JP2015010294A - メルトブロー不織布製造用ポリエチレンテレフタレート組成物、およびそれからなるメルトブロー不織布 - Google Patents

メルトブロー不織布製造用ポリエチレンテレフタレート組成物、およびそれからなるメルトブロー不織布 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、メルトブロー法不織布製造に好適なポリエチレンテレフタレート組成物に関するものである。さらに詳しくは、耐熱性の要求される用途で好適な、メルトブロー法不織布製造用のポリエチレンテレフタレート組成物、それからなるポリエチレンテレフタレート繊維およびそのポリエチレンテレフタレート繊維からなるメルトブロー不織布に関するものである。
【解決手段】ホスホン酸金属塩化合物または有機窒素化合物が0.01〜2.00質量%含まれることを特徴とするポリエチレンテレフタレート組成物、そのポリエチレンテレフタレート組成物からなるポリエチレンテレフタレート繊維およびそのポリエチレンテレフタレート繊維からなるメルトブロー不織布によって解決することができる。
【選択図】なし

Description

本発明はメルトブロー不織布製造用ポリエチレンテレフタレート組成物、それからなるポリエチレンテレフタレート繊維およびそのポリエチレンテレフタレート繊維からなるメルトブロー不織布に関する。更に詳しくは、メルトブロー不織布にした時の加熱面積収縮率の小さい不織布を得ることができるポリエチレンテレフタレート組成物、それからなるポリエチレンテレフタレート繊維およびそのポリエチレンテレフタレート繊維からなるメルトブロー不織布に関する。
従来より、0.1〜数十μm程度の単繊維径を有する繊維からなるメルトブロー不織布は、紡糸直結型でシートとして容易に得ることができ、繊維径の細かさから、液体フィルター・エアフィルター・コーヒーフィルター等の濾過材料、マスク等の医療・外科用製品、吸収材、バッテリー・セパレータ、人工皮革用基布、ワイパー等に用いられてきた。該メルトブロー法による不織布に使用される原料としては、ポリオレフィン、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、エラストマー、PPSなど種々の熱可塑性ポリマーが検討されてきているが、現状では、ポリプロピレンによるものが市場のほとんどを占めている。これは、ポリプロピレンが安価で、繊維の極細化に適した低粘度グレードのものを得やすいということが大きな理由の一つである。しかし、ポリプロピレンの欠点として、融点が160〜180℃程度のため、耐熱性が要求される用途では使用することが難しいという点がある。そこで、耐熱性が要求される用途においては、ポリプロピレンの代わりとして、ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略記する)が使用されてきた。ポリブチレンテレフタレートは、その融点が約220℃と高く、例えば、セパレータとして提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
さて、一般的に、安価で、融点の高い熱可塑性ポリマーといえばポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する場合がある。)が挙げられるが、メルトブロー不織布には、ほとんど使用されていないのが現状である。この理由として、PETは他の結晶性ポリマーに較べ結晶化速度が比較的遅いため通常のメルトブロー条件で製造した場合、曳糸性は良好で細化は全く問題ないが、製造されたウェブを加熱すると、ウェブを構成する繊維中の残留応力のために、ウェブが収縮し実用上問題となってしまう点が挙げられる。
この収縮の改善策として、メルトブロー後のウェブを緊張下で適当に熱処理して適度に結晶化させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この方法は比較的困難な工程を必要とすると共に出来たものは配向を阻害し球晶が発生し易いため通常の易配向結晶化ポリマーから製造されたメルトブロー不織布に較べ強度、風合いの点で劣ったものしか得られない。また、PETの場合でも特殊な設備を使い、噴射気体を非常に高速化する等極めて特殊な条件を選べば収縮率の小さいウェブを得ることが可能である(例えば、特許文献3参照。)。しかし、特有の設備を必要とするため、実施は限定的である。
一方、PETに対し、PETと非相溶性であり結晶化速度が速くかつその溶融粘度が十分に小さいポリオレフィン系ポリマーを少量ブレンドし使用することで、繊維中で、海島構造を形成させ、お互いに非晶分子の移動を結晶部分が抑えることにより、収縮を押える方法が取られている(例えば、特許文献4参照。)。このように過去の様々な検討により、結晶化速度の改善がPETをメルトブロー法で使用するためのポイントの1つであるということは知られていたが、樹脂自体の改良による提案はあまり報告されておらず、また、特殊な工程や設備、他樹脂の添加等の限定的な解決法しかなかった(例えば、特許文献4参照。)。
特開2002−170540号公報 特開平03−045768号公報 特開昭55−090663号公報 特開平05−051852号公報
本発明は、上記背景技術を鑑みてなされたもので、その目的は、特殊な工程や設備、他の樹脂等を用いず、ポリエチレンテレフタレート繊維からなり、90℃下での面積収縮率の小さいメルトブロー不織布の製造に好適なポリエチレンテレフタレート組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレート組成物であって、下記一般式(I)で表されるホスホン酸金属塩化合物または有機含窒素化合物をポリエチレンテレフタレート組成物全重量に対して0.01〜2.00質量%含まれることを特徴とするメルトブロー不織布製造用ポリエチレンテレフタレート組成物により解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
Figure 2015010294
[上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜12個のアルキル基、炭素数6〜12個のアリール基またはベンジル基を示し、MZ+は、Mg2+、または第3〜4周期第2〜15族の金属イオンを示す。Zは2〜4の整数である。
但しZ=2のとき、n=1、m=1であり、Z=3のとき、n=3、m=2であり、Z=4のとき、n=2、m=1である。]
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物(PET組成物)によれば、90℃下における面積収縮が少ないメルトブロー不織布を容易に得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明におけるPET組成物は、そのポリエチレンテレフタレート部分を構成する成分は、全繰り返し単位に対して80モル%以上がエチレンテレフタレート単位からなることが好ましく、より好ましくは90モル%である。但し、PET組成物の主たる物性に影響を及ぼさない範囲で、またPET組成物製造工程におけるやむを得ない条件選択により10モル%以下の範囲で他のグリコール成分、他のジカルボン酸成分が共重合されていたり、PET組成物全重量に対して10重量%以下の割合でPET以外のポリマーがブレンドされていても良い。
(共重合可能なグリコール成分[ジオール成分]等について)
本発明のPET組成物において共重合用いられるグリコール成分としてはエチレングリコール以外のアルキレングリコールを挙げる事ができ、具体的にはトリメチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレンジオール、ノニルメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルオクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール等の直鎖または分岐鎖のあるアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、2,2−ノルボルナンジメタノール、3−メチル−2,2−ノルボルナンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、2,6−ノルボルナンジメタノール、パーヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジメタノール、アダマンタンジメタノール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジオールなどの脂環族ジオール;ビス(4−ω−ヒドロキシアルキルオキシ)フェニル、ビス(ω−ヒドロキシアルキルオキシ)ナフタレン、2,2−ビス(4−ω−ヒドロキシアルキルオキシフェニル)プロパン、ビス(4−ω−ヒドロキシアルキルオキシフェニル)ベンゼンの芳香族基を含むジオールの1種、または2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。更に共重合芳香族ポリエチレンテレフタレートの構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えばデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−フェニルエタノールなどを用いても良い。
(共重合可能なジカルボン酸成分等について)
本発明において用いられるジカルボン酸成分としては、第一に芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。具体的にはフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、その他の位置にカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジカルボキシフェノキシエタン、ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。その他のジカルボン酸としては、シクロペンタンジカルボン酸、2,3−フランジカルボ酸、2,4−フランジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、3,4−フランジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、シクロデカンジカルボン酸、ジシクロデカンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸等のごとき脂環族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸等のごとき脂肪族ジカルボン酸等で示されるジカルボン酸成分の1種、または2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。更にポリエチレンテレフタレートを構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸または没食子酸等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えば安息香酸、トルイル酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、о−ベンゾイル安息香酸などを用いても良い。他にも、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、マンデル酸、ヒドロアクリル酸、グリコール酸、3―オキシプロピオン酸、アシアチン酸、キノバ酸などオキシカルボン酸のようなヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル等を少量使用しても良い。
(PETの製造方法について)
上記ポリエチレンテレフタレートは、従来公知の製造方法を用いて製造すればよい。例えば、テレフタル酸またはテレフタル酸の炭素数1〜6の低級ジアルキルエステルと、エチレングリコールを用いて、エステル化反応またはエステル交換触媒の存在下150〜250℃の常圧下〜5kPaの加圧下でエステル交換反応を行い、得られた反応生成物を更に重縮合触媒の存在下、260〜300℃の高温下、500Pa以下の高真空下、溶融下で重縮合を進める製造方法である。
(エステル交換触媒)
これらの製造方法によりポリエチレンテレフタレートを製造する際に、エステル交換触媒、重縮合触媒、および必要であれば安定剤などを使用することが好ましい。例えば、エステル交換触媒としては、チタン化合物や、一般的なアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物系触媒として、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等の酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム[Mg(HCO]、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム等の炭酸塩・炭酸水素塩、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸ルビジウム、乳酸セシウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸ストロンチウム、乳酸バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、酢酸チタン、酢酸クロム、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸亜鉛、酢酸スズ、酢酸鉛などの乳酸塩・酢酸塩、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ルビジウム、安息香酸セシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸カルシウム、安息香酸ストロンチウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、テレフタル酸ルビジウム、テレフタル酸セシウム、テレフタル酸マグネシウム、テレフタル酸カルシウム、テレフタル酸ストロンチウム、テレフタル酸バリウム、イソフタル酸リチウム、イソフタル酸ナトリウム、イソフタル酸カリウム、イソフタル酸ルビジウム、イソフタル酸セシウム、イソフタル酸マグネシウム、イソフタル酸カルシウム、イソフタル酸ストロンチウム、イソフタル酸バリウム等の安息香酸塩・テレフタル酸塩・イソフタル酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の水酸化物、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属アルコラート等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
(重縮合触媒)
重縮合触媒としてはチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、アルミニウム化合物またはジルコニウム化合物を用いることができる。これらの重縮合触媒は固有粘度が0.30dL/gに達する迄に重縮合反応槽に添加することが出来る。
チタン化合物としては、四フッ化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等の四ハロゲン化チタン、チタンテトラブトキシドおよびそれらの縮合体、チタンテトラエメチトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラキスアセチルアセトナート錯体、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)錯体、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)錯体、チタンジメトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジエトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジノルマルプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジブトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジヒドロキシビスグリコレート、チタンジヒドロキシビスラクテート、チタンジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、乳酸チタン、チタンオクタンジオレート、チタンジメトキシビストリエタノールアミネート、チタンジエトキシビストリエタノールアミネート、チタンジブトキシビストリエタノールアミネート、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサフェニルジチタネート、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート、オクタフェニルトリチタネート、ヘキサアルコキシジチタネート、オクタアルキルトリチタネート、酢酸チタン、シュウ酸チタン、プロピオン酸チタン、シュウ酸チタニルアンモニウム、シュウ酸チタニルカリウム、シュウ酸チタニルナトリウムなどが挙げられる。また上述のテトラアルキルチタネートとフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸もしくはピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸もしくはその無水物との反応生成物、またはテトラアルキルチタネートとモノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、モノアリールホスフェートもしくはジアリールホスフェートとの反応生成物であっても良い。
ゲルマニウム化合物では、塩化ゲルマニウム、一酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウムなどが例示される。アンチモン化合物では、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモングリコキサイドまたは酢酸アンチモンが例示される。アルミニウム化合物ではギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリアセチルアセテート等を挙げることができる。更に、上記のチタン化合物におけるチタン原子をジルコニウム原子に置き換えた化学構造を有するジルコニウム化合物を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
これらのエステル交換触媒または重縮合触媒はPET組成物中の含有量が、アルカリ金属元素またはアルカリ土類元素ならば10〜100ppm、マンガン元素ならば50〜230ppm、チタン元素ならば1〜75ppm、アンチモン元素ならば60〜320ppmとなるように用いるか、またはPETの繰り返し単位当たり1〜100ミリモル%、好ましくは5〜50ミリモル%となるように用いられることが好ましい。
(安定剤について)
重縮合反応は、必要に応じて安定剤の共存下に実施することができる。安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、モノメチルアッシドホスフェート、モノエチルアッシドホスフェート、モノノルマルプロピルアッシドホスフェート、モノイソプロピルアッシドホスフェート、モノブチルアッシドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノフェニルアシッドホスフェート、ジメチルアッシドホスフェート、ジエチルアッシドホスフェート、ジノルマルプロピルアッシドホスフェート、ジイソプロピルアッシドホスフェート、ジブチルアッシドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェートなどの酸性リン酸エステルおよび正リン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。
これらの安定剤は、安定剤に含まれるリン原子のモル量が、重縮合反応中に用いられる上記重縮合触媒に含まれる金属原子の0.5〜5.0倍モル量となるように重縮合反応の当初から乃至重縮合反応終了までに添加されることが好ましい。より好ましくは重縮合触媒の添加時期と同時期に添加されることである。
(結晶核剤:成分)
本発明においては、上記の方法で得られたポリエチレンテレフタレートに、ポリエチレンテレフタレート成形品としたときの寸法安定性を高めるため、特定の結晶化促進剤を配合する必要がある。本発明のポリエチレンテレフタレート組成物における結晶化促進剤としては、有機含窒素化合物や下記に示すようなホスホン酸金属塩化合物を挙げることができる。有機含窒素化合物の具体例としては、例えば株式会社アデカ製NA−05(商品名)などを挙げることができる。これら有機含窒素化合物やホスホン酸金属塩化合物を、下記に示す量についてポリエチレンテレフタレート中に配合することによって、ポリエチレンテレフタレートの結晶性(結晶化のしやすさ)を向上させることができる。その結果メルトブロー不織布を製造した時に不織布を構成するポリエチレンテレフタレート繊維中の残留応力を、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート並に低減することができ、本発明の目的を奏することができる。
(ホスホン酸金属塩の種類)
上述のように、本発明のポリエチレンテレフタレート組成物においては、下記一般式(I)で表されるホスホン酸金属塩化合物を、ポリエチレンテレフタレート組成物全重量に対して0.01〜2.00質量%含ませることによって本発明の課題を解決することができる。
Figure 2015010294
[上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜12個のアルキル基、炭素数6〜12個のアリール基またはベンジル基を示し、MZ+は、Mg2+、または第3〜4周期第2〜15族の金属イオンを示す。Zは2〜4の整数である。
但しZ=2のとき、n=1、m=1であり、Z=3のとき、n=3、m=2であり、Z=4のとき、n=2、m=1である。]
ここで官能基Rは、炭素数1〜12個のアルキル基、炭素数6〜12個のアリール基またはベンジル基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−フェニルフェニル基、ベンジル基を挙げることができる。それらの中でも好ましくはアリール基が選択され、より好ましくはフェニル基である。MZ+としては、Mg2+、または第3〜4周期2〜15族の金属イオンから選ばれる。中でも、得られるポリエチレンテレフタレート組成物が高い結晶性を示す点で、マグネシウム、マンガン、コバルト、亜鉛およびチタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素、より具体的にはMg2+、Mn2+、Co2+、Zn2+、Ti4+を好ましく例示できる。または前記ホスホン酸塩化合物がマンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩またはマグネシウム塩であることが好ましい。上記一般式(I)においては、Z=2のとき、n=1、m=1であり、Z=3のとき、n=3、m=2であり、Z=4のとき、n=2、m=1である。これはとりもなおさず式2×n=Z×mを満たすようにすることである。一般式(I)で表される化合物においてカチオン種の電荷量とアニオン種の電荷量を同じにするためである。なお、Z=2のとき、mは0.9〜1.1の範囲にあることが、Z=3のとき、mは1.8〜2.2の範囲にあることが、Z=4のとき、mは0.9〜1.1の範囲にあることがそれぞれ好ましい。mがこれらの範囲からはずれる場合、アニオン種とカチオン種の電荷量が一致せず、ホスホン酸金属塩に含まれる不純物の量が増え、結晶性向上の効果が低下するため好ましくないことがある。
以上の事項を考慮すると、ホスホン酸金属塩化合物としては、メチルホスホン酸金属塩、エチルホスホン酸金属塩、n−プロピルホスホン酸金属塩、iso−プロピルホスホン酸金属塩、n−ブチルホスホン酸金属塩、iso−ブチルホスホン酸金属塩、tert−ブチルホスホン酸金属塩、ペンチルホスホン酸金属塩、ヘキシルホスホン酸金属塩、ヘプチルホスホン酸金属塩、オクチルホスホン酸金属塩、ノニルホスホン酸金属塩、デシルホスホン酸金属塩、ウンデシルホスホン酸金属塩、ドデシルホスホン酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩、ナフチルホスホン酸金属塩、ビフェニルホスホン酸金属塩、メチルフェニルホスホン酸金属塩、エチルフェニルホスホン酸金属塩、プロピルフェニルホスホン酸金属塩、ブチルフェニルホスホン酸金属塩、ペンチルフェニルホスホン酸金属塩、ヘキシルフェニルホスホン酸金属塩、ジメチルフェニルホスホン酸金属塩、ジエチルフェニルホスホン酸金属塩、ジプロピルフェニルホスホン酸金属塩、ベンジルホスホン酸金属塩、ふぇねちるホスホン酸金属塩を挙げることができる。これらの中でも、フェニルホスホン酸金属塩を好ましく挙げることができる。更に、フェニルホスホン酸マグネシウム塩、フェニルホスホン酸マンガン塩、フェニルホスホン酸コバルト塩、フェニルホスホン酸亜鉛塩、フェニルホスホン酸チタン塩をより好ましく挙げることができる。これらのホスホン酸金属塩化合物は対応するホスホン酸化合物、ホスホン酸の炭素数1〜6のモノエステル化合物、またはホスホン酸の炭素数2〜12のジエステル化合物と、対応金属元素を含む酢酸塩等の塩または対応金属元素を含む水酸化物等を適切な溶媒中で混合することによって得ることができる。
(ホスホン酸金属塩の添加量について)
本発明に用いるホスホン酸金属塩は、ポリエチレンテレフタレート組成物の全質量に対して0.01〜2.00質量%含有している必要がある。ホスホン酸金属塩化合物の含有量が0.01質量%未満の場合、得られるPET組成物の結晶性が不十分であり、2.00質量%を超えると、ホスホン酸金属塩化合物の粒子同士が凝集し、高次の凝集粒子を形成し、好ましくない。ホスホン酸金属塩の含有量は全PET組成物の質量に対して0.02〜1.50質量%の範囲が好ましく、0.03〜1.20質量%の範囲が更に好ましい。上記の有機含窒素化合物やホスホン酸金属塩化合物を、この範囲の含有量となるように、ポリエチレンテレフタレート中に配合することによって、ポリエチレンテレフタレートの結晶性(結晶化のしやすさ)を向上させることができる。それ故、メルトブロー不織布を製造した際に、ポリエチレンテレフタレート繊維1本1本の結晶性が向上しているために、不織布を構成するポリエチレンテレフタレート繊維中の残留応力を、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート並に低減することができる。その結果、後述するような90℃±2℃×10分下に放置した時おける不織布面積の収縮率を小さくすることができ、本発明の目的を奏することができる。
(ホスホン酸金属塩の添加時期)
ここでポリエチレンテレフタレート組成物の製造時における一般式(I)のホスホン酸金属塩化合物の添加時期としては特に限定はなく、重縮合反応によりポリエチレンテレフタレートを製造する工程の任意の段階で添加することができる。好ましくは、エステル交換反応の開始前から重縮合反応が終了する任意の段階で添加することができる。より好ましくはエステル交換反応の開始前から重縮合反応を開始するまでの時期に添加することである。
(ホスホン酸金属塩化合物の添加方法:湿式法について)
ホスホン酸金属塩化合物のPET組成物への添加方法としては、特に限定はないが、ホスホン酸金属塩化合物を含有するスラリーの状態で添加する湿式法、あるいは溶媒を含まないでホスホン酸金属塩化合物そのものを、添加する乾式法が挙げられる。ホスホン酸金属塩化合物自体の添加量が微量な場合の調整が容易なことから、湿式法が好ましく採用する事できる。
湿式法を採用した場合の溶媒としては、PET組成物から容易に除去可能な低沸点の溶媒であり、ホスホン酸金属塩が不溶である溶媒を使用することが好ましい。このような溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ベンジルアルコールの如きアルコール類、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランの如き炭化水素化合物類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドの如き、アミド系極性溶媒類を挙げることができる。これら溶媒は、単一の溶媒として利用することができ、また複数の溶媒種を組み合わせた混合溶媒として利用することもできる。
上記の湿式法で利用するホスホン酸金属塩化合物スラリーは、必要に応じて、分散剤を添加することができる。このような分散剤としては、下記一般式(IV)で示される有機モノアルキルカルボン酸化合物を挙げることができる。この有機モノアルキルカルボン酸化合物としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を挙げることができる。それらの中でも分散剤としては入手容易性、得られた粒子を微分散化に優れる点から酢酸、プロピオン酸が特に良好である。このような化合物を用いて通常採用される方法により、ホスホン酸金属塩化合物スラリーを製造することができる。
(ホスホン酸金属塩の製造方法)
使用するホスホン酸金属塩としては、市販のホスホン酸金属塩を使用することもできるが、ホスホン酸との所定の金属化合物から微細なホスホン酸金属塩の微粒子を調製することが好ましい。粗大な粒子としてホスホン酸金属塩が残っていると、繊維の成形品を溶融成形する際に、ア)ポリマーフィルターの目詰まり、イ)糸切れしやすい、ウ)口金に異物が堆積しやすい、エ)得られるポリエチレンテレフタレートの成形品の外観を損ねる、といった問題が生じやすくなり、また余りに微細な粒子にしすぎても、結晶性の向上に寄与しないまたは寄与が少ない、といった問題が生じることがある。
(ホスホン酸金属塩化合物の別の添加方法:乾式法について)
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法として、溶融状態のポリエチレンテレフタレートに前記ホスホン酸金属塩化合物を混練することによる添加手法を採用することができる。
混練する方法は特に限定されるものではないが、通常の一軸混練機、二軸混練機を使用することが好ましい。さらに好ましくは、得られるポリエチレンテレフタレート組成物の重合度の低下を抑制するために、ベント式の一軸、二軸混練機を使用する方法を例示できる。この混練時の条件は特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートの融点以上、滞留時間は1時間以内、好ましくは1分〜30分である。また、混練機への粒子化合物とポリエチレンテレフタレートの供給方法は特に限定されるものではない。例えば乾式法により粒子状のホスホン酸金属塩化合物とポリエチレンテレフタレートを別々に混練機に供給する方法、粒子状のホスホン酸金属塩化合物とポリエチレンテレフタレートを適宜混合して供給する方法などを挙げることができる。
その他一般的に市販されている結晶核剤については、必要に応じて更に結晶性を増すために、上記のポリエチレンテレフタレートやホスホン酸金属塩の同様に湿式法または乾式法により添加することが可能である。
(ポリエチレンテレフタレート組成物の結晶化温度)
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物においては、90℃±2℃×10分下に放置した時おける不織布面積の収縮率を小さくするとの発明の効果を奏するために、10℃/分の昇温速度で測定した時の昇温時結晶化温度[Tci]が135〜150℃で、300℃まで昇温し2分間保持した後に10℃/分の速度で測定した時の降温時結晶化温度[Tcd]が175〜215℃であるとのポリエチレンテレフタレート組成物を採用することもできる。後述する比較例において示す様に、通常のポリエチレンテレフタレートでは、Tciが161℃、Tcdが172℃程度であり、本発明のPET組成物においては、通常のポリエチレンテレフタレートに比べてTciがかなり低く、Tcdがかなり高くなっているのが分かる。これは、Tciの温度が低いほど、急冷・固化したポリエチレンテレフタレート組成物の昇温時の非晶から結晶への結晶化が低温度から起こり、且つ迅速に起こっていることを表し、固体状態のポリエチレンテレフタレート組成物中の非晶部分の結晶化が起こりやすく結晶性が高いといえる。また同様にTcdの温度が高いほど、一旦溶融したポリエチレンテレフタレート組成物の降温時の結晶化がより高い温度から起こり、且つ迅速に起こっていることを表し、溶融時からの結晶化が起こりやすく結晶性が高いといえる。このようなTciが低いおよび/またはTcdが高いポリエチレンテレフタレート組成物を用いて、メルトブロー不織布を製造した場合も、不織布を構成するポリエチレンテレフタレート繊維中の残留応力を、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート並に低減することができる。その結果、不織布の面積収縮率を小さくすることができる。
このようなTci,Tcdを有するPET組成物を得るには、適正な結晶核剤種を適量PETに配合・含有させることにより達成することができる。具体的には、上記の株式会社アデカ製NA−05(商品名)やホスホン酸金属塩化合物を0.01〜2.00質量%配合させることが好ましく採用することができる。
(ポリエチレンテレフタレート繊維とメルトブロー不織布)
本発明におけるPET組成物は通常の手法により溶融紡糸法により紡糸し、ポリエチレンテレフタレート繊維を得ることができる。より具体的には本発明のPET組成物チップを120〜200℃下にて2〜20時間乾燥した後、溶融温度290℃、紡糸速度500〜4000m/分の条件で溶融紡糸することによりポリエチレンテレフタレート繊維を得ることができる。このポリエチレンテレフタレート繊維は後述するメルトブロー不織布にも好適に用いられる。
また、前記ポリエチレンテレフタレート繊維は、芯鞘型の繊維からなり、芯成分が本願発明のポリエチレンテレフタレート組成物を含み、鞘成分が他のポリエステル、具体的にはポリブチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートを含むものであったり、ポリオレフィン、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを含むものであったりしても良い。ここで、芯成分であるポリエチレンテレフタレート組成物は、鞘成分を構成するポリマーより融点が高いため、後述するメルトブロー不織布を製造する際には、熱圧着時にダメージを受けにくく、不織布の強度や、剛性が向上できる。さらには鞘成分のポリマーがメルトブロー不織布と構造上類似するもの、または特に同一のポリマーからなることにより、後記のメルトブロー不織布とスパンボンド不織布等の他の繊維構造体との相溶性がよくなり、熱圧着時に強固な一体化構造とすることが可能となる。
なお、本発明における芯鞘型とは、芯成分の周りを鞘成分が同心円状に、あるいは偏芯円状に被覆してなるもの、さらには芯成分の周りに鞘成分を多葉形状に配してなるものが好ましい形態である。最も好ましくは生産簡便性の点から、同心円状の芯鞘型繊維である。また、芯:鞘の重量比率は特に制限されるものではないが、30:70〜95:5の範囲が好ましく、40:60〜90:10の範囲がより好ましい。また同様にサイドバイサイド型に複合化されたポリエチレンテレフタレート繊維も採用することができる。
本発明におけるメルトブロー不織布は、120〜200℃下にて2〜20時間乾燥したPET組成物を溶融し、その溶融したPET組成物を紡糸口金より押し出し、これに加熱高速ガス流体等を吹き当てながら該溶融PET組成物を引き伸ばすことにより極細繊維化し、捕集してシートとする方法に代表される、いわゆるメルトブロー法により製造されたものである。
前記メルトブロー不織布を構成するPET繊維の平均繊維径は、0.1〜50μmであり、好ましくは0.1〜30μmの範囲である。平均繊維径が0.1μmよりも小さいときは、PET組成物を引き伸ばして極細繊維化する際に、繊維が切れやすくなり、塊状のPET組成物が混入する場合があり好ましくない。さらには不織布の通気性が低下する傾向もあり好ましくない。平均繊維径が50μmよりも大きい場合は、メルトブロー不織布製造時に、糸条の冷却不良により糸切れが生じやすく生産安定性の面から好ましくない。なお、ここでいう平均繊維径は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維直径を測定し、平均値の小数点以下第一位を四捨五入し算出することで求められるものをいう。
また、本発明におけるメルトブロー不織布は、上記のポリエチレンテレフタレート組成物を含むものであり、これが主成分であることが望ましい。具体的には、このポリエチレンテレフタレート組成物が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。ポリエチレンテレフタレートからなるメルトブロー不織布は、ポリブチレンテレフタレートやポリプロピレンより融点が比較的高いため耐熱性に優れており、かつ上述の様に本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は熱による寸法安定性も優れているため好ましい。
さらに前記メルトブロー不織布の原料樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、艶消し剤、顔料、ヒンダードフェノール化合物もしくはヒンダードアミン化合物等の酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤、リン原子含有化合物等の難燃剤、フッ素原子含有化合物等の撥水剤または親水剤等を添加してもよい。また、本来の機能を損なうことがなければ、微量の共重合体成分を含むものでもよい。
また、本発明にて使用されるメルトブロー不織布は、溶融したポリマーを口金より押し出し、これを高速吸引ガス等により吸引延伸した後、移動コンベア上に捕集してウェブとし、さらに連続的に熱処理、絡合等を施すことによりシートとする方法に代表される、いわゆるメルトブロー法により製造されたものである。なお、メルトブロー不織布の原料となるPET組成物としては、通常その固有粘度が0.60〜0.68dL/gのものを用いる。しかし、この固有粘度の範囲ではPET組成物の流動性に欠ける場合がある。このような場合には、不織布製造に支障のない範囲でより低い固有粘度のPET組成物を用いることで、流動性に欠けるという問題を解消することも可能である。例えば固有粘度を0.4〜0.5dL/gのPET組成物を用いることで流動性を改善することができる。
(面積収縮率)
本発明のメルトブロー不織布は、90℃±2℃×10分の温度・時間の雰囲気下における面積収縮率が15%未満であることが好ましい。90℃の温度の雰囲気下における収縮率は、より好ましくは10%未満である。加熱時の面積収縮率は、低ければ低いほど、寸法変化が小さくなり不織布を用いた成形品の成型後の反り変形が小さくなる。逆に、面積収縮率が、15%以上になると、成形品の成型後の反りや変形が大きいことから、成型用布帛として使用することが難しくなる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定を受けるものでは無い。なお、実施例中の各物性値は以下の方法により求めた。なお実施例、比較例において「部」とは重量部を表す。
(分析方法)
(1)固有粘度(IV)
極限粘度数は、ポリエチレンテレフタレート組成物チップを一定量計量し、o−クロロフェノールに種々の濃度になるように溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
(2)DEG(ジエチレングリコール)含有量
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエチレンテレフタレート組成物サンプルを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィ−(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
(3)熱分析(昇温結晶化温度:Tci、・降温結晶化温度:Tcd)
TA instruments社製DSC Q20にて、昇温速度10℃/min.にて測定を行った。測定条件は下記の通りである。
(a)降温時結晶化温度:ポリエチレンテレフタレート組成物サンプルを、示差走査熱量計を用い、窒素気流下、20℃/分の昇温条件にて、300℃まで加熱し、2分保持後、10℃/分の降温条件で測定し、現れる発熱ピークを観測し、ピーク面積よりエネルギーを計算した(発熱ピークの頂点の温度をTcd[降温時結晶化温度]と表記した。)。
(b)昇温時結晶化温度:ポリエチレンテレフタレート組成物サンプルを、20℃/分の昇温条件にて、300℃まで加熱し、300℃で2分間保持、溶融させたものを液体窒素中で急冷・固化させることにより得られた該組成物に対し、示差走査熱量計を用い、窒素気流下、20℃/分の昇温条件にて、現れる発熱ピークを観測し、ピーク面積よりエネルギーを計算した(発熱ピークの頂点の温度をTci[昇温時結晶化温度]と表記した。)。
Tciの温度が低いほど、急冷・固化したポリエチレンテレフタレート組成物の昇温時の結晶化が低温度から起こり、且つ迅速に起こっていることを表し、固体状態の非晶部分の結晶化が起こりやすく結晶性が高いといえる。また同様にTcdの温度が高いほど溶融したポリエチレンテレフタレート組成物の降温時の結晶化がより高い温度から起こり、且つ迅速に起こっていることを表し、溶融時からの結晶化が起こりやすく結晶性が高いといえる。
(4)PET組成物中のマンガン元素、コバルト元素、亜鉛元素、マグネシウム元素、リン元素含有量
PET組成物中の各金属元素、リン元素含有量は粒状のPET組成物サンプルをスチール板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成した。この試験成形体を使って蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。
(5)目付(g/m
実施例、比較例で製造したPET組成物を285℃で溶融し、口金温度285℃、加熱空気温度290℃の条件で、平均繊維径が2μmとなるよう熱風量、冷却条件を調整し、目付30g/m2のメルトブロー不織布を製造した。以下の手法にて不織布の目付を測定した。
JIS L−1906(2000年版)の5.2に準じて、縦方向50cm×横方向50cmの試料を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点以下第一位を四捨五入し、不織布の目付を測定した。
(6)面積収縮率(%)
上記操作にて、目付を測定したメルトブロー不織布の面積収縮率は以下の方法で測定した。JIS L−1906(2000年版)の5.9.1を参考とし、不織布の任意の部分から縦25cm×横25cmのサンプルを3個採取し、縦、横それぞれ3カ所に20cmの長さを表す印を付け(0.01cmの単位まで測定)、恒温乾燥機内に90℃±2℃×10分放置し、取り出して室温まで冷却した。始めに印を付けた縦、横方向それぞれ3カ所の長さを0.01cm単位まで測定し、縦方向、横方向それぞれの平均値について小数点以下第三位を四捨五入したものを、次式に当てはめ、小数点以下第二位を四捨五入して面積収縮率を算出した。
面積収縮率(%)=100−(((L3×L4)/(L1×L2))×100)
ここで、各記号は以下のそれぞれ数値を表す。
L1:加熱前の印の縦方向の長さの平均値(cm)、
L2:加熱前の印の横方向の長さの平均値(cm)、
L3:加熱後の印の縦方向の長さの平均値(cm)、
L4:加熱後の印の横方向の長さの平均値(cm)。
[製造例1]エチレンテレフタレートオリゴマーの調製
225重量部のエチレングリコール−テレフタル酸オリゴマーが滞留している反応器中に、前記オリゴマーを撹拌しながら、窒素雰囲気中で、255℃、常圧下に維持された条件下に、179重量部の高純度テレフタル酸と95重量部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを、一定速度で供給し、反応器中の反応混合物を撹拌しながら両者のエステル化およびオリゴマー化反応により生成する水と、エチレングリコールとを系外に留去しながら、4時間にわたり、両化合物をエステル化し、その反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上であり、生成したエチレンテレフタレートオリゴマーの重合度は、約5〜7であった。
[比較例1]
製造例1で得られたエチレンテレフタレートオリゴマーの96.1重量部を反応器内にとり、1.55重量部のエチレングリコールを加え、窒素雰囲気250℃で撹拌溶解した。完全に溶解し透明になったことを確認した後、285℃まで温度を上げた。0.80wt%エチレングリコール溶液の二酸化ゲルマニウムを1.44重量部、トリメチルホスヘートを0.0105重量部を添加し、常圧から50Paの高真空に圧力を下げながら重合反応を行った。高真空状態になってから、70分で重合反応を打ち切った。溶融ポリマーを反応器より取り出し、ペレット状に切断した。
[実施例1〜3]
2軸混練機による粒子化合物添加PETの製造
比較例1で重合したPETに対して、アデカ社製NA−05を表1の量になるよう、2軸混練押し出し機にポリエチレンテレフタレートおよびNA−05を供給した。混練温度285℃で混練し、ダイより吐出されたポリマーをチップ化した。結果を表1に示した。
[実施例4]
(1)フェニルホスホン酸マンガン(II)のエチレングリコール溶液の調製
室温にて、エチレングリコール(和光特級)100質量部に対して、フェニルホスホン酸(日産化学)1.58質量部、酢酸(和光特級)0.006質量部(フェニルホスホン酸に対して、1モル%相当)を、攪拌機・還流装置を有する反応装置に供給し、酢酸マンガン(II)・四水和物2.45質量部(フェニルホスホン酸に対し等モル量)を添加し、60分間攪拌・溶解させた。溶液を昇温し、80〜85℃にて30分間、加熱還流後、冷却し、フェニルホスホン酸マンガン(II)のエチレングリコール溶液を得た。
フェニルホスホン酸マンガン(II)の収量は、蛍光X線装置により間接的に定量した。フェニルホスホン酸マンガン(II)エチレングリコール溶液100質量部に、メタノール(和光特級)400質量部を添加・攪拌・遠心分離し、上澄みの有機溶媒成分を抽出し、有機層に存在するリン・マンガン量を測定し、フェニルホスホン酸マンガン(II)の収率は99.5%以上であることを確認した。
(フェニルホスホン酸マンガン(II)収率)=100−(上澄み有機層に含有されるリン成分)/(添加したフェニルホスホン酸量)×100
(2)フェニルホスホン酸マンガン(II)スラリーの調製
調製したフェニルホスホン酸エチレングリコール溶液をスギノマシン製連続式微粒化装置アルティマイザーシステムHJP−25005型機にて、圧力80MPaの高圧状態とし、相互に向かい合ったノズルから放出し、粒子の衝突による解砕処理を全量実施した。この解砕処理を2回繰り返し、続いてこの処理液を日本ポール製フィルタープロファイルIIのカートリッジグレード070(99.98%濾過精度7μm相当)のMCYタイプフィルターにて濾過し、最終スラリーとした。
得られたスラリー中のフェニルホスホン酸マンガン(II)の粒径を、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD7000(株式会社島津製作所製)により測定したところ、99.9%以上の粒子が0.5μm以下であった。
(3)ポリエチレンテレフタレートチップの製造
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール70質量部との混合物に酢酸カルシウム1水和物0.063質量部、酢酸ナトリウム0.056質量部、を撹拌機、精留塔およびメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを反応器外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、リン酸トリメチル0.058質量部を添加し、さらにフェニルホスホン酸マンガン塩(II)が表1の添加量になるようにフェニルホスホン酸マンガン塩スラリーを添加し、エステル交換反応を終了させた。その後、三酸化二アンチモン0.04質量部を添加して、撹拌装置、窒素導入口、減圧口および蒸留装置を備えた反応容器に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、ポリエチレンテレフタレート組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。結果を表1に示した。
[実施例5〜6]
実施例4において、ホスホン酸金属塩の量、スラリーの溶媒種類を表1に示す内容に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1に示した。
[実施例7]
(1)フェニルホスホン酸コバルト(II)のエチレングリコール溶液の調製
室温にて、エチレングリコール(和光特級)100質量部に対して、フェニルホスホン酸(日産化学)1.58質量部、酢酸(和光特級)0.006質量部(フェニルホスホン酸に対して、1モル%相当)を、攪拌機・還流装置を有する反応装置に供給し、酢酸コバルト(II)・四水和物2.49質量部(フェニルホスホン酸に対し等モル量)を添加し、60分間攪拌・溶解させた。溶液を昇温し、80〜85℃にて30分間、加熱還流後、冷却し、フェニルホスホン酸コバルト(II)のエチレングリコール溶液を得た。
フェニルホスホン酸コバルト(II)の収量は、蛍光X線装置により間接的に定量した。フェニルホスホン酸コバルト(II)エチレングリコール溶液100質量部に、メタノール(和光特級)400質量部を添加・攪拌・遠心分離し、上澄みの有機溶媒成分を抽出し、有機層に存在するリン・コバルト量を測定し、フェニルホスホン酸コバルト(II)の収率は99.5%以上であることを確認した。
(2)フェニルホスホン酸コバルト(II)の微粒子粉末の精製
フェニルホスホン酸コバルト(II)のエチレングリコール溶液100質量部に対し、蒸留水400質量部を添加・攪拌後、遠心分離機にて2000rpm、20分間処理し、上澄み成分をデカントし、除去した。さらに蒸留水400質量部を添加・攪拌後、同様の遠心分離操作を2回実施し、フェニルホスホン酸を高濃度に含有する残渣を得た。残渣を液体窒素で冷却し、凍結させた状態のまま、50mmHgの真空化にて凍結乾燥させ、フェニルホスホン酸コバルト(II)の微粒子粉末を得た。
(3)ポリエチレンテレフタレートチップの製造
実施例7において、フェニルホスホン酸マンガンスラリーの代わりに、フェニルホスホン酸コバルト(II)の微粒子粉末を利用する以外は同様にポリエチレンテレフタレートチップを重合した。結果を表1に示した。
[実施例8〜9]
実施例4において、ホスホン酸金属塩の種類・金属化合物の種類を表1に示す内容に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1に示した。実施例1〜9、比較例1で重合したポリマーは、製造例1に従い、不織布とし面積収縮率を測定した。結果を表1に示した。
Figure 2015010294
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物によれば、収縮性と加工性(流動性)が解消されたメルトブロー不織布を容易に得ることができる。

Claims (8)

  1. ポリエチレンテレフタレート組成物であって、下記一般式(I)で表されるホスホン酸金属塩化合物または有機含窒素化合物をポリエチレンテレフタレート組成物全重量に対して0.01〜2.00質量%含まれることを特徴とするメルトブロー不織布製造用ポリエチレンテレフタレート組成物。
    Figure 2015010294
    [上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜12個のアルキル基、炭素数6〜12個のアリール基またはベンジル基を示し、MZ+は、Mg2+、または第3〜4周期第2〜15族の金属イオンを示す。Zは2〜4の整数である。
    但しZ=2のとき、n=1、m=1であり、Z=3のとき、n=3、m=2であり、Z=4のとき、n=2、m=1である。]
  2. ホスホン酸金属塩化合物がマンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩またはマグネシウム塩であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート組成物。
  3. ホスホン酸金属塩化合物がフェニルホスホン酸金属塩であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレート組成物。
  4. テレフタル酸またはテレフタル酸の炭素数1〜6のジアルキルエステルと、エチレングリコールをエステル化反応またはエステル交換反応を行った後、重縮合反応によりポリエチレンテレフタレートを製造する工程の任意の段階で、一般式(I)で表されるホスホン酸金属塩化合物をポリエチレンテレフタレート組成物全重量に対して0.01〜2.00質量%となるように添加し、前記ホスホン酸金属塩化合物を、ホスホン酸金属塩化合物を含有するスラリーの状態で添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。
  5. 前記ホスホン酸金属塩化合物を含有するスラリー中に有機モノアルキルカルボン酸化合物である分散剤を含むことを特徴とする請求項4に記載のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。
  6. 10℃/分の昇温速度で測定した時の昇温時結晶化温度が135〜150℃で、300℃まで昇温し2分間保持した後に10℃/分の速度で測定した時の降温時結晶化温度が175〜215℃であるポリエチレンテレフタレート組成物。
  7. 請求項1〜3、6のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレート組成物を溶融紡糸して得られるメルトブロー不織布製造用ポリエチレンテレフタレート繊維。
  8. 請求項7に記載のメルトブロー不織布製造用ポリエチレンテレフタレート繊維からなるメルトブロー不織布。
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