JP6038064B2 - 表面改質シリカ粉末、スラリー組成物及びそれを用いた樹脂組成物 - Google Patents

表面改質シリカ粉末、スラリー組成物及びそれを用いた樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、シリカ粉末のスラリー組成物、およびそれを用いた樹脂組成物に関する。
近年、電子機器の高速化、小型軽量化、高機能化に伴い、高密度実装・配線微細化に対応したプリント配線板が開発されている。多層ビルドアップ基板では、絶縁層と銅配線やICチップとの熱膨張率の違いによるクラック発生、製造時の耐熱性等の問題が生じ、微細配線の信頼性向上を目的として、従来にも増して、低熱膨張が要求されている。
基板の熱膨張率低減には、シリカ粉末などのフィラーをエポキシ樹脂等のマトリックス樹脂に高充填する方法、剛直な樹脂を利用する等の方法が知られている。しかし、フィラーを樹脂に高充填すると、フィラーの分散性が低下し、流動性及び成形性が著しく低下する。更に、薄型化の場合、基板自体の剛性が低いため、絶縁信頼性が低下する問題があった。
フィラーを樹脂に分散させるために、表面処理状態の制御が有効である。シリカの粒子表面にはシランカップリング剤等の表面処理剤との反応サイトとして、シラノール基が存在しており、表面処理剤を処理することで、シリカの樹脂への分散性を改善し、樹脂硬化物の機械的強度の向上がなされている。
表面処理剤の有する機能を発揮させるためには、表面に均一に処理すること、表面処理剤の添加量が重要である。特許文献1では、シランカップリング剤、オルガノシラザンにおける単位表面積(nm)あたりの官能基数を規定、特許文献2では、シランカップリング剤で処理された金属酸化物表面処理粒子の表面処理層の状態にすることで、表面状態の制御による高分散を達成している。しかし、表面処理剤の添加量を多量にすると、表面と反応していない非反応性の表面処理剤の量が多くなり、機械的強度が低下する問題があった。
特開2012−214554号公報 特開2005−298740号公報
一般的な表面処理方法として、湿式処理方法と乾式処理方法がある。湿式処理方法では、表面処理剤の添加量に対するシリカ表面への反応率が10%程度であり、非反応性の表面処理剤が過剰に存在し、ワニス中のシリカ分散安定性が得られないため、機械的強度が低下する問題があった。乾式表面処理法では、反応率は非常に高いが、表面処理剤同士の反応が優先的に進み、不均一な反応層がシリカ粒子表面に形成されるため、同様に機械的強度が低下する問題があった。
表面処理粒子の特定方法として、FT−IR、炭素含有量、XPS、GC−MSがある。
表面処理粒子の樹脂への分散性、密着性等の特性は表面処理剤の構造が影響を及ぼすことが知られているが、表面処理粒子の表面に存在する表面処理剤の構造に起因した特定方法を用いた評価はほとんど行われていない。
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、本発明者らは、パルスNMRで測定されたある特定の表面状態のシリカ粉末を用いることにより、樹脂組成物中のシリカ粉末の分散安定性に優れた、成型性が高い樹脂組成物を提供することを見いだしたものである。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)パルスNMR法を用いて下記の条件で測定した横緩和時間T2の分布が200μs以上の長時間領域の比率:15−35%、横緩和時間:450−580μs、BET比表面積が5.5−13/g、平均粒径が0.3〜0.6μmであることを特徴とする表面改質シリカ粉末。
測定条件
装置 :JEOLMu25
核種 :
測定 :T2
パルス幅 :ソリッドエコー法
パルス間隔 :2.2μs
積算回数 :8.0μs
温度 :35℃
サンプル量 :1.0g
繰り返し時間:4.0sec
本発明の表面改質シリカ粉末を用いることにより、樹脂組成物中のシリカ粉末の分散安定性に優れた、成型性が高い樹脂組成物を提供することができる。
本発明は、パルスNMR法で測定した横緩和時間T2の分布が、200μs以上の長時間領域の比率で15−35%、緩和時間で450−580μsであることを特徴とする表面改質シリカ粉末である。
シランカップリング剤等の表面処理剤で表面が改質されたシリカ粉末には、反応層と非反応層が存在する。反応層とは、シリカ表面のシラノール基と化学吸着している表面処理剤を意味する。反応層が存在することで、樹脂中のシリカ同士の凝集を抑制する効果が発現される。
非反応層とは、反応層の表面あるいは粒子表面に物理的に吸着している表面処理剤を意味する。非反応層が存在することで、樹脂への相溶性を向上させている。非反応層は、物理的に吸着されているため、有機溶剤を用いた洗浄処理により、除去することができる。
パルスNMRは分子鎖中の水素原子の核スピンを磁場中で配向させ、この緩和時間の測定から分子鎖の易動性を評価する測定装置である。表面処理層の形態に起因した易動性の違いを横緩和時間T2における長時間領域と短時間領域に分離、数値化することができる。
短時間領域の成分が多いほど、分子鎖が拘束されていることを意味している。つまり、表面処理剤同士の反応が過剰に進み、不均一な処理構造であることを示している。長時間領域が多くなるほど、自由度の高い鎖状構造を有する処理剤の割合が多くなる。
横緩和時間T2の分布で200μs以上の長時間領域の比率が35%を超えると、シリカ粒子表面との反応層が形成されず、非反応層が多く存在し、機械的強度が低下する。
横緩和時間T2の分布で200μs以上の長時間領域の比率が15%未満であると、表面処理剤同士の過剰な反応が進み、不均一な処理形態となり、樹脂中への分散性、凝集発生に伴う機械的強度が低下する。好ましい長時間領域の比率は18−28%である。
長時間領域の緩和時間が450μs未満であると、不均一な処理に伴い粒子同士が凝集し、分散性が悪くなる傾向となる。長時間領域の緩和時間が580μsを越えると、粒子表面に表面処理層が形成されず、分散安定性が保持できなくなる。
パルスNMRによるT2測定には種々の方法があるが、不均一系の固体に対して、精度良くT2が測定できるソリッドエコー法による測定が好ましい。
横緩和時間T2における長時間領域(以下、T2Lと呼ぶ)の割合は測定信号(FID)を次式(1)に近似してT2Lにおける信号強度を求め、その割合から求めることが出来る。
T2緩和時間を長時間領域(T2L)と短時間領域(T2S)2つに分割し、それぞれの成分に帰属するプロトンの相対的な比率を求めた。
式1
M(t)=(M1)exp(−t/T2L)+(Ms)exp(−(t/T2S)2)
M(t):tμsにおける信号強度
T2L領域の割合:M1/(M1+Ms)×100(%)
本発明の表面改質シリカ粉末の比表面積は、BET法に基づく値であり、比表面積測定機としては、「Macsorb HM model−1208」(MACSORB社製)を用いて測定することができる。シリカ粒子表面に存在する反応サイト量の観点から、BET比表面積が3.0−45m/gの範囲であることが好ましい。
表面改質シリカ粉末の製造方法について、説明する。
本発明を構成するシリカ粉末の製造方法は、金属粉末スラリーを製造炉で可燃性ガスと助燃性ガスとからなる高温火炎中に供給し、該火炎中で該金属粉末を気化、酸化させることにより得られる。シリカ粉末を得る場合にはシリコン粉末を利用し、使用する金属シリコン粉末の粒子径、供給量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ粉末の粒径、BET比表面積を調整することが可能である。
本発明のシリカ粉末は、表面処理が施され、表面改質シリカ粉末となる。表面処理を予め施すことで、シリカ粒子の凝集を抑制することができ、樹脂組成物中にシリカ粒子を良好に分散させることができる。表面処理剤は、既に公知の種々のシランカップリング剤を用いて行うことができる。シランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、アクリロキシトリメトキシシラン等のアクリルシラン等が例示される。
シランカップリング剤による表面処理は、シリカ粉末を処理容器内で混合させた状態で、加水分解されたシランカップリング剤を含む塩基性水溶液を、超音波噴霧器を用いて噴霧することで、予めシリカ粒子表面と接触させた後、湿式分散機で処理することにより行う。
その際、シランカップリング剤は必要量の1/4〜3/4をシリカ粉体と塩基性水溶液との混合時に添加し、残りの3/4〜1/4を分散処理の際に、噴霧等を行って添加する。
加水分解されたシランカップリング剤は、メタノールを混合した塩基性水溶液を用いて調製する。加水分解反応が進行すれば、塩基性水溶液を構成する材料のモル比は特に限定されないが、シランカップリング剤1個あたり、3つの加水分解基を有することから、シランカップリング剤:水:メタノール=1:3:1が好ましい。
塩基性水溶液としては、有機アミン、シラザン類、窒素を含む環状化合物を含む溶液、アミン系シランカップリング剤等があげられる。水溶液のpHは、特に限定されないが、シランカップリング剤の加水分解、重縮合反応が過剰に進むと、水溶液が白濁し、シリカ粒子表面と反応する前に、ポリマー層を形成する。反応速度制御の観点から、pHは10〜12の範囲にあることが好ましい。
超音波噴霧器は、特に限定されず、公知のものを使用すれば良い。超音波噴霧時の噴霧サイズは、超音波振動の周波数に依存し、周波数が高くなればなるほど、噴霧サイズを小さくすることができる。好ましい噴霧サイズは1μm以下である。
超音波噴霧器を用いて、シリカ粒子表面に予め表面処理剤を均一に吸着させた後、各種有機溶剤、水への分散性が高い状態で、ビーズミル、高圧式ホモジナイザー等の公知の湿式分散機を用いた分散処理を行うことで、高い反応率を容易に実現できる。
本表面処理方法は、表面処理後に粉末化させても良い。粉末化工程は、特に限定されないが、有機溶剤、水を加熱、減圧させることで、蒸発させる工程が好ましい。
スラリー組成物について、説明する。
表面改質シリカ粉末は、水、有機溶媒を用いたスラリー組成物として、好適に使用することができる。シリカ粒子を分散させる有機溶媒としては、その種類が特に限定されるものではない。樹脂に応じて選択すればよい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル等の極性溶媒が用いられる。
その中でも特に、メチルエチルケトンが好ましい。
分散処理は、ボールミル、超音波分散機、各種ミキサー、高圧ホモジナイザー等の機器を使用して行えばよい。尚、スラリーの変性を防ぐため、窒素雰囲気下等の非酸化性雰囲気下で製造を行うことが望ましい。
スラリー組成物に含まれる表面改質シリカ粉末の含有量は特に制限はないが、樹脂組成物の成形性の観点か75.0質量%以下が好ましい。75.0質量%を超えると、分散処理が難しくなる。
樹脂組成物について、説明する。
スラリー組成物を用いて、パッケージ用基板や層間絶縁フィルム等の樹脂基板を製造する場合には、樹脂としてエポキシ樹脂を採用することが好ましい。
樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる分子量を有する2種類以上を併用もでき、1種類または2種類以上することもできる。
これらエポキシ樹脂中でも特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、公知の硬化剤を用いればよいが、フェノール系硬化剤を使用することができる。フェノール系硬化剤としてはフェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類などを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記フェノール硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂との当量比(フェノール性水酸基当量/エポキシ基当量)が1.0未満、0.1以上が好ましい。これにより、未反応のフェノール硬化剤の残留がなくなり、吸湿耐熱性が向上する。
樹脂組成物に配合される表面改質シリカ粉末の量は、耐熱性、熱膨張率の観点から、多いことが好ましい。樹脂組成物の全体質量に対して、80質量%以上であることが望ましい。
以下、本発明について、実施例及び比較例により、更に、詳細に説明する。
表面改質シリカ粉末の作製
(1)実施例1
金属粉末スラリー法で製造された平均粒径0.6μm、BET比表面積5.5m/gのシリカ粉末(SFP−30M:電気化学工業社製)を0.5kg処理容器内に投入した。シランカップリング剤として、4.0個の1/2量の2.0個にあたる2.2gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(信越化学工業株式会社製、分子量236.3)、0.49gのイオン交換水、0.30gのメタノールを計量し、塩基性物質として、ヘキサメチルジシラザン「SZ−31」(信越化学工業株式会社製、分子量166.5)をpHが11になるまで投入し、シランカップリング剤入り塩基性溶液を調製した。次いで、超音波噴霧器を用いて、噴霧量25L/min、周波数1.6MHz、N圧力0.04MPaの条件にて、シリカ粉末に噴霧した。その後、メチルエチルケトンに混合させて、固形分が70質量%のスラリーを調製後、ビーズミルを用いて、ビーズ径500μm、ビーズ充填率65vol%、周速7m/sec、流量4L/minで、ミル内部に一回通過させて処理する条件にて、分散させた。最後に、真空下、50℃にて、真空乾燥させることで、表面改質シリカ粉末を得た。
(2)実施例2
上記実施例1の表面処理において、被処理粉末を平均粒径0.3μm、BET比表面積13m/gのシリカ粉末(SFP−20M:電気化学工業社製)、シランカップリング剤として、単位面積(nm)あたり4.0個の1/2量の2.0個にあたる4.7gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(信越化学工業株式会社製、分子量236.3)、0.7gのイオン交換水、1.2gのメタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(3)実施例3
上記実施例1の表面処理において、シランカップリング剤として、単位面積(nm)あたり4.0個の1/4量の1.0個にあたる0.8gのビニルトリメトキシシラン「KBM−1003」(信越化学工業株式会社製、分子量148.2)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(4)実施例4
上記実施例1の表面処理において、被処理粉末を平均粒径0.3μm、BET比表面積13m/gのシリカ粉末(SFP−20M:電気化学工業社製)、シランカップリング剤として、単位面積(nm)あたり4.0個の1/2量の2.0個にあたる2.6gのビニルトリメトキシシラン「KBM−1003」(信越化学工業株式会社製、分子量148.2)、0.7gのイオン交換水、1.2gのメタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(5)実施例5
上記実施例1の表面処理において、シランカップリング剤として、単位面積(nm)あたり2.0個の1/2量の1.0個にあたる2.3gのN−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン「KBM−573」(信越化学工業株式会社製、分子量255.4)、0.50gのイオン交換水、0.29gのメタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(6)実施例6
上記実施例1の表面処理において、被処理粉末を平均粒径0.3μm、BET比表面積13m/gのシリカ粉末(SFP−20M:電気化学工業社製)、シランカップリング剤として、単位面積(nm)あたり2.0個の1/2量の1.0個にあたる2.8gのN−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン「KBM−573」(信越化学工業株式会社製、分子量255.4)、0.35gのイオン交換水、0.6gのメタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(7)実施例7
上記実施例1の表面処理において、湿式分散機として、高圧式ホモジナイザー(スギノマシン社製商品名「アルティマイザー」圧力100MPa、流量4L/min)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(8)実施例8
上記実施例1の表面処理において、被処理粉末を平均粒径0.3μm、BET比表面積13m/gのシリカ粉末(SFP−20M:電気化学工業社製)、シランカップリング剤として、単位面積(nm)あたり4.0個の1/2量の2.0個にあたる4.7gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(信越化学工業株式会社製、分子量236.3)、0.7gのイオン交換水、1.2gのメタノール、湿式分散機として、高圧式ホモジナイザー(スギノマシン社製商品名「アルティマイザー」圧力100MPa、流量4L/min)を用いた以外は実施例2と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(9)実施例9
上記実施例1の表面処理において、被処理粉末を平均粒径0.1μm、BET比表面積42m/gのシリカ粉末(UFP−40:電気化学工業社製)、シランカップリング剤として、単位面積(nm)あたり1.2個の3/4量の0.9個にあたる7.7gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(信越化学工業株式会社製、分子量236.3)、2.1gのイオン交換水、3.5gのメタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(9)比較例1
上記実施例1の表面処理において、塩基性物質を用いなかった以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(10)比較例2
上記実施例2の表面処理において、塩基性物質を用いなかった以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(11)比較例3
上記実施例3の表面処理において、塩基性物質を用いなかった以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(12)比較例4
上記実施例5の表面処理において、塩基性物質を用いなかった以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(13)比較例5
上記実施例1の表面処理において、イオン交換水、メタノールを用いず、表面処理剤の噴霧方法として、2流体スプレーノズルによる液噴霧を用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(14)比較例6
上記実施例5の表面処理において、酸性物質として、酢酸(pHが4になるまで投入)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(15)比較例7
上記実施例5の表面処理において、表面処理剤の噴霧方法として、2流体スプレーノズルによる液噴霧を用いた以外は実施例1と同様にして、表面改質シリカ粉末を得た。
(比表面積測定)
球状シリカ粉末を1.0g計量し、測定用のセルに投入、以下の条件にて前処理後、BET比表面積値を測定した。測定機は「MacsorbHM model−1208」(MACSORB社製)を使用した。
脱気温度 :300℃
脱気時間 :18分
冷却時間 :4分
(NMR法を用いた横緩和時間の測定)
表面改質シリカ粉末のパルスNMR法を用いて測定した横緩和時間の測定方法を下記に示す。測定装置には、JEOLMu25(日本電子株式会社製)を用いた。測定条件を下記に示す。
測定条件
装置 :JEOLMu25
核種 :
測定 :T2
パルス幅 :ソリッドエコー法
パルス間隔 :2.2μs
積算回数 :8.0μs
温度 :35℃
サンプル量 :1.0g
繰り返し時間:4.0sec
(樹脂硬化物の作製)
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂「EPICLON−850」(DIC株式会社製、エポキシ当量186g/eq)20.0質量部、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂「PSM−4261」(群栄化学工業株式会社製、水酸基当量106g/eq、軟化点80℃)11.7質量部、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(2PZ)「四国化成工業株式会社製」0.3質量部を表面改質シリカ粉末の製造過程で得られたスラリー組成物100質量部(表面改質シリカ粉末の含有量70質量部)に溶解し、樹脂組成物(エポキシ樹脂ワニス)を調製した。この樹脂組成物を基材にアプリケーターを用いて塗布し、50℃下で真空脱泡後、温度150℃、2時間乾燥し、樹脂硬化物を得た。樹脂組成物の流動性、分散性及び成型性を以下に示す方法に従って評価した。
樹脂組成物及び樹脂硬化物の評価方法を以下の(1)〜(4)に示す。
(1)流動性/ワニス粘度
真空脱泡後の樹脂組成物をE型粘度計(東機産業株式会社製:TVE−10)にて20 rpm時(測定温度30 ℃)の粘度を測定した。この際、1.0Pa・s以上を不良とした。
(2)分散安定性
得られた樹脂組成物を温度40℃、湿度75%下で1日静置後、粒度分布測定機「モデルLS−230」( ベックマン・コールター社製)により測定した。この際、5μm以上の位置に0.01%以上の粒度分布が存在した場合、不良とした。測定条件については、PIDS(PolarizationIntensity Differential Scattering)濃度を45〜55質量%になるように調製した。屈折率には、メチルエチルケトンを1.38、非晶質シリカを1.50として測定した。なお、測定した粒度分布は、粒子径チャンネルがlog(μm)=0.04の幅になるよう変換した。
(3)成形性/シリカ粒子の凝集物
得られた樹脂硬化物の面積1cm中に存在する粒子の最大径が10μm以上のシリカ粒子の凝集物の個数を表面形状検査システムKURASURF−PH(倉敷紡績株式会社製)を用いて、縞パターンを照射し位相差シフトを行うことで表面形状の凹凸を検出し、次の基準で成形性として評価した。
各符号は以下の評価基準である。
◎:10μm未満の凝集物なし
○:10μm未満の凝集物5個未満
×:10μm以上の凝集物5個以上
Figure 0006038064

Figure 0006038064

表1に実施例1〜9、表2に比較例1〜7について、使用したシリカ粉末、表面処理剤、樹脂組成物の評価結果を示す。実施例および比較例の対比から明らかなように、本発明のパルスNMRで規定された表面状態のシリカ粉末を用いることにより、樹脂組成物中の分散安定性及び成型性が高い樹脂硬化物を提供できる。
本発明のスラリー組成物、樹脂組成物は、例えば、プリント配線板等の電子機器分野において、半導体パッケージ基板に使用することができる。

Claims (1)

  1. パルスNMR法を用いて下記の条件で測定した横緩和時間T2の分布が200μs以上の長時間領域の比率:15−35%、横緩和時間:450−580μs、BET比表面積が5.5−13/g、平均粒径が0.3〜0.6μmであることを特徴とする表面改質シリカ粉末。
    測定条件
    装置 :JEOLMu25
    核種 :
    測定 :T2
    パルス幅 :ソリッドエコー法
    パルス間隔 :2.2μs
    積算回数 :8.0μs
    温度 :35℃
    サンプル量 :1.0g
    繰り返し時間:4.0sec
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