JP2015131744A - 炭化珪素単結晶の製造方法および応力緩衝部材 - Google Patents

炭化珪素単結晶の製造方法および応力緩衝部材 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶性の高い炭化珪素単結晶を成長させることができる炭化珪素単結晶の製造方法およびそれに用いられる応力緩衝部材を提供する。
【解決手段】第1の主面と、第1の主面の反対側に位置する第2の主面を有し、第1の主面から第2の主面まで延びる孔が複数形成されている応力緩衝層を準備する工程(S10)と、応力緩衝層を介して種基板と台座とを固定する工程(S20)と、種基板上に炭化珪素単結晶を成長させる工程(S30)とを備え、固定する工程(S20)において、応力緩衝層と種基板とは接着剤により固定される。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭化珪素単結晶の製造方法およびそれに用いられる応力緩衝部材に関し、特に応力緩衝部材を介して台座に固定されている種基板を用いて実施される炭化珪素単結晶の製造方法および当該応力緩衝部材に関する。
炭化珪素単結晶(SiC単結晶)を成長させる方法としては、坩堝内において炭化珪素原料を昇華させることにより、台座に固定された種基板(種結晶)上に炭化珪素単結晶を成長させる昇華法が知られている。
特開2004−269297号公報には、台座と種基板との間に両者間に働く熱応力を緩和するための応力緩衝材を配置して、SiC単結晶を製造する方法が記載されている。
特開2004−269297号公報
しかしながら、特開2004−269297号公報に記載の応力緩衝材は、柔軟性黒鉛シートにより構成されているため、一般に炭素材料で構成されている台座と比べて気体の透過率が悪い。
そのため、種基板と台座とを応力緩衝材を介して接着する際、具体的には種基板と応力緩衝材との間および応力緩衝材と台座との間を接着剤により接着する際に、接着剤を加熱して硬化させるが、接着剤から揮発した気体は応力緩衝材を透過することができない。その結果、接着剤から揮発した気体は種基板と応力緩衝材との間に留められ、種基板と応力緩衝材との間で空隙が生じ、接着不良が引き起こされる場合がある。その結果、空隙が生じている領域において、応力緩衝材側に位置する種基板からSiCが昇華するという問題がある。また、空隙が生じている領域とそれ以外の領域との間で、種基板から台座への伝熱にムラが生じるため、種基板の結晶成長面全体にわたって結晶性の高い炭化珪素単結晶を成長させることが困難である。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本発明の主たる目的は、結晶性の高い炭化珪素単結晶を成長させることができる炭化珪素単結晶の製造方法およびそれに用いられる応力緩衝部材を提供することにある。
本発明に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、第1の主面と、第1の主面の反対側に位置する第2の主面を有し、第1の主面から第2の主面まで延びる孔が複数形成されている応力緩衝層を準備する工程と、応力緩衝層を介して種基板と台座とを固定する工程と、種基板上に炭化珪素単結晶を成長させる工程とを備え、固定する工程において、応力緩衝層と種基板とは接着剤により固定される。
本発明に係る応力緩衝部材は、結晶成長に用いられる応力緩衝部材であって、第1の主面と、第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有し、第1の主面から第2の主面まで延びる複数の孔が形成されている。
本発明によれば、結晶性の高い炭化珪素単結晶を成長させることができる炭化珪素単結晶の製造方法およびそれに用いられる応力緩衝部材を提供することができる。
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法のフローチャートである。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の変形例を説明するための断面図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の変形例を説明するための断面図である。
[本願発明の実施形態の説明]
(1)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、図1〜図6を参照して、第1の主面30Aと、第1の主面30Aの反対側に位置する第2の主面30Bを有し、第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる孔31が複数形成されている応力緩衝層30を準備する工程(S10)と、応力緩衝層30を介して種基板10と台座20とを固定する工程(S20)と、種基板10上に炭化珪素単結晶50を成長させる工程(S30)とを備え、固定する工程(S20)において、応力緩衝層30と種基板10とは接着剤40により固定される。
上述のように、昇華法に用いられる台座20は一般的に炭素材料で構成されているが、このような台座20は接着剤40の硬化の際に生じる気体を十分に透過させることができる。そのため、台座20まで達した気体は台座20の内部を通って結晶成長装置の外部に放出され得る。一方で、一般的に、応力緩衝層30は黒鉛シートで構成されているが、これは台座20と比べて気体の透過率が低い。そのため、種基板10の第4の主面10Bと応力緩衝層30の第1の主面30Aとを接着するための接着剤40から放出される気体は、応力緩衝層30を十分に透過することができず、第4の主面10Bと第1の主面30Aとの間に留まって空隙を生じさせる。この結果、炭化珪素単結晶50を成長させる工程において、種基板10の第4の主面10Bから炭化珪素が昇華して第4の主面10Bが荒れるといった問題がある。また、上記空隙が生じている領域と、空隙が生じていない領域との間で伝熱にムラが生じるため、得られる炭化珪素単結晶50は結晶性が低下している。
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法によれば、台座20と比べて気体の透過率が低い材料で応力緩衝層30が構成されている場合にも、応力緩衝層30の第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びるように形成されている複数の孔31を気体の流通経路とすることができる。これにより、固定する工程において、接着剤40を用いて種基板10と応力緩衝層30、および台座20と応力緩衝層30を接着して固定する際、加熱により接着剤40から揮発した気体が種基板10と応力緩衝層30との間に留まって空隙を生じることを抑制することができる。
具体的には、種基板10と応力緩衝層30との間に塗布されている接着剤40から揮発した気体は、応力緩衝層30に設けられている複数の孔31を通って台座20に達する。上述のように、昇華法に用いられる一般的な台座20は、応力緩衝層30よりも気体の透過率が高いため、台座20まで達した気体は台座20の内部と通って結晶成長装置の外部に放出され得る。その結果、加熱により接着剤40から揮発した気体が種基板10と応力緩衝層30との間に留まって空隙を生じることを抑制することができ、種基板10と台座20との間で接着不良が生じることを抑制することができる。その結果、結晶性の高い炭化珪素単結晶50を成長させることができる。
なお、特開2004−269297号公報には、SiC種結晶を成長容器外の外気に接触させるための中空貫通孔が設けられている、応力緩衝層および台座が記載されている。しかし、この場合、種基板10の第3の主面10Aにおいて外気による冷却効果の高低が生じ、温度ムラが生じてしまう。そのため、高い結晶性を有する炭化珪素単結晶50を得ることができない。
(2)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、接着剤40の一部は、応力緩衝層30の孔31の内部に露出していてもよい。
これにより、種基板10の第4の主面10Bと応力緩衝層30の第1の主面30Aとの間を接着する接着剤40から揮発した気体は、より効率的に応力緩衝層30の孔31を通って、第2の主面30Bに達することができる。
(3)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、孔31の内径は0.001mm以上2mm以下であってもよい。
このようにすれば、種基板10と台座20との熱膨張率の差異により生じる応力を緩和するという応力緩衝層30の効果を奏することができるともに、応力緩衝層30に形成されている孔31が接着剤40から揮発した気体の流通経路としての効果を奏することができる。
(4)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、準備する工程では、第1の主面30Aにおける複数の孔31のうち、隣接する2つの孔31の間の距離が局所的に異なっていてもよい。
たとえば、第1の主面30Aの端部側では、固定する工程(S20)において、接着剤40から揮発した気体は端部から外部に放出されることができる。つまり、気体の流通経路は応力緩衝層30の孔31に限られない。このような場合、第1の主面30Aの端部近傍の領域では、応力緩衝層30の孔31の密度が低くても空隙の発生を十分に抑制することが可能である。これに対し、上記端部から離れた領域では気体の流通経路は応力緩衝層30の孔31に限られているため、孔31の密度は高い方が好ましい。よって、第1の主面30Aの形状に応じて、その端部から遠近により隣接する孔31の間の距離を異なるように形成することができる。
(5)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、準備する工程(S10)では、応力緩衝層30にレーザ光を照射することにより孔31が形成されてもよい。
このようにすれば、応力緩衝層30に形成される複数の孔31の配列パターンおよび寸法に応じてレーザ光の照射位置およびスポット径を制御することにより、応力緩衝層30の第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる複数の孔31を、任意の配列パターンおよび寸法で容易に形成することができる。
(6)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、準備する工程(S10)では、応力緩衝層30に複数の針状突起部が形成された冶具60を押圧することにより孔31が形成されていてもよい。
このようにすれば、応力緩衝層30に形成される複数の孔31の配列パターンおよび寸法に応じて設けられている針61を有する冶具60を用いることにより、応力緩衝層30の第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる複数の孔31を、任意の配列パターンおよび寸法で容易に形成することができる。
(7)本実施の形態に係る応力緩衝部材は、結晶成長に用いられる応力緩衝部材30であって、第1の主面30Aと、第1の主面30Aの反対側に位置する第2の主面30Bとを有し、第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる複数の孔31が形成されている。
このような応力緩衝部材30を介して種基板10と台座20とを接着剤40により接着することにより、複数の孔31を接着の際に接着剤40から揮発した気体の流通路とすることができ、各部材の接着面において空隙を生じさせることなく応力緩衝層30を介して種基板10と台座20とを固定することができる。さらに、所定の温度に加熱された際に、種基板10と台座20との熱膨張率の差異に起因して生じる応力を緩和することができる。
(8)本実施の形態に係る応力緩衝部材30は、炭素材料で構成されていてもよい。
応力緩衝部材30が炭素材料のように、気体の透過性が低い材料で構成されている場合でも、応力緩衝部材30には第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる複数の孔31が形成されているため、応力緩衝部材30を介して種基板10と台座20とを接着剤40により接着しても、各部材の接着面において空隙を生じさせることなく応力緩衝層30を介して種基板10と台座20とを固定することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法について説明する。本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、第1の主面30Aと、第1の主面30Aの反対側に位置する第2の主面30Bを有し、第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる孔31が複数形成されている応力緩衝層30を準備する工程(S10)と、応力緩衝層30を介して種基板10と台座20とを固定する工程(S20)と、種基板10上に炭化珪素単結晶50を成長させる工程(S30)とを備える。
はじめに、図2を参照して、孔31が形成されている応力緩衝層30を準備する(工程(S10))。具体的には、まず、第1の主面30Aと第1の主面30Aの反対側に位置する第2の主面30Bを有する応力緩衝層30(応力緩衝部材30)を準備する。応力緩衝層30は、種基板10や炭化珪素単結晶50と比べて硬度が低く、柔軟性および伸縮性の高い材料から構成されている。応力緩衝層30を構成する材料は、たとえば黒鉛シートである。応力緩衝層30の第1の主面30Aにおける幅は、種基板10の第3の主面10Aにおける外径と同等程度に設けられており、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。応力緩衝層30の厚みは、たとえば0.1mm以上3mm以下である。
次に、複数の針状突起部(針61)が形成された冶具60を準備する。冶具60は、応力緩衝層30に形成する複数の孔31の配列パターンおよび孔31の寸法に対応して複数の針61が形成されている。具体的には、複数の針61は、隣接する2つの孔31の間の距離L(図3参照)や、孔31の内径W(図3参照)に応じた配列および寸法を有している。また、針61は、応力緩衝層30の厚みT(図3参照)よりも長く設けられている。
次に、応力緩衝層30に冶具60を押圧させる。これにより、図3を参照して、応力緩衝層30の第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びるように形成された複数の孔31を形成することができる。このとき、冶具60を、応力緩衝層30の第1の主面30A側から押圧させてもよいし、第2の主面30B側から押圧させてもよい。複数の孔31の内径Wはいずれも同一に設けられており、0.001mm以上2mm以下であり、好ましくは0.05mm以上1mm以下であり、より好ましくは0.1mm以上0.5mm以下である。
応力緩衝層30における複数の孔31は、任意の配列パターンにより設けられるが、図3および図4を参照して、径方向において隣り合う2つの孔31の間の距離Lは一定として、第1の主面30Aの中央部においては端部と比べて孔31が密に設けられていてもよい。また、複数の孔31は、中央部から端部にかけて、放射状に形成されていてもよい。また、応力緩衝層30に冶具60を押圧させた後、針61により押し出された応力緩衝層30を構成する材料の残渣(図示しない)が応力緩衝層30に付着している場合には、これを任意の方法で除去すればよい。これにより、図3および図4に示す応力緩衝層30を準備することができる。
次に、応力緩衝層30を介して種基板10と台座20とを固定する(工程(S20))。まず、種基板10および台座20を準備する。種基板10は、炭化珪素からなる単結晶である。種基板10の炭化珪素の結晶構造は六方晶系であることが好ましい。また結晶構造のポリタイプは4Hまたは6Hであることが好ましい。種基板10は、炭化珪素単結晶50(図6参照)が成長される第3の主面(成長面)10Aと、第3の主面10Aの反対側に位置して応力緩衝層30の第1の主面30Aと接着される第4の主面10Bとを有している。第3の主面10Aは、たとえば(0001)面に対して10度以下のオフ角を有する面である。第3の主面10Aと第4の主面10Bとは、いずれも高い平坦性を有しているのが好ましい。種基板10の第3の主面10Aにおける外径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。
台座20は、たとえばグラファイトからなる。台座20は、昇華法により種基板10の第3の主面10A上に炭化珪素単結晶50を成長させる際に、種基板10を保持可能に設けられている、第5の主面20Aを有している。第5の主面20Aの幅(第3の主面10Aに沿った方向における端部から端部までの距離)は、種基板10の第3の主面10Aにおける外径以上である。
次に、準備した種基板10、台座20、および応力緩衝層30を接着剤40を介して接着する。接着剤40は、所定の温度(たとえば1000℃以上)で硬化可能に設けられている、任意の材料で構成されていればよい。接着剤40は、たとえばカーボン接着剤である。カーボン接着剤とは、溶媒中にカーボン粉末が分散されてなる接着剤であり、熱処理によって溶媒が揮発し、実質的にカーボンのみからなる接着層を形成し得るものである。台座20が炭素を含み、接着剤40がカーボン接着剤であることにより、応力緩衝層30の第2の主面30Bと台座20の第5の主面20Aとが接着剤40を介して強固に接着される。カーボン接着剤の具体例としては、たとえば、フェノール樹脂にカーボン粉末が混合され、溶媒としてフェノールおよびエチルアルコールを含むものを例示することができる。
種基板10の第4の主面10Bと応力緩衝層30の第1の主面30Aとの間、および応力緩衝層30の第2の主面30Bと台座20の第5の主面20Aとの間に接着剤40を塗布した後、これらを上記所定の温度で加熱することにより接着剤40を硬化させ、種基板10、応力緩衝層30、および台座20を固定する。
このとき、固定する工程(S20)における加熱処理は任意の方法で実施すればよく、たとえばホットプレートやランプアニール装置、恒温槽等を用いて2段階に分けて実施してもよい。具体的には、接着剤40に含まれる溶媒をある程度揮発させることができる温度、たとえば100℃以上400℃以下の所定の温度で加熱した後、接着剤40を硬化させることができる温度、たとえば400℃以上の所定の温度で加熱してもよい。熱処理の時間は、たとえば所定の温度に到達した後5分以上60分以下である。このようにして、接着剤40を硬化させて、応力緩衝層30を介して種基板10と台座20とを固定することができる。
このとき、図5を参照して、本工程(S20)における加熱処理により、接着剤40から揮発した気体Gは台座20を透過して外部に放出される。つまり、種基板10の第4の主面10Bと応力緩衝層30の第1の主面30Aの間を接着する接着剤40から生じた気体Gは、その最も近い領域に形成されている応力緩衝層30の孔31を流通し、応力緩衝層30の第2の主面30Bと台座20の第5の主面20Aとの間に塗布されている接着剤40を透過して台座20の第5の主面20Aに達し、台座20を透過して外部に放出される。また、応力緩衝層30の第2の主面30Bと台座20の第5の主面20Aとの間を接着する接着剤40から生じた気体Gは、台座20を透過して外部に放出される。これにより、種基板10の第4の主面10Bと応力緩衝層30の第1の主面30Aとの間に空隙が生じることなく、種基板10と台座20とが応力緩衝層30を介して固定される。
次に、図6を参照して、種基板10上に炭化珪素単結晶50を成長させる(工程(S30))。具体的には、応力緩衝層30を介して種基板10を固定している台座20を、原料(図示しない)が内に収められている坩堝(図示しない)に取り付ける。坩堝の内部へ種基板10の第3の主面10Aが面するように、坩堝に台座20が取り付けられる。坩堝は、たとえば炭素原料を含んで構成されている。坩堝の内部には原料が収められている。原料は、たとえば炭化珪素粉末である。また、坩堝は、その周囲に配置されている加熱部(図示しない)により後述する所定の温度に加熱可能に設けられている。
次に、原料を昇華させることで種基板10の第3の主面10A上に昇華物を堆積させて、炭化珪素単結晶50を成長させる。この昇華再結晶法における温度は、たとえば、2100℃以上2500℃以下とされる。またこの昇華再結晶法における圧力は、好ましくは1.3kPa以上大気圧以下とされ、より好ましくは、成長速度を高めるために13kPa以下とされる。このようにして、図6を参照して、応力緩衝層30を介して台座20と固定されている種基板10上に成長された炭化珪素単結晶50を得ることができる。
次に、本実施の形態に係る応力緩衝部材30について説明する。応力緩衝部材30は、第1の主面30Aと第1の主面30Aの反対側に位置する第2の主面30Bを有し、種基板10や炭化珪素単結晶50と比べて硬度が低く、柔軟性および伸縮性の高い材料から構成されている。応力緩衝部材30を構成する材料は、たとえば黒鉛シートである。応力緩衝部材30の第1の主面30Aにおける幅は、種基板10の第3の主面10Aにおける外径と同等程度に設けられており、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。応力緩衝部材30の厚みは、たとえば0.1mm以上3mm以下である。応力緩衝部材30は、上述した本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の準備する工程(S10)において準備される。
次に、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法および応力緩衝部材30の作用効果について説明する。本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法によれば、複数の孔31が形成されている応力緩衝層30を準備し、種基板10と応力緩衝層30、および応力緩衝層30と台座20とをそれぞれ接着剤40を用いて固定するため、種基板10と応力緩衝層30との間に塗布されている接着剤40から揮発した気体は、応力緩衝層30に設けられている複数の孔31を通って台座20に達する。上述のように、昇華法に用いられる一般的な台座20は、応力緩衝層30よりも気体の透過率が高いため、台座20まで達した気体は台座20の内部と通って結晶成長装置の外部に放出され得る。これにより、加熱により接着剤40から揮発した気体が種基板10と応力緩衝層30との間に留まって空隙を生じることを抑制することができ、種基板10と台座20との間で接着不良が生じることを抑制することができる。この結果、種基板10の第3の主面10A上に高い結晶性を有する炭化珪素単結晶50を得ることができる。
さらに、孔の内径Wは0.001mm以上2mm以下として設けられているため、固定する工程(S20)や成長させる工程(S30)において種基板10と台座20との熱膨張率の差異により生じる応力を緩和するという応力緩衝層30の効果を奏することができるともに、応力緩衝層30に形成されている孔31が接着剤40から揮発した気体の流通経路としての効果を奏することができる。
本実施の形態に係る応力緩衝部材30は、第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる複数の孔31が形成されている。そのため、複数の孔31を固定する工程(S20)において接着剤40から揮発した気体の流通路とすることができ、各部材の接着面において空隙を生じさせることなく応力緩衝層30を介して種基板10と台座20とを固定することができる。さらに、所定の温度に加熱された際に、種基板10と台座20との熱膨張率の差異に起因して生じる応力を緩和することができる。
本実施の形態において、準備する工程(S10)では、応力緩衝層30に冶具60を押圧することにより孔31が形成されるが、これに限られるものではない。たとえば、図7を参照して、応力緩衝層30の第1の主面30A(または第2の主面30B)に対して、レーザ光源70からレーザ光Bを照射することにより、孔31を形成してもよい。この場合には、応力緩衝層30に形成される複数の孔31の配列パターンおよび寸法に応じてレーザ光の照射位置およびスポット径を制御することにより、応力緩衝層30の第1の主面30Aから第2の主面30Bまで延びる複数の孔31を、任意の配列パターンおよび寸法で容易に形成することができる。
また、本実施の形態において、準備する工程(S10)では複数の孔31は、隣り合う2つの孔31の間の距離Lが等しく設けられているが、これに限られるものではない。図8を参照して第1の主面30Aにおける複数の孔31のうち、隣接する2つの孔31の間の距離が局所的に異なっていてもよい(図8中、中央側において隣接する2つの孔31の間の距離L1と比べて、端部側において隣接する2つの孔31の間の距離L2は長くてもよい)。たとえば、第1の主面30Aの外周端部側では、固定する工程(S20)において、接着剤40から揮発した気体は端部から外部に放出されることができるため、応力緩衝層30の孔31の密度が低くても空隙の発生を十分に抑制することが可能である。一方、中央部では気体の流通経路は応力緩衝層30の孔31に限られているため、孔31の密度は高い方が好ましい。つまり、第1の主面30Aの形状に応じて、その端部から遠近により隣接する孔31の間の距離を異なるように形成しても、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態において、応力緩衝層30に形成されている複数の孔31はいずれも内径Wが同一として形成されているが、これに限られるものではない。複数の孔31の内径Wは、0.001mm以上2mm以下である限りにおいて、それぞれ異なるように形成されていてもよい。たとえば第1の主面30Aの中央部に設けられている複数の孔31の内径は、外周端部に設けられている複数の孔31の内径より大きく設けられていてもよい。このようにすれば、上述のように第1の主面30Aの中央部では気体の流通経路は応力緩衝層30の孔31に限られているが、1つの孔31に流通させることができる気体の量を多くすることができ、かつ第1の主面30Aと第4の主面10Bとの間に塗布されている接着剤40において1つの孔31の内部に露出している領域を増すことができる。つまり、1つの孔31は、より広範囲の接着剤40から揮発した気体を流通させることができる。これにより、接着剤40から揮発した気体の流通経路が孔31のみとなっている中央部においても、より効果的に空隙の発生を防止することができる。
また、本実施の形態において、種基板10の第3の主面10A、台座20の第5の主面20A、および応力緩衝層30の第3の主面10Aは、いずれも円形状に設けられているが、これに限られるものではない。たとえば、応力緩衝層30の第1の主面30Aおよび台座20の第5の主面20Aは多角形状に設けられていてもよい。このようにしても、孔31を所定の配列パターンおよび寸法で形成されている応力緩衝層30(応力緩衝部材30)を用いることにより、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法および応力緩衝部材30と同様の効果を奏することができる。
なお、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、応力緩衝層30において炭化珪素単結晶50と台座20とを切り離す工程をさらに備えていてもよい。たとえば、まず炭化珪素単結晶50と台座20とを切り離す装置として、ワイヤを準備する。ワイヤは、長さが応力緩衝層30の第1の主面30Aの外径よりも長く、太さが応力緩衝層30の厚みよりも小さいものが準備される。次に、ワイヤを応力緩衝層30の第1の主面30Aに沿った方向に伸ばし、ワイヤを応力緩衝層30の端面30E(第1の主面30Aと垂直な方向に沿った面、図6参照)から応力緩衝層30に圧入させる。
このように、ワイヤを応力緩衝層30の一方の端面30Eから第1の主面30Aを挟んで対向する他方の端面に達するまで圧入することにより、応力緩衝層30において炭化珪素単結晶50と台座20とを切り離すことができる。台座20から切り離された後の炭化珪素単結晶50は、種基板10と、種基板10の第4の主面10B上に接着剤40を介して接着されている応力緩衝層30の残渣と一体として構成されている。なお、台座20の第5の主面20A上にも、接着剤40を介して応力緩衝層30の残渣が形成されている。
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、切り離す工程後の炭化珪素単結晶50に付着している応力緩衝層30の残渣を除去する工程をさらに備えていてもよい。具体的には、切り離す工程により台座20から切り離された炭化珪素単結晶50を酸素含有雰囲気下において加熱する。酸素含有雰囲気とは、酸素濃度が大気中と比べて高い酸素雰囲気でもよいし、大気中と同程度の酸素濃度を有する雰囲気あるいは大気であってもよい。残渣を除去する工程は、酸素含有雰囲気下において所定の温度に加熱することができる任意の装置を用いて行われればよく、たとえば大気炉を用いることができる。加熱温度は、応力緩衝層30を酸化し除去することができる任意の温度とすればよく、たとえば1000℃以上の所定の温度とすればよい。加熱時間は、応力緩衝層30を酸化し除去することができる任意の時間とすればよく、たとえば所定の温度に到達した後30分以上48時間以下である。これにより、応力緩衝層30の残渣を除去することができる。
このようにして得られた炭化珪素単結晶50は、さらに種基板10の第3の主面10Aと交差する方向に伸びる側面が研削された後、スライスすることにより炭化珪素単結晶基板を得ることができる。
切り離す工程はワイヤを用いて実施される形態に限られるものではなく、たとえばワイヤを糸のこ状に構成した部材や、扁平部分を有し当該扁平部分の厚みが応力緩衝層30の厚みよりも薄いヘラ状部材を用いて、当該扁平部分を応力緩衝層30の端面30E(図6参照)から応力緩衝層30に圧入させることにより実施してもよい。また、レーザ光源70を用いても良い。この場合、レーザ光源70から応力緩衝層30の端面30Eに、当該応力緩衝層30の厚みよりも小さいスポット径を有するレーザ光を照射してもよい。このようにしても、レーザ光が照射された部分を境に応力緩衝層30を切断することができる。また、応力緩衝層30の端面30Eに高圧水流を噴射させてもよい。このようにしても、高圧水流の噴射を受けた部分を境に応力緩衝層30を切断することができ、炭化珪素単結晶50と台座20とを容易に切り離すことができる。
また、除去する工程は、任意の加熱処理工程と合わせて実施されても良い。たとえば、活性化アニール等、炭化珪素単結晶50を不活性ガス雰囲気下において加熱する工程の前段として実施してもよい。この場合、加熱する工程は、残渣を除去する工程を実施後、酸素含有雰囲気からたとえばAr(アルゴン)ガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気に変更するとともに、加熱温度を低下させることなく所定の温度まで昇温することにより実施されてもよい。この場合には、たとえば残渣を除去する工程として炭化珪素単結晶50を酸素含有雰囲気下において1000℃まで加熱昇温しかつ30分間保持した後、加熱温度を低下させることなく連続して、加熱する工程として炭化珪素単結晶50をArガス雰囲気下において2500℃まで加熱昇温し、かつ30分間保持してもよい。これにより、残渣を除去する工程と加熱する工程とを個別に行う場合と比べて、製造工程を低減でき、製造コストを軽減することができる。また、このようにして得られた炭化珪素単結晶50を用いることにより炭化珪素単結晶基板に容易に加工することができる。
また、残渣を除去する工程は酸素含有雰囲気下で加熱処理されることに限られない。たとえば、サンドブラスト加工等の機械的加工により実施されても良いし、ヘラ状部材等を用いて人為的に残渣を除去してもよい。また、たとえば硫酸過水(SPM)に残渣を浸漬する等してウエットエッチングにより除去してもよい。このようにしても、残渣を容易に除去することができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
本発明は、大口径であって高い結晶性を有する炭化珪素単結晶基板に加工可能である炭化珪素単結晶の製造方法に特に有利に適用される。
10 種基板
10A 第3の主面
10B 第4の主面
20 台座
20A 第5の主面
30 応力緩衝層(応力緩衝部材)
30A 第1の主面
30B 第2の主面
30E 端面
31 孔
40 接着剤
50 単結晶
60 剣山
61 針
70 レーザ光源

Claims (8)

  1. 第1の主面と、前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面を有し、前記第1の主面から前記第2の主面まで延びる孔が複数形成されている応力緩衝層を準備する工程と、
    前記応力緩衝層を介して種基板と台座とを固定する工程と、
    前記種基板上に炭化珪素単結晶を成長させる工程とを備え、
    前記固定する工程において、前記応力緩衝層と前記種基板とは接着剤により固定される、炭化珪素単結晶の製造方法。
  2. 前記接着剤の一部は、前記応力緩衝層の前記孔の内部に露出している、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  3. 前記孔の内径は0.001mm以上2mm以下である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  4. 前記準備する工程では、前記第1の主面における複数の前記孔のうち、隣接する2つの前記孔の間の距離が局所的に異なっている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  5. 前記準備する工程では、前記応力緩衝層にレーザ光を照射することにより前記孔が形成される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  6. 前記準備する工程では、前記応力緩衝層に複数の針状突起部が形成された冶具を押圧することにより前記孔が形成される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  7. 結晶成長に用いられる応力緩衝部材であって、
    第1の主面と、前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有し、
    前記第1の主面から前記第2の主面まで延びる複数の孔が形成されている、応力緩衝部材。
  8. 炭素材料で構成されている、請求項7に記載の応力緩衝部材。
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