JP2015050072A - 固体電解質セラミックス材料 - Google Patents
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Abstract
Description
前記セラミックス材料が、Li、La、Zr及びOである主要構成元素と、少なくともBiを含む置換元素とを含んでなるガーネット型又はガーネット型類似の結晶単相から実質的になる酸化物焼結体からなる、セラミックス材料が提供される。
本発明の方法により製造されるセラミックス材料は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質セラミックス材料である。このセラミックス材料は、Li、La、Zr及びOである主要構成元素と、少なくともBiを含む置換元素とを含んでなるガーネット型又はガーネット型類似の結晶単相から実質的になる酸化物焼結体からなる。置換元素はTa及び/又はNbを更に含むのが好ましい。典型的には、この結晶構造は、少なくともLi、La、Zr及びOで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造(以下、LLZ結晶構造という)において、Zrのサイトの一部がBi及び所望によりTa又はNbを含む置換元素で置換されたものである。このような置換により、LLZ結晶構造におけるZrのサイトが複数の所定の元素で構成されることになる。本発明者らの今般の知見によれば、Zrのサイトが複数の所定の元素で構成されることで、イオン伝導率を向上させることができる。置換元素によるZrの一部置換量は、Zrサイトを構成する元素の総モル数に対して、5〜30mol%であるのが好ましく、より好ましくは20〜30mol%であり、更に好ましくは21〜27mol%である。このような本発明のセラミックス材料はガーネット型又はガーネット型類似のLLZ系固体電解質セラミックス材料であるということができるが、Li、La、Zr、Bi、Ta、Nb及びO以外の他の元素(例えばAl)を結晶格子又はそれ以外の部分(例えば粒界)に含むものであってよい。なお、所望により存在しうるTa及びNbは、同じ5価の元素としてZrサイトに置換するが、イオン半径が同等であるため、結晶構造の変化、ひいてはイオン伝導率の変化において同等の効果をもたらす。したがって、Bi及びTaの組合せ、Bi及びNbの組合せ、あるいはBi、Ta及びNbの組合せのいずれでZrサイトを置換しても同等の効果を奏する。
Li7−x−yLa3(Zr2−x−y,Mx,Biy)O12−δ
(式中、0≦x<0.60、0.03≦y≦0.60、0.10≦x+y≦0.60であり、MはTa又はNbを含み、δは酸素欠損量を示すが0でありうる)
で表される組成を含むのが好ましく、より好ましくは0<x<0.60、0.04≦y≦0.60、0.20≦x+y≦0.60であり、更に好ましくは0.05≦x<0.55、0.04≦y≦0.55、0.30≦x+y≦0.55であり、最も好ましくは0.05≦x<0.40、0.15≦y≦0.55、0.35≦x+y≦0.55である。このような範囲であるとイオン伝導率が特に向上する。なお、最新の装置を用いても酸素欠損量(δ)を定量分析できない実情に照らして、上記一般式は慣習上Li7−x−yLa3(Zr2−x−y,Mx,Biy)O12と略記されてもよいものである。いずれにせよ0≦δ<1であれば問題無いものと考えられる。また、上記一般式は主要構成元素及び置換元素の組成比を規定するものであって、それ以外の他の元素(例えばAlやMg)の結晶格子又はそれ以外の部分(例えば粒界)での含有の可能性を何ら排除するものではない。
上述したような本発明による固体電解質セラミックス材料は、次のような手順で製造することができる。まず、ガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な配合比でLi、La及びZrである主要構成元素と、Bi及び所望によりTa又はNbを含む置換元素と含む原料粉末を用意する。次いで、原料粉末を一段階又は多段階で焼成して、置換元素で部分置換された主要構成元素で構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体をセラミックス材料として合成する。原料粉末を用意する工程及び/又は合成工程において所望により添加元素としてAl及び/又はMgを添加してもよい。本発明の好ましい態様によれば、焼成が一段階で行われる場合にはその一段階の焼成が酸化雰囲気中で行われ、焼成が多段階で行われる場合にはその最終段階の焼成が酸化雰囲気中で行われる。以下、これらの工程について具体的に説明する。
まず、ガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な配合比で主要構成元素Li,La及びZr、置換元素Bi及び所望によりTa及び/又はNb、並びに所望により添加元素としてのAl及び/又はMgを含む原料粉末、すなわち焼成用原料の粉砕粉を用意する。これらの構成金属元素は、Li成分、La成分、Zr成分、Bi成分、所望によりTa成分及び/又はNb成分、並びに所望によりAl成分及び/又はMg成分として焼成用原料に含有されていればよい。本発明のセラミックス材料はOを含有するが、Oはこれらの構成金属元素の化合物中に構成元素として含まれるものであってよい。これらの各種原料成分は、それぞれの金属元素を含む金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩等の各種金属塩等の任意の形態であることができ、特に限定されない。例えば、Li成分としてはLi2CO3又はLiOHを用い、La成分としてはLa(OH)3又はLa2O3を用い、Zr成分としてはZrO2を用い、Bi成分としてはBi2O3を用い、Ta成分としてはTa2O5を用い、Nb成分としてはNb2O5を用いることができる。
原料粉末は一段階又は多段階で焼成されて、少なくともLi、La、Zr、Bi及びOで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体がセラミックス材料として合成される。そして、この合成工程においてAl及び/又はMgが添加されてもよい。
焼成用原料調製のための各原料成分として、水酸化リチウム(関東化学株式会社)、水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)、酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)、酸化タンタル、酸化ニオブ及び酸化ビスマスを用意した。これらの粉末を表1に示される組成となるように秤量及び配合し、さらに、γ−Al2O3をガーネット組成式に対するAlのモル比率で0.1(試料1〜9、11〜15及び17〜21)、0.05(試料10、16、22及び23)又は0.025(試料24)となる量添加して、ライカイ機にて混合して焼成用原料を得た。なお、表1に示される組成は仕込み組成であって、焼成時にLiが損失することを考慮して狙いの組成よりも多めに含有させている。従って、仕込み組成はガーネット型結晶構造の電荷補償を満たしていない組成ではあるが、Liの損失及び/又は酸素欠損が生じることで焼成後には電荷補償を満たした組成になるものと解される。なお、Li以外の元素については焼成時における損失は実質的に無く、表1に示される組成比で焼成後も基本的に保持される。
X線回折装置(Bruker AXS社製、D8 ADVANCE)により試料1〜22の合成粉末に対してX線回折測定を行った。その結果、CSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(Li7La3Zr2O12、空間群:Ia−3d(230))類似の立方晶ガーネット単相のプロファイルが観察され、それ以外の異相は観察されなかった。このことから、試料1〜24の全てが立方晶ガーネット単相のみからなり、それ以外の異相を含まないことが確認された。試料5のX線回折プロファイルを図1に示す。図1においてO2と表示されるX線回折プロファイルが試料5に対応しており、異相ピークは観察されなかった。すなわち、試料5は、図中▽印で示されるCSD‐No.422259から同定されるとおり、LLZ系結晶の単相からなることが判明した。また、得られたX線回折プロファイルに基づいて解析ソフト(製品名:TOPAS)を用いてWPPD法にて各試料の格子定数を算出したところ、表1に示される値が得られた。
試料の両面にAuスパッタで電極を形成した後、Ar雰囲気のグローブボックス内に導入し、CR2032コインセルに組み込んだ。本コインセルを大気中に取り出し、ソーラトロン社製電気化学測定システム(ポテンショ/ガルバノスタッド,周波数応答アナライザ)を用い、周波数0.1Hz〜1MHz、電圧10mVにて交流インピーダンス測定を行い、リチウムイオン伝導率を算出した。その結果、各試料のリチウムイオン伝導率は表1に示されるとおりであった。本発明による試料1〜24はいずれも高い伝導率を示した。
試料1〜24の重量を測定した後、マイクロメーターを用いて試料1〜24の各辺の長さ若しくは直径及び厚さを数箇所測定して平均値を算出した後、試料1〜24の体積を算出し、密度を算出した。その結果、各試料の密度は表1に示されるとおりであった。試料1〜24はいずれも高い焼結体密度を示した。
酸素雰囲気の代わりにAr雰囲気を用いて第二の焼成工程を行ったこと以外は試料5と同様にして、酸化物焼結体試料25の作製及び評価を行った。なお、Ar雰囲気を用いる場合、事前に容量約3Lの炉内を真空引きした後、純度99.99%以上のArガスを電気炉に1L/分で流した。その結果は表2に示されるとおりであり、試料25では試料5(酸素雰囲気)よりも低いリチウムイオン伝導率しか得られなかった。試料25のX線回折プロファイルを図1に示す。図1においてArと表示されるX線回折プロファイルが試料25に対応しており、図中矢印で表示されるように、異相であるLa2Li0.5Al0.5O4に起因するピークが明確に観察された。すなわち、試料25は立方晶ガーネットの他に異相を含むことが確認された。この異相にBiが入っているか否かは不明ではあるが、Biは3価となってZrサイトに置換しないため、ZrサイトがLiサイト及びLaサイトに対して不足する、すなわちLi及びLaが過剰となることで、それらから構成される異相が生成したのではないかと考えられる。いずれにせよ、異相を含む試料25との比較により、異相を含まない結晶単相である試料5においてはリチウムイオン伝導率が顕著に向上したことが分かる。
Claims (12)
- リチウムイオン伝導性を有する固体電解質セラミックス材料であって、
前記セラミックス材料が、Li、La、Zr及びOである主要構成元素と、少なくともBiを含む置換元素とを含んでなるガーネット型又はガーネット型類似の結晶単相から実質的になる酸化物焼結体からなる、セラミックス材料。 - 前記置換元素がTa及び/又はNbを更に含む、請求項1に記載のセラミックス材料。
- 前記置換元素が、前記結晶構造のZrを一部置換してなる、請求項1又は2に記載のセラミックス材料。
- 前記酸化物焼結体が、Alを添加元素として含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックス材料。
- 前記酸化物焼結体におけるAl/Laのモル比が、0.008以上0.12以下である、請求項4に記載のセラミックス材料。
- 前記酸化物焼結体が、Mgを添加元素として更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックス材料。
- 前記結晶構造が、一般式:
Li7−x−yLa3(Zr2−x−y,Mx,Biy)O12−δ
(式中、0≦x<0.60、0.03≦y≦0.60、0.10≦x+y≦0.60であり、MはTa及び/又はNbを含み、δは酸素欠損量を示すが0でありうる)
で表される組成を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 - 0.70mS/cm以上の伝導率を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセラミックス材料。
- 12.952Å以上の格子定数を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセラミックス材料。
- リチウム電池用の固体電解質として用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセラミックス材料。
- 正極と、負極と、前記正極及び負極の間に設けられる請求項1〜10のいずれか一項に記載のセラミックス材料からなる固体電解質とを備えた、リチウム電池。
- 前記負極が、リチウム金属又はリチウム合金からなる、請求項11に記載のリチウム電池。
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