以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の歯磨組成物は、特異な形状或いは特異な粒度分布を有し、かつ特定の崩壊強度を有する顆粒(I)を5質量%以上40質量%以下、及び特定の粘結剤(II)を0.4質量%以上3質量%以下含有する。本発明の歯磨組成物は、これら顆粒(I)及び粘結剤(II)が併用されてなるため、歯の表面の汚れを根こそぎ除去して、高い汚れ除去能を発揮しつつ、荷重が負荷されるにつれて徐々に崩壊する顆粒(I)が特定の粘結剤(II)と相まって、泡立ちを高めつつ、泡の持続性(泡持ち)をも効果的に高めることができる。
本発明の歯磨組成物は、特異な形状或いは特異な粒度分布を有し、かつ特定の崩壊強度を有する顆粒(I)を含有する。かかる顆粒(I)は、水不溶性粉末材料(A)、及び無機結合剤(B)を含む顆粒であり、歯磨組成物中にかかる顆粒(I)を含有させるため、歯磨組成物に配合する顆粒を、以下「配合前顆粒」とも称する。
かかる水不溶性粉末材料(A)としては、歯の研磨剤に通常用いられるものが好ましく、具体的には無機材料が好ましい。ここで、「水不溶性」とは、水100gに対する溶解量(20℃)が1g以下であることを意味する。具体的には、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これら水不溶性粉末材料(A)のなかでも、顆粒(I)に後述する特異な形状或いは特異な粒度分布を付与し、柔らかな歯ブラシを用いた場合のように低い荷重の負荷でも高い汚れ除去能を発揮でき、歯垢や着色汚れ等の汚れを十分に除去することができ、歯の表面におけるつるつるとした感触及び汚れ落ち感を向上させることが可能である観点から、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、及びシリカから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムから選ばれる1種又は2種がより好ましく、重質炭酸カルシウムがさらに好ましい。ここで、つるつるとした感触とは、歯面を舌でふれたときに、歯垢や汚れが付着しているような感触を得ることなく、歯の表面でなめらかに舌をすべらせることができる感触をいい、汚れ落ち感とは、歯の表面が滑らかになり汚れがなくなったことが実感できる感触をいう。
水不溶性粉末材料(A)の平均粒子径は、顆粒崩壊後の歯垢又は汚れ除去の観点から、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは0.8μm以上であり、またさらに好ましくは1μm以上である。また異物感を低減する観点から、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、またさらに好ましくは5μm以下である。また、水不溶性粉末材料(A)の平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.5〜15μmであり、さらに好ましくは0.8〜10μmであり、またさらに好ましくは1〜5μmである。
なお、平均粒子径は、実施例記載の方法により測定することができる。
水不溶性粉末材料(A)の含有量は、徐々に崩壊する挙動を実現する観点、及び研磨力を高める観点から、顆粒(I)中に、乾燥状態で好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、またさらに好ましくは82質量%以上である。水不溶性粉末材料(A)の含有量は、歯に対する損傷を抑制する観点から、顆粒(I)中に、乾燥状態で好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは96質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。また、水不溶性粉末材料(A)の含有量は、顆粒(I)中に、乾燥状態で好ましくは60〜98量%であり、より好ましくは70〜96量%であり、さらに好ましくは80〜96質量%であり、またさらに好ましくは82〜90質量%である。
顆粒(I)に含まれる無機結合剤(B)は、顆粒(I)内に空隙を有しつつも水不溶性粉末材料(A)と結合するため、歯垢を十分に除去することができるとともに、歯の表面におけるつるつるとした感触及び汚れ落ち感を向上させる作用をもたらす。無機結合剤(B)としては、水溶性無機結合剤及び水不溶性無機結合剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。水溶性無機結合剤としては、具体的には、珪酸ナトリウム、ポリアクリル酸、加工セルロース類、ポリビニルピロリドン、及びシリコーン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、珪酸ナトリウムが好ましい。水不溶性無機結合剤としては、具体的には、コロイダルシリカ、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、及びアルミナゾル等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、コロイダルシリカが好ましい。なかでも、本発明の効果を良好に発揮させる観点から、水溶性無機結合剤を含むことが好ましく、珪酸ナトリウムを含むことがより好ましい。無機結合剤(B)として珪酸ナトリウム及びコロイダルシリカから選ばれる1種又は2種を含有することにより、さらに泡質、泡立ち、及び顆粒の感触が良好になり、歯の表面におけるつるつるとした感触及び汚れ落ち感を高めることができる。
かかる珪酸ナトリウムとしては、メタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルト珪酸ナトリウム(Na4SiO4)、二珪酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四珪酸ナトリウム(Na2Si4O9)及びそれらの水和物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
珪酸ナトリウムは、一般にNa2O・nSiO2・mH2Oの分子式で表される。係数n(Na2Oに対するSiO2の分子比)はモル比と呼ばれ、下記式(I)で表すことができる。
モル比=質量比(SiO2質量%/Na2O質量%)×(Na2Oの分子量/SiO2の分子量)・・・(I)
珪酸ナトリウムとしては、通常、JIS K1408に記載の珪酸ソーダ1号、2号、3号の他、種々のモル比の水ガラスを使用することができるが、なかでも珪酸ソーダ3号がさらに好ましい。
珪酸ナトリウムの物性は、前記モル比(係数n)によって異なるが、医薬部外品原料規格への適合性、本発明の効果を良好に発揮させる観点、及び顆粒(I)のpHをアルカリ性にする観点から、前記モル比(係数n)は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.4以上であり、さらに好ましくは2.8以上であり、またさらに好ましくは3.0以上であり、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3.4以下であり、またさらに好ましくは3.3以下である。そして、前記モル比(係数n)は、好ましくは2.0〜4.0であり、より好ましくは2.4〜3.5であり、さらに好ましくは2.8〜3.4であり、またさらに好ましくは3.0〜3.3である。
顆粒(I)に含まれる無機結合剤(B)中の珪酸ナトリウム(固形分)及びコロイダルシリカから選ばれる1種又は2種の含有量は、無機結合剤として水不溶性粉末材料を顆粒化させる観点から、成分(B)中に、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、ハンドリング性及び液滴として噴霧し、粗大粒子を抑制する観点及び顆粒(I)の湿式崩壊強度を高める観点から、好ましくは100質量%以下である。なお、上記無機結合剤(B)中の珪酸ナトリウム(固形分)及びコロイダルシリカの量は、歯磨組成物中から抽出した顆粒(I)を90℃以上で乾燥させた後の、水分を除いた量である。
顆粒(I)中の珪酸ナトリウム(固形分)及びコロイダルシリカから選ばれる1種又は2種である成分(B)の含有量は、顆粒の乾燥状態及び水中での適度な崩壊強度、歯磨組成物中での安定性の観点や、徐々に崩壊する挙動を実現する観点から、顆粒(I)中に、乾燥状態で好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、またさらに好ましくは10質量%以上である。顆粒(I)中の珪酸ナトリウムの含有量は、収率を高める観点から、顆粒(I)中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは18質量%以下である。また、顆粒(I)中の珪酸ナトリウムの含有量は、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2〜20質量%であり、さらに好ましくは5〜18質量%であり、さらに好ましくは10〜18質量%である。
顆粒(I)において、水不溶性粉末材料(A)に対する無機結合剤(B)の質量比(無機結合剤(B)/水不溶性粉末材料(A))は、水不溶性粉末材料を顆粒化し、適度な崩壊強度とする観点、及び徐々に崩壊する挙動を実現する観点から、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.08以上である。また粗大粒子を減少させて、適度な崩壊強度とする観点から、かかる質量比は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.18以下である。そして、かかる質量比は、好ましくは0.02〜0.5であり、より好ましくは0.05〜0.3であり、さらに好ましくは0.08〜0.18である。なお、上記成分(B)に珪酸ナトリウムを含む場合の含有量は、固形分換算値である。
顆粒(I)は、歯垢形成抑制効果を付与する観点、及び水溶性珪酸塩又はコロイダルシリカによって形成されるネットワーク構造を強化して徐々に崩壊する物性を向上する観点から、さらに珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン及び酸化亜鉛から選ばれる1種又は2種以上の結合助剤(C)を含有することが好ましく、かかる成分(C)として、少なくとも酸化亜鉛を含むことがより好ましく、酸化亜鉛と他の結合助剤を含むことがさらに好ましい。
成分(C)の含有量は、歯垢形成抑制効果と徐々に崩壊する物性を向上する観点から、顆粒(I)中に、乾燥状態で好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.8質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、崩壊強度が過剰に高くなることを抑制する観点、歯磨組成物の泡立ちや泡質を向上する観点、及び金属味を抑制する観点から、顆粒(I)中に、乾燥状態で好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。また、成分(C)の含有量は、顆粒(I)中に、乾燥状態で好ましくは0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%であり、さらに好ましくは0.8〜2質量%である。
顆粒(I)中における成分(C)と成分(B)の質量比(C/B)は、適度な崩壊強度を実現する観点、歯磨組成物の泡立ちや泡質を向上する観点、歯の表面の様々な大きさの凹部の清掃性能の観点から、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.08以上であり、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.2以下である。また、顆粒(I)中における成分(C)と成分(B)の質量比(C/B)は、好ましくは0.02〜1であり、より好ましくは0.05〜0.5であり、さらに好ましくは0.08〜0.3であり、またさらに好ましくは0.08〜0.2である。
顆粒(I)は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、上記成分以外に、有機繊維、薬用成分、着色剤等を含有することができる。
上記成分以外の他の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合せて用いてもよい。
顆粒(I)は、特異な形状を有しており、かかる顆粒の投影面の面積(SA)と、該投影面における最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)との比(SA/SS)の平均値は、0.5以上0.9以下である。本発明における顆粒(I)の投影面の面積は、精製水により10質量%に希釈した歯磨組成物の水溶液をJISZ8801―1規格の150μmの篩を用いて精製水により洗浄した後、篩上に残った顆粒を室温(25℃)にて1日乾燥させた顆粒を用いて測定した値を意味する。顆粒(I)の投影面は、KEENCE VH―5500(倍率100倍)を用いて撮影した面を意味し、撮影したデジタル画像を解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事(株))を用いて、顆粒の一投影面における面積(SA)と、かかる投影面における最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)との比(SA/SS)を求め、さらに他の方向からの投影面、或いは他の顆粒(I)を用いた投影面を元に、SA/SSの平均値を求める。このように、投影面において最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)と、投影面の面積(SA)から求められるSA/SSの平均値は、顆粒が球状であるほど1に近似した値となるところ、顆粒(I)は、かかるSA/SSの平均値がこのように投影面において最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)が0.5以上0.9以下であるため、球状の顆粒ではなく、表面に複数の凹凸が存在するいびつな形状である特異な形状、いわゆる不定形の顆粒である。しかも、顆粒(I)は、配合前顆粒が砕けたり、部分的に欠けたりすることによって凸部が形成された適度な不定形を呈するため、口の中で異物感を感じさせない一方、不定形な形状によって徐々に崩壊していき、歯磨終了時には多くの顆粒が崩壊して歯磨き行為が終了した感触をも与えることができる。
顆粒(I)は、このような特異な形状を有することによって、口腔内においても歯ブラシ等で荷重を負荷した際、凸部に集中的に負荷がかかるので崩壊しやすく、しかもかかる凸部を起点として徐々に崩壊すると考えられる。これは、顆粒(I)の一粒一粒が、一次粒子が凝集して中間粒子を形成し、これがさらに凝集して形成されてなるため、空隙が顆粒内に適度に散在することになり、荷重が負荷されるにつれて、表面に突出している中間粒子から崩れていくためと考えられる。そして、顆粒が最終的に崩壊するまでの間、最初に中間粒子に変化し、かかる中間粒子がさらに細かく砕けながら徐々に崩壊していくことになる。また、顆粒(I)は、配合前顆粒を歯磨組成物に配合した後、歯磨組成物の製造時における撹拌によって得られた顆粒であることが好ましい。このように、製造時の撹拌後に得られた顆粒(I)を含有する本発明の歯磨組成物を用いた使用場面では、歯ブラシの負荷によって顆粒(I)が一挙に崩壊することなく、ブラッシングの間中、顆粒が徐々に崩壊していくこととなり、これらが歯面に衝突しながら歯の周波条のような微細な凹部に侵入して歯ブラシからの荷重を効果的に伝達し、歯垢又は汚れ除去能を十分に発揮させることができ、歯の表面におけるつるつるとした感触、及び汚れ落ち感を向上させることができる。
顆粒(I)の投影面の面積(SA)と、該投影面における最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)との比(SA/SS)の平均値は、徐々に崩壊する挙動を確保する観点から、0.5以上であって、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.65以上であり、よりさらに好ましくは0.7以上である。顆粒(I)の投影面の面積(SA)と、該投影面における最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)との比(SA/SS)の平均値は、適度な崩壊性を発現して柔らかいブリッスルを備えた歯ブラシであっても荷重を効果的に伝達する観点から、0.9以下であって、好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.82以下である。顆粒(I)の投影面の面積(SA)と、該投影面における最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)との比(SA/SS)の平均値は、0.5以上0.9以下であって、好ましくは0.6〜0.9であり、より好ましくは0.65〜0.85であり、よりさらに好ましくは0.75〜0.82である。なお、柔らかいブリッスルとしては、例えば、ブリッスルの毛先の断面積が徐々に小さくなるテーパーブリッスルが挙げられる。かかるテーパーブリッスルは、先端が細いために柔らかな感触であるとともに、歯と歯の隙間に毛先が入りやすい性質を有する。
顆粒(I)の投影面における最大差し渡し径(DL)と、最小差し渡し径(DS)との比(DL/DS)の平均値は、不定形の顆粒となって徐々に崩壊する挙動を示す観点、及び柔らかいブリッスルを備える歯ブラシであっても荷重を効果的に伝達する観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。顆粒(I)の投影面における最大差し渡し径(DL)と、最小差し渡し径(DS)との比(DL/DS)の平均値は、適度な崩壊性を発現して歯ブラシからの荷重を効果的に伝達する観点から、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.65以下である。また、顆粒(I)の投影面における最大差し渡し径(DL)と、最小差し渡し径(DS)との比(DL/DS)の平均値は、好ましくは1.2〜1.8であり、より好ましくは1.3〜1.7であり、さらに好ましくは1.4〜1.65である。
顆粒(I)は、また特異な粒度分布を有しており、かかる顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での次の顆粒(a)〜(d):
(a)粒径が50μm以上100μm未満の顆粒
(b)粒径が100μm以上150μm未満の顆粒
(c)粒径が150μm以上200μm未満の顆粒
(d)粒径が200μm以上250μm未満の顆粒
のうち、顆粒(b)の量と顆粒(c)の量の体積比(b/c)が0.7以上1.2以下であり、顆粒(d)と顆粒(c)の体積比(d/c)が0.2以上1以下であり、顆粒(b)の量と顆粒(d)の量の体積比(b/d)が1より大きく5以下であり、かつ顆粒(c)の顆粒(I)中における含有量が15体積%以上55体積%以下である。
すなわち、顆粒(a)と顆粒(b)との間でこれらの量の体積比(b/c)が上記範囲であることにより、顆粒(c)に対して、顆粒(b)が同程度の量で歯磨組成物中の存在するのに対して、上記体積比(d/c)が上記範囲にあり、かつ顆粒(b/d)が1より大きく5以下であるため、顆粒(b)は顆粒(d)より多い量で存在する。従って、粒径100μm以上200μm未満の顆粒である(b)及び(c)が多量に存在し、粒径200μm以上の顆粒(d)が適度な量で存在するため、直径が約200μmの歯ブラシのブリッスルからの応力を伝達しやすい顆粒(d)が適度に存在しつつ、歯ブラシのブリッスルでは入りこみにくい歯の表面の周波条のような微細な凹部に入りこみやすい顆粒(b)及び顆粒(c)が多く存在することとなる。これにより、ブラッシングによる歯ブラシの負荷が与えられるにつれて、これらの顆粒が絡み合いながら徐々に崩壊しつつ、歯の周波条のような微細な凹部に侵入しながら、歯ブラシからの顆粒を効果的に伝達して、歯垢又は汚れ除去性能を十分に発揮させることができ、歯の表面がなめらかでつるつるした感触や、汚れが落ちた感触を向上させることができると考えられる。
なお、本発明の歯磨組成物中に含有される顆粒(I)とは、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定により求められる粒径が50μm以上のものを意味する。また、顆粒(I)は、上記のとおり不定形の顆粒であるが、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定により求められる粒径は、上記最大差し渡し径(DL)と最小差し渡し径(DS)との平均値にほぼ近似した値になると考えられる。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量と顆粒(c)の量の体積比(b/c)は、徐々に崩壊する挙動を示しつつ、微細な凹部に有効に侵入し、より好適には幅150μm以下の大きさの凹部に有効に侵入し、歯磨後の歯の表面が滑らかである感触を高める観点から、0.7以上であって、好ましくは0.75以上であり、より好ましくは0.8以上である。顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量と顆粒(c)の量の体積比(b/c)は、顆粒(b)が顆粒(c)とも絡み合いつつ徐々に崩壊して様々な形状を伴った顆粒を存在させる観点から、1.2以下であって、好ましくは1.1以下であり、より好ましくは1.0以下であり、さらに好ましくは0.95以下である。また、顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量と顆粒(c)の量の体積比(b/c)は、0.7以上1.2以下であって、好ましくは0.75以上1.1以下であり、より好ましくは0.8以上1.0以下であり、よりさらに好ましくは0.8以上0.95以下である。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(d)の量と顆粒(c)の量の体積比(d/c)は、歯ブラシのブリッスルの応力負荷を伝達しやすい顆粒(d)が顆粒(b)及び顆粒(c)とも絡み合いつつ、徐々に崩壊して様々な形状を伴った顆粒を存在させる観点から、0.2以上であって、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.3以上である。顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(d)の量と顆粒(c)の量の体積比(d/c)は、顆粒(d)により顆粒(b)及び顆粒(c)が微細な凹部にも有効に侵入する観点から、1以下であって、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.85以下であり、さらに好ましくは0.8以下である。また、顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(d)の量と顆粒(c)の量の体積比(d/c)は、0.2以上1以下であって、好ましくは0.25以上0.9以下であり、より好ましくは0.25以上0.85以下であり、さらに好ましくは0.3以上0.8以下である。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量と顆粒(d)の量の体積比(b/d)は、顆粒(I)の粒度分布が顆粒(c)の含有量を中心に、歯の表面の歯ブラシのブリッスルが届きにくい微細な凹部に入りやすい顆粒(b)を顆粒(d)より多く含めて、歯の表面の微細な凹部の汚れ除去性能を向上する観点、及び顆粒(I)が存在する歯磨組成物の泡立ちや泡質を向上する観点から、1より大きく、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.2以上である。顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量と顆粒(d)の量の体積比(b/d)は、顆粒(d)が歯ブラシのブリッスルの負荷を受けて、顆粒(c)及び顆粒(b)と絡み合いながら徐々に崩壊して様々な形状を伴った顆粒を存在させる観点から、5以下であって、好ましくは4以下であり、より好ましくは2.8以下である。また、顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量と顆粒(d)の量の体積比(b/d)は、1より大きく5以下であって、好ましくは1.1〜4であり、より好ましくは1.2〜2.8である。
なお、顆粒(I)、及び後述する顆粒(I)を得るために配合される配合前顆粒の粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定によるものであり、歯磨組成物中に含有される顆粒(I)の場合には、歯磨き剤をイオン交換水により10質量%に希釈した水溶液を用いて測定し、配合前顆粒の場合には、イオン交換水により5質量%に希釈した水溶液を用いて測定する。より具体的には、顆粒(I)が含有される歯磨組成物をイオン交換水により10質量%に希釈した水溶液(又は配合前顆粒をイオン交換水により5質量%に希釈した水溶液)を、ミキサー(ROTARY MIXER NPC-20、NISSIN社製)により、75回転/分、水平方向回転、2時間の条件で顆粒を分散させる。次いで、顆粒(I)が含有される分散後の歯磨組成物を希釈して得た水溶液(又は配合前顆粒を分散した水溶液)を、室温(25℃)で1日保存する。かかる保存後の水溶液を、再度上記ミキサーにより10分間分散させた後、当該水溶液を用いて、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(Partica LA-950V2、HORIBA社製)にて、屈折率:1.58、循環速度(目盛:5)、撹拌速度(目盛:5)の条件で測定する。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(c)の量は、顆粒(I)中に15体積%以上55体積%以下である。顆粒(c)の量は、歯の表面における幅150μm以下の大きさの凹部の汚れ除去性能の観点、及び歯ブラシによるブラッシング時に他の顆粒と絡み合いながら歯の表面の幅200μm未満の大きさの微細な凹部の除去性能の観点から、顆粒(I)中に15体積%以上であって、好ましくは20体積%以上であり、より好ましくは23体積%以上であり、55体積%以下であって、好ましくは50体積%以下であり、より好ましくは45体積%以下であり、さらに好ましくは40体積%以下である。また、顆粒(c)の量は、顆粒(I)中に15体積%以上55体積%以下であって、好ましくは20〜50体積%であり、より好ましくは23〜45体積%であり、さらに好ましくは23〜40体積%である。
顆粒(I)には、顆粒(c)が顆粒の(a)〜(d)の中で最も多い量、又は顆粒(c)と顆粒(b)とがほぼ同程度に多い量で存在することにより、歯ブラシのブリッスルが届きにくい幅200μm未満の大きさの凹部に侵入する顆粒が歯磨組成物中に多く含有される。顆粒(b)と顆粒(c)の合計量は、歯ブラシのブリッスルが届きにくい微細な凹部における高い汚れ除去性能の観点から、顆粒(I)中に、好ましくは30体積%以上であり、より好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは40体積%以上であり、よりさらに好ましくは50体積%以上である。顆粒(b)と顆粒(c)の合計量は、歯ブラシのブリッスルによる応力を顆粒(a)〜(c)にも十分に伝達し、柔らかなブリッスルを備える歯ブラシを用いた場合にも、幅200μm未満の大きさの凹部だけでなく、幅100μm以下の大きさの微細な凹部に至るまで、効果的に高い汚れ除去性能を発揮する観点から、顆粒(I)中に、好ましくは85体積%以下であり、より好ましくは80体積%以下であり、さらに好ましくは75体積%以下である。また、顆粒(b)と顆粒(c)の合計量は、顆粒(I)中に、好ましくは30〜85体積%であり、より好ましくは35〜80体積%であり、さらに好ましくは40〜80体積%であり、またさらに好ましくは50〜75体積%である。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、顆粒(a)及び顆粒(b)の合計量と、顆粒(c)及び顆粒(d)の合計量との体積比((a+b)/(c+d))は、柔らかいブリッスルを備える歯ブラシであっても、歯ブラシによるブラッシング応力を小さな200μm以下の顆粒に伝達しつつ、幅200μm以下の大きさの歯の表面の凹部に顆粒(I)を効果的に侵入させる観点、及び歯磨組成物の泡立ちや泡質を向上する観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.65以上であり、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.85以下である。また、顆粒(a)及び顆粒(b)の合計量と、顆粒(c)及び顆粒(d)の合計量との体積比((a+b)/(c+d))は、好ましくは0.5〜1であり、より好ましくは0.6〜0.9であり、さらに好ましくは0.65〜0.85である。
顆粒(I)は、さらにレーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での粒径250μm以上350μm未満の顆粒(e)が存在していてもよい。かかる顆粒(I)中の、顆粒(a)及び顆粒(b)の合計量と顆粒(e)の量との体積比((a+b)/e)は、顆粒(a)〜(d)による清掃性能を向上する観点から、1より大きいことが好ましく、より好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.2以上であり、よりさらに好ましくは1.3以上であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは18以下である。また、顆粒(a)及び顆粒(b)の合計量と顆粒(e)の量との体積比((a+b)/e)は、好ましくは1より大きく20以下であり、より好ましくは1.1〜20であり、さらに好ましくは1.2〜18であり、よりさらに好ましくは1.3〜18である。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(a)の量は、顆粒(a)よりも粒径の大きな顆粒間に介在することで徐々に崩壊する挙動を確保する観点、顆粒(I)が歯の表面の微細な凹部に多量に侵入させて歯垢除去性能を向上する観点から、顆粒(I)中に、好ましくは3体積%以上であり、より好ましくは5体積%以上であり、泡質、及び泡立ちを向上する観点から、さらに好ましくは7体積%以上であり、顆粒(b)や顆粒(c)との絡み合い微細な凹部への顆粒の侵入を促進する観点から、好ましくは15体積%以下であり、より好ましくは12体積%以下であり、さらに好ましくは10体積%以下である。また、顆粒(I)における、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(a)の量は、顆粒(I)中に、好ましくは3〜15体積%であり、より好ましくは5〜12体積%であり、さらに好ましくは7〜10体積%である。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量は、顆粒(a)とも良好に絡み合いながら、顆粒(b)よりも粒径の大きな顆粒間に介在することで徐々に崩壊する挙動を確保する観点から、顆粒(I)中に、好ましくは12体積%以上であり、より好ましくは15体積%以上であり、さらに好ましくは20体積%以上であり、好ましくは50体積%以下であり、より好ましくは40体積%以下であり、さらに好ましくは35体積%以下である。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(d)の量は、歯ブラシのブリッスルの応力を顆粒(a)〜顆粒(c)に伝達しながら、これらの顆粒と良好に絡み合うことで徐々に崩壊する挙動を確保する観点から、顆粒(I)中に、好ましくは5体積%以上であり、より好ましくは10体積%以上であり、さらに好ましくは12体積%以上であり、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは22体積%以下であり、さらに好ましくは20体積%以下である。
また、顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(e)の量は、顆粒(a)〜(d)による清掃性能を向上する観点から、顆粒(I)中に、好ましくは0体積%より多く、より好ましくは1体積%以上であり、さらに好ましくは2体積%以上であり、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下であり、さらに好ましくは18体積%以下である。
顆粒(I)において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、粒径が350μm以上の顆粒の量は、顆粒(I)中に、好ましくは0体積%であるか、又は0体積%より多く35体積%以下であり、より好ましくは15体積%以下であり、さらに好ましくは10体積%以下であり、よりさらに好ましくは5体積%以下である。本発明の歯磨組成物中に含有される顆粒(I)において、粒径が350μm以上の顆粒の量は、顆粒(I)中に、好ましくは10体積%以上であり、より好ましくは15体積%以上であり、さらに好ましくは20体積%以上であり、好ましくは35体積%以下である。顆粒(I)は、歯磨組成物に顆粒を配合した後の混合工程において、顆粒の一部が欠けたり顆粒が砕けたりすることによって、粒度分布が変化することが好ましく、かかる混合工程の後に歯磨組成物中に含有されることとなるかかる顆粒(I)であれば、歯磨組成物を用いた際に、口腔内に良好に顆粒を触知できる感触をもたらしながら、歯ブラシを用いたブラッシングによって崩壊し、歯の表面の微細な凹部にまで侵入しやすくなると考えられる。
顆粒(I)の平均粒子径r(μm)は、十分な研磨力を有する観点から、好ましくは75μm以上であり、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは125μm以上であって、口腔中での異物感を抑制する観点から、好ましくは250μm以下であり、より好ましくは220μm以下であり、さらに好ましくは210μm以下であり、よりさらに好ましくは180μm以下である。そして、顆粒(I)の平均粒子径r(μm)は、好ましくは75〜250μmであり、より好ましくは100〜220μmであり、さらに好ましくは125〜210μmであり、よりさらに好ましくは125〜180μmである。
なお、顆粒(I)の平均粒子径rは、体積平均粒径であって、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒径が50μm以上の顆粒における粒度分布でのメジアン径である。
本発明の歯磨組成物中に含有される、特異な形状或いは特異な粒度分布を有する上記顆粒(I)の崩壊強度は、1gf/個以上20gf/個以下である。かかる崩壊強度を有することにより、歯ブラシ等で荷重を負荷した際に不定形な形状によって徐々に崩壊していきながら、口の中で異物感を感じさせることがない上に、微細な凹部にまで顆粒が侵入して歯垢や着色汚れ等の汚れを十分に除去することができる。顆粒(I)の崩壊強度は、徐々に崩壊する挙動を示しながら汚れ除去性能を高める観点、顆粒(I)の特異な形状或いは特異な粒度分布との相互作用により、柔らかいブリッスルを備える歯ブラシであっても、顆粒(I)が歯ブラシの応力によって徐々に崩壊しながら微細な凹部にまで侵入する観点から、1gf/個以上であって、好ましくは2gf/個以上であり、より好ましくは3gf/個以上である。上記顆粒(I)の崩壊強度は、柔らかな歯ブラシ等を用いた際の低い荷重の負荷によっても適度な崩壊性を付与する観点、及び異物感を低減する観点から、20gf/個以下であって、好ましくは15gf/個以下であり、歯磨組成物の泡立ちや泡質を向上する観点から、より好ましくは10gf/個以下であり、さらに好ましくは8gf/個以下である。また、上記顆粒(I)の崩壊強度は、1gf/個以上20gf/個以下であって、好ましくは2〜15gf/個であり、より好ましくは3〜10gf/個であり、さらに好ましくは3〜8gf/個である。
なお、顆粒(I)の崩壊強度とは、湿潤状態で測定したときの値であって、歯磨組成物中から10個〜20個の顆粒(I)を取り出し、圧縮試験機(島津製作所、MCTM−500)を用いて、粒径(180〜200μm)の顆粒を荷重速度1.51gf/秒で圧縮して崩壊したときの荷重を顆粒ごとに測定し、求めた平均値である。なお、本発明で用いる顆粒(I)において、湿潤状態における崩壊強度と乾燥状態における崩壊強度とは同じ値である。
顆粒(I)は、必要に応じて成分(B)の無機結合剤を、水溶液(以下、「無機結合剤水溶液」という)とし、成分(A)の水不溶性粉末材料と混合し、好ましくは成分(A)に無機結合剤水溶液を添加して形成される顆粒を配合前顆粒として用い、これを歯磨組成物に配合するとよい。これらを混合する際、さらに成分(C)の結合助剤を添加してもよい。
成分(B)として珪酸ナトリウムを含む場合、かかる珪酸ナトリウムとして、珪酸ナトリウム水溶液を用いることができ、珪酸ナトリウム水溶液中における珪酸ナトリウム(固形分)の含有量は、顆粒の崩壊特性、顆粒の製造性の観点から、珪酸ナトリウム水溶液中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、粗大粒子を抑制する観点から、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは60質量%である。なお、珪酸ナトリウム水溶液中の珪酸ナトリウム(固形分)は、実施例記載の方法により求めることができる。また、成分(B)として珪酸ナトリウムを含む場合、成分(A)と無機結合剤水溶液との質量比(A/無機結合剤水溶液)が概ね10〜1、好ましくは8〜5の範囲で調製すると良好に顆粒化できるため、無機結合剤水溶液は、成分(B)の珪酸ナトリウムを含む無機結合剤を3倍量以下の水にて希釈して調製するとよい。さらに、水で希釈せず成分(A)の水不溶性粉末材料と混合し、好ましくは成分(A)に無機結合剤水溶液を添加して配合前顆粒を形成させてもよい。かかる無機結合剤水溶液は、空隙を効果的に形成しながら凝集して顆粒を形成させる観点から、緩和な速度で成分(A)の水不溶性粉末材料に添加するのが望ましい。
具体的には、例えば、無機結合剤水溶液の添加速度は、当該水不溶性粉体材料(A)100質量部に対して、好ましくは35質量部/分以下であり、より好ましくは20質量部/分以下であり、さらに好ましくは10質量部/分以下であり、好ましくは0.5質量部/分以上であり、より好ましくは0.8質量部/分以上であり、さらに好ましくは1質量部/分以上である。上記の範囲は、JIS K1408に記載の珪酸ソーダ1号、2号又は3号を用いる場合に好適である。そして、前記無機結合剤水溶液の添加速度は、水不溶性粉体材料(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜35質量部/分であり、より好ましくは0.8〜20質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%である。
また、珪酸ナトリウム(固形分)の添加速度は、上記と同様の観点から、当該水不溶性粉体材料(A)100質量部に対して、好ましくは19質量部/分以下であり、より好ましくは11質量部/分以下であり、さらに好ましくは5.5質量部/分以下であり、好ましくは0.1質量部/分以上であり、より好ましくは0.2質量部/分以上であり、さらに好ましくは0.3質量部/分以上である。そして、前記珪酸ナトリウム(固形分)の添加速度は、水不溶性粉体材料100質量部に対して、好ましくは0.1〜19質量部/分であり、より好ましくは0.2〜11質量%であり、さらに好ましくは0.3〜5.5質量%である。
上記のように、成分(A)に成分(B)の水溶液(無機結合剤水溶液)、必要に応じて成分(C)を添加して、顆粒(I)を得るための配合前顆粒を形成させるには、転動造粒法によって製造することが好ましい。転動造粒法によって製造された配合前顆粒を歯磨組成物に配合することにより、従来より汎用されている噴霧造粒法によって得られる球形の顆粒ではなく、本発明で用いる特異な形状を有する顆粒(I)を得ることが可能となり、また、粒度分布が広範囲にわたりブロードである配合前顆粒が得られることで、本発明で用いる特異な粒度分布を有する顆粒(I)を得ることが可能となり、また、顆粒内により多くの空隙を散在させることが可能となり、上述した特性を有する徐々に崩壊する挙動を示す顆粒(I)を得ることができる。
また、上記のような転動造粒法により、顆粒(I)を得るための配合前顆粒を製造するには、容器回転型造粒機を用いるのが好ましい。かかる容器回転型造粒機としては、ドラム型造粒機及びパン型造粒機が挙げられる。ドラム型造粒機としては、ドラム状の円筒が回転して処理を行うものであれば特に限定されない。水平又はわずかに傾斜させたドラム型造粒機の他に円錐ドラム型造粒機、多段円錐ドラム造粒機等も使用可能である。これらの装置は、バッチ式、連続式いずれの方式でもよい。
またさらに、上記のように、緩和な速度で無機結合剤水溶液を成分(A)の水不溶性粉末材料に添加するには、多流体ノズルを用いるのが好ましい。なお、多流体ノズルとは、液体と微粒化用気体(エアー、窒素等)を独立の流路を通してノズル先端部近傍まで流通させて混合・微粒化するノズルであり、具体的には、二流体ノズル、三流体ノズル、四流体ノズル等を挙げることができる。
多流体ノズルを用いて無機結合剤水溶液を供給する際の無機結合剤水溶液の温度は、添加時の安定性の観点から、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは30℃以下である。そして、無機結合剤水溶液を多流体ノズルを用いて供給する際の無機結合剤水溶液の温度は、5〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
なお、成分(C)の結合助剤を用いる場合、かかる成分(C)を成分(A)と共に配合することが好ましい。具体的には、成分(C)を配合する場合における配合前顆粒を得る製造工程は、好ましくは成分(A)の水不溶性粉末材料と成分(C)の結合助剤とを容器回転型造粒機を用いて混合する工程を備え、さらに、多流体ノズルを用いて成分(A)と成分(C)と(好ましくは成分(A)と成分(C)との混合物)に、成分(B)として無機結合剤水溶液を供給する工程を備えるのがより好ましい。
得られた顆粒(I)を得るための配合前顆粒は、顆粒(I)における安定性を確保する観点から、さらに乾燥することが好ましい。かかる乾燥としては、具体的には、棚乾燥、流動層乾燥、減圧乾燥、マイクロ波乾燥等が挙げられる。なかでも、設備的な観点から、棚乾燥、流動層乾燥が好ましい。
乾燥温度は、熱負荷の観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。また、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは110℃であり、またさらに好ましくは90℃以下である。そして、乾燥温度は、好ましくは60〜200℃であり、より好ましくは70〜150℃であり、さらに好ましくは80〜110℃であり、またさらに好ましくは80〜90℃である。
乾燥時間は、好ましくは10分以上であり、より好ましくは20分以上であり、さらに好ましくは30分以上であり、好ましくは24時間以下であり、より好ましくは20時間以下であり、さらに好ましくは5時間以下である。そして、乾燥時間は、好ましくは10分〜24時間であり、より好ましくは20分〜20時間であり、さらに好ましくは30分〜5時間である。
本発明の歯磨組成物中に存在する顆粒(I)を得るための配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での次の顆粒(b')〜(e−1'):
(b')粒径が100μm以上150μm未満の顆粒
(c')粒径が150μm以上200μm未満の顆粒
(d')粒径が200μm以上250μm未満の顆粒
(e−1')粒径が250μm以上300μm未満の顆粒
のうち、顆粒(b')の量と顆粒(c')の量の体積比(b'/c')は、好ましくは0.6以上1.25以下であり、顆粒(d')の量と顆粒(c')の量の体積比(d'/c')は、好ましくは0.7以上1.2以下であり、顆粒(e−1')の量と顆粒(c')の量の体積比(e−1'/c')は、好ましくは0.4以上1.1以下である。すなわち、配合前顆粒において、粒径が100μm以上300μm未満の範囲の顆粒が概ね同程度の量で存在するブロードなピークを有することになり、これを配合することによって、上記のような特異な形状或いは特異な粒度分布を有する顆粒(I)を歯磨組成物中に含有させることができる。
なお、配合前顆粒とは、本発明の歯磨組成物中に含有される顆粒(I)を得るための、歯磨組成物に配合する前の顆粒であって、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定により求められる粒径が50μm以上のものを意味する。また、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定により求められる粒径は、上記最大差し渡し径(DL')と最小差し渡し径(DS')との平均値にほぼ近似した値になると考えられる。
配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b')の量と顆粒(c')の量の体積比(b'/c')は、顆粒(I)における顆粒(b)の量と顆粒(c)の量の体積比(b/c)を所望の値とする観点から、好ましくは0.6以上であって、より好ましくは0.75以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b')の量と顆粒(c')の量の体積比(b'/c')は、顆粒(I)に徐々に崩壊する挙動を有効に付与する観点から、好ましくは1.25以下であって、より好ましくは1.15以下であり、さらに好ましくは1.05以下である。また、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(b)の量と顆粒(c')の量の体積比(b'/c')は、好ましくは0.6以上1.25以下であって、より好ましくは0.75〜1.15であり、さらに好ましくは0.8〜1.05である。
配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(d')の量と顆粒(c')の量の体積比(d'/c')は、顆粒(I)における顆粒(d)の量と顆粒(c)の量の体積比(d/c)を所望の値とする観点から、好ましくは0.7以上であって、より好ましくは0.8以上であり、さらに好ましくは0.85以上である。配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(d')の量と顆粒(c')の量の体積比(d'/c')は、顆粒(I)に徐々に崩壊する挙動を有効に付与する観点から、好ましくは1.2以下であって、より好ましくは1.15以下であり、さらに好ましくは1.05以下である。また、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(d')の量と顆粒(c')の量の体積比(d'/c')は、好ましくは0.7以上1.2以下であって、より好ましくは0.8〜1.15であり、さらに好ましくは0.85〜1.05である。
配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、顆粒(e−1')の量と顆粒(c')の量の体積比(e−1'/c')は、徐々に崩壊する挙動を有する顆粒(I)を容易に得る観点から、好ましくは0.4以上であって、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上であり、よりさらに好ましくは0.7以上である。配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(e−1')の量と顆粒(c')の量の体積比(e−1'/c')は、顆粒(I)に徐々に崩壊する挙動を有効に付与する観点から、好ましくは1.1以下であって、より好ましくは1以下である。また、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(e−1')の量と顆粒(c')の量の体積比(e−1'/c')は、好ましくは0.4以上1.1以下であって、より好ましくは0.5〜1.1であり、さらに好ましくは0.6〜1であり、さらに好ましくは0.7〜1である。
また、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、(a')粒径が50μm以上100μm未満の顆粒(顆粒(a'))の量と顆粒(c')の量の体積比(a'/c')は、徐々に崩壊する挙動を有する顆粒(I)を容易に得る観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上である。配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、(a')粒径が50μm以上100μm未満の顆粒(顆粒(a'))の量と顆粒(c')の量の体積比(a'/ c')は、徐々に崩壊する挙動を有し、微細な凹部にも有効に侵入し得る顆粒(I)を得る観点から、好ましくは1.2以下であり、より好ましくは1以下である。また、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、(a')粒径が50μm以上150μm未満の顆粒(顆粒(a'))の量と顆粒(b')の量の体積比(a'/ b')は、好ましくは0.2〜1.2であり、より好ましくは0.3〜1である。
配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(a')の量は、顆粒(I)において顆粒(a)や顆粒(b)を良好に絡み合わせ、徐々に崩壊する挙動を確保する観点から、配合前顆粒中に、好ましくは3〜20体積%であり、より好ましくは5〜18体積%であり、さらに好ましくは7〜15体積%である。
配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(c')の量は、顆粒(I)において顆粒(c)を所望の量で存在させる観点、及び顆粒(a)や顆粒(b)を良好に絡み合わせ、徐々に崩壊する挙動を確保する観点から、配合前顆粒中に、好ましくは5〜30体積%であり、より好ましくは8〜25体積%であり、さらに好ましくは10〜20体積%である。
さらに、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、(e−2')粒径が300μm以上550μm未満の顆粒(顆粒(e−2'))の量と顆粒(b)の量の体積比(e−2'/b')は、徐々に崩壊する挙動を有する顆粒(I)を容易に得る観点から、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.4以上である。配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(e−2')の量と顆粒(b')の量の体積比(e−2'/b')は、徐々に崩壊する挙動を有し、微細な凹部にも有効に侵入し得る顆粒(I)を得る観点から、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.95以下である。また、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(e−2')の量と顆粒(b')の量の体積比(e−2'/b')は、好ましくは0.3〜1であり、より好ましくは0.4〜0.95である。
配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での顆粒(e−2')の量は、顆粒(I)において顆粒(a)や顆粒(b)を良好に絡み合わせ、徐々に崩壊する挙動を確保する観点から、配合前顆粒中に、好ましくは2〜15体積%であり、より好ましくは5〜12体積%であり、さらに好ましくは7〜12体積%である。
なお、配合前顆粒において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒度分布での、粒径が350μm以上の顆粒の量は、配合前顆粒中に、好ましくは5〜50体積%であり、より好ましくは10〜45体積%であり、さらに好ましくは15〜42体積%である。
配合前顆粒の平均粒子径r'(μm)は、十分な研磨力を有する観点から、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは75μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上であって、口腔中での異物感を抑制する観点から、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは450μm以下であり、さらに好ましくは400μm以下である。そして、配合前顆粒の平均粒子径r'(μm)は、好ましくは50〜500μmであり、より好ましくは75〜450μmであり、さらに好ましくは100〜400μmである。
なお、配合前顆粒の平均粒子径r'は、体積平均粒径であって、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定による粒径が50μm以上の顆粒における粒度分布でのメジアン径である。
配合前顆粒の崩壊強度は、顆粒(I)において、徐々に崩壊する挙動及び高い汚れ除去性能を確保する観点から、好ましくは1gf/個以上であり、より好ましくは2gf/個以上であり、さらに好ましくは3gf/個以上である。上記配合前顆粒の崩壊強度は、顆粒(I)において柔らかな歯ブラシ等を用いた際の低い荷重の負荷によっても適度な崩壊性を付与する観点、及び異物感を低減する観点から、好ましくは20gf/個以下であり、より好ましくは15gf/個以下であり、さらに好ましくは10gf/個以下であり、さらに好ましくは8gf/個以下である。また、上記顆粒の崩壊強度は、好ましくは1gf/個以上20gf/個以下であって、好ましくは2〜15gf/個であり、より好ましくは3〜10gf/個であり、さらに好ましくは3〜8gf/個である。
なお、本発明で用いる配合前顆粒の崩壊強度とは、湿潤状態で測定したときの値であって、顆粒(I)の崩壊強度と同様の方法により求められる。また、配合前顆粒において、湿潤状態における崩壊強度と乾燥状態における崩壊強度とは同じ値である。
配合前顆粒における投影面の面積(SA')と、該投影面における最大差し渡し径(DL')を直径とする外接円の面積(SS')との比(SA'/SS')の平均値は、配合前顆粒により得られる顆粒(I)に徐々に崩壊する挙動を付与する観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.65以上である。配合前顆粒における投影面の面積(SA')と、該投影面における最大差し渡し径(DL')を直径とする外接円の面積(SS')との比(SA'/SS')の平均値は、配合前顆粒により得られる顆粒(I)に適度な崩壊性を発現して歯ブラシからの荷重を効果的に伝達する観点から、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.85以下である。なお、配合前顆粒における投影面の面積(SA')、最大差し渡し径(DL')、これを直径とする外接円の面積(SS')、及び比(SA'/SS')の平均値は、いずれも上記顆粒(I)と同様の方法により求められる値である。
配合前顆粒の投影面における最大差し渡し径(DL')と、最小差し渡し径(DS')との比(DL'/DS')の平均値は、配合前顆粒により、不定形となって徐々に崩壊する挙動を示す顆粒(I)を得る観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上であり、さらに好ましくは1.5以上である。配合前顆粒の投影面における最大差し渡し径(DL')と、最小差し渡し径(DS')との比(DL'/DS')の平均値は、配合前顆粒により得られる顆粒(I)が適度な崩壊性を発現して歯ブラシからの荷重を効果的に伝達する観点から、好ましくは2以下であり、より好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.75以下である。また、配合前顆粒の投影面における最大差し渡し径(DL')と、最小差し渡し径(DS')との比(DL'/DS')の平均値は、好ましくは1.2〜2であり、より好ましくは1.3〜1.8であり、さらに好ましくは 1.5〜1.75である。
本発明の歯磨組成物中に存在する、上記のように特異な形状或いは特異な粒度分布を有する顆粒(I)を得るには、歯磨組成物に後述する粘結剤を配合した後、配合前顆粒を歯磨組成物に配合することが好ましい。さらに、歯磨組成物に粘結剤を配合した後の工程において、上記配合前顆粒を歯磨組成物に添加した後、かかる歯磨組成物を撹拌する撹拌速度は、撹拌装置や撹拌時間にもよるが、10rpm以上で撹拌することが好ましく、撹拌速度20rpm以上で撹拌することがより好ましく、撹拌速度250rpm以下で撹拌することが好ましく、また撹拌速度10rpm以上250rpm以下で撹拌することが好ましく、撹拌速度20rpm以上250pm以下で撹拌することがより好ましい。かかる撹拌速度にて歯磨組成物を撹拌するには、例えば、万能混合攪拌機(5XDMV-10-r、ダルトン社製)、パドルミクサ−(TKパドルミクサー2SL−10、特殊機器(株))等、公知の攪拌機で撹拌することが可能であり、上記万能混合撹拌機を用いる場合は、自転の撹拌速度を40〜230rpmとすることが好ましく、90〜200rpmとすることがさらに好ましいく、公転の撹拌速度を20〜110pmとすることが好ましく、35〜75rpmとすることがさらに好ましい。上記パドルミクサーを用いる場合は、パドル撹拌速度は10〜70rpmが好ましく、タービンの撹拌速度は20〜90rpmが好ましい。なお、歯磨組成物の撹拌では、歯磨組成物中の顆粒を分散化できればよく、撹拌速度が低速である場合は撹拌時間を長時間にすればよく、撹拌速度が高速である場合は撹拌時間を短時間にすればよい。かかる観点から、撹拌時間は、好ましくは5分〜90分であり、より好ましくは10分〜60分である。
本発明の歯磨組成物の製造方法において、配合前顆粒を添加した後、該歯磨組成物を撹拌する工程を備えることが好ましい。かかる工程を備えることによって、ブロードな粒度分布を有する配合前顆粒が粒径100〜200μmの顆粒を多く含み、かつ粒度分布のピークの粒径よりも小さい粒径を多く含む粒度分布を有する顆粒(I)を得ることができる。
成分(I)の含有量は、汚れ除去能を高めながら滑らかな感触の付与を実現し、その持続性を高める観点から、本発明の歯磨組成物中に2質量%以上であって、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。成分(I)の含有量は、過剰な顆粒感を抑制する観点から、40質量%以下であって、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。
本発明の歯磨組成物は、(II)粘結剤(II-a)、又は粘結剤(II-b)と粘結剤(II-c)を含む粘結剤を0.4質量%以上3質量%以下含有し、かかる粘結剤(II-a)〜(II-c)は、次の(II-a)〜(II-c):
(II-a)エーテル化度が1以上2以下であり、かつ25℃1質量%水溶液の粘度が150〜500mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤、
(II-b)エーテル化度が1未満のカルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに25℃1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以下10mPa・s以上のカラギーナン及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤、
(II-c)エーテル化度が1以上のカルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに25℃1質量%水溶液の粘度が1000mPa・sより大きく10000mPa・s以下のカラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース及びキサンタンガムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤
である。
すなわち、本発明の歯磨組成物中における成分(II)の粘結剤は、粘結剤(II-a)から選ばれる1種又は2種以上のみを含み、或いは粘結剤(II-b)から選ばれる1種又は2種以上と粘結剤(II-c)から選ばれる1種又は2種以上を含む。
粘結剤(II-a)は、エーテル化度が1以上2以下であり、かつ25℃1質量%水溶液の粘度が150〜500mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤である。カルボキシメチルセルロースナトリウムとして、種々のエーテル化度や粘度を有するものが存在するが、かかる粘結剤(II-a)であれば、適度な増粘作用を有するだけでなく、特異な崩壊特性を有する顆粒(I)と相まって泡性能を高めることもできる。
粘結剤(II-a)のエーテル化度は、良好な増粘作用を有しつつ優れた泡性能をもたらす観点から、1以上2以下であって、好ましくは1〜1.8であり、より好ましくは1.0〜1.5である。また、粘結剤(II-a)における25℃1質量%水溶液の粘度は、過度な粘度上昇を抑制しつつ優れた泡性能をもたらす観点、保存安定性の観点から、150〜500mPa・sであって、好ましくは100〜400mPa・sであり、より好ましくは200〜400mPa・sである。かかる粘結剤(II-a)としては、サンローズF35SH(日本製紙ケミカル(株))、CMC1350、CMC1330、CMCKD-9(いずれもダイセル化学工業(株)等の上市品を用いることができる。
粘結剤(II-b)は、エーテル化度が1未満のカルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに25℃1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以下10mPa・s以上のカラギーナン及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤である。かかる粘結剤(II-b)のカルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、例えば、サンローズF10LC (日本製紙ケミカル(株))、CMC1250、CMC1150、CMC1205、CMC1220(いずれも(ダイセル化学工業(株))等の上市品を用いることができ、粘結剤(II-b)のカラギーナンとしては、例えば、ソアギーナMV101、ソアギーナMV220(ともにエムアールシー ポリサッカライド(株))等の上市品を用いることができ、粘結剤(II-b)のヒドロキシエチルセルロースとしては、例えばHEC390、HEC400、((ともにダイセル化学工業(株))の上市品を用いることができる。
粘結剤(II-c)は、エーテル化度が1以上のカルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに25℃1質量%水溶液の粘度が1000mPa・sより大きく10000mPa・s以下のカラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース及びキサンタンガムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤である。かかる粘結剤(II-c)のカルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、例えば、サンローズF35SH(日本製紙ケミカル(株))、CMC1350、CMC1330、CMCKD-9(いずれもダイセル化学工業(株)等の上市品を用いることができ、粘結剤(II-c)のヒドロキシエチルセルロースとしては、例えば、HEC600、HEC850、HEC900(いずれもダイセル化学工業(株))等の上市品を用いることができ、粘結剤(II-c)のキサンタンガムとしては、例えば、ケルデント(DSP五協フード&ケミカル(株))等の上市品を用いることができる。
粘結剤(II-b)のカルボキシメチルセルロースナトリウムは、粘結剤(II-c)のカルボキシメチルセルロースナトリウムのような粘性を付与する機能は低いものの、保形性を向上する機能を有し、粘結剤(II-b)のカラギーナンやヒドロキシエチルセルロースは、粘結剤(II-c)のカラギーナンやヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムほど高粘度ではないものの、保形性を向上する機能を有し、粘結剤(II)として、これら粘結剤(II-b)と粘結剤(II-c)を併用することにより、適度な増粘作用を発揮しつつ、特異な崩壊特性を有する顆粒(I)と相まって泡性能を高めるとともに、曳糸性を抑制し、適度な保形性を付与することができる。
粘結剤(II-b)のカルボキシメチルセルロースナトリウムにおけるエーテル化度は、泡性能を高めつつ粘結剤(II-c)と併用する粘結剤(II-b)として曳糸性を抑制し、適度な保形性を付与する観点から、1未満であって、好ましくは0.4以上1未満であり、より好ましくは0.5以上0.9以下であり、さらに好ましくは0.5以上0.8以下である。粘結剤(II-b)のカラギーナン及びヒドロキシエチルセルロースにおける25℃1質量%水溶液の粘度は、泡性能を高めつつ粘結剤(II-c)と併用する粘結剤(II-b)として曳糸性を抑制し、適度な保形性を付与する観点から、1000mPa・s以下であって、好ましくは500mPa・s以下であり、より好ましくは200mPa・s以下であり、10mPa・s以上であって、好ましくは20mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上である。
粘結剤(II-c)のカルボキシメチルセルロースナトリウムにおけるエーテル化度は、泡性能を高めつつ粘結剤(II-b)と併用する粘結剤(II-c)として良好な増粘作用をもたらす観点から、1以上であって、好ましくは2以下であり、より好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。粘結剤(II-c)のカラギーナン、キサンタンガム及びヒドロキシエチルセルロースおける25℃1質量%水溶液の粘度は、泡性能を高めつつ粘結剤(II-b)と併用する粘結剤(II-c)として良好な増粘作用をもたらす観点から、1000mPa・sより大きく、好ましくは1100mPa・s以上であり、より好ましくは1200mPa・s以上であり、10000mPa・s以下であって、好ましくは8000mPa・s以下であり、より好ましくは6000ma・s以下である。
なお、粘結剤(II-c)としては、粘度の調整の観点、及び効果的な泡性能の向上の観点から、上記カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましい。
なお、カルボキシメチルセルロースナトリウムにおけるエーテル化度とは、グルコース単位あたりのカルボキシメチル基の置換度をいう。エーテル化度は、例えばCMC工業会分析法(灰化法)に従い得ることができる。カルボキシメチルセルロースナトリウム1gを精秤し、磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、カルボキシメチルセルロースナトリウム1gあたりの滴定量YmLを次式に入れて計算し、求めたエーテル化度を示すことができる。
エーテル化度=(162×Y)/(10,000−80×Y)
成分(II)としては、粘度の調整の観点、適度な保形性、曳糸性抑制の観点、安定性の観点からは、粘結剤(II-a)から選ばれる1種又は2種以上のみを含む粘結剤であるのが好ましく、保形性と粘性のバランス、より優れた泡性能の観点からは、粘結剤(II-b)から選ばれる1種又は2種以上と粘結剤(II-c)から選ばれる1種又は2種以上との組合せが好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウムとカラギーナン又はキサンタンガムの組合せがさらに好ましい。
成分(II)の含有量は、泡性能を高める観点から、本発明の歯磨組成物中に0.4質量%以上であって、好ましくは0.6質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上である。成分(II)の含有量は、適度な粘性と保形性をもたらし、優れた泡性能を保持し、保存安定性を確保する観点から、本発明の歯磨組成物中に3質量%以下であって、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.6質量%以下である。成分(II)の含有量は、本発明の歯磨組成物中に0.4質量%以上3質量%以下であって好ましくは0.6〜2質量%であり、より好ましくは0.8〜1.8質量%である。
成分(II)が、粘結剤(II-b)及び粘結剤(II-c)を含む場合、かかる成分(II-b)と成分(II-c)の質量比((II-b)/(II-c))は、粘性と保形性のバランス、曳糸性の抑制、安定性及び泡性能を高める観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。
本発明の歯磨組成物は、さらにアニオン界面活性剤(III)を含有することができる。かかる成分(III)としては、具体的には、例えば、N−アシルタウリン塩、N−メチル長鎖アシルタウリン塩、N−アシルグルタミン酸塩、及びN−ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルアミノ酸塩;
ラウリル硫酸ナトリウム、及びミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩;イセチオン酸塩等の脂肪酸エステル塩;
ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等のポリオキシアルキルリン酸塩;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;
ラウリルスルホ酢酸ナトリウム等のアルキルスルホ酢酸塩;
α−オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。これら成分(III)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、歯垢除去能又は汚れ除去能を増強する観点から、N−アシルタウリン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−ラウロイルサルコシン塩、ラウリル硫酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
成分(III)の含有量は、歯垢除去能又は汚れ除去能を増強させる観点、及び良好な使用感をもたらす観点等から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.2〜3質量%であり、より好ましくは0.4〜2質量%であり、さらに好ましくは0.7〜1.8質量%である。
さらに、例えばアニオン界面活性剤(III)としてN−アシルアミノ酸又はその塩を用いる場合、N−アシルアミノ酸としては、タンパク質汚れの付着抑制効果や除去効果を発揮させる観点、並びに良好な使用感、泡立ち、及び耐酸性の観点から、N−アシル酸性アミノ酸が好ましく、アシルグルタミン酸、アシルアスパラギン酸がより好ましく、アシル基としては、ミリストイル、ココイル、ラウリルが好ましく、具体的には、例えばN−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸がより好ましい。また塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が好ましい。かかるN−アシルアミノ酸塩の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.005〜1.0質量%であり、より好ましくは0.007〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。 また、N−アシルアミノ酸又はその塩を用いる場合、ピロリン酸又はその塩を併用するのが好ましい。かかるピロリン酸又はその塩の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.005〜0.5質量%であり、より好ましくは0.01〜0.4質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.2質量%である。そして、ピロリン酸又はその塩とN−アシルアミノ酸又はその塩の質量比(ピロリン酸又はその塩/N−アシルアミノ酸又はその塩)は、好ましくは0.05〜40であり、より好ましくは0.1〜15であり、さらに好ましくは0.1〜12であり、ピロリン酸又はその塩とN−アシルアミノ酸又はその塩の合計含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.01〜0.6質量%であり、より好ましくは0.02〜0.45質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.3質量%である。
アルキル硫酸塩を併用する場合、かかるアルキル硫酸塩とN−アシルアミノ酸又はその塩の質量比(アルキル硫酸塩/N−アシルアミノ酸又はその塩)は、好ましくは5〜200であり、より好ましくは10〜150である。
また、N−アシルアミノ酸又はその塩と後述するノニオン界面活性剤を併用することが好ましい。
さらに、良好な収斂感、汚れ除去性能、及び歯の美白効果をもたらす観点から、N−アシルアミノ酸又はその塩とフィチン酸又はその塩を併用することが好ましい。
本発明の歯磨組成物は、上記成分(III)のアニオン界面活性剤以外の界面活性剤を含有してもよい。かかる界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、及びアルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノミリスチン酸ペンタグリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アミンオキサイド系界面活性剤、モノ−(又はジ−)エタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、並びにステアリン酸モノグリセリンやモノステアリン酸デカグリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル、ラウリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、並びにポリエチレンポリプロピレングリコール等のポリグリコールであるノニオン界面活性剤;
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン、ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン、並びにN−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩である両性界面活性剤が挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤が好ましい。
成分(III)のアニオン界面活性剤以外の界面活性剤の含有量は、高い歯垢除去能又は汚れ除去能を確保する観点、及び良好な使用感を保持する観点等から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
なお、成分(III)のアニオン界面活性剤とともに成分(III)以外の界面活性剤としてノニオン界面活性剤を用い、さらにカリウムイオン供給化合物を用いることが好ましい。これにより、歯磨組成物における適度な粘度を維持し、かつ低温保存時の粘度上昇が抑制され、しかも歯磨組成物を格納したチューブ容器からの押し出し性を良好なものとすることができる。さらに、トリクロサン、イソプロピルメチルセルロース、グリチルレチン酸、トコフェロール等の殺菌剤や抗炎症剤の保存安定性を向上させることもできる。これらの含有量は、例えば、本発明の歯磨組成物中に、成分(III)のアニオン界面活性剤を0.5〜3.0質量%、ノニオン界面活性剤を1.2〜3質量%、及びカリウムイオン供給化合物をカリウム原子換算量で0.1〜3.0質量%含有するのが好ましく、さらにナトリウムイオンを0.1〜5質量%含有することが好ましい。この場合における成分(III)のアニオン界面活性剤としては、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステル塩、メチルアシルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が好ましく、これらの含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.2〜4質量%であり、より好ましくは0.5〜2質量%である。また、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン界面活性剤、アミンオキサイド、モノまたはジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、これらの含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは1.2〜3質量%であり、より好ましくは1.3〜2.5質量%であり、さらに好ましくは1.3〜2.0質量%である。カリウムイオン供給化合物としては、水酸化カリウム、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カルシウム、塩化カリウムが好ましく、これらの含有量は、本発明の歯磨組成物中にカリウム原子換算量で、好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。また、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム等のフッ化物を含有させてもよい。
また、成分(III)以外の界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いる場合、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれるその他のノニオン界面活性剤を併用することが好ましい。この際、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とその他のノニオン界面活性剤の質量比(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油/ノニオン界面活性剤)は、好ましくは0.2〜5であり、より好ましくは0.5〜4であり、さらに好ましくは0.5〜2であり、またさらに好ましくは0.5〜1.7であり、またより好ましくは0.7〜1.5である。かかるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.15〜5質量%であり、さらに好ましくは0.3〜3質量%である。
本発明の歯磨組成物は、さらに多価アルコール(IV)を含有することができる。かかる成分(IV)としては、具体的には、例えば、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、良好な使用感、保存安定性、口腔内での分散性向上の観点から、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。かかる成分(IV)の含有量は、上記成分を溶解・分散させながら口腔内で有効に拡散させて、徐々に崩壊する成分(I)の顆粒による歯垢又は汚れ除去効果を有効に発揮させ、界面活性剤と相まって泡性能を高める観点から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。また、成分(IV)の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは5〜70質量%であり、より好ましくは10〜60質量%であり、さらに好ましくは15〜50質量%である。例えば、グリセリンを用いる場合、その含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは4〜35質量%であり、成分(I)の顆粒とグリセリンの質量比((I)/グリセリン)は、好ましくは0.1〜10である。ソルビトールとしてソルビトール液(70%)を用いる場合、その含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは25〜45質量%であり、成分(I)の顆粒とソルビトール液との質量比((I)/ソルビトール液)は、好ましくは0.1〜10である。ポリエチレングリコールを用いる場合、その数平均分子量は1000以下であるのが好ましく、その含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは1〜7質量%であり、成分(I)の顆粒とポリエチレングリコールの質量比((I)/ソルビトール)は、好ましくは0.5〜10である。プロピレングリコールを用いる場合、その含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは1〜7質量%であり、成分(I)の顆粒とプロピレングリコールの質量比((I)/プロピレングリコール)は、好ましくは0.5〜10である。
本発明の歯磨組成物は、さらに研磨剤を含有することができる。ここで、研磨剤とは、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定により求められる粒径が50μm未満のものを意味する。かかる研磨剤としては、具体的には、例えば、粉末セルロース、結晶セルロース、結晶パルプ、及び合成樹脂系研磨剤等の有機研磨剤;
炭酸カルシウム、ゼオライト、第1リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム・無水和物、第2リン酸カルシウム・2水和物、第3リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム2水和物、リン酸水素カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベンガラ、アルミナ、水酸化アルミニウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、複合アルミノケイ酸塩、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、ケイ酸チタニウム、ケイ酸ジルコニウム、雲母チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、スメクタイト、沈降性シリカアルミノシリケート、及びベントナイトの無機研磨剤;
含水シリカ、無水シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、及びチタン結合性シリカ等のケイ酸塩を主成分とする化合物等であるシリカ系研磨剤が挙げられる。
研磨剤の含有量は、高い歯垢除去能又は汚れ除去能を確保する観点等から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは1〜15質量%以下であり、より好ましくは2〜10質量%である。
本発明の歯磨組成物は、さらに水を含有してもよい。かかる水の含有量は、上記成分を溶解・分散させながら口腔内で有効に拡散させ、徐々に崩壊する顆粒による歯垢又は汚れ除去効果を有効に発揮させ、柔らかい歯ブラシ等によって負荷される低い荷重でも高い汚れ除去能を発揮でき、また界面活性剤と相まって良好な泡立ちをもたらす観点から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。また、水の含有量は、良好な溶解性や分散性、及び歯垢または汚れ除去能をもたらす観点から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは12〜45質量%であり、さらに好ましくは15〜40質量%である。なお、かかる水の含有量とは、配合した水分量及び配合した他の成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業(株))を用いることができる。この装置では、歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して測定される水分量を水の含有量とすることができる。本発明の歯磨組成物中の、成分(I)の顆粒及び水分量(水の含有量)の比率((I)/水含有量)は、良好な溶解性や分散性、及び歯垢または汚れ除去能をもたらす観点から、0.02〜15が好ましく、さらに0.1〜6が好ましく、またさらに0.2〜3が好ましい。
本発明の歯磨組成物は、上記以外の他の成分、例えば賦形剤、甘味剤、防腐剤、香料、薬用成分、着色剤、その他一般に使用されている成分を含有することができる。
上記の他の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
例えば、オルトリン酸又はその塩、並びにポリリン酸又はその塩を用いる場合、適度な収斂感と良好な汚れ除去効果の両立の観点から、これらの含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.001〜0.2質量%であり、さらに好ましくは0.003〜0.09質量%であり、またさらに好ましくは0.005〜0.04質量%である。かかるポリリン酸又はその塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、トリメタリン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ピロリン酸、トリポリリン酸及びこれらの塩がより好ましく、ピロリン酸又はその塩がさらに好ましい。上記ポリリン酸塩は、アルカリ金属塩であることが好ましく、ナトリウム、カリウムから選ばれる塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。オルトリン酸又はその塩としては、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウムが好ましい。成分(I)の顆粒とオルトリン酸又はその塩、並びにポリリン酸又はその塩の質量比((I):オルトリン酸又はその塩、並びにポリリン酸又はその塩)は、好ましくは1:0.001〜1:0.008であり、より好ましくは1:0.002〜1:0.0075であり、さらに好ましくは1:0.003〜1:0.007である。
また、糖アルコールを用いる場合、エリスリトール、還元パラチノール(パラチニット)、マンニトールを用いるのが好ましく、これらの含有量は、清涼感、冷涼感、フッ化物との併用による再石灰化の点から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは25〜50質量%であり、この場合における水の含有量は、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは12〜45質量%であり、さらに好ましくは15〜40質量%である。成分(I)の顆粒とこれらの糖アルコールとの質量比((I):糖アルコール)は、清浄感や使用感の観点から、好ましくは1:10〜1:1であり、より好ましくは1:5〜1:1であり、さらにフッ化物を含有することが好ましい。フッ化物を含有する場合、糖アルコールとしてはキリシトールを用いるのが好ましく、かかるキリシトールの含有量は、フッ化物との併用による虫歯抑制の観点から、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは10〜60質量%である。
また、pH調整剤として、乳酸、リンゴ酸、酒席酸、クエン酸、グリコール酸、及びコハク酸から選ばれる1種又は2種以上の有機酸を含有するのが好ましい。
さらに、増粘性シリカを用いることもでき、かかる増粘性シリカの含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは3〜12質量%であり、より好ましくは4〜10質量%であり、さらに好ましくは5〜8質量%であり、成分(I)の顆粒と増粘性シリカの質量比((I)/増粘性シリカ)は、好ましくは0.5〜5である。かかる増粘性シリカとしては、保形性、軽い使用感、味、泡立ち、口腔内での良好な分散性の観点から、吸油量は、好ましくは150〜500mL/100gであり、より好ましくは200〜400mL/100gであり、さらに好ましくは250〜380mL/100gであり、平均粒子径は、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは1.5〜9μmであり、さらに好ましくは2〜8μmである。かかる増粘性シリカとしては、例えばSYROPURE25(富士シリシア化学製)、SORBOSILTC15(CROSFIELD社製)の上市品を用いることができる。なお、給油量とは、JISK5101−13−2に準じて測定した値である。また、かかる増粘性シリカとカルシウム化合物を併用することもでき、かかるカルシウム化合物の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、カルシウム原子換算量で好ましくは0.003〜0.05質量%であり、より好ましくは0.004〜0.04質量%であり、さらに好ましくは0.06〜0.02質量%である。かかるカルシウム化合物としては、20℃の水への溶解度が2〜100g/100mLである水溶性カルシウム化合物が好ましく、具体的には、例えば塩化カルシウム、乳酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、及びプロピオン酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
また、リンゴ酸又はその塩とオルトリン酸又はその塩を併用することが好ましい。これにより、酸味を抑制し、良好な風味を保持しつつ、リンゴ酸による歯のきばみ除去効果をもたらすことができる。リンゴ酸又はその塩の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは25〜1000mmol/kgであり、より好ましくは28〜900mmol/kgであり、さらに好ましくは30〜800mmol/kgであり、またさらに好ましくは80〜350mmol/kgである。オルトリン酸又はその塩の含有量は、好ましくは1〜800mmol/kgであり、より好ましくは5〜700mmol/kgであり、さらに好ましくは10〜500mmol/kgである。この場合、オルトリン酸又はその塩としてリン酸一水素アルカリ金属塩を用いることが好ましく、また本発明の歯磨組成物のpHを好ましくは7〜11、より好ましくは7.5〜11、さらに好ましくは7.5〜9.5、またさらに好ましくは7.8〜8.5に調整するのがよい。
さらに、上記粘結剤(II-b)のカルボキシメチルセルロース又はその塩を用いる場合、粉末セルロースを併用することが好ましい。これにより、起泡性や泡質を向上させ、さらに風味を良好なものとすることができる。
粉末セルロースは、平均重合度が350より大きく2250以下のものであり、平均重合度が350以下の結晶セルロースと比べ、重合度及び結晶化度が異なるのみならず、物性が顕著に異なるセルロースである。
粉末セルロース、及び粘結剤(II-b)の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜2.5質量%であり、さらに好ましくは0.2〜1質量%であり、またさらに好ましくは0.2〜0.8質量%である。また、顆粒(I)と粉末セルロース、及び粘結剤(II-b)の質量比(顆粒(I)/粉末セルロース、及び粘結剤(II-b))は、良好な泡立ちや微細な泡質をもたらし、保形性を向上させる観点から、好ましくは10〜30である。
また、樹脂紛体を含有してもよい。これを顆粒(I)と併用することにより、起泡性や泡質を高めるとともに、きしみを抑制し、さっぱり感や安定性の向上を図ることができる。かかる樹脂紛体としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)粉体、及びポリアミド樹脂(ナイロン)粉体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。かかる樹脂粉体の平均粒径は、好ましくは5〜500μmであり、樹脂粉体の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.3〜5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜2質量%である。
さらに、第4級アンモニウム塩を用いてもよい。かかる成分を用いることにより、殺菌効果の向上を図ることができる。第4級アンモニウム塩としては、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ベンザルコニウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。第4級アンモニウム塩の含有量は、第4級アンモニウム塩1質量部に対し、顆粒(I)の含有量が、好ましくは100〜2500質量部であり、より好ましくは200〜2000質量部であり、さらに好ましくは300〜1300質量部である。また、かかる第4級アンモニウム塩を含有する場合、本発明の歯磨組成物を10倍希釈したときのpHが、好ましくは8〜11.5であり、より好ましくは8.5〜11.3であり、さらに好ましくは9〜11である。
また、かかる第4級アンモニウム塩とともに湿潤剤を用いることが好ましい。湿潤剤としては、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。かかる湿潤剤の含有量は、第4級アンモニウム塩1質量部に対し、好ましくは1〜60質量部であり、より好ましくは5〜55質量部であり、さらに好ましくは10〜50質量部である。
さらに、β−グリチルレチン酸又はその塩、トコフェロール、トリクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の油溶性有効成分を用いてもよい。これらのなかでも、抗炎症性を付与する観点から、β−グリチルレチン酸又はその塩、及びトコフェロールから選ばれる1種又は2種の油溶性有効成分を用いることが好ましく、殺菌効果を付与する観点から、トリクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種の油溶性有効成分を用いることが好ましい。
トコフェロールとしては、酢酸dl−α―トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールが挙げられ、これらの含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.01〜0.5質量%であり、より好ましくは0.05〜0.2質量%である。
トリクロサンとは、広範囲な抗菌スペクトルをもつハロゲン化ジフェニルエーテル型の殺菌剤であり、化学名は2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテルであって、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社からイルガケアMPの商品名で販売されている上市品を用いることができる。かかるトリクロンサンの含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.001〜0.05質量%であり、より好ましくは0.005〜0.02質量%である。
イソプロピルメチルフェノールとは、1−ヒドロキシ−4−イソプロピル−3−メチルフェノールであり、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、シメン−5−オールとも称される。例えば、商品名ビオゾームとして大阪化成株式会社から販売されている上市品を用いることができる。かかるイソプロピルメチルフェノールの含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.001〜0.05質量%であり、より好ましくは0.005〜0.02質量%である。
β−グリチルレチン酸は、甘草等から得られるグリチルリチン酸を加水分解することにより得られる3β−ヒドロキシ−11−オキソオレアナ−12−エン−30−カルボン酸である。β−グリチルレチン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。このうち、β−グリチルレチン酸が好ましい。かかるβ−グリチルレチン酸又はその塩の含有量は、本発明の歯磨組成物中に、好ましくは0.001〜0.05質量%であり、より好ましくは0.005〜0.02質量%である。
上記油溶性有効成分は、本発明の歯磨組成物を格納するチューブ容器の内層がポリエチレン層であるときにかかるポリエチレン層に吸着しやすいため、このような吸着や保存安定性を抑制する観点から、ノニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。また、上記油溶性有効成分の保存安定性を高めるとともに、良好な泡立ち、低温粘度上昇抑制する観点から、2種以上のノニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明の歯磨組成物中に含有される、上記のように特異な形状或いは特異な粒度分布を有する顆粒(I)を得るには、歯磨組成物に上記粘結剤(II)を配合した後、配合前顆粒を歯磨組成物に配合することが好ましい。さらに、歯磨組成物に粘結剤(II)を配合した後の工程において、上記配合前顆粒を歯磨組成物に添加した後、かかる歯磨組成物を撹拌する撹拌速度は、撹拌装置や撹拌時間にもよるが、10rpm以上で撹拌することが好ましく、撹拌速度20rpm以上で撹拌することがより好ましく、撹拌速度250rpm以下で撹拌することが好ましく、また撹拌速度10rpm以上250rpm以下で撹拌することが好ましく、撹拌速度20rpm以上250pm以下で撹拌することがより好ましい。かかる撹拌速度にて歯磨組成物を撹拌するには、例えば、万能混合攪拌機(5XDMV-10-r、ダルトン社製)、パドルミクサ−(TKパドルミクサー2SL−10、特殊機器(株))等、公知の攪拌機で撹拌することが可能であり、上記万能混合撹拌機を用いる場合は、自転の撹拌速度を40〜230rpmとすることが好ましく、90〜200rpmとすることがさらに好ましいく、公転の撹拌速度を20〜110pmとすることが好ましく、35〜75rpmとすることがさらに好ましい。上記パドルミクサーを用いる場合は、パドル撹拌速度は10〜70rpmが好ましく、タービンの撹拌速度は20〜90rpmが好ましい。なお、歯磨組成物の撹拌では、歯磨組成物中の顆粒を分散化できればよく、撹拌速度が低速である場合は撹拌時間を長時間にすればよく、撹拌速度が高速である場合は撹拌時間を短時間にすればよい。かかる観点から、撹拌時間は、好ましくは5分〜90分であり、より好ましくは10分〜60分である。
本発明の歯磨組成物の製造方法において、配合前顆粒を添加した後、該歯磨組成物を撹拌する工程を備えることが好ましい。かかる工程を備えることによって、ブロードな粒度分布を有する配合前顆粒が粒径100〜200μmの顆粒を多く含み、かつ粒度分布のピークの粒径よりも小さい粒径を多く含む粒度分布を有する顆粒(I)を得ることができる。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。また、各物性値の測定は、以下の方法により行った。
《1:水不溶性粉末の平均粒子径の測定方法》
水不溶性粉末の平均粒子径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、HORIBA社製)にて、溶媒:イオン交換水、屈折率:1.2、循環速度(目盛:4)、撹拌速度(目盛:3)の条件で測定した。
《2:珪酸ナトリウムの固形分》
試料2.5gをスポイトを用いてアルミ製の直径11.5cmの容器上に1滴が直径5〜10mm程度の液滴となるよう(液滴同士が極力重ならないよう)に滴下散布し、その後、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、FD240)を用い、湿量基準水分測定モードにて温度105℃、Autoの条件(測定値の変化量が、30秒間で0.05%以内になったときを最終測定値とみなして測定を終了)で測定した揮発自由水分を除くことで算出した。
《3:配合前顆粒の粒度分布及び平均粒子径の測定方法》
配合前顆粒をイオン交換水により5質量%に希釈した水溶液を用いて測定した。配合前顆粒をイオン交換水により5質量%に希釈した水溶液を、ミキサー(ROTARY MIXER NPC-20、NISSIN社製)により、75回転/分、水平方向回転、2時間の条件で顆粒を分散させた。次いで、顆粒を分散した水溶液を、室温(25℃)で1日保存した。かかる保存後の水溶液を、再度上記ミキサーにより10分間分散させた後、当該水溶液を用いて、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(Partica LA-950V2、HORIBA社製)にて、屈折率:1.58、循環速度(目盛:5)、撹拌速度(目盛:5)の条件で測定した。なお、溶媒としてはイオン交換水を用いた。
《4:歯磨剤中の顆粒(I)における投影面の面積(SA)、最大差し渡し径(DL)、DLを直径とする外接円の面積(SS)及び最小差し渡し径(DS)》
(i)顆粒(I)の投影面の面積は、精製水により10質量%に希釈した歯磨剤の水溶液をJISZ8801―1規格の150μmの篩を用いて精製水により洗浄した後、篩上に残った顆粒を室温(25℃)にて1日乾燥させた顆粒を用いて測定した。
(ii)投影面の面積(SA)、最大差し渡し径(DL)及び最小差し渡し径(DS)の測定は、KEENCE VH―5500(倍率100倍)を用いて撮影し、撮影したデジタル画像を解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事(株))を用いて、個々の顆粒の一投影面における面積(SA)、最大差し渡し径(DL)、最小差渡し径(DS)を得た。測定により得られた5〜10個の顆粒のデータを平均して、各顆粒の一投影面における面積(SA)、最大差し渡し径(DL)、最小差渡し径(DS)とした。これらのデータをもとに、さらに顆粒の一投影面における面積(SA)と、最大差し渡し径(DL)を直径とする外接円の面積(SS)との比(SA/SS)、最大差し渡し径(DL)と最小差し渡し径(Ds)との比(DL/Ds)を求めた。
《5:歯磨剤中の顆粒(I)の粒度分布、平均粒子径及び量の測定方法》
(i)測定用の水溶液中の顆粒の分散処理:歯磨剤をイオン交換水により10質量%に希釈した水溶液を、ミキサー(ROTARY MIXER NPC-20、NISSIN社製)により、75回転/分、水平方向回転、2時間の条件で顆粒を分散させた。次いで、分散後の歯磨剤を希釈して得た水溶液を、室温(25℃)で1日保存した。かかる保存後の水溶液を、再度上記ミキサーにより10分間分散させた後にレーザ回折/散乱式粒子径分布装置にかけた。
《4》の(i)と同様の方法にしたがって顆粒を抽出した。
(ii)粒度分布、平均粒子径及び量の測定:得られた粉体及び顆粒(I)を、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(Partica LA-950V2、HORIBA社製)を用いて、屈折率:1.58、循環速度(目盛:5)、撹拌速度(目盛:5)の条件で測定した。溶媒としてはイオン交換水を用いた。
なお、本発明において、レーザ回折/散乱式粒子分布測定装置により測定された粒度分布から、各粒径の範囲の顆粒(a)〜(e)((a')〜(e')の量(体積%)を計算した。具体的には、レーザ回折により測定された各粒径の範囲について、各粒径の範囲の含有量を粒径範囲の比率をかけて顆粒(a)〜(e)の量を計算した。例えば、レーザ回折による、粒径45μm以上51μm未満の顆粒が0.2体積%、51μm以上101μm未満の顆粒が7.5体積%、である場合には、顆粒(a)の含有量は、0.2体積%×1/(51―45)+7.5体積%×(100―51)/(101−51)であり、計算結果は7.4体積%となる。
[製造例1:顆粒A'の製造]
表1に示す含有量の顆粒となるよう、重質炭酸カルシウム(株式会社カルファイン製、商品名:ACE−25、平均粒子径約3μm)と各種結合助剤(C)との混合物を邪魔板を有した75Lドラム型造粒機(φ40cm×L60cm)に投入し、ドラム回転数30r.p.m/フルード数0.2/ドラム角度12.6°の条件で混合しながら珪酸ナトリウム(富士化学工業株式会社製、商品名:3号珪酸ソーダ:Na2・3SiO2溶液、固形分38.5%、3倍量以下の水にて希釈、25℃)を外部混合型二流体ノズル1個(株式会社アトマックス製)を用いて噴霧添加し造粒した。なお、バッチサイズは8kgである。珪酸ナトリウム水溶液の添加速度は、3.3mL/分であった。
珪酸ナトリウム水溶液噴霧後、1分間混合を継続した後、ドラム型造粒機から排出し、電気式棚乾燥機を用いて80℃で90分間乾燥した後、配合前顆粒A'を得た。
各配合前顆粒A'〜B'の粒度分布を表2に示すとともに、配合前顆粒A'の粒度分布のグラフを図1に示す。
[実施例1〜13、比較例1〜3]
表3に示す処方にしたがって、得られた配合前顆粒A'〜B'とともに各成分を添加し、万能混合装置(5XDMVV10-r、ダルトン社製)を用いて公転の撹拌速度75rpm、自転の撹拌速度200rpmにて10分間撹拌して、各々配合前顆粒A'〜B'から得られた顆粒A〜Bを含有する歯磨剤を得た。
次いで、各歯磨剤を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表3〜4に示す。
また、各歯磨剤に含有される顆粒A〜Bの粒度分布を表5に示し、実施例1の歯磨剤に含有される顆粒Aの粒度分布のグラフを図1に示し、かかる顆粒AのSEM(電子顕微鏡:日立S−4800)の写真を図2に示す。さらに、比較例3の歯磨剤に含有される顆粒Bの粒度分布のグラフを図3に示す。
[泡性能の評価]
《泡立ち》
45mlのファルコンチューブ(内径25mm)に鉄球2.5g、歯磨組成物0.5g、及び水4.5gを投入し、30秒間振盪した後にファルコンチューブの下端から廃液し、廃液した後の泡について、ファルコンチューブの下端から形成された泡の上端までの高さ(mm)を測定し、かかる値を泡立ちの評価の指標とした。数値が高いほど、良好な結果であることを示す。
《泡持ち》
泡立ちを評価した後、5分間放置し、同様にして、廃液した後の泡について泡量(ファルコンチューブの下端から形成された泡の上端までの高さ)を測定し、かかる値を泡持ちの評価の指標とした。数値が高いほど、良好な結果であることを示す。
[曳糸性の評価]
得られた歯磨組成物40gをラミネートチューブに格納してキャップを閉め、25℃、1日間保存した後にキャップを開けたときの、ラミネートチューブの吐出口からキャップまで伸びた歯磨組成物の長さ(mm)を測定し、曳糸性の評価の指標とした。数値が低いほど、良好な結果であることを示す。
[分離安定性の評価]
曳糸性の評価で用いたラミネートチューブに格納した歯磨組成物(25℃1日間保存後)を用い、かかる歯磨組成物をラミネートチューブの吐出口から3cm、紙(KB用紙、コクヨ)上に吐出し、吐出された歯磨組成物の分離の状態を目視により観察して、さらに紙を垂直にたてた際の状態を観察し、下記基準にしたがって評価した。数値が低いほど、良好な結果であることを示す。
AA:変化は認められない(保存前から変化がない)(垂直にしても液垂れしない)
A:保存前に比べて表面に透明感が少し認められる(垂直にしても液は垂れない)
a:保存前に比べて表面に透明感が認められるが、垂直にしても液は垂れない
B:表面に透明な分離液が明らかに認められ、垂直にすると分離液が垂れる
*1:CMC1150(ダイセル化学工業(株))、粘度200〜300mPa・s、エーテル化度0.6〜0.8
*2:ソアギーナMV101(エムアールシー ポリサッカライド(株))、粘度65〜90mPa・s
*3:サンローズF35SH(日本製紙ケミカル(株))、粘度300〜400mPa・s、エーテル化度1.0〜1.15
*4:ケルデント(DSP五協フード&ケミカル(株))、粘度1200〜1700mPa・s
(なお、粘度の値はいずれも25℃1質量%水溶液での値である。)
*5:SYROPURE25(富士シリシア化学(株))、吸油量=310mL/100g
*1〜*5:表3と同じ
上記結果より、実施例1〜13の歯磨剤は、比較例1〜3の歯磨剤に比して、優れた汚れ除去能を発揮とともに、口腔内での分散性にも優れ、曳糸性を有効に抑制して良好な使用感をもたらすことがわかる。
得られた顆粒A'を用い、下記に示す処方にしたがって、実施例1と同様にして顆粒Aを含有する各歯磨剤を得た。
実施例14 実施例15 実施例16
(I)顆粒A 11.0 7 7
(II)カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0 1 1
(III)ラウリル硫酸ナトリウム 1.3 1.5 1.3
(IV)ソルビトール(70%水溶液) 35 37 30
(IV) プロピレングリコール 4 5
炭酸カルシウム*2 15
ピロリン酸ナトリウム 0.02 1 0.02
増粘性シリカ 7.0 7 8
香料 1.0 1 1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7 0.7 0.7
塩化ベンゼトニウム 0.01 0.01 0.01
サッカリンナトリウム 0.12 0.13 0.12
酸化チタン 0.2 0.1 0.2
精製水 残部 残部 残部
*2:表3と同じ
実施例17 実施例18
(I)顆粒A 7 8
(II)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.8 1.0
(II)キサンタンガム 0.05
(II)カラギーナン 0.3
(III)ラウリル硫酸ナトリウム 1.5 1.3
(IV)ソルビトール液(70%水溶液) 20 20
(IV)グリセリン 5
(IV)プロピレングリコール 4
(IV)ポリエチレングリコール600 4
無水ケイ酸A*1 10 10
エリスリトール 35 10
キシリトール 10
ピロリン酸ナトリウム 0.1 0.1
フッ化ナトリウム 0.21 0.21
トリクロサン 0.02
塩化ベンゼトニウム 0.01 0.01
β−グリチルレチン酸 0.01 0.01
サッカリンナトリウム 0.05 0.05
香料 1.2 1
精製水 残部 残部
*1:表3と同じ
実施例19
(I)顆粒A 7
(II)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3
(II)キサンタンガム 0.05
(II)カラギーナン 0.15
(III)N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.02
(III)ラウリル硫酸ナトリウム 1.4
(IV)グリセリン 4
(IV)ソルビトール液(70%水溶液) 28
(IV)ポリエチレングリコール 5
無水ケイ酸A*1 6
ピロリン酸ナトリウム 0.01〜0.02
フィチン酸 0.1〜0.2
エリスリトール 20
スクラロース 0.005
増粘性シリカ 4.5
サッカリンナトリウム 0.03
酸化チタン 3
香料 1
精製水 残部
*1:表3と同じ
実施例20
(I)顆粒A 7
(II)カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
(II)キサンタンガム 0.2
(III)ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
(IV)ポリエチレングリコール 5
無水ケイ酸A*1 20
リンゴ酸 1.1
リン酸一水素二ナトリウム・12水和物 0.5
水酸化カリウム 0.73
水酸化ナトリウム 0.11
フッ化ナトリウム 0.21
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.3
サッカリンナトリウム 0.13
酸化チタン 0.3
香料 1.0
精製水 残部
*1:表3と同じ