JP6366365B2 - ノンテンパー型チョコレート - Google Patents
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(1)チョコレートに含まれる油脂が以下の(a)から(d)の条件を満たすノンテンパー型チョコレート。
(a)XOX含量が60〜86質量%
(b)POP含量が24〜44質量%
(c)StOSt含量が12〜26質量%
(d)XU2+U3含量が7質量%以上
ただし、上記(a)から(d)の条件において、X、P、St、U、O、XOX、POP、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜20の飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
O:オレイン酸
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
POP:1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
(2)被覆又はトッピングに用いられる(1)のノンテンパー型チョコレート。
(3)(1)又は(2)のノンテンパー型チョコレートと、菓子とを組み合わせた複合菓子。
(4)ノンテンパー型チョコレートが菓子に被覆又はトッピングされている(3)の複合菓子。
(5)冷蔵温度域で保存する(3)又は(4)の複合菓子。
(6)チョコレートに含まれる油脂が以下の(a)から(d)の条件を満たす溶融状態のチョコレートを、テンパリング乃至シーディングを実施することなく冷却固化する、ノンテンパー型チョコレートの製造方法。
(a)XOX含量が60〜86質量%
(b)POP含量が24〜44質量%
(c)StOSt含量が12〜26質量%
(d)XU2+U3含量が7質量%以上
ただし、上記(a)から(d)の条件において、X、P、St、U、O、XOX、POP、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜20の飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
O:オレイン酸
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
POP:1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
また、本発明によると、テンパー型ハードバターをベース油脂とし、かつ、ココアバター含量の高いチョコレートであっても、加工時の作業性の良いチョコレートを提供することができる。
(a)XOX含量が60〜86質量%
(b)POP含量が24〜44質量%
(c)StOSt含量が12〜26質量%
(d)XU2+U3含量が7質量%以上
また、本発明においてノンテンパー型チョコレートとは、テンパリング乃至その代用であるシーディングを行わずに製造したチョコレートのことである。
なお、本発明において、XOXは1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリドである(トリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである。)。また、本発明において、Xは炭素数16〜20の飽和脂肪酸であり、Oはオレイン酸(炭素数18の1価の不飽和脂肪酸)である。
なお、本発明において、POPは1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリドである。また、本発明において、Pはパルミチン酸(炭素数16の飽和脂肪酸)である。
なお、本発明において、StOStは1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリドである。また、本発明において、Stはステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)である。
なお、本発明において、XU2はXが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド(XUU+UXU+UUX)である。また、本発明において、U3はUが3分子結合しているトリグリセリドである。また、本発明において、Uは炭素数18の不飽和脂肪酸である。
なお、本発明において、POStは1位と3位に順不同でPとStの両方、2位にOが結合しているトリグリセリドである。
なお、本発明においてココアバターは、カカオマス、ココアパウダー等の含油原料由来のココアバターも含むものである。
なお、本発明において、X2OはXが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドである。また、本発明において、XOX/X2Oの質量比は、X2O含量(質量%)に対するXOX含量(質量%)の比のことである。
また、本発明の実施の形態に係るノンテンパー型チョコレートは、テンパー型ハードバターをベース油脂とし、かつ、ココアバター含量の高いものであっても、流動性が良いため、被覆、トッピング、練り込む等の加工時の作業性が良いものである。
本発明の実施の形態に係る複合菓子は、本発明の実施の形態に係るノンテンパー型チョコレートを用いること以外は、従来公知の方法により製造することができる。
〔トリグリセリド組成の分析方法〕
トリグリセリド組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)準拠)及び銀イオンカラム−HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)準拠)を用いて行った。
〔SFC(固体脂含量)の測定方法〕
SFCの測定は、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。
〔X線回折の測定〕
油脂のX線回折は、X線回折装置UltimaIV(株式会社リガク社製)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96〜30.0°、測定速度2°/分の条件で測定した。
ココアバター(商品名:TCココアバター、大東カカオ株式会社製)
POP高含有油脂(POP含量67.9質量%、日清オイリオグループ株式会社社内調製品)(パーム中融点部を更に分別処理して得られる中融点部)
StOSt高含有油脂(StOSt含量72.7質量%、日清オイリオグループ株式会社社内調製品)(ハイオレイックヒマワリ油とステアリン酸エチルエステルとの1、3位選択的エステル交換油を、分別処理して得られる中融点部)
パームオレイン(XU2+U3含量46.7質量%、日清オイリオグループ株式会社社内調製品)
表1、2の配合で常法(混合、微粒化、精練、冷却)により、テンパリングを行わずに実施例1〜4及び比較例1〜2のチョコレート(ノンテンパー型チョコレート)を製造した(表中の配合及び含量の単位は質量%、含量比の単位はなしである)。すなわち、精錬後50℃で溶融した各チョコレートを35℃まで粗熱をとり、樹脂シャーレ(内径84.5mm)に7g注下し、タッピングしながらシャーレ底面に均一に拡げて約1mmのチョコレート層とし、8℃の冷風を循環した冷蔵庫内で固化した。シャーレに注下、単純冷却固化時の溶融チョコレートの流動性を以下の基準に従って評価し、結果を表1、2に併記した。
また、別途、精錬後50℃で溶融した各チョコレートを35℃まで粗熱をとり、単純冷却固化したものを作成し、10℃で3週間保存後の口どけを以下の基準に従って評価し、結果を表1、2に併記した。
◎: 流動性が非常に良い
○: 流動性が良い
△: 流動性がやや良い
×: 流動性が良くない
◎: 口どけが非常に良い
○: 口どけが良い
△: ふつうである
×: 口どけが良くない
また、実施例1〜4及び比較例1〜2のチョコレートの各油脂相の組成でブレンドした油脂そのものを、上記チョコレートの製造と同一の条件で単純冷却して、チョコレートと同様に、15℃、10℃、5℃の低温インキュベーター中に保管して、冷却固化直後、1週間後及び3週間後に、各温度に保存した各ブレンド油脂の油脂結晶のX線回折を測定し、油脂の結晶多形の変化を調べた。結果を表1、2に併記した。
+++: 目視で甚だしくブルームが観察される
+: 目視で明らかにブルームが観察される
±: 目視で軽微なブルームが観察される
−: ブルームは観察されない
α型: 長面間隔領域に50Å、短面間隔領域に4.2Åの回折ピークが存在する
γ型: 長面間隔領域に34Å、短面間隔領域に4.6Åと3.9Åの回折ピークが存在する
β’型: 長面間隔領域に45Å、短面間隔領域に4.3Åと3.9〜4.0Åの回折ピークが存在する
β型: 長面間隔領域に66Å、短面間隔領域に4.6Å、4.0Å、3.9Å及び3.7Åの回折ピークが存在する
15℃で1週間保存した比較例1及び2のチョコレートは、目視で観察される明らかなブルームが発生した。一方、チョコレートの油脂中のPOP含量を約2倍にした実施例1、3及び4のチョコレートは軽微なブルームを生じたが、POP含量を約3倍にした実施例2のチョコレートでは、目視でブルームは認められなかった。15℃で3週間保存した場合には、全てのチョコレートでブルームが発生したが、POP含量を高めた実施例のチョコレートの方がその程度は小さかった。10℃と5℃の保存では、1週間と3週間の保存で、全てのチョコレートに明瞭なブルームは認められなかった。
このブルーム発生の状況は、各チョコレートの油脂相組成でブレンドした油脂を、チョコレートと同一条件で単純冷却して各温度に保存した油脂結晶のX線回折での多形変化と相関していることが認められた。
すなわち、ブレンド油脂の単純冷却固化直後の多形は比較例1及び2の場合に、鎖長構造が二鎖で副格子構造が六方晶系であることを示す長面間隔領域の50Åの回折ピーク一本と、短面間隔領域の42Åの回折ピーク一本だけとなるα型を示した。また、比較例1及び2に対して、チョコレートの油脂中のPOP含量を約2〜3倍に高くした実施例の場合は、鎖長構造が二鎖で副格子構造が六方晶系であることを示す長面間隔領域の50Åの回折ピークと短面間隔領域の4.2Åの回折ピークに加えて、POPのγ型結晶の微量な混在を示す長面間隔領域の34Åの小さな回折ピークと短面間隔領域の4.6Åと3.9Åの小さなピークが認められた。すなわち、この場合はα型が主体で、これにPOP含量が高いことでのPOPのγ型結晶も微量に混在した。
これらを15、10及び5℃の各温度に保存すると、ブレンド油脂の結晶は経時的により安定な多形への転移を示した。すなわち、表1に示したように、単純冷却したブレンド油脂の結晶を15℃に1週間保持すると、比較例2では三鎖長を示す66Å(ミラー指数001面)の長面間隔と、4.6Åに強い回折ピークと4.0Å、3.9Å、3.8Å、3.7Åに中間的な強度の回折ピークを有するβ型特有の短面間隔領域回折パターンとなり、β型に転移していた。比較例1の場合は、β型の他に二鎖長を示す45Å(ミラー指数001面)の小さなピークも観察され、β型に少量の不安定なβ’型が混在していた。そして、POP含量を2〜3倍程度に高めた場合では、15℃に1週間の保存で多形は安定なβ型への転移を生じてはいたが、その程度は小さく、多形の主体は不安定なβ’型であった。そして、3週間の保存では、比較例1及び2のブレンド油脂は完全にβ型に転移したが、2〜3倍程度にPOP含量を高めた実施例は、完全にβ型への転移とはならず、β型とほぼ同じ程度かやや少ない程度のβ'型も残存した。
10℃で保存した場合、温度が低い分、転移速度が遅くなることが確認された。すなわち、1週間の保存で比較例1及び2のブレンド油脂は、共にβ’型主体でβ型の微量混在にとどまったが、これらは3週間の保存で、β型主体でβ’型の少量混在の状態まで多形転移が進んだ。一方、2〜3倍程度にPOP含量を高めた実施例の場合、3週間の保存でも、単純冷却直後のα型が主体でγ型が少量混在するX線回折パターンを維持した。
5℃の保存では、さらに低温の多形転移遅延効果が確認された。すなわち、1週間の保存で比較例1及び2のブレンド油脂は、共にβ’型主体でβ型の少量混在状態であったが、3週間でもこの状態が継続された。一方、2〜3倍程度にPOP含量を高めた実施例の場合、10℃での保存同様に、単純冷却直後のα型が主体でγ型が少量混在するX線回折パターンを維持した。
こうした結果は、チョコレート中の油脂がココアバターのみである場合(比較例2)やココアバターと乳脂肪である場合(比較例1)は、各温度でのβ型への転移が早いが、チョコレートの油脂中のPOP含量を高めることで、安定型への多形転移が著しく抑制できることを示唆しており、同時に、油脂結晶の安定型への多形転移の抑制が、ブルームの目視観察(ブルームの発生抑制)と深く関連していることも示唆される。
(テンパリングチョコレートのSFC測定)
比較例2のチョコレート(油脂相を構成する油脂がココアバターのみ)と、実施例4のチョコレート(油脂相を構成する油脂のPOP含量が比較例の約2倍)及び実施例2のチョコレート(油脂相を構成する油脂のPOP含量が比較例の約3倍)において、まず、各チョコレートを50℃以上で完全に油脂結晶を融解した後、28〜30℃に冷却し、StOStのβ型微結晶をショートニングに均一分散したチョコレートシード剤(日清オイリオ株式会社社内製)をチョコレートの総油分の1重量%に相当する量添加して10分間撹拌分散させ、しかる後該チョコレートをパルスNMR測定用ガラス管に充填し、8℃で冷却固化し、20℃に1週間保持してから、パルスNMR(Bruker BioSPin KK、minispec mq)で各温度における固体脂含量(SFC値)を間接法(オリーブ油を対照)のシリーズ測定で得た結果を表3に示した。こうして冷却固化したチョコレート中の油脂結晶は全て安定なβ型であった。
(単純冷却固化チョコレートのSFC測定)
一方、単純冷却固化の場合は、上記溶融した比較例2、実施例4及び実施例2の各チョコレートを直接パルスNMR測定用ガラス管に充填し、8℃で冷却固化した後、直ちに上記の方法でSFC値を測定した。この場合のチョコレートの油脂結晶は比較例2でα型、実施例4及び2ではα型が主体でγ型が微量混在した共に不安定な結晶型であった。SFCの測定結果を表3に示した。
通常の製造法、つまりテンパリング、あるいは、シーディングを実施し、しかる後冷却してβ型で固化したテンパー型チョコレートの共通する傾向は、低温で高いSFC値を示すが、25℃程度からチョコレート中の油脂結晶が急激に融け始め、体温に近い35℃でほぼ完全に融けてしまう。この特性が、テンパー型チョコレートはスナップ性があって、口どけが良いとの評価につながっている。
一方、同一組成のテンパー型チョコレートをテンパリング、あるいは、シーディングを実施することなく、単純冷却してα型、あるいは、α型主体でγ型の結晶が少量存在する不安定な結晶で固化した場合は、10〜20℃で形状が良好に保持される十分に高いSFC値を示すが、20℃以上になるとチョコレート中の油脂結晶が急激に融け始めて著しく低いSFC値を示した。これは、安定なβ型で固化した場合よりも、低い温度で著しく口どけが良くなることを示唆している。また、チョコレートの油脂中のXU2+U3含量がほぼ同等である比較例2と実施例2の単純冷却固化を比較すると、10℃のSFC値はXU2+U3の量がほぼ同等なことを反映してSFC値はほぼ90%と同じだが、20℃に昇温すると、実施例2のSFCは約55%となり、比較例2のSFC値である約70%よりも25%低くなる。そして25℃になると比較例2はペースト状となり、そのSFC値は約32%となったが、実施例2では流動状態となってそのSFC値は約16%となり、比較例2の半分まで低下した。これはチョコレートの油脂中のPOP含量が高くなると、ココアバターのみの場合より著しく口どけが改善されることを示唆している。
また、上記の表1、2で示したように、チョコレート中の油脂のほとんどがココアバターである比較例1及び2は、油脂結晶の安定型への多形転移が早いので、経時的に融点が上昇して口どけが悪くなるが、POP含量が高くなると、安定型への転移が遅くなり、長期間、安定した良好な口どけが維持されることも、POP含量を高くすることの利点であると考えられる。以上のことは、口どけを評価した官能試験(表1、2)でも同じ結果となることが確認された。
Claims (6)
- チョコレートに含まれる油脂が以下の(a)から(d)の条件を満たすノンテンパー型チョコレート。
(a)XOX含量が64〜82質量%
(b)POP含量が25〜42質量%
(c)StOSt含量が14〜22質量%
(d)XU2+U3含量が7質量%以上20質量%以下
ただし、上記(a)から(d)の条件において、X、P、St、U、O、XOX、POP、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜20の飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
O:オレイン酸
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
POP:1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド - 被覆又はトッピングに用いられる請求項1に記載のノンテンパー型チョコレート。
- 請求項1又は請求項2に記載のノンテンパー型チョコレートと、菓子とを組み合わせた複合菓子。
- ノンテンパー型チョコレートが菓子に被覆又はトッピングされている請求項3に記載の複合菓子。
- 冷蔵温度域で保存する請求項3又は請求項4に記載の複合菓子。
- チョコレートに含まれる油脂が以下の(a)から(d)の条件を満たす溶融状態のチョコレートを、テンパリング乃至シーディングを実施することなく冷却固化する、ノンテンパー型チョコレートの製造方法。
(a)XOX含量が64〜82質量%
(b)POP含量が25〜42質量%
(c)StOSt含量が14〜22質量%
(d)XU2+U3含量が7質量%以上20質量%以下
ただし、上記(a)から(d)の条件において、X、P、St、U、O、XOX、PO
P、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜20の飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
O:オレイン酸
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
POP:1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
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