該ピーク強度比は、例えば0.2以下であり、好ましくは、0.15以下であり、より好ましくは、0.10以下である。油脂粉末Aの原料には、上述したとおりのXXX型トリグリセリドを1種類又は2種以上含んでいてもよく、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類である。
具体的には、例えば、上記XXX型トリグリセリドは、脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリンを用いた直接合成によって製造することができる。XXX型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Xの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
XXX型トリグリセリドは前述の(i)~(iii)のいずれの方法によっても製造できるが、製造の容易さの観点から、(i)直接エステル合成又は(ii)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(i)直接エステル合成がより好ましい。
XXX型トリグリセリドを(i)直接エステル合成によって製造するには、製造効率の観点から、グリセリン1モルに対して脂肪酸Xまたは脂肪酸Yを3~5モルを用いることが好ましく、3~4モルを用いることがより好ましい。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成における反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、例えば、120℃~300℃が好ましく、150℃~270℃がより好ましく、180℃~250℃がさらに好ましい。反応を180~250℃で行うことで、特に効率的にXXX型トリグリセリドを製造することができる。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、エステル化反応を促進する触媒を用いても良い。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001~1質量%程度であることが好ましい。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物をさらに精製することができる。
上記油脂粉末Aの原料中に含まれるXXX型トリグリセリドの量は、例えば、当該原料中に含まれる全トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、100~50質量%、好ましくは95~55質量%、より好ましくは90~60質量%である。さらに殊更好ましくは85~65質量%である。
<その他のトリグリセリド>
XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料となるその他のトリグリセリドとしては、上記XXX型トリグリセリドの他、本発明の効果を損なわない限り、各種トリグリセリドを含めてもよい。その他のトリグリセリドとしては、例えば、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの1つが脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリド、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの2つが脂肪酸残基Yに置換したXY2型トリグリセリド等を挙げることができる。
上記その他のトリグリセリドの量は、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0~100質量%、好ましくは0~70質量%、より好ましくは1~40質量%である。
また、油脂粉末Aの原料としては、上記XXX型トリグリセリドを直接合成する代わりに、天然由来のトリグリセリド組成物に対し水素添加、エステル交換又は分別を行ったものを使用してもよい。天然由来のトリグリセリド組成物としては、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、パームステアリン及びこれらの混合物等を挙げることができる。特に、これらの天然由来のトリグリセリド組成物の硬化油、部分硬化油、極度硬化油が好ましいものとして挙げられる。さらに好ましくは、ハードパームステアリン、ハイオレイックヒマワリ油極度硬化油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油が挙げられる。
さらに、油脂粉末Aの原料としては、市販されている、トリグリセリド組成物又は合成油脂を挙げることができる。例えば、トリグリセリド組成物としては、ハードパームステアリン(日清オイリオグループ株式会社製)、菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)、大豆極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)を挙げることができる。また、合成油脂としては、トリパルミチン(東京化成工業株式会社製)、トリステアリン(シグマアルドリッチ製)、トリステアリン(東京化成工業株式会社製)、トリアラキジン(東京化成工業株式会社製)トリベヘニン(東京化成工業株式会社製)を挙げることができる。
その他、パーム極度硬化油は、XXX型トリグリセリドの含量が少ないので、トリグリセリドの希釈成分として使用できる。
<その他の成分>
油脂粉末Aの原料としては、上記トリグリセリドの他、任意に部分グリセリド、脂肪酸、抗酸化剤、乳化剤、水などの溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0~5質量%、好ましくは0~2質量%、より好ましくは0~1質量%である。
上記油脂粉末Aの原料は、成分が複数含まれる場合、任意に混合してもよい。混合は、均質な反応基質が得られる限り公知のいかなる混合方法を用いてもよいが、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー等で行うことができる。
当該混合は、必要に応じて加熱下で混合してもよい。加熱は、後述の工程(b)における加熱温度と同程度であることが好ましく、例えば、50~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃、さらに好ましくは80℃で行われる。
(b)溶融状態の前記油脂粉末Aを得る工程
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で準備された油脂粉末Aの原料は、準備された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、準備された時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂粉末Aの原料を得る。
ここで、油脂粉末Aの原料の加熱は、上記油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70~200℃、好ましくは、75~150℃、より好ましくは80~100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.1~3時間、好ましくは、0.3~2時間、より好ましくは0.5~1時間継続することが適当である。
(d)溶融状態の油脂粉末Aの原料を冷却して油脂粉末Aを得る工程
上記工程(a)又は(b)で準備された溶融状態の油脂粉末Aの原料は、さらに冷却固化されて、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である油脂粉末Aを形成する。
ここで、「溶融状態の油脂粉末Aの原料を冷却固化」するためには、冷却温度の上限値として、溶融状態の油脂粉末Aの原料を、当該油脂粉末Aの原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度に保つことが必要である。「油脂粉末Aの原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度」とは、例えば、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、β型油脂の融点は74℃であるので(表1)、当該融点より1~30℃低い温度(即ち44~73℃)、好ましくは当該融点より1~20℃低い温度(即ち54~73℃)、より好ましくは当該融点より1~15℃低い温度(即ち59~73℃)、特に好ましくは、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃低い温度である。
このような冷却温度以上とするのは、XXX型トリグリセリドを含有するβ型油脂を得るために、当該油脂の結晶化の際、冷却温度をβ型油脂以外のα型油脂やβ’型油脂が結晶化しない温度に設定する必要があるためである。冷却温度は、主にXXX型トリグリセリドの分子の大きさに依存するので、炭素数xと最適な冷却温度の下限値との間には一定の相関関係があることが理解できる。
例えば、油脂粉末Aの原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドである場合、冷却温度の下限値は50.8℃以上となる。従って、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、「溶融状態の油脂粉末Aの原料を冷却固化」する温度は、50.8℃以上72℃以下がより好ましいこととなる。
また、XXX型トリグリセリドが2種以上の混合物である場合は、炭素数xが小さい方の冷却温度に合わせてその下限値を決定することができる。例えば、油脂粉末Aの原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が16のパルミチン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドと炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドとの混合物である場合、冷却温度の下限値は小さい方の炭素数16に合わせて37.6℃以上となる。
別の態様として、上記冷却温度の下限値は、XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料の、当該β型油脂に対応するα型油脂の融点以上の温度であることが適当である。例えば、油脂粉末Aの原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドである場合、当該ステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドのα型油脂の融点は55℃であるから(表1)、かかる場合の「溶融状態の油脂粉末Aの原料を冷却固化」する温度は、55℃以上72℃以下が好ましいこととなる。
さらに別の態様として、溶融状態にある油脂粉末Aの原料の冷却は、xが16のときは、好ましくは36~66℃、より好ましくは44~64℃、更に好ましくは52~62℃であり、xが17又は18のときは、好ましくは50~72℃、より好ましくは54~70℃、更に好ましくは58~68℃であり、xが19又は20のときは、好ましくは62~80℃、より好ましくは66~78℃、更に好ましくは70~77℃である。上記最終温度において、例えば、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間以上であって、好ましくは2日間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下、静置することが適当である。
(c)粉末生成促進工程
さらに、工程(d)の前、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂粉末Aの組成物原料に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。これらの任意工程(c1)~(c3)は、いずれか単独で行ってもよいし、複数の工程を組み合わせて行ってもよい。ここで、工程(a)又は(b)と工程(d)との間とは、工程(a)又は(b)中、工程(a)又は(b)の後であって工程(d)の前、工程(d)中を含む意味である。
シーディング法(c1)及びテンパリング法(c2)は、油脂粉末Aの製造において、溶融状態にある油脂粉末Aの原料をより確実に粉末状とするために、最終温度まで冷却する前に、溶融状態にある油脂粉末Aの原料を処置する粉末生成促進方法である。
ここで、シーディング法(c1)とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂粉末Aの原料の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂粉末Aの物原料に、当該油脂粉末Aの原料中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂粉末Aの原料の冷却時、当該油脂粉末Aの原料の温度が、例えば、最終冷却温度±0~+10℃、好ましくは+5~+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂粉末Aの原料100質量部に対して0.1~1質量部、好ましくは0.2~0.8質量部添加することにより、油脂の粉末化を促進する方法である。
また、テンパリング法(c2)とは、溶融状態にある油脂粉末Aの原料の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5~20℃低い温度、好ましくは7~15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10~120分間、より好ましくは30~90分間程度冷却することにより、油脂の粉末化を促進する方法である。
さらに、予備冷却法(c3)とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂粉末Aの原料を、工程(d)にて冷却する前に、前記XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を準備した時の温度と前記油脂粉末Aの原料の冷却時の冷却温度との間の温度で一旦冷却する方法、言い換えれば、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。(c3)予備冷却法に続いて、工程(d)の油脂粉末Aの原料の冷却時の冷却温度で冷却することが行われる。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2~40℃高い温度、好ましくは3~30℃高い温度、より好ましくは4~30℃高い温度、さらに好ましくは5~10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
(衝撃を与えることのよる粉末化)
工程(d)の冷却後に得られる空隙を有する固形物は、溶融状態の油脂よりも体積が増加した空隙を有する固体物であるが、この空隙を有する固体物は容易に崩壊して粉末状の物質になるため、特に粉末化工程を設けなくても、容器に充填する充填工程や運搬工程で、空隙が崩壊して粉末状の物質にすることができる。
また、(d)工程で得られた空隙を有する固体物に、衝撃を与えて粉末化することもできる。衝撃を与える方法は特に限定されないが、例えば、通常の粉砕機(ハンマーミル、カッターミル、微粉砕機等)を用いて空隙を有する固体物を粉砕する方法、空隙を有する固体物をスパチュラ、ゴムベラ、スコップ等でほぐす方法、容器に入れた空隙を有する固体物を振動させる方法、空隙を有する固体物を篩に掛けて衝撃を加える方法等が挙げられる。
また、これらの粉砕をする前に、空隙を有する固形物を解砕機で解砕しても良い。
このようにして、油脂粉末Aを製造することができる。
(改良酸性調味料)
次に、本発明の改良酸性調味料について説明をする。
本発明の改良酸性調味料は、原料に使用した、ドレッシングタイプ調味料の食感とは異なる新たな食感を有するものである。
改良酸性調味料中のドレッシングタイプ調味料の含量は、65~85質量%であることが好ましく、68~82質量%であることがより好ましく、70~80質量%であることがさらに好ましい。
改良酸性調味料中の油脂粉末の含量は、15~30質量%であることが好ましく、18~27質量%であることがより好ましく、20~25質量%であることがさらに好ましい。
なぜなら、油脂粉末の含量が15質量%未満であると、ドレッシングタイプ調味料の食感とは異なる新たな食感のものを得ることができず、また、油脂粉末を25質量%より多く含有させても、それ以上の効果を期待することができないからである。
改良酸性調味料の20℃における比重は、0.40~0.90g/cmであることが好ましく、0.50~0.80g/cmであることがより好ましく、0.50~0.70g/cmであることがさらに好ましい。
ドレッシングタイプ調味料、及び改良酸性調味料の比重は、比重は、一定容積におけるサンプルの質量を、同体積の標準物質(水)の質量で除した値を算出することで求めることができる。
比重が小さい値であるほど、その改良酸性調味料は、ふんわりとした食感を有する傾向となる。
本発明の改良酸性調味料の外観は、ペースト状で、改良酸性調味料の20℃における粘度は、5000~60000mPa・sであることが好ましく、8000~50000mPa・sであることがより好ましく、10000~45000mPa・sであることがさらに好ましい。
改良酸性調味料の粘度は、東機産業(株)社製の回転粘度計「BII型粘度計」で測定することができる。
本発明の改良酸性調味料には、各種成分、例えば、乳化剤、糖類、安定剤、塩類、香料等を適量配合することができる。
本発明の改良酸性調味料は、上述したように、乳化剤を配合しなくても作ることができるという点にも特徴がある。
乳化剤としては、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル、ポリソルベート等の従来公知の乳化剤が挙げられる。
糖類としては、例えば、グルコース、マルトース、ソルビトール、シュークロース、ラクトース等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、寒天等が挙げられる。
塩類としては、例えば、メタリン酸ナトリウム、リン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
これらの他の成分は、改良酸性調味料の機能を損なわない範囲で含有させることができる。
(改良酸性調味料の製造方法)
本発明の改良酸性調味料は、簡単に製造することができ、上述したドレッシングタイプ調味料と、融点が55℃以上の油脂粉末とを混合撹拌することにより製造することができる。
改良酸性調味料中のドレッシングタイプ調味料の配合量は、65~85質量%であることが好ましく、68~82質量%であることがより好ましく、70~80質量%であることがさらに好ましい。
改良酸性調味料中の油脂粉末の配合量は、15~30質量%であることが好ましく、18~27質量%であることがより好ましく、20~25質量%であることがさらに好ましい。
混合撹拌は、撹拌器具を使って手で行うこともできるが、撹拌機を使用して行うこともできる。
撹拌機としては、卓上タイプの縦型ミキサー(ホバート・ジャパン(株)製、「ミキサーN50」)等が挙げられる。
混合撹拌の時間は、特に限定しないが、1~15分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましく、1~5分であることがさらに好ましい。
(改良酸性調味料を含有する食品)
本発明の改良酸性調味料は、サラダや冷やっこ等の各種食品に使用することができる。
なお、原料のドレッシングタイプ調味料は、食品表示法に基づく「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)で、主にサラダに使用するものと定義されているが、本発明の改良酸性調味料は、サラダ以外の食品にも広く使用することができる。
本発明の改良酸性調味料を含有する食品は、原料として改良酸性調味料を使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
次に本発明を、実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施に何ら制限されるものではない。また。以下において「%」は、特別な記載がない限り、質量%を示す。
<分析方法>
・油脂粉末の融点
DSC(メトラー・トレド社製 DSC1)を使用して、試料(ex.油脂粉末)を、2℃/分の昇温速度で加熱し、吸熱曲線を測定した。融点は、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの、交点の温度として求めた。
・油脂粉末の平均粒径
平均粒径は、粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、装置名:SALD-2300)でレーザ回折散乱法(ISO13320、JIS Z 8825-1)に基づいて、乾式測定により体積基準粒度分布を測定して体積平均径〔MV〕を求め、得られた体積平均径〔MV〕を平均粒径とした。体積平均径〔MV〕は、粒子の粒径、粒子の体積、及び粒子の体積の総和の各値を使って以下の式から求めた。

体積平均径〔MV〕=(粒径×その粒子の体積)の総和/粒子の体積の総和
・トリアシルグリセロール組成
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)~(15℃/min)~370℃(4min hold)
・X線回折測定
X線回折装置((株)リガク、全自動多目的X線回折装置Smart Lab 9 kW)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力9.0kW、操作角0.96~30.0°、測定速度20°/分の条件で測定した。この測定により、XXX型トリグリセリドを含む油脂成分におけるα型油脂、β’型油脂、及びβ型油脂の存在を確認した。4.6Å付近のピークのみを有し、4.1~4.2Å付近のピークを有しない場合は、油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断できる。
したがって、上記X線回析測定の結果から、ピーク強度比=[β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å))/(α型の特徴的ピークの強度(2θ=21°(4.2Å))+β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å)))]を算出し、その値をβ型油脂の存在量を表す指標として判断した。
・ゆるめ嵩密度
ゆるめ嵩密度(g/cm3)は、粉体の質量を、その粉体の占める嵩体積で割った値、すなわち、単位嵩体積当たりの粉体質量として求めた。
ゆるめ嵩密度の測定は、パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン株式会社製)を使用して測定した。パウダテスタPT-Xは注入法を採用しており、正弦波の振動により容器へ空気を含んだ粉粒体を自由落下させることにより測定を行った。
具体的には、直径7.5cmの目開き1.7mmの円形の篩に粉末サンプルを200~300cm3供し、振幅1.5mmで振動させ、篩から落下させた(正弦波の振動による自由落下)。27cmの高さから自由落下した粉末サンプルは、篩の下に設置してあるステンレス製100cm3カップ(内径約5cm×高さ約5cm)に注入され、粉末サンプルがカップから溢れるまで注入された後、篩の振動を止めた。その後、長方形のブレードでカップ上の余分な粉末サンプルをカップの上面に沿ってすり切り、カップ中の粉体サンプルの質量(A(g))を測定することでゆるめ嵩密度を下記式(V)から算出した。なお、ゆるめ嵩密度は、1つのサンプルについて3回測定し、その平均値をそのサンプルのゆるめ嵩密度の値とした。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3) (V)
・外観観察
得られた各種油脂粉末の外観を目視で観察した。
また、後述する製造例1の油脂粉末(a)の粒子の形状を、電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM-7500F」)を用いて、倍率10000倍で観察した。
電子顕微鏡で観察するサンプルの蒸着方法を以下に記載する。
まず、銅板上に導電テープを張り試料粉を上に載せた後、余剰試料を飛ばす目的で窒素ガスによるブロワー処理をした。その後、蒸着処置は、Osmium plasma coator(Nippon Laser&Electronics Lab.社製、「OPC-80」)を用いて、オスミウム蒸着処理(30nm)を行った。
・ドレッシングタイプ調味料、及び改良酸性調味料の比重
ドレッシングタイプ調味料、及び改良酸性調味料の比重は、一定容積におけるサンプルの質量を、同体積の標準物質(水)の質量で除した値を算出し、その値を比重とした。
具体的には、72ml容量のカップにサンプルを満注し、余剰なサンプルをパレットナイフで除去した後、その質量を測定した。また、改良酸性調味料の比重の測定は、5分混合撹拌した最終品だけでなく、製造途中の1分、及び3分混合撹拌したものについても行った。測定は3回行い、その平均値をそのサンプルの比重とした。
比重が小さい値であるほど、その改良酸性調味料は、ふんわりとした食感を有する傾向となる。
・改良酸性調味料の粘度
改良酸性調味料の粘度は、東機産業(株)社製の回転粘度計「BII型粘度計」で測定した。
具体的には、ローターNO.3を用いて、回転数12rpmの条件で粘度を測定した。測定は3回行い、その平均値をそのサンプルの粘度とした。
・改良酸性調味料の製造に使用した原料
表2に、後述する改良酸性調味料の製造に使用した原料を示す。
Figure 2023044535000003
〔製造例1:油脂粉末(a)・・・明細書に記載した油脂粉末Aに該当〕
油脂粉末の原料として、横関油脂工業株式会社製のフレーク状の菜種極度硬化油(α型油脂、ピーク強度比:0.03、融点67℃、菜種極度硬化油の全質量を100質量%とした場合のグリセリンの1位~3位に炭素数18の脂肪酸残基X(ステアリン酸残基)を有するXXX型トリグリセリドの含有量は79.6質量%)を使用した。
フレーク状の菜種極度硬化油2kgを、ステンレス容器(横幅:530mm×奥行:325mm×高さ:100mm)に拡げて敷き詰め、計3個のステンレス容器を恒温室(横幅:5100mm×高さ:2100mm×奥行:4050mm、エスペック株式会社製、装置名「TBUU」)内のスチールラック(横幅:760mm×奥行:460mm×高さ:1795mm)に静置し、融点を超える80℃にて10時間維持して完全に融解した後、60℃で16時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却し、油脂固形物を得た。
得られた油脂固形物6.0kgを解砕機で解砕し、油脂解砕物を得た。
次に、微粉砕機を用いて、得られた解砕物を室温(25℃)の環境下で粉砕し、粉砕品を得た。得られた粉砕品を篩(30mesh)で処理をし、篩を通過した粉末を回収することで、β型油脂を含有する油脂粉末(a)(融点:67.4℃、平均粒径16.6μm、ゆるめ嵩密度:0.21g/cm、アスペクト比1.6、比表面積2.1(m/g)、ピーク強度比:0.98、油脂粉末の全質量を100質量%とした場合のグリセリンの1位~3位に炭素数18の脂肪酸残基X(ステアリン酸残基)を有するXXX型トリグリセリドの含有量は79.4質量%)を得た。
X線回折分析により、得られた油脂粉末(a)中の油脂の結晶多形は、β型であることを確認した。
油脂粉末(a)の粒子を上記外観観察に基づいて電子顕微鏡にて観察した結果、板状形状であった。電子顕微鏡写真を図2に示す。
〔改良酸性調味料の製造(実施例1~3、比較例1)〕
表3及び表4に示す配合(総仕込み量300g)で、改良酸性調味料の製造を行った。
まず、ドレッシングタイプ調味料と油脂粉末(a)をボールに入れ、卓上縦型ミキサー(ホバート・ジャパン(株)製「ミキサーN50」)で5分混合撹拌し、改良酸性調味料を製造した(実施例1~3、比較例1)。
また、対照サンプルとして、ドレッシングタイプ調味料を、何も添加せずにそのまま混合撹拌した(対照サンプル)。
〔外観、分析、官能評価〕
(1)外観
得られた改良酸性調味料の外観を目視で観察した。外観を表3及び4の配合の下に示す。
(2)比重、及び粘度
・比重
原料のドレッシングタイプ調味料、及び改良酸性調味料の比重を測定した。改良酸性調味料の比重の測定は、5分混合撹拌した最終品だけでなく、製造途中の1分、及び3分混合撹拌したものについても行った。結果を表3及び表4の配合の下に示す。
・粘度
得られた改良酸性調味料の粘度を測定した。測定結果を表3及び表4の配合の下に示す。
(3)官能評価
得られた改良酸性調味料について、食感を評価した。評価結果を表3及び表4の配合の下に示す。
Figure 2023044535000004
Figure 2023044535000005
表3及び4の結果から、ドレッシングタイプ調味料に、油脂粉末を特定量添加して混合撹拌することにより得られた改良酸性調味料は、油脂粉末を添加していないものに比べて、ふんわりとした食感を有していることがわかった。
〔各種油脂粉末又は乳化剤を用いた改良酸性調味料の製造(比較例2~5)〕
表5及び表6に示す配合(総仕込み量300g)で、改良酸性調味料の製造を行った。
まず、ドレッシングタイプ調味料と油脂粉末(b)、(c)、又は(d)をボールに入れ、ホバート・ジャパン(株)製のミキサーN50で5分混合撹拌したが、得られた酸性調味料は分離を生じていた(比較例2~5)。
また、比較例5は、ドレッシングタイプ調味料と乳化剤をボールに入れ、ホバート・ジャパン(株)製のミキサーN50で5分混合撹拌したが、得られた酸性調味料は、液状で、分離はなかったが、乳化剤がダマになっていた。(比較例2)。
得られた酸性調味料は、分離が生じたり、ダマが生じたりして、商品価値のないものであったため、粘度、及び比重の測定、食感評価は行わなかった。
(1)外観
得られた改良酸性調味料の外観を目視で観察した。外観を表5及び6の配合の下に示す。
Figure 2023044535000006
Figure 2023044535000007
表5、表6の結果から、ドレッシングタイプ調味料に、油脂粉末(b)(c)(d)、及び乳化剤を添加した場合、分離等が生じ、改良酸性調味料を得ることができなかった。
〔原料に乳化液状ドレッシング、又は分離液状ドレッシングを用いた検討(比較例6、7)〕
表7に示す配合(総仕込み量300g)で、改良酸性調味料の製造を行った。
まず、乳化液状ドレッシングと油脂粉末(a)をボールに入れ、ホバート・ジャパン(株)製のミキサーN50で5分混合撹拌したが、得られた酸性調味料は、分離を生じていた(比較例6、7)。
得られた酸性調味料は、分離が生じていて商品価値のないものであったため、粘度、及び比重の測定、食感評価は行わなかった。
(1)外観
得られた改良酸性調味料の外観を目視で観察した。外観を表7の配合の下に示す。
Figure 2023044535000008
表7の結果から、乳化液状ドレッシング、又は分離液状ドレッシングに、油脂粉末(a)を添加して混合撹拌しても、分離が生じてしまい、改良酸性調味料を得ることができなかった。このことから、原料に、食用油脂を原材料として使用した乳化液状ドレッシングや分離液状ドレッシングのような酸性調味料を用いた場合には、改良酸性調味料が得られないことがわかった。
〔改良酸性調味料を使用した食品(実施例4、5、比較例8、9)〕
サラダに、対照サンプル、又は実施例3の改良酸性調味料をかけて、そのときの様子及び食感を確認した。結果を表8に示す。
また、豆腐に、対照サンプル、又は実施例3の改良酸性調味料をのせて、そのときの様子及び食感を確認した。結果を表8に示す。
得られた実施例4のサラダの写真を図3、及び実施例5の冷奴の写真を図4に示す。
Figure 2023044535000009

Claims (9)

  1. ドレッシングタイプ調味料と、平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末とを含有する改良酸性調味料であって、該改良酸性調味料中の該油脂粉末の含量が15~30質量%であることを特徴とする改良酸性調味料。
  2. 前記改良酸性調味料の比重が、0.40~0.90g/cmであることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の改良酸性調味料。
  3. 前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、前記炭素数xは16~20から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記油脂粉末の粒子は板状形状を有する油脂粉末である、請求項1又は2に記載の改良酸性調味料。
  4. 乳化剤が配合されていないことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の改良酸性調味料。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の改良酸性調味料を含有する食品。
  6. 平均粒径が0.5~50μmで融点が55℃以上の油脂粉末を15~30質量%含有する改良酸性調味料の製造方法であって、ドレッシングタイプ調味料と該油脂粉末とを混合撹拌することを特徴とする改良酸性調味料の製造方法。
  7. 前記改良酸性調味料の比重が、0.40~0.90g/cmであることを特徴とすることを特徴とする請求項6に記載の改良酸性調味料。
  8. 前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、前記炭素数xは16~20から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記油脂粉末の粒子は板状形状を有する油脂粉末である、請求項6又は7に記載の改良酸性調味料。
  9. 乳化剤を配合しないことを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の改良酸性調味料の製造方法。
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