JP2015024508A - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリオレフィン系フィルムなどの難付着性プラスチックフィルムにも画像形成でき、かつ吐出安定性が良好な水系インクジェットインクを提供する。
【解決手段】濡れ張力が30mN/m以上40mN/m未満のポリオレフィン系フィルムに水系インクジェットインクを吐出する工程と、前記フィルム上に吐出された前記水系インクジェットインクを加熱乾燥させる工程とを含むインクジェット記録方法であって、前記水系インクジェットインクは、色材と、定着樹脂と、水と、水溶性有機溶剤とを含み、前記定着樹脂が、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を10質量%以上50質量%未満含有する(メタ)アクリル樹脂を含む、インクジェット記録方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録方法に関する。
産業用途のインクジェットインクの一つとして、紙や布などのインク吸収性を有する記録媒体のほか;紙の表面に樹脂やクレーなどをコートした印刷用コート紙、あるいはその表面を樹脂層で被覆したものなどのインク吸収性が低い記録媒体や;樹脂フィルムなどのインク吸収性を有しない記録媒体にも直接印字することができるインクジェットインクが検討されている。
そのようなインクジェットインクとしては、有機溶剤をベヒクルとした溶剤系インクジェットインクや、光重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクジェットインクが挙げられる。溶剤系インクジェットインクは、溶剤を乾燥させる際に、溶剤成分の多くを大気中に飛散させるため、VOCが多いという問題がある。また、作業者に対しても、臭気や安全上の影響が懸念され、使用に際しては十分な換気等の設備が必要とされている。一方、紫外線硬化型インクジェットインクは、印字後すぐに硬化させるので、VOCはゼロに近いが、使用するモノマーによっては皮膚感作性を有することがある。また、高価な紫外線照射光源をインクジェットプリンタに組み込む必要があるため、使用できる分野に制限がある。
このような状況を踏まえ、環境負荷が少なく、従来から家庭仕様で広く使用されている水を主成分とする水系のインクジェットインク(水系インク)が検討されている。なかでも、布や紙などのインク吸収性を有する記録媒体のほか、インク吸収性が低いか、あるいはインク吸収性を有しない記録媒体にも印字できる水系インクが種々検討されている(例えば特許文献1〜3)。例えば、特許文献3には、顔料、インク溶解性樹脂としての特定のアクリル樹脂、および有機溶剤を含む水性インクジェットインクなどが提案されている。
ところで、記録媒体としては、安価で、強度が高いことなどから、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系フィルムが幅広い用途で用いられている。しかしながら、ポリプロピレンやポリエチレンなどのフィルムは、ポリオレフィン系フィルムのなかでも特に表面エネルギーが低く、インクの吸収性が低いため、インクが付着しにくいことが知られている。
これに対して、バインダー樹脂としてポリプロピレン系樹脂エマルションを含む水系インクが提案されている(例えば特許文献4)。塗料の分野では、例えばバインダー樹脂として、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン変性アクリル樹脂、またはアクリル酸シクロヘキシル由来の構造を含むアクリル樹脂を含む塗料などが提案されている(例えば、特許文献5および6参照)。
特開2010−89370号公報 特開2009−226764号公報 特開2011−144303号公報 特開2010−116459号公報 特開2007−308528号公報 特開2004−196990号公報
しかしながら、特許文献5および6に示されるバインダー樹脂は、トルエンや酢酸エチル等の溶剤には分散しても、水には分散しにくいことから、水系インクには適さないという問題があった。また、特許文献4に示されるバインダー樹脂を含む水系インクは、吐出安定性や保存安定性が低く、長期的な信頼性が低いという問題があった。
このように、ポリオレフィン系フィルムなどの難付着性プラスチックフィルムにも画像形成でき、かつ吐出安定性や保存安定性が良好な水系インクジェットインクが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリオレフィン系フィルムなどの難付着性プラスチックフィルムにも画像形成でき、かつ吐出安定性が良好な水系インクジェットインクを提供することを目的とする。
[1] 濡れ張力が30mN/m以上40mN/m未満であるポリオレフィン系フィルムに、水系インクジェットインクを吐出する工程と、前記フィルム上に吐出された前記水系インクジェットインクを加熱乾燥させる工程とを含むインクジェット記録方法であって、前記水系インクジェットインクは、色材と、定着樹脂と、水と、水溶性有機溶剤とを含み、前記定着樹脂が、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を10質量%以上50質量%未満含有する(メタ)アクリル樹脂を含む、インクジェット記録方法。
[2] 前記(メタ)アクリル樹脂の含有量が、前記水系インクジェットインク全体に対して3質量%以上10質量%未満である、[1]に記載のインクジェット記録方法。
[3] 前記色材が顔料であって、前記水系インクジェットインクが前記顔料を分散させる分散樹脂をさらに含み、前記分散樹脂が、疎水性ブロックと親水性ブロックとを含むブロック共重合体である、[1]または[2]に記載のインクジェット記録方法。
[4] 前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合法で得られたブロック共重合体である、[3]に記載のインクジェット記録方法。
[5] 前記水溶性有機溶剤が、溶解パラメータの水素結合項と極性項の和ΣSPが8MPa1/2以上18MPa1/2以下である有機溶剤を少なくとも一種含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
[6] 前記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
本発明によれば、ポリオレフィン系フィルムなどの難付着性プラスチックフィルムにも画像形成でき、かつ吐出安定性が良好な水系インクジェットインクを得ることができる。
シングルパス記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す図である。 ノズルを互い違いに配列したヘッドユニットの一例を示す図である。 ヘッドを互い違いに配列したヘッドユニットの一例を示す図である。 スキャン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、水系インクジェットインクに、「脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂」を含有させることで、吐出安定性を損なうことなく、ポリプロピレンやポリエチレンのような難付着性プラスチックの記録媒体上にも、環境に優しい水系インクジェットインクで十分な付着性を有し、高精細で耐擦性に優れた画像を形成できることを見出し、本発明に至った。
上記のインクジェットインクを用いることで、本発明の課題を解決できる理由は定かではないが、以下のように推測される。
従来の水系インクでは、ポリオレフィン系フィルムなどの記録媒体に対する十分な付着性が得られない原因として、1)着弾したインク液滴が記録媒体表面に濡れにくいこと、2)乾燥後のインク皮膜と記録媒体表面との親和性が低いことが考えられる。これに対して本発明では、乾燥後のインク皮膜が「(疎水性の高い)脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂」を含むことで、該(メタ)アクリル樹脂と、極性の低いポリオレフィン系フィルムとの親和性が高まると考えられる。その結果、インク皮膜とポリオレフィン系フィルムとの間に強固な相互作用が生じ、インクの付着性を高めることができると考えられる。また、インクに、表面張力が低い水溶性溶剤(ΣSPが、8MPa1/2以上18MPa1/2以下の有機溶剤)をさらに含有させることで、表面エネルギーが低いポリオレフィン系フィルムに対する濡れ性を高めることができ、インクの付着性を一層高めることができると考えられる。
また、脂環式炭化水素基を有しない従来の(メタ)アクリル樹脂を含有する水系インクは、長期間の使用により、ノズルプレート面のノズル孔周辺部に少しずつインク液滴が蓄積し、吐出不良を生じやすかった。これに対して本発明では、インクが「脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂」を含むことで、ノズルプレート面のノズル孔周辺部へのインク液滴の蓄積がほとんど発生せず、高い吐出安定性が得られることがわかった。これは、「脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂」は、バルキーな脂環式炭化水素基が、ノズルプレート面に施されたバルキーな置換基を有する撥水処理剤からなる層に対して立体反発作用を生じて、ノズル孔周辺部に吸着しにくいためであると考えられる。
1.水系インクジェットインク
本発明に用いられる水系インクジェットインクは、色材と、定着樹脂と、水溶性有機溶剤と、水とを含む。
定着樹脂
定着樹脂は、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂を含む。脂環式炭化水素基とは、炭素原子数5〜10の脂環式炭化水素基であり;その例には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、イソボルニル基などのシクロアルキル基や;シクロペンタジエニル基やシクロペンテニル基などが含まれ、好ましくはシクロヘキシル基である。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂は、エステル部位に脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を一定以上含む。即ち、上記(メタ)アクリル樹脂は、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、それと共重合可能な他のモノマーとの共重合体でありうる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例には、
シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、およびジシクロペンタニルメタクリレート等の単官能(メタ)アクリル酸エステル;
シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート及びジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリル酸エステルなどが含まれる。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、一種類であっても、二種類以上を組み合わせてもよい。
なかでも、ポリオレフィン系フィルムに対する付着性が良好である観点から、シクロヘキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、シクロヘキシルアクリレートやシクロヘキシルメタクリレートがより好ましい。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーは、脂環式炭化水素基を有しない(メタ)アクリル酸エステル、不飽和酸、芳香族ビニル化合物などでありうる。
脂環式炭化水素基を有しない(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルの炭素数は、1〜12であることが好ましく、1〜8であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどが含まれる。
脂環式炭化水素基を有しない(メタ)アクリル酸エステルは、一種類であっても、二種類以上を組み合わせてもよい。二種類以上の脂環式炭化水素基を有しない(メタ)アクリル酸エステルの組み合わせの好ましい例には、メタアクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は1〜12)、およびメタアクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は2〜12)の組み合わせが含まれる。
不飽和酸の例には、アクリル酸、メタアクリル酸などのα,β―不飽和酸や;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和基含有ジカルボン酸などが含まれる。
不飽和酸が有する酸性基の少なくとも一部は、水系溶媒(水溶性有機溶剤と水の混合物)に対する溶解性を高める観点などから、塩基で中和されていることが好ましい。中和する塩基の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、NaOH、KOH等);アミン類(例えば、アルカノールアミン、アルキルアミン等);アンモニアなどが含まれる。なかでも、アンモニアとアミン類の少なくとも一方で中和された樹脂は、記録媒体に定着後のインクから、アンモニアとアミン類の少なくとも一方が水系溶媒と共に蒸発するため、アンモニアとアミン類の少なくとも一方が除去された樹脂の溶解性が低下する。そのような樹脂を含む硬化後のインク皮膜は、耐水性を有するため、好ましい。なかでも、アミン類が好ましく、その具体的な例としては、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジ−n−ブチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノールなどが挙げられる。
芳香族ビニル化合物の例には、スチレン、α−メチルスチレンなどが含まれる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂における、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位の含有割合は、樹脂を構成する全構成単位に対して10質量%以上50質量%未満であることが好ましく、10質量%以上30質量%未満であることがより好ましい。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位の含有割合を一定以上とすることで、ポリオレフィン系フィルムに対する付着性を十分に高めやすく、かつ吐出安定性も得られやすい。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位の含有割合を一定以下とすることで、水に対する分散性を損ないにくい。共重合可能な他のモノマーは、一種類であっても、二種類以上を組み合わせてもよい。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂の酸価は、50〜300mgKOH/gであることが好ましく、50〜130mgKOH/gであることがより好ましい。樹脂の酸価が50mgKOH/g以上であると、水に対する十分な溶解性が得られやすく、樹脂を水系溶媒に十分に溶解させやすい。一方、樹脂の酸価が300mgKOH/g以下であると、インク皮膜が柔らかくなりすぎないため、耐擦性を損ないにくい。
樹脂の酸価は、樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を指し;JIS K 0070の酸価測定、加水分解酸価測定(全酸価測定)によって測定することができる。
中和塩基の含有量は、樹脂の酸価および含有量にもよるが、樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5〜5倍の化学当量数となるように設定されることが好ましい。中和塩基の含有量を、樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5倍以上とすることで、(メタ)アクリル樹脂の分散性を高める効果が十分に得られやすい。一方、中和塩基の含有量を、樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して5倍以下とすることで、インク皮膜の耐水性の低下や、変色、臭気などを抑制しうる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂は、水系溶媒に対して溶解または分散できるものであればよく、水溶性樹脂または水系分散型ポリマー微粒子などでありうる。なかでも、水系溶媒に対する溶解性や安定性が高いことから、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂は、水溶性樹脂であることがより好ましい。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2.0×10〜8.0×10であることが好ましく、2.5×10〜7.0×10であることがより好ましい。重量平均分子量が2.0×10以上であると、インクの定着能力を一定以上に高めうるため、十分な耐擦性が得られやすい。一方、重量平均分子量(Mw)が8.0×10以上であると、インクの粘度の増大による、ノズルからの吐出安定性の低下を抑制しうる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30〜100℃であることが好ましい。Tgが30℃以上であると、十分な耐擦性を有する画像が得られやすく、ブロッキングが生じるおそれも少ない。一方、Tgが100℃以下であると、乾燥後のインク皮膜が硬く脆くなりすぎることもなく、耐擦性を損ないにくいと考えられる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂の含有量は、インク全体に対して3〜10質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。樹脂の含有量が3質量%以上であると、顔料などの色材を記録媒体上に付着させやすい。一方、定着樹脂の含有量が10質量%以下であると、インクの粘度上昇による吐出安定性の低下を抑制しやすい。
定着樹脂は、必要に応じて、上記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂以外の他の樹脂をさらに含んでもよい。そのような他の樹脂の例には、脂環式炭化水素基を有しない(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが含まれる。
色材
色材は、顔料または染料でありうる。得られる画像の耐擦性を高める点などから、顔料が好ましい。
顔料は、公知の無機顔料、有機顔料またはカーボンブラックなどでありうる。なかでも、発色が良好であり、比重が小さく、分散時に沈降しにくい観点などから、カーボンブラックや有機顔料が好ましい。
カーボンブラックの例には、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、もしくはチャンネルブラック等(C.I.ピグメントブラック7)、また市販品としてNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上全て商品名、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等(以上全て商品名、デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上全て商品名、コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等(以上全て商品名、キャボット社製)が挙げられる。
有機顔料の例には、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料およびアゾ系顔料などが含まれる。
有機顔料の具体例には、以下のものが挙げられる。
シアンインクに使用される顔料の例には、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、および60である。
マゼンタインクに使用される顔料の例には、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、209、およびC.I.ピグメントバイオレット19である。
イエローインクに使用される顔料の例には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、および138である。
顔料の含有量は、インク全体に対して0.5質量%〜20質量%程度、好ましくは1質量%〜10質量%程度としうる。
顔料は、安定に分散させるために、顔料分散体としてインクに含まれることが好ましい。顔料分散体は、顔料を分散樹脂で分散させた顔料分散体であってもよいし;顔料が水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料であってもよいし:表面修飾され、分散樹脂を含まなくても分散可能な自己分散顔料などであってもよい。
本発明では、定着樹脂として前述の疎水性の高い脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂を含むことから、顔料微粒子と相互作用しやすく、顔料微粒子を分散させにくくする傾向がある。従って、顔料微粒子を水系溶媒中に安定に分散させやすくするために、顔料微粒子を、分散樹脂で分散させることが好ましい。
分散樹脂
分散樹脂は、疎水性モノマーで構成された疎水性ブロックと、親水性モノマーで構成された親水性ブロックとを含むブロック共重合体であることが好ましい。そのようなブロック共重合体の疎水性ブロックは、顔料と相互作用しやすく;親水性ブロックは、水系溶媒と相互作用しやすいことから、顔料を水系溶媒に分散させやすい。
疎水性ブロックと親水性ブロックとを含むブロック共重合体は、リビングラジカル重合法で得られたブロック共重合体であることが好ましい。リビングラジカル重合法で得られたブロック共重合体は、通常のブロック共重合体に比べて、主鎖部分が、疎水性ブロックと親水性ブロックとが精密に区分され、かつ疎水性ブロック同士または親水基部分同士がそれぞれ密集して存在しやすいため、各ブロックの特性を発現しやすい。それにより、顔料粒子への吸着性に優れ、かつその立体障害効果により、顔料粒子と定着樹脂との間、あるいは顔料粒子同士の間の橋架け構造化を防ぐことも期待できる。本発明では、定着樹脂が前記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂を含むことから、疎水性が比較的高く、顔料粒子の分散性や吐出安定性を高めることがより重要となる。そのような観点でも、分散樹脂は、リビングラジカル重合法によって得られたブロック共重合体であることが好ましい。
リビングラジカル重合法は、具体的には、原子移動ラジカル重合法(ATRP法、SHIJIE DING et al. Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.42,5794−5801(2004))、ニトロキサイド法(NMP法、Chemical Review(2001)101,p3661)、可逆的付加解裂型連鎖移動重合法(RAFT法、特表2000−515181号公報)等の方法の他、特表2008−527130号公報に記載されている方法を参考にして行うことができる。
疎水性ブロックを構成する疎水性モノマーの例には、ベンジルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、アクリロニトリル、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート、ソルビルアクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、置換スチレン、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、酢酸ビニル、酪酸ビニル、および安息香酸ビニル等が含まれる。
親水性ブロックを構成する親水性モノマーの例には、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、クロトン酸、クロトン酸モノエステル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルアクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピリジン、および2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸などが含まれる。ただし、分散樹脂を構成する疎水性モノマーや親水性モノマーは、これらに限定されるものではなく;あくまでも分散樹脂が、リビングラジカル重合法で得られた、疎水性ブロックと親水性ブロックとを含むブロック共重合体であることが、好ましい態様である。
リビングラジカル重合法で得られたブロック共重合体の市販品の例には、EFKA4585(BASF社製)、EFKA7701(BASF社製)、BYK2012(BYK社製)、BYK2015(BYK社製)等が含まれる。
分散樹脂は、その他の分散樹脂をさらに含みうる。他の分散樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましく;そのような水溶性樹脂の例には、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等が含まれる。水溶性樹脂は、定着樹脂として用いられうる水溶性樹脂であってもよい。
カプセル顔料における水不溶性樹脂は、弱酸性ないし弱塩基性の範囲の水に対して不溶な樹脂である。具体的には、pH4〜10の水溶液に対する溶解度が2%以下である樹脂が好ましい。水不溶性樹脂の例には、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、アクリロニトリル−アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコン−アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などが含まれる。カプセル顔料の平均粒子径は、インクの保存安定性、発色性などの観点から、80〜200nm程度であることが好ましい。
カプセル顔料は、公知の方法で製造されうる。例えば、水不溶性樹脂を有機溶剤(例えばメチルエチルケトンなど)に溶解し、さらに塩基成分を加えて、水不溶性樹脂に含まれる酸性基を部分的もしくは完全に中和する。得られた溶液に、顔料と、イオン交換水とを添加して、混合および分散させる。その後、得られた溶液から有機溶剤を除去して、必要に応じてイオン交換水をさらに加えて、カプセル顔料を調製する。または、顔料と、重合性界面活性剤とを分散させた溶液に、モノマーを添加し、重合反応させて顔料を樹脂で被覆する方法などもある。
分散樹脂および水不溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3.0×10〜5.0×10であり、より好ましくは7.0×10〜2.0×10である。
分散樹脂の酸価およびアミン価は、それぞれ0〜100mgKOH/gであることが好ましく、7〜50mgKOH/gであることがより好ましい。樹脂の酸価またはアミン価が一定以上であると、水に対する十分な溶解性が得られやすく、顔料を水系溶媒に十分に分散させやすい。分散樹脂の酸価およびアミン価の測定は、電位差滴定法で測定することができる。
具体的には、分散樹脂の酸価は、分散樹脂の固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数を意味し、JIS K0070に記載の方法により測定することができる。分散樹脂のアミン価は、分散樹脂の固形分1gを中和するのに必要なHCl量に対して当量となるKOHのmg数を意味し、JIS K7237に記載の方法により測定することができる。
分散樹脂および水不溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−30〜100℃程度であり、より好ましくは−10〜80℃程度である。
顔料と分散樹脂の質量比は、顔料/分散樹脂が100/150〜100/30であることが好ましい。分散樹脂が一定以上であると、上記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル樹脂を含むインクであっても、顔料を良好に分散させやすい。分散樹脂が一定以下であると、粘度が増大しすぎるおそれがない。画像の耐久性と、インクの吐出安定性、保存安定性を高める観点などから、100/100〜100/40であることがより好ましい。
顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等により行うことができる。顔料分散体の粗粒分を除去し、顔料微粒子の粒径分布を揃える観点などから、顔料分散体は、インクに添加される前に、遠心分離処理またはフィルターによるろ過処理などが施されていてもよい。
自己分散顔料は、市販品であってもよい。自己分散顔料の市販品の例には、CABO−JET200、CABO−JET300(キャボット社製)、ボンジェットCW1(オリエント化学工業(株)社製)等が含まれる。
水溶性有機溶剤
水溶性有機溶剤は、溶解パラメータ中の極性項および水素結合項の和ΣSPが、8MPa1/2以上18MPa1/2以下、好ましくは8MPa1/2以上15MPa1/2以下の範囲である有機溶剤を少なくとも1種含有することが好ましい。このような有機溶剤は、表面張力が低いことから、表面エネルギーが小さい記録媒体;具体的には、ポリオレフィン系フィルムなどの非吸水性または低吸水性の記録媒体に対してもインクを濡れやすくし、インクの付着性を高めうる。
溶解パラメータ(SP)とは、溶解性の指標として一般に用いられ、分子の凝集エネルギーから導かれる値である。また、溶解パラメータを分散成分、極性成分および水素結合成分の各寄与項に分割したHansenパラメータにおいて、水素結合成分は水素結合項(σh)、極性成分は極性項(σp)で表わされ、単位は(MPa)1/2である。
例えば、Polymer HandBook(Second Edition)第IV章 Solubility Parameter Valueに詳細な記載があり、本発明で使用した有機溶剤の水素結合項(σh)と極性項(σp)は、上記Polymer HandBook(Second Edition)の第VII章 686頁 Table.4に記載の原子団に対するエネルギー寄与項を用いて計算した値を用いた。また、溶解パラメータ中の極性項および水素結合項の和ΣSP(以下、単にΣSPという場合がある)とは、上述したHansenパラメータに定義される極性項(σp)および水素結合項(σh)の和を指すものであり、ΣSP=δp+δhにより算出することができる。
ΣSPが8MPa1/2以上18MPa1/2以下の有機溶剤の例には、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、1−オクタノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等が含まれる。なかでも、記録媒体への濡れ性を高めやすいことから、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(ΣSP=14.3MPa1/2)、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(ΣSP=13.8MPa1/2)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(ΣSP=16.2MPa1/2)などが好ましい。
他の有機溶剤の例には、1,2−アルカンジオール類やアルコール類などが含まれる。1,2−アルカンジオール類の例には、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、および1,2−ヘプタンジオール等が含まれる。アルコール類の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノールなどが含まれる。
水溶性有機溶剤の合計含有量は、インク全体に対して5.0質量%以上40質量%以下の範囲であることが好ましい。そのうち、ΣSPが8MPa1/2以上18MPa1/2以下の有機溶剤の含有量は、水溶性有機溶剤の合計含有量に対して30質量%以上、またはインク全体に対して5.0質量%以上のいずれか多いほうであることが好ましい。
水と水溶性有機溶剤の合計量は、インクの粘度が後述する範囲となるように調整されることが好ましく、例えばインク全体に対して60〜95質量%程度としうる。
水系インクジェットインクは、必要に応じてその他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分の例には、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、浸透剤、pH調整剤、乾燥防止剤(例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素など)等が含まれる。
界面活性剤は、記録媒体上で水性インクを濡れ広がりやすくしうる。界面活性剤は、特に制限はないが、非吸水性の記録媒体(例えばポリオレフィン系フィルム)や低吸水性の記録媒体(例えば印刷本紙)上でも、インクを濡れ広がりやすくできることから、シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が好ましい。シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤をインクに含有させることで、着弾したインク滴のドット径を大きく広げることができ、高濃度でムラの無い高品位な画像を形成することができる。
シリコン系界面活性剤の好ましい例には、ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物が含まれ、その市販品の例には、信越化学工業社製のKF−351A、KF−642、ビッグケミー社製のBYK331、BYK333、BYK345、BYK347、BYK348などが含まれる。
フッ素系界面活性剤は、通常の界面活性剤において、疎水性基を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも一部が、フッ素原子で置換された化合物でありうる。なかでも、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品の例には、DIC社製 商品名:メガファック(Megafac)F、旭硝子社製 商品名:サーフロン(Surflon)、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社製 商品名:フルオラッド(Fluorad)FC、インペリアル・ケミカル・インダストリー社製 商品名:モンフロール(Monflor)、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社製 商品名:ゾニルス(Zonyls)、ファルベベルケ・ヘキスト社 商品名:リコベット(Licowet)VPF、ネオス社 商品名:フタージェント、ビックケミー社 商品名:BYK340(表面調整剤、フッ素変性ポリマー)等が含まれる。
界面活性剤の含有量は、記録媒体上でインクが良好に濡れ広がるようにするために、インクの表面張力が、15mN/m以上35mN/m未満となるように調整されることが好ましい。具体的には、インク全体に対して0.01質量%以上2.0質量%未満であることが好ましい。
防腐剤および防黴剤は、長期にわたってインクの保存安定性を保つ機能を有する。防腐剤および防黴剤は、特に制限されないが、例えば芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などであってよい。
インクの物性
本発明における水系インクジェットインクの、25℃における粘度は、良好な吐出安定性を得る観点などから、1mPa・s以上50mPa・s未満の範囲であることが好ましく、3〜20mPa・sの範囲であることがより好ましい。インクの粘度は、インク温度を25℃に調整し、振動式粘度計(ビスコメイトVM−1L、CBCマテリアルズ社製)を用いて測定することができる。
本発明における水系インクジェットインクの、25℃における表面張力は、低吸水性または非吸水性の記録媒体上でも、インクを濡れ広がりやすくするために、15mN/m以上35mN/m未満であることが好ましく、20〜30mN/mであることがより好ましい。インクの表面張力は、協和界面科学製の表面張力計CBVP−Zを使用して、25℃において、白金プレート法にて測定されうる。
水系インクジェットインクの25℃における表面張力と、記録媒体の25℃における表面張力との差は20mN/m以下であることが好ましく、10mN/m以下であることがより好ましい。
2.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、1)記録媒体上に水系インクジェットインクを吐出する工程と;2)記録媒体上に吐出された水系インクジェットインクを加熱乾燥させる工程とを含む。水系インクジェットインクは、前述の水系インクジェットインクとしうる。
記録媒体は、吸水性を有する記録媒体、吸水性が低い記録媒体、または吸水性を有しない記録媒体でありうる。
吸水性を有する記録媒体の例には、普通紙、布帛、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙、ダンボール、木材などが含まれる。吸水性が低い記録媒体の例には、印刷本紙などのコート紙などが含まれ;市販品の例には、リコービジネスコーグロス100(株式会社リコー製)、OKトップコート+、OK金藤+、SA金藤+(王子製紙株式会社製)などが含まれる。
吸水性を有しない記録媒体の例には、樹脂基材、金属基材、ガラス基材などが含まれ、好ましくは疎水性樹脂からなる樹脂基材でありうる。疎水性樹脂からなる基材の例には、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが含まれる。なかでも、前述の水系インクジェットインクを良好に付着させうることから、ポリオレフィン系フィルムが好ましく、ポリエチレンまたはポリプロピレンフィルムであることがより好ましい。
ポリオレフィン系フィルムは、表面処理されていても、表面処理されていなくてもよい。前述の水系インクジェットインクを用いることで、表面処理されていないポリオレフィン系フィルムに対しても良好に定着させることができる。
ポリオレフィン系フィルムの濡れ張力は、30mN/m以上40mN/m未満であることが好ましく、30mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。
フィルムの濡れ張力の測定は、JIS K 6768:1999「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」に準拠して行うことができる。即ち、濡れ張力が異なる試験用混合液として、JIS K 6768:1999に準拠したテンションチェッカーペン(春日電気社製)を準備する。そして、これらの試験用混合液を、フィルム試験片の表面に滴下および塗布し、2秒経過した時点での液膜の中央部の状態を目視観察して、濡れを判定する。試験片の表面を正確に2秒間で濡らすことができると判定された混合液の表面張力の数値を、試験片の濡れ張力とする。
インクジェットインクの吐出は、後述するようなインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
記録媒体の加熱は、記録媒体の表面温度が40℃以上60℃以下となるように行うことが好ましい。記録媒体の表面温度が40℃以上であれば、インクの乾燥を促進し、記録媒体への付着性を高めうる。記録媒体の表面温度が60℃以下であれば、インクを十分にレベリングさせうる。記録媒体の加熱は、記録前に行ってもよいし、記録後に行ってもよいし、これらを組み合わせてもよい。
加熱方法は、特に制限されず、記録媒体の裏面を加熱する方法や、記録媒体がヘッド下に搬送される直前に赤外線などで表面を加温する方法などがある。加熱手段は、特に制限されず、赤外線ヒータ、電熱線、UVランプ、ガス、熱風ドライヤなどであり、好ましくは電熱線、赤外線ヒータなどでありうる。
インクの乾燥を促進し、画像の耐久性を高めるためなどから、記録媒体上で乾燥させたインク皮膜を、55℃以上100℃未満の温度でさらに加熱することが好ましい。
前述の通り、本発明における水系インクジェットインクは、定着樹脂として「脂環式炭化水素基を一定以上有する(メタ)アクリル樹脂」を含む。上記(メタ)アクリル樹脂はバルキーな脂環式炭化水素基を有することから、ノズルプレート面に施されたバルキーな置換基を有する撥水処理剤からなる層に対して立体反発作用を生じやすく、ノズル孔周辺部に付着しにくい。従って、インクを長時間吐出させても、ノズル詰まりを生じにくく、高い吐出安定性を有しうる。
さらに、記録媒体上に吐出したインク皮膜を加熱乾燥して固化させる。加熱乾燥後のインク皮膜に含まれる上記(メタ)アクリル樹脂は、脂環式炭化水素基に由来する高い疎水性を有するため、記録媒体であるポリオレフィン系フィルムに対して高い付着性を有しうる。そのため、ポリオレフィン系フィルムなどの難付着性の記録媒体に対しても、高精細かつ耐擦性に優れた画像を形成できる。
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置は、シングルパス記録方式のものと、スキャン記録方式のものとがある。求められる画像の解像度や記録速度に応じて選択されればよいが、高速記録の観点では、シングルパス記録方式が好ましい。
図1は、シングルパス記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す図である。図1に示されるように、インクジェット記録装置10は、複数のヘッド111〜114を収容するヘッドユニット11と、記録媒体12の全幅を覆い、かつヘッドユニット11の上流側に配置された加熱手段13と、ヘッドユニット11の下流側に配置され、記録媒体12の裏面を加温する加熱手段(不図示)とを有しうる。
ヘッドユニット11は、記録媒体12の全幅を覆うように固定配置されており、各色毎に設けられた複数のヘッド111〜114で構成される。ヘッド111〜114は、オンデマンド方式のものであっても、コンティニュアス方式のものであってもよい。吐出方式は、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)などでありうる。なかでも、30μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドを使用することが好ましい。
ヘッド111と112、あるいはヘッド113と114のノズル孔15は、互い違いとなるように配列されている(図2参照)。印字幅を広くする場合、ヘッドを互い違いに配置したラインヘッドユニットを用いてもよい(図3参照)。
加熱手段13は、ヘッドユニット11の、記録媒体12の搬送方向上流側に配置された赤外線ヒータなどであり、記録前の記録媒体12を予め加温できるようになっている。
インクジェット記録装置10は、必要に応じて塗布ローラ14を有してもよい。塗布ローラ14は、ヘッドユニット11の記録媒体12の搬送方向上流側に配置され、記録媒体12に処理液を塗布できるようになっている。
シングルパス方式のインクジェット記録装置10では、記録媒体12の表面を、予め加熱手段13で加温する。必要に応じて記録媒体12上に処理液を塗布してもよい。そして、記録媒体12をヘッドユニット11に搬送し、ヘッドユニット11のヘッド111〜114からインクを吐出して、記録媒体12上に付着(着弾)させる。そして、記録媒体12の裏面を加熱手段(不図示)で加熱して、記録媒体12上に付着したインク滴を加熱乾燥させる。
図4は、スキャン記録方式のインクジェット記録装置40の要部の構成の一例を示す図である。図4に示されるように、インクジェット記録装置40は、記録媒体12の全幅よりも狭い幅であり、かつ複数のヘッド411〜415を収容するヘッドユニット41と、それを記録媒体12の幅方向に可動させるためのガイド部42と、ヘッドユニット41の記録媒体の裏面を加熱する加熱手段43とを有する。
スキャン記録方式のインクジェット記録装置40では、ヘッドユニット41がガイド部42に沿って記録媒体12の幅方向に移動しながら、ヘッドユニット41に収容されたヘッド411〜415からインクを吐出する。ヘッドユニット41が記録媒体12の幅方向に移動しきった後(パス毎に)、搬送ローラ45により記録媒体12を送る。そして、記録媒体12の裏面を加熱手段43で加熱して、インク液滴を乾燥させる。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.インクの材料
1)定着樹脂
(定着樹脂P−1の合成)
滴下ロート、窒素導入官、還流冷却官、温度計および攪拌装置を備えたフラスコに、メチルエチルケトン50部を加え、窒素バブリングしながら、75℃に加温した。これに、モノマー(メタクリル酸9部、メタクリル酸メチル67部、アクリル酸エチル9部およびアクリル酸シクロヘキシル15部)と、メチルエチルケトン50部と、開始剤(AIBN:2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)0.5部との混合物を、滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下後、さらに6時間、加熱還流を行った。得られた溶液を放冷した後、減圧下で加熱してメチルエチルケトンを留去し、共重合体を得た。
一方、イオン交換水450部に対して、モノマーとして添加したアクリル酸の1.05倍モル相当のジメチルアミノエタノールを溶解させた液を調製した。この液に、上記共重合体を溶解させてイオン交換水でさらに調整し、固形分濃度20質量%の定着樹脂P−1の溶液(樹脂溶液)を得た。
(定着樹脂P−2〜P−7の合成)
上記定着樹脂P−1の合成において、モノマー組成を表1に示されるように変更した以外は同様にして定着樹脂P−2〜P−7を合成した。また、定着樹脂の重量平均分子量は、開始剤量と重合条件で適宜調整した。
得られた定着樹脂の酸価、ガラス転移温度(Tg)および重量平均分子量を、下記の方法に従って測定した。
(酸価の測定)
酸価の測定は、JISのK0070に規定された方法で行った。即ち、上記樹脂溶液を乾燥固化して、樹脂を得た。得られた樹脂10gを、300mlの三角フラスコに秤量し、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒を約50ml加えて樹脂を溶解させた。次いで、この溶液を、フェノールフタレイン指示薬を用いて、予め標定された0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定した。そして、滴定に用いた水酸化カリウムエタノール溶液の量から、下記計算式(1)で酸価(mgKOH/g)を求めた。
樹脂が、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒約50mlに溶解しない場合は、エタノール50ml、あるいはエタノール/純水=1:1の混合溶媒約50mlのいずれか溶解するほうを用いて、同様の滴定を行った。
計算式(1)
A=(B×f×5.611)/S
(式中、Aは樹脂の酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.1mol/リットル水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Sは樹脂の質量(g)、5.611は水酸化カリウムの式量の1/10の値(56.11/10)である)
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
DSC−7示差走査カロリメータ(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー社製)を用いて、以下の手順でTgを測定した。
1)まず、定着樹脂10.00mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パン(KITNO.0219−0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットした。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用した。
2)次いで、測定温度0〜130℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−Cool−Heatの温度制御を行った。Tgの測定は、窒素気流条件下で行った。
3)そして、2回目のHeatのデータにおいて、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とした。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は以下の通りとした。
(測定条件)
溶媒 : テトラヒドロフラン
カラム : 東ソー製TSKgel G4000+2500+2000HXL
カラム温度: 40℃
注入量 : 100μl
検出器 : RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ : L6000(日立製作所(株)製)
流量 : 1.0ml/min
校正曲線 : 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13のサンプルによる校正曲線を使用した。13のサンプルは、ほぼ等間隔に用いた。
定着樹脂P−1〜P−7の組成および物性を表1に示す。
Figure 2015024508
2)分散樹脂
EFKA−4585(BASF社製):リビングラジカル重合法で合成されたアクリル系グラジェントブロック共重合体(酸価=20mgKOH)
BYK−2012(BASF社製):リビングラジカル重合法で合成されたくし型アクリル系ブロック共重合体(アミン価=7mgKOH/g、酸価=7mgKOH/g)
BYK−2015(BASF社製):リビングラジカル重合法で合成されたくし型アクリル系ブロック共重合体(酸価=10mgKOH/g)
EFKA−4550(BASF社製):アクリル系ランダム共重合体(アミン価=30mgKOH)
上記各分散樹脂の酸価は、JIS K0070に記載の方法で測定し;アミン価は、JIS K7237に記載の方法で測定した。
2.インクの調製および画像形成
(実施例1)
顔料分散体の調製
イオン交換水62質量部に、分散樹脂としてEFKA−4550(固形分50%、BASF社製)20質量部と、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの3質量部とを加えた。この溶液に、C.I.ピグメントブルー15:3を15質量部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分15質量%のシアン顔料分散体を得た。
インクの調製
シアン顔料分散体が4.0質量%(固形分濃度)、定着樹脂P−1が5.0質量%(固形分濃度)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(ΣSPが16.2 MPa1/2である有機溶剤)が10.0質量%、1,2−ヘキサンジオール(ΣSPが23.6 MPa1/2である有機溶剤)が8.0質量%、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(ΣSPが14.3 MPa1/2である有機溶剤)が5.0質量%、シリコン系界面活性剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー社製BYK−333)が0.1質量%となり、これにイオン交換水をさらに加えて100質量%となるように各成分を混合した。得られた溶液を、5μmフィルターにてろ過して、シアンインクC−1を得た。
得られたシアンインクC−1の粘度および表面張力を、以下の方法で測定した結果、粘度は5〜15mPa・sの範囲であり;表面張力は20〜30mN/mの範囲であった。
(粘度)
インクの粘度は、インク温度を25℃に調整し、振動式粘度計(ビスコメイトVM−1L、CBCマテリアルズ社製)を用いて測定した。
(表面張力の測定)
インクの表面張力は、協和界面科学製の表面張力計CBVP−Zを使用して、白金プレート法で、25℃における表面張力を測定した。
画像形成
上記調製したシアンインクC−1を、ノズル口径28μm、駆動周波数10kHz、ノズル数512、最小液滴量14pl、ノズル密度360dpi(dpiは、2.54cmあたりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載したスキャン型インクジェットプリンタのインクジェットヘッドに装填した。
インクジェットプリンタは、接触式ヒーターによって記録媒体を裏面(ヘッドと対向する面とは反対の面)から任意に加温できるようにした。また、ヘッド格納ポジションにインク空打ちポジションとブレードワイプ式のメンテナンスユニットを備え、任意の頻度でヘッドクリーニングができるようにした。
そして、インクジェットプリンタを用いて、以下の各記録媒体に、印字解像度720dpi×720dpiで、10%Dutyから100%Dutyまで10%Duty刻みで、10cm×10cmの長方形のベタ画像を、片方向8Pass印字によりそれぞれ形成した。
記録媒体A:表面未処理のポリプロピレンフィルム(FP、フタムラ化学社製):濡れ張力30mN/m
記録媒体B:表面処理のポリエチレンフィルム(LL-MTNAS、フタムラ化学社製):濡れ張力36mN/m
記録媒体C:表面処理のポリプロピレンフィルム(サントックスOP−PA30、サン・トックス社製):濡れ張力38mN/m
フィルムの濡れ張力の測定は、JIS K 6768:1999「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」に準拠して行った。即ち、濡れ張力が異なる試験用混合液として、JIS K 6768:1999に準拠したテンションチェッカーペン(春日電気社製)を準備した。これらの試験用混合液を、フィルム試験片の表面に滴下および塗布し、2秒経過した時点での液膜の中央部の状態を目視観察して、濡れを判定した。そして、試験片の表面を正確に2秒間で濡らすことができると判定された混合液の表面張力の数値を、試験片の濡れ張力とした。
画像形成時は、記録媒体の表面温度が50℃になるように、記録媒体の裏面をヒーターで加温した。記録媒体の表面温度は、非接触温度計(IT−530N形 堀場製作所社製)を用いて測定した。ノズル面と記録媒体との距離は1.5mmに設定した。画像形成した後、速やかに記録媒体を60℃のホットプレート上に静置し、画像を乾燥させた。
(濃度ムラ耐性)
形成した100%Dutyベタ画像部分の、画像表面の均一さ(インク付与部分の濃度ムラ)を目視観察し、下記の基準に従って濃度ムラ耐性の評価を行った。
◎:ベタ画像が均一でムラの発生は全く認められない
○:ベタ画像での濃度ムラは目立たないが、ベタ画像と未印字部との境界部で、極弱い濃淡ムラのある個所が散在する
△:ベタ画像部で濃淡ムラが認められ、均一なベタ画像として認められない
×:目視観察で、ハジキやまだらの発生が画像全般に認められmm単位の大きさの濃淡が多数発生している。
上記評価ランクにおいて、○以上が実用上好ましいと判断した。
(耐擦性)
形成した100%Dutyベタ画像部分の、画像表面を乾いた木綿(カナキン3号)で200gの荷重をかけて30回擦った。そして、得られた画像を目視観察して、下記基準に従って耐擦性を評価した。
◎:画像変化は全く認められない
○:僅かながら布への色移りがみられるが、画像変化は全く認められない
△:画像変化がやや認められる
×:白い線状の傷、もしくは画像剥がれが認められる
上記評価ランクにおいて、○以上が実用上好ましいと判断した。
(密着性)
形成した100%Dutyベタ画像部分に、25マスの碁盤目状に切れ目を入れた後、テープで剥離した。テープを剥離した後に得られる画像を目視観察して、下記基準に従って密着性を評価した。
◎:画像変化は全く認められない
○:切れ目部分に僅かながら剥がれが認められる。
△:5マス未満の剥がれが認められる。
×:5マス以上の剥がれが認められる。
上記評価ランクにおいて、○以上が実用上好ましいと判断した。
(吐出安定性)
25℃、相対湿度50%の環境下で、前述の画像形成を連続10回行った。その後、10回目の100%Duty画像を目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性を評価した。
◎:形成した画像において、斜め出射あるいはノズル欠に起因する画像欠陥はまったく認められない
○:形成した画像の書き出し部(数mm)において、極僅かなかすれの発生が認められるが、実用上は許容される品質である
△:形成した画像の書き出し部(数mm)において、明らかなかすれの発生が認められ、実用上問題となる品質である
×:作成画像において、斜め出射あるいはノズル欠に起因する明らかな画像欠陥が多数発生している
上記評価ランクにおいて、○以上が実用上好ましいと判断した。
(実施例2〜5、比較例1〜2)
定着樹脂の種類を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にしてシアンインクC−2〜C−7を得た。シアンインクC−2〜C−7の粘度と表面張力を実施例1と同様にして測定した結果、粘度はいずれも5〜15mPa・sの範囲であり;表面張力は、いずれも20〜30mN/mの範囲であった。そして、実施例1と同様にして画像形成およびその評価を行った。
実施例1〜5と比較例1〜2の評価結果を、表2に示す。
Figure 2015024508
表2に示すように、実施例1〜5のインクC−1〜C−5は、比較例1〜2のインクC−6〜C−7に比べて、濡れ張力の低いポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムに対しても濃度ムラなく高精細な画像を形成できることがわかる。また、形成画像の耐擦性や密着性も良好であることがわかる。
特に、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル由来の構造単位の含有割合が多い定着樹脂P−2またはP−3を含む実施例2〜3のインクは、未処理のポリプロピレンフィルムに対しても非常に優れた密着性を示すことがわかる。
また、実施例1〜5のインクC−1〜C−5は、比較例1および2のインクC−6およびC−7と比べて濃度ムラも少ないことがわかる。実施例1〜5のインクは疎水性の高い定着樹脂を含むことから、ポリプロピレンフィルムに対して濡れやすいと考えられる。それにより、フィルム上でインク液滴が蒸発しやすく、それに伴いインク液滴の粘度も上昇しやすい。このように粘度が上昇したインク液滴の隣接位置に次の液滴が着弾しても、液滴の合一が起こりにくいことから、濃度ムラが低減されたと推察される。
(実施例6)
インクの調製
実施例1のインクの調製において、シアンインクC−1の分散樹脂を、表3に示されるように変更した以外は実施例1と同様にしてシアンインクC−8を得た。シアンインクC−8の粘度および表面張力を、実施例1と同様にして測定した結果、粘度は5〜15mPa・sの範囲であり;表面張力は20〜30mN/mの範囲であった。
画像形成
シアンインクC−8を、ノズル口径28μm、駆動周波数10kHz、ノズル数512、最小液滴量14pl、ノズル密度360dpi(本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す)であるピエゾ型ヘッドを搭載したシングルパス型インクジェットプリンタのインクジェットヘッドに装填した。
インクジェットプリンタには、接触式ヒーターによって記録媒体を裏面(ヘッドと対向する面とは反対の面)より任意に加温できるようにした。また、ノズル面と記録媒体との距離を1.5mmに設定した。
そして、実施例1と同様にして、各記録媒体上に、印字解像度360dpi×360dpiで、10%Dutyから100%Dutyまでの条件で、10%Duty刻みで5cm×5cmの長方形ベタ画像を、片方向1Pass印字により形成した。
画像形成時は、記録媒体の表面温度が50℃になるように、記録媒体の裏面をヒーターで加温した。記録媒体の表面温度は、非接触温度計(IT−530N形 堀場製作所社製)を用いて測定した。画像形成後、速やかに記録媒体を60℃のホットプレート上に静置し、画像を乾燥させた。
そして、実施例1と同様にして、画像の評価(耐擦性、密着性)およびインクの吐出安定性の評価を行った。
(実施例7〜9、比較例3)
分散樹脂の種類を表3に示されるように変更した以外は実施例6と同様にしてシアンインクC−9〜C−11を得た。シアンインクC−9〜C−11の粘度と表面張力を実施例6と同様にして測定した結果、粘度はいずれも5〜15mPa・sの範囲であり;表面張力は、いずれも20〜30mN/mの範囲であった。そして、実施例6と同様にして画像形成およびその評価を行った。
実施例6〜9および比較例3の評価結果を、表3に示す。
Figure 2015024508
表3に示すように、リビングラジカル重合によって得られたブロック共重合体である分散樹脂を含む実施例6〜8のインクは、ブロック共重合体ではない分散樹脂を含む実施例9のインクよりも、シングルパス印字においても吐出安定性が良好であり、かつ形成画像の耐擦性や密着性も良好であることがわかる。
本発明によれば、ポリオレフィン系フィルムなどの難付着性プラスチックフィルムに印字可能であり、かつ吐出安定性が良好な水系インクジェットインクを提供することができる。
10、40 インクジェット記録装置
11、41 ヘッドユニット
12 記録媒体
13、43 加熱手段
14 塗布ローラ
45 搬送ローラ
111〜114、411〜415 ヘッド

Claims (6)

  1. 濡れ張力が30mN/m以上40mN/m未満であるポリオレフィン系フィルムに、水系インクジェットインクを吐出する工程と、
    前記フィルム上に吐出された前記水系インクジェットインクを加熱乾燥させる工程とを含むインクジェット記録方法であって、
    前記水系インクジェットインクは、色材と、定着樹脂と、水と、水溶性有機溶剤とを含み、
    前記定着樹脂が、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を10質量%以上50質量%未満含有する(メタ)アクリル樹脂を含む、インクジェット記録方法。
  2. 前記(メタ)アクリル樹脂の含有量が、前記水系インクジェットインク全体に対して3質量%以上10質量%未満である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記色材が、顔料であって、前記水系インクジェットインクが前記顔料を分散させる分散樹脂をさらに含み、
    前記分散樹脂が、疎水性ブロックと親水性ブロックとを含むブロック共重合体である、請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合法で得られたブロック共重合体である、請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記水溶性有機溶剤が、溶解パラメータの水素結合項と極性項の和ΣSPが8MPa1/2以上18MPa1/2以下である有機溶剤を少なくとも一種含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
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