JP2015089940A - 多価ヒドロキシ樹脂、その製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物、硬化物 - Google Patents

多価ヒドロキシ樹脂、その製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物、硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】低粘度の液状であり、エポキシ樹脂用硬化剤として用いたときに低吸水性および低弾性率の硬化物が得られる多価ヒドロキシ樹脂、その製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物の提供。
【解決手段】下記一般式(A)で表される構成単位(A)と、下記一般式(B)で表される構成単位(B)とを有する多価ヒドロキシ樹脂。式中、Rはアリル基であり、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、Xは水素原子または水酸基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。
[化1]
Figure 2015089940

【選択図】なし

Description

本発明は、多価ヒドロキシ樹脂、その製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物に関する。
エポキシ樹脂及び硬化剤等を含有するエポキシ樹脂組成物は、その熱硬化性を利用して、種々の用途に使用されている。たとえば電子材料の分野においては、半導体チップや接続部材を、種々の外部環境(温度、湿度、応力など)から保護するため、熱硬化性の封止材料で封止することが行われており、封止材料としてエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。エポキシ樹脂の硬化剤としては、フェノール系硬化剤が広く使用されている。フェノール系硬化剤は、固形または半固形を示すことが多い。
近年、半導体素子の処理能力の高速化に伴い、半導体の高集積化、高性能化等が進み、それに用いる樹脂材料に対する信頼性の要求は年々厳しいものとなってきている。
前記のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、フェノール系硬化剤由来の未反応の残存水酸基の影響により、吸水性(吸湿性)が高い。また、該硬化物は、3次元的な分子構造を有するため、弾性率が高い。硬化物の吸水性および弾性率が高いことは、たとえば半導体チップを封止するパッケージ(封止材料の硬化物)がはんだリフロー装置等で処理される時、パッケージにクラックを生じる不具合の原因となる。半導体の高集積化、高性能化に伴ってパッケージが小型化、薄型化するにつれ、前記の不具合は生じやすくなる。
フェノール系硬化剤に、フェノールとオルソアリルフェノールとホルムアルデヒドとを反応させて得られる多価ヒドロキシ樹脂を用いることが提案されている(たとえば特許文献1)。かかる多価ヒドロキシ樹脂は、アリル基が導入されていることにより、常温で液状を呈し、原料中のアリルフェノールの割合が高いほど粘度が低くなる。また、この多価ヒドロキシ樹脂を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、アリルフェノールを用いない場合に比べて、低吸水性である。
近年、液状封止材料、アンダーフィル材料など、液状のエポキシ樹脂組成物の用途が拡大しており、それに伴い、液状フェノール系硬化剤のニーズが高まっている。また、液状フェノール系硬化剤に要求される特性もより厳しいものとなっている。
たとえば半導体チップと接続されるワイヤー間の狭幅化、ワイヤーの細線化が進んでおり、封止材料やアンダーフィル材料の充填時にワイヤーの断裂や変形が生じやすくなっている。これを避けるために、封止材料やアンダーフィル材料の粘度のさらなる低減が求められる。
また、パッケージの小型化、薄型化に伴い、電子機器の落下時の衝撃等によってパッケージにクラックが発生したり、ワイヤーの断裂、変形等が発生する不具合や、電子機器の水没時にパッケージ内に水分が侵入して壊れる不具合等が生じやすくなっている。そのため、封止材料やアンダーフィル材料には、硬化物の吸水性および弾性率のさらなる低減が求められる。
前記のアリルフェノールを用いた多価ヒドロキシ樹脂は、原料中のアリルフェノールの割合を高くすることで低粘度化できるが、硬化物の弾性率を充分に低くすることはできなず、吸水性の低さも充分とはいえない。また、アリルフェノールの割合を高くすると、反応しない余剰のアリルフェノールを多量に回収する必要があり、歩留まりの低下を招く。
特開2010−241877号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、低粘度の液状であり、エポキシ樹脂用硬化剤として用いたときに低吸水性および低弾性率の硬化物が得られる多価ヒドロキシ樹脂、その製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、多価ヒドロキシ樹脂の原料のフェノール類として、アリルフェノールと、長鎖炭化水素基が置換したフェノール類とを組み合わせることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の態様を有する。
本発明の第一の態様は、下記一般式(A)で表される構成単位(A)と、下記一般式(B)で表される構成単位(B)とを有する多価ヒドロキシ樹脂である。
Figure 2015089940
[式中、Rはアリル基であり、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、Xは水素原子または水酸基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。]
本発明の第二の態様は、下記一般式(1)で表されるフェノール類(1)と、下記一般式(2)で表されるフェノール類(2)と、ホルムアルデヒドとを反応させることにより多価ヒドロキシ樹脂を得る工程を含む、多価ヒドロキシ樹脂の製造方法である。
Figure 2015089940
[式中、Rはアリル基であり、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、Xは水素原子または水酸基である。]
本発明の第三の態様は、前記第一の態様の多価ヒドロキシ樹脂からなるエポキシ樹脂用硬化剤である。
本発明の第四の態様は、エポキシ樹脂と、前記第一の態様の多価ヒドロキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物である。
本発明の第五の態様は、前記第四の態様のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
本発明によれば、低粘度の液状であり、エポキシ樹脂用硬化剤として用いたときに低吸水性および低弾性率の硬化物が得られる多価ヒドロキシ樹脂、その製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物を提供できる。
(多価ヒドロキシ樹脂)
本発明の多価ヒドロキシ樹脂は、下記一般式(A)で表される構成単位(A)と、下記一般式(B)で表される構成単位(B)とを有する。
Figure 2015089940
式中、Rはアリル基であり、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、Xは水素原子または水酸基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。
「−*」は結合手を示す。式(A)中の3つの結合手のうち少なくとも1つは他の構成単位に結合し、式(B)中の3つの結合手のうち少なくとも1つは他の構成単位に結合する。各式中の結合手のうち、他の構成単位に結合しない結合手は、水素原子に結合する。
ただし、構成単位(A)中のベンゼン環と構成単位(B)中のベンゼン環とはメチレン基を介して結合し、直接結合しない。また、同一分子中に2以上の構成単位(A)を有し、構成単位(A)同士が直接結合している場合、各構成単位(A)中のベンゼン環はメチレン基を介して結合し、直接結合しない。同様に、同一分子中に2以上の構成単位(B)を有し、構成単位(B)同士が直接結合している場合、各構成単位(B)中のベンゼン環はメチレン基を介して結合し、直接結合しない。
つまり、式(A)中のベンゼン環から伸びる結合手は、他の構成単位に結合するか、または水素原子に結合する。他の構成単位に結合する場合、該結合手は、該他の構成単位(別の構成単位(A)、またはmおよびnの少なくとも一方が1である構成単位(B))のメチレン基に結合する。
式(A)中のメチレン基から伸びる結合手は、他の構成単位(構成単位(B)、または別の構成単位(A))のベンゼン環に結合する。
式(B)中のベンゼン環から伸びる結合手は、他の構成単位に結合するか、または水素原子に結合する。他の構成単位に結合する場合、該結合手は、該他の構成単位(構成単位(A)、またはmおよびnの少なくとも一方が1である別の構成単位(B))のメチレン基に結合する。
式(B)中のmが0(またはnが0)である場合、−(CH−*(または−(CH−*)は、前記ベンゼン環から伸びる結合手と同様の結合手(−*)を示す。すなわち、他の構成単位に結合するか、または水素原子に結合する。他の構成単位に結合する場合、該結合手は、前記ベンゼン環から伸びる結合手と同様に、他の構成単位のメチレン基に結合する。
式(B)中のmが1(またはnが1)である場合、−(CH−*(または−(CH−*)はメチレン基であり、その結合手は、他の構成単位(構成単位(A)、または別の構成単位(B))のベンゼン環に結合する。
式(A)中、Rはアリル基(−CH−CH=CH)である。Rを有することで、多価ヒドロキシ樹脂は常温で液状を示しやすく、また低吸水性の硬化物を得やすい。
式(A)中、ベンゼン環におけるRの結合位置は、安価である点及び合成した樹脂が容易に液状化する点で、水酸基の結合した位置(1位)に対してオルト位(2位または6位)が好ましい。
ベンゼン環における単結合およびメチレン基の結合位置はそれぞれ、特に限定されない。典型的には、水酸基の結合した位置(1位)に対してオルト位(2位または6位)およびパラ位(4位)のいずれかである。
式(B)中、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基である。炭素数が10以上であることにより、多価ヒドロキシ樹脂は常温で液状を示しやすく、また低吸水性および低弾性率の硬化物を得やすい。炭素数が25以下であることにより、耐熱性を損なうことがない。
前記炭化水素基の炭素数は10〜25が好ましく、15〜20がより好ましい。
前記炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよく、不飽和結合(炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合等)を有する不飽和炭化水素基でもよい。不飽和炭化水素基に含まれる不飽和結合の数は1つでも2以上でもよい。
前記炭化水素基の具体例としては、−(CH14CH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHCHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHCHCH=CHCH=CHCH、−(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH等が挙げられる。
式(B)中、Xは、硬化物の吸水性が低い点で、水素原子であることが好ましい。
式(B)中、ベンゼン環におけるRの結合位置は、ホルムアルデヒドとの反応性の点で、水酸基の結合した位置(1位)に対してメタ位(3位または5位)が好ましい。なお、Xが水酸基である場合、1位は、Xの結合位置ではなく、式中に「OH」として示される水酸基の結合位置を示すものとする。
Xが水酸基である場合、ベンゼン環におけるXの結合位置は特に限定されない。ホルムアルデヒドとの反応性の点で、水酸基の結合した位置(1位)に対してメタ位が好ましい。
ベンゼン環における単結合、−(CH−*および−(CH−*の結合位置はそれぞれ特に限定されない。典型的には、水酸基の結合した位置(1位)に対してオルト位(2位または6位)およびパラ位(4位)のいずれかである。
本発明の多価ヒドロキシ樹脂中、構成単位(B)に対する構成単位(A)のモル比(構成単位(A)/構成単位(B))は、0.5〜3.0の範囲内であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。
構成単位(A)/構成単位(B)のモル比が前記範囲の下限値以上であると、エポキシ樹脂との硬化性に優れる。構成単位(A)/構成単位(B)のモル比が前記範囲の上限値以下であると、低吸水性、低弾性に優れる。
本発明の多価ヒドロキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるフェノール類(1)と、下記一般式(2)で表されるフェノール類(2)と、ホルムアルデヒドとを反応させることにより得られる。
フェノール類(1)とフェノール類(2)とホルムアルデヒドとを反応させると、フェノール類(1)または(2)に対するホルムアルデヒドの付加反応(メチロール化反応)と、生成したメチロール体とフェノール類(1)または(2)との縮合反応が進行する。これにより、前述した本発明の多価ヒドロキシ樹脂が生成する。
Figure 2015089940
[式中、Rはアリル基であり、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、Xは水素原子または水酸基である。]
式(1)中、Rの説明は、前記式(A)中のRと同じである。
フェノール類(1)は、アリルフェノールである。アリルフェノールは、比較的安価であり、反応性に優れる。また、得られる多価ヒドロキシ樹脂は液状を示しやすく、大量に使用しても容易にリサイクル可能である。
フェノール類(1)としては、オルソアリルフェノール(2−アリルフェノール)、メタアリルフェノール(3−アリルフェノール)、パラアリルフェノール(4−アリルフェノール)等が挙げられる。フェノール類(1)は単一の化合物からなるものでも2種以上の混合物でもよい。
フェノール類(1)としては、安価である点及び合成した樹脂が容易に液状化する点で、オルソアリルフェノールが特に好ましい。
式(2)中、R、Xの説明はそれぞれ、前記式(B)中のR、Xと同じである。
フェノール類(2)としては、カルダノール、カシューオイル、ウルシオール等が挙げられる。フェノール類(2)は単一の化合物からなるものでも2種以上の混合物でもよい。たとえばカシューオイルには、カルダノールを含む複数のフェノール類(2)が含まれる。カシューオイルとしては、カルダノールの含有量が多いことから、カシューナットシェルリキッドが好ましい。
フェノール類(2)としては、カルダノールが特に好ましい。カルダノールは、比較的安価であり、反応性の制御が容易である。また、得られる多価ヒドロキシ樹脂は液状を示しやすく、また低弾性率の硬化物を得やすい。
本発明の多価ヒドロキシ樹脂は種々の樹脂成分からなるが、本発明の効果の点で、多価ヒドロキシ樹脂全体における二核体及び三核体の合計の割合が20面積%以上であることが好ましく、40面積%以上であることがさらに好ましい。
二核体はベンゼン核を2個有する化合物であり、たとえば1分子のフェノール類(1)と1分子のフェノール類(2)とがメチレン基を介して結合した化合物等が挙げられる。三核体はベンゼン核を3個有する化合物であり、たとえば1分子のフェノール類(2)に2分子のフェノール類(1)がメチレン基を介して結合した化合物等が挙げられる。
樹脂全体における二核体及び三核体の合計の割合が20面積%以上であれば25℃における多価ヒドロキシ樹脂の粘度が低くなり、流動性が向上する。二核体及び三核体の合計の割合が多いほど樹脂の流動性が向上するため、上限値の設定はない。
多価ヒドロキシ樹脂全体における二核体及び三核体の合計の割合(面積%)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)から算出される。
本発明の多価ヒドロキシ樹脂の質量平均分子量(Mw)は、2000以下であることが好ましく、400〜2000がより好ましく、500〜1600がさらに好ましい。Mwが小さいほど、多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度が低くなる。Mwが2000以下であると、多価ヒドロキシ樹脂が常温で優れた流動性を示す。Mwが400以上であると、エポキシ樹脂との反応性に優れ、耐熱性を損なうことがない。
本発明において、Mwは、標準物質をポリスチレンとしたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
本発明の多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度は、25Pa・s以下であることが好ましく、20Pa・s以下であることがより好ましく、15Pa・s以下であることが特に好ましい。25℃における粘度が25Pa・s以下であると、流動性に優れる。多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度は低いほど好ましく、粘度の下限は特に限定されない。
多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度は、E型(コーンプレート型)粘度計により測定される。
多価ヒドロキシ樹脂の粘度は、多価ヒドロキシ樹脂のMw、構成単位(A)と構成単位(B)の比率等により調整できる。
(多価ヒドロキシ樹脂の製造方法)
本発明の多価ヒドロキシ樹脂の製造方法は、前記フェノール類(1)と、前記フェノール類(2)と、ホルムアルデヒドとを反応させる工程を含む。
フェノール類(1)とフェノール類(2)とホルムアルデヒドとを反応させると、前述のように、フェノール類(1)または(2)に対するホルムアルデヒドの付加反応(メチロール化反応)と、生成したメチロール体とフェノール類(1)または(2)との縮合反応が進行する。これにより、前述した本発明の多価ヒドロキシ樹脂が生成する。
フェノール類(1)およびフェノール類(2)の説明は前記のとおりである。
フェノール類(1)とフェノール類(2)とホルムアルデヒドとを反応させる方法としては、フェノール類(1)とフェノール類(2)とホルムアルデヒドとを一括に仕込んで反応させる方法、フェノール類(1)およびフェノール類(2)のいずれかを先にホルムアルデヒドと反応させてから、他方のフェノール類を反応させる方法等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
本発明において、フェノール類(1)とフェノール類(2)とホルムアルデヒドとを反応させる方法として、フェノール類(2)とホルムアルデヒドとを塩基性触媒の存在下で反応させ、その反応生成物とフェノール類(1)とを反応させる方法(以下、方法(i)ともいう。)が好ましい。
フェノール類(2)とホルムアルデヒドとの反応では、フェノール類(2)に1〜3分子のホルムアルデヒドが付加して下記一般式(3)で表されるメチロール体が生成する。
フェノール類(2)にホルムアルデヒドを付加し、得られたメチロール体にフェノール類(1)を付加することで、生成する多価ヒドロキシ樹脂中にフェノール類(2)が残留することを抑制できる。
フェノール類(1)とフェノール類(2)とでは、フェノール類(2)の方が反応性が低い。そのため、これらを一括してホルムアルデヒドと反応させると、反応生成物中に未反応のフェノール類(2)が残留しやすい。フェノール類(2)が多価ヒドロキシ樹脂中に残留すると、硬化物性の低下を招く。また、残留したフェノール類(2)は高沸点であるため、容易に除去できない。
Figure 2015089940
[式中、X及びRはそれぞれ前記と同様であり、kは1〜3の整数である。]
以下、方法(i)により多価ヒドロキシ樹脂を製造する場合について詳しく説明する。
方法(i)では、まず、フェノール類(2)とホルムアルデヒドとを塩基性触媒の存在下で反応させる1段目の反応を行う。
ホルムアルデヒドは、固形のものを用いても水溶液を用いてもよい。安価であり、反応の制御が容易である点から、水溶液を用いることが好ましい。
1段目の反応でのホルムアルデヒドの使用量は、フェノール類(2)に対するホルムアルデヒドのモル比(ホルムアルデヒド/フェノール類(2))が、1.0〜3.5の範囲内となる量が好ましい。ホルムアルデヒド/フェノール類(2)は、2.0〜3.5がより好ましく、2.0〜3.0がさらに好ましい。
ホルムアルデヒドの比率が低すぎると、生成した多価ヒドロキシ樹脂中に未反応のフェノール類(2)が残留し、ガラス転移温度等の硬化物性が低下するおそれがある。ホルムアルデヒドの比率が高すぎると、生成した多価ヒドロキシ樹脂中に余剰のホルムアルデヒドが残留し、その除去が必要であり、コストアップに繋がる。
塩基性触媒としては、反応が進行すれば特に制限はない。たとえばアルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アンモニア水、3級アミン(トリエチルアミン等)、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質が挙げられる。塩基性触媒は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
1段目の反応での塩基性触媒の使用量は、フェノール類(2)の1モルに対して0.1〜3.0モルが好ましく、0.5〜1.5モルがより好ましい。塩基性触媒の使用量が少なすぎると反応速度が遅く、使用量が多すぎると反応が急激に進み反応をコントロールすることが難しくなる。
1段目の反応は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4のアルコールの存在下で行うことが好ましい。これにより、1段目の反応中にフェノール類(2)や反応生成物が凝集することを防止できる。
炭素数1〜4のアルコールは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノールが特に好ましい。
炭素数1〜4のアルコールの使用量は、フェノール類(2)に対して10〜100質量%使用するのが好ましい。
この後のフェノール類(1)との反応(2段目の反応)を酸性触媒下で行う場合、反応系に残存する炭素数1〜4のアルコールはアルキル化剤としても機能する。1段目の反応でメチロール化されたフェノール類(2)(メチロール体)のメチロール基(−CHOH)が炭素数1〜4のアルコールのアルキル基(以下、Rと略記する。)でキャップされ、−CHO−Rとなる(キャップ化メチロール体)。これにより、メチロール基がそのままの状態で存在している場合に比べて、2段目の反応の際にフェノール類(2)のメチロール体同士が反応して二核体が生成したり、さらに該二核体同士が反応してフェノール類(2)のみから構成される四核体が生成したりする副反応が生じにくい。
一方、上記メチロール体及びキャップ化メチロール体は、フェノール類(1)とは容易に反応するため、目的の樹脂成分が得られやすい。
1段目の反応での反応温度は、0〜100℃が好ましく、30〜60℃がより好ましい。反応温度があまりに低いと反応は進まず、あまりに高すぎると反応をコントロールすることが難しくなり、目的の多価ヒドロキシ樹脂が安定的に得ることが難しくなる。たとえば1段目の反応温度が高すぎると、メチロール化反応だけでなく縮合反応も進んで、得られる多価ヒドロキシ樹脂中の二核体及び三核体の合計の割合が少なくなるおそれがある。
次に、1段目の反応で得られた反応生成物とフェノール類(1)とを反応させる2段目の反応を行う。
2段目の反応でのフェノール類(1)の使用量は、1段目の反応で使用したフェノール類(2)に対するフェノール類(1)のモル比(フェノール類(1)/フェノール類(2))が、3.0〜30.0の範囲内となる量が好ましい。フェノール類(1)/フェノール類(2)は、5.0〜30.0がより好ましく、8.0〜15.0がさらに好ましい。
フェノール類(1)/フェノール類(2)の比率が前記の範囲内であると、構成単位(A)/構成単位(B)のモル比が前記の好ましい範囲内である多価ヒドロキシ樹脂が得られやすい。
フェノール類(1)の比率が低すぎると、多価ヒドロキシ樹脂のMwが大きくなり、常温での粘度が高くなる。フェノール類(1)の比率が高すぎると、歩留まり低下し、コストアップに繋がる。
2段目の反応条件は、反応が進行すれば特に制限はない。
2段目の反応は、酸性触媒または塩基性触媒の存在下で行ってもよく、中性条件下で(酸性触媒および塩基性触媒を用いずに)行ってもよい。
2段目の反応を酸性触媒の存在下で行う場合、または中性条件下で行う場合は、2段目の反応を行う前に、1段目の反応で得られた反応生成物に酸を添加して塩基性触媒を中和する。2段目の反応を塩基性触媒の存在下で行う場合、1段目の反応に用いた塩基性触媒をそのまま2段目の反応の触媒として利用できる。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、3フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛等が挙げられる。酸性触媒は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
塩基性触媒としては、前記と同様のものが挙げられる。塩基性触媒は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
2段目の反応を酸性触媒の存在下で行う場合、その使用量は、フェノール類(1)の質量に対して0.01〜3.00質量%が好ましく、0.10〜1.00質量%がより好ましい。
2段目の反応を塩基性触媒の存在下で行う場合、その使用量は、フェノール類(1)の1モルに対して0.1〜3.0モルが好ましく、0.3〜1.5モルがより好ましい。
酸性触媒または塩基性触媒の使用量が少なすぎると反応速度が遅く、使用量が多すぎると反応が急激に進み反応をコントロールすることが難しくなる。
2段目の反応は、酸性触媒の存在下で行うことが好ましい。
2段目の反応を塩基性触媒の存在下で行うと、1段目の反応で生成したメチロール体同士が反応してフェノール類(2)のみから構成される二核体が生成し、さらに該二核体とメチロール体が反応してフェノール類(2)のみから構成される三核体が生成する副反応が生じやすい。該副反応が生じると、多価ヒドロキシ樹脂中のフェノール類(1)とフェノール類(2)とをその構成に有する(つまり構成単位(A)および構成単位(B)の両方を含む)二核体及び三核体の合計の割合が少なくなくなる。また、Mwが大きくなる。
対して酸性触媒下では、1段目の反応で生成したメチロール体とフェノール類(1)との反応が優先的に進行する。また、上述に記載のようなキャップ化メチロール体も生じる。そのため、フェノール類(1)とフェノール類(2)とをその構成に有する二核体及び三核体の合計の割合が大きい多価ヒドロキシ樹脂が得られやすい。また、Mwの増加を抑えた多価ヒドロキシ樹脂が得られやすい。
2段目の反応での反応温度は、30〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。反応温度があまりに低いと反応は進まず、あまりに高すぎると反応をコントロールすることが難しくなり、目的の多価ヒドロキシ樹脂が安定的に得ることが難しくなる。たとえば2段目の反応温度が高すぎると、1段目の反応で生成したメチロール体同士が反応してフェノール類(2)のみから構成される二核体が生成する副反応が生じやすくなり、多価ヒドロキシ樹脂を構成する分子のうち、フェノール類(1)とフェノール類(2)とをその構成に有する二核体及び三核体の合計の割合が少なくなるおそれがある。
2段目の反応の後、必要に応じて、反応生成物に対し、蒸留等による未反応の原料の除去、濃縮、精製(洗浄、カラムクロマトグラフィー、等)等の処理を行ってもよい。
(多価ヒドロキシ樹脂の用途)
本発明の多価ヒドロキシ樹脂の用途は、特に限定されず、液状の多価ヒドロキシ樹脂の用途として公知の各種の用途に用いることができる。
本発明の多価ヒドロキシ樹脂の用途の好適な例として、エポキシ樹脂用硬化剤が挙げられる。本発明の多価ヒドロキシ樹脂とエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物は、熱硬化性を有し、熱硬化性成形材料として使用できる。
(エポキシ樹脂組成物)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、前述の本発明の多価ヒドロキシ樹脂とを含有する。
エポキシ樹脂組成物に含まれる本発明の多価ヒドロキシ樹脂は1種でも2種以上でもよい。
エポキシ樹脂としては、公知のものを用いることができ、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は1種でも2種以上でもよい。
エポキシ樹脂と本発明の多価ヒドロキシ樹脂との混合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基当量に対する本発明の多価ヒドロキシ樹脂中の水酸基当量の当量比(水酸基当量/エポキシ基当量)が0.8〜1.2の範囲内となる量が好ましい。水酸基当量/エポキシ基当量は、0.9〜1であることがより好ましい。水酸基当量/エポキシ基当量が前記範囲内であると、硬化物の諸特性(耐熱性、耐湿性、強度等)に優れる。
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、エポキシ樹脂および本発明の多価ヒドロキシ樹脂以外の他の成分を含有してもよい。
前記他の成分としては、本発明の多価ヒドロキシ樹脂以外の硬化剤(以下、他の硬化剤ともいう。)、充填剤(フィラー)、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、着色剤、可撓性付与剤等が挙げられる。
他の硬化剤としては、従来公知のものを用いることができ、たとえばアリルフェノール樹脂、フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂等が挙げられる。
充填剤(フィラー)としては、結晶性シリカ粉、溶融性シリカ粉、石英ガラス粉、タルク、ケイ酸カルシウム粉、ケイ酸ジルコニウム粉、アルミナ粉、炭酸カルシウム粉等が挙げられ、結晶性シリカ粉、溶融性シリカ粉が好ましい。
エポキシ樹脂組成物中の充填剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、40〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。充填剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、硬化の際、熱膨張の発生が抑制される。充填剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、充分な流動性が得られ、成形性が向上する。
硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリス−2,6−ジメトキシフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等のリン化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−ジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルメチルアミン等の三級アミン類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7の有機酸塩類;等が挙げられる。
離型剤としては、たとえばカルナバワックス等の各種ワックス類等が挙げられる。
表面処理剤としては、公知のシランカップリング剤等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。
可撓性付与剤としては、シリコーン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリルゴム等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、本発明の多価ヒドロキシ樹脂と、必要に応じて他の成分と、を混合することにより調製できる。
混合は、常法により行うことができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、熱硬化性を有し、熱硬化性成形材料として使用できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の用途としては、特に制限はなく、公知の熱硬化性成形材料の用途と同様であってよい。たとえば封止材料、アンダーフィル材料等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の有用性の点で、液状封止材料、アンダーフィル材料のいずれかに用いられるものであることが好ましい
(硬化物)
本発明の硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるものである。
エポキシ樹脂組成物の硬化は、温度を100〜200℃に制御して行うことが好ましい。
硬化操作の一例としては、いったん前記の好適な温度で30秒間以上、1時間以下の硬化を行った後、さらに、前記の好適な温度で1〜20時間の後硬化を行う方法が挙げられる。
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
「%」、「部」はそれぞれ、特に記載のない限り、質量%、質量部を示す。
後述する各例で用いた測定方法を以下に示す。
[水酸基当量]
多価ヒドロキシ樹脂の水酸基当量(g/eq)は、自動滴定装置(平沼産業製COM−1700S)を用い、無水酢酸によるアセチル化法で測定した。
[質量平均分子量(Mw)]
多価ヒドロキシ樹脂のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。具体的には、下記のGPC測定装置及びカラムを使用し、標準物質をポリスチレンとして測定した。
GPC測定装置:東ソー社製のHLC8120GPC。
カラム:TSKgel G3000HXL+G2000HXL+G2000HXL。
[二核体及び三核体の合計の割合]
多価ヒドロキシ樹脂の二核体及び三核体の面積%は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。具体的には、下記のGPC測定装置及びカラムを使用し、リテンションタイムから二核体及び三核体を同定し、その面積%の合計を二核体及び三核体の面積%とした。
GPC測定装置:東ソー社製のHLC8120GPC。
カラム:TSKgel G3000HXL+G2000HXL+G2000HXL。
[粘度]
多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度(Pa・s)は、25℃に設定したE型粘度計(TOKIMEC製)により測定した。
[ガラス転移温度]
エポキシ樹脂組成物を、175℃、120秒でトランスファー成形して試験片(幅2mm×長さ30mm×厚さ1mmの四角形状)を作成した。該試験片を180℃で5時間加熱して後硬化させた。後硬化させた試験片のガラス転移温度(℃)を、粘弾性スペクトロメーター(セイコーインスツルーメンツ製、DMS 110)を用い、10℃/分の昇温速度で30℃〜300℃の範囲で測定した。
[貯蔵弾性率]
エポキシ樹脂組成物を、175℃、120秒でトランスファー成形して試験片(幅2mm×長さ30mm×厚さ1mmの四角形状)を作成した。該試験片を180℃で5時間加熱して後硬化させた。後硬化させた試験片の貯蔵弾性率(MPa)を、粘弾性スペクトロメーター(セイコーインスツルーメンツ製、DMS 110)を用い、10℃/分の昇温速度で30℃〜300℃の範囲で測定した。
[曲げ弾性率]
エポキシ樹脂組成物を、175℃、120秒でトランスファー成形して試験片(幅2mm×長さ30mm×厚さ1mmの四角形状)を作成した。該試験片を180℃で5時間加熱して後硬化させた。後硬化させた試験片の曲げ弾性率(MPa)を、JIS K7197に準拠した方法により測定した。
[吸水率]
エポキシ樹脂組成物を、175℃、120秒でトランスファー成形して試験片(直径50mm×厚さ3mmの円形状)を作成した。該試験片を、180℃5時間で加熱して後硬化させた。後硬化させた試験片を、プレッシャークッカーを用いて、121℃の純水中で24時間保持した。保持前後の試験片の質量(g)を測定し、その結果から、下記式により、吸水率(%)を算出した。
吸水率(%)=(24時間保持後の試験片の質量−保持前の試験片の質量)/保持前の試験片の質量×100
<実施例1>
[多価ヒドロキシ樹脂の合成(カルダノールをホルムアルデヒドと反応させた後、オルソアリルフェノールを酸性触媒下で反応させる方法)]
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量2Lのガラス製フラスコに、カルダノール300g(1.0mol)、メタノール150g、50%ホルムアルデヒド水溶液120g(2.0mol)を仕込み、その混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を2時間かけて滴下した。その後、45℃まで昇温し6時間反応させた。次いで、反応液に35%塩酸を添加して水酸化ナトリウムを中和した後、オルソアリルフェノールを1342g(10mol)添加し、シュウ酸を1.34g(オルソアリルフェノールに対して0.1質量%)添加して系内を酸性にし、100℃まで昇温し5時間反応を行った。次いで、反応液の水洗を行い、その後、過剰のオルソアリルフェノールを留去し、液状多価ヒドロキシ樹脂を得た。
得られた液状多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度は10.9Pa・s、質量平均分子量(Mw)は1412、水酸基当量は214g/eqであった。また、該液状多価ヒドロキシ樹脂全体における二核体及び三核体の合計の割合は45.2面積%であった。
[エポキシ樹脂組成物の調製および評価]
硬化剤として前記で得られた液状多価ヒドロキシ樹脂20.0部と、下記のエポキシ樹脂17.6部と、下記の硬化促進剤0.35部と、下記の無機フィラー151.4部とを混合してエポキシ樹脂組成物を調製した。
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学製「エピコート828」、エポキシ当量191g/eq。
硬化促進剤:トリフェニルホスフィン。
無機フィラー:球状シリカ。
得られたエポキシ樹脂組成物について、前記の手順でガラス転移温度、貯蔵弾性率、曲げ弾性率および吸水率を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2>
[多価ヒドロキシ樹脂の合成(カルダノールをホルムアルデヒドと反応させた後、オルソアリルフェノールを塩基性触媒下で反応させる方法)]
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量2Lのガラス製フラスコに、カルダノール300g(1.0mol)、メタノール150g、50%ホルムアルデヒド水溶液120g(2.0mol)を仕込み、その混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を2時間かけて滴下した。その後、45℃まで昇温し6時間反応させた。次いで、アルカリ性のまま、反応液にオルソアリルフェノールを1342g(10mol)添加し、100℃まで昇温し5時間反応を行った。次いで、反応液の中和、水洗を行い、その後、過剰のオルソアリルフェノールを留去し、液状多価ヒドロキシ樹脂を得た。
得られた液状多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度は14.3Pa・s、質量平均分子量(Mw)は1561、水酸基当量は206g/eqであった。また、該液状多価ヒドロキシ樹脂全体における二核体及び三核体の合計の割合は22.4面積%であった。
[エポキシ樹脂組成物の調製および評価]
得られた液状多価ヒドロキシ樹脂を硬化剤として用い、エポキシ樹脂、硬化促進剤、無機フィラーの配合量(部)を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度、貯蔵弾性率、曲げ弾性率および吸水率を測定した。結果を表1に示す。
<比較例1>
[多価ヒドロキシ樹脂の合成]
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量2Lのガラス製フラスコにフェノール941g(10.0mol)、50%ホルムアルデヒド水溶液150g(2.5mol)、シュウ酸4.7g(フェノールに対して0.5質量%)を仕込み、100℃まで昇温し4時間反応を行った。次いで、反応液の水洗を行い、その後、過剰のフェノールを留去し、半液状多価ヒドロキシ樹脂を得た。
得られた半液状多価ヒドロキシ樹脂の質量平均分子量(Mw)は411、水酸基当量は103g/eqであった。25℃における粘度は、粘度が高くて測定不可能であった。
なお、この例の合成方法は、一般的な低粘度フェノール樹脂の合成方法である。
[エポキシ樹脂組成物の調製および評価]
得られた半液状多価ヒドロキシ樹脂を硬化剤として用い、エポキシ樹脂、硬化促進剤、無機フィラーの配合量(部)を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度、貯蔵弾性率、曲げ弾性率および吸水率を測定した。結果を表1に示す。
<比較例2>
[多価ヒドロキシ樹脂の合成]
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量2Lのガラス製フラスコにオルソアリルフェノール1342g(10.0mol)、92%ホルムアルデヒド146.7g(4.5mol)、シュウ酸13.4g(オルソアリルフェノールに対して1.0質量%)を仕込み、120℃まで昇温し6時間反応を行った。次いで、反応液の水洗を行い、その後、過剰のオルソアリルフェノールを留去し、液状多価ヒドロキシ樹脂を得た。
得られた液状多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度は30.3Pa・s、質量平均分子量(Mw)は738、水酸基当量は156g/eqであった。
[エポキシ樹脂組成物の調製および評価]
得られた液状多価ヒドロキシ樹脂を硬化剤として用い、エポキシ樹脂、硬化促進剤、無機フィラーの配合量(部)を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度、貯蔵弾性率、曲げ弾性率および吸水率を測定した。結果を表1に示す。
<比較例3>
[多価ヒドロキシ樹脂の合成]
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量2Lのガラス製フラスコにオルソアリルフェノール1342g(10.0mol)、92%ホルムアルデヒド32.6g(1.0mol)、シュウ酸13.4g(オルソアリルフェノールに対して1.0質量%)を仕込み、120℃まで昇温し6時間反応を行った。次いで、反応液の水洗を行い、その後、過剰のオルソアリルフェノールを留去し、液状多価ヒドロキシ樹脂を得た。
得られた液状多価ヒドロキシ樹脂の25℃における粘度は4.2Pa・s、質量平均分子量(Mw)は432、水酸基当量は146g/eqであった。
[エポキシ樹脂組成物の調製および評価]
得られた液状多価ヒドロキシ樹脂を硬化剤として用い、エポキシ樹脂、硬化促進剤、無機フィラーの配合量(部)を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度、貯蔵弾性率、曲げ弾性率および吸水率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2015089940
実施例1〜2および比較例1〜3において、エポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の硬化剤(多価ヒドロキシ樹脂)の水酸基当量と、エポキシ樹脂のエポキシ基当量とが等当量になる量とした。
また、硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂に対して2質量%とした。
また、無機フィラーの配合量は、有機物(硬化剤、エポキシ樹脂、硬化促進剤)と無機フィラーとの質量比が2:8になる量とした。
表1に示すとおり、実施例1〜2の液状多価ヒドロキシ樹脂は、25℃における粘度が低かった。また、これを硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物の硬化物は、弾性率(曲げ弾性率および貯蔵弾性率)が低く、吸水率も低かった。
対して、フェノール類としてフェノールのみを用いた比較例1の半液状多価ヒドロキシ樹脂は、25℃における粘度が高くて測定できなかった。また、これを硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物の硬化物は、弾性率および吸水率が高かった。
フェノール類としてオルソアリルフェノールのみを用いた比較例2の液状多価ヒドロキシ樹脂の粘度、硬化物の弾性率および吸水率は、比較例1より低かったが、実施例1〜2より劣っていた。
ホルムアルデヒドに対するオルソアリルフェノールのモル比を比較例2よりも多くした比較例3の液状多価ヒドロキシ樹脂は、粘度は低かったものの、硬化物の弾性率および吸水率は実施例1〜2より劣っていた。

Claims (14)

  1. 下記一般式(A)で表される構成単位(A)と、下記一般式(B)で表される構成単位(B)とを有する多価ヒドロキシ樹脂。
    Figure 2015089940
    [式中、Rはアリル基であり、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、Xは水素原子または水酸基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。]
  2. 前記構成単位(B)に対する前記構成単位(A)のモル比(構成単位(A)/構成単位(B))が0.5〜3.0の範囲内である、請求項1に記載の多価ヒドロキシ樹脂。
  3. ゲル浸透クロマトグラフィーから算出される、多価ヒドロキシ樹脂全体における二核体及び三核体の合計の割合が20面積%以上である、請求項1又は2に記載の多価ヒドロキシ樹脂。
  4. 質量平均分子量が2000以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多価ヒドロキシ樹脂。
  5. 25℃における粘度が25Pa・s以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多価ヒドロキシ樹脂。
  6. 下記一般式(1)で表されるフェノール類(1)と、下記一般式(2)で表されるフェノール類(2)と、ホルムアルデヒドとを反応させることにより多価ヒドロキシ樹脂を得る工程を含む、多価ヒドロキシ樹脂の製造方法。
    Figure 2015089940
    [式中、Rはアリル基であり、Rは炭素数10〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、Xは水素原子または水酸基である。]
  7. 前記多価ヒドロキシ樹脂を得る工程が、前記フェノール類(2)と前記ホルムアルデヒドとを塩基性触媒の存在下で反応させ、その反応生成物と前記フェノール類(1)とを反応させることにより行われる、請求項6に記載の多価ヒドロキシ樹脂の製造方法。
  8. 前記フェノール類(2)に対する前記ホルムアルデヒドのモル比(ホルムアルデヒド/フェノール類(2))が1.0〜3.5の範囲内であり、
    前記フェノール類(2)に対する前記フェノール類(1)のモル比(フェノール類(1)/フェノール類(2))が3.0〜30.0の範囲内である、請求項7に記載の多価ヒドロキシ樹脂の製造方法。
  9. 前記反応生成物と前記フェノール類(1)との反応が、酸性触媒の存在下で行われる、請求項7又は8に記載の多価ヒドロキシ樹脂の製造方法。
  10. 前記フェノール類(2)と前記ホルムアルデヒドとの反応が、炭素数1〜4のアルコールの存在下で行われる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の多価ヒドロキシ樹脂の製造方法。
  11. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の多価ヒドロキシ樹脂からなるエポキシ樹脂用硬化剤。
  12. エポキシ樹脂と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多価ヒドロキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
  13. 液状封止材料、アンダーフィル材料、積層材料のいずれかに用いられるものである、請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
  14. 請求項12または13に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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