以下本発明の布製面ファスナーについて詳細に説明する。本発明の布製面ファスナーの一例であるループ面ファスナーでは、その表面に、図1や図2に示すように、基布(1)の表面からループ状係合素子(2)が多数突出している領域と突出していない領域が存在している。つまり本発明の布状面ファスナーでは、ループ状係合素子が存在している領域(A)と係合素子が存在しない領域(B)が同一面に地経糸方向および地緯糸方向の両方向に交互に存在している。その結果、図2に示すように、フック面ファスナーと係止した場合に、領域(B)が指等を挿入できる空間となり、剥がし易くなる。
さらには、ループ状係合素子は布製面ファスナーの四隅またはその近辺まで存在することで、フック面ファスナーと係止されているため、あるいは空間の両サイドは領域(A)が存在し、固定されているため、係合・剥離を繰り返しても面ファスナー端部が大きく捲れ上がる心配がなく見栄えに優れた状態を維持することができる。
一方、図3のものでは、面ファスナーの端面が端から端まで係合され、指等を挿入する空間が存在しないことから、剥がすのが困難となる。
このような布製面ファスナーにおいて、基布を構成する地経糸、地緯糸およびループ状係合素子用糸またはフック状係合素子用糸がいずれもポリエステル系繊維からなる糸であり、地緯糸が熱融着性繊維からなる糸であり、ループ状係合素子用糸またはフック状係合素子用糸がこの熱融着性繊維の融着により基布に固定されている場合には、基布が柔軟であることから、領域(B)の空間部分に指をより一層挿入し易くなるため、より剥がし易いこととなり、好ましい。
従来の布製面ファスナーの場合には、ループ状係合素子またはフック状係合素子が係合・剥離の際に基布から引き抜かれるのを阻止するために、バックコート層と称して接着剤を基布裏面に塗布している。そのため基布全体が接着剤で固められて剛直となっている。上記したように、ループ状係合素子用糸またはフック状係合素子用糸が熱融着性繊維により基布に固定されている場合には、バックコート層を裏面に形成する必要がなく、その結果、基布が柔軟となり、より一層剥がし易いこととなる。
本発明において、地経糸と地緯糸とループ状係合素子用糸とフック状係合素子用糸が、ともにポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルから形成されている場合が熱融着性の点で好ましく、特に地経糸と係合素子用糸が、熱融着性と熱融着後の強度の点でポリエチレンテレフタレートホモポリマーまたはポリブチレンテレフタレートホモポリマーから形成されている場合が好ましい。
地経糸としてはマルチフィラメント糸が好ましく、そして地経糸を構成するマルチフィラメント糸の太さとしては、16〜96本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜250デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に24〜48本のフィラメントからなるトータルデシテックスが100〜200デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。
地緯糸としてもマルチフィラメント糸が好ましく、地緯糸を構成するマルチフィラメント糸の太さとしては、16〜50本のフィラメントからなるトータルデシテックスが60〜200デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に20〜40本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜150デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。
そして、地緯糸には、前記したように、バックコート層を不要とするために、熱融着性繊維を含んでいるのが好ましく、熱融着性繊維の具体例として、鞘成分を熱融着成分とする芯鞘型の熱融着性繊維が用いられる。地緯糸が熱融着性繊維を含んでいることにより、ループ状係合素子用糸やフック状係合素子用糸を基布に強固に固定することが可能となる。
地緯糸に熱融着性繊維を用いることに代えて、地経糸に熱融着性繊維を用いることによりループ状係合素子用糸やフック状係合素子用糸を基布に固定することも可能であるが、ループ状係合素子用糸やフック状係合素子用糸は地経糸に平行に基布に打ち込まれることから、地経糸はループ状係合素子用やフック状係合素子用糸と交差する箇所が地緯糸に比べて極端に少なく、したがって熱融着性繊維を地経糸のみに用いた場合にはループ状係合素子用糸が基布に強固に固定され難い。さらに地経糸に熱融着性繊維を用いた場合には、面ファスナーを連続生産する上で、走行する基布に掛かる張力を一定に保つことが難しく、一定品質の面ファスナーを安定に連続生産することが困難となり易い。
上記した芯鞘型の熱融着性繊維としては、鞘成分を溶融させてループ状係合素子用糸やフック状係合素子用糸の根元を基布に強固に固定できるポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルの樹脂からなるものが好適に用いられ、具体的には、芯成分は熱処理条件下では溶融しない高融点ポリエステル樹脂からなり、鞘成分は溶融する低融点または低軟化点のポリエステル樹脂からなる芯鞘型の断面を有するポリエステル系繊維が挙げられる。
より具体的には、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを芯成分とし、イソフタル酸やアジピン酸等で代表される共重合成分を多量に共重合、例えば15〜30モル%共重合することにより融点又は軟化点を大きく低下させた共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘成分とする芯鞘型断面を有するポリエステル繊維がその代表例として挙げられる。
鞘成分の融点または軟化点としては100〜200℃であり、かつ地経糸や芯成分やループ状係合素子用マルチフィラメント糸やフック状係合素子用モノフィラメント糸の融点より20〜150℃低いのが好ましい。芯鞘型熱融着性繊維の断面形状としては、同心芯鞘であっても、偏心芯鞘であっても、あるいは1芯芯鞘であっても、多芯芯鞘であってもよい。
さらには、地緯糸を構成する繊維中に占める芯鞘型熱融着性繊維の割合は、特に地緯糸の全てが実質的に芯鞘型の熱融着性繊維で形成されている場合、つまり地緯糸が芯鞘型の熱融着性のフィラメントからなるマルチフィラメント糸である場合には、ループ状係合素子用糸やフック状係合素子用糸が強固に基布に固定されることとなるため好ましい。
地緯糸を構成する繊維が芯鞘断面形状ではなく、繊維断面の全てが熱融着性のポリマーで形成されている場合には、溶けて再度固まった熱融着性ポリマーは脆く割れやすくなり、縫製した場合等は縫糸部分から基布が裂け易くなる。したがって、熱融着性繊維は、鞘成分が融ける温度では熱溶融されない樹脂を繊維長さ方向に連続して含んでいることが好ましく、熱融着性の点で芯鞘の断面形状を有していることが好ましいということになる。そして、芯成分と鞘成分の重量比率は20:80〜80:20の範囲、特に25:75〜75:25の範囲が好ましい。
ループ状係合素子用糸は、高い剥離強さが得られることから、ポリエチレンテレフタレート系またはポリブチレンテレフタレート系ポリエステルから構成され、かつ上記熱融着性繊維を熱融着させる際の温度では溶融しない融点、すなわち共重合されていないポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸が好ましい。特にポリブチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸の場合には、柔軟で領域(A)の端部に存在しているループ状係合素子が係合し易くなり、さらに剥離する際に指等を間に入れ易いことから適している。
ループ状係合素子用糸を構成するマルチフィラメント糸の太さとしては、5〜15本のフィラメントからなるトータルデシテックスが150〜400デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に6〜9本のフィラメントからなるトータルデシテックスが200〜300デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。
フック状係合素子には、軽い力ではフック形状が伸展されない、いわゆるフック形状保持性と剛直性が求まられ、そのために太いポリアルキレンテレフタレート系、特にポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製、なかでもポリエチレンテレフタレートホモポリマーからなるモノフィラメント糸が好適に用いられる。
フック状係合素子用モノフィラメント糸の太さとしては、直径0.13〜0.40mmのものが好ましく、より好ましくは直径0.14〜0.35mmのものである。
次に、以上の地経糸、地緯糸、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子モノフィラメント糸から、布製ループ面ファスナーまたは布製フック面ファスナーを製造する方法について説明する。
まず以上述べた地経糸、地緯糸、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子用モノフィラメント糸から面ファスナー用織物を織成する。織物の織組織としては、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子用モノフィラメント糸を地経糸の一部とした平織が好ましい。
そして、これらの係合素子用糸は、地経糸と平行に存在しつつ、領域(A)では、ループ面ファスナーの場合には、地緯糸間から浮き上がって地経糸を跨ぐことなくループを形成してまた地緯糸間にもぐり込み、そしてフック面ファスナーの場合には、地緯糸間から浮き上がってループを形成しつつ地経糸を1〜3本飛び越えてまた地緯糸間にもぐり込むような織組織が、さらにフック状係合素子とループ状係合素子が同一面に並存している混在型面ファスナーの場合には、これら両者がともに上記した浮沈状態を満足するような織組織が、フック状係合素子用ループの片足側部を効率的に切断でき、さらにフック状係合素子とループ状係合素子が係合し易いことから好ましい。そして、領域(B)では、係合素子用糸は、基布面から立ち上がることなく、地経糸に平行に地緯糸間を浮沈して、基布に織り込まれる。
そして、地経糸の織密度としては、熱処理後の織密度で35〜80本/cm、特に40〜65本/cmが、また地緯糸の織密度としては、熱処理後の織密度で12〜30本/cm、特に15〜25本/cmが好ましい。そして、地緯糸の重量割合としては、織面ファスナーを構成するループ状係合素子用糸あるいはフック状係合素子用糸と地経糸および地緯糸の合計重量に対して15〜40%が好ましい。
また本発明の布製ループ面ファスナーまたは布製フック面ファスナーにおいて、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子用モノフィラメント糸の打ち込み本数は、それぞれ、地経糸20本(ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子用モノフィラメント糸を含む)に対して2〜8本程度が好ましい。
フック・ループ混在型布製面ファスナーの場合には、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸およびフック状係合素子用モノフィラメント糸の合計で地経糸20本(ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子用モノフィラメント糸を含む)に対して3〜8本が好ましく、そしてループ状係合素子用マルチフィラメント糸とフック状係合素子用モノフィラメント糸の本数比が1:1〜2:1の範囲が好ましい。
次に本発明の布製面ファスナーの製造方法について詳細に説明する。
まず、本発明の布製面ファスナーに用いられる織物において、織物を織る段階で係合素子が存在する領域(A)と係合素子が存在しない領域(B)が形成される。その具体的形成方法としては、係合素子の形成用である綜絖枠の往復運動を電気信号によって制御されたループ形成装置を用いる方法が好適に用いられる。すなわち、綜絖枠の往復運動を電気信号によって制御することで、極めて多くの地緯糸本数を用いた周期の組織が製造できる。
なお、通常の面ファスナー用織機では、綜絖枠の往復運動は、一般にカードと呼ばれる部品の高さが綜絖枠の上下位置を決め、カードをチェーン状につないで回転させることで、綜絖枠の往復運動を繰り返している。しかしながら、カードをチェーン状につなぐ場合は、織機の内蔵可能な長さにしなければならないため、往復運動の周期には物理的制限が発生する。長さの制御は織機の種類によって多様であるが、地緯糸を打込む本数が48本程度までの周期で組織を組むのが限界の場合が通常である。
よって、地緯糸を打込む本数の周期が通常の面ファスナー用織機で製造可能な周期であれば通常の面ファスナー用織機で製造してもよいし、地緯糸を打込む本数の周期が通常の面ファスナー用織機で製造可能な周期を超える場合は、綜絖枠の往復運動を電気信号によって制御されたループ形成装置を用いて織物を製造してもよい。綜絖枠の往復運動を電気信号によって制御するとは、カードをチェーン状につなぐ部品を電気信号によって制御する部品に置き換えることである。すなわちカードをチェーン状につなぐ場合の長さ制限がなくなり、例えば地緯糸打込み本数が千本以上の極めて多くの地緯糸本数を打込む組織を組むことも可能となる。そして、電気信号によって綜絖枠の往復運動を制御する場合の織機は、電気磁石またはモーター等を用いて綜絖枠を上下させる。
例えば、地緯糸10〜50本分には、係合素子用糸は地緯糸複数本を浮沈したのちにループを形成するようにして、基布上にループを形成して係合素子が存在する領域、すなわち係合素子存在領域(A)とし、それに続く地緯糸10〜50本分には、係合素子用糸はループを形成しないように基布中に織り込み、係合素子が存在しない領域(B)とすることにより、織物表面に係合素子用糸からなるループが存在している係合素子存在領域(A)と該ループが存在していない領域(B)が地経糸方向に交互に存在されることとなる。
そして、地緯糸方向についても、地経糸20〜120本分には係合素子用糸は地緯糸複数本を浮沈したのちにループを形成するようにして係合素子存在領域(A)とし、それに続く地経糸20〜120本分には、係合素子用糸はループを形成しないように基布中に織り込み、係合素子が存在しない領域(B)とする。
このようにすることにより、地経糸方向及び地緯糸方向には、係合素子用ループが存在している領域(A)と係合素子用ループが存在していない領域(B)が交互に存在している本発明の布製面ファスナー用織物が形成される。
本発明において、領域(B)には、係合素子用糸は係合素子を形成することなく地経糸に平行に基布織物中に織り込まれて存在しているのが基布の強度と製造し易さの点で好ましい。
このようにして得られた面ファスナー用織物に、次に熱処理して緯糸を構成する芯鞘型熱融着性繊維の鞘成分のみを溶融させてループ状係合素子用のマルチフィラメント糸あるいはフック状係合素子用のモノフィラメント糸を基布に強固に固定させる。これにより、従来の面ファスナーで行われていたバックコート層付与処理が不要となる。熱処理の際の温度としては、鞘成分が溶融または軟化するがそれ以外の糸や芯成分は溶融しない温度である150〜220℃が一般的に用いられ、より好ましくは180〜210℃の範囲、さらに好ましくは190〜205℃の範囲である。特に、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸である場合には、その融点との関係で205℃以下の温度が好ましい。
そして、係合素子がフック状係合素子の場合には、固定された係合素子用ループの片脚を切断して、ループ形状からフック形状とする。以上の方法により、本発明の布製面ファスナーは得られる。得られた布製面ファスナーを必要により染色してもよいが、その際に、係合素子と基布とが異なる色調となるように染色することにより、領域(A)と領域(B)の色調を変えることができ、交互に存在する領域(A)と領域(B)の織りなす美しい模様により、面ファスナーの価値を高めることもできる。
このような本発明において、領域(B)の地経糸方向長さ及び地緯糸方向長さが共に4〜25mmの範囲であることが必要であり、4mm未満の場合には、領域(B)を存在させる価値がなく、25mmを越える場合には、面ファスナーの係合力が低下し、切り出す面ファスナー片のサイズによっては面ファスナーとして用をなさない場合や領域(B)の空間部からの埃等の侵入を阻止できない場合がある。好ましくは5〜20mmの範囲、より好ましくは6〜12mmの範囲である。なお、本発明において、全ての領域(B)が地経糸方向および地緯糸方向に同一の長さを有している必要はなく、形状や面積の異なる複数の領域(B)が存在していてもよい。
また、領域(B)の地経糸方向および地緯糸方向のいずれか一方が4〜25mmの範囲から外れる場合には、面ファスナーの取り付け方向によっては指が挿入し難いとか係合・剥離を繰り返すことにより端部が捲れ上がる等の問題点が生じ、さらに得られる面ファスナーの表面形状が美的に劣るものとなる。
また領域(A)の地経糸方向長さおよび地緯糸方向長さは、領域(B)と同様に、4〜25mmの範囲が好ましい。4mm未満の場合には本発明の効果が減少し、25mmを越える場合には、指を挿入する箇所を見つけ難くなる。なお、領域(A)と領域(B)の地経糸方向長さと地緯糸方向長さは、共に同一である必要はないし、領域(A)と領域(B)とで上記長さを変えることもできる。さらに、全ての領域(A)が地経糸方向および地緯糸方向に同一の長さを有している必要はなく、面積の異なる複数の領域(A)が存在していてもよい。
そして本発明において、領域(A)の面積が、領域(A)と領域(B)の合計面積の40〜80%である場合が係合力と指の入れ易さの両方を満足する上で好ましいが、面ファスナーに要求される係合力をより一層保つ上では、より好ましくは60〜80%の範囲であり、指等を入れ易くするという点では、より好ましくは40〜60%の範囲である。どちらを重視するかによって、領域(A)の面積割合を選べばよい。
特に本発明の布製面ファスナーにおいて、領域(A)および領域(B)の領域形状が地経糸方向および地緯糸方向に対して平行な辺により囲まれる矩形であり、領域(A)の場合には隣の領域(B)と、領域(B)の場合には隣の領域(A)とそれぞれ矩形の各辺を共有しており、領域(A)とその斜め方向に隣接している領域(A)とが矩形の頂点同士で接しており、領域(B)に関しても同様に斜め方向に隣接している領域(B)と頂点同士で接しているような領域(A)と領域(B)の配置を有している場合が、製造し易さ、面ファスナーの強度の点で、さらに領域(B)空間から埃等の侵入を阻止できる点から好ましい。
なお、ここで言う矩形の各辺には、領域(A)または領域(B)が面ファスナーの端部に存在している場合の端部側の辺は含まない。また、本発明の布製面ファスナーは、その周囲に係合素子が存在しない耳部を有していてもよい。耳部の幅としては1〜4mm程度である。この耳部は、本発明で言う領域(B)には含まれない。
本発明の布製面ファスナーは、地経糸方向に連続した長尺物として製造されるが、使用する際には、そこから適当な幅と長さに切断される。切断後には、領域(A)と領域(B)の地緯糸方向の合計個数は5〜31個が好ましい。すなわち、地緯糸方向に領域(A)と領域(B)が交互に合計で5〜31領域存在しているのが好ましい。より好ましくは5〜15個である。また領域(A)と領域(B)の地経糸方向の合計個数は5〜61個が好ましく、より好ましくは7〜31個である。そして、切断後の布製面ファスナーは、その四隅に領域(A)が存在しているような場所で切断されているのが好ましい。
特に本発明の布製面ファスナーにおいて、領域(A)と領域(B)が同一の長さで地経糸方向に交互に存在しており、また地緯糸方向にも同一の長さ(地経糸方向の長さと同一である必要はなし)で領域(A)と領域(B)が交互に繰り返している場合が、常に端部に領域(A)が存在するように小片に切断し易いことから、さらに美しい市松模様が形成されることから視的にも優れている。
本発明の布製面ファスナーにおいて、領域(A)に存在する係合素子の数としては、領域(A)の面積基準で、20〜80本/cm2が好ましく、より好ましくは25〜60本/cm2、さらに好ましくは30〜50本/cm2の範囲である。そして、領域(A)には、係合素子が領域(A)全体に均一に分布して存在しているのが好ましい。
本発明の布製面ファスナーは、基布の表面にループ状係合素子のみを有しているループ面ファスナーであっても、あるいはフック状係合素子のみを有しているフック面ファスナーであっても、あるいはループ状係合素子とフック状係合素子の両方を有しているフック・ループ混在型面ファスナーのいずれであってもよい。
さらに本発明の布製面ファスナーは、基布の片面のみに係合素子を有しているものであっても、あるいは基布の両面に同一の係合素子を有しているものであっても、あるいは基布の表面と裏面のいずれか一方の面にループ状係合素子を有し、他方の面にフック状係合素子を有しているものであっても、あるいは基布の表面と裏面の両面にループ状係合素子とフック状係合素子の両方を有しているものであってもよい。
そして、基布の表裏両面に係合素子を有している場合には、片面のみを本発明のように領域(A)と領域(B)とが地経糸方向および地緯糸方向に交互に存在しているようにしても、あるいは両面とも領域(A)と領域(B)が地経糸方向および地緯糸方向に交互に存在しているようにしてもよい。
両面とも領域(A)と領域(B)が存在しているようにする場合には、表面に領域(A)が存在している箇所の裏面は領域(B)となっており、そして表面に領域(B)が存在している箇所の裏面は領域(A)となっているようにするのが製造し易さの点で好ましい。
本発明の布製面ファスナーを使用する際には、係合相手の面ファスナーは、全面に係合素子を有する従来の通常の面ファスナーであっても、あるいは本発明の領域(A)と領域(B)を地経糸方向および地緯糸方向に交互に有する面ファスナーであってもよく、ともに剥がし易さの点で優れている。
本発明の布製面ファスナーは、端部まで面ファスナーの係合素子を備え、また端部まで面ファスナー同士が係合されているため、係合・剥離を繰り返しても端部が捲れ上がることがない。
以下本発明を実施例により説明する。なお、実施例中の係合強力(剪断強力と剥離強力)はJIS L3416に従って面ファスナー幅100mm、サンプル数10個で測定した。その際に、係合相手がフック面ファスナーの場合には、フック面ファスナーとして広く市販されているクラレファスニング社製フック面ファスナーA9863Y.00を、また係合相手がループ面ファスナーの場合には、ループ面ファスナーとして広く市販されているクラレファスニング社製ループ面ファスナーB2790Yをそれぞれ用いた。
また剥がし易さの判断は、上記の係合相手と端部を揃えて係合させた状態で、両面ファスナーの間に指を挿入して剥がし易いか否かのテストを8人の男女が行い、その結果を総合して評価した。
実施例1
ループ面ファスナーの基布を構成する地経糸、地緯糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸として次の糸を用意した。
[地経糸]
・融点260℃のポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:167dtexで30本
[地緯糸(芯鞘型複合繊維からなる熱融着性マルチフィラメント糸)]
・芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
・鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:190℃)
・芯鞘比率(重量比): 70:30
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:99dtexで24本
[ループ状係合素子用マルチフィラメント糸]
・ポリブチレンテレフタレート繊維(融点:220℃)
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:265dtexで7本
上記3種の糸を用いて、織装置として、ループ状係合素子を形成する綜絖枠の往復運動は電気信号により制御される装置を用い、以下の条件でループ面ファスナーを製造した。
織組織として平織を用い、織密度(熱処理後)が地経糸50本/cm、地緯糸20本/cmとなるように織った。そして、地経糸8本に1本の割合でループ状係合素子用マルチフィラメント糸を、地経糸を跨ぐことなく地経糸に平行に打ち込んだ。そして、地緯糸16本分の領域(A)には、地緯糸3本を浮沈したのちにループを形成するように基布上にループを形成し、それに続く地緯糸16本分の領域(B)には、ループを形成しない、すなわち地緯糸16本分はループを有し、それに続く地緯糸16本分はループを有さない、二つの領域が交互に存在している織組織とした。なお、領域(A)には、ループが形成されている位置が地経糸方向にばらまかれるように、隣り合うループ状係合素子用マルチフィラメント糸間で地緯糸から浮き上がる位置を変えた。
そして、地経糸36本毎にも、ループが存在している領域(A)と、ループが存在していない領域(B)を交互に形成した。得られたループ面ファスナー用織物を195℃で熱処理して、地緯糸の鞘成分を溶融させて、ループ状係合素子用糸を基布に固定した。
得られた布製ループ面ファスナーを俯瞰から観察すると、係合素子が存在している領域(A)と、係合素子が存在していない領域(B)が地経糸方向および地緯糸方向に交互に存在していた。そして、この得られた布製ループ面ファスナーは、領域(A)および領域(B)の領域形状が地経糸方向および地緯糸方向に対して平行な辺により囲まれる矩形であり、領域(A)の場合には隣の領域(B)と、領域(B)の場合には隣の領域(A)とそれぞれ矩形の各辺を共有しており、領域(A)とその斜め方向に隣接している領域(A)とが矩形の頂点同士で接しており、領域(B)に関しても同様に斜め方向に隣接している領域(B)と頂点同士で接しており、市松模様のような美しい規則的に繰り返す模様を有していた。
得られた布製ループ面ファスナーの領域(A)と領域(B)の地経糸方向長さは共に8mm、地緯糸方向長さは共に6mmであり、領域(A)の面積が、領域(A)と領域(B)の合計面積の50%であった。そして、ループ状係合素子高さは2.5mm、領域(A)のループ状係合素子密度は領域(A)の面積基準で39本/cm2であった。得られたループ面ファスナーから、四隅に領域(A)が来るように地経糸方向長さ120mm、地緯方向長さ100mmに切り出した。
こうして得られたループ面ファスナー片と、クラレファスニング社製フック面ファスナーA9863Y−00を係合させ、剪断強力および剥離強力を測定した。その結果、せん断強力は、ループ状係合素子一つ当たり0.364N、剥離強力は、ループ状係合素子一つ当たり0.036Nであった。
そして、係合された面ファスナー同士は四隅まで係合されているが、中間の端部には領域(B)による空間が複数個所で形成されており、この空間が指等を入れて剥がすきっかけとなり、極めて剥がし易いものであった。さらに係合・剥離を400回繰り返したが、端部が捲れ上がるという癖は全く見られなかった。また、この端部の領域(B)の空間から微細な繊維状粉末を含む空気を吹き込んだが、空間奥に存在している領域(A)の係合素子群に遮られて、微細な繊維状粉末は、ループ面ファスナーの反対側の側面まで貫通することはなかった。
実施例2、3および比較例1、2
上記実施例1において、形成する領域の地緯糸分の本数を、上記地緯糸16本から10本(実施例2)、40本(実施例3)、6本(比較例1)、66本(比較例2)とそれぞれ変更することにより領域(A)と領域(B)の地経糸方向長さを表1に示すように変更する以外は実施例1と同様にして市松模様の布製ループ面ファスナーを作製した。なお、領域(A)と領域(B)の地緯糸方向長さはいずれも共に6mmである。
得られたこれら4種のループ面ファスナーは、いずれも、表面を観察すると、上記実施例1のものと同様に、領域(A)および領域(B)の領域形状が地経糸方向および地緯糸方向に対して平行な辺により囲まれる矩形であり、領域(A)の場合には隣の領域(B)と、領域(B)の場合には隣の領域(A)とそれぞれ矩形の各辺を共有しており、領域(A)とその斜め方向に隣接している領域(A)とが矩形の頂点同士で接しており、領域(B)に関しても同様に斜め方向に隣接している領域(B)と頂点同士で接していた。
ただ、比較例1のループ面ファスナーは市松模様が細かすぎて、市松模様と認識しし難かったのに対して、実施例1、2および比較例2のものは規則的な市松模様が美しく認識でき、実施例1のものと同様に美観的に優れたものであった。
そして、これら得られた4種類のループ面ファスナーの剪断強力と剥離強力を測定した。その結果を表1に記載する。また得られた4種類のループ面ファスナーについて、間に指を挿入して剥離し易いか否かを観察した。さらに指を両面ファスナーの間に挿入して係合・剥離を繰り返し、指を挿入した箇所が捲れ上がるか否かについても観察した。以上の結果を表1に記載する。
表1から明らかなように、領域(B)の地経糸方向長さが本発明で規定する範囲を外れる場合には剥離の際に指を挿入することが困難であるか、あるいは指を挿入して係合・剥離を繰り返すことにより、挿入した箇所が捲れ上がり見栄えの劣るものであった。また、これら実施例および比較例のループ面ファスナーについて、端部の領域(B)の空間から微細な繊維状粉末を含む空気を吹き込んだが、いずれのループ面ファスナーも空間奥に存在している領域(A)の係合素子群に遮られて、微細な繊維状粉末は、ループ面ファスナーの空間を通り反対側の側面まで貫通することはなかった。
実施例4
上記実施例1において、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸を下記のフック状係合素子用モノフィラメント糸に変更し、地経糸8本に1本の割合でフック状係合素子用モノフィラメントを地経糸に平行に打ち込み、地緯糸3本を浮沈したのちに地経糸3本を跨ぐようにし、跨いだ箇所でループを形成するようにして基布上にループを形成する以外は実施例1と同一の条件でフック面ファスナー用織物を作製した。
[フック状係合素子用モノフィラメント糸]
・ポリエチレンテレフタレート繊維(融点:260℃)
・繊度:390dtex(直径:0.19mm)
その際、地緯糸18本分の領域(A)には、地緯糸3本を浮沈したのちにループを形成するように基布上にループを形成し、それに続く地緯糸18本分の領域(B)には、ループを形成しない、すなわち地緯糸18本分はループを有し、それに続く地緯糸18本分はループを有さない織組織とした。
そして、地経糸44本毎に上記したサイクルとは逆のサイクルで係合素子が存在している領域(A)と、係合素子が存在していない領域(B)を形成した。得られたフック面ファスナー用織物を195℃で熱処理して、地緯糸の鞘成分を溶融させて、フック状係合素子用糸を基布に固定した。そして、得られたフック面ファスナー用織物のフック状係合素子用ループの片脚をバリカンで切断して、フック状係合素子とした。
そして、このフック面ファスナーでは、フック状係合素子が存在している領域(A)と、係合素子が存在していない領域(B)が地経糸方向および地緯糸方向に交互に存在しており、領域(A)および領域(B)の領域形状が地経糸方向および地緯糸方向に対して平行な辺により囲まれる矩形(正確に言うとフック状係合素子を形成している箇所で地経糸を跨いでいることから平行な辺からは若干のズレが生じているが、本発明ではこのズレも含めて平行な辺と称している)であり、領域(A)の場合には隣の領域(B)と、領域(B)の場合には隣の領域(A)とそれぞれ矩形の各辺を共有しており、領域(A)とその斜め方向に隣接している領域(A)とが矩形の頂点同士で接しており、領域(B)に関しても同様に斜め方向に隣接している領域(B)と頂点同士で接しており、上から見ると市松模様のような美しい規則的に繰り返す表面模様を有していた。
このようにして得られた布製フック面ファスナーの領域(A)と領域(B)の地経糸方向長さは共に9mm、地緯糸方向長さは共に8mmであり、領域(A)の面積が、領域(A)と領域(B)の合計面積の50%であった。そして、フック状係合素子の基布面からの高さは1.7mm、領域(A)のフック状係合素子密度は領域(A)の面積基準で39本/cm2であった。得られたフック面ファスナーから、四隅に領域(A)が来るように地経糸方向長さ120mm、地緯方向長さ100mmに切り出した。
こうして得られたフック面ファスナー片と、クラレファスニング社製ループ面ファスナーB2790Yを係合させ、せん断強力および剥離強力を測定した。その結果、フック状係合素子1本当たりのせん断強力は0.362N、フック状係合素子1本当たりの剥離強力は0.018Nであった。この剪断強力の値および剥離強力の値は、基布の表面全面に同一のフック状係合素子であり、フック状係合素子密度が46本/cm2で存在している後述の比較例6のフック面ファスナーと比べて10以上%高い値であった。
そして、係合された面ファスナー同士は四隅まで係合されているが、中間の端部には領域(B)による空間が複数個所形成されており、この空間が指等を入れて剥がすきっかけとなり、極めて剥がし易いものであった。さらに係合・剥離を400回繰り返したが、指を挿入した端部が捲れ上がるという癖は全く見られなかった。また、この端部の領域(B)の空間から微細な繊維状粉末を含む空気を吹き込んだが、空間奥に存在している領域(A)の係合素子群に遮られて、微細な繊維状粉末は、フック面ファスナーの反対側の側面まで空間を通り貫通することは殆どなく、粉塵が貫通することを嫌う用途等に適したものであることが分かった。
実施例5、6および比較例3、4
上記実施例4において、形成する領域の地緯糸分の本数を地緯糸18本から12本(実施例5)、36本(実施例6)、4本(比較例3)、68本(比較例4)とそれぞれ変更することにより領域(A)と領域(B)の地経糸方向長さを表2に示すように変更する以外は実施例4と同様にして市松模様の布製フック面ファスナーを作製した。なお、領域(A)と領域(B)の地緯糸方向長さはいずれも共に8mmである。
得られたフック面ファスナーを表面から観察すると、実施例4のものと同様な領域(A)および領域(B)による市松模様を有していた。ただ、比較例3のフック面ファスナーは市松模様が細かすぎて、市松模様と殆ど認識できなかったのに対して、実施例5、6および比較例4のものは市松模様と明確に認識できた。
そして、これら得られた4種類のフック面ファスナーの剪断強力と剥離強力を測定した。その結果を表2に記載する。また得られた4種類のフック面ファスナーについて、ループ面ファスナー(クラレファスニング社製ループ面ファスナーB2790Y)と端を合わせて係合させ、そして両者の間に指を挿入して剥離し易いか否かを観察した。さらに指を係合している両方の面ファスナーの間の領域(B)による空間部分に挿入して係合・剥離を繰り返し、指を挿入した箇所が捲れ上がるか否かについても観察した。以上の結果を表2に記載する。
表2から明らかなように、領域(B)の地経糸方向長さが本発明で規定する範囲内の場合には、空間部に指を挿入して剥離することが容易で、かつ係合・剥離を繰り返しても挿入した箇所が捲れ上がる癖が付くということが生じなかったが、領域(B)の地経糸方向長さが本発明で規定する範囲を外れる場合には剥離の際に空間部分に指を挿入することが困難であるか、あるいは指を挿入して係合・剥離を繰り返すことにより、挿入した箇所が捲れ上がり見栄えの劣るものであった。
比較例5
前記実施例1において、係合素子が存在しない領域(B)を形成することなく、全面がループ状係合素子で覆われているループ面ファスナーを製造した。基布の表面全面に同一のループ状係合素子であり、地経糸4本に1本の割合でループ状係合素子用マルチフィラメント糸を、地経糸を跨ぐことなく地経糸に平行に打ち込み、そしてループ状係合素子密度が42本/cm2で存在しているループ面ファスナーである。
こうして得られた全面にループ状係合素子が存在しているループ面ファスナーと、クラレファスニング社製A9863Y−00と係合させ、せん断強力および剥離強力を測定した。せん断強力はループ状係合素子1本当たり0.305N、剥離強力はループ状係合素子1本当たり0.028Nであった。また、係合された面ファスナー同士は端部および隅々まで強固に係合されており、間に指を挿入することが困難で、剥離するきっかけを作りにくく、剥がし難いものであった。また、このループ面ファスナーの重量も、実施例1のループ面ファスナーと比べて、約20%重いものであった。
比較例6
前記実施例4において、係合素子が存在しない領域(B)を形成することなく、全面がフック状係合素子で覆われているフック面ファスナーを製造した。基布の表面全面に同一のフック状係合素子であり、地経糸4本に1本の割合でフック状係合素子用モノフィラメント糸を、地経糸に平行に打ち込み、地緯糸5本を浮沈したのちに地経糸3本を跨ぐようにし、そしてフック状係合素子密度が41本/cm2で存在しているフック面ファスナーである。
こうして得られたフック面ファスナーと、クラレファスニング社製ループ面ファスナーB2790Yと係合させ、せん断強力および剥離強力を測定した。剪断強力はフック状係合素子1本当たり0.316N、剥離強力はフック状係合素子1本当たり0.014Nであった。また、係合された面ファスナー同士は端部および隅々まで強固に係合されており、間に指を挿入することが困難で、剥離するきっかけを作り難く、剥がし難いものであった。またこのフック面ファスナーの重量も、実施例4のフック面ファスナーと比べて約20%重いものであった。
比較例7
上記比較例5において、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸を地経糸方向16本分は係合素子用ループを形成し、それに続く16本分は係合素子用ループを形成しないようにし、地緯糸方向には、この状態が端から端まで続いているように織り、地経糸方向にのみに係合素子が存在している領域(A)と係合素子が存在していない領域(B)を交互に有し、地緯糸方向には領域(A)および領域(B)がそれぞれ端から端まで連続している以外は比較例5と同様にしてループ面ファスナーを作製した。なお領域(A)および領域(B)の地経糸方向幅は共に8mmである。
このループ面ファスナーから切り取った小片は、端部が、係合素子が存在していない領域(B)でない場合には端部から指を挿入して剥離することが難しく、また係合素子が存在していない領域(B)が端部である場合には、指を挿入して剥離・係合を50回繰り返すことにより捲れ上がりの癖がついた。
さらに端部に係合素子が存在する領域(A)と係合素子が存在しない領域(B)が交互に存在している場合であっても、この端部の領域(B)の空間から、実施例1の場合と同様に、微細な繊維状粉末を含む空気を吹き込んだところ、微細な繊維状粉末は、ループ面ファスナーの領域(B)の空間部を通り反対側の側面まで貫通することが観察され、埃等を遮断する効果に劣るものであった。
以上の全ての実施例および比較例の結果より分かるように、本発明の布製面ファスナーは、糸構成が同じにも関わらず、係合素子一つ当たりの係合強力値が高く、係合素子は相手の係合素子に引っかかり易くなるものであった。また面ファスナーの重量も本発明のものは軽量化されており、軽量であることが強く求められる自動車や航空機の分野やスポーツ用品の分野に適している。またループ状係合素子とフック状係合素子を係合させた際に端部に指等を挿入できる空間があることで、剥がし易いものであった。さらには、布製面ファスナーの四隅および端部に係合素子が存在し、かつ係合素子が存在しない領域(B)も端部に複数個所存在していることで、指を挿入して剥離することが容易であるにもかかわらず、係合・剥離を繰り返すうちに布製面ファスナーの端部が捲れ上がるという問題点を殆ど生じず、また上面から見ると、係合素子面が規則的な市松模様を形成しており、この模様が美しく審美性にも優れている。さらに、粉塵等を遮蔽する効果にも優れている。