JP2014209414A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
図1は、リチウムイオン二次電池10を示す断面図である。図2は、当該リチウムイオン二次電池10に内装される電極体40を示す図である。なお、図1および図2に示されるリチウムイオン二次電池10は、本発明が適用されうるリチウムイオン二次電池の一例を示すものに過ぎず、本発明が適用されうるリチウムイオン二次電池を特段限定するものではない。
電池ケース20は、ケース本体21と、封口板22とを備えている。ケース本体21は、一端に開口部を有する箱形を有している。ここでは、ケース本体21は、リチウムイオン二次電池10の通常の使用状態における上面に相当する一面が開口した有底直方体形状を有している。この実施形態では、ケース本体21には、矩形の開口が形成されている。封口板22は、ケース本体21の開口を塞ぐ部材である。封口板22は凡そ矩形のプレートで構成されている。かかる封口板22がケース本体21の開口周縁に溶接されることによって、略六面体形状の電池ケース20が構成されている。
電極体40は、図2に示すように、帯状の正極(正極シート50)と、帯状の負極(負極シート60)と、帯状のセパレータ(セパレータ72,74)とを備えている。
正極シート50は、帯状の正極集電箔51と正極活物質層53とを備えている。正極集電箔51には、正極に適する金属箔が好適に使用され得る。正極集電箔51には、例えば、所定の幅を有し、厚さが凡そ15μmの帯状のアルミニウム箔を用いることができる。正極集電箔51の幅方向片側の縁部に沿って未塗工部52が設定されている。図示例では、正極活物質層53は、正極集電箔51に設定された未塗工部52を除いて、正極集電箔51の両面に保持されている。正極活物質層53には、正極活物質が含まれている。正極活物質層53は、正極活物質を含む正極合剤を正極集電箔51に塗工することによって形成されている。
導電材としては、例えば、カーボン粉末、カーボンファイバーなどのカーボン材料が例示される。このような導電材から選択される一種を単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末などのカーボン粉末を用いることができる。
また、バインダは、正極活物質層53に含まれる正極活物質と導電材の各粒子を接着させたり、これらの粒子と正極集電箔51とを接着させたりする。かかるバインダとしては、使用する溶媒に溶解または分散可能なポリマーを用いることができる。例えば、水性溶媒を用いた正極合剤組成物においては、セルロース系ポリマー(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)など)、フッ素系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)など)、ゴム類(酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)など)などの水溶性または水分散性ポリマーを好ましく採用することができる。また、非水溶媒を用いた正極合剤組成物においては、ポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリルニトリル(PAN)など)を好ましく採用することができる。
負極シート60は、図2に示すように、帯状の負極集電箔61と、負極活物質層63とを備えている。負極集電箔61には、負極に適する金属箔が好適に使用され得る。この負極集電箔61には、所定の幅を有し、厚さが凡そ10μmの帯状の銅箔が用いられている。負極集電箔61の幅方向片側には、縁部に沿って未塗工部62が設定されている。負極活物質層63は、負極集電箔61に設定された未塗工部62を除いて、負極集電箔61の両面に形成されている。負極活物質層63は、負極集電箔61に保持され、少なくとも負極活物質が含まれている。負極活物質層63は、負極活物質を含む負極合剤が負極集電箔61に塗工されている。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物等が挙げられる。
セパレータ72、74は、図2に示すように、正極シート50と負極シート60とを隔てる部材である。この例では、セパレータ72、74は、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材で構成されている。セパレータ72、74には、樹脂製の多孔質膜、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のセパレータ或いは積層構造のセパレータを用いることができる。この例では、図2に示すように、負極活物質層63の幅b1は、正極活物質層53の幅a1よりも少し広い。さらにセパレータ72、74の幅c1、c2は、負極活物質層63の幅b1よりも少し広い(c1、c2>b1>a1)。
この実施形態では、電極体40は、図2に示すように、捲回軸WLに直交する一の方向において扁平に押し曲げられている。図2に示す例では、正極集電箔51の未塗工部52と負極集電箔61の未塗工部62は、それぞれセパレータ72、74の両側において、らせん状に露出している。この実施形態では、図1に示すように、電極体40は、セパレータ72、74からはみ出た正負の未塗工部52(62)の中間部分が寄せ集められ、電池ケース20の内部に配置された正負の内部端子23、24の先端部23a、24aに溶接されている。
電解液としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4,LiAsF6,LiCF3SO3,LiC4F9SO3,LiN(CF3SO2)2,LiC(CF3SO2)3等のリチウム塩を用いることができる。一例として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(例えば質量比1:1)にLiPF6を約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液が挙げられる。
図4は、かかるリチウムイオン二次電池10の充電時の状態を模式的に示している。充電時、リチウムイオン二次電池10の電極端子23、24(図1参照)は、図4に示すように、スイッチ92によって充電器90に接続されたような状態になる。この際、充電器90の作用によって、正極シート50と負極シート60との間に、電圧が印加され、正極活物質層53中の正極活物質からリチウムイオン(Li)が電解液80に放出され、正極活物質層53から電荷が放出される。放出された電荷は、正極集電箔51に送られ、充電器90を通じて負極シート60に送られる。また、負極シート60では電荷が蓄えられるとともに、電解液80中のリチウムイオン(Li)が、負極活物質層63中の負極活物質に吸収され、かつ、貯蔵される。これにより、負極シート60と正極シート50とに電位差が生じる。
図5は、かかるリチウムイオン二次電池10の放電時の状態を模式的に示している。放電時、リチウムイオン二次電池10の電極端子23、24(図1参照)は、図5に示すように、スイッチ92によって抵抗94に接続されたような状態になる。この際、負極シート60と正極シート50との電位差によって、抵抗94を通じて負極シート60から正極シート50に電荷が送られるとともに、負極活物質層63に貯蔵されたリチウムイオンが電解液80に放出される。また、正極では、正極活物質層53中の正極活物質に電解液80中のリチウムイオンが取り込まれる。
上述したリチウムイオン二次電池10では、セパレータ72、74は、図3に示すように、基材76の表面に耐熱層78を備えている。耐熱層78は、フィラーとバインダとからなる。ここで、セパレータ72、74は、正極シート50と負極シート60を隔てるが、リチウムイオンの通過(電解液の流通)は許容する。かかるセパレータ72、74に設けられる耐熱層78は、セパレータ72、74に耐熱性を付与し、かつ、リチウムイオンが通過(電解液の流通)するように設計される。セパレータ72、74の基材76は、例えば、ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜であるが、このような多孔質膜は、例えば、150℃程度の高温度になると、熱収縮を起こす場合がある。これに対して、基材76の表面に耐熱層78が設けられていることによって、基材76の耐熱性が向上するとともに、正極シート50または負極シート60が発熱した場合に基材76に生じる熱収縮が小さく抑えられる。
の不飽和カルボン酸である。
また、「ポリアクリル酸」は、アクリル酸をベースにした重合体である。ポリアクリル酸には、例えば、mアクリル酸+nアクリル酸エチル(orアクリル酸メチル)の共重合体、またはmアクリル酸ニトリル+nアクリル酸エチル(orアクリル酸メチル)の共重合体が含まれうる。この場合、例えば、m:n=5:95〜95:5の範囲であるとよい。
また、「PNVA」は、ポリ−N−ビニルアセトアミド(Poly-N-vinylacetamide)である。
また、「PNMA」は、ポリn−メチル−n−ビニルアセトアミド(Poly-N-methyl-N-vinylacetamide)である。
表1と表2は、上記の耐熱層78についての試験例を示している。
ここではまず、表1と表2の試験例の評価用セルを説明する。
正極における正極活物質層を形成するにあたり正極合剤を調製した。ここで、正極合剤は、正極活物質として三元系のリチウム遷移金属酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)、導電材としてアセチレンブラック(AB)、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をそれぞれ用いた。正極活物質と、導電材と、バインダとの質量比を、正極活物質:導電材:バインダ=90:8:2とした。これら正極活物質と、導電材と、バインダとを、イオン交換水と混合することによって正極合剤を調製した。次いで、正極合剤を正極集電箔の片面ずつ順に塗布して乾燥させ、正極集電箔の両面に正極活物質層が塗工された正極(正極シート)を作製した。
負極における負極活物質層を形成するにあたり負極合剤を調製した。ここで、負極合剤は、負極活物質としてアモルファスコートグラファイト、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、バインダをそれぞれ用いた。バインダには、ゴム系バインダであるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を用いた。負極活物質と、増粘剤(CMC)と、バインダ(SBR)との質量比は、負極活物質:CMC:SBR=98:1:1とした。これら負極活物質と、CMCと、SBRとを、イオン交換水と混合することによって負極合剤を調製した。次いで、負極合剤を負極集電箔の片面ずつ順に塗布して乾燥させ、負極集電箔の両面に負極活物質層が塗工された負極(負極シート)を作製した。
セパレータの基材としては、ポリプロピレン(PP)と、ポリエチレン(PE)の3層構造(PP/PE/PP)の多孔質シート(ポリエチレン(PE)の層がポリプロピレン(PP)の層に挟まれた3層構造(PP/PE/PP)の多孔質シート)、ポリプロピレン(PP)と、ポリエチレン(PE)の2層構造(PP/PE)の多孔質シート、ポリプロピレン(PP)の単層構造の多孔質シート、ポリエチレン(PE)の単層構造の多孔質シートを適宜に選択した。
セパレータには、図3に示されているように、上記基材(図3では基材76)に耐熱層(図3では耐熱層78)が形成されたものを適宜に選択した。耐熱層には、フィラーと、バインダが含まれている。
ここで、耐熱層のフィラーには、無機フィラーを用いた。ここでは、無機フィラーとして、アルミナ(Al2O3)と、ベーマイトを用いた。アルミナは、例えば、平均粒径(D50)が、0.2μm以上1.2μm以下であり、BET(ガス吸着法による比表面積)が1.3m2/g以上100m2/g以下であるとよい。また、ベーマイトは、例えば、平均粒径(D50)が、0.2μm以上1.8μm以下であり、BET(ガス吸着法による比表面積)が2.8m2/g以上100m2/g以下であるとよい。なお、ここで例示した評価用セルでは、アルミナには、平均粒径(D50)が凡そ0.1μmであり、BET比表面積が凡そ90m2/gであるアルミナを用いた。また、ベーマイトには、平均粒径(D50)が0.1μmであり、BET比表面積が110m2/gであるベーマイトを用いた。
また、耐熱層のバインダには、上述したポリアクリル酸、PVP、PNVA、PNMAを適宜に用いた。ここで、「PVP」は、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone)である。ここでは、ポリアクリル酸、PVPは、軟化温度が高いバインダ群Aとした。また、PNVA、PNMAは、比較的軟化温度が低いバインダ群Bとした。また、耐熱層の増粘剤として、水系のCMCまたはMC(メチルセルロース)、および有機系のNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を適宜に用いた。なお、ここでセパレータには、一方の表面に耐熱層を形成したが、耐熱層が形成された面を正極シートに対向させても、負極シートに対向させても、後述する抵抗上昇率や過充電時の温度上昇率の点において、略同じ効果が得られた。なお、セパレータの基材が、PE単層である場合には、耐熱層を負極に対向させた。
バインダ群Bに用いられるバインダについては、分子量が異なるものを用意した。ここでは、表1、2で示された分子量を有するバインダはそれぞれ市販されているものを入手して試験を行なった。
ここでは、耐熱層は、フィラーとバインダを混練したペースト(以下、「HRLペースト」という)を作製する。ここで、作製されたセパレータの耐熱層には、バインダ群Aとバインダ群Bの2種類のバインダが含まれている。ここでは、作製されたHRLペーストの混錬方法を、2種類採用した。なお、HRLペーストの溶媒には、例えば、水やNMPを用いるとよい。
HRLペーストの混練方法1(方法1)は、バインダ群Aのバインダとフィラーを先に混ぜ十分に混練(第1混練)した後で、バインダ群Bのバインダを混ぜ軽く混練する(第2混練)。ここでは、混練機として、超音波分散機(ここでは、エム・テクニック株式会社のクレアミックス)を用いた。混練方法1では、まず第1混練において、分散機の容器にバインダ群Aのバインダとフィラーを所定の割合で投入する。第1混練では、15000rpmの回転数で、5分の予備分散を行い、その後、20000rpmの回転数で15分の本分散を行った。次に、第2混連では、所定量のバインダ群Bのバインダを分散機の容器に要れて、第1混練で混練されたバインダ群Aのバインダとフィラーのペーストとともに、15000rpmで0.5分(30秒)の分散を行った。
HRLペーストの混練方法2(方法2)は、バインダ群Aのバインダと、バインダ群Bのバインダとフィラーとを一緒に混ぜ十分に混練する。ここでは、混練機として、超音波分散機(ここでは、エム・テクニック株式会社のクレアミックス)を用い、分散機の容器にバインダ群Aのバインダとバインダ群Bのバインダとフィラーとを所定の割合で投入する。そして、15000rpmの回転数で5分の予備分散を行い、その後、20000rpmの回転数で15分の本分散を行った。
耐熱層は、例えば、グラビア塗工方法を用いて塗工するとよい。ここでは、グラビアロールをセパレータ基材の搬送速度よりも速い速度で回転させ、セパレータの基材を送りつつ塗工した。具体的には、グラビアロールの速度を3.8m/分とし、塗工速度を3m/分とした。グラビアロールとセパレータとの速度比は、1.27とした。なお、用いたグラビアロールは、線数が1インチ当たり100本、セル容積が19.5cm3/m2のアートを有している。
ここでは、評価用セルとして、扁平な角型の評価用セルを作製した。つまり、正極シートと負極シートとを、セパレータを用いて作成した捲回電極体を扁平に押し曲げ、角型の電池ケースに収容し、非水電解液を注液して封口し、扁平な角型の評価用セルを構築した。なお、ここで、具体的に規定される他、捲回電極体(図2参照)の条件は、各サンプルで同じとした。例えば、ここでは、捲回電極体は、幅140mm、高さ55mm、厚み12mmとした。また、正極シートは、合剤密度2.2g/cm3、厚み65μm(箔15μm)、長さ3m、幅115mm、塗工幅98mmとした。また、負極シートは、合剤密度1.1g/cm3、厚み77μm(箔10μm)、長さ3.1m、幅117mm、塗工幅102mmとした。
ここで、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、所定の体積比(EC:DMC:EMC=3:4:3)で混合溶媒に、リチウム塩としての1.1mol/LのLiPF6を溶解させた電解液を用いた。また、電解液には、適宜にLiBOBを添加した。各サンプルにおけるLiBOBの添加量は、後述する表1、2に示すとおりである。ここで、LiBOBは、リチウムビスオキサレートボラートであり、下記の化学式で表され、LiB(C2O4)2とも表記される。
リチウムイオン二次電池の電解液に添加されたLiBOB(LiB(C2O4)2)は、初回充電時に分解され、例えば、以下の化学反応式で示されるように、初回充電時に相当量のガス(COやCO2)が発生するとともに、被膜(例えば、Li2C2O4+B2O3)が生じる。ここで、LiBOBの化学反応式は、例えば、2LiB(C2O4)2→Li2C2O4+B2O3+3CO+3CO2;として、例示されうる。
また、かかるリチウムイオン二次電池ではNa(ナトリウム)が含まれうる。例えば、Naは、正極活物質や負極活物質中の不純物として含まれうる。また、Naは、セパレータの耐熱層に含まれるフィラーとして用いられるアルミナやベーマイトにも不純物として含まれる。このため、リチウムイオン二次電池にNaが含まれうる。
Al2O3+2OH−+3H2O→2[Al(OH)4]−
ここで、表1および表2に示されたNa溶出量(Naの溶出量)は、例えば、正極、負極、セパレータを所定の大きさに切り取り、電解液中に所定時間浸漬させ、電解液中のNaをICP発光分析によって定量することができる。ここでは、正極、負極、セパレータをそれぞれ30cm×5.4cm角に切り取り、未使用の電解液3cc中に常温で4日間浸漬させ、電解液中のNaをICP発光分析によって定量した。ここで、ICP発光分析装置には、Thermo Fisher Scientific社製のiCAP6300を用いた。
ここで、作製された評価用セルは、例えば、所定のコンディショニング工程を行い、抵抗上昇率と、過充電時の温度上昇率とを評価した。
次に、上記のように構築した評価用セルについて、電解液を注入した後で、10時間程度放置し、電池電圧が2.0V以上になってから初期充電を行なった。コンディショニング工程は、次の手順1、2によって行なわれる。
手順1:1.5Cの定電流充電にて4Vに到達した後、5分間休止する。
手順2:手順1の後、定電圧充電にて1.5時間充電された場合または充電電流が0.1Aとなった場合に充電を停止し、5分間休止する。
次に、定格容量は、上記コンディショニング工程の後、評価用セルについて、温度25℃、3.0Vから4.1Vの電圧範囲で、次の手順1〜3によって測定される。
手順1:1Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧放電にて2時間放電し、その後、10秒間休止する。
手順2:1Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、定電圧充電にて2.5時間充電し、その後、10秒間休止する。
手順3:0.5Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧放電にて2時間放電し、その後、10秒間停止する。
定格容量:手順3における定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を定格容量とする。この試験用電池では、定格容量が凡そ4.0Ahになる。
SOC調整は、次の1、2の手順によって調整される。ここで、SOC調整は、上記コンディショニング工程および定格容量の測定の後で行なうとよい。また、ここでは、温度による影響を一定にするため、25℃の温度環境下でSOC調整を行なっている。
手順1:3Vから1Cの定電流で充電し、定格容量の凡そ60%の充電状態(SOC60%:3.73V)にする。
手順2:手順1の後、2.5時間、定電圧充電する。
これにより、試験用電池は、所定の充電状態に調整することができる。
ここで、表1、2における抵抗上昇率(%)は、以下のような高負荷充放電サイクル前後のIV抵抗の増加率である。かかるIV抵抗の増加率によって評価用セルの高負荷特性を評価した。
IV抵抗は、各サンプルに対して、25℃の環境下においてSOC60%の充電状態(SOC:state of charge)におけるIV抵抗を測定した。ここで、IV抵抗は、所定の電流値(I)で10秒間定電流放電し、放電後の電圧(V)をそれぞれ測定する。そして、所定の電流値(I)と、放電後の電圧(V)を基に、X軸にI、Y軸にVを取ってプロットし、各放電により得られたプロットを基に、近似直線を引き、その傾きをIV抵抗とする。ここでは、0.3C、1C、3Cの電流値で定電流放電を行なって得た各放電後の電圧(V)を基にIV抵抗(mΩ)を得た。
また、過充電時の温度上昇率(%)は、例えば、所定の過充電状態に充電し、当該充電電流を遮断した時の温度に対し、その10分後の温度上昇率で評価した。ここでは、過充電状態として、25度の大気環境下にて、10Cで、電圧制限値25Vになるまで充電し、充電電流を遮断した時の温度T1と、その10分後の温度T2を測定した。そして、温度上昇率(%)={(T2−T1)/T1}×100を求めた。
ここで、表1および表2中、例えば、サンプル1−7、および、サンプル10−36に示されているように、耐熱層に含まれるバインダは、バインダ群Aの重量を100とした場合に、バインダ群Bの重量が凡そ5以上50以下となる重量割合である場合に、高負荷充放電サイクル前後の抵抗上昇率や、過充電時の温度上昇率が低く抑えられた。
ここで、表1中のサンプル1からサンプル9では、電解液に添加したLiBOBの量が段階的に変えられている。ここでは、例えば、サンプル1から7のように、電解液に添加したLiBOBの量を0.01モル/L〜0.05モル/Lである場合に、特に、高負荷充放電サイクル前後の抵抗上昇率や、過充電時の温度上昇率が低く抑える傾向が見られた。
ここで、サンプル10−52については、電解液に添加したLiBOBの量を0.025モル/Lとした。
また、サンプル10−15およびサンプル37−39では、バインダ群Bに用いられたバインダの分子量が段階的に変えられている。バインダ群Bに用いられるバインダの分子量は、凡そ1万〜50万であるとよい。例えば、バインダ群Bに用いられるバインダの分子量が、凡そ1万〜50万であるサンプル10−15では、高負荷充放電サイクル前後の抵抗上昇率が小さく抑えられ、かつ、過充電時の温度上昇率が低く抑えられた。
サンプル16−21およびサンプル41−43では、バインダ群Aの重量を100とした場合に、バインダ群Bの重量が凡そ5以上50以下となるように、バインダ群A,Bの重量割合を適当に変えた。なお、ここでは、バインダ群Bに用いられたバインダの分子量は20万とした。この場合、バインダ群Aの重量を100とした場合のバインダ群Bの重量が凡そ5以上50以下である、サンプル16−21では、過充電時の温度上昇率が低く抑えられている。バインダ群Aの重量を100とした場合のバインダ群Bの重量が凡そ5以上50以下である場合には、バインダ群Bが早期に溶融することによってリチウムイオンの拡散を制限し、また、耐熱層と基材との接着を維持する効果が得られていると考えられる。
サンプル22−30およびサンプル45−47では、基材中の0.01μm以上0.1μm以下の細孔径が占める割合が段階的に変えられている。なお、ここでは、バインダ群Bに用いられたバインダの分子量は22万とした。この場合、サンプル22−30で示されているように、基材中の0.01μm以上0.1μm以下の細孔径が占める割合は、凡そ45%以上90%以下である場合には、高負荷充放電サイクル前後の抵抗上昇率が小さく抑えられるとともに、過充電時の温度上昇率が低く抑えられている。
サンプル31−36およびサンプル49−51は、それぞれセパレータの基材の厚みが段階的に変えられている。なお、ここでは、バインダ群Bに用いられたバインダの分子量は25万とした。ここで、サンプル31−36では、セパレータの基材の厚みが、14μm以上30μm以下であり、高負荷充放電サイクル前後の抵抗上昇率が小さく抑えられるとともに、過充電時の温度上昇率が低く抑えられている。
また、サンプル40、44、48、52は、耐熱層を作製する際、HRLペーストの混練方法に、上述した混練方法2が採用されている。他は混連方法1を採用した。ここで、サンプル40はサンプル13と対比されうる。サンプル44はサンプル18と対比されうる。サンプル48はサンプル23と対比されうる。サンプル52はサンプル32と対比されうる。サンプル40、44、48、52では、過充電時の温度上昇率が高くなる傾向がある。
20 電池ケース
21 ケース本体
22 封口板
23 正極端子
24 負極端子
30 安全弁
32 注液口
33 封止材
40 捲回電極体(電極体)
50 正極シート
51 正極集電箔
52 未塗工部
53 正極活物質層
60 負極シート
61 負極集電箔
62 未塗工部
63 負極活物質層
72,74 セパレータ
76 基材
78 耐熱層
80 電解液
90 充電器
92 スイッチ
94 抵抗
100 リチウムイオン二次電池
1000 車両駆動用電池(組電池)
F フィラー
H セパレータ基材の細孔
WL 捲回軸
Claims (7)
- 正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在したセパレータとを備えた電極体と、当該電極体を収容した電池ケースとを備え、
前記電極体にLiBOB由来の被膜と、Naとが含まれ、
前記セパレータは、
プラスチックの多孔質膜からなる基材と、
前記基材の表面に形成された、フィラーとバインダとからなる耐熱層と
を備えており、
前記耐熱層のバインダは、
軟化温度が175℃以上のバインダからなるバインダ群Aと、
軟化温度が175℃よりも低いバインダからなるバインダ群Bと
を有しており、
前記バインダ群Bのバインダの平均分子量が1万〜50万であり、
前記バインダ群Aの重量を100とした場合に、前記バインダ群Bの重量が5以上50以下である、
リチウムイオン二次電池。 - 前記バインダ群Aは、ポリアクリル酸からなる、請求項1に記載されたリチウムイオン二次電池。
- 前記バインダ群Bは、PNVAとPNMAとのうち少なくとも一種類のバインダからなる、請求項1または2に記載されたリチウムイオン二次電池。
- 前記基材の表面に付着した耐熱層のバインダは、前記耐熱層全体におけるバインダ群Bの割合よりもバインダ群Bの割合が多い、請求項1から3までの何れか一項に記載されたリチウムイオン二次電池。
- 前記耐熱層中のフィラーに付着したバインダは、前記耐熱層全体におけるバインダ群Aの割合よりもバインダ群Aの割合が多い、請求項1から4までの何れか一項に記載されたリチウムイオン二次電池。
- 前記セパレータの基材は、0.01μm以上0.1μm以下の細孔径が占める割合が、全体の45%以上90%以下である、請求項1から5までの何れか一項に記載されたリチウムイオン二次電池。
- 前記セパレータの基材の厚さは、14μm以上30μm以下である、請求項1から6までの何れか一項に記載されたリチウムイオン二次電池。
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