JP2014214289A - エチレン−ビニルアルコール系共重合体のグラフト共重合体、その製造方法及びそれを用いた金属吸着材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記グラフト共重合体は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に、リン酸もしくはホスホン酸の少なくともいずれか1つの構造を有するグラフト鎖が導入されている。エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体であるのが好ましく、特に粒子状の多孔質体であるのが好ましい。この場合、例えば、粒子の表面に形成された細孔の長径の平均値が0.01μm〜20μmであってもよい。
【選択図】なし
Description
また、特許文献2では、リン酸基を有するビニルモノマーをグラフト化したポリエチレン繊維などが開示されている。
さらに、特許文献3では、粒子状の結晶性セルロースにリン酸基を導入した後にジルコニウムを担持した吸着材が開示されている。
また、特許文献2に開示されている、グラフト重合の基材として用いられるポリエチレンは、放射線照射にて発生したラジカルが失活し易いため、得られたグラフト体のグラフト率が変動し易く、性能にバラツキが発生しやすいという懸念があった。
さらにまた、特許文献3に開示の粒子状の結晶性セルロースは、それ自体高価であるため、実使用に制約を有していた。また、セルロースも放射線にて発生したラジカルが失活しやすいため、得られたグラフト体のグラフト率が変動し易く、性能にバラツキが発生しやすいという懸念があった。
本発明において、多孔質とは、体積1cm3あたり、細孔を少なくとも10個、好ましくは100個以上、より好ましくは1,000個以上含む構造を意味している。なお、この細孔は、連続構造であってもよく、独立構造であってもよい。
前記複合体から水溶性ポリマーを抽出する工程と、から形成されることが好ましい。
本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に、リン酸基、ホスホン酸基のうちの少なくともいずれかの官能基を有するグラフト鎖が導入されたグラフト共重合体である。
なお、本発明においてリン酸基とは、−OPO(OH)2または(−O)2P(O)OHを意味し、ホスホン酸基とは、−PO(OH)2または>PO(OH)を意味する。
上記のリン酸基またはホスホン酸基は、塩の状態で存在していてもよく、塩の状態で存在する基は、上記のリン酸基またはホスホン酸基に含まれる。
本発明のグラフト共重合体の製造方法は、
エチレン−ビニルアルコール系共重合体を準備する工程と、
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、リン酸基、ホスホン酸基のうちの少なくともいずれかの官能基を有するグラフト鎖を導入し、リン酸基、ホスホン酸基のうちの少なくともいずれかの官能基を有するグラフト鎖が導入されたグラフト共重合体を得る工程と、を備えている。
本発明のグラフト共重合体の基材として用いられるエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、上記の性質を有するグラフト共重合体を得ることができる限り特に限定されないが、例えば、そのエチレン含有量は、10〜60モル%程度であってもよく、20〜50モル%程度が好ましい。エチレン含量が10モル%未満の場合、得られるグラフト共重合体の耐水性が低下する虞がある。一方、エチレン含量が60モル%を越えると製造が難しく入手が困難である。
このようなエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、本発明において、「溶融物の冷却固化」とは、溶融物を凝固浴など用いることなく冷却固化することを意味している。
このため、照射後のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を室温の空気中に1〜2時間程度放置してもラジカルは維持されているので、照射後のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を空気存在下で下記に示すよう不飽和単量体と接触させることによりグラフト鎖の導入が可能であり、ポリエチレン、セルロースなど通常のポリマーへのグラフト重合で行われているような、照射工程とグラフト鎖導入工程とを不活性雰囲気下および/または冷蔵下で連続させる必要はなく、工業生産におけるプロセスの許容範囲を広げることが可能である。
グラフト重合に用いるリン酸基、ホスホン酸基のうちの少なくともいずれかの官能基を有する不飽和単量体としては、特に限定されないが、例えば、化学式(1)〜(4)で示される不飽和単量体を用いることができる。
なお、R1は、化学的安定性の点からメチル基であることが好ましく、リン酸基およびホスホン酸基としては、金属吸着性の点から、−OPO(OH)2、−PO(OH)2が好ましい。
化学式(1)で示されるものとして、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、4−メタクリロイルオキシブチルアシッドホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシルアシッドホスフェート、2−メタルリルアミドエチルアシッドホスフェート
4−メタクリルアミドブチルアシッドホスフェート、10−メタクリルアミドデシルアシッドホスフェート、
化学式(2)で示されるものとして、ジ(2―メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(4−メタクリロイルオキシブチル)アシッドホスフェート、ジ(10−メタクリロイルオキシデシル)アシッドホスフェート、ジ(2―メタクリルアミドエチル)アシッドホスフェート、ジ(4−メタクリルアミドブチル)アシッドホスフェート、
ジ(10−メタクリルアミドデシル)アシッドホスフェート、
化学式(3)で示されるものとして、メタクリロイルエチルホスフェート、メタクリロイルブチルホスフェート、メタクリロイルデシルホスフェート、メタクリルアミドエチルホスフェート、メタクリルアミドブチルホスフェート、メタクルアミドデシルホスフェート、
化学式(4)で示されるものとして、ジ(メタクリロイルエチル)ホスフェート、
ジ(メタクリロイルブチル)ホスフェート、ジ(メタクリロイルデシル)ホスフェート、ジ(メタクリルアミドエチル)ホスフェート、ジ(メタクリルアミドブチル)ホスフェート、ジ(メタクリルアミドデシル)ホスフェートが例示される。
グラフト重合させる不飽和単量体としては、重合後、リン酸基、ホスホン酸基に変換可能な反応性基を有するものであればよく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する不飽和単量体、クロロメチルスチレンやクロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン化アルキル基を有する不飽和単量体などが用いられる。
本発明の金属イオン吸着材は、各種金属を、簡単な操作で、高効率かつ低コストで金属イオンとして回収することができる。金属イオン回収方法としては、本発明の金属イオン吸着材を用いる限り特に限定されず、金属イオン吸着材の形状に応じてさまざまな回収方法を利用することができる。
例えば、金属イオン回収方法は、本発明の金属イオン吸着材と、目的とする金属イオンを含有する金属イオン含有液とを接触させ、前記吸着材に金属イオンを吸着させる吸着工程と、
金属イオンを吸着した吸着材を回収し、前記吸着材と溶離液とを接触させ、吸着材から金属イオンを溶離させる溶離工程と、を備えていてもよい。
また、金属イオンを吸着した吸着材を燃焼させることにより金属を回収してもよい。
走査型電子顕微鏡を用い粒子表面を観察した。表面に形成されている細孔から任意に50個選択し、それぞれの細孔の長径を計測した。50個の長径を平均し、平均値を導出した。但し、1nm以下の場合、傷、付着物等との区別がつかないため、選択から除外した。
グラフト率[w/w(%)]=100×(付与したグラフト鎖の重量)/(基材の重量)
金属イオン吸着材50mgを金属イオンの濃度が30mg/Lである0.1規定の硝酸溶液50mLに投入し、25℃にて60分間攪拌する。その後、溶液1mLをサンプリングし50mLにメスアップした後、ICP発光分析装置(日本ジャーレルアッシュ製、IRIS−AP)にて測定した金属濃度をC(mg/L)とする。以下の式より、金属吸着量を求める。
サンプル1gあたりの金属吸着量(mg/g)=30−C×50
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、E105)85質量部とビニルアルコール系重合体(株式会社クラレ社製、PVA205)15質量部をラボプラストミルにて、220℃の温度で3分間溶融混練した後、溶融物を冷却固化させたコンパウンドを粉砕し、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子を作製した。さらに得られた粒子を100℃の熱水中で2時間攪拌してビニルアルコール系重合体を抽出、乾燥させ多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体粒子を得た。該多孔質粒子の細孔の長径の平均値は0.72μmであった。該多孔質粒子に30kGyの電離放射線を照射し、空気中で1時間放置した後、80℃アルゴン置換した2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学株式会社 ライトエステル P−1M)の30質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところグラフト率41%であるリン酸がグラフトしたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得た。得られた共重合体を用いて、Dy(ジスプロシウム)の吸着試験を行った結果を表1に示す。
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、E105)50質量部とビニルアルコール系重合体(株式会社クラレ社製、PVA205)50質量部をラボプラストミルにて、210℃の温度で3分間溶融混練した後、溶融物を冷却固化させたコンパウンドを粉砕し、篩を用いて粒子径425μm〜710μmの粒子を作製した。さらに得られた粒子を90℃の熱水中で2時間攪拌してビニルアルコール系重合体のみを抽出し、多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体粒子を得た。該多孔質粒子の細孔の長径の平均値は1.79μmであった。該多孔質粒子に30kGyのγ線を照射し、空気中で1時間放置した後、82℃窒素置換した2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学株式会社 ライトエステル P−1M)の40質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところグラフト率240%であるリン酸がグラフトしたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得た。得られた共重合体を用いて、Dyの吸着試験を実施した結果を表1に示す。
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、E105)を粉砕し、篩を用いて粒子径105μm〜212μmの粒子を作製した。該粒子に200kGyの電離放射線を照射し、空気中で1時間放置した後、80℃窒素置換した2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社、JPA514)
の60質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところグラフト率25%であるリン酸がグラフトしたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得た。得られた共重合体を用いて、Dyの吸着試験を実施した結果を表1に示す。
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、F101)90質量部とビニルアルコール系重合体(株式会社クラレ社製、PVA205)10質量部をラボプラストミルにて、210℃の温度で3分間溶融混練した後、溶融物を冷却固化させたコンパウンドを粉砕し、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子を作製した。さらに得られた粒子を100℃の熱水中で2時間攪拌してビニルアルコール系重合体のみを抽出し、多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体粒子を得た。該多孔質粒子の細孔の長径の平均値は0.27μmであった。該多孔質粒子に30kGyのγ線を照射し、空気中で1時間放置した後、75℃窒素置換した2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学株式会社 ライトエステル P−1M)の40質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところグラフト率79%であるリン酸がグラフトしたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得た。得られた共重合体を用いて、Dyの吸着試験を実施した結果を表1に示す。
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、F101)80質量部とビニルアルコール系重合体(株式会社クラレ社製、PVA217)20質量部をラボプラストミルにて、210℃の温度で3分間溶融混練した後、溶融物を冷却固化させたコンパウンドを粉砕し、篩を用いて粒子径425μm〜710μmの粒子を作製した。さらに得られた粒子を100℃の熱水中で2時間攪拌してビニルアルコール系重合体を抽出、乾燥させ多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体粒子を得た。該多孔質粒子の細孔の長径の平均値は0.58μmであった。該多孔質粒子に60kGyの電離放射線を照射し、空気中で1時間放置した後、75℃アルゴン置換した2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社、JPA514)の50質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、120分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところグラフト率40%であるリン酸がグラフトしたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得た。
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、E105)を粉砕し、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子を作製した。該粒子に30kGyのγ線を照射し、空気中で1時間放置した後、80℃窒素置換したグリシジルメタクリレートの40質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところ90%であった。さらに、該粒子を80℃のリン酸水溶液に浸漬攪拌し、1.5時間反応させた。反応後、該粒子を水で洗浄し、乾燥させることでリン酸がグラフトしたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得た。
市販のポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製 7000F)を粉砕した後、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子を作製した。該粒子に30kGyのγ線を照射し、空気中で1時間放置した後、80℃窒素置換した2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学株式会社 ライトエステル P−1M)の40質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところ3%のリン酸がグラフトしたポリエチレン系共重合体を得た。得られた共重合体を用いて、Dyの吸着試験を実施した結果を表1に示す。
市販の結晶性セルロース粒子(旭化成ケミカルズ株式会社社製、セルフィアCP−203)を、篩を用いて粒子径212μm〜300μmの粒子に分級した。該粒子に30kGyのγ線を照射し、空気中で1時間放置した後、80℃窒素置換した2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、JPA514)の20質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところ5%であるセルロース系共重合体を得た。得られた共重合体を用いて、Dyの吸着試験を実施した結果を表1に示す。
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、F101)を粉砕した後、篩を用いて粒子径425μm〜710μmの粒子に分級し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を得た。得られた共重合体を用いて、Dyの吸着試験を実施した結果を表1に示す。
金属イオン吸着材として、キレート樹脂(ピュロライト社製、S940)を室温にて12時間真空乾燥させ、S940の乾燥樹脂を得た。得られたキレート樹脂を用いて、Dyの吸着試験を実施した結果を表1に示す。
Claims (10)
- エチレン−ビニルアルコール系共重合体に、リン酸基およびホスホン酸基のうちの少なくともいずれかの官能基を有するグラフト鎖が導入されたグラフト共重合体。
- 請求項1のグラフト共重合体において、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体が多孔質体であり、前記多孔質体に前記グラフト鎖が導入されたグラフト共重合体。
- 請求項1または2のグラフト共重合体において、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体が粒子状の多孔質体であり、前記粒子状の多孔質体の粒子表面に形成された細孔の長径の平均値が0.01μm〜20μmである多孔質体に前記グラフト鎖が導入されたグラフト共重合体。
- 請求項3のグラフト共重合体において、前記グラフト共重合体が、粒子径が10μm〜2000μmの粒子状であるグラフト共重合体。
- エチレン−ビニルアルコール系共重合体を準備する工程と、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、リン酸基およびホスホン酸基のうちの少なくともいずれかの官能基を有するグラフト鎖を導入して、グラフト共重合体を得る工程と、を備える、グラフト共重合体製造方法。
- 請求項5の製造方法において、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が多孔質であるグラフト共重合体の製造方法。
- 請求項6の製造方法において、多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と水溶性ポリマーとを溶融混合し、溶融物を冷却固化させた複合体を得る工程と、
前記複合体から水溶性ポリマーを抽出する工程と、
から形成されるグラフト共重合体の製造方法。 - 請求項5〜7のいずれか一項の製造方法において、電離放射線を用いて、グラフト鎖を導入するグラフト共重合体の製造方法。
- 請求項7の製造方法において、水溶性ポリマーがポリビニルアルコールであるグラフト共重合体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のグラフト共重合体を用いてなる金属イオン吸着材。
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