JP2015034462A - 床用化粧材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、塗膜の密着性に優れた床材用化粧シートを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、及びプライマー層が順に形成されてなる床材用化粧シートであって、
前記プライマー層が、1)アクリル成分の共重合比率が65%以下のアクリル−ウレタン共重合体樹脂及び2)イソシアネートにより形成されてなる塗膜形成用プライマー層である、床材用化粧シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、床材用化粧シートに関する。
従来、戸建て住宅やマンション・アパート等の床材としては、例えば、厚さ6〜15mm程度のラワン合板等の木質基材上に、厚さ数百μmから数mm程度の天然木材をスライスしたすなわち突板を貼り合わせ、更に突板表面に塗装を施したものが広く使用されている。こうした天然木材に塗装を施した床材は、塗装、研磨、塗装を繰り返すことにより、奥行き感のある(厚い塗膜)平滑な仕上げが可能となり、非常に塗装感のある美麗な意匠を得ることができる。
一方、意匠性に加え、耐久性や暖房機能等各種の機能を備えた床材に対するニーズがある。しかし、上記天然木材に塗装を施す場合、ホットカーペット、暖房器具等からの熱により天然木材が収縮し床材表面に亀裂が入ったり、塗膜が剥がれるおそれがある。
また、例えば絵柄印刷層を設けた薄葉紙を厚さ6〜15mm程度のラワン合板等の木質基材上に貼り合わせた後、塗装を施した床材がある。この床材には、塗装感があり、しかも、絵柄印刷層に耐候性のあるインキを使用すれば耐候性、耐熱性等の耐久性を付与することが可能となる。しかしながら、塗装を施す際、薄葉紙全体に未硬化状態の塗料が浸透・硬化することはほぼ不可能であるため、紙質部分が残存することにより塗膜が紙質部分で剥離するおそれがある。
近年、木質基材上に、オレフィン系熱可塑性樹脂からなる合成樹脂製シートを積層し、さらに、表面保護層を備えた床材用化粧シートが開発されている(特許文献1)。この床材用化粧シートを用いて得られる床用化粧材は、耐擦傷性、耐磨耗性、耐水性、耐汚染性等の点で、天然木材からなる床材より優れている。また、この床用化粧材は、塗膜の密着性にもある程度優れている。
一方、奥行き感のある床用化粧材を得るために、床用化粧材に形成する塗膜の厚みを大きくすることが求められている。
しかしながら、塗膜の厚みを大きくする場合、床用化粧シートの塗膜形成面には、より高い塗膜密着性が求められる。
特開2001−123647
本発明は、塗膜の密着性に優れた床材用化粧シートを提供することを主な目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の塗膜形成用プライマー層が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の床材用化粧シートに関する。
1. ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透
明性樹脂層、及びプライマー層が順に形成されてなる床材用化粧シートであって、
前記プライマー層が、1)アクリル成分の共重合比率が65%以下のアクリル−ウレタン共重合体樹脂及び2)イソシアネートにより形成されてなる塗膜形成用プライマー層である、床材用化粧シート。
2. アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率が20〜65%である上記項1に記載の床材用化粧シート。
3. アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率が20〜40%である上記項1に記載の床材用化粧シート。
4. 前記プライマー層が、アクリル−ウレタン共重合体樹脂及びイソシアネートの合計量100重量部に対して、シリカを1.5〜5.5重量部含有する上記項1〜3のいずれかに記載の床材用化粧シート。
5. 前記プライマー層が着色されている、請求項1〜4のいずれかに記載の床材用化粧シート。
6. 基材シート裏面に、厚み150μm以上の合成樹脂層を有する上記項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シート。
7. 前記透明性樹脂層の厚みが、200μm以上である上記項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シート。
8. 上記項1〜7のいずれかに記載の床材用化粧シートを有する床用化粧材であって、前記塗膜形成用プライマー層上に塗膜が形成されてなる床用化粧材。
本発明の床材用化粧シートは、塗膜を形成させる面に、1)アクリル成分の共重合比率が65%以下のアクリル−ウレタン共重合体樹脂及び2)イソシアネートにより形成されてなる塗膜形成用プライマー層を有することにより、高い塗膜密着性を実現できる。
特に、前記アクリル−ウレタン共重合体樹脂のアクリル成分の共重合比率が20%以上の場合、床材用化粧材により優れた耐候性を付与できる。さらに、アクリル成分の共重合比率が40%以下の場合、厚みの大きい床材用化粧シートに対しても、優れた塗膜密着性を付与できる。
また、前記プライマー層が着色されている場合、前記化粧シートに、立体感及び奥行き感を効果的に持たせることができる。しかも、前記着色されたプライマー層には、経時的な色劣化がほとんどない。
さらに、本発明の床材用化粧シートが、基材シート裏面に厚み150μm以上の合成樹脂層を有する場合、又は前記合成樹脂層を設ける代わりに透明性樹脂層の厚みを200μm以上とする場合、優れた耐キャスター性、耐衝撃性等を床用化粧材に付与できる。特に、透明性樹脂層の厚みが200μm以上の場合、前記絵柄模様層の絵柄が、より立体的に見えるようになり、床用化粧材の意匠性が向上する。
図1は、実施例1で作製した床用化粧材の概念図(断面図)である。
本発明の床材用化粧シートは、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、及びプライマー層が順に形成されてなる床材用化粧シートであって、
前記プライマー層が、1)アクリル成分の共重合比率が65%以下のアクリル−ウレタン共重合体樹脂及び2)イソシアネートにより形成されてなる塗膜形成用プライマー層である。
本発明の床材用化粧シートの厚みは、特に限定されず、床用化粧材の設置場所等に応じて適宜設定すればよい。例えば高い耐久性が要求される場所においては、床材用化粧シートの厚みは、250μm以上が好ましく、400〜600μmがより好ましい。床材用化粧シートの厚みを250μm以上とすることにより、より優れた耐凹み傷性、耐衝撃性、耐キャスター等を床材用化粧材に付与できる。
基材シート
基材シートとしては、ポリオレフィン系樹脂からなるシートを用いる。通常は、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを使用すればよい。
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、特にポリプロピレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が好ましい。
ポリプロピレンを主成分とする単独又は共重合体も好ましく、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
その他、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントにアイソタクチックポリプロピレン、ソフトセグメントにアタクチックポリプロピレンを使用したブロックポリマーである。特に、アイソタクチックポリプロピレンからなるハードセグメントとアタクチックポリプロピレンからなるソフトセグメントとを重量比80:20で混合したものが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム状に成形すればよい。
基材シートの厚みは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常40〜150μm、好ましくは50〜100μm程度である。
基材シートには、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤のほか、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、着色剤(下記参照)などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。基材シートの着色態様には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)とがあり、これらは任意に選択できる。例えば、被着材(化粧シートを接着する基材)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を
選択すればよい。一方、被着材の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、基材シート表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
基材シート裏面(被着材貼着面)には、被着材の接着を容易とするための裏面プライマー層を設けてもよい。また、基材シートの上面(被着材貼着面とは逆面)には、絵柄模様層の形成を容易とするための印刷用プライマー層を設けてもよい。
前記裏面プライマー層及び印刷用プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートの片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、樹脂成分を溶剤に分散させたものを用いることができる。樹脂成分としては、例えば、アクリル−ウレタン系樹脂、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)等が挙げられる。
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m、好ましくは0.1〜50g/m程度である。
前記裏面プライマー層及び印刷用プライマー層の乾燥後の厚みは特に限定されないが、それぞれ通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
合成樹脂層
基材シート裏面(被着材貼着面)又は裏面プライマー層上には、さらに、厚み150μm以上、好ましくは250〜500μmの合成樹脂層を形成してもよい。
厚み150μm以上の合成樹脂層を形成することにより、耐キャスター性、耐衝撃性等を有する床用化粧材を好適に得ることができる。
厚み150μm以上の合成樹脂層を形成する場合、厚み250μm以上の床材用化粧シートを得ることができる。
合成樹脂層の樹脂成分としては、特に限定されず、例えばポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート等が挙げられる。また、非晶性ポリエチレンテレフタレート(いわゆるA−PET)〔三菱化学(株):ノバクリアー(商品名)〕、PETG等も好適に用いることができる。これらは、一種又は二種以上で用いることができる。この中でも、特にポリプロピレン及びA−PETの少なくとも1種が好ましい。ポリプロピレンとしては、例えばホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。この中でも特に、ホモポリプロピレンが望ましい。なお、A−PETは、耐熱性を付与する目的で、PENと共に用いることが望ましい。
さらに、前記合成樹脂層には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。例えば、合
成樹脂層の樹脂成分としてポリプロピレンを使用する場合、耐候性を付与する目的で、紫外線吸収剤及び光安定剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としては限定的ではないが、例えばヒンダードアミン系光安定剤を好適に用いることができる。また、前記合成樹脂層には、必要に応じて、結晶化核剤を配合してもよい。
合成樹脂層は、上記樹脂成分を、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により基材シートの上にラミネートしてもよく、また既成のフィルムを用いてもよい。
絵柄模様層
基材シートの上(被着材貼着面とは逆面、以下各層において同じ側を指す)には、絵柄模様層が形成されている。
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着剤樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すればよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷
法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
着色隠蔽層
基材シートと絵柄模様層との間には、必要に応じて、さらに着色隠蔽層を形成してもよい。着色隠蔽層は、化粧シートのおもて面から被着材の地色を隠蔽したい場合に設けられる。基材シートが透明性である場合は勿論、基材シートが隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化するために形成してもよい。
着色隠蔽層を形成するインクとしては、絵柄模様層を形成するインクであって隠蔽着色が可能なものが使用できる。
着色隠蔽層の形成方法は、基材シート全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、前記したロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が好ましいものとして挙げられる。
着色隠蔽層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は0.2〜10μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜5μm程度である。
透明性接着剤層
絵柄模様層の上には、透明性接着剤層が形成されている。透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。この接着剤層は、絵柄模様層と透明性ポリプロピレン系樹脂層とを接着するために形成されている。
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤を使用できる。
化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗工後、乾燥・硬化させることにより形成できる。乾燥温度・乾燥時間等の条件は特に限定されず、接着剤の種類に応じて適宜設定すればよい。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
接着剤層の厚みは特に限定されないが、乾燥後の厚みが0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm程度である。
透明性樹脂層
透明性接着剤層の上には、透明性樹脂層が形成されている。透明性樹脂層は、透明性である限り、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
透明性樹脂層に含まれる樹脂成分は限定的ではないが、熱可塑性樹脂であれば好ましく、特にポリプロピレンが好ましく、ホモポリプロピレンがより好ましい。透明性樹脂層は、実質的に上記ポリプロピレン系樹脂によって形成されていることが好ましい。
透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、難燃剤、滑剤、酸化防剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等)などの添加剤を添加することができる。特に耐候性を向上させるためには、光安定剤の添加が好ましい。
紫外線吸収剤としては、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系等の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。また、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機系紫外線吸収剤も使用できる。
ラジカル捕捉剤としては、例えば、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤などが挙げられる。
透明性樹脂層は、例えば、樹脂を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により形成する。また既成のフィルムを用いてもよい。
透明性樹脂層の厚みは通常20〜300μm程度とすればよい。
特に、本発明の床材用化粧シートにおいて、基材シート裏面(又は裏面プライマー層)に上記合成樹脂層を形成する代わりに、透明性樹脂層の厚みを大きくする、具体的には、透明性樹脂層の厚みを200μm以上、好ましくは350〜600μmとすることにより、上記合成樹脂層を形成する場合と同程度乃至それ以上の耐キャスター性、耐衝撃性等を床用化粧材に付与できる。
しかも、上記合成樹脂層を形成する代わりに、透明性樹脂層の厚みを200μm以上とすることにより、前記絵柄模様層の絵柄が、より立体的に見えるようになり、床用化粧材の意匠性が向上する。
透明性樹脂層の厚みを200μm以上とする場合、厚み250μm以上の床材用化粧シートを得ることができる。
塗膜形成用プライマー層
透明性樹脂層の上には、塗膜形成用プライマー層が形成されている。
塗膜形成用プライマー層は、アクリル−ウレタン共重合体樹脂及びイソシアネートにより形成される。
前記アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率は、65%以下、好ましくは20〜65%、より好ましくは20〜40%である。アクリル成分の共重合比率が65%以下の場合、床材用化粧シートに優れた塗膜密着性を付与できる。
また、アクリル成分の共重合比率が20%以上の場合、床材用化粧材に優れた耐候性を付与できる。
さらに、アクリル成分の共重合比率が40%以下の場合、より優れた塗膜密着性を付与できる。通常、床材用化粧シートの厚みが大きくなるに従い、塗膜と床材用化粧シートとの
伸縮率の差によって生じるせん断応力が大きくなる傾向がある。そのため、環境条件(光、気温等)等の影響により、塗膜形成用プライマー層と塗膜との間の密着性が経時的に低下し、塗膜が剥がれるおそれがある。
本発明の床材用化粧シートは、アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率が40%以下の場合、床材用化粧シートの厚みが大きい場合(例えば、床材用化粧シートの厚みが250μm以上の場合)においても、優れた塗膜密着性を発揮できる。
アクリル−ウレタン共重合体樹脂及びイソシアネートにより形成されてなる塗膜形成用プライマー層としては、例えば、アクリル−ウレタンブロック共重合体を主剤とし、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂により形成されてなる樹脂層が挙げられる。
以下、塗膜形成用プライマー層について、この2液硬化型ウレタン樹脂により形成されてなる樹脂層を代表例として具体的に説明する。
上記アクリル−ウレタンブロック共重合体とは、アクリル系単量体の重合反応によって得られるアクリル単量体の連鎖部分(アクリル成分)(A)を有し、且つ、アクリル単量体の連鎖(又は他の単量体との共重合による連鎖)を一部含んでいてもよいが、少なくともアクリル単量体の連鎖(又は他の単量体との共重合による連鎖)以外の連鎖部分を含むヒドロキシル基含有化合物(B)と、該ヒドロキシル基含有化合物とイソシアネート基含有化合物(C)との反応(ウレタン反応)で得られるウレタン結合含有部分(ウレタン成分)(D)とを有する化合物である。
前記ヒドロキシル基含有化合物(B)は、アクリル系単量体の重合反応を利用して得られるアクリルポリオール(例えば、ポリカーボネートポリオール等)でもよいが、それ以外のポリオールを利用することによって、物性調整の自由度が増し、より幅広い用途に適した重合体とすることができる。
アクリル−ウレタンブロック共重合体は、例えば、ポリカーボネートポリオール(B)とポリイソシアネート(C)とを反応させて得たポリカーボネートポリウレタン(D)と、アクリル系単量体を主成分とするアクリルポリオール(A)との反応により得られる。その他、アクリル系単量体を主成分とするアクリルポリオール(A)、ポリカーボネートポリオール(B)及びポリイソシアネート(C)の3化合物を反応させても得られる。
アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらアクリル系単量体は1種又は2種以上で用いてもよい。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
上記アクリル−ウレタンブロック共重合体のアクリル成分は、上記例示のアクリル系単量体からなる重合体、又は上記例示の単量体からなるプレポリマー等の1種若しくは2種以上からなるアクリル系単量体の連鎖部分である。
該アクリル−ウレタンブロック共重合体のウレタン成分を構成するポリオール成分としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いてもよい。
また、該ウレタン成分を構成するイソシアネート成分としては、耐候性を有するものが好ましい。耐候性を有するイソシアネートとしては、脂環式イソシアネート及び脂肪族イソシアネートが好ましい。なお、脂環式イソシアネートと脂肪族イソシアネートとを併用しても良い。脂肪族又は脂環式のイソシアネートを用いることにより、これらイソシアネート自体の耐加水分解性、耐熱性等も優れていることから、プライマー層自体の耐候性を高めることができる。故に、塗膜形成用プライマー層と塗膜との経時的な密着性の低下を防げる。
脂環式イソシアネートとしては、例えば、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、水素添加MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)等を用いることができる。
脂肪族イソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。なお、これらは、1種又は2種以上で使用できる。
硬化剤とするイソシアネートとしては、イソシアネート自体の耐加水分解性、耐熱性等の観点から、上記脂肪族又は脂環式のイソシアネートが好ましい。
塗膜形成用プライマー層には、必要に応じて、添加剤を添加することができる。添加剤としては特に、シリカが好ましい。シリカを添加することにより、床材用化粧シートを巻き取る場合に生じるブロッキングを有効に防止できる。
シリカは、一般的に粉末状のものを使用する。この場合、シリカの平均粒子径は、特に限定されないが、1〜5μm程度が好ましい。このようなシリカ粉末は公知又は市販のものを使用すればよい。
シリカの添加量は、アクリル−ウレタン共重合体樹脂及びイソシアネートの合計量100重量部に対して、1.5〜5.5重量部が好ましく、3.5〜4.5重量部がより好ましい。
塗膜形成用プライマー層は、高い密着性を有する。本発明の床材用化粧シートは、その様なプライマー層を最表面に有するため、ロール状に巻き取った場合、ブロッキングが生じる傾向がある。本発明の床材用化粧シートでは、シリカの添加量を1.5重量部以上とすることにより、ブロッキングをより効果的に防止できる。
また、シリカを添加する場合、添加量が多すぎると、塗膜形成用プライマー層と塗膜との経時的な密着性の低下を引き起こすおそれがある。特に、高温高湿雰囲気下において塗膜の密着性が低下しやすくなる。本発明の床材用化粧シートでは、シリカの添加量を5.5重量部以下とすることにより、高温高湿雰囲気下における塗膜の密着性の低下を効果的に防止できる。
塗膜形成用プライマー層には、さらに、着色剤を添加してもよい。着色剤を添加することにより、前記プライマー層を着色することができる。前記プライマー層が着色されている場合、本発明の床材用化粧シートに、立体感及び奥行き感を効果的に持たせることができる。しかも、前記着色されたプライマー層には、経時的な色劣化がほとんどない。
前記着色剤としては、上記絵柄模様層の形成に用いられる着色剤を使用できる。
また、塗膜形成用プライマー層には、紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、サリチル酸エステル系等の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。
塗膜形成用プライマー層は、ロールコート等の公知の塗工法で形成すればよい。その際、塗膜形成用プライマー層形成に先だって、形成面、つまり透明樹脂層表面に、必要に応じ適宜、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面易接着処理を施してもよい。
塗膜形成用プライマー層上には、必要に応じて、エンボス加工により凹凸模様を賦型しても良い。凹凸模様上に塗膜を形成することにより塗装感のある意匠表現が可能となる。なお、塗膜形成用プライマー層を形成する前に、透明性樹脂層上に凹凸模様を賦型してもよいが、この場合、凹凸模様の凹部の底部に塗膜形成用プライマー層を形成しにくい。そのため、塗膜形成用プライマー層を形成した後、その上から凹凸模様を賦型することが好ましい。
床用化粧材
本発明の床材用化粧シートは、各種被着材と接合することにより、床用化粧材にできる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
このような被着体の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
被着材と接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
塗膜の形成
本発明の床用化粧材は、上記床材用化粧シートを有する床用化粧材であって、前記塗膜形成用プライマー層上に塗膜が形成されてなるものである。特に、本発明の床用化粧材においては、塗膜は、塗膜形成用プライマー層に強固に密着している。
前記床用化粧材の塗膜形成用プライマー層上には、様々な塗膜を形成できる。塗膜を構成する樹脂成分としては、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の硬化型樹脂、あるいは、これらの1種ないしそれ以上からなる混合樹脂等が挙げられる。
塗膜は、1層又は2層以上で形成することができる。
塗膜としては、特に、電離放射線硬化型樹脂を用いることにより形成される透明性表面保護層が好ましい。電離放射線硬化型樹脂を用いて透明性表面保護層を形成することにより、より耐擦傷性、耐候性等に優れた床用化粧材を得ることができる。特に、本発明の床材用化粧シートは、塗膜として密着性確保が難しい電離放射線硬化性樹脂を適用しても、高い密着性を確保できる点で優れている。
以下、本発明の床材用化粧シートの塗膜形成用プライマー層上に形成できる塗膜の代表例として、前記透明性表面保護層について具体的に説明する。
電離放射性硬化型樹脂は、公知のもの又は市販品を使用することができる。具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基をもつプレポリマー、オリゴマー及び単量体の少なくとも1種を含む組成物を用いる。
前記のプレポリマー又はオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルメタアクリレート、ポリエーテルメタアクリレート、ポリオールメタアクリレート、メラミンメタアクリレート等のメタアクリレート類、ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等のウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等がある。
単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;、アクリル酸メチル、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸エトキシメチル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ラウリル等のメタアクリル酸エステル類がある。
不飽和酸の置換アミノアルコールエステルとしては、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、メタアクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等がある。
その他、アクリルアミド、メタアクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;、エチルカルビトールアクリレート、エチレングリコールアクリレート等の単官能性化合物;、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオベンジルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等の多官能性化合物;、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオレート、ジペンタエリスリトールテトラチオグリコール等の分子中にチオール基を2個以上もつポリチオール化合物;、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート等の官能基を3個以上もつアクリレート系単量体がある。
電離放射線硬化型樹脂による透明性表面保護層の形成方法は限定的ではないが、例えば、電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)の塗膜に電離放射線を照射することにより
形成できる。電離放射線は、塗料に含まれる電離放射線硬化型樹脂、添加剤である光ラジカル重合開始剤・増感剤に作用してラジカル重合反応を開始できるエネルギーを有するものであればよく、紫外線、X線、γ線等の電磁波が挙げられる。この中でも、塗膜の硬化能力、照射装置の簡便性からは電子線が最も実用性が高い。電子線照射する場合には、例えば、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線照射することにより皮膜を架橋硬化させればよい。
透明性保護層の厚みは限定されないが、通常は固形分として5〜150g/m、特に15〜60μmとすることが望ましい。
なお、得られる床用化粧材の透明性保護層は、表面凹凸を有する場合がある。この表面凹凸は、上記被着材(例えば木質基材)自身の凹凸、接着剤の塗布ムラ等に起因する。この場合、透明性保護層表面を研磨することが好ましい。これにより、該保護層表面が平滑な床用化粧材を好適に得ることができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
床材用化粧シートの作製
図1に示す構成の床材用化粧シートを以下の方法により作製した。
60μm厚の着色ポリオレフィンフィルムからなる基材シート6の上に、アクリル−ウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加してなる樹脂)をメチルエチルケトン及び酢酸ブチルの混合溶剤に溶かした溶液をグラビア印刷法により固形分量が2g/m2となるように塗工して印刷用プライマー
層(図示せず)を形成した。
印刷用プライマー層(図示せず)の上に、アクリル−ウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加してなる樹脂)溶液を印刷インキとしたグラビア印刷法により、4μmの木目絵柄模様層5を形成した。
基材シート6の絵柄模様層5と反対側の面にウレタン−セルロース系樹脂の溶液をグラビア印刷法により固形分量が2g/m2となるように塗工して裏面プライマー層7を形成
した。
なお、前記ウレタン−セルロース系樹脂の溶液は、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトン混合溶剤中に、ウレタン及び硝化綿を添加し、さらに、ヘキサメチレンジイソシアネートをウレタン及び硝化綿の混合物100重量部に対して5重量部添加することにより調製した。
絵柄模様層5の上に、熱硬化性ウレタン樹脂系接着剤を固形分量が8g/m2となるよ
うに塗工し、さらにポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出しし、厚み8μmの透明性接着剤層4及び厚み80μmの透明性樹脂層3を形成した。
透明性樹脂層3の表面にコロナ放電処理を施した後、透明性樹脂層3の上に、アクリル成分の共重合比率が50%(アクリル成分:ウレタン成分=50:50)のアクリル−ウレタンブロック共重合体樹脂(アクリル成分:メタクリル酸メチルを主成分とするアクリルポリオール、ウレタン成分:ポリエステルポリオールとイソホロンジイソシアネート及び水素添加MDI(C)との反応で得られる)を主剤とし、硬化剤としてヘキサメチレンジ
イソシアネート系硬化剤を含む2液硬化型ウレタン樹脂の塗液を塗工し、厚さ2μmの塗膜形成用プライマー層2を形成した。
また、塗工に先立って、前記塗液には、平均粒子径3μmのシリカ及びトリアジン系紫外線吸収剤を上記主剤及び硬化剤の合計量100重量部に対して、それぞれ6.5重量部及び3.7重量部添加した。
以上の方法により、厚み約160μmの床材用化粧シートを作製した。
床用化粧材の作製
床材用化粧シートの裏面プライマー層7に12mmラワン合板を貼着して床用化粧材を作製した。貼着にはウレタン変性エチレン・酢酸ビニル系エマルション接着剤(9g/尺wet)を利用した。
以上の方法により床用化粧材を作製した。
塗膜の形成
塗膜形成用プライマー層2の上に、ウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂をロールコート法により固形分が50g/m2となるように塗工・乾燥して未硬化の電子線硬化型
樹脂層を形成した。その後、酸素濃度200ppmの雰囲気下において、未硬化樹脂層に加速電圧125KeV、5Mradの条件で電子線を照射して樹脂を硬化させて50μm厚の電子線硬化型樹脂層8(透明性表面保護層)を形成した。
実施例2
アクリル−ウレタンブロック共重合体として、アクリル成分の共重合比率が30%(アクリル成分:ウレタン成分=30:70)のアクリル−ウレタンブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法により、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例3
アクリル−ウレタンブロック共重合体として、アクリル成分の共重合比率が15%(アクリル成分:ウレタン成分の含有割合=15:85)のアクリル−ウレタンブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法により、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
比較例1
アクリル−ウレタンブロック共重合体として、アクリル成分の共重合比率が70%(アクリル成分:ウレタン成分=70:30)のアクリル−ウレタンブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法により、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例4
シリカの添加量を、上記主剤及び硬化剤の合計量100重量部に対して、5.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例5
シリカの添加量を、上記主剤及び硬化剤の合計量100重量部に対して、4.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例6
シリカの添加量を、上記主剤及び硬化剤の合計量100重量部に対して、3.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例7
シリカの添加量を、上記主剤及び硬化剤の合計量100重量部に対して、2.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例8
前記2液硬化型ウレタン樹脂の塗液に、着色剤として無機顔料(商品名「PER耐候性イ
エロー」昭和インク工業所製)を上記主剤及び硬化剤の合計量100重量部に対して、8
重量部添加した以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例9
裏面プライマー層7上に、さらに、厚み300μmの合成樹脂層を形成することにより厚み460μmの床材用化粧シートを作製し、その合成樹脂層に12mmラワン合板を貼着する以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
前記合成樹脂層は、ホモポリプロピレン、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、トリアジン系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む組成物をTダイ押出し機により加熱溶融押出しすることにより形成した。なお、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトールの使用量は、ホモポリプロピレン100重量部に対し0.1重量部とした。また、トリアジン系紫外線吸収剤の使用量は、樹脂組成物中、トリアジン系紫外線吸収剤の濃度が2000ppmとなる量とした。さらに、ヒンダードアミン系光安定剤の使用量は、樹脂組成物中、ヒンダードアミン系光安定剤の濃度が1000ppmとなる量とした。
実施例10
アクリル−ウレタンブロック共重合体として、アクリル成分の共重合比率が30%(アクリル成分:ウレタン成分-=30:70)のアクリル−ウレタンブロック共重合体を用
いた以外は実施例9と同様の方法により、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例11
アクリル−ウレタンブロック共重合体樹脂として、アクリル成分の共重合比率が30%(アクリル成分:ウレタン成分=30:70)のアクリル−ウレタンブロック共重合体樹脂(アクリル成分:メタクリル酸メチルを主成分とするアクリルポリオール、ウレタン成分:ポリカーボネートポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとの反応で得られるポリカーボネートポリウレタン)を用いた以外は、実施例9と同様の方法により、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
実施例12
透明性樹脂層3の厚みを400μmとした以外は、実施例1と同様の方法により塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
比較例2
アクリル−ウレタンブロック共重合体として、アクリル成分の共重合比率が70%(アクリル成分:ウレタン成分=70:30)のアクリル−ウレタンブロック共重合体を用いた以外は実施例9と同様の方法により、塗膜を形成した床用化粧材を作製した。
試験例1(塗膜密着性)
実施例1〜3及び8〜11並びに比較例1〜2にて得られた塗膜を形成した床材用化粧材の塗膜密着性を確認した。具体的には、塗膜表面にクロスカットを入れた後、ニチバン製セロテープ(登録商標)を貼付けて急激に剥離する操作を5回連続で行った場合、塗膜が剥離するかどうかを肉眼観察により確認した。
塗膜の剥離がなかったものを○、塗膜が部分的に剥離したもの(試験面積の一部分が剥離
したもの)を△、塗膜が全体的に剥離したもの(試験面積全面が剥離したもの)を×と評価した。
結果を表1及び表2に示す。
試験例2(耐候性)
実施例1〜3及び8〜11並びに比較例1〜2にて得られた塗膜を形成した床用化粧材の耐候性を確認した。
具体的には、超促進型耐候試験機(「アイスーパーUVテスターSUV−131」岩崎電気製)により照度60mW/cmの紫外線を床用化粧材の電子線硬化型樹脂層表面に1
00時間照射した後、塗膜(電子線硬化型樹脂層)表面にクロスカットを入れ、ニチバン製セロテープ(登録商標)を貼付けて剥離する操作を5回連続で行った場合、塗膜が剥離するかどうかを肉眼観察により確認した。
塗膜の剥離がなかったものを○、塗膜が剥離したものを×と評価した。
結果を表1及び表2に示す。
Figure 2015034462
Figure 2015034462
試験例3(ブロッキング試験)
実施例4〜7にて得られる床材用化粧シートを縦5cm×横5cmの正方形に断裁し、シートの塗膜形成用プライマー層2と基材シート6とが接触するようにシートを積層した。得られた積層物に0.49MPaの圧力を加えた状態で40℃のオーブンに24時間放置した。その後、オーブンから積層物を取り出し、積層物を構成するシートを手で剥がし、その時の剥離抵抗力を確認すると共に、積層物の外観を目視により確認した。
積層物を構成するシートを剥離抵抗なく容易に剥がすことができ、且つ、積層物のシート同士の接触部分の外観に変化がないものを○、積層物を構成するシートを剥がす際、剥離抵抗があり、且つ、積層物のシート同士の接触部分の艶が変化していた(基材シート6の艶がプライマー層2の表面に転写されていた)ものを△、積層物を構成するシートを容易に剥がすことができず、且つ、積層物のシート同士の接触部分にて塗膜形成用プライマー層2の(基材シート6への)転写あるいはプライマー層2の凝集破壊が認められるものを×と評価した。
なお、凝集破壊とは、プライマー層2が破壊され、剥離後のシートの両面(プライマー
層2と基材シート6)にプライマー層を構成する樹脂成分が付着した状態を意味する。
結果を表3に示す。
試験例4(耐湿熱試験)
実施例4〜7にて得られた床用化粧材を60℃及び相対湿度90%の恒温恒湿槽内に500時間放置した後、塗膜表面にクロスカットを入れ、ニチバン製セロテープ(登録商標)を貼付けて急激に剥離する操作を5回連続で行った場合、塗膜が剥離するかどうかを肉眼観察により確認した。
塗膜の剥離がなかったものを○、塗膜が部分的に剥離したもの(試験面積の一部分が剥離したもの)を△、塗膜が全体的に剥離したもの(試験面積全面が剥離したもの)を×と評価した。
結果を表3に示す。
Figure 2015034462
試験例5(耐キャスター性)
実施例1、9及び12で得られた塗膜を形成した床用化粧材の耐キャスター性を、耐キャスター試験装置L6−O4(浅野機械製作(株)製)を使用して評価した。評価手順は次の通りである。即ち、試験対象である床用化粧材を試料固定台に固定した。この床用化粧材の表面に3個のキャスターが接しないように調節ハンドルによりキャスター固定台を上げた後に、重さ70kgとなるように荷重台に重りを載せた。次に調整ハンドルを用い3個のキャスターに載せた荷重が加わるようにした。回転速度20rpmの速度、5分間毎に反回転、1000回転とセットし1000回転完了後、調整ハンドルを回してキャスター固定台を浮かせて試験対象である床用化粧材を取り出した。
取り出した床用化粧材の凹み深さを表4に示す。
Figure 2015034462
表4から、実施例9及び12で得られた床用化粧材は、実施例1で得られた床用化粧材に比べ、耐キャスター性に優れていることがわかる。特に、実施例9及び12で得られた床用化粧材は、凹み深さが100μm未満であることから、耐キャスター性の要求される場所において有効に使用できる。
1・・・床材用化粧シート
2・・・塗膜形成用プライマー層
3・・・透明性樹脂層
4・・・透明性接着剤層
5・・・絵柄模様層
6・・・基材シート
7・・・裏面プライマー層
8・・・電子線硬化型樹脂層(塗膜)
9・・・ラワン合板
即ち、本発明は、下記の床用化粧材の製造方法に関する。
1. 少なくとも被着材上にポリオレフィン系樹脂からなる基材シート、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、プライマー層、及び塗膜をこの順に有する床用化粧材の製造方法であって、
(I)基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、及びプライマー層をこの順に積層して床材用化粧シートを得る工程I、
(II)床材用化粧シートの基材シート側の面と、被着材とを接合する工程II、
(III)プライマー層上に、塗膜を形成する工程III、
をこの順に有し、
前記プライマー層が、1)アクリル成分の共重合比率が65%以下のアクリル−ウレタン共重合体樹脂及び2)イソシアネートにより形成されてなる塗膜形成用プライマー層であり、
前記塗膜は、電離放射線硬化型樹脂層である、
床用化粧材の製造方法
2. 前記塗膜は、電子線硬化型樹脂層である上記項1に記載の製造方法。
. アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率が20〜65%である上記項1又は2に記載の製造方法
. アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率が20〜40%である上記項1又は2に記載の製造方法
. 前記プライマー層が、アクリル−ウレタン共重合体樹脂及びイソシアネートの合計量100重量部に対して、シリカを1.5〜5.5重量部含有する上記項1〜のいずれかに記載の製造方法
. 前記プライマー層が着色されている、上記項1〜のいずれかに記載の製造方法
. 基材シート裏面に、厚み150μm以上の合成樹脂層を有する上記項1〜のいずれかに記載の製造方法
. 前記透明性樹脂層の厚みが、200μm以上である上記項1〜のいずれかに記載の製造方法

Claims (8)

  1. ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、及びプライマー層が順に形成されてなる床材用化粧シートであって、
    前記プライマー層が、1)アクリル成分の共重合比率が65%以下のアクリル−ウレタン共重合体樹脂及び2)イソシアネートにより形成されてなる塗膜形成用プライマー層である、床材用化粧シート。
  2. アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率が20〜65%である請求項1に記載の床材用化粧シート。
  3. アクリル−ウレタン共重合体樹脂におけるアクリル成分の共重合比率が20〜40%である請求項1に記載の床材用化粧シート。
  4. 前記プライマー層が、アクリル−ウレタン共重合体樹脂及びイソシアネートの合計量100重量部に対して、シリカを1.5〜5.5重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の床材用化粧シート。
  5. 前記プライマー層が着色されている、請求項1〜4のいずれかに記載の床材用化粧シート。
  6. 基材シート裏面に、厚み150μm以上の合成樹脂層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シート。
  7. 前記透明性樹脂層の厚みが、200μm以上である請求項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シート。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の床材用化粧シートを有する床用化粧材であって、前記塗膜形成用プライマー層上に塗膜が形成されてなる床用化粧材。
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