JP2015073922A - 酸素透過膜および改質器 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸素透過膜の耐久性および酸素透過性能を向上させる。
【解決手段】酸素分圧差を駆動力として、高酸素分圧側から低酸素分圧側へと酸素を透過する酸素透過膜において、酸素イオン伝導体である安定化ジルコニアと電子伝導体との混合物によって形成される第一層と、希土類元素を固溶した酸素イオン伝導性を有するセリウム酸化物と電子伝導体との混合物によって形成され、第一層の一方の面上に積層される第二層と、第二層における第一層が形成される面とは異なる面上に設けられ、以下の組成式La1-xSrxFe1-yCoy3-z(0<x≦0.4、0≦y≦0.4、zは任意)、および、La1-xSrxMnO3-z(0<x≦0.4、zは任意)で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物を含む触媒層と、を備え、触媒層が高酸素分圧側となり、第一層が低酸素分圧側となるように配置して用いられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸素を選択的に透過する酸素透過膜および改質器に関するものである。
従来、酸素を選択的に透過する酸素透過膜として、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を示す複合酸化物を含有する酸素透過膜が知られている。このような酸素透過膜が備える上記した複合酸化物の一つとして、ガドリニウムなどの希土類元素を固溶したセリウム酸化物(以下、セリウム系複合酸化物とも呼ぶ)を用いる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−281086号公報 特許第3965623号
しかしながら、セリウム系複合酸化物を含有する酸素透過膜を、例えば、炭化水素系燃料等の改質燃料から部分酸化反応によって水素を得る改質器に組み込んで用いる場合には、酸素透過膜の耐久性が低下するという問題があった。酸素透過膜を改質器に組み込む際には、酸素透過膜の一方の面側に対して改質燃料を供給すると共に、他方の面側に対して空気を供給する。そして、酸素透過膜を透過することによって空気から抽出された酸素を用いて部分酸化反応を進行させて、改質燃料から水素を生成する。このような改質器では、酸素透過膜の上記一方の面側は還元雰囲気となり、他方の面側は、より酸素濃度が高い状態となる。セリウム系複合酸化物は、還元膨張率(還元雰囲気下で加熱したときの寸法増加率)が比較的大きいという性質を有しているため、上記改質の用途に用いる場合には、酸素透過膜において、還元雰囲気に晒される側と、酸素濃度が高い気体に晒される側との間で大きな膨張差が生じ、酸素透過膜内で機械的応力が発生してしまう。これにより、酸素透過膜の耐久性が低下するという問題が生じていた。
また、セリウム系複合酸化物は、高い酸素イオン伝導性を示し得るものの、セリウム系複合酸化物からなる部材は、強度が比較的低く、また、緻密にすることが困難であるという問題があった。酸素透過膜を用いる際には、通常は、酸素が抽出されるガス側の方が、抽出された酸素が流れる側よりも高圧となるため、酸素透過膜にはこのような圧力差に耐える強度が求められる。また、酸素透過膜の各々の面の間でガスが混合することのないように、酸素透過膜には十分な緻密性が求められる。セリウム系複合酸化物から成る酸素透過膜の強度を高めて酸素透過膜を十分に緻密に形成するためには、酸素透過膜の厚さをより厚くすればよいが、酸素透過膜の厚型化は、酸素透過速度の低下につながり採用し難い場合がある。
酸素イオン伝導性を示す複合酸化物としては、上記したセリウム系複合酸化物以外に、安定化ジルコニアが知られている。安定化ジルコニアは、セリウム系複合酸化物に比べて、強度および緻密性に優れると共に、還元膨張率が小さく、上記した酸素透過膜の耐久性低下の問題が生じ難いことが見出された。ただし、安定化ジルコニアは、酸素透過膜において酸素濃度が高い気体が供給される側に設けられる触媒層の構成材料(例えば、La−Sr−Fe−Co系複合酸化物や、La−Sr−Mn系複合酸化物)と反応して、抵抗が大きい化合物(異種相)を生じ易く、このような異種相が生じることにより酸素透過膜の性能(酸素透過速度)の低下が引き起こされるという問題がある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、酸素分圧差を駆動力として、高酸素分圧側から低酸素分圧側へと酸素を透過する酸素透過膜が提供される。この酸素透過膜は、酸素イオン伝導体である安定化ジルコニアと電子伝導体との混合物によって形成される第一層と、希土類元素を固溶した酸素イオン伝導性を有するセリウム酸化物と電子伝導体との混合物によって形成され、前記第一層の一方の面上に積層される第二層と、前記第二層における前記第一層が形成される面とは異なる面上に設けられ、以下の組成式
La1-xSrxFe1-yCoy3-z(0<x≦0.4、0≦y≦0.4、zは任意)、
および、
La1-xSrxMnO3-z(0<x≦0.4、zは任意)で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物を含む触媒層と、を備え、前記触媒層が前記高酸素分圧側となり、前記第一層が前記低酸素分圧側となるように配置して用いられる。
この形態の酸素透過膜によれば、酸素透過膜を改質器に組み込んで用いる際には、第二層で生じる膨張差に起因して第二層が損傷することを抑制し、酸素透過膜の耐久性を向上させることが可能になる。さらに、セリウム酸化物を含む第二層を、第一層と触媒層との間に設けることにより、第一層を構成する安定化ジルコニアと、触媒層を構成する化合物と、が反応して異種相が生成されることを抑え、生成した異種相に起因する酸素透過膜の性能低下を抑制することができる。また、酸素透過膜全体として、強度および緻密性を確保し、厚型化を抑えつつ、高い酸素透過性能を実現することができる。
(2)上記形態の酸素透過膜において、前記第一層および前記第二層が含有する前記電子伝導体は、組成式La1-xxCrO3-z(元素Mは、マグネシウム(Mg)を除くアルカリ土類金属から選択される元素、0≦x≦0.3、zは任意)で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物であることとしてもよい。
この形態の酸素透過膜によれば、電子伝導体として上記組成式で表わされる化合物を用いることにより、電子伝導体が、酸素イオン伝導性を有する酸化物(特に安定化ジルコニア)と反応して高抵抗な化合物を生成することを抑え、上記化合物の生成に起因する酸素透過膜の性能低下を抑制できる。
(3)上記形態の酸素透過膜において、前記第一層および前記第二層が含有する前記電子伝導体は、組成式La1-xSrxCrO3-z(0≦x≦0.3、zは任意)で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物であることとしてもよい。
この形態の酸素透過膜によれば、電子伝導体と、安定化ジルコニアとの反応性がさらに抑制されるため、酸素透過膜の性能低下を抑える効果を高めることができる。
(4)上記形態の酸素透過膜において、前記安定化ジルコニアは、スカンジア安定化ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、およびカルシア安定化ジルコニアから選択される1種以上の化合物であることとしてもよい。
この形態の酸素透過膜によれば、安定化ジルコニアの酸素イオン伝導性および耐久性(耐還元性)を高めることができるため、酸素透過膜の酸素透過性能を向上させることができる。
(5)上記形態の酸素透過膜において、前記希土類元素を固溶したセリウム酸化物が、ガドリニウム固溶セリア(GDC)およびサマリウム固溶セリア(SDC)から選択される1種以上の酸化物であることとしてもよい。
この形態の酸素透過膜によれば、第二層における酸素イオン伝導性を高め、酸素透過膜の酸素透過性能を向上させることができる。
(6)本発明の他の形態によれば、(1)から(5)のいずれか1項に記載の酸素透過膜を備え、部分酸化反応によって改質燃料から水素を生成する改質器が提供される。この改質器は、前記酸素透過膜の前記触媒層側に供給するための酸素含有ガスが流れる酸素含有ガス流路と、前記酸素透過膜の前記第一層側に供給するための前記改質燃料が流れる改質燃料供給路と、を備え、前記酸素透過膜を透過した前記酸素含有ガス中の酸素を用いて前記部分酸化反応を進行する。
この形態の改質器によれば、改質器が備える酸素透過膜の耐久性および酸素透過性能が高められているため、改質器全体の耐久性および改質効率を高めることができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、酸素透過膜の製造方法、等の形態で実現することができる。
酸素透過膜を備える改質器の概略構成を示す断面模式図である。 改質器の構成を模式的に示す説明図である。 改質器の構成を模式的に示す説明図である。 実施例のサンプルの性能を調べた結果を示す説明図である。 実施例のサンプルの構成を模式的に表わす断面図である。 測定装置の概略構成を表わす説明図である。 使用前後のX線回折パターンを比較した結果を示す説明図である。 使用前後のX線回折パターンを比較した結果を示す説明図である。 使用前後のX線回折パターンを比較した結果を示す説明図である。 安定化ジルコニアと電子伝導体との反応性を調べた結果を示す説明図である。 サンプルS12についてのX線回折パターンを示す説明図である。 サンプルS15についてのX線回折パターンを示す説明図である。 サンプルS16についてのX線回折パターンを示す説明図である。
A.酸素透過膜の構成:
図1は、本発明の実施形態としての酸素透過膜10、および、この酸素透過膜10を備える改質器20の概略構成を示す断面模式図である。酸素透過膜10は、第一層12と、第二層14と、触媒層16とが、この順序で積層された積層構造を有している。そして、酸素透過膜10は、全体として、酸素イオン伝導性と共に、電子伝導性を有している。本実施形態では、第一層12および第二層14はいずれも、ガス不透過な緻密層として形成されており、第一層12および第二層14は酸素透過層15を構成している。また、本実施形態の酸素透過膜10は、担体の面上に成膜された膜とは異なり、担体(基材、支持体)を有していない自立膜として構成されている。
第一層12は、酸素イオン伝導性を示す酸化物(以下、酸素イオン伝導体とも呼ぶ)である安定化ジルコニアと、電子伝導体との混合物によって形成される。これにより、第一層12は、還元雰囲気下、および酸化雰囲気下において、酸素イオン伝導性および電子伝導性を示す。
安定化ジルコニアは、酸化ジルコニウム(ZrO2)に対して、酸化物である1種以上のドーパントを固溶させることにより安定化したジルコニアである。上記ドーパントとして用い得る酸化物としては、例えば、希土類酸化物である酸化イットリウム(Y23)、酸化スカンジウム(Sc23)、および酸化イッテルビウム(Yb23)を挙げることができる。また、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)をドーパントとして用いることもできる。このような安定化ジルコニアでは、4価で安定なジルコニウム(Zr)のサイトを、ドーパントが含有する2価あるいは3価で安定な元素で置換することにより、構造中に酸素空孔が形成されて酸素イオン伝導性が発現されると共に、結晶構造が安定化する。より高い酸素イオン伝導性(より速い酸素透過速度)を実現し、より高い耐久性(より高い耐還元性)を実現するためには、スカンジア安定化ジルコニア(以下、ScSZとも表わす)、イットリア安定化ジルコニア(以下、YSZとも表わす)、およびカルシア安定化ジルコニアから選択される安定化ジルコニアを用いることが望ましい。
安定化ジルコニアでは、添加するドーパント量を増加させるほど酸素イオン伝導性が向上し、一般に、ドーパントの添加量が、完全安定化ジルコニアを得るために最低限必要な添加量付近であるときに、酸素イオン伝導性は最大値となる。このような値以上に過剰にドーパントを添加すると、酸素イオン伝導性は低下する傾向を示す。そのため、酸素イオン伝導性を確保すると共に、酸素透過膜10全体の安定性を高める効果を得るためには、安定化ジルコニアにおけるドーパントの添加量は、3〜12mol%とすることが望ましい。特に、安定化ジルコニアとしてイットリア安定化ジルコニアを用いる場合には、ドーパントの添加量を3〜8mol%とすることが好ましく、安定化ジルコニアとしてスカンジア安定化ジルコニアを用いる場合には、ドーパントの添加量を7〜11mol%とすることが好ましい。
第一層12が備える電子伝導体としては、以下の(1)式で表わされる酸化物電子伝導体を用いることができる。
La1-xxCrO3-z …(1)
(式中、Mは,マグネシウム(Mg)を除くアルカリ土類金属から選択される元素であり、0≦x≦0.3である。また、zは、式中の金属元素の割合や、環境温度および雰囲気に応じて、酸素原子の量が変動することを示す値である。)
本実施形態では、電子伝導体として上記(1)式で表わされる酸化物を用いることにより、第一層12において、酸素イオン伝導体である安定化ジルコニアと電子伝導体との反応を抑えている。電子伝導体と酸素イオン伝導体とが反応することによる高抵抗な化合物の生成が抑えられるため、上記化合物の生成に起因する酸素透過膜の性能低下を抑制できる。電子伝導体がランタンクロマイト系の複合酸化物であれば、上記のように安定化ジルコニアと組み合わせることで酸素透過膜の安定性を向上できるため、上記(1)式においてx=0であってもよい。ただし、上記(1)式のランタンクロマイト系の複合酸化物において、アルカリ土類金属元素をランタン(La)サイトに添加することで、酸素透過膜10の性能をさらに向上させることができる。このようなランタンクロマイト系の複合酸化物では、3価で安定なLaサイトを、例えばストロンチウム(Sr)のような2価で安定なアルカリ土類金属で部分的に置換することにより、クロム(Cr)の価数が変化するため、電子伝導性が高まる。安定化ジルコニアとの反応性が低いという観点から、上記(1)式におけるアルカリ土類金属Mは、ストロンチウム(Sr)あるいはカルシウム(Ca)であることが望ましく、ストロンチウム(Sr)であることが特に望ましい。ただし、アルカリ土類金属としてマグネシウム(Mg)を用いる場合には、マグネシウム(Mg)は、LaサイトではなくCrサイトを置換してしまうため、本実施形態では、(1)式に示したアルカリ土類金属Mから、マグネシウム(Mg)を除外している。
上記(1)式において、xの値を大きくするほど、本実施形態の電子伝導体の電子伝導度を高めることが可能になる。そのため、第一層12の酸素透過性能を高めるためには、上記(1)式におけるxの範囲を0.1以上とすることが望ましい。ただし、xの値を大きくする(置換量を大きくする)ほど、結晶構造が不安定になり、他の元素との反応性が高まる。具体的には、xの値が0.3を超えると、例えば本実施形態の電子伝導体と酸素イオン伝導体とを混合して酸素透過膜10を製造するための焼成工程において、電子伝導体および酸素イオン伝導体とは異なる組成の異種相の生成量が増加する。そのため、上記組成式(1)中のxの範囲は、0≦x≦0.3とすることが望ましい。上記異種相の生成をさらに抑えるためには、xの範囲を0.2以下とすることがさらに望ましい。
以上より、本実施形態の電子伝導体において、酸素透過性能と安定性との双方を高いレベルで確保するには、(1)式におけるMがストロンチウム(Sr)であって、x=0.2である酸化物を用いることが、特に好ましい。なお、既述したように、上記組成式(1)中のzの値は、(1)式の電子伝導体を構成する金属元素の割合や、環境温度および雰囲気に応じて酸素原子の量が変動することを示す値であり、例えば、0〜0.2の範囲の数値を取り得る。
第一層12を構成する酸化物(酸素イオン伝導体および電子伝導体)は、例えば、固相反応法により形成することができる。固相反応法とは、酸化物や、炭酸塩、あるいは硝酸塩などの粉末原料を、作製すべき酸化物の組成に応じて、上記粉末原料中の金属元素が所定の割合となるように秤量、混合した後、熱処理(焼成)を行って、所望の酸化物を合成する周知の方法である。第一層12を構成する酸化物の製造方法は、固相反応法以外の方法であってもよく、例えば、共沈法やpechini法やゾルゲル法など、複合酸化物を製造可能な種々の方法を採用可能である。pechini法とは、金属イオンとクエン酸とのキレート化合物とエチレングリコールなどのポリアルコールとのエステル化反応で前駆体を作製し、熱処理によって酸化物粒子を得る方法である。
第一層12を作製するには、例えば、酸素イオン伝導体の粉末と電子伝導体の粉末とを用意して、酸素イオン伝導体と電子伝導体の各々の粒径が十分に小さい状態で十分に混合して、成形後に焼成すればよい。酸素イオン伝導体と電子伝導体とを、十分に小さい粒径で十分に混合するには、例えば、ボールミルを用いて混合すればよい。酸素イオン伝導体と電子伝導体の混合物の成形は、例えば、プレス成形により行なえばよい。また、酸素イオン伝導体と電子伝導体の混合物の焼成温度は、十分に緻密な焼結体を得るためには、例えば1200℃以上とすることが好ましく、1300℃以上とすることがさらに好ましい。また、酸素イオン伝導体と電子伝導体の混合物の焼成温度は、酸素イオン伝導体と電子伝導体の間の反応を抑制するためには、例えば、1650℃以下が好ましく、1500℃以下がさらに好ましい。上記混合物を焼成して得られる第一層12の膜厚は、例えば、1〜1000μmとすることができるが、第一層12の強度および緻密性が許容範囲であれば1μm未満であってもよく、第一層12の厚型化による酸素透過速度の低下が許容範囲であれば1000μmを超えてもよい。
第一層12において、酸素イオン伝導体と電子伝導体との混合割合は、各々の酸化物によって実現される酸素イオン伝導性と電子伝導性のバランスの結果として得られる酸素透過膜10の酸素透過性能を考慮して適宜定めればよい。酸素イオン伝導体と電子伝導体との混合物である酸素透過膜10中における電子伝導体の混合割合は、例えば、5mol%以上とすることが好ましい。また、上記混合割合は、例えば、50mol%以下とすればよく、40mol%以下とすることが好ましく、30mol%以下とすることがさらに好ましい。
第二層14は、酸素イオン伝導体である希土類元素を固溶したセリウム酸化物と、第一層12と同様の電子伝導体との混合物によって形成される。これにより、第二層14は、還元雰囲気下、および酸化雰囲気下において、酸素イオン伝導性および電子伝導性を示す。第二層14が備える希土類元素を固溶したセリウム酸化物としては、例えば、ガドリニウム(Gd)固溶セリア(ガドリアドープセリア、GDC)およびサマリウム(Sm)固溶セリア(サマリアドープセリア、SDC)から選択されるセリウム酸化物を挙げることができる。上記GDCおよびSDCは、希土類元素を固溶したセリウム酸化物の中でも特に酸素イオン伝導度が高いため、これらのセリウム酸化物を用いることで、酸素透過膜10における酸素透過速度を高めることができる。
第二層14を構成する酸化物(酸素イオン伝導体および電子伝導体)は、第一層12を構成する酸化物と同様に、例えば、固相反応法、共沈法、pechini法、あるいはゾルゲル法によって製造することができる。そして、第二層14は、第一層12と同様に、例えば酸素イオン伝導体の粉末と電子伝導体の粉末とを用意して両者を混合し、成形後に焼成することによって製造することができる。上記焼成の温度は、第一層12と同様に、1200℃以上とすることが好ましく、1300℃以上とすることがさらに好ましい。また、1650℃以下が好ましく、1500℃以下がさらに好ましい。このようにして作成した第二層14を、例えば、第一層12あるいは第二層14の構成材料を含むペーストを用いて第一層12と貼り合わせ、その後に焼成することにより、第二層14と第一層12の積層構造を作製することができる。
あるいは、第二層14は、第一層12とは別体の層として形成するのではなく、第一層12上に成膜することにより形成してもよい。例えば、PLD法(パルスレーザー堆積法)等のPVD法(物理気相蒸着法)、ディップ法、溶射、およびスパッタ法など、種々の成膜方法により、第二層14を第一層12上に形成することができる。
第二層14の膜厚は、例えば、1μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがさらに好ましい。第二層14は、後述するように、第一層12を構成する安定化ジルコニアが、触媒層16を構成する化合物と反応することを抑制する機能を有する。そのため、第二層14において、成膜のムラが生じたり、微細なクラックが生じる可能性を考慮すると、第二層14の緻密さを確保し、第一層12の安定化ジルコニアと触媒層16の化合物とを十分に離間させるためには、膜厚を1μm以上とすることが望ましい。なお、第二層14を充分に緻密に形成して、第一層12と触媒層16との間の反応を抑制することが可能であれば、第二層14の厚みを1μm未満としても良い。
第一層12と第二層14とを合わせた酸素透過層15全体の厚みは、膜全体の強度を確保する観点から、例えば、2μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましく、10μm以上とすることがさらに好ましい。また、上記酸素透過層15全体の厚みは、膜全体の酸素透過速度を確保する観点から、例えば、1500μm以下とすることが好ましく、1000μm以下とすることがさらに好ましい。ただし、2μm未満としてもよく、1500μmを超えることとしてもよい。
第二層14の厚さは、第一層12より薄くてもよく、第一層12の厚さ以上であってもよい。第二層14の緻密性、第一層12の割合を大きくすることによる強度向上の効果、還元膨張率差に起因する耐久性の低下の程度、膜全体の酸素透過性能等を考慮して、各層の厚みを適宜設定すればよい。なお、図1に示すように酸素透過膜10を改質器20に組み込んで用いる場合には、酸素透過層15全体の厚みに対する第二層14の厚みの割合は、酸素透過膜10の耐久性の観点から、50%以下であることが望ましい。第二層14における第一層12との界面における酸素分圧は、第一層12および第二層14の厚みに依存し、第二層14の厚みの割合が大きくなるほど(第一層12の厚みの割合が小さくなるほど)、上記界面の酸素分圧が低くなり、より強い還元雰囲気となる。そのため、第二層14の厚みの割合が大きくなるほど、第二層14の両面間で還元膨張率差が大きくなり、第二層14を含む酸素透過膜10全体の耐久性が低下するためである。
触媒層16は、触媒として、以下の組成式
La1-xSrxFe1-yCoy3-z(0<x≦0.4、0≦y≦0.4、zは任意)、
および、
La1-xSrxMnO3-z(0<x≦0.4、zは任意)
で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物を含んでいる。ここで、zは、式中の金属元素の割合や、環境温度および雰囲気に応じて、酸素原子の量が変動することを示す値であり、例えば、0〜0.2の範囲の数値を取り得る。ランタン(La)サイトにストロンチウム(Sr)元素を上記割合で添加し、鉄(Fe)サイトにコバルト(Co)元素を上記割合で添加した、上記ランタン−鉄−ペロブスカイト型複合酸化物は、酸素分子をイオン化する触媒活性が特に高い化合物である。
触媒層16を構成する上記酸化物(以下、触媒酸化物とも呼ぶ)は、第一層12を構成する酸化物と同様に、例えば、固相反応法、共沈法、pechini法、あるいはゾルゲル法によって製造することができる。そして、触媒層16は、溶媒を用いて上記触媒酸化物をペースト化し、このペーストを第二層14上に塗布して焼成することにより形成することができる。あるいは、触媒層16は、例えば、PVD法(物理気相蒸着法)、具体的には例えばPLD法(パルスレーザー堆積法)、ディップ法、溶射、スパッタ法など、種々の成膜方法により、第二層14上に形成してもよい。
B.改質器の構成:
図1には、酸素透過膜10を改質器20に用いた場合の流路17,18の位置を示している。酸素透過膜10の一方の面側(第一層12側)には、改質燃料としての流体が流れる改質燃料流路17が形成される。また、酸素透過膜10の他方の面側(触媒層16側)には、酸素含有ガスとしての空気が流れる空気流路18が形成される。酸素透過膜10は、酸素イオン透過性を有し、酸素分圧が高い側から低い側へと、酸素を特異的に移動させる性質を有している。そのため、改質器20では、空気流路18中の酸素が、酸素透過膜10を透過して改質燃料流路17側へと移動し、酸素透過膜10における改質燃料流路17側の面上では、透過した酸素を利用して、改質燃料の部分酸化反応が進行する。
図1では、空気流路18側の酸素分圧(PO2)の方が、改質燃料流路17側の酸素分圧(P’O2)よりも高く、酸素透過膜10の両面間で酸素分圧勾配が生じる様子を、破線により概念的に示している。酸素透過膜10では、このような両面間の酸素分圧差を駆動力として、空気流路18から改質燃料流路17へと酸素が透過する。このとき、空気流路18内の酸素分子は、触媒層16の空気流路18側の表面でイオン化し、生じた酸素イオンが、酸素イオン伝導性を有する酸素透過膜10内を改質燃料流路17側へと移動する。本実施形態の酸素透過膜10は、電子伝導性も有するため、上記のように酸素イオンが移動する際には、酸素イオンとは逆向きに電子が膜内を移動する。そのため、酸素透過膜10に対して外部から電圧を印加することなく、酸素の透過を行なわせることができる。なお、酸素透過膜10における電子伝導性は、電子伝導とホール伝導の双方であってもよく、いずれか一方であっても良い。本明細書では、酸素透過膜10や、酸素透過膜10を構成する第一層12、第二層14、あるいは触媒層16について電子伝導性という場合には、電子伝導とホール伝導の双方、あるいは一方である場合を含むものとする。
上記のように改質燃料流路17側へと酸素が輸送されると、酸素透過膜10の改質燃料流路17側では、部分酸化反応によって改質燃料の改質が行なわれる。改質燃料としては、例えば、可燃性流体を用いることができ、種々の気体燃料あるいは液体燃料を用いることができる。気体燃料としては、例えば、メタンや、メタンを主成分とする天然ガスなどの炭化水素系燃料を用いることができる。また、液体燃料としては、例えば、液体炭化水素や、メタノール等のアルコール、あるいはエーテルを用いることができる。改質燃料の部分酸化反応の一例として、メタンの部分酸化反応を、(2)式として以下に示す。
CH4+(1/2)O2 → CO+2H2 …(2)
このように、炭化水素等の改質燃料から水素と一酸化炭素とを生じる改質器20は、例えば、燃料電池に燃料ガスとして供給する水素を得るために用いることができる。あるいは、得られた水素と一酸化炭素を用いてさらに炭化水素転換を行なって、液体炭化水素燃料を製造する、すなわち、GTL(Gas To Liquid)技術のために用いても良い。なお、図1では、改質器20として、平板状の1枚の酸素透過膜10を備える構成を記載しているが、改質器20は、種々の形態とすることができる。
図2は、改質器20の構成の例を模式的に示す説明図である。図2に示す改質器20では、酸素透過膜10は、円筒形状に形成されている。そして、円筒の外側を外気に晒して空気流路18とすると共に、円筒の内部に改質燃料を供給して改質燃料流路17としている。この場合には、円筒の一端に、改質燃料を供給するための流路を接続すると共に、円筒の他端に、改質反応で得られた水素および一酸化炭素を取り出すための流路を接続すればよい。
図3は、改質器20の構成の他の例を模式的に示す説明図である。図3に示す改質器20は、複数の平板状の酸素透過膜10を備え、隣り合う酸素透過膜10間では、同じ面同士が対向しつつ互いに離間するように、各々の酸素透過膜10が配置されている。図3では、酸素透過膜10の触媒層16が形成された面にハッチを付している。これにより、酸素透過膜10間では、改質燃料流路17と空気流路18とが交互に設けられている。
以上のように構成された本実施形態の酸素透過膜10によれば、酸素透過膜10を改質器20に組み込んで用いる際に、酸素透過膜10全体の耐久性を高めつつ、酸素透過膜10の性能低下を抑制することができる。すなわち、本実施形態では、還元膨張率が比較的小さい安定化ジルコニアを含む第一層12を設けると共に、この第一層12を、還元膨張率が比較的大きいセリウム酸化物を含む第二層14よりも改質燃料流路17側に配置している。そのため、酸素透過膜10の使用時に、第二層14内で生じる酸素濃度勾配を抑制し、第二層14で生じる膨張差に起因して第二層14が損傷することを抑制できる。その結果、酸素透過膜10の耐久性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の酸素透過膜10によれば、セリウム酸化物を含む第二層14を、第一層12と触媒層16との間に設けることにより、第一層12を構成する安定化ジルコニアと、触媒層16を構成する化合物と、が反応することを抑制できる。これにより、上記反応によって抵抗値が高い化合物(高抵抗な異種相)が生成すること、および、生成した異種相に起因して酸素透過膜10の性能が低下することを抑制できる。
また、本実施形態の酸素透過膜10によれば、酸素透過膜10の強度および緻密性を高めると共に、酸素透過性能を高めることができる。すなわち、酸素イオン伝導性がより高いセリウム酸化物を含む第二層14と、強度および緻密性がより高い安定化ジルコニアを含む第一層12とを組み合わせることにより、酸素透過膜10全体として、強度および緻密性を確保し、厚型化を抑えつつ、高い酸素透過性能を実現することができる。
C.変形例:
・変形例1:
上記実施形態では、第一層12および第二層14は、電子伝導体として(1)式で表わされる酸化物を用いているが、異なる構成としてもよい。例えば、電子伝導体として貴金属を用いることができる。あるいは、実施形態とは異なる種類の酸化物、例えば、LaMnO3系化合物において、SrをLaサイトに添加したペロブスカイト構造を有するLSM系酸化物などの複合酸化物や、スピネル型結晶構造を有するフェライトを用いることもできる。また、電子伝導性と共に酸素イオン伝導性を有する複合酸化物を用いてもよい。一般に、電子伝導体として酸化物を用いる場合には、貴金属を用いる場合に比べてコスト的に有利である。なお、ペロブスカイト構造を有する酸化物であって、高い電子伝導性を示す酸化物の多くは、ランタン元素あるいはアルカリ土類金属元素を含んでいるが、このような酸化物を電子伝導体として用いると、上記ランタン元素やアルカリ土類金属元素が、安定化ジルコニア中のジルコニウム元素と反応して、抵抗値が高い化合物を生成し得る。このような酸化物の中で、既述した(1)式で表わされる酸化物は、高い電子伝導性を示し、ランタン元素およびアルカリ土類金属元素を含むにもかかわらず、安定化ジルコニア中のジルコニウム元素との反応性が極めて低く、酸素透過膜の性能低下が抑えられるため有利である。
なお、第一層12で用いる電子伝導体と、第二層14で用いる電子伝導体とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。ただし、同じ種類の電子伝導体を用いるならば、異なる種類の電子伝導体同士が反応して抵抗値の高い化合物が生成されることがないため望ましい。
・変形例2:
上記実施形態では、酸素透過膜10は、空気流路18側の表面のみに触媒層16を備えているが、改質燃料流路17側の表面(第一層12上)に、部分酸化反応を進行させるための触媒を含む触媒層を設けてもよい。空気流路18側の表面に配置された触媒層16と第一層12との間に第二層14を設けるならば、実施形態と同様の効果を奏することができる。
・変形例3:
上記実施形態では、第一層12は酸素イオン伝導体として安定化ジルコニアのみを含有し、第二層14は酸素イオン伝導体として希土類元素を固溶したセリウム酸化物のみを含有しており、各々の層の間は明確な境界によって区画されることとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、第一層12と第二層14との間は、明確な境界で区画されるのではなく、酸素イオン伝導体として希土類元素を固溶したセリウム酸化物と安定化ジルコニアとが混合された混合層によって区画されていてもよい。このような場合であっても、少なくとも安定化ジルコニアを含有する層と触媒層16との間が十分に離間していれば、実施形態と同様の効果を奏することができる。
・変形例4:
実施形態の酸素透過膜10は、図1に示すように自立膜としたが、異なる構成としても良い。例えば、多孔質体から成る担体(基材、支持体)の面上に成膜された膜であっても良い。多孔質な担体上に、例えば、PLD法等のPVD法や、ディップ法、溶射、スパッタ法などにより、第一層12、第二層14、および触媒層16を形成すればよい。第一層12と触媒層16のいずれを担体側に設けても良いが、第一層12側に改質燃料流路17を設け、触媒層16側に空気流路18を設けることで、実施形態と同様の効果を得ることができる。
・変形例5:
実施形態の酸素透過膜10を備える改質器20では、触媒層16側の流路に空気を供給したが、異なる構成としても良い。酸素透過膜10は、酸素を特異的に透過させる膜であるため、空気以外の種々の酸素含有ガスを用いることができる。
・変形例6:
上記実施形態では、酸素透過膜10を、部分酸化反応を進行する改質器20に組み込んで用いている。これに対して、酸素透過膜10を、改質器以外の装置に組み込むこととしてもよい。例えば、酸素透過膜10を用いて純酸素製造装置を作製して、酸素透過膜10の触媒層16側に酸素含有ガスを供給し、第一層12側の流路から純度の高い酸素を回収することとしてもよい。このような構成とする場合であっても、実施例と同様に、第一層12を構成するジルコニウム元素と触媒層16を構成する化合物とが反応することを抑えて酸素透過膜の性能低下を抑制する効果、および、酸素透過膜10全体として強度および緻密性を確保し、厚型化を抑えつつ、高い酸素透過性能を実現するという効果が得られる。
なお、実施形態のように酸素透過膜10を改質器20に組み込んで用いる場合には、酸素透過膜10の両面間において、酸素分圧差と共に水素分圧差が大きくなる。そのため、改質器20に組み込まれた酸素透過膜10では、酸素イオンの移動に伴って酸素イオンと逆向きにカチオンが移動し易くなる。その結果、第一層12を構成するジルコニウムイオンが触媒層16側に移動して触媒層16を構成する元素(例えばランタン元素)と反応し易くなる。そのため、酸素透過膜10を改質器20に組み込む場合には、第一層12を構成するジルコニウム元素と触媒層16との反応を抑制する効果を特に顕著に得ることができる。
図4は、サンプルS01〜サンプルS06までの6種類の酸素透過膜を作製し、その性能を調べた結果を表にして示す説明図である。また、図5は、サンプルS01〜サンプルS06の構成を模式的に表わす断面図である。図5に示す各酸素透過膜では、図1に示す酸素透過膜と共通する部分には同じ参照番号を付している。以下に、各サンプルの構成および製造方法と、性能を評価した結果について説明する。
A.各サンプルの作製:
[サンプルS01、S04]
サンプルS01およびサンプルS04は、図5(A)において酸素透過膜10として示すように、触媒層16、第二層14、第一層12、および触媒層19をこの順序で積層した構造を有している。ここで、サンプルS01およびサンプルS04の第一層12は、酸素イオン伝導体としてスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)を含有し、電子伝導体として、La0.8Sr0.2CrO3-zを含有する。また、サンプルS01およびサンプルS04の第二層14は、酸素イオン伝導体として20mol%ガドリアドープセリア(GDC)を含有し、電子伝導体として、La0.8Sr0.2CrO3-zを含有する。また、サンプルS01およびサンプルS04の触媒層19は、触媒として白金(Pt)を含有する。サンプルS01とサンプルS04とは、触媒層16の構成のみが異なっており、サンプルS01の触媒層16は触媒としてLa0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23-z(LSFC)を備えており、サンプルS04の触媒層16は触媒としてLa0.8Sr0.2MnO3-z(LSM)を備えている。
以下に、サンプルS01およびサンプルS04の、第一層12の作製方法について説明する。ScSZとしては、スカンジウム(Sc)およびセリウム(Ce)を含有するスカンジア安定化ジルコニア(第一稀元素化学工業製、10Sc1CeSZ)の粉末を用いた。La0.8Sr0.2CrO3-zは、以下のように固相反応法により作製した。原料粉末としては、酸化ランタン(La23、和光純薬工業製、純度99.9%)、炭酸ストロンチウム(SrCO3、高純度化学研究所製、純度99.9%)、および酸化クロム(Cr23、高純度化学研究所製、純度99.99%)の粉末を用いた。これら原料粉末を、金属元素の割合が、既述した組成式の組成比になるように秤量した。そして、ZrO2ボールと樹脂ポットを用いて、エタノールと共に、これらの原料粉末について湿式混合粉砕を15時間行なった。その後、湯煎乾燥してエタノールを除去し、得られた混合粉末を15℃/minの昇温速度で1500℃まで昇温させ、1500℃にて24時間仮焼成して、仮焼粉末であるLa0.8Sr0.2CrO3-zの粉末を得た。
さらに、この仮焼粉末に分散剤とバインダを加え、エタノールを用いて既述した条件と同様の条件で湿式混合粉砕を行ない、乾燥させて、仮焼粉末を含む粉末を得た。その後、ScSZとLa0.8Sr0.2CrO3-zとの混合物におけるLa0.8Sr0.2CrO3-zの混合割合が30vol%となるように、上記仮焼粉末を含む粉末をScSZに混合し、ScSZとLa0.8Sr0.2CrO3-zの混合粉末を得た。この混合粉末を用いて、油圧プレスにて50MPaの圧力を加えて成形し、1500℃にて24時間焼成し、ScSZとLa0.8Sr0.2CrO3-zの混合体のペレットを得た。なお、上記した混合粉末を得る際には、仮焼粉末において100%の効率でLa0.8Sr0.2CrO3-zが形成されているものとして、仮焼粉末を含む粉末の混合量を設定した。得られた上記ペレットの表面をSiC研磨紙で研磨して厚みを0.3mmとしたものを、第一層12として用いた。なお、得られた第一層12について、X線回折法により表面の構造を調べた。その結果、ScSZおよびLa0.8Sr0.2CrO3-zに由来するピークが得られ、これらとは異なる高抵抗な異相(例えばLa2Zr27)に由来するピークは認められなかった(データ示さず)。
以下に、サンプルS01およびサンプルS04の、第二層14の作製方法について説明する。第二層14は、酸素イオン伝導体としてScSZに代えてGDCを用い、電子伝導体として第一層12と同様に作製したLa0.8Sr0.2CrO3-zの粉末を用い、第一層12と同様の条件で作製した。これにより、表面を研磨した厚みが0.3mmの第二層14を得た。なお、GDCとしては、20mol%ガドリアドープセリア(信越化学工業株式会社製)の粉末を用いた。
上記のように得られた第一層12および第二層14は、ペーストを用いて貼り合わせた。用いたペーストは、第一層12を作製したものと同じ混合粉末(ScSZとLa0.8Sr0.2CrO3-zの混合粉末)に、溶剤(ブチルジグリコールとエチルセルロースの混合物)を加えて作製した。このペーストを、第一層12上に0.1mmの厚みで塗布し、塗布層を介して第一層12と第二層14とを貼り合わせて、第一層12および第二層14から成る積層体を得た。その後、この積層体を1200℃にて24時間焼成し、さらに、第一層12側を研磨して、全体の厚みを0.6mmとした。これにより、第一層12の厚みが0.3mmで、第二層14の厚みが0.3mmである積層体(酸素透過層15)を得た(図5(A)参照)。
サンプルS01の触媒層16を構成するLa0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23-z(LSFC)は、既述した電子伝導体であるLa0.8Sr0.2CrO3-zと同様にして固相反応法により作製した。すなわち、原料粉末として、酸化ランタン(La23、和光純薬工業製、純度99.9%)および炭酸ストロンチウム(SrCO3、高純度化学研究所製、純度99.9%)に加えて、酸化コバルト(CoO、高純度化学研究所製、純度99.9%)および酸化鉄(Fe23、高純度化学研究所製、純度99.9%)を用いたこと以外は、既述したLa0.8Sr0.2CrO3-zと同様の条件で作製した。
サンプルS04の触媒層16を構成するLa0.8Sr0.2MnO3-z(LSM)も、既述した電子伝導体であるLa0.8Sr0.2CrO3-zと同様にして固相反応法により作製した。すなわち、原料粉末として、酸化ランタン(La23、和光純薬工業製、純度99.9%)および炭酸ストロンチウム(SrCO3、高純度化学研究所製、純度99.9%)に加えて、酸化マンガン(Mn23、高純度化学研究所製、純度99.9%)を用いたこと以外は、既述したLa0.8Sr0.2CrO3-zと同様の条件で作製した。
サンプルS01を作製する際には、LSFCの仮焼粉末に溶剤(ブチルジグリコールとエチルセルロースの混合物)を加えてペースト化し、このペーストを、既述した酸素透過層15の第二層14側の面上に塗布した。また、Pt粉末に溶剤(ブチルジグリコールとエチルセルロースの混合物)を加えてペースト化し、このペーストを、既述した酸素透過層15の第一層12側の面上に塗布した。その後、1200℃にて1時間焼成し、サンプルS01の酸素透過膜10を得た。
サンプルS04を作製する際には、LSMの仮焼粉末に溶剤(ブチルジグリコールとエチルセルロースの混合物)を加えてペースト化し、このペーストを、既述した酸素透過層15の第二層14側の面上に塗布した。また、Pt粉末に溶剤(ブチルジグリコールとエチルセルロースの混合物)を加えてペースト化し、このペーストを、既述した酸素透過層15の第一層12側の面上に塗布した。その後、1200℃にて1時間焼成し、サンプルS04の酸素透過膜10を得た。なお、サンプルS01およびS04において、触媒層16,19を設けるために塗布したペーストの厚みは、いずれも200μmとした。
[サンプルS02、S05]
サンプルS02およびサンプルS05は、図5(B)において酸素透過膜110として示すように、触媒層16、酸素透過層112、および触媒層19をこの順序で積層することによって構成されている。ここで、サンプルS02およびサンプルS05の酸素透過層112は、サンプルS01およびサンプルS04の酸素透過膜10が備える第一層12と同じ組成を有している。すなわち、サンプルS02およびサンプルS05の酸素透過層112は、酸素イオン伝導体としてScSZのみを含有している。また、サンプルS02,S05の触媒層16および触媒層19は、それぞれ、サンプルS01,S04の触媒層16および触媒層19と同じ組成を有している。サンプルS02およびサンプルS05の酸素透過層112は、サンプルS01,S04の第一層12と同様にして作製し、研磨後の厚みを0.6mmとした。
サンプルS02は、サンプルS01と同様の条件で、上記酸素透過層112の一方の面上にLSFCから成る触媒層16を形成し、他方の面上にPtから成る触媒層19を形成することにより作製した。また、サンプルS05は、サンプルS04と同様の条件で、上記酸素透過層112の一方の面上にLSMから成る触媒層16を形成し、他方の面上にPtから成る触媒層19を形成することにより作製した。
[サンプルS03、S06]
サンプルS03およびサンプルS06は、図5(C)において酸素透過膜210として示すように、触媒層16、酸素透過層214、および触媒層19をこの順序で積層することによって構成されている。ここで、サンプルS03およびサンプルS06の酸素透過層214は、サンプルS01およびサンプルS04の酸素透過膜10が備える第二層14と同じ組成を有している。すなわち、サンプルS03およびサンプルS06の酸素透過層214は、酸素イオン伝導体としてGDCのみを含有している。また、サンプルS03,S06の触媒層16および触媒層19は、それぞれ、サンプルS01,S04の触媒層16および触媒層19と同じ組成を有している。サンプルS03およびサンプルS06の酸素透過層214は、サンプルS01,S04の第二層14と同様にして作製し、研磨後の厚みを0.6mmとした。
サンプルS03は、サンプルS01と同様の条件で、上記酸素透過層214の一方の面上にLSFCから成る触媒層16を形成し、他方の面上にPtから成る触媒層19を形成することにより作製した。また、サンプルS06は、サンプルS04と同様の条件で、上記酸素透過層214の一方の面上にLSMから成る触媒層16を形成し、他方の面上にPtから成る触媒層19を形成することにより作製した。
B.酸素透過特性の測定:
図6は、各酸素透過膜の酸素透過特性を測定するための装置の一例として、測定装置30の概略構成を表わす説明図である。測定装置30は、2本の透明石英管31,32と、アルミナチューブ33,34と、電気炉35と、熱電対36と、を備える。2本の透明石英管31,32は、上下に配置され、その間に各サンプルを挟んで測定を行なう。透明石英管31とサンプルとを接合する際には、サンプル上に内径10mmの金の薄膜リングを載置し、その上に透明石英管31を押し付けて、1050℃に昇温して金を軟化させ、ガスシール性を確保した。透明石英管31,32の内側には、アルミナチューブ33,34を配置した。酸素透過特性の測定の際には、アルミナチューブ33には5%メタン含有ガス(バランスガスはアルゴンガス)を流し、アルミナチューブ34には空気を流した。すなわち、酸素透過膜の各々の面に対して、改質器における使用条件に対応するガスを供給した。透明石英管31,32は、電気炉35内に配置されており、透明石英管31,32に挟まれたサンプルは、電気炉35内の均熱部分に配置した。また、アルミナチューブ34内には、サンプル温度を測定するために、サンプルの近傍に達するように熱電対36を配置した。酸素透過特性の測定の際には、サンプル温度が1000℃に維持されるように電気炉35による加熱を行なった。各サンプルは、触媒層19側に5%メタン含有ガスが供給されるように、測定装置30内に配置した。
測定装置30において、空気側(透明石英管32側)から5%メタン含有ガス側(透明石英管31側)へとサンプル内を酸素が透過すると、5%メタン含有ガス側では、既述したように、主として(2)式に示すメタンの部分酸化反応が進行する。また、5%メタン含有ガス側ではさらに、透過した酸素を利用して(3)式に示すメタンの完全酸化反応も進行する。
CH4+(1/2)O2 → CO+2H2 …(2)
CH4+ 2O2 → CO2+2H2O …(3)
これらの反応が進行することにより、5%メタン含有ガス側では水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および水(水蒸気)が生じる。このように、測定装置30の透明石英管31から排出される排出ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、および水蒸気中の酸素原子は、全て、酸素透過膜を透過した酸素由来であると考えられる。そのため、上記排出ガス中の水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および水蒸気の濃度を質量分析計(ファイファーバキューム社製、Qmass−オムニスター)を用いて測定し、測定した各濃度に基づいて、酸素透過膜を透過した酸素量を算出した。そして、このようにして算出した透過酸素量と、サンプルの透過面積とに基づいて、酸素透過速度を算出した。このとき、アルミナチューブ33を介して供給する5%メタン含有ガス量と、アルミナチューブ34を介して供給する空気量は、マスフロコントローラを用いて、300mL/minとした。それぞれのサンプルについて、酸素透過開始時の酸素透過速度(初期)と、酸素透過開始後100時間経過時の酸素透過速度(100h透過時)の値を求めた。
図4に示すように、第一層12および第二層14から成る酸素透過層15を備えるサンプルS01およびサンプルS04は、触媒酸化物がLSFCであるかLSMであるかに関わらず、酸素透過速度は、初期値と100時間透過時とでほとんど差が無かった。以上のように、第一層12および第二層14から成る酸素透過層15を設けることで、酸素透過能の経時変化を抑制して、安定して高い酸素透過性能を維持可能となることが確かめられた。
これに対して、触媒層16,19の間に安定化ジルコニアを有する酸素透過層112のみを備えるサンプルS02,S05では、LSFCとLSMのいずれの酸化物を触媒層16として用いる場合であっても、100時間経過時の酸素透過速度は、初期値に比べて大きく低下した。なお、サンプルS02とサンプルS05とを比較すると、触媒層酸化物としてLSMを用いたサンプルS05の方が、LSFCを用いたサンプルS02よりも、酸素透過速度の初期値および100時間透過時の値が大きく、酸素透過速度の低下の程度が小さかった。これは、LSMの方がLSFCよりも安定化ジルコニア(ジルコニウム元素)との反応性が低いために、高抵抗な化合物の生成が比較的少なかったためと考えられる。
また、触媒層16,19の間にGDCを有する酸素透過層214のみを備えるサンプルS03,S06では、LSFCとLSMのいずれの酸化物を触媒酸化物として用いる場合であっても、酸素透過速度の初期値は、酸素透過層15を備えるサンプルS01,S04における酸素透過速度の初期値よりも大きかった。これは、GDCは安定化ジルコニアよりも酸素イオン伝導性が高いため、触媒層16,19の間の主層をGDCのみを用いて形成することによって、酸素透過速度の初期値がより高くなったと考えられる。ただし、サンプルS03,S06では、酸素透過速度の測定を開始してしばらくしてサンプルの割れが発生したため、100時間透過時の酸素透過速度を測定することができなかった。これは、酸素イオン伝導体としてGDCのみを有する酸素透過層214において、触媒層16側の面と触媒層19側の面との間で酸素分圧差が極めて大きくなり、また、触媒層19側が強い還元雰囲気に晒されることにより、触媒層16近傍の部分と触媒層19近傍の部分との間で膨張差が大きくなったためと考えられる。
C.酸素イオン伝導体と電子伝導体の反応性について:
各サンプルについて、酸素透過膜としての使用の前後での、酸素透過層15あるいは酸素透過層112,214の表面の結晶構造の変化を調べた。具体的には、酸素透過膜としての使用前(初期)の結晶構造としては、各々のサンプルを既述したように作製した後に、一旦形成した触媒層16を研磨により除去して、除去により露出した上記各層の表面の結晶構造を、X線回折法により調べた。また、酸素透過膜としての使用後の結晶構造は、図6に示すように酸素透過を行なわせて100時間経過時に酸素透過速度を測定した後に、各サンプルを測定装置30から取り出して触媒層16を研磨により除去し、除去により露出した各層の表面の結晶構造をX線回折法により調べた。
図7は、サンプルS01について、使用前後のX線回折パターンを比較した結果を示す説明図である。図7に示すように、第一層12および第二層14を備えるサンプルS01では、使用前だけでなく、酸素透過を開始して100時間経過後であっても、酸素透過層15の表面(第二層14の表面)において、酸素イオン伝導体であるGDCと電子伝導体であるLSCの結晶構造が維持されており、異種相が形成されていないことが確認された。触媒酸化物がサンプルS01とは異なるサンプルS04においても、同様に、酸素イオン伝導体であるGDCと電子伝導体であるLSCの結晶構造が維持されており、異種相が形成されていないことが確認された(データ示さず)。
図8は、サンプルS02について、使用前後のX線回折パターンを比較した結果を示す説明図である。図9は、サンプルS05について、使用前後のX線回折パターンを比較した結果を示す説明図である。サンプルS02およびサンプルS05では、使用前には、酸素透過層112の表面において、酸素イオン伝導体であるScSZと電子伝導体であるLSCの結晶構造が維持されており、異種相が形成されていないことが確認された。すなわち、製造のための焼成によっては、異種相が形成されていないことが確認された。しかしながら、酸素透過を開始して100時間経過後には、酸素透過層112の表面において、ScSzとLSCのピークの他に、La2Zr27のピークが観察された。これは、酸素透過層112を構成する安定化ジルコニアと、触媒層16を構成する触媒酸化物とが反応して、異種相であるLa2Zr27が生成したためと考えられる。このように高抵抗なLa2Zr27が生成したことにより、サンプルS02およびサンプルS05では、100時間経過後の酸素透過速度が低下したと考えられる。なお、図8および図9から分かるように、サンプルS02とサンプルS05とを比較すると、サンプルS05の方が異種相であるLa2Zr27のピークが小さかった。すなわち、触媒酸化物としてLSMを用いる方がLSFCを用いる場合に比べて、安定化ジルコニアと触媒酸化物とが反応して異種相を生じる程度が小さいことが確認された。
なお、酸素透過膜としての使用の途中で割れてしまったサンプルS03,S04についても、同様に、使用前の酸素透過層214の表面の結晶構造と、割れた後に触媒層16を除去した酸素透過層214の表面の結晶構造を、X線回折法により調べた。その結果、サンプルS01,S04と同様に、使用前だけでなく、酸素透過膜が割れるまで使用した後であっても、酸素透過層214の表面において、酸素イオン伝導体であるGDCと電子伝導体であるLSCの結晶構造が維持されており、異種相が形成されていないことが確認された(データ示さず)。
このように、X線回折法の結果、異種相の形成が確認されたサンプルについては、図4において、「高抵抗相の生成」を「有り」とした。なお、実質的に異種相が生成しているか否かを判断する際には、X線回折パターンにおいて、酸素イオン伝導体に由来するX線回折ピークの積分強度と、電子伝導体に由来するX線回折ピークの積分強度と、異種相に由来するX線回折ピークの積分強度とを求めた。そして上記3種のX線回折ピークの積分強度の合計に対する、異種相に由来するX線回折ピークの積分強度の割合を求め、当該割合が2%以下であれば、実質的に異種相が生成していないと判断した。
また、図4では、初期値に比べた100時間透過時の酸素透過速度の低下の程度が、初期値の5%以下であって、100時間使用した後にX線回折法により異種相の形成が確認されなかったサンプルの判定を「○」とし、上記条件を満たさないサンプルの判定を「×」とした。サンプルS01,S04として結果を示すように、酸素イオン伝導体として安定化ジルコニアを有する第一層12と、酸素イオン伝導体としてセリウム酸化物を有する第二層14と、触媒層16とをこの順序で設けることにより、酸素透過膜の性能低下を抑え、耐久性を高めることができることが確認された。
D.電子伝導体の評価
図10は、酸素透過膜10が備える第一層12を構成する酸素イオン伝導体(安定化ジルコニア)と電子伝導体との反応性を調べた結果を示す説明図である。ここで、サンプルS11〜サンプルS13、サンプルS15、およびサンプルS16は、酸素イオン伝導体としてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有しており、サンプルS14は、酸素イオン伝導体としてスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)を含有している。また、サンプルS11〜S14は、電子伝導体としてLa1-xSrxCrO3-z(サンプルS11ではx=0.1であり、サンプルS12およびS14ではX=0.2であり、サンプルS13ではx=0.3である)を含有している。また、サンプルS15は電子伝導体としてLa0.8Sr0.2CoO3-zを含有しており、サンプルS16は電子伝導体としてLa0.8Sr0.2MnO3-zを含有している。
これらのサンプルS11〜サンプルS16は、既述したサンプルS01の第一層12と同様の条件で作製した。すなわち、電子伝導体を固相反応法により製造する際には、原料粉末の混合粉末の仮焼成を、1500℃にて24時間行ない、仮焼粉末を得た。そして、仮焼粉末の割合が30vol%となるように仮焼粉末と安定化ジルコニア粉末とを混合して成形し、1500℃にて24時間焼成してペレットを得た。したがって、サンプルS14は、サンプルS01およびS04の第一層12と同じ組成を有している。なお、YSZとしては、東ソー株式会社製のTZ−8Y粉末を用いた。上記したペレットの表面を研磨して各サンプルと成し、X線回折法により表面の構造を調べた。
図11は、サンプルS12についてのX線回折パターンを示す説明図であり、図12は、サンプルS15についてのX線回折パターンを示す説明図であり、図13は、サンプルS16についてのX線回折パターンを示す説明図である。図示しないサンプルについても同様にX線回折パターンを得て、各サンプルについて図4と同様にして高抵抗相(異種相)の生成に係る評価を行なった結果を、図10に示した。
図10に示すように、安定化ジルコニアとしてYSZとScSZのいずれを用いた場合にも、電子伝導体としてLa1-xSrxCrO3-zを用いるならば、高抵抗相は生成されなかった。これに対して、電子伝導体としてLa0.8Sr0.2CoO3-zを用いたサンプルS15では、高抵抗相としてSrZeO3およびLa2Zr27が生成され、電子伝導体としてLa0.8Sr0.2MnO3-zを用いたサンプルS16では、高抵抗相としてSrZrO3が生成された。
なお、電子伝導体であるLa1-xSrxCrO3-zが、第二層14に含まれる酸素イオン伝導体であるセリウム酸化物とも反応し難いことは、既述した図4および図7に示す結果から明らかである。以上のように、電子伝導体であるLa1-xSrxCrO3-zは、酸素イオン伝導体との反応性が低いため、このような電子伝導体を、第一層12および第二層14が含有する電子伝導体として用いると、高抵抗相の生成が抑制されて高い酸素透過性能を示す酸素透過膜が得られることが確認された。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10,110,210…酸素透過膜
12…第一層
14…第二層
15,112,214…酸素透過層
16…触媒層
17…改質燃料流路
18…空気流路
19…触媒層
20…改質器
30…測定装置
31…透明石英管
33…アルミナチューブ
34…アルミナチューブ
35…電気炉
36…熱電対

Claims (6)

  1. 酸素分圧差を駆動力として、高酸素分圧側から低酸素分圧側へと酸素を透過する酸素透過膜において、
    酸素イオン伝導体である安定化ジルコニアと電子伝導体との混合物によって形成される第一層と、
    希土類元素を固溶した酸素イオン伝導性を有するセリウム酸化物と電子伝導体との混合物によって形成され、前記第一層の一方の面上に積層される第二層と、
    前記第二層における前記第一層が形成される面とは異なる面上に設けられ、以下の組成式
    La1-xSrxFe1-yCoy3-z(0<x≦0.4、0≦y≦0.4、zは任意)、
    および、
    La1-xSrxMnO3-z(0<x≦0.4、zは任意)で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物を含む触媒層と、
    を備え、
    前記触媒層が前記高酸素分圧側となり、前記第一層が前記低酸素分圧側となるように配置して用いられることを特徴とする
    酸素透過膜。
  2. 請求項1に記載の酸素透過膜であって、
    前記第一層および前記第二層が含有する前記電子伝導体は、組成式La1-xxCrO3-z(元素Mは、マグネシウム(Mg)を除くアルカリ土類金属から選択される元素、0≦x≦0.3、zは任意)で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする
    酸素透過膜。
  3. 請求項2に記載の酸素透過膜であって、
    前記第一層および前記第二層が含有する前記電子伝導体は、組成式La1-xSrxCrO3-z(0≦x≦0.3、zは任意)で表わされる化合物から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする
    酸素透過膜。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の酸素透過膜であって、
    前記安定化ジルコニアは、スカンジア安定化ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、およびカルシア安定化ジルコニアから選択される1種以上の化合物であることを特徴とする
    酸素透過膜。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸素透過膜であって、
    前記希土類元素を固溶したセリウム酸化物が、ガドリニウム固溶セリア(GDC)およびサマリウム固溶セリア(SDC)から選択される1種以上の酸化物であることを特徴とする
    酸素透過膜。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の酸素透過膜を備え、部分酸化反応によって改質燃料から水素を生成する改質器であって、
    前記酸素透過膜の前記触媒層側に供給するための酸素含有ガスが流れる酸素含有ガス流路と、
    前記酸素透過膜の前記第一層側に供給するための前記改質燃料が流れる改質燃料供給路と、
    を備え、前記酸素透過膜を透過した前記酸素含有ガス中の酸素を用いて前記部分酸化反応を進行する改質器。
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