JP2015128012A - 二次電池正極用スラリーの製造方法、二次電池用正極の製造方法、及び二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明による二次電池正極用スラリーの製造方法は、導電材とバインダーとを含む導電材ペーストを調製する第一の工程と、導電材ペーストと正極活物質とを混合する第二の工程と、を含み、バインダーが共役ジエン単量体単位、1−オレフィン単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる群から選択される少なくとも一種の単量体単位を含有してなり、前記導電材ペーストの固形分濃度が5質量%以上15質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
また、本発明は、二次電池のサイクル特性を向上させるとともに、内部抵抗を低減させて、二次電池の性能を向上させることができる二次電池用正極の製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、内部抵抗が小さく、サイクル特性に優れる二次電池を提供することを目的とする。
なお、本発明において、導電材ペーストの粘度は、JIS Z 8803:1991に準じて単一円筒形回転粘度計(25℃、回転数=60rpm、スピンドル形状:4)により測定することができる。
また、本発明によれば、二次電池のサイクル特性を向上させるとともに、内部抵抗を低減させて、二次電池の性能を向上させることができる二次電池用正極の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、内部抵抗が小さく、サイクル特性に優れる二次電池を提供することができる。
ここで、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法は、二次電池の正極の形成に用いられる正極用スラリーを製造する際に用いられる。そして、本発明の二次電池用正極の製造方法は、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法を用いて製造した二次電池正極用スラリーにより正極合材層を形成することを特徴とする。また、本発明の二次電池は、本発明の二次電池用正極の製造方法により製造した正極を用いたことを特徴とする。
本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法は、導電材と、バインダーと、正極活物質とを含む正極用スラリーの製造に用いられる。そして、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法は、導電材、及びバインダーを含む導電材ペーストを調製する第一の工程と、当該導電材ペーストと正極活物質とを混合する第二の工程とを含む。さらに、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法は、バインダーが共役ジエン単量体単位、1−オレフィン単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる群から選択される少なくとも一種の単量体単位を含有してなり、導電材ペーストの固形分濃度が5質量%以上15質量%以下であることを特徴とする。
このように、第一の工程において所定の性状を有する導電材ペーストを調製した後、第二の工程において導電材ペーストと正極活物質とを混合して調製した正極用スラリーは、正極合材層を形成した際に、導電材の分散が、適度なレベルとなる。従って、当該正極用スラリーを用いて正極を製造すれば、導電材間で良好な導電ネットワークを形成させ、内部抵抗による容量劣化を抑制することができる。その結果、二次電池正極用スラリーを用いて製造した二次電池のサイクル特性を向上させるとともに、内部抵抗を低減させることができる。
なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。また、本発明において「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。また、本発明において「単量体単位」とはその単量体由来の構造単位であり、共役ジエン単量体単位には、重合後に水素化されたものも含まれる。
本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第一の工程では、導電材と所定のバインダーとを含み、固形濃度が5質量%以上15質量%以下である導電材ペーストを調製する。以下、第一の工程について詳細に説明する。
導電材は、正極活物質同士の電気的接触を確保するためのものである。そして、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法に用いる導電材としては、特に限定されることなく、既知の導電材を用いることができる。具体的には、導電材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンフレーク、炭素超短繊維(例えば、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維など)等の導電性炭素材料;各種金属のファイバー、箔などを用いることができる。これらの中でも、二次電池の電池容量を維持しつつレート特性を十分に向上させる観点からは、導電材として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、又はファーネスブラックを用いることが好ましい。
バインダーは、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法を用いて製造したスラリーにより集電体上に正極合材層を形成して製造した正極において、正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持しうる成分である。一般的に、正極合材層におけるバインダーは、電解液に浸漬された際に、電解液を吸収して膨潤しながらも正極活物質同士、正極活物質と導電材、或いは、導電材同士を結着させ、正極活物質等が集電体から脱落するのを防ぐ。
このように、バインダーAが共役ジエン単量体単位及び1−オレフィン単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる群から選択される少なくとも一種の単量体単位を含有することで、得られる導電材ペースト及び/又は、かかる導電材ペーストを用いて得られる二次電池正極用スラリーの安定性を良好なものとすることができる。
さらに、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法に用いるバインダーAは、共役ジエン単量体単位及び1−オレフィン単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。導電材ペーストの経時安定性を一層優れたものとすることができるからである。
さらに、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法に用いるバインダーAは、共役ジエン単量体単位及び1−オレフィン単量体単位の少なくとも一方、並びに(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことが好ましい。これらの単量体単位を共に有することで、二次電池の内部抵抗を一層低減させ、サイクル特性を一層向上させることができるからである。
なお、バインダーAは、上述した単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。以下、各単量体単位を提供する単量体についてそれぞれ説明する。
共役ジエン単量体は、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数4以上の共役ジエン化合物である。これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる
また、1−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどが挙げられる。
なお、本明細書において、「導電材が良好に分散する」、とは導電材同士が過度に分散又は凝集することなく、適度に分散した状態であって、導電材同士が相互に導電ネットワークを形成しうる状態を指す。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、導電材の分散性を向上させる観点からは、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が4〜10のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、その中でも、具体的には、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく、n−ブチルアクリレートがより好ましい。
これらは一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
ニトリル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体が挙げられる。そして、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。なかでも、バインダーAの結着力を高め、電極の機械的強度を高める観点からは、ニトリル基含有単量体としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
これらは一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、水素添加した重合体のヨウ素価は60mg/100mg以下であることが好ましく、30mg/100mg以下であることが更に好ましく、20mg/100mg以下であることが特に好ましい。また、下限としては3mg/100mg以上であることが好ましく、8mg/100mg以上であることが更に好ましい。
バインダーAは、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上述した単量体単位以外の、他の単量体単位を含んでも良い。そのような単量体単位を提供する単量体として、酸性基を有する単量体(酸性基含有単量体)、架橋性単量体、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、及びフッ素含有単量体などが挙げられる。
カルボン酸基を有する化合物としては、モノカルボン酸およびその誘導体や、ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸誘導体としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸や、マレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステルが挙げられる。
ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
また、カルボン酸基を有する化合物としては、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用できる。
その他、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸のモノエステルおよびジエステルも挙げられる。
なお、本発明において「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
なお、本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
なお、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法では、上述のバインダーAに加えて、バインダーAとは異なる他のバインダー(以下、バインダーBと称する)を併用してもよい。バインダーBもバインダーAと同様に、集電体上に正極合材層を形成して製造した正極において、正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持する。
ここで、バインダーBとしては、フッ素系重合体を使用することが好ましい。二次電池正極用スラリーの経時安定性を一層優れたものとすることができるからである。
フッ素系重合体は、フッ素含有単量体単位を含む重合体である。具体的には、フッ素系重合体としては、1種類以上のフッ素含有単量体の単独重合体または共重合体や、1種類以上のフッ素含有単量体とフッ素を含有しない単量体(以下、「フッ素非含有単量体」と称する。)との共重合体が挙げられる。
なお、フッ素系重合体におけるフッ素含有単量体単位の割合は、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、フッ素系重合体におけるフッ素非含有単量体単位の割合は、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
具体的には、フッ素系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体およびポリフッ化ビニルが好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。
なお、上述したフッ素系重合体は、一種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
フッ素系重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることで、正極活物質や導電材などの正極合材層からの脱離(粉落ち)が抑制され、またスラリーの粘度調整が容易になる。
また、重合方法としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。また、重合開始剤としては、既知の重合開始剤を用いることができる。
本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第一の工程で導電材ペーストを得るにあたり、上記バインダーAの配合比率は、導電材ペースト中に含まれる全バインダー量を100質量%とした場合に、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
バインダーAの配合比率を上記範囲内とすることで、比重の重い正極活物質が二次電池正極用スラリー中で沈降することが抑制され、二次電池正極用スラリーの経時安定性を一層向上させることができる。
なお、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第一の工程にて、上記バインダーA及びBに加えて、バインダーA及びBとは異なる第三のバインダーを混合することももちろん可能である。
第一の工程において、上記成分の他に、例えば、粘度調整剤、補強材、酸化防止剤、電解液の分解を抑制する機能を有する電解液添加剤などの成分を混合してもよい。これらの他の成分は、公知のものを使用することができる。
上述のバインダーA、バインダーB、及び導電材を、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第一の工程で混合して導電材ペーストを得るにあたり、混合方法には特に制限は無く、例えば、ディスパー、ミル、ニーダーなどの一般的な混合装置を用いることができる。例えば、ディスパーを使用する場合には、2000rpm以上5000rpm以下で、10分以上60分以下攪拌することが好ましい。
本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第一の工程で調製する導電材ペーストは、粘度が1000mPa・s以上であることが好ましく、3000mPa・s以上であることがより好ましく、4000mPa・s以上であることが特に好ましく、10000mPa・s以下であることが好ましく、8000mPa・s以下であることがより好ましく、5000mPa・s以下であることが特に好ましい。導電材ペーストの粘度が上記範囲内であれば、導電材ペーストの経時安定性及び導電材ペースト中における導電材の分散性に優れる。
導電材ペーストの粘度は、混合時に添加する溶剤の量、導電材ペーストの固形分濃度、並びにバインダーの種類及び分子量等によって調整可能である。
なお、導電材ペーストの粘度の上限値が上記上限値を上回ると、ごく一部の混合装置を用いてしか分散ができなくなり、導電材の分散性に劣り、さらに、得られた二次電池正極用スラリーを用いて形成した正極合材層の電気抵抗が高くなる虞がある。一方、導電材ペーストの下限値が上記下限値を下回ると、導電材ペーストの経時安定性が損なわれる虞がある。
本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第一の工程で調製する導電材ペーストは、固形分濃度が5質量%以上であることが好ましく、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることが特に好ましい。特に、導電材ペーストの固形分濃度は、混合開始時から混合終了時までを通じて上記範囲内であることが好ましい。
導電材ペーストの固形分濃度を上記範囲内とすることで、電極合材層中における導電材の分散性を優れたものとし、かかる導電材ペーストを含む二次電池正極用スラリーを用いて得た二次電池の内部抵抗を低減することができるからである。
なお、導電材ペーストの固形分濃度が上記上限値を上回る場合、導電材ペースト中における導電材の分散が不良となり、かかる導電材ペーストを含む二次電池正極用スラリーを用いて得た正極の電気抵抗が高くなる虞がある。一方、導電材ペーストの固形分濃度が上記下限値を下回る場合、後述する第二の工程で導電材ペーストに対して正極活物質を添加した後の二次電池正極用スラリーの濃度が低くなりすぎてしまい、沈降が生じる虞がある。
本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第二の工程では、上述のようにして得られた導電材ペーストと、正極活物質と、必要に応じて溶剤とを混合する。以下、第二の工程について詳細に説明する。
二次電池正極用スラリーに配合する正極活物質としては、特に限定されることなく、既知の正極活物質を用いることができる。
具体的には、正極活物質としては、特に限定されることなく、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2)、Co−Ni−Mnのリチウム含有複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム含有複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、Li1+xMn2−xO4(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物、Li[Ni0.17Li0.2Co0.07Mn0.56]O2、LiNi0.5Mn1.5O4等が挙げられる。
本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法で必要に応じて用いる溶剤としては、例えば、上述したバインダーA及びバインダーBを溶解可能な極性を有する有機溶媒を用いることができる。
具体的には、有機溶媒としては、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、アセチルピリジン、シクロペンタノン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルホルムアミド、メチルエチルケトン、フルフラール、エチレンジアミンなどを用いることができる。これらの中でも、取扱い易さ、安全性、合成の容易さなどの観点から、有機溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)が最も好ましい。
なお、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
第二の工程において、二次電池正極用スラリーは、上記成分の他に、例えば、粘度調整剤、補強材、酸化防止剤、電解液の分解を抑制する機能を有する電解液添加剤などの成分を混合してもよい。これらの他の成分は、公知のものを使用することができる。
導電材ペーストに対して、上述の正極活物質を、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法の第二の工程で混合して二次電池正極用スラリーを得るにあたり、混合方法には特に制限は無く、例えば、ディスパー、ミル、ニーダーなどの一般的な混合装置を用いることができる。例えば、ディスパーを使用する場合には、2000rpm以上5000rpm以下で、20分以上120分以下攪拌することが好ましい。
正極活物質を上述の第一工程ではなく第二工程で混合することで、第一工程において導電材間のネットワークを良好に形成するとともに、正極活物質を二次電池正極用スラリー中において均一に分散させることができる。また、第二の工程は、第一の工程の結果形成された導電材間のネットワークには影響を与えない。
なお、集電体上への塗工性の加点から、二次電池正極用スラリーの粘度は、1500mPa・s以上10000mPa・s以下であることが好ましく、固形分濃度は50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
なお、第二の工程で混合対象とする、導電材ペースト(固形分相当量)と正極活物質量との比率は、通常の範囲内である。
本発明の二次電池用正極の製造方法は、本発明の二次電池正極用スラリーの製造方法により得られる二次電池正極用スラリーを集電体の少なくとも一方の面に塗布する工程(塗布工程)と、集電体の少なくとも一方の面に塗布された二次電池正極用スラリーを乾燥して集電体上に正極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを含む。
上記二次電池正極用スラリーを集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、二次電池正極用スラリーを集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる正極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
集電体上の二次電池正極用スラリーを乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上の二次電池正極用スラリーを乾燥することで、集電体上に正極合材層を形成し、集電体と正極合材層とを備える二次電池用正極を得ることができる。
さらに、正極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、正極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
本発明の二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、正極として、本発明の二次電池用正極の製造方法により得られた二次電池用正極を用いたものである。そして、本発明の二次電池は、本発明の二次電池用正極の製造方法により製造した正極を用いているので、内部抵抗が低く、且つサイクル特性に優れており、高性能である。以下、本発明の二次電池の一例として、リチウムイオン二次電池について詳述する。
二次電池の負極としては、二次電池用負極として用いられる既知の負極を用いることができる。具体的には、負極としては、例えば、金属リチウムの薄板よりなる負極や、負極合材層を集電体上に形成してなる負極を用いることができる。
なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いることができる。また、負極合材層としては、負極活物質と結着材とを含む層を用いることができる。更に、結着材としては、特に限定されず、任意の既知の材料を用いうる。
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましく、LiPF6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができ、例えば0.5〜15質量%することが好ましく、2〜13質量%とすることがより好ましく、5〜10質量%とすることが更に好ましい。また、電解液には、既知の添加剤、例えばフルオロエチレンカーボネートやエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
本発明の二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
実施例および比較例において、導電材ペーストの経時安定性、二次電池の内部抵抗及び高温サイクル特性、並びに二次電池正極用スラリーの経時安定性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
内径8mmのガラス製試験管の中に導電材ペーストを5cmの高さまで入れて一週間静置する。そして、静置中に上澄み液が確認された場合には、上澄み液が確認されるまでの静置日数を記録する。上澄み液が確認されるまでの静置日数が長いほど経時安定性に優れており、静置中に上澄み液が確認されない導電材ペーストは経時安定性が特に優れている。
二次電池の内部抵抗を評価するために、以下のようにしてIV抵抗を測定した。25℃雰囲気下、1C(Cは定格容量(mA)/1h(時間)で表される数値)でSOC(State Of Charge:充電深度)の50%まで充電した後、SOCの50%を中心として0.5C、1.0C、1.5C、2.0Cで20秒間充電と20秒間放電とをそれぞれ行い、それぞれの場合(充電側および放電側)における20秒後の電池電圧を電流値に対してプロットし、その傾きをIV抵抗(Ω)(充電時IV抵抗および放電時IV抵抗)として求めた。得られたIV抵抗の値(Ω)について、以下の基準で評価した。IV抵抗の値が小さいほど、内部抵抗が少ないことを示す。
A:IV抵抗が 2Ω以下
B:IV抵抗が 2Ω超 2.3Ω以下
C:IV抵抗が 2.3Ω超 2.5Ω以下
D:IV抵抗が 2.5Ω超 3.0Ω以下満
E:IV抵抗が 3.0Ω超
二次電池を45℃雰囲気下、0.5Cの定電流法によって4.2Vに充電し、3.0Vまで放電する充放電を、200サイクル繰り返した。200サイクル終了時の電気容量と5サイクル終了時の電気容量の比(=(200サイクル終了時の電気容量/5サイクル終了時の電気容量)×100)(%)で表される充放電容量保持率を求めた。この値が大きいほど高温サイクル特性に優れることを示す。得られた値(%)について、以下の基準で評価した。
A:充放電容量保持率が 95%以上
B:充放電容量保持率が 90%以上 95%未満
C:充放電容量保持率が 85%以上 90%未満
D:充放電容量保持率が 80%以上 85%未満
E:充放電容量保持率が 80%未満
JIS Z 8803:1991に準じて単一円筒形回転粘度計(25℃、回転数=60rpm、スピンドル形状:4)により正極用スラリーの粘度を測定し、測定開始後1分の値を求め、これをスラリー粘度Aとした。また、正極用スラリー作製1日後のスラリー粘度Bを測定した。正極用スラリーの粘性変化率を下記の式(1)より算出し、以下の基準で評価した。粘性変化率が低いほどスラリー安定性に優れることを示す。
粘性変化率(%)={(B−A)/A}×100・・・(1)
A:粘性変化率が10%未満
B:粘性変化率が10%以上20%未満
C:粘性変化率が20%以上50%未満
D:粘性変化率が50%以上100%未満
E:粘性変化率が100%以上
<バインダーA1の製造>
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてn−ブチルアクリレート(BA)35部、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル(AN)18.6部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、共役ジエン単量体単位として1,3−ブタジエン(BD)46.4部を圧入し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、共役ジエン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、及びニトリル基含有単量体単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
なお、ヨウ素価の測定手順は以下の通りである。まず、重合体の水分散液100gを、メタノール1リットルで凝固した後、60℃で12時間真空乾燥し、得られた乾燥重合体のヨウ素価を、JIS K6235(2006)に従って測定した。
アセチレンブラック(デンカブラック粉:電気化学工業)3.0部と、上述のようにして得たバインダーA1のNMP溶液を固形分相当量で0.6部と、適量のNMPとをディスパーにて攪拌(3000rpm、10分)し、その後、バインダーBとして、PVdF(KFポリマー#7200、株式会社クレハ社製)を固形分相当で2.4部と、導電材ペーストの固形分濃度が10質量%になるように適量のNMPを入れてディスパーで撹拌(3000rpm、10分)して導電材ペーストを調製した。得られた導電材ペーストの粘度は、5000mPa・sであった。作製した導電材ペーストを用いて導電材ペーストの経時安定性の評価を行った。
上述のようにして得た導電材ペースト中に、正極活物質として層状構造を有する三元系活物質(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)(粒子径:10μm)100部と、溶剤として適量のNMPとを添加し、ディスパーにて攪拌し(3000rpm、20分)、正極用スラリーを調製した。NMPの添加量は、正極用スラリーの固形分濃度が65質量%となるように調整した。作製した正極用スラリーを用いてスラリーの経時安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として比表面積4m2/gの人造黒鉛(体積平均粒子径:24.5μm)を100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬株式会社製「BSH−12」)を固形分相当で1部加え、イオン交換水で固形分濃度55%に調整した後、25℃で60分混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した。その後、さらに25℃で15分混合し混合液を得た。
単層のポリプロピレン製セパレータ(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm、乾式法により製造、気孔率55%)を、5cm×5cmの正方形に切り抜いた。
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。上記で得られた正極を、4cm×4cmの正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。正極の正極合材層の面上に、上記で得られた正方形のセパレータを配置した。さらに、上記で得られた負極を、4.2cm×4.2cmの正方形に切り出し、これをセパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。さらに、ビニレンカーボネート(VC)を1.5%含有する、濃度1.0MのLiPF6溶液を充填した。このLiPF6溶液の溶媒はエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(EC/EMC=3/7(体積比))である。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池について、内部抵抗及び高温サイクル特性を評価した。
導電材ペーストの製造時に、バインダーA1及びバインダーBの配合比率を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、導電材ペーストを製造した。得られた導電材ペーストの粘度は、7000mPa・sであった。かかる導電材ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。結果を表1に示す。
導電材ペーストの製造時に、バインダーA1及びバインダーBの配合比率を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、導電材ペーストを製造した。得られた導電材ペーストの粘度は、3000mPa・sであった。かかる導電材ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。結果を表1に示す。
導電材ペーストの製造時に、固形分濃度を13%とし、バインダーA1及びバインダーBの配合比率を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、導電材ペーストを製造した。得られた導電材ペーストの粘度は、7500mPa・sであった。かかる導電材ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。結果を表1に示す。
導電材ペーストの製造時に、先ず、アセチレンブラック(デンカブラック粉:電気化学工業)3.0部と、バインダーBとして、PVdF(KFポリマー#7200、株式会社クレハ社製)を固形分相当量で2.4部と、適量のNMP溶液をディスパーにて攪拌(3000rpm、10分)した。その後、バインダーA1のNMP溶液を固形分相当量で0.6部(固形分濃度8.0質量%)と、固形分濃度が7質量%となるように、適量のNMPを入れてディスパーで撹拌(3000rpm、10分)して導電材ペーストを調製した。得られた導電材ペーストの粘度は、2000mPa・sであった。このようにして得た導電材ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた導電材ペーストの経時安定性を評価したところ、5日目に沈降が確認されたが、内部抵抗及び高温サイクル特性の評価に使用した二次電池には、調製当日の導電材ペーストを使用した。
なお、バインダーBと導電材とを先に混合してから、バインダーA1を混合することで、比較的分散能が高いバインダーA1が導電材に吸着しにくくなるため、導電材の分散性が低下すると共に、導電材ペーストの粘度が比較的高くなる。
バインダーAとして、以下のようにして製造したバインダーA2を用いた。バインダーA2の製造にあたり、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのn−ブチルアクリレート(BA)を配合せず、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル(AN)37部、及び共役ジエン単量体単位として1,3−ブタジエン(BD)63部を使用した以外は、実施例1と同様にして、バインダーA2を得た。得られたバインダーA2のNMP溶液の濃度は、12質量%であった。
導電材ペーストの製造時に、固形分濃度を13質量%とし、得られたバインダーA2を使用した以外は実施例1と同様にして、導電材ペーストを調製した。得られた導電材ペーストの粘度は、5000mPa・sであった。上述のようにして得た導電材ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。結果を表1に示す。
<バインダーA3の製造>
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水300部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてn−ブチルアクリレート82部及びメタクリル酸3.0部、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル15部、並びに分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分に撹拌した後、70℃に加温して重合し、水分散液を得た。固形分濃度から求めた重合転化率はほぼ99%であった。このラテックス100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、バインダーA3を得た。得られたバインダーA3のNMP溶液の濃度は、12質量%であった。
<バインダーA4の製造>
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水300部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてn−ブチルアクリレート72部及びメタクリル酸3.0部、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル25部、並びに分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分に撹拌した後、70℃に加温して重合し、水分散液を得た。固形分濃度から求めた重合転化率はほぼ99%であった。このラテックス100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、バインダーA4を得た。得られたバインダーA4のNMP溶液の濃度は、12質量%であった。
導電材ペーストの製造時に、バインダーA1を0.8部、バインダーBであるPVdFを3.2部、導電材であるアセチレンブラックを2.0部に配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして導電材ペースト、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。得られた導電材ペーストの粘度は、5000mPa・sであった。
バインダーAとして、以下のように製造したバインダーA2を使用した。バインダーA2の製造にあたり、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのn−ブチルアクリレート(BA)を使用せず、共役ジエン単量体単位として1,3−ブタジエン(BD)63部、及びニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル(AN)37部を使用した以外は、実施例1と同様にして、バインダーA2を製造した。得られたバインダーAのNMP溶液の濃度は、12質量%であった。
そして、導電材ペーストの製造時に、固形分濃度を16%とした以外は実施例1と同様にして、導電材ペーストを製造した。得られた導電材ペーストの粘度は、25000mPa・sであった。このようにして得た導電材ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1と同様にして製造したバインダーA2を用い、導電材ペーストの製造時に、固形分濃度を3%とした以外は、実施例1と同様にして導電材ペーストを製造した。得られた導電材ペーストの粘度は、装置の検出下限値を下回った。このようにして得た導電材ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、各評価項目について評価を試みたが、導電材ペーストは3日で沈降し、二次電池の内部抵抗及び高温サイクル特性は評価不能であった。結果を表1に示す。
比較例1と同様にして製造したバインダーA2を0.6部と、バインダーBとしてPVdF(KFポリマー#7200、株式会社クレハ社製)を固形分相当で2.4部と、アセチレンブラック(デンカブラック粉:電気化学工業)3.0部と、三元系活物質(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)(粒子径:10μm)94部と、溶剤として適量のNMPとをプラネタリーミキサーにて攪拌し(3000rpm、40分)、正極用スラリーを調製した。得られたスラリーの固形分濃度は、実施例1と同様であった。
導電材ペーストの製造時に、バインダーAを使用せず、バインダーBとしてPVdFを3質量部使用して、固形分濃度を7%とした以外は、実施例1と同様にして、導電材ペーストを製造した。得られた導電材ペーストの粘度は、8000mPa・sであった。かかる導電材ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、正極用スラリー、正極、二次電池を作製し、各評価項目について評価を行った。結果を表1に示す。
特に、表1の実施例1〜5より導電材ペーストの固形分濃度及び粘度を調整することにより、二次電池正極用スラリーの経時安定性を向上させると共に、二次電池の内部抵抗を低減し、さらに、高温サイクル特性を向上させることができることが分かる。
また、表1の実施例1、6〜8より、バインダーAに配合する三種の単量体単位の配合割合を調整することで、導電材ペースト、二次電池正極用スラリーの経時安定性を高くし、二次電池の内部抵抗を低くし、高温サイクル特性を向上させることができることが分かる。なお、実施例6では、バインダーAにアクリロニトリルを配合しなかったことで、二次電池正極のサイクル特性が比較的低くなり、また、導電性ペーストの粘度が比較的高いことに起因して、二次電池正極の内部抵抗が比較的高くなったことが分かる。
また、表1の実施例1及び比較例3より、導電材、バインダー、及び正極活物質を一括混合することで、スラリー中における導電材の分散が不十分となり、内部特性及び高温サイクル特性のみならず、スラリーの経時安定性も劣化したことが分かる。
Claims (8)
- 導電材とバインダーとを含む導電材ペーストを調製する第一の工程と、
前記導電材ペーストと正極活物質とを混合する第二の工程と、
を含み、
前記バインダーが共役ジエン単量体単位、1−オレフィン単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる群から選択される少なくとも一種の単量体単位を含有してなり、
前記導電材ペーストの固形分濃度が5質量%以上15質量%以下である、
二次電池正極用スラリーの製造方法。 - 前記導電材ペーストの粘度が1000mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項1に記載の二次電池正極用スラリーの製造方法。
- 前記バインダーが、さらに、ニトリル基含有単量体単位を2質量%以上50質量%以下含む、請求項1又は2に記載の二次電池正極用スラリーの製造方法。
- 前記バインダーが、共役ジエン単量体単位及び1−オレフィン単量体単位の少なくとも一方を含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の二次電池正極用スラリーの製造方法。
- 前記バインダーが、共役ジエン単量体単位及び1−オレフィン単量体単位の少なくとも一方と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の二次電池正極用スラリーの製造方法。
- 前記導電材ペーストが、フッ素系重合体をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次電池正極用スラリーの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法により得られた二次電池正極用スラリーを、集電体の少なくとも一方の面に塗布し、乾燥して正極合材層を形成する工程を含むことを特徴とする二次電池用正極の製造方法。
- 正極、負極、セパレータ及び電解液を備える二次電池であって、
前記正極が、請求項7に記載の二次電池用正極の製造方法で得られた二次電池用正極である二次電池。
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