JP4184109B2 - エポキシ樹脂用硬化剤及びエポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のフェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂用硬化剤及びその硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物に関する。この硬化剤は、低吸湿性、低応力性かつ高接着性に優れる硬化物を与えることができ、特に半導体封止の用途に有用である
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、その優れた硬化物性や取り扱いの容易さから、幅広い用途で使用されている。また、エポキシ樹脂には、様々な種類の硬化剤が使用でき、その硬化剤の選択により硬化物性が大きく変わるため、各用途の目的に応じて使い分けられている。近年、高分子材料の使用条件が過酷になるに従って、高分子材料に課される諸特性は厳しくなってきた。エポキシ樹脂用硬化剤が使用される用途においても、一般に用いられている各種の硬化剤では、要求特性を十分に満足できなくなってきた。例えば、ノボラック型フェノール樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物は、半導体封止用に用いられているが、この分野でも、要求性能は、厳しくなってきている。即ち、半導体装置の高集積化のため、半導体素子の大型化とパッケージの小型化、薄型化が進み、また実装方式も表面実装へと移行している。この場合、実装時には半導体装置全体がハンダの溶融温度近くの高温にさらされるため、パッケージが吸湿した水分の急激な気化により蒸気圧が発生しパッケージ全体に大きな応力がかかり、クラックが入ることが問題となっている。耐ハンダクラック性の良好な封止材用には、低吸湿性、低応力性(即ち低弾性率)、及び高接着性が要求される。この要求は、ハンダの鉛フリー化に伴う融点の上昇により、近年さらに厳しくなってきている。
現在、硬化剤として主に使用されているフェノールノボラック樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)では、低吸湿性及び低応力性が十分とは言えなくなってきた。最近、これらの問題を解決するために、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂やフェノールアラルキル樹脂などのようにフェノール核間に環構造を持った炭化水素基を導入したフェノール樹脂とテトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂からなる組成物を用い、低吸湿性、低応力性、及び高接着性を改良することが行われているが(特開昭61-47725号公報)、低吸湿性、低応力性、及び高接着性ともに最近の厳しい要求に対しては必ずしも充分とは言えない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、種々の用途に使用でき、特にエポキシ樹脂用硬化剤として使用した場合に、低吸湿性、低応力性、及び高接着性に優れる硬化物を与えることができるフェノール樹脂を主成分とするエポキシ樹脂用硬化剤を提供すること、及び同硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記の課題を解決するために種々研究を重ねた結果、エポキシ樹脂用硬化剤として、フェノール核にチオエーテル基を持つフェノール樹脂をエポキシ樹脂用硬化剤の主成分とすることによりその目的を達成できたものである。本発明は、
「1.下記一般式(III)または一般式(IV)で表されるフェノール樹脂を総エポキシ樹脂硬化剤量に対して5〜100重量%含むエポキシ樹脂用硬化剤。
一般式(III)
【0005】
【化3】
【0006】
(式中の記号は下記のように定義される。
Rl は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基である。R2 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R4 は水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。nは平均値で0.1〜10の数であり、aは1〜4、bは0〜3の整数である。)
一般式(IV)
【0007】
【化4】
【0008】
(式中の記号は下記のように定義される。
R1 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基である。R2 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R3 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R5 は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。l、mは平均値で0.1〜10の数であり、aは1〜4、bは0〜3、cは0〜4の整数である。)
2.前記一般式(III)で表されるフェノール樹脂が、下記一般式(I)で表されるフェノール化合物とアルデヒド類とを重縮合反応して得たフェノール樹脂である1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
一般式(I)
【0009】
【化5】
【0010】
(式中の記号は下記のように定義される。
Rlは互いに同一であっても異なっていてもよく、素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。R2 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。aは1〜4、bは0〜3の整数である。)
3.前記一般式(IV)で表されるフェノール樹脂が、前記2項に記載の一般式(I)で表されるフェノール化合物および下記一般式(II)で表されるフェノール化合物とアルデヒド類とを重縮合反応して得たフェノール樹脂である前記1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
一般式(II)
【0011】
【化6】
【0012】
(式中の記号は下記のように定義される。
R3 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。cは0〜4の整数である。)
4.前記フェノール樹脂が、水酸基当量が130〜300g/eq、軟化点が50℃〜140℃、150℃の溶融粘度が0.8Pa・s以下のフェノール樹脂である、1項乃至3項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
5.前記1項から4項のいずれか1項に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤とエポキシ樹脂を必須成分としてなるエポキシ樹脂組成物。
6.前記エポキシ樹脂用硬化剤が、前記全エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し全エポキシ基と反応する基が0.5〜2.0モルとなる量配合したエポキシ樹脂組成物。
7.前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テルペンジフェノール、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂及びクレゾールノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種類のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂である、5項又は6項に記載されたエポキシ樹脂組成物。
8.前記1項〜4項のいずれか1項に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤と前記エポキシ樹脂、及び無機充填材として、破砕型及び/又は球状の、溶融及び/又は結晶シリカ粉末を組成物の70〜95重量%を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」
に関する。
【0013】
本発明の請求項1に記載のエポキシ樹脂用硬化剤に使用されるフェノール樹脂は、チオエーテル基をもつフェノール化合物とアルデヒド類とを酸性触媒下、重縮合反応させる方法が、容易な操作で純度の良いフェノール樹脂が得られる点で好ましい。
その重縮合反応の反応条件としては、一般のノボラック化反応条件を用いることができる。即ち酸性触媒の存在下に、20〜200℃の温度で1〜20時間反応させる。
その酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;けいタングステン酸、りんタングステン酸等のヘテロポリ酸;活性白土;その他酸性を示す有機酸塩類等の通常ノボラック樹脂製造用の酸性触媒が使用できる。酸性触媒の使用量は、フェノール化合物100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。
その縮合反応においては、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の不活性溶剤、さらに反応条件を選択することにより、ケトン系溶剤を用いることができる。
反応終了後、必要に応じて、酸性触媒、中和した場合はその塩、未反応のフェノール化合物及び反応溶媒などを除去することにより、前記フェノール樹脂が得られる。前記フェノール樹脂を半導体封止材用に使用する場合には、酸性触媒又はその塩:を水洗、濾過、吸着等の方法で除去することが半導体の腐食を防止する上で好ましい。
【0014】
ここで用いられるチオエーテル基を持つフェノール化合物としては、例えば、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、プロピルチオフェノール、ブチルチオフェノール、フェニルチオフェノール、メチルチオクレゾール、エチルチオクレゾール、プロピルチオクレゾール、ブチルチオクレゾール、フェニルチオクレゾール等があげられる。
これらのチオエーテル基を持つフェノール化合物の中では入手の容易さからメチルチオフェノール、メチルチオクレゾールが好ましい。
またここで用いられるアルデヒド類としてはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナールアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルベンズアルデヒド、プロムベンズアルデヒド、グリオキザールアルデヒド、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等があげられる。
上述のフェノール化合物とアルデヒド類を重縮合反応させる際、そのフェノール化合物に対するアルデヒド類の使用割合は、大きくなるほど得られたフェノール樹脂が高分子量化し、硬化物の耐熱性向上などに寄与する一方で、樹脂が高粘度となるため、組成物の流れ性が悪化する。従って、その使用割合は使用目的に応じて調整する必要があるが、通常は、上述のフェノール化合物1モルに対してアルデヒド類0.1〜2.0モル、好ましくは0.15〜1.0モルである。
【0015】
通常は上述の反応によって一般式(III)で表される化合物を主成分とするフェノール樹脂が得られる。
一般式(III)
【0016】
【化7】
【0017】
(式中の記号は下記のように定義される。
Rlは互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。R2 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R4 は水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。nは平均値で0.1〜10の数であり、aは1〜4、bは0〜3の整数である。)
【0018】
本発明の請求項1のエポキシ樹脂用硬化剤に用いられるフェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒド類とをアルカリ存在下で反応させ、ジメチロール化合物を生成させた後、このジメチロール化合物とチオエーテル基を持つフェノール化合物とを酸性触媒存在下、重縮合反応させる方法が、容易な操作で純度の良いフェノール樹脂が得られる点で好ましい。またジメチロール化合物は2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール、4,6−ジメチロール−2−メチルフェノール等の市販品を用いても良い。
ここで用いられるアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属水酸化物が挙げられるが、反応速度の点から水酸化ナトリウムが好ましい。
またここで用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ブチルクレゾール、フェニルフェノール、クミルフェノール、メトキシフェノール、プロモフェノールなどがあげられる。
これらのフェノール化合物の中では、物性や入手の容易さから、フェノール又はクレゾールが好ましい。
さらにここで用いられるアルデヒド類、酸性触媒、チオエーテル基を持つフェノール化合物は上述の請求項1に記載のフェノール樹脂の製造に用いるものと同じ物を用いる事が出来る。
その縮合反応においては、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の不活性溶剤、さらに反応条件を選択することにより、ケトン系溶剤を用いることができる。
反応終了後、必要に応じて、酸性触媒、中和した場合はその塩、未反応のフェノール化合物及び反応溶媒などを除去することにより、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤に用いられるフェノール樹脂が得られる。このフェノール樹脂を半導体封止材用に使用する場合には、酸性触媒又はその塩を水洗、濾過、吸着等の方法で除去することが半導体の腐食を防止する上で好ましい。
【0019】
また本発明の請求項1のエポキシ樹脂用硬化剤に用いられるフェノール樹脂のもう一つの製造方法として、チオエーテル基をもつフェノール化合物、フェノール化合物、アルデヒド類とを酸性触媒下、重縮合反応させる方法も、容易な操作で純度の良いフェノール樹脂が得られる点で好ましい。
その重縮合反応の反応条件としては、一般のノボラック化反応条件を用いることができる。即ち酸性触媒の存在下に、20〜200℃の温度で1〜20時間反応させる。
ここで用いられるチオエーテル基を持つフェノール化合物、フェノール化合物、アルデヒド類、酸性触媒、は上述の請求項1に記載のフェノール樹脂の製造に用いるものと同じ物を用いる事が出来る。
その縮合反応においては、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の不活性溶剤、さらに反応条件を選択することにより、ケトン系溶剤を用いることができる。
反応終了後、必要に応じて、酸性触媒、中和した場合はその塩、未反応のフェノール化合物及び反応溶媒などを除去することにより、フェノール樹脂が得られる。このフェノール樹脂を半導体封止材用に使用する場合には、酸性触媒又はその塩を水洗、濾過、吸着等の方法で除去することが半導体の腐食を防止する上で好ましい。
通常は上述の反応によって下記一般式(IV)で表される化合物を主成分とするフェノール樹脂が得られる。
一般式(IV)
【0020】
【化8】
【0021】
(式中の記号は下記のように定義される。
Rlは互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。R2 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R3 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R5 は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。1、mは平均値で0.1〜10の数であり、aは1〜4、bは0〜3、cは0〜4の整数である。)
以上のようにして製造されるフェノール樹脂の品質性状は、各原料の種類、使用割合、反応条件、精製方法等により変化するが、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤として使用するにあたっては、水酸基当量が130〜300g/eq.、好ましくは140〜250g/eq.、軟化点が50〜140℃、好ましくは60〜100℃、150℃の溶融粘度が0.8Pa・s以下、好ましくは0.5Pa・s以下となるよう各種条件等を調整することが好ましい。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、以上に述べたようにして得られたフェノール樹脂を主成分とする硬化剤であり、低吸湿性、低応力性および高接着性に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えることができる。即ち本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、そのフェノール樹脂を単独で用いたものであってもよいし、これに他のエポキシ樹脂用硬化剤を併用したものであってもよい。
その併用できる他のエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等のフェノール樹脂類;テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物類;ジアミノジフェニルメタン等のアミン類等があげられる。本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を半導体封止用に使用する場合には、併用される他の硬化剤としては、ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等のフェノール樹脂類が好ましい。
併用される他の硬化剤の使用量は全硬化剤量に対して、90重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。他の硬化剤の併用量が多すぎると本発明の効果が十分発揮されなくなる。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の主成分であるフェノール樹脂と前述の併用できる他のエポキシ樹脂用硬化剤は、組成物とする前にあらかじめ混合してから供してもよいし、組成物配合時にそれぞれの必要量を単独で供することもできる。
【0023】
以上のようにして製造される本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の品質性状は、各成分の種類、使用割合等により変化するが、水酸基当量が130〜300g/eq.、好ましくは140〜250g/eq.、軟化点が50〜140℃、好ましくは60〜100℃、150℃の溶融粘度が0.8Pa・s以下、好ましくは0.5Pa・s以下となるよう各種条件等を調整することが好ましい。水酸基当量が小さすぎると低吸湿性に劣り、大きすぎると硬化性が悪化する。軟化点が低すぎると固体としての取り扱いが困難になり、高すぎるとエポキシ樹脂等との混合が困難になる。溶融粘度が高すぎると成型時の流動性が損なわれる。
【0024】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物である。
その使用することが出来るエポキシ樹脂としては例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テルペンジフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビスフェノールS、チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシナフタレン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、石油系重質油又はピッチ類とホルムアルデヒド重合物とフェノール類とを酸触媒の存在下に重縮合させた変性フェノール樹脂等の各種のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂やジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミンなどの種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロキシフタル酸、ダイマー酸などの種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂などがあげられる。
【0025】
これらの中で流動性、低吸湿性、耐熱性、低応力性等に優れるエポキシ樹脂としてビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テルペンジフェノール、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂及びクレゾールノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種類のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂を使用することが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用に使用する場合には、特にこれらのエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対して、全硬化剤中のエポキシ基と反応する基が0.5〜2.0モルになる量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.2モルである。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、他の一般のエポキシ樹脂組成物と同様に、各種添加剤を配合することができる。それら各種添加剤としては例えば、硬化促進剤、無機充填材、カップリング剤、難燃剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料等があげられ、必要に応じて適宜に配合することができる。
その硬化促進剤としては例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジシアノ−6−[2−ウンデシルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾール類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアニジン、N−メチルピペラジン、2−ジメチルアミノ−1−ピロリンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)−オクタンなどのジアザビシクロ化合物、それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などがあげられる。それらの硬化促進剤となる化合物の中では、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、及びそれらの塩が好ましい。
【0027】
その充填材としては例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウムなどがあげられる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止の用途に用いる場合には、無機充填材として、破砕型及び/又は球状の、溶融及び/又は結晶性シリカ粉末充填材を組成物全体の70〜95重量%配合することが好ましい。
【0028】
その難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノール樹脂などのハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、赤燐、リン酸エステル類、ホスフィン類などのリン系難燃剤、メラミン誘導体などの窒素系難燃剤及び水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤などがあげられる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤に使用されるフェノール樹脂は種々の用途に使用することができ、同化合物をエポキシ樹脂用硬化剤の主成分として用いた場合、低吸湿性かつ高接着性に優れ、さらに低応力性に優れた硬化物を与える。またその硬化剤を用いた本発明のエポキシ樹脂組成物は低吸湿性かつ高接着性に優れ、さらに低応力性に優れた硬化物を与えるので、電気電子分野、特に半導体封止の用途に有用である。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三ロフラスコに、4−(メチルチオ)−フェノール288g、パラトルエンスルホン酸3.5gを仕込み、80℃に昇温した。撹拌しながら、ホルムアルデヒド36%水溶液86gを1時間かけて滴下した。フラスコ内の温度は反応熱で140℃に上昇した。その間、生成する水は留去した。滴下終了後、温度を140℃に保ちながら3時間保持して反応を行わせた。続いて、80℃まで冷却した後トルエン900gを加え、系内が中性になるまで水洗した。その後、160℃、5torrの減圧下でトルエンと未反応の4−(メチルチオ)−フェノールを留去し、目的のフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂はフェノール性水酸基当量153/eq.、軟化点75℃、150℃での溶融粘度0.26Pa・sの褐色固体であった。
【0031】
<実施例2>
実施例1において4−(メチルチオ)−フェノール288gを4−メチルチオ〉−m−クレゾール289g、ホルムアルデヒド36%水溶液の使用量を78gとした以外は実施例1と同様の操作を行い、目的のフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂はフェノール性水酸基当量165g/eq.、軟化点69℃、150℃での溶融粘度0.1Pa・sの褐色固体であった。このフェノール樹脂のIRチャートを図1に、GPCチャートを図2に示す。
【0032】
〔実施例3〕
実施例2においてホルムアルデヒド36%水溶液の使用量をll0gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、目的のフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂はフェノール性水酸基当量169g/eq.、軟化点81℃、150℃での溶融粘度0.5Pa・sの褐色固体であった。
【0033】
<実施例4>
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三ロフラスコに、o−クレゾール74g、を仕込み、30℃に昇温した。発熱に注意しながら50%水酸化ナトリウム水溶液56gを加え、30℃で1時間撹拌した。その後、パラホルムアルデヒド48gを加え、30℃で1時間、45℃で2時間撹拌した。続いて20℃に冷却し、発熱に注意しながら濃塩酸68gを滴下した後、メタノール150g、4−(メチルチオ)−フェノール288gを加えた。50℃に昇温下後、濃塩酸7gを投入し、60℃で2時間、80℃で1時間撹拌した。反応終了後、トルエン700gを加え、系内が中性になるまで水洗した。その後、160℃、5torrの減圧下でトルエン、未反応のo−クレゾール、4−(メチルチオ)−フェノールを留去し、目的のフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂はフェノール性水酸基当量144g/eq.、軟化点91℃、150℃での溶融粘度0.41Pa・sの褐色固体であった。
【0034】
<実施例5>
実施例4において4−(メチルチオ)−フェノール288gを4−(メチルチオ)−m−クレゾール315gとした以外は実施例4と同様の操作を行い、目的のフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂はフェノール性水酸基当量150g/eq.、軟化点87℃、150℃での溶融粘度0.3Pa・sの褐色固体であった。このフェノール樹脂のIRチャートを図3に、GPCチャートを図4に示す。
【0035】
エポキシ樹脂組成物 実施例6〜12及び比較例1〜2
表1に示したように、エポキシ樹脂として、テトラメチルビフェノールから誘導されたエポキシ樹脂、ビフェノールとテトラメチルビフェノールから誘導されたエポキシ樹脂、又はオルソクレゾールノボラック樹脂から誘導されたエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤として実施例1〜5で製造した各エポキシ樹脂用硬化剤、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、無機充填剤としてシリカ粉末、硬化促進剤としてトリフェニルポスフィンを用い、さらにカップリング剤としてエポキシシラン、離型剤としてカルナバワックスをそれぞれ用いて、各エポキシ樹脂組成物を配合した。次いで、各配合物をミキシングロールを用いて70〜120℃の温度で5分間溶融混練した。得られた各溶融混合物は薄板状に取り出し冷却した後、粉砕して各成形材料を得た。これらの各成形材料を用い低圧トランスファー成形機で金型温度175℃、成形時間180秒で成形して、各試験片を得、180℃で8時間ポストキュアさせた。ポストキュア後の各試験片の吸湿率、ガラス転移温度、および接着性を試験した結果を表1に示した。さらに各成形材料により封止された模擬半導体装置の耐ハンダクラック性を試験した結果を表1に示した。
これより、実施例6〜12の各エポキシ樹脂組成物の成形材料は、比較例1〜2の成形材料と比較して低吸湿性、低応力性、高接着性のバランスに優れ、さらに耐ハンダクラック性に優れていた。
【0036】
【表1】
【0037】
(註)
*1:A;ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名 エピコートYX4000H,エポキシ当量:193(g/eq))
*2:B;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名 エピコート180S62,エポキシ当量:210(g/eq))
*3:C;ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名 エピコートYL6121H,エポキシ当量:172(g/eq))
*4:D;フェノールノボラック樹脂(群栄化学社商品名 レヂトップPSM
4261,水酸基当量:103(g/eq),軟化点:85℃)
*5:E;フェノールアラルキル樹脂(明和化成社商品名 MEH-7800S,水酸基当量:175(g/eq),軟化点:75(℃))
*6:溶融シリカ粉末(龍森社商品名RD-8)
*7:エポキシシラン(信越化学工業社商品名 KBM-403)
*8:85℃、85%RH、168時間後の吸湿率
*9:TMA法
*10:アルミピール試験
*11:80ピンQFP16個を85℃、85%RHにおいて72時間吸湿後、260℃ハンダ浴に10秒間浸漬し、クラックの発生した個数を求めた。
【0038】
【発明の効果】
本発明で使用する前記フェノール樹脂はエポキシ樹脂用硬化剤の成分として用いた場合に、低吸湿性、低応力性かつ高接着に優れた硬化物を与えることができるので、同硬化剤を用いた本発明のエポキシ樹脂組成物は半導体封止の用途に有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2のフェノール樹脂のGPCチャートである。
【図2】実施例2のフェノール樹脂のIRチャートである。
【図3】実施例5のGPCチャートである。
【図4】実施例5のフェノール樹脂のIRチャートである。
Claims (6)
- 下記一般式(III)又は一般式(IV)で表されるフェノール樹脂を総エポキシ樹脂硬化剤量に対して5〜100重量%含むエポキシ樹脂用硬化剤。
一般式(III)
Rl は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基である。R2 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R4 は水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。nは平均値で0.1〜10の数であり、aは1〜4、bは0〜3の整数である。)
一般式(IV)
R1 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基である。R2 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R3 は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子である。R5 は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。l、mは平均値で0.1〜10の数であり、aは1〜4、bは0〜3、cは0〜4の整数である。) - 前記フェノール樹脂が、水酸基当量130〜300g/eq、軟化点50℃〜140℃、150℃の溶融粘度が0.8Pa・s以下である、請求項1に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤。
- 前記請求項1又は2に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤とエポキシ樹脂を必須成分としてなるエポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂用硬化剤が、前記全エポキシ樹脂のエポキシ基1モ ルに対し全エポキシ基と反応する基が0.5〜2.0モルとなる量配合されている請求項3に記載されたエポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テルペンジフェノール、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂及びクレゾールノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種類のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂である、請求項3又は4に記載されたエポキシ樹脂組成物。
- 前記請求項1又は2に記載されたエポキシ樹脂用硬化剤とエポキシ樹脂、及び無機充填材として、破砕型及び/又は球状の、溶融及び/又は結晶シリカ粉末を全組成物の70〜95重量%を必須成分としてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
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