JP4956878B2 - 多価フェノール化合物と該化合物を用いたエポキシ樹脂用硬化剤、及びエポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な多価フェノール化合物に関し、さらに詳細にはこの化合物を用いたエポキシ樹脂用硬化剤及びその硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物に関する。この化合物は、低吸湿性かつ高耐熱性であり、低応力性に優れる硬化物を与えることができ、特に半導体封止の用途に有用である。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、その優れた硬化物性や取り扱いの容易さから、幅広い用途で使用されている。また、エポキシ樹脂には様々な種類の硬化剤が使用でき、その硬化剤の選択により硬化物性が大きく変わるため、各用途の目的に応じて使い分けられている。近年、高分子材料の使用条件が苛酷になるにしたがって、高分子材料に課される諸特性は厳しくなってきた。エポキシ樹脂用硬化剤が使用される用途においても、一般に用いられている各種の硬化剤では、要求特性を十分に満足できなくなってきた。例えば、ノボラック型フェノール樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物は、半導体封止用に用いられているが、この分野でも、要求性能は、厳しくなってきている。即ち、半導体装置の高集積化のため、半導体素子の大型化とパッケージの小型化、薄型化が進み、また実装方式も表面実装へと移行している。この場合、実装時には半導体装置全体がハンダの溶融温度近くの高温にさらされるため、パッケージが吸湿した水分の急激な気化により蒸気圧が発生しパッケージ全体に大きな応力がかかり、クラックが入ることが問題となっている。耐ハンダクラック性の良好な封止材用には、低吸湿性と低応力性、即ち低弾性率及び耐熱性、即ち高ガラス転移温度が要求される。
現在、硬化剤として主に使用されているフェノールノボラック樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)では、低吸湿性、低応力性及び高耐熱性が十分とは言えなくなってきた。最近、これ等の問題を解決するために、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のようにフェノール核間に極性の少ない炭化水素基を導入した硬化剤を用いたり、フェノールアラルキル樹脂等架橋点間の長い硬化物を与えるフェノール樹脂とテトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂からなる組成物を用い、低吸湿性及び低応力性を改良することが行われているが(特開昭61−47725号公報)、硬化物のガラス転移温度が低く、高温時の信頼性が劣る。フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド類との縮合物から誘導されるエポキシ樹脂を用いれば、高ガラス転移温度の硬化物が得られるが(特開昭57−34122号公報、特開昭57−141419号公報)、応力は大きく、低吸湿性も損なわれるため、耐ハンダクラック性は改良されない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、種々の用途に使用でき、特にエポキシ樹脂用硬化剤として使用した場合に、低吸湿性かつ高耐熱性であり、低応力性に優れる硬化物を与えることができる新規な多価フェノール化合物を提供すること、同化合物を主成分とするエポキシ樹脂用硬化剤を提供すること、及び同硬化剤を用いた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記の課題を解決するために種々研究を重ねた結果、エポキシ樹脂用硬化剤として、フェノール核間に、アリール基がペンダントされた剛直な構造の炭化水素基を持つビスフェノールをアルデヒド化合物と縮合して樹脂としたものをエポキシ樹脂用硬化剤の主成分とすることによりその目的を達成できたものである。
本発明は、
「1. 下記一般式(I)で表わされる多価フェノール化合物
一般式(I)
【0005】
【化6】
【0006】
(式中の記号は下記のように定義される。R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアラルキル基またはアルコキシ基である。R2は水素原子または、炭素数1〜10のアルキル基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアラルキル基またはアルコキシ基である。nは平均値で0.1〜8の数である。Xは互いに同一であっても異なっていてもよく、下記一般式(II)で表わされるアリール基である。)
一般式(II)
【0007】
【化7】
【0008】
(Z1及びZ2は、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基である。pは0〜5の整数である。qは0〜8の整数である。)
2. 一般式(I)で表わされる多価フェノール化合物が、下記一般式(III)で表わされるビスフェノール化合物を酸性触媒下、アルデヒド化合物と縮合反応させて得られた多価フェノール化合物である、1項に記載された多価フェノール化合物。
一般式(III)
【0009】
【化8】
【0010】
(式中の記号は下記のように定義される。R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアラルキル基またはアルコキシ基である。Xは互いに同一であっても異なっていてもよく、下記一般式(II)で表わされるアリール基である。)
一般式(II)
【0011】
【化9】
(Z1及びZ2は、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基である。pは0〜5の整数である。qは0〜8の整数である。)
3. ビスフェノール化合物に対するアルデヒド化合物の使用割合が、ビスフェノール化合物1モルに対し、アルデヒド化合物0.1.〜1.0モルである、2項に記載された多価フェノール化合物。
4. 一般式(III)で表わされるビスフェノール化合物が、下記一般式(IV)で表わされるビスフェノール化合物から選ばれた少なくとも1種類のビスフェノール化合物である、2項または3項に記載された多価フェノール化合物。
一般式(IV)
【0013】
【化10】
【0014】
5. 1項〜4項のいずれか1項に記載された多価フェノール化合物を総エポキシ樹脂用硬化剤量に対して10〜100重量%含むエポキシ樹脂用硬化剤。
6. エポキシ樹脂、及び請求項5に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
7. ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、テルペンジフェノール及びクレゾールノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種類のフェノール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、及び5項に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
8. エポキシ樹脂、5項に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤、及び無機充填材として組成物の80〜95重量%の破砕型及び/または球状の溶融及び/または結晶シリカ粉末を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の多価フェノール化合物は、前記一般式(I)で表わされるような構造を有していれば、その製法に制約はないが、一般的には、ビスフェノール化合物と、アルデヒド化合物との縮合反応によりオリゴマー化し、フェノール樹脂とする方法が用いられる。
ここで用いられるビスフェノール化合物としては、例えば、4,4′−ベンジリデンビスフェノール、4,4′−(4−メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4′−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、4,4′−(1−(4−メチルフェニルエチリデン)ビスフェノール、4,4′−(1−(1−ナフチルメチリデン))ビスフェノール、4,4′−(1−(1−ナフチルエチリデン))ビスフェノール、4,4′−(1−(2−ナフチルエチリデン))ビスフェノール、4,4′−(1−(4−ビフェニルメチリデン))ビスフェノール、4,4′−(1−(4−ビフェニルエチリデン))ビスフェノール、4,4′−(1−(9−アントラセニルメチリデン))ビスフェノール等があげられる。
また上述のビスフェノール化合物をオリゴマー化するために用いられるアルデヒド化合物としては、炭素数1〜21の各種アルデヒド類があげられ、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサンカルバルデヒド、オクタナール等があげられる。
上述のビスフェノール化合物とアルデヒド化合物を縮合反応させる際、そのビスフェノール化合物に対するアルデヒド化合物の使用割合は、大きくなるほど得られた多価フェノール化合物が高分子量化し、硬化物の耐熱性向上等に寄与する一方で、樹脂が高粘度となるため、組成物の流れ性が悪化する。したがって、その使用割合は使用目的に応じて調整する必要があるが、通常は、上述のビスフェノール化合物1モルに対して、アルデヒド化合物0.1〜1.0モル、好ましくは0.15〜0.8モルである。
【0016】
その縮合反応の反応条件としては、一般のノボラック化反応条件を用いることができる。すなわち酸性触媒の存在下に、20〜200℃の温度で1〜20時間反応させる。
その酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;けいタングステン酸、りんタングステン酸等のヘテロポリ酸;活性白土;その他酸性を示す有機酸塩類の通常ノボラック樹脂製造用の酸性触媒が使用できる。酸性触媒の使用量は、ビスフェノール化合物100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。
その縮合反応においては、芳香族炭化水素類、アルコール類、エステル類等の不活性剤、さらに縮合反応条件を選択することにより、ケトン系溶剤を用いることができる。
以上のようにして製造された多価フェノール化合物は、例えばビスフェノール化合物として4,4′−ベンジリデンビスフェノールを用い、アルデヒド化合物としてホルムアルデヒドを用いた場合は、一般式(V)で表わされるフェノール樹脂であり、
一般式(V)
【0017】
【化11】
【0018】
ビスフェノール化合物として4,4′−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノールを用い、アルデヒド化合物としてホルムアルデヒドを用いた場合は、一般式(VI)で表わされるフェノール化合物である。
一般式(VI)
【0019】
【化12】
【0020】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、以上に述べたようにして得られた多価フェノール化合物を主成分とする硬化剤であり、低吸湿性、高耐熱性及び低応力性に優れたエポキシ樹脂用硬化物を与えることができる。すなわち本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、その多価フェノール化合物を単独で用いたものであってもよいし、これに他のエポキシ樹脂用硬化剤を併用したものであってもよい。その併用できる他のエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等のフェノール樹脂類;テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物類;ジアミノフェニルメタン等のアミノ類等があげられる。併用される他の硬化剤の使用量は全硬化剤量に対して、90重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。他の硬化剤の併用量が多すぎると本発明の効果が十分発揮されなくなる。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の主成分である多価フェノール化合物と前述の併用できる他のエポキシ樹脂用硬化剤は、組成物とする前に予め混合してから供してもよいし、組成物配合時にそれぞれの必要量を単独で供することもできる。
【0021】
次に本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物である。
このエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂に特別な指定はなく、一般のエポキシ樹脂を使用することができる。その使用するエポキシ樹脂としては例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、テルペンジフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビスフェノールS、チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシナフタレン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂等の種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール化合物や、石油系重質油類またはピッチ類とホルムアルデヒド重合物とフェノール類とを酸触媒の存在下に重縮合させた変性フェノール樹脂と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂やジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロキシフタル酸、ダイマー酸等の種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂等があげられる。
また本発明のエポキシ樹脂組成物にはエポキシ樹脂としてビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、テルペンジフェノール及びクレゾールノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種類のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対して全硬化剤中のエポキシ基と反応する基が0.5〜2.0モルになる量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.2モルである。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、他の一般のエポキシ樹脂組成物と同様に、各種添加剤を配合することができる。それ等各種添加剤としては例えば、硬化促進剤、無機充填材、カップリング剤、難燃剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料等があげられ、必要に応じて適宜に配合することができる。
その硬化促進剤としては例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2、4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2、4−ジシアノ−6−[2−ウンデシルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾール類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアニジン、N−メチルピペラジン、2−ジメチルアミノ−1−ピロリンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)−オクタンなどのジアザビシクロ化合物、それ等ジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。それらの硬化促進剤となる化合物中では、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、及びそれらの塩が好ましい。
【0023】
その充填材としては例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、また本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止の用途に用いる場合には、無機充填材として、破砕型及び/または球状の、溶融及び/または結晶性シリカ粉末充填材を組成物全体の80〜95重量%配合することが好ましい。
その難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノール樹脂等のハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、リン酸エステル類、ホスフィン類等のリン系難燃剤、メラミン誘導体等の窒素系難燃剤及び水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤等があげられる。
しかしながら、最近では特性の悪化や環境保護の観点から、上記難燃剤を配合しないことが望まれている。本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は難燃性に優れるため、これ等の難燃剤を配合する必要がないか、少量にすることができる。
【0024】
一般に、弾性率の低い硬化物はガラス転移温度が低いため、耐熱性に劣るが、本発明の多価フェノール化合物を用いた硬化物は、ガラス転移温度が低下することなく弾性率が低くできるという点で優れている。
ガラス転移温度は、本発明の硬化剤と併用するエポキシ樹脂の種類、充填剤の種類等併用する物質や、硬化体とした場合の用途によって変わるが、115〜220℃、好ましくは120〜220℃の範囲に設定するのが半導体封止材としての用途等からは望ましい。また、弾性率も同様に、本発明の硬化剤と併用するエポキシ樹脂の種類、充填剤の種類等併用する物質や、硬化物とした場合の用途によって変わるが、弾性率が5〜150kgf/mm2、好ましくは10〜100kgf/mm2となるように組成の設定を行なうのが、本発明の組成物の特徴を十分に生かす上で好ましい。
【0025】
硬化物のガラス転移温度はTMAを用いて測定した。また、弾性率の測定はJIS K 6911に準拠し、3点曲げ法により、250℃雰囲気で測定した値である。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化後、すなわち硬化物として半導体封止体等を形成した場合、吸湿率の低い硬化物が得られることが特徴的である。
吸湿率は本発明の硬化剤と併用するエポキシ樹脂の種類、充填剤の種類等併用する物質によって変わるが、硬化物とした場合の吸湿率が0.30%以下、好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.15%以下となるように組成の設定を行なうのが、本発明の特徴を十分に生かす上で好ましい。
【0026】
吸湿率の測定は、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作成し、温度85℃、湿度85%の雰囲気に、168時間放置して吸湿処理し、吸湿処理前後の重量変化を測定し、重量百分率で表わしたものである。
上記の弾性率を満足することにより、ハンダ浴に浸漬した際等の、急激な温度変化による封止材の熱膨張と半導体装置中の他の材料、特に半導体チップの熱膨張の差異から発生する応力やパッケージ内部に吸湿した水分の蒸気圧による応力がよく吸収されるため、半導体装置の不良率が少なくなるという実用上大きな効果をもたらす。
また、ガラス転移温度を低下させることがないので、耐熱性にも優れている。
また、上記のような低い吸湿率を満足する硬化物とすることにより、ハンダ浴に浸漬した際にパッケージ内部に吸湿した水分の蒸気圧によるクラック発生が防止できるので、さらに半導体装置の不良率を少なくすることができるので有用である。
以上述べたように、本発明の新規な多価フェノール化合物は種々の用途に使用することができ、同化合物をエポキシ樹脂用硬化剤の主成分として用いた場合、低吸湿性かつ高耐熱性に優れ、さらに低応力性に優れた硬化物を与える。またその硬化剤を用いた発明のエポキシ樹脂組成物は低吸湿性かつ耐熱性に優れ、さらに低応力性に優れた硬化物を与えるので、電気分子分野、特に半導体封止の用途に有用である。
【0027】
【実施例】
以下に、本発明の多価フェノール化合物の製造例、及び本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の実施例、さらに本発明のエポキシ樹脂組成物の実施例及び比較例をあげる。
多価フェノール化合物の製造例
製造例1
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量3Lの三つ口フラスコに、4,4′−(ベンジリデンビスフェノール275g、パラホルムアルデヒド10.5g、パラトルエンスルホン酸1.4g及びトルエン220g仕込み、120℃で4時間保持して反応を行なわせた、続いて、系内が中性になるまで水洗した後、160℃、5torrの減圧下でトルエンを留去し、目的のフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂はフェノール性水酸基当量145g/eq、軟化点110℃、150℃での溶融粘度4.5Pの褐色固体であった。
【0028】
製造例2
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量3Lの三つ口フラスコに、4,4′−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール290g、パラホルムアルデヒド7.7g、シュウ酸2.9g及びメチルイソブチルケトン232g仕込み、120℃で4時間保持して反応を行なわせた。続いて、系内が中性になるまで水洗した後、160℃、5torrの減圧下でメチルイソブチルケトンを留去し、目的のフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂はフェノール性水酸基当量152g/eq、軟化点100℃、150℃での溶融粘度2.5Pの淡黄色固体であった。
【0029】
エポキシ樹脂用硬化剤の実施例1〜4
多価フェノール化合物として製造例1及び2のフェノール樹脂を、併用できる他のエポキシ樹脂用硬化剤として、フェノールノボラック樹脂及びキシリレンフェノール樹脂を表1に示したように溶融混合し、各エポキシ樹脂用硬化剤を製造した。これ等のエポキシ樹脂用硬化剤の溶融粘度、水酸基当量及び軟化点を表1に示した。
【0030】
エポキシ樹脂組成物実施例5〜9及び比較例1〜2
表2に示したように、エポキシ樹脂として、テトラメチルビフェノールから誘導されたエポキシ樹脂、ビフェノールとテトラメチルビフェノールから誘導されたエポキシ樹脂、またはオルソクレゾールノボラック樹脂から誘導されたエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤として実施例1〜4で製造した各エポキシ樹脂用硬化剤、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、臭素化エポキシ樹脂として、テトラブロモビスフェノールAから誘導されたエポキシ樹脂、無機充填剤としてシリカ粉末、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用い、さらに難燃助剤として三酸化アンチモン、カップリング剤としてとしてエポキシシラン、離型剤としてカルナバワックスをそれぞれ用いて、各エポキシ樹脂組成物を配合した。次いで、各配合物をミキシングロールを用いて70〜120℃の温度で5分間溶融混練した。得られた各溶融混合物は薄板状に取り出し冷却した後、粉砕して各成形材料を得た。これ等各成形材料を用い低圧トランスファー成形機で金型温度175℃、成形時間180秒で成形して、各試験片を得、180℃で8時間ポストキュアさせた。
ポストキュア後の各試験片の吸湿率、ガラス転移温度、高温弾性率、及び難燃性を試験した結果を表2に示した。さらに各成形材料により封止された模擬半導体装置の耐ハンダクラック性を試験した結果を表2に示した。
これより、実施例5〜9の各成形材料は、比較例1〜2の成形材料と比較して低吸湿性、耐熱性(即ち、ガラス転移温度が高い)、低応力性(即ち、高温弾性率が低い)のバランスに優れ、さらに耐ハンダクラック性に優れていた。また実施例5〜9の各成形材料は有毒なハロゲン系の難燃剤を含まず難燃性に優れていた。
【0031】
【表1】
【0032】
(註)*1:群栄化学社 商品名 レヂトップPSM4261、水酸基当量103g/eq、軟化点85℃
*2:明和化学社 商品名 MEH−7800S、水酸基当量175g/eq、軟化点75℃
【0033】
【表2】
【0034】
(註)*1:A;テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社商品名 エピコートYX4000H、エポキシ当量:192(g/eq))
*2:B;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社商品名 エピコート180S62、エポキシ当量:210(g/eq))
*3:C;ビフェノール型エポキシ樹脂とテトラメチルビフェノール樹脂の混合物(ジャパンエポキシレジン株式会社商品名 エピコートYL6121H、エポキシ当量:171(g/eq))
*4:D;フェノールアラルキル樹脂(明和化学社商品名 MEH−7800S、エポキシ当量:175(g/eq)、軟化点:75(℃))
*5:E;フェノールノボラック樹脂(群栄化学社商品名 レジトップPSM4261、水酸基当量103g/eq、軟化点85℃)
*6:臭素化エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社商品名 エピコート5050、エポキシ当量:385(g/eq)、臭素含有:48%)
*7:球状溶融シリカ粉末(日本アエロジル社商品名 ELSIL BF100)
*8:エポキシシラン(信越化学工業社商品名 KBM−403)
*9:85℃、85%RH、168時間後の吸湿率
*10:3点曲げ法、250℃
*11:80ピンQFP16個を85℃、85%RHにおいて168時間吸湿後、260℃ハンダ浴に10秒間浸漬し、クラックの発生した個数を求めた。
*12:UL94
【0035】
【発明の効果】
本発明の多価フェノール化合物はエポキシ樹脂用硬化剤の主成分として用いた場合に、低吸湿性かつ高耐熱性であり、低応力性に優れた硬化物を与えることができるので、同硬化剤を用いた本発明のエポキシ樹脂組成物は半導体封止の用途に有利に用いることができる。
Claims (8)
- ビスフェノール化合物に対するアルデヒド化合物の使用割合が、ビスフェノール化合物1モルに対し、アルデヒド化合物0.1〜1.0モルである請求項2に記載された多価フェノール化合物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載された多価フェノール化合物を総エポキシ樹脂用硬化剤量に対して10〜100重量%含むエポキシ樹脂用硬化剤。
- エポキシ樹脂、及び請求項5に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、テルペンジフェノール及びクレゾールノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種類のフェノール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、及び請求項5に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂、請求項5に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤、及び無機充填材として組成物の80〜95重量%の破砕型及び/または球状の溶融及び/または結晶シリカ粉末を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
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