JP2014210755A - ブタジエンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アセトアルデヒドとアルコールを原料として使用する、選択率の高いブタジエンの製造方法の提供。【解決手段】原料にアセトアルデヒドおよび一般式(I)で示されるアルコールを用いてブタジエンを製造する方法であって、周期律表第4族および5族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Aの酸化物(成分A)と、周期律表第1〜3族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Bの酸化物(成分B)とを含有する触媒を使用する。金属Aはジルコニウム、ハフニウム、およびタンタルが好ましく、金属Bはナトリウム、バリウム、ランタン、およびイットリウムが好ましい。(R1およびR2は、水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。)【選択図】なし

Description

本発明は、原料にアセトアルデヒドとアルコールを使用するブタジエンの製造方法に関する。
ブタジエンの主な供給源はナフサの熱分解炉(クラッカー)の炭素数4の留分からの抽出物であるが、ナフサの熱分解は主にエチレンおよびプロピレンの製造を目的としており、ブタジエンは副生物として扱われているに過ぎない。また、ブタジエンは新興国の需要増が予想されているが、生産量が十分ではないため、新しいブタジエン製法の開発が求められている。
アセトアルデヒドとアルコールを原料としてブタジエンを製造する方法は古くから知られており、非特許文献1(Catalysis Science and Technology 1 (2011) pp. 267-272)には後述のような反応機構が推定されている。特許文献1(米国特許第2421361号明細書)には、ジルコニウム、タンタルまたはニオブの酸化物を触媒に用いた例が開示されている。特許文献2(米国特許第2524848号明細書)には、触媒としてシリカに担持した酸化タンタルを使用することが開示されている。しかしながら、これらの方法はブタジエンの選択率が低いなどの理由から、実用的にはまだ課題がある。
米国特許第2421361号明細書 米国特許第2524848号明細書
Catalysis Science and Technology 1 (2011) pp. 267-272
本発明の目的は、アセトアルデヒドとアルコールを原料として使用する、選択率の高いブタジエンの製造方法を提供することである。
本発明者らは種々検討した結果、アセトアルデヒドとアルコールからブタジエンを製造するための触媒として従来の酸化タンタルなどに加え、周期律表第1〜3族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Bの酸化物を併用することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の[1]〜[6]に関する。
[1]
原料にアセトアルデヒドおよび一般式(I)で示されるアルコールを用いてブタジエンを製造する方法であって、周期律表第4族および5族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Aの酸化物(成分A)と、周期律表第1〜3族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Bの酸化物(成分B)とを含有する触媒を使用することを特徴とするブタジエンの製造方法。
Figure 2014210755
(RおよびRは、水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。)
[2]
金属Bがナトリウム、バリウム、ランタン、およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種である[1]に記載のブタジエンの製造方法。
[3]
金属Aがジルコニウム、ハフニウム、およびタンタルから選ばれる少なくとも1種である[1]または[2]のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[4]
触媒が成分Aおよび成分Bが担体に担持されたものである[1]〜[3]のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[5]
一般式(I)のRが水素原子、Rが炭素数1〜6のアルキル基である[1]〜[4]のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[6]
一般式(I)で示されるアルコールがエタノールである[1]〜[4]のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
本発明によれば、アセトアルデヒドとアルコールを原料として使用して、ブタジエンを高い選択率で製造することができる。
本発明は、式1に示すように2分子のアセトアルデヒドと1級または2級のアルコールからブタジエン、アルデヒドまたはケトンおよび2分子の水ができる反応を利用したブタジエンの製造方法である。非特許文献1によれば、推定される反応機構は、2分子のアセトアルデヒドがアルドール縮合後脱水しクロトンアルデヒドとなり、それがアルコールとのメールワイン・ポンドルフ・バーレー還元(MPV還元)によりクロチルアルコールとなり、更に脱水することにより、ブタジエンを生成するものである。
Figure 2014210755
(RおよびRは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。)
アルコールとしてエタノールを用いた場合、エタノールは式(1)によりアセトアルデヒド、すなわち原料化合物と同一となり、結果として生成物はブタジエンと水のみとなる。このため、生成物の分離工程が簡潔となり、より好ましい。
ブタジエン選択率の向上のためには、副反応であるアルコールの脱水によるオレフィンおよび/またはエーテルの生成、アセトアルデヒドからの高分子量体の生成などを抑制することが重要である。
(反応形態)
Figure 2014210755
(RおよびRは、水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。)
一般式(I)で示されるアルコールにおいて、R、Rは水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基である。さらにR、Rは取扱いの容易性の面から炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。また、Rが水素原子である一級アルコールが好ましい。より好ましくはRが水素原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基である。
一般式(I)で示されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、i−ブタノール、クロチルアルコールなどが挙げられる。特に好ましいのは、式(1)における主生成物がブタジエンと水のみとなるエタノールである。
本発明のブタジエンの製造方法における原料化合物としては、アセトアルデヒドと一般式(I)で示されるアルコールを必須成分とするが、これ以外にも他のアルデヒド類を一緒に使用してもよい。アセトアルデヒド以外のアルデヒド類としては、目的化合物であるブタジエンと同じ炭素数4のクロトンアルデヒドやブチルアルデヒドなどが挙げられる。
一般式(I)で示されるアルコールと、アセトアルデヒドおよび任意にアセトアルデヒド以外のアルデヒド類の比率は、アルコール:アルデヒド=0.5:1〜10:1(モル比)であることが好ましく、1:1〜5:1(モル比)であることがより好ましく、1.5:1〜3:1(モル比)であることが特に好ましい。
本発明のブタジエンの製造方法に適した反応温度は、100℃〜700℃の範囲である。好ましくは250℃〜600℃であり、更に好ましくは300℃〜450℃である。
また、反応時の圧力は常圧、加圧下または減圧下のいずれでもよく、常圧以下がより好ましい。
反応形式としては、バッチ方式、連続方式、固定床、移動床、流動床またはスラリー床のいずれの方法でもよい。
本発明は原料化合物のみで行うこともできるが、窒素またはヘリウムのような不活性なガスを原料化合物と混合し触媒と接触させることにより、反応させることもできる。水を原料化合物と混合して反応の開始および/または進行を促進することもできる。
このようにして得られた反応生成物からは、通常用いられている分離、精製法によりブタジエンを取り出すことができる。例えば、精溜、抽出、吸着法などを用いてブタジエンを取り出すことができる。
(触媒)
本発明のブタジエンの製造方法に使用することのできる触媒は、IUPACが1989年に勧告した18族型元素周期表でいう第4族および5族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Aの酸化物(成分A)と、第1〜3族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Bの酸化物(成分B)とを含む触媒が挙げられる。金属Aとしてはジルコニウム、ハフニウム、およびタンタルが好ましく、その酸化物である成分Aは酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、および酸化タンタルが好ましい。また、金属Bとしてはナトリウム、バリウム、ランタン、およびイットリウムが好ましく、その酸化物である成分Bは酸化ナトリウム、酸化バリウム、酸化ランタン、および酸化イットリウムが好ましい。
上記触媒の具体的な作用は不明であり、いかなる理論に拘束されることを望む訳ではないが、以下のように推測できる。成分Aが原料にアセトアルデヒドおよびアルコールを使用したブタジエンの製造に活性であることは知られているが、それに成分Bを加えることにより、原料および/または中間生成物の酸点を制御して副反応を抑制することができ、その結果、ブタジエンの選択率を向上させることができる。
本発明に使用する触媒は、ブタジエンの製造に使用する際に成分Aおよび成分Bを含んでいればよい。これら成分の前駆体化合物として、ブタジエンの製造に使用するまでに酸化物となるようなものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、硝酸塩、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機塩、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどのアルコラートなどが触媒前駆体化合物として挙げられる。これらを加熱、焼成などにより酸化物に変換したのちに使用することができる。
焼成温度は100℃〜900℃、好ましくは300℃〜800℃であり、更に好ましくは400℃〜700℃である。焼成は、空気中および窒素またはヘリウムなどの不活性ガス中のいずれの雰囲気下でも可能である。また、反応温度以下で酸化物に変換されうる触媒前駆体化合物の場合、そのまま触媒層として使用することもできる。
触媒は、粉末、顆粒、球体、ペレットなど任意の形状で使用できる。乾燥、焼成して用いることもできる。
成分Aと成分Bの比は、各成分に含まれる金属の原子比〔(成分B中の金属B)/(成分A中の金属A)〕で0.01〜10が好ましく、0.05〜5がより好ましく、0.1〜2が更に好ましい。担持量が少ないとその効果が小さく、多すぎると生産性が低下することがある。
上記の触媒および/または触媒前駆体化合物を、必要に応じて担体に担持させて用いることも可能である。これらの担体としては、加熱帯域において安定な化合物であればよく、他に制限はない。これらの化合物の一例として、アルミナ、シリカ、ゼオライト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、グラファイト、活性炭、炭素繊維などが挙げられる。
触媒を担体に担持して用いる場合には、成分Aおよび成分Bの触媒前駆体化合物を一緒にまたは別々にそれらの溶解可能な溶媒、例えばエタノール、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルムなどに溶解し、担体に含浸した後に、必要に応じて溶媒を除去し、成分Aおよび成分Bの触媒前駆体化合物を加熱、焼成などにより酸化物に変換することができる。
担体に担持する場合の成分Aの担持量は、成分A、成分Bおよび担体の合計質量に対して0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜5質量%がより好ましく、1質量%〜4質量%が更に好ましい。担持量が少ないと生産性が低くなり、多すぎると触媒コストが高くなり実用的でない。
成分Bの担持量は、成分Aと成分B各々に含まれる金属の原子比〔(成分B中の金属B)/(成分A中の金属A)〕で0.01〜10が好ましく、0.05〜5がより好ましく、0.1〜2が更に好ましい。担持量が少ないとその効果が小さく、多すぎると生産性が低下することがある。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
ブタジエンの選択率および収率の計算は、以下の式により求めた。
Figure 2014210755
Figure 2014210755
(生成ガスの分析方法)
反応後のガス中の各成分量は、反応後のガスを室温まで冷却し、凝縮した液成分と残りのガス成分に分け、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析し、液成分およびガス成分に含まれる量を合計して求めた。分析条件は以下のとおりである。
液成分
GC装置 :株式会社島津製作所製 GC−14B
カラム :キャピラリーカラム TC−1(長さ60m×内径0.25mm×膜厚1μm)
キャリアーガス:ヘリウム
カラム温度 :40℃、6分→昇温5℃/分→200℃、2分
検出器 :FID
ガス成分1〔分析成分:アセトアルデヒド、エタノール〕
GC装置 :株式会社島津製作所製 GC−14B
カラム :パックドカラム PEG−1540(長さ5m)
キャリアーガス:ヘリウム
カラム温度 :40℃、一定
検出器 :FID
ガス成分2〔分析成分:炭化水素(C1〜C4)〕
GC装置 :アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilent−7890A
カラム :キャピラリーカラム HP−AL/S(長さ25m×内径0.32mm×膜厚8μm)
キャリアーガス:ヘリウム
カラム温度 :60℃、一定
検出器 :FID
ガス成分3〔分析成分:窒素〕
GC装置 :アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilent−7890A
カラム :パックドカラム モレキュラーシーブ5A(長さ5m)
キャリアーガス:ヘリウム
カラム温度 :60℃、一定
検出器 :TCD
(実施例1)
グローブボックス内でタンタルエトキシド(和光純薬工業株式会社製)0.81gを脱水エタノール(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、シリカ(CARiACT Q−10;富士シリシア化学株式会社製)50mL(22g)に全量吸収させた。エバポレーターでエタノールを除き、更に100℃で一晩乾燥させ、タンタル前駆体化合物担持シリカを得た。硝酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.047gを水に溶解し、タンタル前駆体化合物担持シリカに全量吸収させた。100℃で一晩乾燥させた後に、空気下、550℃で4時間焼成し、酸化タンタル/酸化ナトリウム担持シリカ触媒を得た。
得られた触媒10mLを流通型反応装置に仕込み、反応温度400℃、圧力大気圧、エタノール:アセトアルデヒド:水:窒素ガス=4:2:0.4:3.6L/H(0℃、1気圧換算で)で反応させた結果、ブタジエンを収率22.1%、選択率66.5%で得た。また、エチレン、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ6.3%、6.8%であった。
(実施例2〜6)
表1に示すように成分B(成分B前駆体)の種類、比率を変えて実施例1と同様にして触媒を調製した。この各触媒を用いて実施例1と同様の反応を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
成分Bを担持しなかったほかは実施例1と同様にして触媒を調製した。すなわち、グローブボックス内でタンタルエトキシド(和光純薬工業株式会社製)0.81gを脱水エタノール(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、シリカ(CARiACT Q−10;富士シリシア化学株式会社製)50mLに全量吸収させた。エバポレーターでエタノールを除き、更に100℃で一晩乾燥させた。更にそれを空気下、550℃で4時間焼成し、酸化タンタル担持シリカ触媒を得た。
実施例1と同じようにして反応させた結果、ブタジエンを収率25.9%、選択率58.5%で得た。また、エチレン、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ11.1%、10.1%であった。
(実施例7)
グローブボックス内で塩化ジルコニウム(和光純薬工業株式会社製)1.25gを脱水エタノール(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、シリカ(CARiACT Q−10;富士シリシア化学株式会社製)50mLに全量吸収させた。エバポレーターでエタノールを除き、更に100℃で一晩乾燥させ、ジルコニウム前駆体化合物担持シリカを得た。硝酸バリウム(和光純薬工業株式会社製)0.28gを水に溶解し、ジルコニウム前駆体化合物担持シリカに全量吸収させた。100℃で一晩乾燥させた後に、空気下、550℃で4時間焼成し、酸化ジルコニウム/酸化バリウム担持シリカ触媒を得た。
得られた触媒10mLを流通型反応装置に仕込み、反応温度400℃、圧力大気圧、エタノール:アセトアルデヒド:水:窒素ガス=4:2:0.4:3.6L/H(0℃、1気圧換算で)で反応させた結果、ブタジエンを収率22.3%、選択率54.2%で得た。また、エチレン、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ1.6%、0.7%であった。
(比較例2)
成分Bを担持しなかったほかは実施例7と同様にして触媒を調製し、酸化ジルコニウム担持シリカ触媒を得た。実施例1と同じようにして反応させた結果、ブタジエンを収率30.3%、選択率50.9%で得た。また、エチレン、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ8.7%、6.5%であった。
Figure 2014210755
このように第4族および5族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物に第1〜3族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物を加え、原料および/または中間生成物の酸点をコントロールすることにより、副生物を低減し、ブタジエン選択率を向上させることに成功した。また、未反応原料は回収しリサイクルすることができるので、原単位の向上には収率が低くてもブタジエン選択率の高い方が重要である。

Claims (6)

  1. 原料にアセトアルデヒドおよび一般式(I)で示されるアルコールを用いてブタジエンを製造する方法であって、周期律表第4族および5族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Aの酸化物(成分A)と、周期律表第1〜3族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属Bの酸化物(成分B)とを含有する触媒を使用することを特徴とするブタジエンの製造方法。
    Figure 2014210755
    (RおよびRは、水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。)
  2. 金属Bがナトリウム、バリウム、ランタン、およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のブタジエンの製造方法。
  3. 金属Aがジルコニウム、ハフニウム、およびタンタルから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
  4. 触媒が成分Aおよび成分Bが担体に担持されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のブタジエンの製造方法。
  5. 一般式(I)のRが水素原子、Rが炭素数1〜6のアルキル基である請求項1〜4のいずれか一項に記載のブタジエンの製造方法。
  6. 一般式(I)で示されるアルコールがエタノールである請求項1〜4のいずれか一項に記載のブタジエンの製造方法。
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