JP3704081B2 - エポキシ樹脂、その製法及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形材、ワニス、各種バインダー、積層材、接着剤、封止材、強化プラスチック用材、粉体塗料などに有用な新規エポキシ樹脂、その製造方法及びフェノール樹脂系硬化剤との組成物ないしはその硬化物に関する。とくには、高ガラス転移温度が要求される構造部材のバインダーやエポキシ樹脂系半導体封止材のベース樹脂として有用な、低溶融粘度、高ガラス転移温度を兼ね備えたエポキシ樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、優れた電気絶縁性、接着性、耐熱性、耐薬品性、機械的特性などを有するところから、各種分野で広く用いられている。近年、これを構成材料とする製品の小型軽量化などに伴い、低粘度でガラス転移温度が高いエポキシ樹脂の出現が望まれている。例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂は低粘度であるが、ガラス転移温度は比較的低い。一方、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂(特開57−141419号公報)はガラス転移温度の高い樹脂として知られているが、高粘度である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これまでのエポキシ樹脂では、上記例のように、低粘度と高ガラス転移温度の両立の点では問題があった。そこで本発明の目的は、低溶融粘度でしかも高ガラス転移温度である新規なエポキシ樹脂を提供することにある。本発明の他の目的は、このようなエポキシ樹脂を効率よく製造する方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、このようなエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤を含有する組成物ならびにその硬化物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、下記一般式(1)で表され、グリシジル化されたフェノールノボラック重合単位中のグリシジルエーテル基に対するメチレン基置換位置のp/o比が1.5以上であり、かつ150℃における溶融粘度が10〜300mPa・sであるエポキシ樹脂が提供される。
【0005】
【化3】
(式中、Gはグリシジル基、m/nが0.7〜1.5である)
【0006】
本発明によればまた、下記一般式(2)で表され、かつ水酸基に対するメチレン基置換位置のp/o比が1.5以上であるフェノール系重合体とエピハロヒドリンを反応させることを特徴とする上記一般式(1)のエポキシ樹脂を製造する方法が提供される。
【0007】
【化4】
(式中、m/nが0.7〜1.5である)
【0008】
本発明によればまた、上記式(1)で示されるエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物及びその硬化物が提供される。本発明によればまた、上記式(1)で示されるエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のエポキシ樹脂は、式(1)で示すとおり、グリシジル化されたトリフェノールメタン型樹脂の重合単位をn個、グリシジル化されたフェノールノボラック樹脂の重合単位をm個有する共重合タイプのエポキシ樹脂である。
【0010】
式(1)のエポキシ樹脂は、150℃における溶融粘度が10〜300mPa・s、好ましくは10〜100mPa・sの範囲にあり、エポキシ当量が145〜180g/eq、とくに155〜165g/eqの範囲にあるものが好ましい。このような溶融粘度及びエポキシ当量を有するものとして、各重合単位の重合度n及びmが、通常0〜10である重合体の混合物で、平均重合度がn、mいずれも0.6〜2.0、好ましくは0.8〜1.4のものが用いられる。平均重合度が高く、溶融粘度が上記範囲より高くなると流動性が低下する。またこれより低重合度で溶融粘度が低いものは、ガラス転移温度が低くなるので好ましくない。
【0011】
式(1)のエポキシ樹脂においてはまた、各重合単位の平均重合度の比m/nが0.7〜1.5、好ましくは0.9〜1.4である。m/nが上記値より大きいものはガラス転移温度が低くなりまた硬化速度が遅くなる。一方、m/nが上記値より小さいものは溶融粘度が上昇し、流動性が悪くなる。
【0012】
式(1)のエポキシ樹脂においては、分子内にグリシジル化されたトリフェノールメタン型樹脂及びグリシジル化されたフェノールノボラック樹脂の重合単位を特定の割合で含有する構造であり、これによりエポキシ樹脂として好適な、低溶融粘度、高ガラス転移温度、優れた硬化性を兼ね備えた重合体となっている。
【0013】
上記グリシジル化されたフェノールノボラック重合単位において、そのベンゼン環には、隣接するグリシジル化されたフェノールノボラック重合単位を結合するメチレン基とグリシジルエーテル基とを有している。本発明のエポキシ樹脂においては、そのグリシジルエーテル基に対するメチレン基置換位置が、p/o比で1.5以上、好ましくは2.0〜4.0、一層好ましくは2.5〜3.5である。すなわちp/o比が上記範囲にあることにより、硬化時間が早く、とくに反応初期の添加率が高いので、工業的に有利である。
【0014】
グリシジルエーテル基に対するメチレン基置換位置は、エポキシ樹脂の1H−NMRスペクトル法によって測定することができるし、グリシジル化前の原料フェノール系重合体の水酸基に対するメチレン基置換位置を1H−NMRスペクトル法によって測定しておくことによって知ることができる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂は、前記一般式(2)で示されるフェノール系重合体とエピハロヒドリン、例えばエピクロルヒドリンやエピブロムヒドリンなどとを、好ましくはハロゲン化水素捕捉剤の存在下に反応させることによって容易に得ることができる。この反応においては、式(2)のフェノール系重合体として、平均重合度の比m/nが0.7〜1.5、好ましくは0.9〜1.4、150℃における溶融粘度が50〜300mPa・s、好ましくは50〜200mPa・s、m、nがそれぞれ0〜10の範囲にあって、平均重合度がm、nそれぞれ0.6〜2.0、好ましくは0.8〜1.4のものが用いられる。又水酸基に対するメチレン基置換位置が、p/o比で1.5以上、好ましくは2.0〜4.0、一層好ましくは2.5〜3.5であるものが用いられる。
【0016】
上記反応においては、上記フェノール系重合体の水酸基1当量当たり、エピハロヒドリンを1.3〜20当量、とくに2.0〜10当量の割合でエピハロヒドリン過剰の条件下で反応させるのが好ましい。エピハロヒドリンの使用量が少なすぎると、グリシジルエーテル基とフェノール性水酸基の反応により分子量が増大し、粘度が上昇するため好ましくない。またエピハロヒドリンを上記範囲以上に使用しても顕著な効果はなく、エピハロヒドリンの使用量や釜効率を考慮すると経済的に好ましくない。
【0017】
上記反応におけるハロゲン化水素捕捉剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を使用するのが工業的に有利である。これらは固体の状態で、あるいは40〜50%程度の水溶液で反応系に添加することができる。ハロゲン化水素捕捉剤の好適な添加量は、上記フェノール系重合体の水酸基1当量に対し、0.8〜1.5当量、好ましくは0.9〜1.1当量である。
【0018】
上記フェノール系重合体とエピハロヒドリンの反応はまた、ハロゲン化水素捕捉剤を使用せずに、反応によって生じるハロゲン化水素を反応系から揮発除去しながら行うこともできる。
【0019】
フェノール系重合体とエピハロヒドリンの反応における反応温度は、50〜150℃の範囲が好ましく、また反応時間は一般に1〜20時間である。このエポキシ化反応は無溶媒でも、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトンなどの適当な溶媒の存在下でも行うことができる。この反応はまた、無触媒でも進行するが、所望により相間移動触媒などの適当な触媒を使用して行うこともできる。
【0020】
エポキシ化反応終了後は、過剰のエピハロヒドリンを留去したのち、反応生成物中に残留する過剰のハロゲン化水素捕捉剤やこの捕捉で生成する塩などを、水又は他の溶媒などで洗浄するなどして反応生成物から除去すると、目的とするエポキシ樹脂が得られる。このエポキシ樹脂は、一般式(1)で示されるものが主生成物として含有するものと考えられるが、反応条件により少量の高分子量副生物を含有する場合がある。この場合においても、とくに分離操作を施すことなくそのまま硬化用原料として使用することができる。
【0021】
原料として使用される式(2)で示されるフェノール系重合体は、下記式(3)に従いフェノール、サリチルアルデヒド及びホルムアルデヒドを、酸触媒の存在下で縮合させることにより製造することができる。
【0022】
【化5】
【0023】
縮合反応は、式(3)のようにサリチルアルデヒドとホルムアルデヒドを同時に添加して1段で行なうこともできるが、この場合はサリチルアルデヒド及びホルムアルデヒドの合計1モルに対し、フェノールを3.0モル以上、好ましくは3.3〜10.0モルの範囲で使用すると共に、反応温度を低くすることによりフェノールとホルムアルデヒドの反応を優先的に行なって低分子量のフェノールノボラック樹脂を形成させ、次いで昇温または触媒を増量してフェノールノボラック樹脂、サリチルアルデヒド及びフェノールを反応させる方式を採用する必要がある。反応温度はとくに限定はないが、60〜100℃程度の範囲に設定するのが好ましい。とくにメチレン置換位置のp/o比が2.0以上のフェノール系重合体を得るには、70℃以下で反応させるのがよい。サリチルアルデヒドとホルムアルデヒドの合計1モルに対しフェノールの使用量を3.0モル未満にするなど上述の反応条件を逸脱した場合には、低分子量で溶融粘度の低いフェノール系重合体を得ることは難しい。
【0024】
フェノール系重合体はまた、フェノールとホルムアルデヒドを、酸触媒の存在下で縮合させ、予めフェノールノボラック樹脂を生成させ、サリチルアルデヒドを添加し、酸触媒の存在下で縮合させる2段反応で行なうこともできる。このような2段反応においては、2段目の反応において新たにフェノールを添加することができる.この場合も1段反応の場合と同様にフェノールを過剰に使用することが重要である。例えば、1段目の反応においてホルムアルデヒド1モルに対してフェノールを2.5モル以上、好ましくは3.3〜10.0モル存在させ、2段目の反応において追加するサリチルアルデヒド及びフェノールは、1〜2段反応のトータルで仕込むサリチルアルデヒドとホルムアルデヒドの合計1モルに対して、1〜2段のトータルで仕込むフェノールが3.0モル以上、好ましくは3.3〜10.0モルの範囲で使用することが重要である。この場合もメチレン置換位置のp/o比が2.0以上のフェノール系重合体を得るためには、反応を70℃以下で行うのが好ましい。このような2段反応で行なうと、トリフェノールメタン型樹脂及びフェノールノボラック樹脂の各重合単位の重合度、すなわちn及びmの分布が狭くなり、分子量のコントロールが容易となり、所望の溶融粘度の重合体が得やすい。
【0025】
フェノール系重合体の製造において、原料のフェノール、サリチルアルデヒド及びホルムアルデヒドの使用量をコントロールするとともに、上記のように反応条件を設定することにより、所望の150℃における溶融粘度及び各重合単位の重合度比m/nを有する重合体を得ることができる。前記1段反応及び2段反応において酸触媒の使用量は、その種類によっても異なるが、蓚酸の場合は0.1〜2.0重量%程度、塩酸の場合は0.02〜2.0重量%程度、またトリフルオロメタンスルホン酸の場合は0.002〜0.01重量%程度使用するのがよい。とくに2段反応を行なう場合、2段目のサリチルアルデヒドをフェノール及びフェノールノボラック樹脂と反応させる際には、塩酸又はトリフルオロメタンスルホン酸を使用することが好ましい。
【0026】
フェノール、ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドを酸触媒の存在下で縮合させた後、未反応のフェノール及び酸触媒を除去することにより、式(2)で示されるフェノール系重合体を得ることができる。フェノールの除去方法は、減圧下あるいは不活性ガスを吹き込みながら熱をかけ、フェノールを蒸留し系外へ除去する方法が一般的である。酸触媒の除去は、水洗などの洗浄による方法もあるが、揮発性の酸を用いた場合は、フェノールと一緒に蒸留により系外へ除去する方法が、反応工程の短縮や釜効率のアップという点で好ましい。
【0027】
サリチルアルデヒドは、p−ヒドロキシベンズアルデヒドと併用することも可能である。
【0028】
さらにホルムアルデヒドとしては、37%ホルムアルデヒド水溶液、及びパラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物を用いることができる。
【0029】
酸触媒としては特に限定はなく塩酸、蓚酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸など公知のものを単独であるいは2種以上併用して使用することができるが、塩酸、蓚酸又はトリフルオロメタンスルホン酸が特に好ましい。これらの触媒は触媒活性が高く、また反応終了後減圧処理により、未反応のフェノール、サリチルアルデヒド、ホルムアルデヒドと共に触媒を除去することができるので水洗等の洗浄工程が不要である。
【0030】
これらフェノール系重合体の製造方法の詳細については、特願2001〜3267号及び特願2001−55793号において明らかにしている。
【0031】
本発明にかかるエポキシ樹脂は、各種硬化剤と併用することにより、成形材、各種バインダー、コーティング材、積層材などに使用することができる。とりわけフェノール樹脂系硬化剤と併用すると、低溶融粘度、高ガラス転移温度、硬化特性良好なエポキシ樹脂組成物が得られるので、半導体封止材として好適である。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂の硬化剤としては、とくに限定されず公知のものを使用することができ、フェノール樹脂系硬化剤、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、特公昭47−13782号、特公昭47−15111号、特開平6−184258号、特開平6−136082号、特開平7−258364号、特許第3122834号などに開示されているフェノールアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂、フェノールナフチルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型ノボラック樹脂など、アミン系硬化剤、例えばエチレンジアミンなどの脂肪族系、ビスアミノメチルシクロヘキサンのような脂環族系、メタキシレンジアミンやジアミノジフェニルメタンなどの芳香族系のアミンなど、酸無水物系硬化剤、例えば無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸など、潜在性硬化剤、例えばベンジルスルホニウム塩、ヒドラジニウム塩などを挙げることができる。とくに半導体封止用にはフェノール樹脂系硬化剤の使用が好ましい。
【0033】
上記フェノール樹脂系硬化剤と硬化するに際し、本発明のエポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂と併用することができる。このような他のエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェニルビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合によるアラルキル樹脂のエポキシ化物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタリン型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂など、分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0034】
エポキシ樹脂の硬化に際しては、硬化促進剤を併用することが望ましい。かかる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂をフェノール樹脂系硬化剤で硬化させるための公知の硬化促進剤を用いることができ、例えば3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びそのテトラフェニルボロン塩、有機ホスフィン化合物およびそのボロン塩、4級ホスホニウム塩などを挙げることができる。より具体的には、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンー7などの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラナフトエ酸ボレートなどを挙げることができる。中でも低吸水性や信頼性の点から、有機ホスフィン化合物や4級ホスホニウム4級ボレート塩が好ましい。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填剤、カップリング剤、離型剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、低応力剤等を、添加または予め反応して用いることができる。また他の硬化剤を併用することもできる。とくに半導体封止用に使用する場合は、無機充填剤の添加は必須である.このような無機充填剤の例として、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ガラス、珪酸カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、マグネサイト、クレー、タルク、マイカ、マグネシア、硫酸バリウムなどを挙げることができるが、とくに非晶性シリカ、結晶性シリカなどが好ましい。また優れた成形性を維持しつつ、充填剤の配合量を高めるために、細密充填を可能とするような粒度分布の広い球形の充填剤を使用することが好ましい。
【0036】
カップリング剤の例としては、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系などのシラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤を、離型剤の例としてはカルナバワックス、パラフィンワックス、ステアリン酸、モンタン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィンワックスなど、また着色剤としては、カーボンブラックなどを例示することができる。難燃剤の例としては、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化合物、リン化合物など、また難燃助剤としては三酸化アンチモンなどを挙げることができる。低応力化剤の例としては、シリコンゴム、変性ニトリルゴム、変性ブタジエンゴム、変性シリコンオイルなどを挙げることができる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤の配合比は、耐熱性、機械的特性などを考慮すると、フェノール樹脂系硬化剤の水酸基/エポキシ樹脂のエポキシ基の当量比が0.5〜1.5、とくに0.8〜1.2の範囲にあることが好ましい。また他のエポキシ樹脂を併用する場合は、フェノール樹脂系硬化剤の水酸基とエポキシ樹脂全体のエポキシ基の当量比が上記範囲となるように使用するのが好ましい。硬化促進剤は、硬化特性や諸物性を考慮すると、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲で使用するのが好ましい。さらに半導体封止用のエポキシ樹脂組成物においては、無機充填剤の種類によっても若干異なるが、半田耐熱性、成形性(溶融粘度、流動性)、低応力性、低吸水性などを考慮すると、無機充填剤を組成物全体の60〜93重量%を占めるような割合で配合することが好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、所定の割合の各原料を、例えばミキサーによって充分混合後、熱ロールやニーダーなどによって混練処理を加え、さらに冷却固化後、適当な大きさに粉砕するなどの方法を挙げることができる。このようにして得た成形材料を用いて、例えば低圧トランスファー成形などにより半導体素子を封止し、半導体装置を得ることができる。エポキシ樹脂組成物の硬化は、例えば100〜250℃の温度範囲で行うことができる。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお参考例及び実施例における物性測定法は、以下のとおりである。
(1)150℃溶融粘度
ICI溶融粘度計を用い、150℃での原料フェノール系重合体及びエポキシ樹脂の溶融粘度を測定した。
【0040】
(2)重合度比 m/n
原料フェノール系重合体の製造におけるホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドの反応率を求め、仕込み量と反応率から重合物中のメチレン結合/メチン結合(m/n)の比を求めた。尚、ホルムアルデヒド反応率は、反応後に残存するホルムアルデヒドを塩酸ヒドロキシルアミン法で測定し、求めた。またサリチルアルデヒドの反応率は、反応後の残存するサリチルアルデヒドをガスクロマトグラフィ法で測定し、求めた。
【0041】
(3)原料フェノールノボラック樹脂重合単位中のヒドロキシ基に対するメチレン基置換位置のp/o位比率:
1H−NMRスペクトル法を用いて求めた。
【0042】
(4)ガラス転移温度
エポキシ樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて175℃−120秒で成形した後、180℃で6時間ポストキュアさせた成形品から適当な大きさの試験片を切り出し、TMA法(昇温速度5℃/分)によりガラス転移温度を測定した。
【0043】
[参考例1]
特願2001−55793号実施例1に基づき、本発明のエポキシ樹脂の原料であるフェノール系重合体を調製した。すなわち、フェノール94g(1モル)、37%ホルマリン水溶液19.5g(ホルムアルデヒド換算で0.24モル)、蓚酸2水和物0.57gを用い、65℃で4時間反応により、ヒドロキシ基に対するメチレン基置換位置のp/o位比率が1.2のフェノールノボラック樹脂を得た。
【0044】
その後、さらにフェノール106.2g(1.13モル)、サリチルアルデヒド29.3g(0.24モル)、35%塩酸水溶液7.1gを追加仕込み、65℃で4時間反応させ、得られた縮合液を、さらに減圧下熱処理することで、未反応のフェノール、水、蓚酸及びHClを系外に除去することにより、99.2gのフェノール系重合体を得た。得られたフェノール系重合体の性状は次のとおりであった。
水酸基当量 :100g/eq
150℃溶融粘度 :190mPa・s
m/n :1.0(アルデヒド類の反応率より求めた値)
p/o比 :2.5
【0045】
[実施例1]
攪拌機、温度計、滴下ロート及び分離管付きコンデンサーを備えた反応容器に、参考例1で得られたフェノール系重合体を100g、エピクロルヒドリンを574g(フェノール系重合体の1水酸基当量当たり、6.2当量)及び溶媒のジメチルスルホキシド200gを仕込み、攪拌しながら115〜120℃に昇温した後、同じ温度で49%水酸化ナトリウム水溶液165gを2時間かけて連続的に滴下した。この間、温度を115〜120℃に保ちながら、留出するエピクロルヒドリンと水の混合物を冷却濃縮させて分液し、エピクロルヒドリン層は反応系内に戻しながら反応をさせて、エポキシ化反応(水酸基のグリシジルエーテル化)を行った。
【0046】
反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧蒸留で除去した後、残留物(副生塩とジメチルスルホキシドを含有するエポキシ化生成物)をメチルイソブチルケトンに溶解させ、得られた溶液を水洗して、副生塩とジメチルスルホキシドを除去した。その後有機層からメチルイソブチルケトンを留去して、目的とするエポキシ樹脂144gを得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は160g/eq、150℃におけるICI溶融粘度は60mPa・sであり、参考例1のフェノール系重合体のm/nのものと略一致した。
【0047】
[参考例2]
フェノール94g(1モル)、37%ホルマリン水溶液14.6g(ホルムアルデヒド換算で0.18モル)、蓚酸2水和物1.1gを用い、40℃で5時間反応させたのち、さらにフェノール17.4g(0.19モル)、サリチルアルデヒド16.9g(0.14モル)、35%塩酸水溶液8.2gを追加仕込み、40℃で8時間反応させ、参考例1同様の後処理により65.0gのフェノール系重合体を得た。得られたフェノール系重合体の性状は次のとおりであった。
水酸基当量 :101g/eq
150℃溶融粘度 :180mPa・s
m/n :1.3(アルデヒド類の反応率より求めた値)
p/o比 :3.0
【0048】
[実施例2]
実施例1において、参考例1で用いたフェノール形重合体を使用する代りに、参考例2で得られたフェノール系重合体100gを用いた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ化反応を行い、エポキシ当量162g/eq、150℃におけるICI溶融粘度は50mPa・sのエポキシ樹脂142gを得た。このエポキシ当量は、参考例2のフェノール系重合体のm/nのものと略一致した。
【0049】
[実施例3〜4、比較例1〜2]
エポキシ樹脂(実施例1〜2のもの、下記エポキシ樹脂Aまたはエポキシ樹脂B)、フェノール樹脂系硬化剤(下記フェノール系樹脂)、溶融シリカ、トリフェニルホスフィン、アミノシランカップリング剤及びカルナバワックスを表1に示す割合(表中の数値は重量部)で配合し、充分に混合した後、85℃±3℃の2本ロールで3分混練し、冷却、粉砕することにより、成形用組成物を得た。トランスファー成形機で成型用組成物を圧力100kgf/cm2で175℃、2分間成形後、180℃、6時間ポストキュアを行い、ガラス転移温度(Tg)用のテストピースを得た。
【0050】
エポキシ樹脂A:一般式(1)において、nが0であるエポキシ当量が159g/eqのフェノールノボラック樹脂
エポキシ樹脂B:一般式(1)において、mが0であるエポキシ当量が168g/eqのトリフェノールメタン型エポキシ樹脂
フェノール系樹脂:水酸基当量106g/eqのフェノールホルムアルデヒド樹脂
【0051】
【表1】
表中の原料の数値は重量部
【0052】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂は、分子内にグリシジル化されたトリフェノールメタン型樹脂及びグリシジル化されたフェノールノボラック型樹脂の重合単位を有し、両者の重合度、重合度比及びメチレン基置換位置のp/o比が特定範囲に調整されているので、硬化時間が早く、また低溶融粘度で高ガラス転移温度という性質を兼ね備えている。これにより高度の性能が要求される半導体封止材料、構造部材材料などに使用することができる。
Claims (11)
- m及びnの平均値が、それぞれ0.6〜2.0である請求項1に記載のエポキシ樹脂。
- グリシジル化されたフェノールノボラック重合単位中のグリシジルエーテル基に対するメチレン基置換位置のp/o比が2.0〜4.0である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂。
- 150℃における溶融粘度が10〜100mPa・sである請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂と、それ以外のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂系硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填剤を含有する請求項6又は7に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 半導体封止用に使用される請求項6〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項6〜9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ硬化物。
- 請求項9に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。
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