JP2015043808A - 布製面ファスナーおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フック状係合素子またはループ状係合素子を有する面ファスナーにおいて、係合素子が地経糸方向に存在しない領域を規則的な間隔で有し、かつ風合いが柔らかい布製面ファスナーを提供する。
【解決手段】基布およびその表面に存在する係合素子係合素子からなる面ファスナーにおいて、該基布を構成している地経糸、地緯糸、係合素子用糸が、いずれもポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルから形成されている糸であり、かつ該地緯糸が芯鞘型の熱融着性ポリエステル系繊維を含み、さらに係合素子用糸が該熱融着性繊維により基布に固定されている布製面ファスナーであって、さらに基布上に係合素子が存在している領域(I)と係合素子が存在しない領域(II)を地経糸方向に交互に規則的に有する布製面ファスナー。
【選択図】図1

Description

本発明は、基布上に、フック状係合素子またはループ状係合素子が存在している領域[以下、係合素子存在領域(I)と略す]と係合素子が存在しない領域[以下、係合素子非存在領域(II)と称す]が地経糸方向に規則的に交互に存在する布製の面ファスナーおよびその製造方法に関する。
特に本発明は、そのような、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が交互に規則的に存在する布製の面ファスナーであって、基布を構成する繊維の融着により係合素子用の糸が基布に固定されており、従来の面ファスナーのように、基布の裏面に係合素子用の糸を基布に固定するための接着剤層が存在していない、いわゆるバックコート層を有さない布製の面ファスナーおよびその製造方法に関する。
従来から、繊維を織成または編成して得られた基布の片面にフック状の係合素子またはループ状の係合素子を立設した面ファスナーは、布製の面ファスナーとして広く使用されている。そして、これら布製の面ファスナーは、係合素子用の糸が基布内に織り込まれたり、編み込まれたりしており、これらの係合素子用の糸が基布に強固に固定されていない場合には、係合・剥離の繰り返しにより、係合素子が基布から引き抜かれ、係合強力が消失することとなる。
したがって布製の面ファスナーの場合には、係合素子用の糸が基布から引き抜かれないように基布構成糸に強固に固定することが必要である。
従来は、係合素子用の糸が基布から引き抜かれないように、係合素子を有しない面、すなわち面ファスナーの裏面側に、バックコート剤と呼ばれる接着剤層、代表的にはポリウレタン層を塗布して設け、これにより係合素子用の糸を、基布を構成している地経糸や地緯糸に固定している。
また、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が地経糸方向に規則的に交互に存在する布製の面ファスナーは、従来より知られている。
例えば、カーテン類の上端部に係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)を規則的に交互に存在させた面ファスナーを取り付け、カーテンレールに移動可能な状態に取り付けたもう一方の面ファスナーと係合させることによりカーテンをカーテンレールに開閉自在な状態で取り付けることが知られている。また手の不自由な障害者用の衣類として、ボタン代わりにこのような布製の面ファスナーを使用することが知られている。
そして、このような係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が交互に規則的に存在している布製面ファスナーの製造方法も知られており、例えば特許文献1には、特定の装置を用いると、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が交互に規則的に存在する布製面ファスナーが製造できることが記載されている。
しかしながら、このような係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)とを繰り返し設けた布製の面ファスナーの裏面に、係合素子が係合・剥離により引き抜かれるのを防止するために、従来一般的に行われている裏面に接着剤液を塗布する方法を用いると、製造工程中で、係合素子非存在領域(II)の裏面側に塗布した接着剤液が表面側に滲み出し、それが乾燥する前に工程内の設備に付着し、そして設備に付着した接着剤液が係合素子存在領域(I)に再付着して面ファスナーを汚すという問題点を有している。
このことについて、より詳細に説明すると、まず裏面側に接着剤を塗布する場合の問題点として挙げられるのが、接着剤を裏面に塗布すると、係合素子非存在領域(II)の表面に接着剤液が滲み出ることで工程内の設備を汚すことである。通常、布製面ファスナーの係合素子は、モノフィラメントを用いたフック状係合素子、またはマルチフィラメントを用いたループ状係合素子にて構成されるが、係合素子用糸を面ファスナーの基布に強固に固定するためには、係合素子の根元付近まで接着剤にて十分に固定されるのが好ましい。すなわち基布の裏面に塗布された接着剤は、表面にまで滲み出させることで係合素子用糸が基布に強固に固定されることとなる。
また、係合素子用糸を固定する接着剤は、係合素子用糸のみでなく基布を構成する地経糸や地緯糸も固定することで、面ファスナーがさまざまな形状に打抜かれても、その切断面から地経糸や地緯糸がほつれないようにしているため、係合素子非存在領域(II)にも接着剤液を塗布する必要がある。したがって、係合素子非存在領域(II)には、裏面に塗布した接着剤は表面側に滲み出し、表面側にも塗布したのと同じ状態となる。
通常、塗布した接着剤液を乾燥させる工程においては、乾燥装置の内部では塗布面が装置に接触すると、接触した装置に接着剤が削り取られて、十分な性能が得られなくなったり、装置を汚したり、または装置に付着した接着剤が次に走行してきた面ファスナー用織物に再付着して同織物を汚すなどの問題があるため、接着剤面が装置に接触しないよう、乾燥装置内の部品に接触するのは、接着剤液が塗布されていない係合素子面のみにするなどの工夫が行われている。
しかしながら、接着剤液が塗布されていない表面側にも、裏面側に塗布した接着剤液が滲み出して、表面側にも塗布したのと同様となる場合、特に係合素子が存在しない領域が存在している面ファスナーの場合には、表面側も乾燥装置内の設備に接触しないようにする必要があり、したがって、乾燥が完了するまで表面側と裏面側の両面が乾燥装置内の設備と接触しないようにすることが必要となり、極めて困難となる。
そのように両面が乾燥装置の設備に接触しないようにするためには、塗布する接着剤液の量を減らすか、或いは塗布して乾燥する際の布製織物の走行速度を極めて遅くする方法等が考えられるが、いずれの方法も、面ファスナーの品質を損なったり、或いは生産性を大きく低下させたりする方法であることから、工業的には、適した方法とは言えない。
さらに、このような接着剤液を裏面側に塗布する方法の場合には、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)とが交互に存在している関係で、フック状係合素子となるループの一方の脚部のみを切断してフック状係合素子とすることが極めて難しいという問題点も有している。
すなわち、このような接着剤液を裏面側に塗布する方法の場合には、面ファスナー用の織物がループ脚切断工程で蛇行したり、あるいはその前に行う染色工程で寸法変化や歪が生じ、その結果、片脚のみを切断することができずに、両脚を切断したり、あるいは両脚とも切断できず、したがってフック状係合素子が形成されないものが多発することを見出した。
さらに、従来の接着剤層を有する面ファスナーの場合には、各工程を走行する面ファスナーの速度の違いから、織成・熱セット工程、染色工程、接着剤の塗布・乾燥工程、フック形成工程はそれぞれ独立した別個の工程にしなければならず、工程ごとに巻き取る必要があり、この別個工程ごとに巻き取らねばならないことが、より一層、蛇行やループの倒れやループ列の乱れを生じて、ループの一方の脚部のみを切断することを困難としていることを見出した。
さらに、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が規則的に交互に存在する面ファスナーは、上記したようにカーテン類の取り付け具や衣類のボタン代わりとして使用されるものであり、カーテン類のドレープ性を保つために、あるいは衣類の柔軟性を保つために、使用される面ファスナー自体も柔軟性を有するものであることが要求されるが、従来の裏面側にバックコート用の接着剤層を存在させた布製面ファスナーでは、該接着剤層により面ファスナーが硬くなり、上記の用途に適したものとは言えないという問題点も有している。
特開平7−327711号公報(0005段落)
本発明は、このような、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が交互に規則的に存在する面ファスナーにおいて、従来用いられている布製面ファスナー裏面に接着剤液を塗布する方法を用いる場合の問題点、すなわち接着剤液が面ファスナーの他の部分にも付着すること、またフック状係合素子用ループの片脚のみを切断してフック状係合素子を形成することが難しいこと、さらに工程を連続して行うことができないことから生産性の点で劣るとともに片脚切断をより困難なものとしていること、さらに得られる面ファスナーが硬く、柔軟性が求められる用途に使用できないこと等を解消することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、基布およびその表面に存在する係合素子からなる布製面ファスナーにおいて、該基布を構成している地経糸、地緯糸、係合素子用糸が、いずれもポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルから形成されている糸であり、かつ該地緯糸が芯鞘型の熱融着性ポリエステル系繊維を含み、さらに係合素子用糸が該熱融着性繊維により基布に固定されている布製面ファスナーであって、さらに基布上に係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)を地経糸方向に交互に規則的に有する布製面ファスナーである。
さらに、本発明は、地経糸、地緯糸および係合素子用糸からなり、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)を交互に規則的に有する布製面ファスナーを製造する方法において、地経糸、地緯糸および係合素子用糸としてポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルからなる糸を用い、かつ地緯糸として芯鞘型の熱融着性繊維を含む糸を用いて、織物表面に係合素子用糸からなるループを有する織物であって、該ループが存在している領域(i)と該ループが存在していない領域(ii)が地経糸方向に交互に規則的に存在している織物をまず製造したのち、該織物を加熱して、該熱融着性繊維の鞘成分のみを溶融させ、鞘成分と接触する地経糸および係合素子糸を地緯糸で収縮と融着により固定し、そして係合素子がフック状係合素子の場合には該ループの片脚を切断してループ形状をフック形状とすることにより、領域(i)を係合素子存在領域(I)に、領域(ii)を係合素子非存在領域(II)に変換することを特徴とする布製面ファスナーの製造方法である。
なお、本発明において、特に断らない限り、面ファスナーはフック面ファスナーとループ面ファスナーの両者を意味している。
本発明により、裏面に接着剤液を塗布することが不要となり、したがって従来の方法のように、裏面に接着剤液を塗布することにより、係合素子不存在領域(II)では表面側に接着剤液が滲み出し、それにより、装置に接着剤液が付着し、後から走行してくる面ファスナー用織物を汚すという問題を生じることがない。
さらに、本発明では、接着剤液を裏面に塗布して基布を接着剤で固める技術に代えて、面ファスナーの基布を構成する糸として熱融着性繊維を含む糸を用い、この繊維を加熱溶融させ、そして冷却することにより、係合素子用糸を基布に強固に固定しているため、従来の面ファスナーの裏面に接着剤層を塗布して固める方法と比べて、得られる面ファスナーが極めて柔軟である。
しかも、従来の接着剤層を有する面ファスナーの場合には、各工程を走行する面ファスナーの速度の違いから、織成・熱セット工程、染色工程、接着剤の塗布・乾燥工程、フック形成工程はそれぞれ独立した別個の工程にしなければならず、工程ごとに巻き取る必要があったが、本発明の面ファスナーの場合には、接着剤を塗布し乾燥する工程を省略できることで、織成する工程から面ファスナーが出来上がる工程までを、熱セット工程(すなわち熱融着性繊維を収縮かつ融着させて係合素子用糸を基布に固定する工程)あるいはフック形成工程(フック用ループの片脚を切断する工程)の速度を合わせることができ、さらに染色はフック形成工程の後に行うことができることから、フック形成工程まで一連の連続で製造することが可能であり、途中で巻き取る必要がない。
そして、一連の連続工程で製造できることから、蛇行することが少なく、さらに、染色工程をフック形成工程の後に行うことができることから、フック状係合素子用ループの片脚を切断することが、従来の接着剤層を裏面側に設ける方法と比べて、はるかに安定的に行うことができ、片脚のみを確実に切断できることとなる。
本発明の布製面ファスナー、特にフック面ファスナーの一例の斜視図である。
本発明の布製面ファスナーは、図1に示すように、地経糸方向に係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が交互に規則的に存在している。図中、1が布製面ファスナー、2が係合素子存在領域(I)、3が係合素子非存在領域(II)、4が地経糸方向をそれぞれ表す。
本発明において、係合素子を構成する糸は、ポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルからなる繊維から構成される。フック状係合素子を構成する糸は通常モノフィラメント糸であり、ループ状係合素子を構成する糸は通常マルチフィラメント糸であり、本発明でもそのような糸が用いられる。
従来から、フック面ファスナーとループ面ファスナーは同一のメーカーにより製造されており、両者は、通常、フック面ファスナーとループ面ファスナーの組み合わせとしてセットで市販されているが、いずれも、フック状係合素子とループ状係合素子は同一の樹脂からなるものであり、本発明の布製面ファスナーは、フック面ファスナーとループ面ファスナーの両者を意味しているが、それを構成するフック状係合素子とループ状係合素子としてポリアルキレンテレフタレート系のポリエステルが用いられる。
その理由は、フック面ファスナーとループ面ファスナーを取り付ける対象物が通常は同一であることが多いことから、フック面ファスナーとループ面ファスナーは同一の染色性を有していることが求められることが多いことによる。よって、ともにポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルが用いられる。
ポリアルキレンテレフタレート系のポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレート単位またはブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであり、主としてテレフタル酸とエチレングリコール、またはテレフタル酸と1,4―ブタンジオールからの縮合反応により得られるポリエステルであり、若干ならばテレフタル酸やエチレングリコールまたは1,4―ブタンジオール以外の重合単位が付加されていてもよい。
このような重合単位の代表例としては、イソフタル酸、スルホイソフタル酸ソーダ、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸、エチレングリコール(ポリアルキレンテレフタレートがポリブチレンテレフタレートの場合)、プロピレングリコール、ブタンジオール(ポリアルキレンテレフタレートがポリエチレンテレフタレートの場合)等のジオール類、ヒドロキシ安息香酸、乳酸等のオキシカルボン酸、安息香酸で代表されるモノカルボン酸等が挙げられる。更に、上記ポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルには、それ以外のポリマーが少量添加されていても良い。
まずフック面ファスナーは、主としてフック状係合素子用モノフィラメント糸、地経糸および地緯糸からなり、係合相手のループ面ファスナーは、主としてループ状係合素子用マルチフィラメント糸、地経糸および地緯糸から形成される。
これらフック面ファスナーとループ面ファスナーは、ともに地経糸方向に係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が交互に規則的に存在していなければならない。係合素子存在領域(I)の地経糸方向長さとしては、本発明の布製面ファスナーがカーテン取り付け具や衣類のボタン代替等が代表的な用途であることから10〜500mm、係合素子非存在領域(II)の地経糸方向長さとしては5〜300mmが好ましく、より好ましくは係合素子存在領域(I)の長さが15〜400mm、係合素子非存在領域(II)の長さが5〜200mmの場合である。
さらに好ましくは、係合素子存在領域(I)の長さに対して係合素子非存在領域の長さが0.2〜8倍、もっとも好ましくは0.2〜6倍である場合である。
フック面ファスナーに用いられる、ポリエステル製のフック状係合素子用モノフィラメント糸の太さとしては、直径0.14〜0.25mmのものが好ましい。0.14mmより細い場合には、十分な係合力が得られない。また0.25mmを超える場合には、モノフィラメントの基布打込みを少なくしないと織製できず、織製できたとしても太くて粗い組織となるので、柔軟な手触り感が得られず、カーテンの取り付け具やボタン代替品として好ましいと言えない。より好ましくは0.16〜0.22mmの範囲である。
ここで言う直径とは、モノフィラメント糸の断面形状を中実の円に換算した場合の直径であり、したがって断面は三角、四角、五角等の多角断面、矩形、楕円形、中空等の異型であっても良い。
次に、ループ面ファスナーの場合には、ループ状係合素子は、上記したように、フック状係合素子と同様、ポリアルキレンテレフタレート系のポリエステルから構成されたマルチフィラメント糸である。
熱融着によりループ状係合素子を基布に強固に固定するためには、ループ状係合素子を構成するフィラメントの本数を少なくする方が溶融樹脂の浸透性の点で好ましく、本発明を構成するループ状係合素子用マルチフィラメントのフィラメント本数は、従来一般に用いられているループ状係合素子を構成するマルチフィラメントのフィラメント本数より若干少ないのが好ましい。より好ましくは、5〜12本、もっとも好ましくは6〜9本のフィラメントからなるトータルデシテックスが200〜300デシテックスのマルチフィラメント糸である。
なお、本発明において、ループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸には、ポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルからマルチフィラメント糸に、少数の他のフィラメント糸が引き揃えられていてもよい。
フック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸の打ち込み本数は、それぞれ、後述する熱処理後で地経糸本数20本(フック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸を含む)に対して3〜8本程度が好ましい。
本発明において、フック面ファスナーのフック状係合素子の基布面からの高さとしては1.2〜2.5mm、ループ状係合素子のループ状係合素子の基布面からの高さとしては1.6〜3.0mmが好ましい。
そして、本発明において、フック面ファスナーの係合素子存在領域(I)のフック状係合素子の密度としては、25〜60個/cmの範囲が好ましく、25個/cm未満の場合には係合力が劣り、また60個/cmを超える場合には、フック状係合素子同士が邪魔しあってループ状係合素子との係合を妨げることとなる。より好ましくは30〜50個/cmの範囲である。
そして、ループ面ファスナーの係合素子存在領域(I)のループ状係合素子の密度としては、マルチフィラメント単位で25〜60個/cmの範囲が好ましく、60個/cmを超える場合には、ループ状係合素子同士が邪魔し合って、係合力が劣り、また25個/cm未満の場合には、係合が少なく、高い係合力が得られない。好ましくは30〜50個/cmの範囲である。
さらには、本発明の面ファスナーには、基布を構成する地経糸および地緯糸も、ポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルからなる合成繊維が用いられる。地経糸として、好ましくはポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸である。
地経糸を構成するマルチフィラメントの太さとしては、16〜96本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜250デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に24〜48本のフィラメントからなるトータルデシテックスが100〜200デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。そして、このようなマルチフィラメント糸を熱処理後の織密度として35〜80本/cmとなるように基布を構成する。
ポリアルキレンテレフタレート系の合成繊維は、面ファスナーの素材として最も一般的に多く使用されるポリアミド系の合成繊維に比べて、水分や温度の変化により寸法が変化しにくいことが特徴の一つである。その特徴の効果として、一旦織成の設計によって決められた、ループ1本1本の地緯糸方向間隔は、織成する装置が長期間稼働しても変化する可能性が少なく、ループの片脚を切断してフック状係合素子を形成することが確実に実施できることとなる。
また、水分や温度の変化によって繊維の寸法変化が生じにくいという特徴は、ポリアミド系の合成繊維を用いて面ファスナーにした場合の外観でも差異がみられる。すなわち、ポリアミド系の合成繊維を用いた面ファスナーは、その雰囲気中の温度や湿度によって面ファスナーの幅手方向の長さ変化すると、面ファスナーのフック状係合素子の中に片脚部が切断されずにループの状態で残ることや両脚とも切断されてフック状係合素子が形成されないものが発生する原因になる。
本発明において、フック面ファスナーのフック状係合素子を構成するモノフィラメント糸およびループ面ファスナーのループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸は、ともに地経糸に平行に基布に挿入され、係合素子存在領域(I)では、フック状係合素子の場合には所々で地経糸を跨ぎ、跨いだ箇所でループを構成して、フック用ループを地経糸方向から傾いた方向に向け、一方ループ状係合素子の場合には地経糸を跨ぐことなく地経糸にほぼ平行にループを構成するのが、ループ状係合素子にフック状係合素子が引っかかり易く、高い係合力が得られる点から好ましい。
また、係合素子非存在領域(II)では、フック面ファスナーおよびループ面ファスナーともに、係合素子用のループを形成する必要はなく、したがって、地緯糸を跨ぐことなく基布構成糸の一部として地経糸と同様に織り込まれる。
そして、本発明の面ファスナーを製造する過程で、フック状係合素子のフック形状およびループ状係合素子のループ形状を固定するために、面ファスナー用織地には熱が加えられる。本発明の面ファスナーにおいては、フック形状およびループ形状を固定するために加えられる熱が同時に基布を構成する熱融着性繊維を収縮かつ融着させ、ループ状係合素子およびフック状係合素子の根元を基布に強固に固定することとなる。したがって、加えられる熱の温度としては、地緯糸として用いられる熱融着性繊維が収縮および溶融する温度で、かつフック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸が熱固定される温度である150〜220℃が一般的に用いられ、より好ましくは170〜210℃、もっとも好ましくは180〜200℃の範囲である。
そして、フック面ファスナーにおいては、フック状係合素子用ループは、そのループ脚部の片脚側部が切断され、フック状係合素子とされる。そして、フック状係合素子を形成するためにフック状係合素子用ループの片側部を切断するために用いられる切断装置は、地経糸方向に走行するフック面ファスナー用布のフック状係合素子用ループの片脚を2本の固定刃の間を可動切断刃の往復運動によって切断する構造となっているのが好ましく、そのために、フック状係合素子用のループは、上記したように地経糸を跨ぐ場所で形成していると、ループの片足だけを容易に切断できることから好ましい。
最後に、本発明の布製面ファスナーの基布に用いられる地緯糸としては、上記熱処理条件下で熱融着してフック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸の根元を基布に強固に固定できる繊維を含んでいなければならず、そのような熱融着性繊維として、低融点または低軟化点のポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合繊維からなるマルチフィラメント糸が用いられる。
しかも該鞘成分には、無機微粒子が0.03〜3重量%添加されているのが好ましい。無機微粒子の例として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、硫酸バリウムが挙げられ、特に酸化チタンが好ましい。この量の無機微粒子が添加されていることにより、鞘成分を溶融させてバインダーとして働かせた際に、溶融したバインダー樹脂が広く流れ出して基布内に広く浸透することを防止することができ、その結果、基布を硬いものとすることを防止することができる。
添加量が0.03重量%より少ない場合には、樹脂の流れ出しを十分に防ぐことができず、3重量%を超える場合には、逆に溶融した樹脂がフック状係合素子用のモノフィラメントやループ状係合素子用のマルチフィラメントの根元を固定する能力が劣ることとなり、係合・剥離の繰り返しにより係合素子が引き抜かれ易くなる。好ましくは、0.04〜1重量%の無機微粒子が添加されている場合である。
なお、地緯糸となる芯鞘型の熱融着性繊維の鞘成分樹脂は、フック状係合素子用のモノフィラメントやループ状係合素子用のマルチフィラメント、さらには地経糸、該芯鞘型熱融着性繊維の芯成分樹脂のいずれよりも低い融点または軟化点を有していることが必要であり、好ましくは、融点または軟化点が20℃以上、より好ましくは30℃以上低い樹脂である。具体的には、鞘成分樹脂は、150〜200℃の融点または軟化点を有している樹脂である。たとえば、イソフタル酸やスルホイソフタル酸ソーダ、エチレングリコールやプロピレングリコール等が共重合されたポリエチレンテレフタレートあるいは同共重合されたポリブチレンテレフタレート系のポリエステル樹脂が挙げられる。
そして芯成分としては、鞘成分樹脂との耐剥離性の点および同一染色性の点、さらに収縮して係合素子用糸を締め付けて固定し易い点でポリアルキレンテレフタレート系エステルの樹脂が好ましく、高融点を有していることが求められることからポリエチレンテレフタレートホモポリマーやポリブチレンテレフタレートホモポリマーが挙げられ、なかでも形体安定性の点でポリエチレンテレフタレートホモポリマーが特に好ましい。
そして、地緯糸を構成する繊維中に占める熱融着性繊維の割合としては、特に地緯糸の全てが実質的に芯鞘型の熱融着性繊維で形成されている場合には、フック状係合素子およびループ状係合素子がともに強固に基布に固定されることとなるため好ましい。繊維が芯鞘等の複合繊維でなく、繊維の全てが熱融着性のポリマーで形成されている単独繊維の場合には、溶けて再度固まった熱融着性ポリマーは脆く割れ易くなり、縫製した場合等は縫糸部分から基布が裂け易くなる。したがって、熱融着性繊維は、熱融着されない樹脂を含んでいることが必要となり、芯鞘の断面形状を有しているものが用いられる。
そして、芯成分と鞘成分の重量比率は60:40〜80:20の範囲が好ましい。なお、芯鞘の断面形状は完全な同芯型の芯鞘形状である必要はなく、バイメタル形状に近い偏芯型の芯鞘形状であってもよい。
さらに、フック状係合素子およびループ状係合素子を共に強固に基布に固定するためには、地緯糸として用いられた熱融着性繊維が熱融着すると共に、繊維自身が収縮してフック状係合素子およびループ状係合素子の根元を両サイドから締め付けるのが好ましく、そのためには、地緯糸として用いられる熱融着性繊維は熱処理条件下で大きく熱収縮を生じる繊維が好ましい。具体的には、200℃での乾熱収縮率が10%以上である繊維が好適である。より好ましくは200℃での乾熱収縮率が11〜18%の繊維である。
なお、地緯糸を構成する熱融着性マルチフィラメント糸の太さとしては、12〜60本のフィラメントからなるトータルデシテックスが50〜250デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に18〜36本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜150デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。そして、このようなマルチフィラメント糸の織密度として、熱処理後の織密度で15〜30本/cmとなるように基布に打ち込むのが好ましい。
地緯糸は、加熱したときの基布の収縮が地緯糸方向に5%以上であることが係合素子を締め付け強固に固着する点で好ましい。
そして、地緯糸の重量割合としては、面ファスナーを構成するフック状係合素子用モノフィラメント糸あるいはループ状係合素子用マルチフィラメント糸と地経糸および地緯糸の合計重量に対して15〜40%が好ましい。
基布の係合素子存在領域の織組織としては、フック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸を地経糸の一部とした平織りが好ましい。これら係合素子用糸は、地経糸と平行に存在しつつ、係合素子存在領域(I)では、組織の途中で基布面から立ち上がり、フック面ファスナーの場合にはループを形成しつつ地経糸を1〜3本飛び越えて地経糸間にもぐり込むような織組織で、一方、ループ面ファスナーの場合には地経糸を跨ぐことなく地経糸に平行に存在している織組織が、フック状係合素子用ループの片脚側部を容易に切断でき、さらにフック状係合素子とループ状係合素子が係合し易いことから好ましい。
また、係合素子非存在領域(II)の織組織としては、地経糸を跨ぐことなく、地経糸に平行に、地経糸の一部として織組織を形成しているのが好ましい。
そして、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)を交互に規則的に形成する方法は、係合素子の形成用である綜絖枠の往復運動を、電気信号によって制御されたループ形成装置を用いることにより簡単に実施でき、本発明には好適な装置である。すなわち、上記4種の糸を用いて、フック状係合素子またはループ状係合素子を形成する綜絖枠の往復運動は電気信号によって制御されることできわめて多くの緯糸本数を用いた周期の組織で構成される装置を用いることで容易に製造できる。
なお、通常の織機では綜絖枠の往復運動は、一般にカードと呼ばれる部品の高さが綜絖枠の上下位置を決め、カードをチェーン状につないで回転させることで、綜絖枠の往復運動を繰り返している。しかしながら、カードをチェーン状につなぐ場合は、織機に内蔵可能な長さにしなければならないため、往復運動の周期には物理的制限が発生する。長さの制限は織機の種類によって多様であるが、緯糸を打込む本数が50本程度までの周期で組織を組むのが限界の場合が多い。
綜絖枠の往復運動を電気信号によって制御するとは、カードをチェーン状につなぐ部品を電気信号によって制御する部品に置き換えることである。すなわちカードをチェーン状につなぐ場合の長さの制限がなくなり、たとえば緯糸打込み本数が千本以上の極めて多くの緯糸本数を打込む組織を組むことが可能となる。そして、電気信号によって綜絖枠の往復運動を制御する場合の織機は、電気磁石またはモーター等を用いて綜絖枠を上下させる。
例えば、地緯糸30〜80本分には、係合素子用糸は地緯糸5本を浮沈したのちにループを形成するようにして、基布上にループを形成して係合素子存在領域(I)とし、それに続く地緯糸100〜250本分には、係合素子用糸はループを形成しないように基布中に織り込み、係合素子非存在領域(II)とすることにより本発明の面ファスナー用織物は製造される。
次に、このようにして製造された面ファスナー用織物に熱処理を行う。この熱処理により、係合素子用ループのループ形状が固定されるとともに、基布を構成している地緯糸の芯鞘型熱融着性繊維の鞘成分が溶融され、バインダーとして働き、さらに芯鞘型熱融着性繊維が熱収縮を生じて、係合素子用ループの根元をしっかりと固定することとなる。
次に得られた面ファスナー用織物がフック面ファスナーである場合には、フック係合素子用ループの片脚を切断して、ループをフック形状とする。
そして、このようにして得られた面ファスナーは、必要により染色される。従来のバックコート処理を行った面ファスナーの場合には、裏面にバックコート用接着剤層が存在していると、染料液が面ファスナー内部まで均一に到達できず、染斑となることから、止むを得ず、バックコート処理を行う前の状態、すなわち係合素子用ループが基布に固定されていない状態で染色されていたため、係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が交互に規則的に存在している面ファスナーの場合には、染色時の攪拌等により係合素子用ループの列にズレ等を生じ、その後に係合素子用ループの片脚のみを切断してフックとすることが難しいという問題点を有していたが、本発明の面ファスナーの場合には、染色は、係合素子用ループの片脚切断後に行うことができるため、従来技術のように係合素子用ループの片脚のみ切断することが困難という問題も生じない。
本発明の面ファスナーは、上記したように、カーテンの取り付け具として、さらには、手や体の不自由な方の衣類のボタン代替品として、さらに面ファスナーを全面に取り付ける必要がなく、所々取り付けるだけで良いような用途に使用できる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
布製面ファスナーの基布を構成する地経糸、地緯糸、フック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸として次の糸を用意した。
[地経糸]
・融点260℃のポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:167dtexで30本
[地緯糸(芯鞘型複合繊維からなるマルチフィラメント系熱融着糸)]
・芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
・鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:190℃)
・芯鞘比率(重量比): 70:30
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:116dtexで24本
・200℃での乾熱収縮率:13%
[フック状係合素子用モノフィラメント糸]
・ポリエチレンテレフタレート繊維(融点:260℃)
・繊度:390dtex(直径:0.19mm)
[ループ状係合素子用マルチフィラメント糸]
・ポリブチレンテレフタレート繊維(融点:220℃)
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:265dtexで7本
上記4種の糸を用い、織装置として、フック状係合素子またはループ状係合素子を形成する綜絖枠の往復運動は電気信号によって制御されることできわめて多くの緯糸本数を用いた周期の組織で構成される装置を用いた。
このように、綜絖枠の往復運動を電気信号によって制御する織機を用い、以下の条件で、フック状係合素子が存在する布製面ファスナーそして、ループ状係合素子が存在する布製面ファスナーを製造した。
[フック状係合素子が存在する布製面ファスナー]
上記地経糸、地緯糸およびフック状係合素子用モノフィラメントを用いて、織組織として平織を用い、織密度(熱収縮処理後)が地経糸50本/cm、地緯糸20本/cmとなるように織った。そして、地経糸4本に1本の割合でフック状係合素子用モノフィラメントを地経糸に平行に打ち込み、地緯糸5本を浮沈したのちに地経糸3本を跨ぐようにし、跨いだ箇所でループを形成するように基布上にループを形成した。
そして、地緯糸50本分には地緯糸5本を浮沈したのちに地経糸3本を跨ぐようにし、跨いだ箇所でループを形成するように基布上にモノフィラメントによるループを形成し、それに続く地緯糸150本分は地経糸3本を跨がずモノフィラメントによるループを形成しない、すなわち地緯糸50本分にはモノフィラメントによるループを有し、地緯糸150本分はモノフィラメントによるループ有さない、そしてこのようにループを有する領域(i)とループを有しない領域(ii)を交互に規則的に有する面ファスナーを織成した。
[ループ状係合素子が存在するする面ファスナー]
上記地経糸、地緯糸およびループ状係合素子用マルチフィラメントを用いて、織組織として平織を用い、織密度(熱収縮処理後)が地経糸50本/cm、地緯糸20本/cmとなるように織った。そして、地経糸4本に1本の割合でループ状係合素子用マルチフィラメントを地経糸に平行に打ち込み、地緯糸5本を浮沈したのちにループを形成するように基布上にループを形成した。
そして、地緯糸50本分には地緯糸5本を浮沈したのちにループを形成するように基布上にループを形成し、地緯糸150本分はループを形成しない、すなわち地緯糸50本分にはループを有し、地緯糸150本分はループ有さない、そしてこのようにループを有する領域(i)とループを有しない領域(ii)を交互に規則的に有する面ファスナーを織成した。
上記条件にて織成された、フック状係合素子が存在する面ファスナー用織物とループ状係合素子が存在する面ファスナー用織物を、地緯糸の鞘成分のみが熱溶融し、なおかつ、地経糸、フック係合素子用モノフィラメント糸、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸、さらには地緯糸の芯成分が熱溶融しない温度域、すなわち200℃で熱処理を施した。
その結果、地緯糸は大きく収縮するとともに鞘成分が溶融して近隣に存在する糸を融着させた。そして、基布は地緯糸方向に9%収縮した。このようにして得られた織物を冷却させたのち、フック状係合素子が存在する面ファスナーは、フック状係合素子用ループの片脚部を切断してフック状係合素子を形成した。
なお、本実施例では、織成装置、熱処理装置、そして最後に巻取り装置までが一つに連なった装置を実施でき、そしてフック面ファスナーについては、フック形成装置も同装置内に設置されており、面ファスナーのフックの片脚部の切断状態を確認したところ、片脚部が切断されていない等の不良箇所は全く見られなかった。
得られたフック状係合素子が存在する布製面ファスナーの係合素子存在領域(I)のフック状係合素子密度は40個/cmであり、さらにフック状係合素子の基布面からの高さは1.7mmであった。一方、ループ状係合素子が存在する布製面ファスナーの係合素子存在領域(I)のループ状係合素子密度は40個/cmであり、さらにループ状係合素子の基布面からの高さは2.0mmであった。
そして、フック状係合素子が存在する面ファスナーとループ状係合素子が存在する面ファスナーの布製面ファスナーを、長さ方向に係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)のそれぞれの地経糸方向長さを測定したところ、約2.5cmが係合素子存在領域(I)であり、約7.5cmが係合素子非存在領域(II)であった。
このようにして得られたフック面ファスナーとループ面ファスナーを、ポリエチレンテレフタレート繊維が染色可能な高圧条件で白色に染色したのち、幅方向に2.5cm間隔で切断した。そして長さ方向に52.5cmの長さで切断した。切断された面ファスナーは2.5cmの係合素子存在領域(I)が6ヶ所存在し、その6ヶ所の係合素子存在領域の間に、7.5cmの係合素子非存在領域(II)5ヶ所が存在するようにした。
このように切断されたフック面ファスナーとループ面ファスナーを介護用肌着のボタンの代わりに用いた。
通常の介護用肌着は前開き型が多く、肌着の前部分を閉じる場合はボタンを用いて留めることが一般的である。通常の介護用肌着を製造する際には、ボタンを一つ一つ縫い付けなければならないが、本発明の係合素子存在領域(I)と係合素子非存在領域(II)が規則的に繰り返された面ファスナーを用いることで、1本の帯状の面ファスナーを連続して縫製するだけとなり、介護用肌着を製造する際の手間が大幅に簡略になった。
さらに従来の面ファスナーの場合には、必然的に、係合素子非存在領域(II)の表面側に滲み出たバックコート層用の接着剤がフック状係合素子やループ状係合素子に付着して、見栄えが悪くなったり、係合力が劣ることとなるのに対して、本実施例の布製面ファスナーの場合には、そのようなことが全くなく、極めて見栄えに優れ、係合力の点でも優れたものであった。
そして、実際の着用時にも、面ファスナーの場合は、ボタンを留めるのに比べ、前部分を合せて軽く押さえる程度で前部分を閉めることができ、また面ファスナーを剥がすだけで前部分を開けることができたため、介護用肌着としても極めて便利であった。
そして接着剤層を有さないため、面ファスナーの風合いも柔らかく、肌着としてもなんら問題ない柔らかさであった。
実施例2
上記実施例1において、ループ状係合素子存在領域(I)を地緯糸50本分のまま、ループ状係合素子非存在領域(II)を地緯糸250本分に変更する以外は実施例1と同様にしてループ面ファスナーを作製した。そして熱処理後は、ループ状係合素子存在領域(I)の長さは2.5cmとなり、係合素子非存在領域(II)の長さは12.5cmとなった。
そして、得られた染色後のループ面ファスナーを幅方向に2.5cmになるよう切断し、長さ方向には150cmとなるよう切断した。得られた布製面ファスナーは、バックコート用接着剤による問題点が全くなく、極めて見栄えに優れ、係合力の点でも優れたものであった。
こうして得られたループ面ファスナーを、カーテン用生地のカーテンの上端となる部分に縫製にて取り付けた。
そしてカーテンのレールとなる部分には、フック状係合素子を有する、型抜きされた樹脂製の部材が嵌め込まれており、上記ループ面ファスナーと型抜きされた樹脂製のフック部材を係合させることでカーテン生地を吊り下げた。
カーテンを閉じる際には、係合素子部を有さない部分は折り曲げられることとなる。得られたループ面ファスナーは、接着剤層を有さないため、風合いが柔らかく、その柔らかい風合いが折り曲げて使用する用途に好適であり、極めて自然で高級感ある、美しいドレープが形成された。
1:布製面ファスナー
2:係合素子存在領域
3:係合素子非存在領域
4:地経糸方向

Claims (5)

  1. 基布およびその表面に存在する係合素子からなる布製面ファスナーにおいて、該基布を構成している地経糸、地緯糸、係合素子用糸が、いずれもポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルから形成されている糸であり、かつ該地緯糸が芯鞘型の熱融着性ポリエステル系繊維を含み、さらに係合素子用糸が該熱融着性繊維により基布に固定されている布製面ファスナーであって、さらに基布上に係合素子が存在している領域(I)と係合素子が存在しない領域(II)を地経糸方向に交互に規則的に有する布製面ファスナー。
  2. 係合素子が存在しない領域(II)の地経糸方向長さが5〜300mmであり、係合素子が存在している領域(I)の地経糸方向長さが10〜500mmである請求項1に記載の布製面ファスナー。
  3. 芯鞘型の熱融着性ポリエステル系繊維の鞘成分を構成する樹脂中に無機微粒子が0.03〜3重量%添加されている請求項1または2に記載の布製面ファスナー。
  4. 地経糸、地緯糸および係合素子用糸からなり、係合素子が存在している領域(I)と係合素子が存在しない領域(II)を交互に規則的に有する布製面ファスナーを製造する方法において、地経糸、地緯糸および係合素子用糸としてポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルからなる糸を用い、かつ地緯糸として芯鞘型の熱融着性繊維を含む糸を用いて、織物表面に係合素子用糸からなるループを有する織物であって、該ループが存在している領域(i)と該ループが存在していない領域(ii)が地経糸方向に交互に規則的に存在している織物をまず製造したのち、該織物を加熱して、該熱融着性繊維の鞘成分のみを溶融させ鞘成分と接触する地経糸および係合素子糸を地緯糸で収縮と融着により固定し、そして係合素子がフック状係合素子の場合には該ループの片脚を切断してループ形状をフック形状とすることにより、領域(i)を係合素子が存在している領域(I)に、領域(ii)を係合素子が存在しない領域(II)に変換することを特徴とする布製面ファスナーの製造方法。
  5. 係合素子の形成用である綜絖枠の往復運動を、電気信号によって制御されたループ形成装置を用いて織物を製造する請求項4に記載の布製面ファスナーの製造方法。
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