JP2015020318A - サーマルプリントヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】抵抗体層の酸化を抑制するサーマルプリントヘッドを提供する。【解決手段】サーマルプリントヘッドは、絶縁基板と配線層と保護膜29とを備える。絶縁基板は、セラミック基板22の表面にグレーズ層25を形成したものである。グレーズ層25は、ガラスで形成されており、酸素を含有する。配線層は、グレーズ層25の表面に積層された酸化抑制層70と抵抗体層23と電極層28とからなる。酸化抑制層70は、抵抗体層23を形成する抵抗体材料に酸素以外の添加元素を添加して形成されたものである。抵抗体層23の表面の一部には、電極層が形成されない部分があり、そこが発熱抵抗体26となる。発熱抵抗体26は、グレーズ層25の表面に間隔を置いて配列される。保護膜29は、配線層を覆う。【選択図】図2

Description

本発明は、サーマルプリントヘッドおよびその製造方法に関する。
サーマルプリントヘッドは、絶縁基板上に配列された複数の発熱体を発熱させ、その熱により感熱記録紙などの媒体に文字や図形などの画像を形成する出力用デバイスである。このサーマルプリントヘッドは、バーコードプリンタ、デジタル製版機、ビデオプリンター、イメージャー、シールプリンターなどの記録機器に広く利用されている。
一般的なサーマルプリントヘッドは、放熱板と、放熱板に取り付けられた発熱体板と、発熱体板と同じ側で放熱板に取り付けられた回路基板とを備えている。この発熱体板の放熱板と相対する表面の反対側の表面の帯状に延びる発熱領域には、複数の発熱抵抗体が所定の間隔で直線状に配列されている。発熱抵抗体の両端には電極が接続されている。また、回路基板には、発熱抵抗体を駆動する駆動回路の一部となる駆動ICなどの電気部品が搭載されている。発熱抵抗体に接続された電極と駆動ICとの間は、ワイヤーボンディングで結線されている。結線に用いれられたボンディングワイヤーは、樹脂で封止される。
このようなサーマルプリントヘッドを用いたプリンタは、一般的に、所定の弾性を持つ材料で円筒状に形成されたプラテンローラを備えている。このプラテンローラは、側面が支持基板上の発熱領域に接するように配置され、発熱抵抗体が配列された主走査方向に平行な軸を中心に回転可能に設けられる。プラテンローラの回転によって、プラテンローラと発熱領域の間に挿入された媒体は、主走査方向に垂直な副走査方向に移動する。プラテンローラによって媒体を発熱領域に押し付けつつ、その媒体を副走査方向に移動させ、発熱抵抗の発熱パターンを媒体の移動とともに変化させることにより、所望の画像を媒体上に形成する。
特開平8−72281号公報
サーマルプリントヘッドの発熱体板は、セラミック基板の表面にガラスを固着させたグレーズ層を有する場合がある。このグレーズ層は、発熱抵抗体での発熱をある程度蓄えておく機能を持つ。
グレーズ層には、酸素が含まれる。このため、発熱抵抗体に長期間パルスを印加して、発熱を繰り返すと、抵抗体層にグレーズ層中の酸素が移行して、抵抗体層が酸化し、発熱抵抗体の抵抗値が増大してしまう場合がある。抵抗値が変化すると、発熱量が変化し、印画品質が低下する場合がある。このため、実機使用条件として投入パワーや印画速度を制約する必要がある場合がある。
そこで、本発明は、サーマルプリントヘッドの抵抗体層の酸化を抑制することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明は、酸素を含有する絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に積層された酸化抑制層と抵抗体層と電極層とからなり、前記酸化抑制層は前記抵抗体層を形成する抵抗体材料に酸素以外の添加元素を添加して形成されたものであって、間隔を置いて配列された抵抗発熱部とその抵抗発熱部の両端に接続した電極とが形成された配線層と、前記配線層を覆う保護層と、を具備することを特徴とする。
また、本発明は、サーマルプリントヘッドの製造方法において、酸素を含有する絶縁基板の表面に抵抗体材料に酸素以外の添加元素を添加した酸化抑制層を形成する酸化抑制層形成工程と、前記酸化抑制層の表面に前記抵抗体材料で抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程と、前記抵抗体層の表面に電極層を形成する電極層形成工程と、前記酸化抑制層と前記抵抗体層と前記電極層からなる配線層をパターニングして、間隔を置いて配列された抵抗発熱部とその抵抗発熱部の両端に接続した電極とを形成するパターニング工程と、前記配線層を覆う保護層を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
本発明によれば、サーマルプリントヘッドの抵抗体層の酸化が抑制される。
本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態における一部切欠き平面図である。 本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態における発熱体板の断面図である。 本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態を用いたサーマルプリンタの断面図である。 Ar流量を一定とし、N流量を変化させた場合のスパッタ膜の比抵抗の変化の例を示すグラフである。 本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態に繰り返し発熱パルスを印加した際の抵抗体層の抵抗変化率の試験結果を比較例とともに示すグラフである。
本発明に係るサーマルプリントヘッドの実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。
図1は、本発明に係るサーマルプリントヘッドの第1の実施の形態における一部切欠き平面図である。図2は、本実施の形態におけるヘッド基板の断面図である。
本実施の形態のサーマルプリントヘッド11は、ヘッド基板20と放熱板30と回路基板40とを有している。ヘッド基板20は、セラミック基板22とグレーズ層25と酸化抑制層70と抵抗体層23と電極層28と保護膜29とを有している。セラミック基板22は、長方形の板である。グレーズ層25は、セラミック基板22の一方の表面に被着している。酸化抑制層70と抵抗体層23と電極層28とは、セラミック基板22およびグレーズ層25からなる絶縁基板の表面に積層されている。
酸化抑制層70と抵抗体層23と電極層28とは、所定のパターンにパターニングされている。酸化抑制層70は、抵抗体層23を形成する抵抗体材料に、酸素以外の添加元素を添加して形成したものであり、抵抗体層23に比べて抵抗値が非常に大きい。抵抗体材料は、たとえばTaSiO、NbSiO、TiNなどであり、添加元素はたとえばNである。
電極層28の一部には、空隙が設けられており、その空隙部分に対応する抵抗体層23が発熱抵抗体26となる。発熱抵抗体26は、絶縁基板の長手方向に間隔を置いて配列されて、絶縁基板の長手方向(主走査方向)に帯状に延びる発熱領域24を形成している。グレーズ層25、抵抗体層23および電極層28の表面は、一部を除き保護膜29で被覆されている。
ヘッド基板20および回路基板40は、放熱板30の一方の面に載置され、固定されている。回路基板40には、発熱抵抗体26に電圧を印加して発熱させるIC(Integrated Circuit)である駆動素子42が搭載されている。駆動素子42とヘッド基板20との間には、保護膜29で覆われずに露出した電極層28と駆動素子42との間に架け渡されたボンディングワイヤー44で電気的に接続されている。また、駆動素子42と回路基板40との間にもボンディングワイヤー44が架け渡されている。電極層28の露出部分、駆動素子42およびボンディングワイヤー44は、封止樹脂体48で封止されている。
図3は、本実施の形態のサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタの断面図である。
このサーマルプリンタは、サーマルプリントヘッド11とプラテンローラ50を有している。プラテンローラ50は、発熱領域24に平行な軸52を中心に回転する円柱である。プラテンローラ50の側面は、ある程度の弾性を有している。
被印刷媒体60は、プラテンローラ50によってサーマルプリントヘッド11の発熱領域24に押し付けられつつ、副走査方向に移動する。感熱性の被印刷媒体60への印画の際には、外部から供給される信号などによって駆動素子42などの駆動回路から発熱抵抗体26に電流が供給されて、発熱する。サーマルプリントヘッド11の発熱領域24の発熱パターンを変化させながら、被印刷媒体60を副走査方向に移動させることにより、被印刷媒体60上に所望の画像が印画される。
次に、本実施の形態のサーマルプリントヘッド11の製造方法について説明する。
まず、たとえば厚さが約1mmのセラミック基板22の表面に厚さが約40μmのグレーズ層25を被着させる。セラミック基板22は、たとえばアルミナ(Al)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)などで形成される。グレーズ層25は、たとえば耐熱ガラスなどで形成される。グレーズ層25は、たとえばガラスペーストをセラミック基板22の表面にスクリーン印刷などによって塗布し、その後、焼成することによって形成される。
次に、このようにして形成された絶縁基板の表面を洗浄する。その後、グレーズ層25の表面に酸化抑制層70および抵抗体層23を積層する。
酸化抑制層70および抵抗体層23は、スパッタにより形成する。まず、スパッタ装置の容器内に絶縁基板を収容するとともに、抵抗体用ターゲットを配置する。このスパッタ装置は、2種類の気体を導入可能に設けられていて、少なくとも一方の流量はバルブなどにより変化させることができるものとする。抵抗体用ターゲットは、たとえばTa−SiO、Nb−SiOなどである。
スパッタ装置の容器を真空に脱気した後、容器中にArガスとNガスを導入しながら、スパッタリングを行って、酸化抑制層70を生成する。スパッタ圧力は、たとえば0.2〜0.8Pa程度とし、N/Ar流量比は、0.01〜0.02程度とする。たとえば、スパッタ圧力を0.4Pa、N流量を20sccm、Ar流量を200sccmとする。酸化抑制層70の厚さは、パターニング性を考慮すると2.0μm以下が好ましく、たとえば0.2μmとする。その後、Nガスの導入を停止し、あるいは導入量を低減して、抵抗体層23を形成する。したがって、抵抗体層23は、酸化抑制層70を形成する材料から添加元素の濃度を低減した材料で形成されていることとなる。
図4は、Ar流量を一定とし、N流量を変化させた場合のスパッタ膜の比抵抗の変化の例を示すグラフである。
図4に示すように、N/Ar流量比を変化させることにより、スパッタによって形成される膜の比抵抗は変化することがわかる。また、N/Ar流量比を0に近づけることにより、抵抗体層23の好ましい比抵抗である数十mΩcmとすることができる。
さらに、抵抗体層23の表面にアルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、あるいはこれらを主成分とする合金、あるいはこれらの金属または合金の積層体である電極層28をスパッタリング法などによって積層する。
次に、この電極層28の全面にフォトレジスト膜を塗布した後、そのフォトレジスト膜上に第1のマスクパターンを配置する。その状態で、フォトレジスト膜を露光し、現像することによって、第1のマスクパターンをフォトレジスト膜に転写する。第1のマスクパターンが転写されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとし電極層28と抵抗体層23と酸化抑制層70とをリン酸などによってウェットエッチングしてパターニングする。これにより、電極層28が所定の形状にパターニングされる。
その後、残存した電極層28および抵抗体層23の表面に、第2のマスクパターンを配置する。この第2のマスクパターンは、発熱抵抗体26の形状を決めるためのパターンである。第2のマスクパターンには、発熱抵抗体26に対応する形状が規定されている。
第2のマスクパターンを配置した状態で、フォトレジスト膜を露光し、現像することによって、第2のマスクパターンがフォトレジスト膜に転写される。その後、第2のマスクパターンが転写されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、抵抗体層23および酸化抑制層70をケミカルドライエッチング(CDE)や反応性イオンエッチング(RIE)などによりドライエッチングする。これにより、抵抗体層23と酸化抑制層70が所定の形状にパターニングされる。抵抗体層23と酸化抑制層70とは、同じ平面形状である。
このようにして、電極層28と抵抗体層23と酸化抑制層70とが所定の形状にパターニングされた後、電極層28、抵抗体層23および露出したグレーズ層25を覆うように、SiOやSiONなどの耐酸化性と耐摩耗性を有する保護膜29を積層する。これによりヘッド基板20が完成する。
このヘッド基板20および別途製造した回路基板を、別途製造した放熱板30上で合体する。その後、駆動素子42を回路基板40上に配置し、ボンディングワイヤー44を架け渡す。さらに、ボンディングワイヤー44などを封止樹脂体48で封止することによって、サーマルプリントヘッド11が完成する。
このようなサーマルプリントヘッド11においては、抵抗体層23に比べて、酸化抑制層70の方が酸素の濃度が低い。このため、グレーズ層25中の酸素が抵抗体層23に向かって移行してきても、酸化抑制層70の酸化で消費され、抵抗体層23へほとんど移行しない。その結果、発熱抵抗体26に長期間パルスを印加して、発熱を繰り返しても、発熱抵抗体26の抵抗値はほとんど変化しない。
図5は、本実施の形態のサーマルプリントヘッドに繰り返し発熱パルスを印加した際の抵抗体層の抵抗変化率の試験結果を比較例とともに示すグラフである。比較例は、酸化抑制層を設けないサーマルプリントヘッドの試験結果である。
図5に示すように、本実施の形態のサーマルプリントヘッドでは、繰り返し発熱パルスを印加しても、抵抗変化率は0に近く、抵抗体層の酸化が抑制され、抵抗値の変化が抑制されていることがわかる。
このように、本実施の形態によれば、サーマルプリントヘッドの抵抗体層の酸化が抑制される。また、抵抗体層の代わりに酸化する酸化抑制層は、抵抗体層を形成する抵抗体材料に添加元素を添加して形成されるため、同一のスパッタリング装置で添加元素の流量を変化させることだけで形成することができる。その結果、酸化抑制層の形成に要する時間および費用は小さくて済む。
11…サーマルプリントヘッド、20…ヘッド基板、22…セラミック基板、23…抵抗体層、24…発熱領域、25…グレーズ層、26…発熱抵抗体、28…電極層、29…保護膜、30…放熱板、40…回路基板、42…駆動素子、44…ボンディングワイヤー、48…封止樹脂体、50…プラテンローラ、52…軸、60…被印刷媒体、70…酸化抑制層

Claims (4)

  1. 酸素を含有する絶縁基板と、
    前記絶縁基板の表面に積層された酸化抑制層と抵抗体層と電極層とからなり、前記酸化抑制層は前記抵抗体層を形成する抵抗体材料に酸素以外の添加元素を添加して形成されたものであって、間隔を置いて配列された抵抗発熱部とその抵抗発熱部の両端に接続した電極とが形成された配線層と、
    前記配線層を覆う保護膜と、
    を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッド。
  2. 前記抵抗体材料は、TaSiO、NbSiO、および、TiNのいずれかであって、前記添加元素はNであることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
  3. 酸素を含有する絶縁基板の表面に抵抗体材料に酸素以外の添加元素を添加した酸化抑制層を形成する酸化抑制層形成工程と、
    前記酸化抑制層の表面に前記抵抗体材料で抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程と、
    前記抵抗体層の表面に電極層を形成する電極層形成工程と、
    前記酸化抑制層と前記抵抗体層と前記電極層からなる配線層をパターニングして、間隔を置いて配列された抵抗発熱部とその抵抗発熱部の両端に接続した電極とを形成するパターニング工程と、
    前記配線層を覆う保護膜を形成する工程と、
    を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
  4. 前記酸化抑制層形成工程と前記電極層形成工程は、前記添加元素の濃度を制御可能な容器中で行われることを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
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