JP2015036357A - 表面処理シリカ粉末、スラリー組成物及びそれを用いた樹脂組成物 - Google Patents

表面処理シリカ粉末、スラリー組成物及びそれを用いた樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 樹脂へ高充填した際に、分散が良好で、硬化前の樹脂組成物の流動性が極めて高く、硬化後の樹脂組成物の基板強度が高い、球状シリカ粉末を提供する。【解決手段】 体積平均粒径が0.80〜1.3μm、粒度分布における累積体積10%値(D10)と累積体積50%値(D50)の比(D10/D50)=0.20〜0.50、BET比表面積値が3.5〜5.5m2/g、疎水化度が1.0〜5.0%である球状シリカ粉末。前記の球状シリカ粉末を含有してなるスラリー組成物。前記のスラリー組成物を用いた樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、シリカ粉末に関する。
近年、電子機器の高速化、小型軽量化、高機能化に伴い、高密度実装・配線微細化に対応したプリント配線板が開発されている。多層ビルドアップ基板では、絶縁層と銅配線やICチップとの熱膨張率の違いによるクラック発生、製造時の耐熱性等の問題が生じ、微細配線の信頼性向上を目的として、従来にも増して、低熱膨張が要求されている。
基板の熱膨張率低減には、シリカ粉末などのフィラーをエポキシ樹脂等のマトリックス樹脂に高充填する方法、剛直な樹脂を利用する等の方法が知られている。しかし、フィラーを樹脂に高充填すると、流動性及び成形性が著しく低下する。更に、薄型化の場合、基板自体の剛性が低いため、絶縁信頼性が低下する問題があった。
フィラーを樹脂に高充填かつ高流動させるために、粒度分布を調整して最密充填状態にすること、表面処理状態を制御することが有効である。特許文献1では、平均粒子径0.1μm以上5μm以下、かつ真球度0.8以上の球状シリカ粒子と平均粒子径1nm以上50nm以下のシリカナノ粒子とを有機溶媒に分散させてなるスラリー組成物、ワニス組成物が開示されている。この場合、粒度の適正化が不十分であり、最密充填状態の形成に伴う流動性の改善効果は乏しく、さらに、表面処理状態に関する記載がなく、問題解決までに至っていない。特許文献2では、平均粒子径D50、100%相当径D100が規定されているが、高流動性は実現されていない。
シリカ粒子の粒子表面には反応サイトとして、シラノール基が存在しており、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いた表面改質によって、樹脂に対する濡れ性が制御できることが知られている。すなわち、表面改質基量の制御が重要である。特許文献3では、シラザン類が特定量処理された塩基性シリカ粉体が開示されているが、処理量のみでは、不十分であった。
特開2006−36916号公報 特開2003−13002号公報 特開2004−161900号公報
本発明の目的は、球状シリカ粉末を樹脂へ高充填した際に、分散が良好で、硬化前の樹脂組成物の流動性が極めて高く、硬化後の樹脂組成物の基板強度が高い、球状シリカ粉末を提供することである。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)体積平均粒径が0.80〜1.3μm、粒度分布における累積体積10%値(D10)と累積体積50%値(D50)の比(D10/D50)=0.20〜0.50、BET比表面積値が3.5〜5.5m/g、疎水化度が1.0〜5.0%である球状シリカ粉末。
(2)前記(1)に記載の球状シリカ粉末を含有してなるスラリー組成物。
(3)前記(2)に記載のスラリー組成物を用いた樹脂組成物。
本発明の球状シリカ粉末を用いることにより、樹脂へ高充填した際に、硬化前の樹脂組成物の流動性を極めて高くし、硬化後の樹脂組成物の基板強度を高くすることができる。
本発明は、体積平均粒径が0.80〜1.3μm、粒度分布における累積体積10%値(D10)と累積体積50%値(D50)の比(D10/D50)=0.20〜0.50、BET比表面積値が3.5〜5.5m/g、疎水化度が1.0〜5.0%である球状シリカ粉末である。
球状シリカ粉末の体積平均粒径は0.80〜1.3μmであって、1.3μmを超えると、シリカ凝集物が発生し、成型性が不良になり、0.80μm未満では、高い流動性が得られない。好ましい範囲は0.90〜1.2μmである。
球状シリカ粉末の粒度分布における累積体積10%値(D10)と累積体積50%値(D50)の比である(D10/D50)は0.20〜0.50である。(D10/D50)=0.50を超えると、球状シリカ粉末の最大充填率増加に伴う高い流動性が得られない。(D10/D50)=0.20未満であると、比表面積の増加に伴い系が熱力学的に不安定状態となるため、粒子同士が凝集し、流動性が損なわれる。好ましい、(D10/D50)の範囲は0.28〜0.42である。
球状シリカ粉末の粒度分布、累積体積10%値(D10)、累積体積50%値(D50)は、レーザー回折光散乱法による粒度測定に基づく値であり、粒度分布測定機としては、例えば「モデルLS−230」(ベックマン・コールター社製) にて測定することができる。測定に際しては、溶媒には使用する有機溶剤を用い、前処理として、20秒間、超音波ホモジナイザーを用いて200Wの出力をかけて分散処理させる。また、PIDS(PolarizationIntensity Differential Scattering)濃度を45〜55質量%になるように調製した。なお、屈折率には、用いる溶剤の屈折率を用い、粉末の屈折率については粉末の材質の屈折率を考慮した。たとえば、非晶質シリカについては屈折率を1.50として測定した。なお、測定した粒度分布は、粒子径チャンネルがlog(μm)=0.04の幅になるよう変換した。
球状シリカ粉末の比表面積は、BET法に基づく値であり、比表面積測定機としては、「Macsorb HM model−1208」(MACSORB社製)を用いて測定することができる。
球状シリカ粉末のBET比表面積値は、3.5〜5.5m/gである。3.5m/g未満では、粗大粒子の存在により成型性が不良になり、5.5m/gを超えると、シリカ凝集物が発生し、成型性が不良になる。
本発明の球状シリカ粉末の疎水化度は、1.0〜5.0%である。5.0を超えると、スラリー組成物製造時に使用される表面処理剤との反応量が低下し、基板強度が低下することがある。1.0未満では、樹脂組成物の高い流動性、分散性が得られない。
本発明を構成する球状シリカ粉末の製造方法は、例えば、金属粉末スラリーを製造炉で可燃性ガスと助燃性ガスとからなる高温火炎中に供給し、該火炎中で該金属粉末を気化、酸化させることにより得られる。
前記球状シリカをスラリー組成物として使用する前にシランカップリング剤による表面処理を行う。表面処理を予め施し、表面状態に起因する疎水化度を1.0〜5.0%にすることが好ましい。これにより、シリカ粒子が有機溶媒中への分散性を向上した状態で、湿式表面処理を行うことで、更に、樹脂組成物中にシリカ粒子を良好に分散させることができる。シランカップリング剤として、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、アクリロキシトリメトキシシラン等のアクリルシラン等が例示される。
超音波噴霧器は、特に限定されず、公知のものを使用すれば良い。超音波噴霧時の噴霧サイズは、超音波振動の周波数に依存し、周波数が高くなればなるほど、噴霧サイズを小さくすることができる。好ましい噴霧サイズは1μm以下である。
超音波噴霧器を用いて、シリカ粒子表面に予め表面処理剤を吸着させた後、オートクレーブを用いた加圧処理を行う。処理温度は120−180℃、処理圧力は1−2atm、処理時間は1−3hrが好ましい。これにより、表面シラノール基と表面処理剤を均一に反応させることができる。
スラリー組成物について、説明する。
球状シリカ粉末は、水、有機溶媒に分散させたスラリー組成物として、好適に使用することができる。シリカ粒子を分散させる有機溶媒としては、その種類が特に限定されるものではない。樹脂に応じて選択すればよい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル等の極性溶媒が用いられる。
その中でも特に、メチルエチルケトンが好ましい。
スラリー組成物に含まれる球状シリカ粉末の含有量は、樹脂組成物の成形性の観点から72.0〜75.0質量%である。75.0質量%を超えると、分散処理ができない。72.0質量%未満の場合、樹脂ワニス粘度が低くなるため、成型性が低下する。
本発明のスラリー組成物は、CASSON粘度式における降伏値が0.4〜1.9Pa、見かけの粘性係数が、0.01〜0.05の範囲にあることが好ましい。
樹脂組成物について、説明する。
スラリー組成物を用いて、パッケージ用基板や層間絶縁フィルム等の樹脂基板を製造する場合には、樹脂としてエポキシ樹脂を採用することが好ましい。
樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重要分子量を有する2種類以上を併用もでき、1種類または2種類以上することもできる。
これらエポキシ樹脂中でも特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、公知の硬化剤を用いればよいが、フェノール系硬化剤を使用することができる。フェノール系硬化剤としてはフェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類などを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記フェノール硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂との当量比(フェノール性水酸基当量/エポキシ基当量)が1.0未満、0.1以上が好ましい。これにより、未反応のフェノール硬化剤の残留がなくなり、吸湿耐熱性が向上する。
樹脂組成物に配合される球状シリカ粉末の量は、耐熱性、熱膨張率の観点から、多いことが好ましい。樹脂組成物の全体質量に対して、80質量%以上であることが望ましい。
実施例1〜10 比較例1〜10
(1)球状シリカ粉末の製造
最外部より、可燃性ガス供給管、助燃性ガス供給管、金属粉末スラリー供給管の順に組まれた三重巻管構造のバーナーを製造炉の頂部に設置する一方、製造炉の下部を捕集系(生成粉末をブロワーで吸引しバッグフィルターにて捕集)に接続されてなる装置を用い、金属酸化物粉末を製造した。なお、バーナーの外周には外周火炎を形成させる外周バーナーが更に3本設置されている。可燃性ガス供給管からLPGを10Nm3/hr、助燃性ガス供給管から酸素を15 Nm3/hr供給して、製造炉内に高温火炎を形成した。金属シリコン粉末をメチルアルコールに分散させて調製した濃度55質量%のスラリーを、スラリーポンプを用いて、金属粉末スラリー供給管から供給し、球状シリカ粉末をバグフィルターにて捕集した。
(2)シリカ含有スラリーの製造
金属粉末スラリー法で製造された球状シリカ粉末に超音波噴霧器を用いて、噴霧量2.5L/min、周波数1.6MHz、N圧力0.04MPaの条件にて、シリカ粉末に表面処理剤を噴霧した。その後、オートクレーブにシリカ粉末を充填し、2atm、180℃下で2hr処理し、表面処理球状シリカ粉末とした。表面処理剤は、N−フェニルトリメトキシシラン「KBM−573」(信越化学工業株式会社製、分子量255.4)を用いた。次いで、得られたシリカ粉末をメチルエチルケトン(MEK)溶媒に分散させて、固形分濃度が75質量%のスラリーを調製した。
(3)樹脂硬化物の作製
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂「EPICLON−850」(DIC株式会社製、エポキシ当量186g/eq)10.0質量部、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂「PSM−4261」(群栄化学工業株式会社製、水酸基当量106g/eq、軟化点80℃)5.9質量部、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(2PZ)「四国化成工業株式会社製」0.2質量部、表面処理剤(SC剤)としてビニルトリメトキシシラン「KBM−1003」(信越化学工業株式会社製、分子量148.2)0.28質量部を得られたスラリー組成物100質量部に溶解し、樹脂組成物(エポキシ樹脂ワニス)を調製した。この樹脂組成物を基材にアプリケーターを用いて塗布し、50℃下で真空脱泡後、温度150℃、2時間乾燥し、樹脂硬化物を得た。得られた樹脂組成物の流動性、分散性及び樹脂硬化物の成型性を以下に示す方法に従って評価した。それらの評価結果を表1〜2に示す。
(4)実施例9
実施例1の表面処理において、ビニルトリメトキシシラン「KBM−1003」(信越化学工業株式会社製、分子量148.2)を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂硬化物を得た。
(5)実施例10
実施例1の表面処理において、メチルトリメトキシシラン「KBM−13」(信越化学工業株式会社製、分子量136.2)を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂硬化物を得た。
(6)比較例9
実施例1の表面処理において、超音波噴霧器を用いた表面処理のみを行い、オートクレーブによる処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、樹脂硬化物を得た。
(7)比較例10
実施例1の表面処理において、超音波噴霧器の代わりにスプレーを用いて表面処理を行った以外は、実施例1と同様にして、樹脂硬化物を得た。
表面処理シリカ、樹脂組成物及び樹脂硬化物の評価方法を以下の(1)〜(6)に示す。
(1)比表面積
球状シリカ粉末を1.0g計量し、測定用のセルに投入、前処理後、BET比表面積値を測定した。測定機は「Macsorb HM model−1208」(MACSORB社製)を使用した。以下の条件にて、前処理を行った。
脱気温度 :300℃
脱気時間 :18分
冷却時間 :4分
(2)疎水化度
イオン交換水50ml、試料となる表面処理シリカ粉末を0.2gビーカーに入れ、マグネティックスターラーで撹拌しながらビュレットからメタノールを滴下し、試料全量が沈んだ終点におけるメタノール水混合溶液中のメタノール質量分率を疎水化度とした。
(3)流動性
真空脱泡後の樹脂組成物をE型粘度計(東機産業株式会社製:TVE−10)にて20 rpm時(測定温度25 ℃)の粘度を測定した。この際、2.0Pa・s以上を不良とした。
(4)分散性
樹脂組成物をJIS− K5101に準拠して、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いることにより、分散性として評価した。
各符号は以下の通りである。
◎:1cm以上の筋(線状痕)が3本発生した位置の目盛りが5μm未満
○:1cm以上の筋(線状痕)が3本発生した位置の目盛りが8μm未満
△:1cm以上の筋(線状痕)が3本発生した位置の目盛りが8μm以上
×:1cm以上の筋(線状痕)が3本発生した位置の目盛りが10μm以上
(5)成形性/シリカ粒子の凝集物
得られた樹脂硬化物の面積1cm中に存在する10μm以上のシリカ粒子の凝集物の個数を表面形状検査システムKURASURF−PH(倉敷紡績株式会社製)を用いて、縞パターンを照射し位相差シフトを行うことで表面形状の凹凸を検出し、次の基準で成形性として評価した。
各符号は以下の評価基準である。
◎:10μm未満の凝集物なし
○:10μm未満の凝集物5個未満
×:10μm以上の凝集物5個以上
(6)曲げ強度
JIS規格C6481に基づき試験片(厚さ1.0mm×奥行25.0mm×幅75.0mm)を作製し、垂直方向の曲げ強度N/mmを評価した。
Figure 2015036357
Figure 2015036357

実施例および比較例の対比から明らかなように、本発明の球状シリカ粉末をエポキシ樹脂に高充填した際、極めて流動性の高いスラリー組成物及び球状シリカ粒子が良好に分散してなる樹脂組成物を得ることができる。
本発明のスラリー組成物、樹脂組成物は、例えば、プリント配線板等の電子機器分野において、半導体パッケージ基板に使用することができる。

Claims (3)

  1. 体積平均粒径が0.80〜1.3μm、粒度分布における累積体積10%値(D10)と累積体積50%値(D50)の比(D10/D50)=0.20〜0.50、BET比表面積値が3.5〜5.5m/g、疎水化度が1.0〜5.0%である球状シリカ粉末。
  2. 請求項1に記載の球状シリカ粉末を含有してなるスラリー組成物。
  3. 請求項2に記載のスラリー組成物を用いた樹脂組成物。
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