JP2015115475A - 電極箔、電解コンデンサおよび電極箔の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 大容量かつ低漏れ電流、を実現する電極箔、電解コンデンサおよび電極箔の製造方法を提供する。【解決手段】 第1弁金属又はその合金からなる基材と、前記基材の上に形成されると共に、前記第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなる金属層と、前記金属層の上に形成されると共に、炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと、前記第2弁金属と、を含有する第1誘電体層と、を備えた電極箔である。【選択図】図3
Description
本発明は、電極箔、電極箔を用いた電解コンデンサおよび電極箔の製造方法に関する。
電解コンデンサとしては、パーソナルコンピュータのCPU周りに使用される低ESRの固体電解コンデンサや、大型機器用インバータ電源、ハイブリッドカー等の自動車用インバータ電源に使用される高耐圧のアルミ電解コンデンサなどが挙げられる。これらの電解コンデンサには、小型大容量化が強く望まれている。
電解コンデンサの大容量化を図るには、アルミニウム箔からなる基材にエッチングで多数の凹部を形成し、あるいは基材上に蒸着によって複数の柱状体を形成して、表面積の拡大を図ることが有効である。また基材の表面に、誘電率の高い酸化チタンからなる誘電膜を形成することも有効である。
上記の大容量化技術に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
特許文献1に記載の技術では、表面に多数の凹部を形成したアルミニウムからなる基材に対し、ジルコニウム又はハフニウムをスパッタし、金属層(ジルコニウム層又はハフニウム層)を形成する。その後、化成することにより誘電膜を形成するが、当該誘電膜中におけるジルコニウム又はハフニウムの含有量は凹部の開口部から凹部の深さ方向に向かって段階的に減少している。このような構成では、構成元素比に分布ができるため、漏れ電流低減の効果については大きい領域と小さい領域が発生する。
また、特許文献1では、金属層はスパッタ等のドライプロセスにて形成されるため、凹部の開口部側の内壁には金属層を付着させやすいが、凹部の底部側の内壁には金属層を付着させるのが難しい。電解めっき等のウェットプロセスにて形成する場合であっても、特別な工夫がなければ液抵抗の小さい凹部の開口部側の内壁に金属層が形成されやすく、液抵抗が高い凹部の底部側の内壁には金属層の形成が難しくなる。そのため電解コンデンサの誘電体におけるジルコニウムの含有量が小さくなるため、静電容量の向上に限界があるという問題がある。
そこで本発明は、電解コンデンサの漏れ電流低減と大容量化を実現することが可能な電極箔、その製造方法、及びその電極箔を用いた電解コンデンサを提供することを目的とする。
本願の第1の発明は、第1弁金属又はその合金からなる基材と、基材の上に形成されると共に、第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなる金属層と、金属層の上に形成されると共に、炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと第2弁金属とを含有する第1誘電体層と、を備えた電極箔である。
金属層は、第2弁金属とは異なる弁金属である第3弁金属をさらに含有すると共に、第2弁金属と第3弁金属との合金からなっていても良い。
本願の第2の発明は、第1弁金属又はその合金からなる基材と、基材の上に形成されると共に、第1弁金属の酸化物を主成分とする第2誘電体層と、第2誘電体層の上に形成されると共に、炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属とを含有する第1誘電体層と、を備えた電極箔である。
第1又は第2の発明において、第1弁金属をアルミニウムに、第2弁金属をジルコニウム又はハフニウムに、第3弁金属をアルミニウムにすることができる。
本願の第3の発明は、陽極部と、陰極部と、該陽極部と陰極部の間に形成された誘電膜を有するコンデンサ素子と、陽極部に電気的に接続された陽極端子と、陰極部に電気的に接続された陰極端子と、陽極端子及び陰極端子の一部が外部に露出するようにコンデンサ素子を収容する外装体と、を備えた電解コンデンサである。陽極部と陰極部の少なくとも一方と誘電膜は、第1又は第2の発明の電極箔からなることができる。
本願の第4の発明は、第1弁金属又はその合金からなる基材の表面に、炭素、硫黄、窒素、及び酸素のうちの少なくとも1つと第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属とからなる金属層をメッキにより形成するメッキ工程と、メッキ工程の後、金属層が形成された基材を化成して、金属層の基材とは反対側の表面に、第2弁金属を含有する第1誘電体層を形成する化成工程と、を備えた、電極箔の製造方法である。
本願の第5の発明は、第1弁金属又はその合金からなる基材の表面に、第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなる金属層をメッキにより形成するメッキ工程と、メッキ工程の後、金属層が形成された基材を化成して、基材の上に第1弁金属の酸化物を主成分とする第2誘電体層と、第2誘電体層の上に炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと第2弁金属を含有する第1誘電体層とを形成する化成工程と、
を備えた、電極箔の製造方法である。
を備えた、電極箔の製造方法である。
本願の電極箔において、金属層の上に形成される第1誘電体層は、炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと、第2弁金属と、を含有している。
第1誘電体層が、炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つを添加物として含有しているので、誘電体の結晶化を抑制することができる。また、上記添加物の存在により、熱や電解による誘電体の結晶化も抑制することができる。誘電体層中において局所的ではなく全体的に添加物である炭素、硫黄、窒素のうちの少なくとも一つを含有させると、上述の効果をより大きく得ることができる。
特に第1誘電体層が硫黄を含有する場合、硫黄を含む化合物が粒界に入り、製造工程等により外部から受ける応力を緩和させる効果があるため、第1誘電体層にクラック等の傷が入りにくくなる。よって、硫黄を含有させるのがより好ましい。
例えば、第2弁金属として、ジルコニウムやハフニウム等のアルミニウム以外の弁金属を用いた場合、酸化ジルコニウムや酸化ハフニウム等の誘電体は通常の化成プロセスで形成すると、結晶性の構造をとる傾向がある。誘電体が結晶性を有している場合、漏れ電流
が大きくなるが、本発明では、非晶質の誘電体を形成することができるため、漏れ電流の増大を防止することができる。
が大きくなるが、本発明では、非晶質の誘電体を形成することができるため、漏れ電流の増大を防止することができる。
なお、第1誘電体層に含有させる添加物の濃度は炭素、硫黄、窒素の合計で、0.01〜0.3原子%の範囲とすることが好ましい。濃度が低すぎると効果が得られず、高すぎると誘電体が非晶質であっても低抵抗化してしまい、漏れ電流が大きくなってしまうからである。
なお、金属層を基材上に電解メッキにて形成したので、基材と金属層間は金属結合となり、金属層の剥離は大幅に抑制されるという効果を得ることができる。また、第1誘電体層は金属層の表面部分を酸化することで形成したので、第1誘電体層の剥離についてもほとんど発生しないという効果を得ることができる。
また、電解コンデンサの実使用時(充放電時)に基材先端へ電流が集中するためショートが発生したり、漏れ電流が増大してしまうという問題が発生することがあるが、本発明のように基材の表面を基材より抵抗の高い金属で覆うことにより、基材先端への電流集中を抑制し、ショート発生率や漏れ電流等を抑えることができる。
金属層は、第2弁金属とは異なる弁金属である第3弁金属をさらに含有すると共に、第2弁金属と第3弁金属との合金から構成することができる。この構成とすることにより、金属層を化成することによって形成される第1誘電体層が複数の弁金属元素を含むことになり、誘電体の結晶化をより抑制できることから、信頼性が高くなるという効果を得ることができる。
特に金属層を、基材に使用する弁金属と基材に使用しない弁金属にて合金化することにより、基材と金属層の熱膨張率を近づけることができ、高温時における金属層の剥離を抑制することができる。
基材と第1誘電体層の間に金属層ではなく第2誘電体層を設けることにより誘電体層が2重になるため、例えば第1誘電体層にクラックが生じても、第2誘電体層が存在することから電流のリーク等の不具合が生じずに高い信頼性が得られるという効果を得ることができる。
第1弁金属としてアルミニウムを、第2弁金属としてジルコニウム又はハフニウムを、第3弁金属としてアルミニウムを用いることができる。この場合、第1誘電体層は酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムを含有することになる。酸化ジルコニウムや酸化ハフニウムは、酸化アルミニウムよりも高い誘電率を有するので、大容量化を図ることができる。
本発明による電極箔を、電解コンデンサの陽極部と陰極部の少なくとも一方と誘電膜に用いれば、電解コンデンサの大容量化及び低漏れ電流を実現することができる。
さらに、本発明の製造方法におけるメッキ工程にて、第1弁金属又はその合金からなる基材の表面に、炭素、硫黄、窒素、及び酸素のうちの少なくとも1つと前記第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属とからなる金属層をメッキにより形成することができる。
このメッキ工程では、電解メッキ膜が抵抗の小さいところに集中して形成されるという現象を、特殊なメッキ技術にて応用利用している。具体的には、メッキをする際、メッキ膜に添加物である炭素、硫黄、窒素、酸素のうち少なくとも一つを含有させることにより、メッキ膜の抵抗を増加させ、基材の未メッキ部に対して選択的にメッキ膜が形成できる
ようにしている。このため、凹凸を有する基材に対しても、凹部の底部を含む凹部の内壁全面にアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなる金属層を形成することができる。
ようにしている。このため、凹凸を有する基材に対しても、凹部の底部を含む凹部の内壁全面にアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなる金属層を形成することができる。
ここでメッキ膜に含有させる添加物の濃度は炭素、硫黄、窒素、酸素の合計で0.1〜10原子%の範囲であればよく、0.1〜5原子%の範囲が尚好ましい。このうち酸素を除いた炭素、硫黄、窒素の合計は0.03〜1.0原子%の範囲とすることが好ましい。添加物濃度が低すぎるとメッキ膜の高抵抗化が小さくなるので凹部の内壁全面への金属層の形成が困難となり、一方、添加物濃度が高すぎるとメッキ膜が著しく高抵抗化するため、コンデンサの内部抵抗を上昇させるといった不具合が生じるためである。炭素、硫黄、窒素に関しては、合計の濃度が高すぎると誘電体層形成において悪影響を及ぼすため上記したような低濃度範囲が好ましい。
なお、めっき膜(金属層)に炭素、硫黄、窒素のいずれかが含まれることによって、めっき膜(金属層)は化成プロセスにおいて基材よりも選択的に酸化されやすくなる。よって、後述する第1実施形態の実施例A、Bにおいてめっき膜(金属層)と基材の界面が絶縁化されることはない。
なお、凹凸を有する基材とは、圧延痕を有する箔、エッチング等によりスポンジ状、あるいはトンネル状等の構造を形成させた箔、真空プロセス等により多数の柱状体を形成させた箔等、各種プロセスにて表面を粗面化させた箔のことである。
なお、凹凸を有する基材とは、圧延痕を有する箔、エッチング等によりスポンジ状、あるいはトンネル状等の構造を形成させた箔、真空プロセス等により多数の柱状体を形成させた箔等、各種プロセスにて表面を粗面化させた箔のことである。
また、本発明の製造方法における化成工程において、金属層が形成された基材を化成して、基材の上に第1弁金属の酸化物を主成分とする第2誘電体層と、第2誘電体層の上に炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと第2弁金属を含有する第1誘電体層とを形成してもよい。メッキ工程にて金属層に取り込まれた添加物である炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つを化成工程にて第1誘電体層に含有させることにより誘電体の結晶化を抑制できるという効果を得ることができる。
なお、表面積の拡大を図るために、弁金属箔からなる基材にエッチングで多数の凹部を形成したものや、基材上に蒸着によって弁金属からなる複数の柱状体を形成したものに本発明を適用できるが、蒸着によって形成した弁金属からなる柱状体は、弁金属からなる微粉体の集合体であるため、表面が活性化しており、本発明で使用するめっき液と接触した場合、副反応を起こす可能性があるという理由より、弁金属箔からなる基材にエッチングで多数の凹部を形成したものに本発明を適用するのが好ましい。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における電極箔と、その製造方法および電極箔を用いた電解コンデンサについて説明する。
図1に示す第1実施形態の電解コンデンサ1は、陽極部2と、この陽極部2の表面に形成された第1誘電体層(図3の図番3)と、この第1誘電体層3と基材8の間に形成された金属層12と、第1誘電体層3の上に形成された固体電解質層(ポリピロール)とこの固体電解質層上に形成された陰極引出層(カーボン層、銀層)とからなる陰極部4と、を備えたコンデンサ素子5を複数枚積層している。コンデンサ素子5同士の間や、コンデンサ素子5と陰極端子6Bとの間は導電性接着材(銀ペースト)で固定されている。
以下、第1実施形態における電極箔と、その製造方法および電極箔を用いた電解コンデンサについて説明する。
図1に示す第1実施形態の電解コンデンサ1は、陽極部2と、この陽極部2の表面に形成された第1誘電体層(図3の図番3)と、この第1誘電体層3と基材8の間に形成された金属層12と、第1誘電体層3の上に形成された固体電解質層(ポリピロール)とこの固体電解質層上に形成された陰極引出層(カーボン層、銀層)とからなる陰極部4と、を備えたコンデンサ素子5を複数枚積層している。コンデンサ素子5同士の間や、コンデンサ素子5と陰極端子6Bとの間は導電性接着材(銀ペースト)で固定されている。
電解コンデンサ1は陽極部2および陰極部4の電極をそれぞれ引き出す陽極端子6Aおよび陰極端子6Bと、これらの陽極端子6Aおよび陰極端子6Bの一部が外部に露出するようにコンデンサ素子5をモールドして収容する外装体7と、を備えている。
図2は電極箔2Eの断面図である。図2においては後述する第1誘電体層3、第2誘電体層3Bや金属層12を省略している。また、図3は電極箔2Eを具えたコンデンサ素子5の要部の模式断面図である。陽極部2には、図2や図3に示すように、第1弁金属からなる基材8を用いており、基材8はその表層部8Sに、多数の凹部9と、これらの凹部9が形成されていない表面11を有している。基材8の表面には第2弁金属からなる金属層12が形成されており、さらに金属層12の表面に第1誘電体層3が形成されている。第1誘電体層3は、固体電解質層を形成する領域に形成されていればよく、陽極部2と陽極端子6Aとの接合部分には誘電体層3を形成しないか、又は接合時に除去する。第1弁金属として、例えばアルミニウム等を用いることができる。
金属層12は、添加物である炭素、硫黄、窒素、酸素のうち少なくとも一つを含有したアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなり、例えばジルコニウムやハフニウム等で構成することができる。添加物の濃度は炭素、硫黄、窒素、酸素の合計で0.1〜10.0原子%の範囲であれば良く、0.1〜5.0原子%の範囲が尚好ましい。このうち酸素を除いた炭素、硫黄、窒素の合計は0.03〜1.0原子%の範囲とすることが好ましい。
第1誘電体層3は、金属層12の表面を陽極酸化したもので、炭素、硫黄、窒素のうち少なくとも一つを添加物として含有している、弁金属の酸化物である。添加物の濃度は炭素、硫黄、窒素、酸素の合計で0.01〜0.3原子%の範囲とすることが好ましい。
以下、電極箔2Eの製造方法について図4を参照して説明する。
まず、基材8として厚み30〜120μm、純度99.9%以上の高純度アルミニウム箔を準備した。図4(a)は基材8の主面のうち一方の主面の表層部8Sの近傍の断面図である。
次に、同図(b)に示すように、基材8の表層部8Sを粗面化し、多数の凹部9Aを形成する(凹部形成工程)。この工程により表層部8Sは、多数の凹部9Aと、凹部9Aが形成されていない表面11Aとを有することとなる。また、凹部9Aは、基材8の両方の主面に形成してもよく、一方の主面にのみ形成してもよい。
凹部9Aは例えばブラストで機械的に形成したり、塩酸液に浸漬して化学的に形成(化学的エッチング)したりすることができる。
凹部形成工程の後、図4(c)に示すように、凹部9Aが形成された基材8に対し、電解メッキを行う。例えば、第2弁金属がジルコニウムである場合、ジルコニウムからなる金属層12を形成する(メッキ工程)。弁金属層の最大厚みは5〜300nmであり、想定している化成後の第1誘電体層3の平均厚み以上の厚みに形成する。
次に、図4(d)に示すように金属層12が形成された基材8を化成する(化成工程)。化成工程では、基材8を陽極として電解液に入れ、陽極酸化することにより、金属層12の基材8との反対側が第1誘電体層3となる。
化成用の電解液には、硼酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液を用いることができる。
なお、図1及び図3を見れば分かるように、図1の電解コンデンサ1の陽極部2と誘電膜が図3の電極箔2Eから構成されている。
(実施例A)
第1実施形態に係る実施例AとしてサンプルAを以下の製造方法により作製した。
第1実施形態に係る実施例AとしてサンプルAを以下の製造方法により作製した。
まず、図4(a)に示すように、基材8として厚み110μm、純度99.95%の高純度アルミニウム箔を準備した。
(凹部形成工程)
次に、図4(b)に示すように、基材8の表層部8Sを粗面化し、多数の凹部9Aを形成する(凹部形成工程)。
(凹部形成工程)
次に、図4(b)に示すように、基材8の表層部8Sを粗面化し、多数の凹部9Aを形成する(凹部形成工程)。
本実施例では、塩酸主体の電解液中で基材8をカーボン電極板間に設置して電解(電気化学的エッチング)する方法を用いた。電気化学的エッチングでは電解の電流波形、液の組成、温度等によりエッチング形状が異なるため、電解コンデンサの性能に合わせたエッチングの方法を選択する。
まず、基材8の表層部8Sをエッチングすることにより、微細なピット(凹部9A)を形成する。本実施例では、三角波による交流エッチングとした。
まず、基材8の表層部8Sをエッチングすることにより、微細なピット(凹部9A)を形成する。本実施例では、三角波による交流エッチングとした。
エッチング液として、塩素イオン含有の酸性水溶液に、添加剤として硫酸イオンを配合したものを用いる。エッチング工程では、このエッチング液にプレーン(未エッチング加工)状態の基材8を浸漬する。
エッチング処理は、基材8の両側に、1枚ずつカーボン電極をセットし、この2枚のカーボン電極に交流電流を印加して行う。このとき、基材8の単位面積当たりのエッチング減量を10mg/cm2になるように交流電源条件を調整する。
静電容量を大きくするために、通常は30〜35μm程度の深さまでエッチングする。少なくとも10μm以上の深さまでエッチングすることにより、十分な静電容量を確保できる。本実施例では、凹部9Aの開口部10Aからの深さdは平均で30〜45umとした。このように作製したサンプルAの平均細孔径(凹部9Aの直径)は80〜500nm程度であった。加えて、箔の深さ方向において、下部よりも上部の方の空隙率を高めることによって、次に行うメッキ工程において、金属層12を形成しやすくすることができる。
エッチング処理の後、脱塩素処理を施し、乾燥することにより、エッチング処理された基材8、即ち、凹部9Aが形成された基材8を作製した。
なお、直流エッチングした場合は、図5のように比較的真直ぐな凹部13Aが形成された基材8となる。また、基材8に高純度アルミニウム箔を用いたが、箔強度向上、静電容量向上のため、例えばアルミニウム−ジルコニウム合金箔、アルミニウム−シリコン合金箔を用いることも可能である。
(メッキ工程)
凹部形成工程の後、図4(c)に示すように、凹部9Aが形成された基材8に対し、電解メッキを施してジルコニウム(第2弁金属)からなる金属層12を形成した(メッキ工程)。
凹部形成工程の後、図4(c)に示すように、凹部9Aが形成された基材8に対し、電解メッキを施してジルコニウム(第2弁金属)からなる金属層12を形成した(メッキ工程)。
はじめに、第2弁金属ハロゲン化物、有機溶媒、添加剤を混合することで、メッキ浴を作製した。第2弁金属ハロゲン化物は、金属層12を形成するための弁金属原料として用いられる。好適な第2弁金属ハロゲン化物としては、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられる。これらの中で、金属層12を容易に形成する観点や、経済性を考慮すれば、塩化物がより好ましい。そこで、本実施例では、第2弁金属ハロゲン化物として、塩化ジルコニウムを用いた。
また、有機溶媒としては、ジアルキルスルホキシドが好ましい。ジアルキルスルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシドなどが挙げられる。また、ジアルキルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホンも使用でき、これら有機溶媒を混合して使用することも可能である。ここでは、メッキ効率の観点から、ジメチルスルホキシドを用いた。有機溶媒としては、これら例示のみに限定されるものではなく、弁金属ハロゲン化物を溶解でき、かつ、効率よくメッキできるものであればよい。
添加剤として、メッキ浴の安定性、メッキ効率の向上等を鑑み、例えば、ジメチルアミン塩酸塩、ハロゲン化アンモンウム等を用いることができる。
メッキ浴の構成比(モル比)としては、有機溶媒>第2弁金属ハロゲン化物>添加剤という濃度を用いた。
次に、メッキ工程を順次説明する。メッキ槽内にメッキ浴を入れ、このメッキ浴中に陽極および陰極(凹部9Aが形成された基材8)を挿入し、両極に通電することにより、第2弁金属を電析させる。
陽極材料としては、第2弁金属を用いることが望ましい。このような材料にすることで、メッキにより減少したメッキ浴中の第2弁金属化合物を補充することができる。あるいは、不活性な材料を用いることもできるが、この場合は、メッキ浴に第2弁金属ハロゲン化物等を補充する必要がある。
メッキ温度は、電析効率の観点から、第2弁金属ハロゲン化物が有機溶媒に溶解する温度以上、150℃以下かつ、各使用する溶媒の引火点温度以下であることが好ましい。本実施例のように、有機溶媒としてジメチルスルホキシドを用いた場合、30〜85℃の間にすると、膜質のよいメッキ膜(金属層12)を形成することができる。
第2弁金属をジルコニウムとする場合、効率よく電析させる観点から、電流密度を、3〜120mA/cm2の間にすることが好ましい。より好ましくは、5〜60mA/cm2にする方がよく、このようにすることで、剥離、クラック等のない均一なメッキ膜(金属層12)を形成することができる。
例えば、30mA/cm2の電流密度で電解すると、約170nmの金属層12を形成することができた。このとき、電解量を小さくすると薄い金属層12が、電解量を大きくすると厚い金属層12を任意に形成することが可能である。
メッキ浴中に、混合する第2弁金属ハロゲン化物としては、Ta、Ti、Nb、Si、Zr、Hf等があり、それぞれ単独で混合しても、二つ以上を同時に混合してもよい。
また、第1弁金属(基材)として、Al、Ta、Ti、Nb、Si、Zr、Hf等から選ばれる弁作用金属を、第2弁金属(メッキ膜)として、Ta、Ti、Nb、Si、Zr、Hf等から選ばれる弁作用金属を用いれば、静電容量の大きな電極箔とすることができる。ただし、(1)基材8としてアルミニウム箔を用いれば容易に凹部9Aを形成できること、さらに基材がアルミニウムであれば、第2弁金属メッキ膜で覆われずに剥き出しになっている部位が存在しても、この部位に形成する誘電体は酸化アルミニウムとなり、これは他の弁金属を基材とする場合に比較し、漏れ電流の増加幅が比較的小さくできること、(2)後述するように、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウムは酸化物の生成Gibbs自由エネルギーΔG°が近いので、基材8にアルミニウムを、メッキ膜(金属層12)にジルコニウムかハフニウムを用いる構成とすれば、化成プロセスにおいて選択的にアルミニウムが陽極酸化されるということはなく、表面に位置するメッキ膜の最表面から陽極酸化されていくこと、を考慮すると、アルミニウムを第1弁金属として、ジルコニウム又はハフニウムを第2弁金属として用いるのが好ましい。
また、メッキ膜には第2弁金属が含有されているが、これ以外に、第2弁金属とは異なる弁金属である第3弁金属を含有させても構わない。
また、メッキ膜には第2弁金属が含有されているが、これ以外に、第2弁金属とは異なる弁金属である第3弁金属を含有させても構わない。
第2弁金属と第3弁金属からなるメッキ膜の形成方法としては、メッキ浴中に、第2弁金属ハロゲン化物及び第3弁金属ハロゲン化物の両方を混合しておく方法、めっき浴の陽極材料に第2弁金属と第3弁金属とを含む材料を使用する方法等が考えられる。
第3弁金属を含む電極箔の具体的な製造方法については、後述する実施例Bで説明する。
(化成工程)
メッキ工程の後、図4(d)に示すように、金属層12が形成された基材8を化成した(化成工程)。
メッキ工程の後、図4(d)に示すように、金属層12が形成された基材8を化成した(化成工程)。
化成工程では、基材8を陽極として電解液に入れて陽極酸化し、基材8の表面11A及び凹部9Aの内壁12Aに形成した金属層12の表面に酸化皮膜を形成する。この酸化皮膜が第1誘電体層3となる。本実施例においては、化成用の電解液に、7%アジピン酸アンモニウム水溶液を用いた。陽極酸化時の印加電圧(化成電圧)は、本実施例では化成電圧18V、保持時間30分、70℃、最大電流0.05A/cm2で化成を行った。このような化成工程を経ることで、第1誘電体層3(ZrO2)が形成された。
以上のように電極箔2EとしてサンプルAが完成した。
また、比較例として、実施例Aの製造方法からメッキ工程を削除して金属層12を形成しなかったサンプルXも用意した。
(実施例B)
実施例Aとの違いは、メッキ膜にて形成される弁金属層の形成方法である。
実施例Aとの違いは、メッキ膜にて形成される弁金属層の形成方法である。
実施例Aにおけるメッキ工程において、陽極材料に第2弁金属を使用する代わりに第2
弁金属と第3弁金属とを同時に使用すること以外は全て実施例Aと同様の方法でサンプルを作製した。
弁金属と第3弁金属とを同時に使用すること以外は全て実施例Aと同様の方法でサンプルを作製した。
メッキの陽極材料として使用する第2弁金属にはジルコニウム、又はハフニウムが望ましく、陽極材料として使用する第3弁金属にはアルミニウムが望ましい。ここでは第2弁金属にジルコニウム、第3弁金属にアルミニウムを使用した例を示す。
陽極材料として使用するジルコニウムとアルミニウムの面積比を、それぞれ9:1、5:5、0:10の比率でメッキを行い、上記化成工程と同様の化成を行いサンプルB1、B2、B3を完成させた。
(組成分析)
サンプルA、B1〜B3、及び、サンプルXについて、基材の凹部以外の部分、すなわち基材の表面を分析箇所に選定し、基材及びその上に形成された層の厚さ方向の組成分析を行った。例としてサンプルA、及びサンプルXの結果をそれぞれ図8、9に示す。また図10は、図8における原子濃度の小さい領域の組成を明確にするため、縦軸の原子濃度のレンジを0〜5原子%とした図である。図11は図10に示す添加物のうち、炭素、硫黄、窒素、酸素の合計値と炭素、硫黄、窒素の合計値についてそれぞれ示した図である。これらの図においては、X線光電子分光(XPS)分析結果から求めた、電極箔の表面からの深さ(距離)換算値(nm)と原子濃度(原子%)との関係を示している。電極箔の表面からの深さ換算値は、下記方法で算出した。すなわち所定膜厚の二酸化ケイ素膜を形成した基材をレファレンスとして用い、アルゴンスパッタを行いながらXPS分析により原子濃度を測定する。そしてケイ素の原子濃度が急激に減少し、ほぼゼロになる時の時間と、実際の二酸化ケイ素膜の厚みから、分析時間と厚みの関係を導き出す。そしてこの関係を用いて、各サンプルの電極箔の原子濃度分析時間から、電極箔の表面からの深さ換算値を算出した。以下、電極箔の表面からの深さは、この深さ換算値を示し、膜厚はこの換算値から算出した値とする。
サンプルA、B1〜B3、及び、サンプルXについて、基材の凹部以外の部分、すなわち基材の表面を分析箇所に選定し、基材及びその上に形成された層の厚さ方向の組成分析を行った。例としてサンプルA、及びサンプルXの結果をそれぞれ図8、9に示す。また図10は、図8における原子濃度の小さい領域の組成を明確にするため、縦軸の原子濃度のレンジを0〜5原子%とした図である。図11は図10に示す添加物のうち、炭素、硫黄、窒素、酸素の合計値と炭素、硫黄、窒素の合計値についてそれぞれ示した図である。これらの図においては、X線光電子分光(XPS)分析結果から求めた、電極箔の表面からの深さ(距離)換算値(nm)と原子濃度(原子%)との関係を示している。電極箔の表面からの深さ換算値は、下記方法で算出した。すなわち所定膜厚の二酸化ケイ素膜を形成した基材をレファレンスとして用い、アルゴンスパッタを行いながらXPS分析により原子濃度を測定する。そしてケイ素の原子濃度が急激に減少し、ほぼゼロになる時の時間と、実際の二酸化ケイ素膜の厚みから、分析時間と厚みの関係を導き出す。そしてこの関係を用いて、各サンプルの電極箔の原子濃度分析時間から、電極箔の表面からの深さ換算値を算出した。以下、電極箔の表面からの深さは、この深さ換算値を示し、膜厚はこの換算値から算出した値とする。
図8、9において、縦軸は原子濃度(原子%)を示し、横軸は表面からの深さ換算値(nm)を示す。
まず、サンプルAについて説明する。図8より、表面から約40nmの深さの領域(i)は第1誘電体層3であり、ここでは、酸素と第2弁金属であるジルコニウムが多く含有されている。表面からの深さが約40nm〜約200nmの領域(ii)は金属層12であり、ここでは、第2弁金属であるジルコニウムが多く含有されており、第1弁金属であるアルミニウムがわずかに含有されている。また、表面からの深さが約200nm以上の領域(iii)は基材8であり、第1弁金属であるアルミニウムを多く含有していることがわかる。また、図10を見ると分かるように、特に第1誘電体層3である領域(i)では、炭素、硫黄、窒素をそれぞれ0.0〜0.3原子%の範囲で含有している。また、炭素、硫黄、窒素の合計が0.01〜0.3原子%の範囲に入ることが図11より分かる。このように、第1誘電体層3にメッキ液由来の炭素、硫黄、窒素のいずれかが含まれることにより、誘電体層の結晶化を抑制し、非晶質とすることができ、すなわち漏れ電流を低減することができる。
また、図11を見ると分かるように、金属層12である領域(ii)では、炭素、硫黄、窒素の合計は0.03〜1.0原子%の範囲で含有されており、炭素、硫黄、窒素、酸素の合計は0.1〜5原子%の範囲で含有されている。これらの添加物の合計濃度は、電流密度や添加剤濃度によって制御可能である。特に酸素濃度に関してはメッキ浴に水を添加することによっても制御できる。メッキ工程にて金属層12を形成する場合、このように添加物を含有させながらメッキ膜を形成することで、メッキ膜の抵抗を増加させ、抵抗
の低い未メッキ部に対し選択的にメッキ膜を形成することができる。つまり基材8が、凹部を含んだ箔、すなわち粗面部を備えた箔であっても、表層部8の全面にメッキ膜を形成することが可能となる。なお、基材8にアルミニウムを使用している場合は、多少の未メッキ部が残っても、剥き出しの基材(未メッキ部)へ形成される誘電体(アルミニウム酸化物)は、他の弁金属を基材としたときに形成される誘電体より漏れ電流特性への悪影響は小さいと考えられる。
の低い未メッキ部に対し選択的にメッキ膜を形成することができる。つまり基材8が、凹部を含んだ箔、すなわち粗面部を備えた箔であっても、表層部8の全面にメッキ膜を形成することが可能となる。なお、基材8にアルミニウムを使用している場合は、多少の未メッキ部が残っても、剥き出しの基材(未メッキ部)へ形成される誘電体(アルミニウム酸化物)は、他の弁金属を基材としたときに形成される誘電体より漏れ電流特性への悪影響は小さいと考えられる。
また、第1誘電体層3、金属層12にわずかに含まれるアルミニウムは、メッキ工程で基材8のアルミニウムがいったん溶出し、ジルコニウムと共にメッキされたものと考えられるが、第1誘電体層3、金属層12にアルミニウムを含んでいても特に問題はない。
次に、比較例のサンプルXについて説明する。図9より、表面から約40nmの深さの領域(i)は誘電体層であり、ここでは、弁金属としては第1弁金属であるアルミニウムのみが観察された。また、表面からの深さ約40nm以上の領域(iii)は基材部分であり、第1弁金属であるアルミニウムを含有していることがわかる。このようにサンプルX1においては、金属層も第2弁金属を含む第1誘電体層も存在しない。また全て領域において、炭素、硫黄、窒素は観察されていない。
なお、サンプルB1〜B3においては、第1誘電体層及び、メッキ膜にて形成した第2・第3弁金属を含む金属層において、サンプルA1と同様の添加物を含有する傾向が確認できた。各サンプルの第1誘電体層におけるジルコニウムとアルミニウムの比率は表1の通りであった。
なお、領域(i)の領域(ii)側の界面近傍において、X線光電子分光分析を行うと領域(i)のみならず領域(ii)からのデータを取り込んでしまうため、領域(i)と領域(ii)との境界から10nmの範囲にある部分を測定範囲とするべきではない。このことは、領域(ii)の領域(i)側の界面近傍においても同様である。また、領域(ii)と領域(iii)との間の界面においても同様である。
(静電容量)
実施例AのサンプルA、実施例BのサンプルB1〜B3、比較例のサンプルXについて、静電容量を測定した。
実施例AのサンプルA、実施例BのサンプルB1〜B3、比較例のサンプルXについて、静電容量を測定した。
静電容量の測定に際して、それぞれのサンプルを1×2cmにカットしたものを用いた。容量測定条件としては、LCRメーターを用い、15%アジピン酸アンモニウム水溶液、30℃、測定周波数120Hzで行った。
サンプルA、B1〜B3のサンプルXに対する静電容量の増加率を表1に示す。表1を見ると分かるように、本実施例のようにサンプルA、B1〜B3は、第2弁金属を含む誘電体層のないサンプルXと比較して、静電容量は増加した。
上述のように、実施例A、BのサンプルA、B1〜B3は比較例のサンプルXよりも静電容量が大きくなっている。これは第1誘電体層の構成元素が第2弁金属であるジルコニウムで主に構成されているからでる。
第1誘電体層は炭素、硫黄、窒素を合計0.01〜0.3原子%含有している。これら添加物を第1誘電体層が含有しているので、誘電体層は結晶化することなく低漏れ電流特性を示す非晶質の構造をとる。なお、添加物の合計含有量は0.01〜0.3原子%とすることが好ましい。この範囲よりも少なくなると誘電体層が結晶化し、この範囲より大きくなると誘電体層自体が低抵抗化するため、どちらの場合も漏れ電流が増加する可能性があるからである。
また本実施例では、第2弁金属としてジルコニウムを含有させたが、ジルコニウムに代えてハフニウムを用いてもよい。ハフニウムはジルコニウムと同じ第四属遷移金属であり、化学的特性が似ている上に、酸化物の生成Gibbs自由エネルギーΔG°が約−270kJeq-1であり、Ti酸化物の約−220kJeq-1より、アルミニウム酸化物及びジルコニウム酸化物の約−260kJeq-1に近い。したがって、ハフニウムを用いた場合も、同様の原理により電解コンデンサ1の大容量化と漏れ電流の低減を実現できると考えられる。
上述した電極箔に化学重合、電解重合、分散液の塗布・乾燥などによりポリピロールからなる導電性高分子層を形成し、さらにカーボン層、銀層を形成してコンデンサ素子を完成させた。
その後、コンデンサ素子を所定数だけ積層して、陽極部を陽極端子にレーザ溶接により固定すると共に、コンデンサ素子の各陰極部と陰極端子とを導電性接着材(銀ペースト)により固定した。次いで、陽極端子および陰極端子の一部が外部に露出するようにコンデンサ素子を外装体によりモールドして電解コンデンサを完成させた。
ここで、サンプルA、B1〜B3は、第2弁金属を含む誘電体層が形成されていないサンプルXと比較して、定電圧(化成電圧×0.7V)を印加したときに流れる漏れ電流を低減させるという効果が見られた。
(実施例C)
実施例A、Bでは、第1弁金属からなる基材表面に、第2弁金属層からなるメッキ膜を形成し、化成工程において、第2弁金属層を陽極酸化する際、第2弁金属層が残存する電圧で化成を施しているが、実施例Cでは、実施例Aの電解メッキのメッキ量を少なくし、第2弁金属からなるメッキ膜の厚さを20nmとした以外は、全て実施例Aと同様の方法でサンプルCを作製した。
サンプルCの組成分析を行った結果、サンプルCの表面より30nm付近の領域が第2弁金属であるジルコニウムの酸化物からなる第1誘電体層3であり、炭素、硫黄、窒素を合計0.01〜0.3原子%含有することがわかった。サンプルCの表面からの深さが30〜40nmの領域は第1弁金属であるアルミニウムの酸化物からなる第2誘電体層3Bであり、サンプルCの表面からの深さが40nm以上の領域は基材8であり、第1弁金属であるアルミニウムを含有していることがわかった。
実施例A、Bでは、第1弁金属からなる基材表面に、第2弁金属層からなるメッキ膜を形成し、化成工程において、第2弁金属層を陽極酸化する際、第2弁金属層が残存する電圧で化成を施しているが、実施例Cでは、実施例Aの電解メッキのメッキ量を少なくし、第2弁金属からなるメッキ膜の厚さを20nmとした以外は、全て実施例Aと同様の方法でサンプルCを作製した。
サンプルCの組成分析を行った結果、サンプルCの表面より30nm付近の領域が第2弁金属であるジルコニウムの酸化物からなる第1誘電体層3であり、炭素、硫黄、窒素を合計0.01〜0.3原子%含有することがわかった。サンプルCの表面からの深さが30〜40nmの領域は第1弁金属であるアルミニウムの酸化物からなる第2誘電体層3Bであり、サンプルCの表面からの深さが40nm以上の領域は基材8であり、第1弁金属であるアルミニウムを含有していることがわかった。
図6は、サンプルCの電極箔に陰極部4を形成したコンデンサ素子の断面図である。サンプルCは、基材8の上に第2誘電体層3Bが形成され、第2誘電体層3Bの上に第1誘電体層3が形成されている。
サンプルCの容量測定を行った。サンプルXに対する静電容量の増加率を表1に示す。
サンプルCの静電容量は大きく、サンプルX1に対する静電容量の増加率は30%であった。
サンプルCの静電容量は大きく、サンプルX1に対する静電容量の増加率は30%であった。
第2弁金属であるジルコニウムの酸化物からなる第1誘電体層の厚さが小さく、代わりに第1弁金属であるアルミニウムの酸化物からなる第2誘電体層を設けたので、サンプルAより静電容量の増加率は小さいが、サンプルXに比較して静電容量は増加していることがわかる。
また、サンプルCに関しても、第1誘電体層のないサンプルXと比較して、定電圧(化成電圧×0.7V)を印加したときに流れる漏れ電流を低減させるという効果が見られた。
(第2実施形態)
第1実施形態では、電極箔2Eをチップ型の電解コンデンサ1の陽極部2及び誘電膜として用いたが、図7に示す巻回型の電解コンデンサ15の陽極箔16や陰極箔17として用いることができる。陽極箔16、陰極箔17のいずれか一方として第1実施形態の電極箔2Eを用いてもよく、双方に用いても良い。
第1実施形態では、電極箔2Eをチップ型の電解コンデンサ1の陽極部2及び誘電膜として用いたが、図7に示す巻回型の電解コンデンサ15の陽極箔16や陰極箔17として用いることができる。陽極箔16、陰極箔17のいずれか一方として第1実施形態の電極箔2Eを用いてもよく、双方に用いても良い。
巻回型の電解コンデンサ15は、陽極箔16(陽極部)と陰極箔17(陰極部)とを、間にセパレータ18を介して巻回したコンデンサ素子19と、このコンデンサ素子19に含浸させた電解液や固体電解質層などの陰極材料(図示せず)と、陽極箔16の電極を引き出す陽極端子20と、陰極箔17の電極を引き出す陰極端子21と、陽極端子20と陰極端子21の一部を外部に露出させるようにコンデンサ素子19を収容する外装体22と、この外装体22を封止する封止部材23と、を備えている。陰極材料としては、導電性高分子からなる固体電解質や、電解液が挙げられ、これらの双方を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の電解コンデンサにおいても、第1実施形態の電解コンデンサと同様に大容量化を実現できると共に、漏れ電流の低減を達成することができる。
本第1、2実施形態においては、「弁金属からなる基材」として純度99.95%の高純度アルミニウム箔を用いたが、これに限定されず、例えばジルコニウムなどの元素を0.1%程度含有させたアルミニウム箔(弁金属の合金)を基材として用いることもできる。
陰極部としてはポリピロールの他、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリンなどを用いることもできる。
本発明による電極箔は、特に大容量かつ低漏れ電流、が要求される電解コンデンサの電極箔、特に陽極箔として有用である。また、本発明による電極箔の製造方法によれば、そのような本発明の電極箔を容易に製造することができる。また、本発明による電解コンデンサは、特に大容量かつ低漏れ電流、の向上を達成することができ、さまざまな電子機器や機械装置に適用することができる。
1 コンデンサ
2 陽極部
2E 電極箔
3 第1誘電体層
3B 第2誘電体層
4 陰極部
5 コンデンサ素子
6A 陽極端子
6B 陰極端子
7 外装体
8 基材
9 凹部
10 開口部
11 表面
12 金属層
13 凹部
14 底部
15 電解コンデンサ
16 陽極箔
17 陰極箔
18 セパレータ
19 コンデンサ素子
20 陽極端子
21 陰極端子
22 外装体
23 封止部材
2 陽極部
2E 電極箔
3 第1誘電体層
3B 第2誘電体層
4 陰極部
5 コンデンサ素子
6A 陽極端子
6B 陰極端子
7 外装体
8 基材
9 凹部
10 開口部
11 表面
12 金属層
13 凹部
14 底部
15 電解コンデンサ
16 陽極箔
17 陰極箔
18 セパレータ
19 コンデンサ素子
20 陽極端子
21 陰極端子
22 外装体
23 封止部材
Claims (7)
- 第1弁金属又はその合金からなる基材と、
前記基材の上に形成されると共に、前記第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなる金属層と、
前記金属層の上に形成されると共に、炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと、前記第2弁金属と、を含有する第1誘電体層と、
を備えた電極箔。 - 前記金属層は、前記第2弁金属とは異なる弁金属である第3弁金属をさらに含有すると共に、前記第2弁金属と前記第3弁金属との合金からなっている、請求項1に記載の電極箔。
- 第1弁金属又はその合金からなる基材と、
前記基材の上に形成されると共に、前記第1弁金属の酸化物を主成分とする第2誘電体層と、
前記第2誘電体の上に形成されると共に、炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと、前記第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属と、を含有する第1誘電体層と、
を備えた電極箔。 - 前記第1弁金属はアルミニウムであり、
前記第2弁金属はジルコニウム又はハフニウムであり、
前記第3弁金属はアルミニウムである、請求項1〜3のいずれかに記載の電極箔。 - 陽極部と、陰極部と、該陽極部と陰極部の間に形成された誘電膜を有するコンデンサ素子と、
前記陽極部に電気的に接続された陽極端子と、
前記陰極部に電気的に接続された陰極端子と、
前記陽極端子及び陰極端子の一部が外部に露出するように前記コンデンサ素子を収容する外装体と、
を備え、
前記陽極部と陰極部の少なくとも一方と前記誘電膜は、請求項1〜4のいずれかに記載の電極箔からなる、電解コンデンサ。 - 第1弁金属又はその合金からなる基材の表面に、炭素、硫黄、窒素、及び酸素のうちの少なくとも1つと前記第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属とからなる金属層をメッキにより形成するメッキ工程と、
前記メッキ工程の後、前記金属層が形成された前記基材を化成して、前記金属層の前記基材とは反対側の表面に、前記第2弁金属を含有する第1誘電体層を形成する化成工程と、
を備えた、電極箔の製造方法。 - 第1弁金属又はその合金からなる基材の表面に、前記第1弁金属とは異なるアルミニウム以外の弁金属である第2弁金属からなる金属層をメッキにより形成するメッキ工程と、
前記メッキ工程の後、前記金属層が形成された前記基材を化成して、前記基材の上に前記第1弁金属の酸化物を主成分とする第2誘電体層と、前記第2誘電体層の上に炭素、硫黄、及び窒素のうちの少なくとも1つと前記第2弁金属を含有する第1誘電体層とを形成する化成工程と、
を備えた、電極箔の製造方法。
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2013
- 2013-12-12 JP JP2013256768A patent/JP2015115475A/ja active Pending
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