JP5482866B1 - 記録方法及び被記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高画質化のためにインク打ち込みの量を増やした場合等であっても、凝集の少ない記録方法を提供する。
【解決手段】表面温度Tmが40℃以上の被記録媒体10a上に、樹脂を含むインク組成物を吐出する第一工程を有し、前記被記録媒体は、ガラス転移温度Tg2が15〜55℃である樹脂を含むインク受容層11を有する。
【選択図】図4

Description

本発明は、記録方法、及び当該方法に用いる被記録媒体に関する。
従来から公知のように、インクジェット記録装置では、インク組成物をノズルから噴射して被記録媒体の上面に画像を形成する。この画像品質を向上させるために、種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、画質の向上を目的として、プライマー処理された表面層を含む被記録媒体を提供するステップと、その表面上にインクジェットにより印刷してインク層を形成するステップと、を含む印刷方法が開示されている。
特表2004−533945号公報
しかしながら、特許文献1のインクジェット印刷においても、高画質化のためにインク打ち込みの量を増やしていくと、インクの凝集による画像品質の低下や、ローラームラ等の印刷課題が発生する。
また、透明の基材に印刷をしようとする場合、プラスチックやオレフィン系のフィルム、PET等では印刷後の表面のインクの耐擦性が特に悪く、印刷直後のインクの乾燥も遅いため、これを改善するためにインク受容層を設ける必要がある。しかしながら、基材の透明性を維持するためにはインク受容層の樹脂も透明であることが必要であるので、用いることのできる樹脂は限定されている。そのため、高画質化のためにインク打ち込みの量を増やした場合等に、インクの凝集による画像品質の低下やローラームラ等の印刷課題を解決するのは特に困難であった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、高画質化のためにインク打ち込みの量を増やした場合等であっても、インクの凝集やクラックが抑制された記録方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定のTgのインク受容層を有する被記録媒体に対して、所定の温度下でインク組成物を吐出することにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
表面温度Tmが40℃以上の被記録媒体上に、樹脂を含むインク組成物を吐出する第一工程を有し、
前記被記録媒体は、ガラス転移温度Tg2が15〜55℃である樹脂を含むインク受容層を有し、
前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1が、40℃超過であり、
前記第一工程において、前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1、前記表面温度Tm、及び前記インク受容層のガラス転移温度Tg2が、下記式(1)を満たす、請求項1〜5いずれか1項に記載の記録方法。
Tg1>Tm≧Tg2 (1)
〔2〕
前記ガラス転移温度Tg2が、40〜55℃である、前項〔1〕に記載の記録方法。
〔3〕
前記インク受容層が、少なくともウレタン樹脂及びアクリル樹脂のいずれかを含む、前項〔1〕又は〔2〕に記載の記録方法。
〔4〕
前記インク受容層が、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含む、前項〔3〕に記載の記録方法。
〔5〕
前記第一工程の後に、前記被記録媒体を加熱する第二工程を有する、前項〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の記録方法。
〔6〕
前記第二工程における加熱温度が、前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1以上である、前項〔5〕に記載の記録方法。
〔7〕
前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1が、70〜120℃である、前項〔1〕〜〔6〕いずれか1項に記載の記録方法。
〔8〕
前項〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の記録方法に用いられる、被記録媒体。
本実施形態における記録装置の概略部分断面図である。 実施形態1にかかる被記録媒体の部分断面図である。 実施形態1においてインク溶媒がインク受容層の表面で蒸発する様子を説明する概略断面図である。 実施形態2においてインク溶媒がインク受容層の表面で蒸発する様子を説明する概略断面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度は実際とは異なる。
〔記録方法〕
本実施形態の記録方法は、表面温度Tmが40℃以上の被記録媒体上に、樹脂を含むインク組成物を吐出する第一工程を有し、被記録媒体は、ガラス転移温度Tg2が15〜55℃である樹脂を含むインク受容層を有するものである。
〔第一工程〕
第一工程は、表面温度Tmが40℃以上の被記録媒体上に、インク組成物を吐出する工程である。表面温度Tmは、45℃以上が好ましい。また、表面温度Tmは、上限値としては、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。表面温度Tmが上記範囲であることにより、インクの凝集の発生、クラックの発生がより抑制される傾向にある。また、表面温度Tmが上限値以下であることにより、熱によるヘッドノズルへのダメージ、劣化、およびノズル部分におけるインク樹脂の固着も抑制される傾向にある。
まず、表面温度Tmが40℃以上の被記録媒体にインク組成物が着弾すると、インク組成物に含まれる成分の一部である水が揮発するのに伴い、インクの粘度が急激に上昇するのでインク組成物が被記録媒体のインク受容層に密着しやすくなると考えられる。これにより、次のインク滴が着弾した際にインク滴同士が混じりあい、インク組成物同士が凝集したり、流れ出したり、画像が滲んだりすることを抑制できる。このような要因によって、より高いインクの着弾位置精度及び密着性を確保でき、被記録媒体に形成される画像を良好に保つことができると考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。
インク組成物が樹脂を含む場合、インク組成物に含まれる樹脂とインク受容層に含まれる樹脂とが素早く相溶することによって、インク組成物がインク受容層により定着しやすくなるので好ましい。この場合、それらの樹脂同士をより素早く相溶するように、第一工程において、インク組成物に含まれる樹脂のガラス転移温度Tg1、被記録媒体の表面温度Tm、被記録媒体のインク受容層に含まれる樹脂のガラス転移温度Tg2が、下記式(1)を満たすことが好ましい。インク組成物に含まれる樹脂のTg1より低い温度において、TmがTg2以上に温められている時、このインク受容層は軟化状態にあるため、インク組成物をより定着しやすい状態にある。これにより、上記の凝集等の発生がより抑制され、ローラームラも改善される傾向にある。
Tg1>Tm≧Tg2 (1)
〔第二工程〕
本実施形態の記録方法は、第一工程の後に、被記録媒体を加熱する第二工程を有することが好ましい。第二工程により、インク組成物のインク受容層に対する耐擦性がより向上する傾向にある。第二工程の加熱温度は、インク組成物が樹脂および水を含む場合、70〜120℃であることが好ましく、80〜90℃であることが好ましい。上記範囲とすることにより、印刷開始から画像形成、そして耐擦性の付与までに掛かる時間を削減することが出来るとともに、熱による印刷物の基材の変形が抑制できる傾向にある。
〔記録装置〕
本実施形態に用いられる記録装置の一例について説明する。図1は本実施形態に用いられる記録装置9の一部を示した概略部分断面図である。記録装置9は、搬送機構2、3、4、5と、キャリッジ6と、インクジェットヘッド7と、ヒーター8とを備えている。搬送機構2、3、4、5は、被記録媒体10をインクジェットヘッド7のノズル面7bと対向する位置に搬送するローラー等である。キャリッジ6は、インクジェットヘッド7を、被記録媒体10の搬送方向と略直交する方向に走査させる。インクジェットヘッド7は、インク吐出口である複数のノズル7a(図3参照)が形成されたノズル面7bを有し、ノズル7aから被記録媒体10に向けてインク滴を吐出して被記録媒体10上に画像を形成させる。ヒーター8は、被記録媒体10を印刷面に対して反対側から温める。なお、ヒーター8は被記録媒体10の印刷面側から温めるものであってもよい。
次に、記録装置9で被記録媒体10への画像の形成を行う際の動作について説明する。まず、記録装置9に給紙された被記録媒体10を、搬送機構2、3によって取り込み、搬送機構4、5によってインクジェットヘッド7のノズル面7bと対向する位置へと搬送する。搬送後、インクジェットヘッド7から加熱された被記録媒体10にインク滴を吐出して画像を形成する。この際、ヒーター8によって画像形成直前の被記録媒体10を予備加熱する。その後、インクジェットヘッド7によって画像が形成された被記録媒体10は、ヒーター8によってさらに温められ、乾燥され、記録装置9から排出される。なお、ヒーター8は、被記録媒体10の搬送方向において、インクジェットヘッド7より上流と下流とで個別に設けてもよく、また、上流側のみに設けてもよい。
また、記録装置9は温度センサーを備える。これにより、被記録媒体10の表面温度Tmを測定することができる。具体的には、物体の表面からその温度に比例した赤外線エネルギーの放射を受光して測定する、非接触の赤外放射温度計などを用いることができる。
〔被記録媒体〕
(ガラス転移温度Tg2)
次に、本実施形態の被記録媒体について説明する。本実施形態の記録方法に用いられる被記録媒体は、ガラス転移温度Tg2が15〜55℃である樹脂を含むインク受容層を有する。ガラス転移温度Tg2は、40〜55℃であることが好ましい。Tg2が上記範囲であることにより、インク組成物が、被記録媒体のインク受容層により素早く定着しやすくなる。これにより、次のインク滴が着弾した際にインク滴同士が混じりあい、インク組成物が流れ出したり、画像が滲んだりすることを抑制することができる。また、凝集の発生も抑制される傾向にある。さらに、上記範囲であることにより、クラックとローラームラも改善する傾向にある。
なお、ガラス転移温度(Tg)は動的粘弾性装置を用いて測定した値であり、例えばhttp://www.tainstruments.co.jp/products/rheology/ に開示されている装置で測定が可能である。
(インク受容層)
インク受容層は、少なくともウレタン樹脂及びアクリル樹脂のいずれかを含むことが好ましい。また、インク受容層は、ウレタン樹脂として、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含むことが好ましい。このようなインク受容層であることにより、インク組成物の密着性がより向上する傾向にある。これにより、凝集の発生、クラックの発生も抑制される傾向にあり、高温、高湿環境において加水分解などによる分解反応が起こりにくく、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れる。
インク受容層に含まれ得るウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ウレタン樹脂に限定されず、例えば、ポリエステル系ウレタン樹脂及びポリエーテル系ウレタン樹脂も例示される。ポリカーボネート系ウレタン樹脂としては、例えば、大成ファインケミカル株式会社製 ウレタンエマルジョンシリーズWBR−2101が挙げられる。ポリエステル系ウレタン樹脂としては、例えば、同社製 WBR−600U、WBR−2000Uが挙げられる。ポリエーテル系ウレタン樹脂としては、例えば、同社製 WBR−016U、WBR−2018が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
インク受容層に含まれ得るアクリル樹脂としては、例えば、大成ファインケミカル株式会社製3MFシリーズ 3MF−309S、3MF−320、3MF−333、3MF−407、3MF−574、3MF−587、DIC株式会社製アクリル系エマルジョン ボンコート40−418EF、高松油脂株式会社製ES−960MCが挙げられる。これらの中では、高松油脂株式会社製 ES−960MCが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(実施形態1)
図2は、実施形態1にかかる被記録媒体の部分断面図である。図2に示すように、被記録媒体10は、インク受容層11と他の層である基材層12とから構成され、インク受容層11は基材層12上に設けられている。
インク受容層11は、透明、半透明、又は不透明のいずれであってもよい。不透明なインク受容層材料としては、特に限定されないが、例えば、各種プラスチック材料、無機多孔質粒子としてアルミナゾルやシリカゲル等からなる微細孔を有する無機物をバインダーで結着したものを挙げることができる。
透明、又は半透明なインク受容層材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(比熱:0.50〜0.55cal/K・g、密度:0.91〜0.97g/cm)、ポリプロピレン(比熱:0.46cal/K・g、密度:0.90〜0.91g/cm)、ポリカーボネート(比熱:0.30cal/K・g、密度:1.2g/cm)、ポリメチルメタクリレート(比熱:0.35cal/K・g、密度:1.17〜1.20g/cm)、酢酸セルロース(比熱:0.30〜0.42cal/K・g、密度:1.23〜1.34g/cm)、スチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体(比熱:0.33〜0.4cal/K・g、密度:1.08〜1.1g/cm)(引用文献:日本化学便覧)等を挙げることができる。
基材層12は、インク受容層11を担持することができ、被記録媒体10としての強度があれば材料は特に限定されず、透明、半透明又は不透明のいずれであってもよい。
不透明な基材材料としては、特に限定されないが、各種プラスチック材料、布、木材、金属板、又は紙等を挙げることができる。透明(又は半透明)な基材材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、若しくはセルロイド等のフィルム、又はこれらの板、或いはガラス板等を挙げることができる。
インク受容層11の厚みは、特に限定されないが、8μm〜50μmが好ましく、15μm〜40μmがより好ましい。インク受容層の厚みが8μm以上であることにより、インクの吸収性、保持力をインク受容層が維持するので、クラックの発生がより抑制される傾向にある。また、インク受容層の厚みが50μm以下であることにより、乾燥後の収縮応力による変形、カールの発生がより抑制される傾向にある。
次に、本実施形態の被記録媒体10のインク受容層11に、インク滴30が着滴したとき、インク滴30中のインク溶媒32がインク受容層11に着滴、乾燥する様子を説明する。図3は、インク溶媒32がインク受容層11の表面で蒸発する様子を説明する概略図である。
インクジェットヘッド7のノズル7aから被記録媒体10に向けて噴射されたインク滴30には、顔料の粒子31と、顔料の粒子31を分散させるインク溶媒32とが含まれている。
被記録媒体10のインク受容層11にインク滴(インク組成物)30が着滴すると、インク滴30に含まれるインク溶媒32はインク受容層11に浸透しながらインク受容層11から熱を受け取り、熱により蒸発、揮発することでインク受容層11から除去される。インク溶媒32が略蒸発、揮発した後にはインク組成物に含まれる樹脂と、顔料の粒子31がインク受容層11の表面11aに残り、画像を形成する。
この際、インク溶媒32が蒸発するのに必要な熱量はインク受容層11にインク滴30が着滴する前から保持されていることが、インク滴30中のインク溶媒32をすばやく蒸発させ、良好な画質を形成するためには最も効率が良い。
水系のインク組成物のインクジェット印刷において、高画質化のためにインク打ち込み量を増やしていくと、インク滴30に含まれるインク溶媒32が十分に蒸発せず、インク溶媒32がインク受容層11の表面11aに残留したままとなる。結果、続けてノズル7aから吐出される新たなインク滴30がインク受容層11に着滴した際、インク受容層11の表面11a上の乾燥していないインクと混じりあってしまうので、インクの凝集、クラックによる画質品質の低下が発生する。しかしながら、本実施形態の記録方法であれば、インク滴30がインク受容層11に良好に定着するため、上記の問題が解決される。
(実施形態2)
図4は実施形態2にかかる被記録媒体の部分断面図である。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。図4に示すように、被記録媒体10aは、インク受容層11と、他の層である基材層12、及び裏面層13から構成され、インク受容層11は基材層12の片面上に、基材層12は裏面層13の片面上に設けられている。裏面層13は、透明、半透明、又は不透明のいずれであってもよい。不透明な裏面層材料としては、特に限定されないが、例えば、各種プラスチック材料、無機多孔質粒子としてアルミナゾルやシリカゲル等からなる微細孔を有する無機物をバインダーで結着したものを挙げることができる。透明、又は半透明な裏面層材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、スチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。
被記録媒体10aはインク受容層11にインク滴30が噴射されると、記録装置9からの予備加熱によってインク受容層11で保たれていた熱がインク溶媒32と接し、インク溶媒32へ熱が伝わり、インク溶媒32の揮発が促進されると同時に顔料の粒子31がインク受容層11の表面11aに残り、固着し定着することで画像を形成する。裏面層13を設けることにより、被記録媒体10aの厚さ、剛性を付与することにより、記録装置9による印刷時の紙送りをスムーズに行うことができ、紙ジャム、ヘッド擦れ等の不具合を防止できる。
〔被記録媒体の製造方法〕
被記録媒体の製造方法は、上述のインク受容層を形成できる方法であれば特に限定されない。例えば、基材上にアクリル−ウレタン水系樹脂エマルジョンを塗布し、熱で乾燥させることによってインク受容層を形成することで被記録媒体を作製することができる。アクリル−ウレタン水系樹脂エマルジョンの製造方法としては、末端にイソシアネート基を有するカルボキシル基含有ウレタンプレポリマーの中和物及びアクリルモノマーが水中に分散した水性分散液を調製し、分散液中のアクリルモノマーを重合させた後、ウレタンプレポリマーの鎖延長を行う方法が挙げられる(例えば、特許第3661047号参照)。
〔インク組成物〕
以下、本実施形態における記録方法に用いる樹脂を含むインク組成物について、詳細に説明する。インク組成物は、水性であることが好ましい。より具体的には、インク組成物は、インク受容層に含まれる樹脂と相溶する樹脂を含むことが好ましい。これにより、インク組成物に含まれる樹脂とインク受容層に含まれる樹脂とが相溶して、インク組成物がよりインク受容層に定着しやすくなる傾向にある。
インク組成物は、上記樹脂に加えて、更にその樹脂を溶解する溶剤と水とを含むことがより好ましい。インク組成物が上記樹脂と水と溶剤とを含む場合、まず、表面温度Tmが40℃以上の被記録媒体にインク組成物が着弾すると、水が蒸発することで、溶剤が高濃度化する。高濃度化した溶剤によりインク組成物に含まれる樹脂が溶解する。次いで、溶解した樹脂の一部と、被記録媒体のインク受容層とが相溶して、インク組成物がインク受容層に更に良好に定着する。これにより、次のインク滴が着弾した際にインク滴同士が混じりあい、インク組成物が凝集したり、流れ出したり、画像が滲んだりすることをより有効に抑制できる。このような要因によって、被記録媒体に形成される画像を更に良好に保つことができ、より高い耐擦性及び密着性を確保できる傾向にあると考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。
また、この際、インク組成物中の樹脂とインク受容層の樹脂とが相溶しやすいほど、これらが固化した際の結合部分が大きくなる。これにより、より高い密着性が得られると考えられる。最終的な印刷物はインク組成物中の樹脂とインク受容層の混合によってなされ、その相溶した部分のTgはインク組成物の樹脂とインク受容層との溶解した部分の比率によると考えられる。
また、第一工程の後に、被記録媒体を加熱する第二工程を有する場合、第二工程により、溶剤がさらに蒸発し、それにより樹脂が硬化し、皮膜が形成され、耐擦性がより向上する傾向にあるので好ましい。
上述の作用効果をより有効且つ確実に奏する観点から、上記樹脂としては、水不溶性又は水難溶性の熱可塑性樹脂粒子が好ましく、溶剤としては、含窒素溶剤が好ましく、その含窒素溶剤と共に低表面張力溶剤を含むことがより好ましい。また、含窒素溶剤は、2−ピロリドン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、及び1,3−ジメチル−イミダゾリジノンから選択される少なくとも一種からなる含窒素溶剤であると好ましい。インク組成物としては、より具体的には、水と少なくとも一種の水不溶性の着色剤と、低表面張力溶剤と、界面活性剤と、2−ピロリドン、N,N'−ジメチルプロピレン尿素、及び1,3−ジメチル−イミダゾリジノンから選択される少なくとも一種からなる含窒素溶剤と、水不溶性の熱可塑性樹脂粒子と、を含有するインク組成物が好ましい。このようなインク組成物であれば、画質及び耐擦性により優れる傾向にある。
(熱可塑性樹脂粒子)
熱可塑性樹脂粒子としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、及び天然樹脂等の粒子が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。ウレタン樹脂以外の熱可塑性樹脂粒子としては、硬度が高くキズが付き難いアクリル系樹脂又はスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂が特に好ましい。熱可塑性樹脂粒子のウレタン樹脂とその他の樹脂の配合の形態は、ウレタン樹脂をシェル部、その他の樹脂をコア部とするコア−シェル型であることが好ましい。
上記のウレタン樹脂を含む熱可塑性樹脂粒子としては、公知の材料・方法で得られるものを用いることができる。例えば、特開平8‐60063号公報及び特開平6‐329985号公報等に記載のものを用いてもよい。また、市販品を用いることもでき、例えば、アクリットWEMー202U、WEMー030U、WEMー321U、WEMー306U、WEMー162、WBRー183U、WBRー601U、WBRー401U、3DRー057、3DRー829、3DRー828(大成ファインケミカル社製)、アクアブリッドAU−304(ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂粒子の含有量は、固形分としてインク組成物の全質量に対して、1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。また、ウレタン樹脂を含む熱可塑性樹脂粒子の含有量は、固形分として、インク組成物の全質量に対して、1.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂粒子の含有量が1質量%以上であると、被記録媒体上に画像をより強固に定着できる傾向にある。また、熱可塑性樹脂粒子の含有量がインク組成物の全質量に対して8質量%以下であれば、インク吐出性が安定し、インクジェットヘッドのノズル詰まりも回避できる傾向にある。
(ガラス転移温度Tg1)
インク組成物に含まれる樹脂のガラス転移温度Tg1が40℃超過であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましく、80〜110℃であることがさらに好ましい。このようなガラス転移温度Tg1であることにより、インク組成物とインク受容層との相溶性がより良好となり、印刷後の耐擦性が優れる傾向にある。なお、インク組成物が2種以上の樹脂を含む場合は、Tg1はそれらを混合した樹脂から測定した値とする。
なお、ガラス転移温度(Tg)は動的粘弾性装置を用いて測定した値であり、例えばhttp://www.tainstruments.co.jp/products/rheology/ に開示されている装置で測定が可能である。
(含窒素有機溶剤)
インク組成物は、2−ピロリドン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、及び1,3−ジメチル−イミダゾリジノンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。このような含窒素有機溶剤は、熱可塑性樹脂粒子、及び非吸収性の被記録媒体の素材の一種となり得るポリ塩化ビニルの良好な溶解剤又は軟化剤として作用する。
上記含窒素有機溶剤は、沸点が240℃〜250℃であり、第一工程では揮発せずに濃縮されうる。そして、被記録媒体上のインク残留物中で高濃度化した含窒素有機溶剤は、熱可塑性樹脂粒子の少なくとも一部を溶解することができる。溶解された熱可塑性樹脂は、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体上で、着色剤を主成分とするインク固化物の被膜化を促進して強固に付着する。また、上記含窒素有機溶剤により溶解された熱可塑性樹脂は、インク受容層に含まれる樹脂と更に相溶しやすい。これにより、凝集の発生、クラックの発生、及びローラームラの発生がより抑制される傾向にあり、さらに耐擦性もより向上する傾向にある。
上記含窒素有機溶剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、3質量%以上15質量%以下であることが好ましいく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。含窒素有機溶剤の含有量が3質量%以上であると、被記録媒体上に画像(インク組成物)がより強固に固化及び定着する傾向にある。また、含窒素有機溶剤の含有量が15質量%以下であると、被記録媒体上のインク組成物は蒸発飛散しやすく、乾燥性に優れる傾向にある。
(低表面張力溶剤)
低表面張力溶剤としては、特に限定されないが、例えば、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等の1,2−アルカンジオールが挙げられる。このなかで、1,2−ヘキサンジオールは、沸点223℃の炭素数6の1,2−アルカンジオールであり、上記含窒素有機溶剤よりもわずかに低い沸点を有する。そのため、水が蒸発した後の乾燥の最終段階直前までインク中に残留する。これにより、1,2−ヘキサンジオールを含むインク組成物は、被記録面が非吸収性のプラスチックからなる被記録媒体を均一に濡らすことができ、結果として、画像の滲みを低減させることができる。
低表面張力溶剤である1,2−ヘキサンジオールの含有量は、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に対するインク組成物の濡れ性を十分作用させるために、インク組成物の全質量に対して、3質量%以上が好ましい。また、優れた速乾性を有する観点から、インク組成物の全質量に対して、8質量%以下が好ましい。
インク組成物は、保湿作用を持つ、あるいは低表面張力である溶剤を、さらに含有することができる。このような溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンタノール、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルフォキシド、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等の水溶性の溶剤が挙げられる。
さらに、湿潤剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、1,3−プルパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、チオジグリコール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類があげられる。これらの中でも、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好適である。湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記インク組成物に対する前記保湿剤、湿潤剤の配合量は、特に限定されず、例えば、例えば、0質量%〜40質量%であり、好ましくは、2質量%〜30質量%であり、より好ましくは、5質量%〜25質量%である。
(着色剤)
着色剤としては、水不溶性の染料又は顔料が好ましく、顔料であることがより好ましい。顔料は、水に不溶あるいは難溶であるだけでなく、光やガス等に対しても退色しにくい性質を有している。このため、顔料を用いたインク組成物で印刷した記録物は、耐、耐ガス性、耐光性等に優れ、保存性が良好となる。顔料としては、例えば、インクジェット記録用インク組成物において従来から使用されている有機顔料又は無機顔料を用いることができる。
無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン及び酸化鉄や、コンタクト法、ファーネスト法、又はサーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを利用することができる。
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、又はキレートアゾ顔料)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ベリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、又はキノフタロン顔料)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、又は酸性染料型キレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、又はアニリンブラック等を利用することができる。これらの顔料のうち、水との親和性が良好な顔料を用いるのが好ましい。
黒色インク用顔料としては、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、若しくはチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、若しくは酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料を挙げることができる。
好適なカーボンブラックの具体例としては、三菱化学株式会社製のカーボンブラックとして、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等が挙げられる。デグサ社製のカーボンブラックとして、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等が挙げられる。コロンビアカーボン社製のカーボンブラックとして、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等が挙げられる。キャボット社製のカーボンブラックとして、キャボット社製のリガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、400、エルフテックス12等が挙げられる。
カラーインク用顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、151、154、155、180、185、213;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19(キナクリドンレッド)、23、38;又はC.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63;等を使用することができる。
顔料の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径として、好ましくは25μm以下、より好ましくは2μm以下である。平均粒径が25μm以下の顔料を用いることにより、目詰まりの発生を抑制することができ、一層充分な吐出安定性を実現することができる。
顔料の含有量は、インク組成物全体に対して、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1.0〜10.0質量%である。
顔料の分散に使用できる水溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等及びこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に疎官能基を有するモノマーと親官能基を持つモノマーとの共重合体、疎官能基と親官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
上記の塩としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、上記水溶性樹脂の中和当量以上であれば特に制限はない。
以上述べた顔料の分散に使用できる水溶性樹脂としては、市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
顔料を分散させるために用いることができる界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
顔料の分散に使用できる上記水溶性樹脂又は上記界面活性剤の顔料に対する添加量は、顔料1質量%に対して好ましくは1質量%〜100質量%であり、より好ましくは5質量%〜50質量%である。この範囲であることにより、顔料の水中への分散安定性が確保できる。顔料粒子表面に親官能基を化学的・物理的に導入し、分散又は溶解しやすくしたものを用いることもできる。
(界面活性剤)
界面活性剤として好ましくは、シリコン系界面活性剤が挙げられる。シリコン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。また、市販品を用いることでき、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
(水)
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いたインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
(その他の含有成分)
本実施形態にかかる記録方法で使用するインク組成物は、さらに、pH調製剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化等を含有することができる。
pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
防腐剤・防かび剤としては、特に限定されないが、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
キレート化剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
(物性)
本実施形態にかかる記録方法に用いるインク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上10mPa・s以下であり、より好ましくは3mPa・s以上8mPa・s以下である。インク組成物の20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルからインク組成物の液滴が適量吐出され、液滴の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、記録装置に好適に使用することができる。インク組成物の粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インク組成物の温度を20℃に保持することで測定できる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〔被記録媒体の作製〕
基材層(透明PETフィルム、100μm厚み)上に、以下の方法で作製したコート液をハンドコートにて厚みが20μmとなるように塗布し、80℃で5分間乾燥させることにより各インク受容層を有する被記録媒体(サンプルA〜H)を作製した。
(インク受容層)
以下のアクリル系単量体を用いて、アクリル系重合体を製造した。
メタクリル酸メチル(以下「MMA」と表記する)、アクリル酸ブチル(以下「BA」と表記する)、アクリル酸エチル(以下「EA」と表記する)(それぞれ三菱化学株式会社製)これらを表1に示す組成比となるように、水40質量部と界面活性剤(ネオペレックスG−65)1部とエマルゲン1118S−70:2部)を加え、攪拌機、冷却器、温度計、滴下装置を備えた反応容器内において、75℃の温度のもとで水系ポリエステル(ニュートラック 2010)2部を1時間かけて連続滴下したうえで重合反応を促進させ、水性分散液を得た。ここでの混合物の組成は、100質量%の質量比である。
この水系分散液に対し、各種の水系ウレタン樹脂エマルジョン(以下「UE」と表記する:大成ファインケミカル株式会社製 ウレタンエマルジョンシリーズWBR−2101、WBR−2000U、WBR−2018)を固形分重量比が1:1となるように加えて混合して40℃に保温した状態で5時間攪拌して、インク受容層のコート液とした。
〔インク組成物〕
(顔料)
インク組成物としては、C,M、Y,Kの顔料を分散させたものを用いた。
C(シアンインク組成物、使用顔料C.I.ピグメントブルー15:3)
M(マゼンタインク組成物、使用顔料C.I.ピグメントレッド122)
Y(イエローインク組成物、使用顔料C.I.ピグメントイエロー180)
K(ブラックインク組成物、使用顔料C.I.ピグメントブラック7)
(製造方法)
インク組成物1は、以下のようにして調製した。まず、樹脂分散剤として5.0質量%の熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg1:80℃、ユニチカ社製;エリーエル KA3556)、及び20質量%の上記各顔料に、イオン交換水を加えて全体を100質量%とし、混合撹拌して混合物とした。この混合物を、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、顔料分散液を得た。
上記顔料分散液7質量%に、第1溶媒として1,2−ヘキサンジオール3質量%、第2溶媒として、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及び2−ピロリドン合わせて7質量%、シリコン系界面活性剤としてポリエーテル変性シロキサン0.5質量%、残分としてイオン交換水を添加して100質量%となるように混合した。その後、常温で1時間混合撹拌し、さらに孔径5μmのメンブランフィルターでろ過して、C、M、Y、Kの4色のインク組成物1を得た。
インク組成物2は、上記の熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂に代えて、熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg1:40℃、ユニチカ社製;エリーエル KA1449)を用いたこと以外は上記と同様にして調整して、C、M、Y、Kの4色のインク粗生物2を得た。
〔実施例1〜27、比較例1〜11〕
(第一工程)
記録装置としては、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けて、画像の記録時に被記録媒体を加熱調製できるようにしたものを用いた。
上記の改造したインクジェットプリンターのノズル列に、C、M、Y、Kの4色の上記インク組成物1又は2を充填した。そして、常温、常圧下で、作製した被記録媒体上に、C、M、Y、Kの各色が互いに接触するようなベタパターン画像を形成すると共に、紙案内部に取り付けられたヒーターによって被記録媒体の表面温度Tmが30℃、40℃、45℃、又は55℃になるように加熱しながらベタパターン画像を形成した(実施例1〜27、比較例1〜11)。なお、実施例1〜21、26、比較例1〜11にはインク組成物1を用い、実施例22〜25、27にはインク組成物2を用いた。
(第二工程)
その後、被記録媒体を90℃(第二工程温度)に保つドライヤー内に入れ、ベタパターン画像をさらに2分間乾燥させた。以上のようにして、被記録媒体上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。なお、ベタパターン画像は、縦1440dpi、横720dpi(dot per inch)の解像度で、Dutyが10〜200%のものを得られるように形成した。印刷後の被記録媒体それぞれについて、以下の基準により凝集、クラック、ローラームラ、及び耐擦性について評価した。また、実施例26では第二工程温度を70℃とし、実施例27では第二工程温度を30℃とした。それらの結果を表1〜8に示す。
(Dutyの定義)
ここで、「Duty」とは、縦1440dpi、横720dpiの解像度の場合、1平方インチを縦1440分割、横720分割させた1036800分割のうち、何%にインクを配置したかをいう。条件を以下に示す。なお、比較例と実施例との印刷速度は同じとした。
[条件]
・インク滴1つ当りの重量は約15ngになるように調整した。
・10%から100%まで、10%Duty刻みでのベタパターンの画質をもって判断した(1次色 CMYK)。
・10%から200%まで、10%Duty刻みでのベタパターンの画質をもって判断した(2次色 RGB)。
(凝集)
凝集は、1440dpi×720dpiの印刷において、以下の評価基準に基づいて目視によって判断した。なお、「凝集」とは、インク組成物が被記録媒体に着弾した後、インク組成物のドット同士が混じり合うことをいう。このような凝集により、画質が悪化する。
[評価基準]
◎:Duty 200%でも凝集が発生しなかった。
○:Duty 110〜190%で凝集が発生した。
△:Duty 60〜100%で凝集が発生した。
×:Duty 10〜50%で凝集が発生した。
(クラック)
クラックは、1440dpi×720dpiの印刷において、以下の評価基準に基づいて目視によって判断した。なお、「クラック」とは、インク組成物が被記録媒体に着弾した後、インク皮膜の収縮により生じる亀裂をいう。このようなクラックにより、画質が悪化する。
[評価基準]
◎:Duty 200%でもクラックが発生しなかった。
○:Duty 110〜190%でクラックが発生した。
△:Duty 60〜100%でクラックが発生した。
×:Duty 10〜50%でクラックが発生した。
(ローラームラ)
ローラームラは、1440dpi×720dpiの印刷において、以下の評価基準に基づいて目視によって判断した。なお、「ローラームラ」とは、プリンターの通紙経路内部にある、紙を押さえる役割を果たすゴムローラー(ウレタンゴム、エラストマーゴム、又はプラスチック)の通過跡がインク組成物の着弾部分にムラとなって見える状態(インク組成物がはじかれるか、ぬれ拡がる現象)をいう。疎水性の高い用紙等を通紙することにより、ローラーへ疎水性物質が転写し、次の通紙時に再度用紙側へ転写され、その部分がインクに含まれる水などの溶媒の着弾を阻害することが原因と考えられる。
[評価基準]
○:ローラームラが見えない。
×:ローラームラが見える。
(耐擦性)
印刷、乾燥してから30分以内に、得られた記録物の画像形成側の面を、学振型摩擦堅牢試験機AB−301(テスター産業株式会社製)を用いて、荷重500g、摩擦回数10回の条件で、摩擦用白綿布を取り付けた摩擦子に擦り合わせた。その後、画像の表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準で判定した。
[評価基準]
○:10回擦ってもキズがない。
×:10回擦って下地が露出するキズが発生する。
(インク受容層中の樹脂のTg 測定方法)
インク受容層に用いた各アクリル−ウレタンの樹脂エマルジョンの溶媒を60℃の恒温槽内で蒸発、揮発させ、得られた試料を高さ2mm程度になるように、直径25mmの円形アルミニウム製冶具でその上下を挟み、それをARES(ARES−G2シリーズ:回転式レオメータ:ティー・エイ・インスツルメント社製商品名)の所定位置にセットした。ARESにより、温度範囲:−10℃〜250℃、昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、加える歪み量:0.5%の条件で、樹脂の弾性変形量、粘性変形量の測定を行い、それらの比の温度依存による変曲点を測定し、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
本結果によれば、ガラス転移温度Tg2が15〜55℃の範囲外である樹脂を含むインク受容層を有する被記録媒体を用い、表面温度Tmが40℃未満の被記録媒体上に、インク組成物を吐出した場合に、凝集が発生し、画質が悪化していることが分かる。
なお、耐擦過性については、Tg1が高いほど良く、また第二工程の乾燥時間が高いほどよい傾向であった。
以上述べたように、本実施形態にかかる記録方法によれば、高画質化のためにインク打ち込みの量を増やした場合等であっても、凝集が少なくなる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良等を加えることが可能である。
2,3,4,5…搬送機構、6…キャリッジ、7…インクジェットヘッド、7a…ノズル、7b…ノズル面、8…ヒーター、9…記録装置、10,10a…被記録媒体、11…インク受容層、11a…表面、12…基材層、13…裏面層、30…インク滴、31…顔料の粒子、32…インク溶媒。

Claims (8)

  1. 表面温度Tmが40℃以上の被記録媒体上に、樹脂を含むインク組成物を吐出する第一工程を有し、
    前記被記録媒体は、ガラス転移温度Tg2が15〜55℃である樹脂を含むインク受容層を有
    前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1が、40℃超過であり、
    前記第一工程において、前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1、前記表面温度Tm、及び前記インク受容層のガラス転移温度Tg2が、下記式(1)を満たす、記録方法。
    Tg1>Tm≧Tg2 (1)
  2. 前記ガラス転移温度Tg2が、40〜55℃である、請求項1に記載の記録方法。
  3. 前記インク受容層が、少なくともウレタン樹脂及びアクリル樹脂のいずれかを含む、請求項1又は2に記載の記録方法。
  4. 前記インク受容層が、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含む、請求項3に記載の記録方法。
  5. 前記第一工程の後に、前記被記録媒体を加熱する第二工程を有する、請求項1〜いずれか1項に記載の記録方法。
  6. 前記第二工程における加熱温度が、前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1以上である、請求項に記載の記録方法。
  7. 前記インク組成物に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg1が、70〜120℃である、請求項1〜いずれか1項に記載の記録方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の記録方法に用いられる、被記録媒体。
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