JP2012076255A - 積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、および非水電解液二次電池 - Google Patents

積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、および非水電解液二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性と加工性を有し、電池用セパレータとして、優れた特性を兼ね備えた積層多孔フィルムの提供。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)、かつ、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)を含む被覆層(II層)が積層されており、25℃での透気度が2000秒/100ml以下積層多孔フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層多孔フィルムに関し、包装用、衛生用、畜産用、農業用、建築用、医療用、分離膜、光拡散板、電池用セパレータとして利用でき、特に、非水電解電池用セパレータとして好適に利用できるものである。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは電池などに使用する電池セパレータなど各種の分野で利用されている。
特に二次電池はOA、FA、家庭用電器または通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化および軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。非水電解液用溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点からセパレータが正極と負極の間に介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすためセパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
最近の電池の高容量化に伴い、電池の安全性に対する重要度が増してきている。非水電解液二次電池用セパレータの安全に寄与する特性として、シャットダウン特性(以後、「SD特性」と称す)がある。このSD特性は、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔が閉塞され、その結果、電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという機能である。この時、積層多孔性フィルムの微細孔が閉塞される温度のうち最も低い温度をシャットダウン温度(以後、「SD温度」と称す)という。また、近年の電池の高容量化に伴い、電池内部の温度は急上昇するため、イオン伝導の遮断も急速に行う必要がある。そのため、SD特性が開始する温度と、微細孔を閉塞しイオン伝導が遮断されるSD温度との範囲は狭い範囲であることが求められている。中でも、非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合は、これらのSD特性を具備していることが必要である。
前記要望に対して、SD特性を有さない多孔フィルム上に熱可塑性樹脂をコーティングし、SD特性を付与する方法が提案されている。特許文献1では、PTFE製の多孔フィルム上に、エチレン共重合を主成分とするシャットダウン用樹脂粒子とアクリルエステル酸と無水マレイン酸を含む一元共重合体を接着樹脂からなるシャットダウン層がコーティングにより形成されている。また、特許文献2では、ポリプロピレン製の多孔フィルム上に、ポリエチレン製粒子からなるシャットダウン用樹脂粒子とポリオレフィンからなる接着樹脂とを含むシャットダウン層がコーティングにより形成されている。
一方、特許文献3には、膜強度を向上させ、高温時の安全性を付与する目的で、ポリエチレン製多孔フィルムの上にポリエチレン製の粒子をコーティングにより設けている。
特開平9−219185号公報 特開2009−19118号公報 特許2955323号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では前記シャットダウン用樹脂粒子と接着用樹脂の融点温度が100℃以下と低い為、通常電池として使用する温度範囲においても透気性を失うという問題があった。
また、特許文献2には、用いているポリオレフィン製の接着樹脂の軟化温度がSD用樹脂粒子よりも低い為、SD開始温度と微細孔が閉塞されシャットダウンが完了する温度範囲が広くなり、SD特性に欠けるという問題があった。
また、特許文献3に記載の方法では、SD特性付与を目的していないのみならず、用いているポリエチレン粒子の融点が100℃以下と低い為、通常電池として使用する温度範囲においても透気性を失うという問題があった。
本発明の課題は、前記問題点を解決することにある。すなわち、SD特性に優れ、非水電解液電池用セパレータとして用いた際に、優れた特性を有した積層多孔フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)、かつ、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)を含む被覆層(II層)が積層されており、25℃での透気度が2000秒/100ml以下であることを特徴とする積層多孔フィルムである。
また本発明について、前記樹脂バインダー(b)が、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸から少なくとも1種以上選ばれる熱可塑性樹脂であることが好ましい。
また本発明について、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は、96質量%以上であることが好ましい。
また本発明について、β晶活性を有することが好ましい。
本発明によれば、優れた透気特性を有し、非水電解液二次電池用セパレータとして、優れたSD特性を兼ね備えた積層多孔フィルムを得ることができる。
本発明の積層多孔フィルムを収容している電池の概略的断面図である。 高温での透気度、広角X線回折測定における積層多孔フィルムの固定方法を説明する図である。
以下、本発明の積層多孔フィルムの実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
以下に、本発明の積層多孔フィルムを構成する各成分について説明する。
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層))
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムで用いるポリオレフィン系樹脂として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキサンなどを重合した単独重合体または共重合体が挙げられる。この中でも、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%であることが好ましい。より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとフィルムの機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠した。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが2.0未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、積層多孔フィルムの機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって得られる。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔フィルムの機械的強度十分に保持することができる。MFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
なお、前記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」「WINTEC」(日本ポリプロ社製)、「バーシファイ」「ノティオ」「タフマーXR」(三井化学社製)、「ゼラス」「サーモラン」(三菱化学社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」(住友化学社製)、「プライム TPO」(プライムポリマー社製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(サンアロマー社製)、「インスパイア」(ダウケミカル)など市販されている商品を使用できる。
本発明の積層多孔フィルムは、前記β晶活性を有することが好ましい。
β晶活性は、延伸前の膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、透気特性を有する積層多孔フィルムを得ることができる。
本発明の積層多孔フィルムにおいて、「β晶活性」の有無は、後述する示差走査型熱量計によりβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出された場合か、及び/又は後述するX線回折装置を用いた測定により、β晶に由来する回折ピークが検出された場合、「β晶活性」を有すると判断する。
具体的には、示差走査型熱量計で積層多孔フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断している。
また、前記積層多孔フィルムのβ晶活性度は、検出されるポリプロピレン系樹のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算している。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
前記積層多孔フィルムのβ晶活性度は大きい方が好ましく、β晶活性度は20%以上であることが好ましい。40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。積層多孔フィルムが20%以上のβ晶活性度を有すれば、延伸前の膜状物中においてもポリオレフィン系樹脂のβ晶が多く生成することができることを示し、延伸により微細かつ均一な孔が多く形成され、結果として機械的強度が高く、透気性能に優れたリチウムイオンリチウム電池用セパレータとすることができる。
β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
また前記β晶活性の有無は、特定の熱処理を施した積層多孔フィルムの広角X線回折測定により得られる回折プロファイルでも判断できる。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170℃〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性が有ると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
前記β晶活性は、本発明の積層多孔フィルムが単層構造である場合であっても、他の多孔層が積層される場合のいずれにおいても積層多孔フィルム全層の状態で測定することができる。
また、仮に、ポリプロピレン系樹脂からなる層以外に、ポリプロピレン系樹脂を含有する層などを積層させる場合には、両層ともにβ晶活性を有することが好ましい。
前述したβ晶活性を得る方法としては、特許3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
(β晶核剤)
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
β晶核剤の市販品としては新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
前記ポリプロピレン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対しβ晶核剤は0.0001〜5.0質量部であることが好ましい。0.001〜3.0質量部がより好ましく、0.01〜1.0質量部が更に好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成・成長させることができ、セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、5.0質量部以下の添加であれば、経済的にも有利になるほか、積層多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
また、仮にポリプロピレン系樹脂からなる層以外に、ポリプロピレン系樹脂を含有する層などを積層させる場合には、各層のβ晶核剤の添加量は同じであっても、異なっていても良い。β晶核剤の添加量を変更することで各層の多孔構造を適宜調整することができる。
(他の成分)
本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および積層多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。具体的には、「プラスチックス配合剤」のP154〜P158に記載されている酸化防止剤、P178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜P294に記載されている滑剤などが挙げられる。
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の製造方法)
次に本発明のポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造される積層多孔フィルムのみに限定されるものではない。
無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)を積層にする場合、製造方法は、多孔化と積層の順序等によって以下の4つに大別される。
(I)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(II)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(III)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
(IV)多孔層を作製した後、無機・有機粒子などのコーティング塗布や、金属粒子の蒸着などを行うことにより積層多孔フィルムとする方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(II)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
以下に、製造方法の詳細を説明する。
まずポリオレフィン系樹脂と、必要であれば熱可塑性樹脂、添加剤の混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、および所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
前記のペレットを押出機に投入し、Tダイ押出用口金から押出して膜状物を成形する。
Tダイの種類としては特に限定されない。例えば本発明の積層多孔フィルムが2種3層の積層構造をとる場合、Tダイは2種3層用マルチマニホールドタイプでも構わないし、2種3層用フィードブロックタイプでも構わない。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では生産速度という観点から好ましくなく、また3.0mmより大きければ、ドラフト率が大きくなるので生産安定性の観点から好ましくない。
押出成形において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜300℃が更に好ましい。180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性が向上することから好ましい。一方、350℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる積層多孔フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、膜状物中のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで、膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができるために好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
前記温度範囲にキャストロールを設定することで、延伸前の膜状物のポリオレフィン系樹脂のβ晶比率は30〜100%に調整することが好ましい。40〜100%がより好ましく、50〜100%が更に好ましく、60〜100%が最も好ましい。延伸前の膜状物中のβ晶比率を30%以上とすることで、その後の延伸操作により多孔化が行われやすく、透気特性の良いポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得ることができる。
延伸前の膜状物中のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリオレフィン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
延伸工程においては、縦方向又は横方向に一軸延伸してもよいし、二軸延伸であってもよい。また、二軸延伸を行う場合は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。本発明のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを作製する場合には、各延伸工程で延伸条件を選択でき、かつ多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。
ついで、得られた無孔膜状物を少なくとも二軸延伸することがより好ましい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよいが、各延伸工程で延伸条件(倍率、温度)を簡便に選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。なお、膜状物及びフィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。また、長手方向への延伸を「縦延伸」、長手方向に対して垂直方向への延伸を「横延伸」と称する。
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶化状態によって、適時選択する必要があるが、下記条件の範囲内で選択することが好ましい。
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時変える必要があるが、縦延伸での延伸温度は概ね0〜130℃が好ましく、より好ましくは10〜120℃、更に好ましくは20〜110℃の範囲で制御される。また、2〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜8倍、更に好ましくは2〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がさらに好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
このようにして得られた積層多孔フィルムは、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上とすることで、寸法安定性の効果が期待できる。一方、熱処理温度は好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が170℃以下であれば、熱処理によってポリオレフィンの融解が起こりにくく、多孔構造を維持できるため好ましい。また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施しても良い。なお、熱処理後、均一に冷却して巻き取ることにより、積層多孔フィルムが得られる。
(被覆層(II層))
本発明は、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)、かつ、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)を含む被覆層(II層)が積層されていることが特徴である。
(粒子(a))
本発明の被覆層(II層)には、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)が含まれていることが重要である。前記粒子(a)の融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満であることによって、非水電解液二次電池用セパレータとして使用時に、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔を閉塞し、電池内部のイオン伝導を遮断することができる。
前記粒子(a)の例としては、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の範囲に入る熱可塑性樹脂から構成される粒子であれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、電気化学安定性の観点からポリオレフィン系樹脂から構成される粒子が好ましい。
前記粒子(a)の平均粒径としては、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは6μm以下である。前記平均粒径が規定した範囲内であることで、十分なSD特性を発現することができる。また、平均粒径を0.1μm以上とすることで、非水電解液二次電池用セパレータとして用いた際に、透気特性とSD特性の観点からより好ましい。
なお、本実施の形態において「平均粒径」とは、SEMを用いる方法に準じて測定された値である。
(樹脂バインダー(b))
本発明の被覆層(II層)には、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)が含まれていることが重要である。前記樹脂バインダー(b)を用いることで、前記粒子(a)が溶融してSD特性を発現する温度範囲において、当該樹脂バインダー(b)が溶融しないため、SD特性の開始温度からSD温度までの温度範囲をより狭くすることができ、優れたSD特性が得られるため好ましい。
前記樹脂バインダー(b)の例としては、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、また前記粒子(a)、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを良好に接着でき、電気化学的に安定であれば特に制限はない。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂バインダーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。中でも電気化学安定性の観点より、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸から少なくとも1種以上選ばれる熱可塑性樹脂が好ましい。
被覆層(II層)において、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は、96質量%以上が好ましく、98%質量以上がより好ましい。前記粒子(a)の割合が96質量%以上であれば、連通性が有する積層多孔フィルムを作製でき、優れた透気性能とSD特性を示すことができる。
(被覆層(II層)の製造方法)
本発明の積層多孔フィルムは、前記融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)と前記融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)とを溶媒に溶解または分散させた分散液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に塗布することによって、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の表面に被覆層(II層)を形成して製造することができる。また、前記融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)は、エマルジョンに分散した溶液を用いても構わない。
前記溶媒としては、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)とが均一かつ安定に溶解または分散可能な溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、ヘキサンなどを挙げることができる。また、前記分散液を安定化させるため、あるいはポリオレフィン系樹脂多孔フィルムへの塗工性を向上させるために、前記分散液には界面活性剤等の分散剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、酸やアルカリを含めたpH調製剤等の各種添加剤を加えてもよい。前記添加剤は、溶媒除去や可塑剤抽出の際に除去できるものが好ましいが、非水電解液二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で、電池反応を阻害せず、かつ200℃程度まで安定ならば、電池内(積層多孔フィルム内)に残存してもよい。
前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)とを溶媒に溶解または分散させる方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法、等が挙げられる。
前記塗布工程において、塗布方式としては、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、等が挙げられる。また、また、前記分散液は、その用途に照らし、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面だけに塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。
前記溶媒としては、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに塗布した分散液から除去され得る溶媒であることが好ましい。溶媒を除去する方法としては、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定することなく採用することが出来る。溶媒を除去する方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、前記樹脂バインダー(b)に対する貧溶媒に浸漬して、凝固させると同時に溶媒を抽出する方法などが挙げられる。
なお、本発明の積層多孔フィルムは、上述した製造方法とは異なる方法を用いて製造することも可能である。例えば、一方の押出機にポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の原料を投入し、他方の押出機に被覆層(II層)の原料を投入し、一つのダイで一体化させて積層膜状物を成形した後に、多孔化処理する方法を採用することも可能である。
(積層多孔フィルムの形状及び物性)
本発明の積層多孔フィルムの厚みは5〜100μmが好ましい。より好ましくは8〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、5μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能が十分に確保することができる。
被覆層(II層)の厚みとしては、SD特性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは4μm以上である。一方で上限としては、連通性の観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
本発明の積層多孔フィルムにおいて、空孔率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し、透気特性に優れた積層多孔フィルムとすることができる。
一方、上限については70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。空孔率が70%以下であれば、積層多孔フィルムの強度が低下しにくく、ハンドリングの観点からも好ましい。なお、空孔率は実施例に記載の方法で測定されている。
本発明の積層多孔フィルムについて、25℃での透気度は、2000秒/100ml以下であることが重要であり、10〜10000秒/100mlが好ましく、50〜800秒/100mlがより好ましい。25℃での透気度が2000秒/100ml以下であれば、積層多孔フィルムに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該フィルムを通過するのに必要な数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルムの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ、様々な用途に使用することができる。例えば電池用セパレータとして使用した場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
本発明の積層多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして使用時において、SD特性を有することが好ましい。具体的には100〜150℃の温度範囲で30秒間加熱後の透気度のいずれかが10000秒/100ml以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100ml以上、さらに好ましくは50000秒/100ml以上である。前記透気度が10000秒/100ml以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。ここで、SD温度は、前記積層多孔フィルムを100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃にて30秒間加熱した後の透気度が50000秒/100ml以上になる最初の温度とし、そのときの透気度をSD透気度とする。
本発明の積層多孔フィルムは、25℃での透気度(Pa0)とSD温度より20℃低い温度での透気度(Pa1)とから求める透気度上昇率ΔPa1が、100%未満であることが好ましく、30%未満がより好ましい。前記透気度上昇率ΔPa1は、以下の式から算出したものである。
ΔPa1(%)=[(Pa1−Pa0)/Pa0]×100
近年の電池の高容量化に伴い、電池内部の温度は急上昇するため、イオン伝導の遮断も急速に行う必要がある。そのため、SD特性が開始する温度と、微細孔を閉塞しイオン伝導が遮断されるSD温度との範囲は狭い範囲であることが好ましい。
前記透気度上昇率ΔPa1が100%未満であれば、25℃からSD温度より20℃低い温度までの温度範囲内ではSD特性が発現せずに、SD温度より20℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にSD特性が発現していることを示唆している。すなわち、SD温度より20℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にイオン伝導の遮断を行い、発火に至る加熱を沈静化させるために好ましい。一方で、前記ΔPa1が100%以上であれば、緩慢にイオン伝導が遮断されるため、ジュール発熱が生じて加熱が促進され、発火に至るおそれがあるために好ましくない。
また、本発明の積層多孔フィルムは、SD温度より20℃低い温度での透気度(Pa1)とSD温度より10℃低い温度での透気度(Pa2)とから求める透気度上昇率ΔPa2が、300%未満であることが好ましく、200%未満であることがより好ましく、100%未満であることが更に好ましい。前記透気度上昇率Pa2は、以下の式から算出したものである。
ΔPa2(%)=[(Pa1−Pa2)/Pa2]×100
前記ΔPa2が300%未満であれば、SD温度より10℃低い温度からSD温度より20℃低い温度までの温度範囲内ではSD特性がまだ十分に発現せずに、SD温度より10℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にSD特性が発現していることを示唆している。すなわち、SD温度より10℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にイオン伝導の遮断を行い、発火に至る加熱を沈静化させるために好ましい。一方で、前記ΔPa2が300%以上であれば、前記ΔPa1と同様に、緩慢にイオン伝導が遮断されるため、ジュール発熱が生じて加熱が促進され、発火に至るおそれがあるために好ましくない。
(電池)
続いて、本発明の前記積層多孔フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。
前記正極板21、電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池を作製している。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
本実施形態では、負極として、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に平均粒径10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板としたものを用いている。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。すなわち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に導電助剤としてリン状黒鉛を(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
以下に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、積層多孔フィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。
(1)厚み
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に30箇所測定し、その平均値を厚みとした。
(2)25℃での透気度(ガーレ値)
JIS P8117に準拠して透気度(秒/100ml)を25℃で測定した。
(3)高温での透気度
得られた積層多孔フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚み1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態のサンプルを設定温度である送風定温恒温器(タバイエスペック社製、タバイギヤオ−ブンGPH200)に入れ表示温度が設定温度になった時点から30秒間保持した後、サンプルを取り出し、JIS P8117に準拠して高温での透気度(秒/100ml)を測定した。
(4)SD温度、SD透気度
前記(3)の測定方法にそって、得られた積層多孔フィルムを100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃にて30秒間保持した後の透気度の測定を行い、透気度が50000(秒/100ml)以上になる最初の温度をSD温度とした。また、SD温度での透気度をSD透気度とした。
(5)透気度上昇率(ΔPa1
透気度上昇率ΔPa1は、25℃での透気度(Pa0)とSD温度より20℃低い温度での透気度(Pa1)から以下の式よりΔPa1を算出。以下の基準で評価した。
ΔPa1(%)=[(Pa1−Pa0)/Pa0]×100
◎:ΔPa1が、0%以上30%未満
△:ΔPa1が、30%以上100%未満
×:ΔPa1が、100%以上
(6)透気度上昇率(ΔPa2
透気度上昇率ΔPa2は、SD温度より20℃低い温度での透気度(Pa1)とSD温度より20℃低い温度での透気度(Pa2)から以下の式よりΔPa2を算出。以下の基準で評価した。
ΔPa2(%)=[(Pa1−Pa2)/Pa2]×100
◎:ΔPa2が、0%以上100%未満
○:ΔPa2が、100%以上200%未満
△:ΔPa2が、200%以上300%未満
×:ΔPa2が、300%以上
(7)SD特性
SD特性は、以下の基準で評価した。
◎:SD透気度が50000秒/100ml以上、かつ、
ΔPa1、ΔPa2の判定がいずれも△以上
×:SD透気度が50000秒/100ml以上、かつ、
ΔPa1、ΔPa2の判定のうちいずれが×
更に、得られた積層多孔フィルムについて次のようにしてβ晶活性の評価を行った。
(8)示差走査型熱量測定(DSC)
得られた積層多孔フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)をもちいて、25℃から240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃〜25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。この再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ晶活性の有無をいかの基準にて評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β晶活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、β晶活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
(9)広角X線回折測定(XRD)
得られた積層多孔フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚み1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態のサンプルを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点でサンプルを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたサンプルについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:マックサイエンス社製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β晶活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、積層多孔フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴に積層多孔フィルムが設置されるように調整し、サンプルを作成しても構わない。
[製造例1]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、密度:0.90g/cm、MFR:3.0g/10分)100質量部に対して、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを0.2質量部添加した後、同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混練してストランドダイより押出した後、ストランドを水中で冷却固化し、カッターによりストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを作製した。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶活性は80%であった。
前記ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、Tダイより押出し、124℃のキャスティングロールで冷却固化させて、無孔膜状物を作製した。
前記無孔膜状物を、縦延伸機を用いて縦方向に4.6倍延伸し、横延伸機にて100℃で横方向に2倍延伸後、熱固定/弛緩処理を行うことで厚みが19μm、25℃での透気度が256秒/100mlのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得た。
得られたポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、コロナ処理装置(春日電機社製、ライン速度:50m/min、処理出力:2kW)にてコロナ表面処理を施した。
[実施例1]
融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)45.9質量部、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.4質量部を水53.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は98質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[実施例2]
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)47.1質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.2質量部を水52.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は99質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[実施例3]
前記粒子(a)として、ケミパールW100(三井化学社製、固形分:40%、融点:128℃、平均粒径:3μm)45.9質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.4質量部を水53.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は98質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例1]
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)73.2質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ケミパールEP−150H(三井化学社製、固形分:45%、融点:115℃)7.2質量部を水19.6質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は90質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例2]
前記粒子(a)として、ケミパールW100(三井化学社製、固形分:40%、融点:128℃、平均粒径:3μm)73.2質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ケミパールEP−150H(三井化学社製、固形分:45%、融点:115℃)7.2質量部を水19.6質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は90質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例3]
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)73.2質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ケミパールEP−150H(三井化学社製、固形分:45%、融点:115℃)3.4質量部を水23.4質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は95質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥したが、被覆層(II層)の塗工性が不十分で、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)との密着性も不十分であった。
[比較例4]
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)42.4質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.9質量部を水56.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は95質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例5]
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)37.3質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)1.7質量部を水61.0質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は90質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
Figure 2012076255
いずれの実施例で得た積層多孔フィルムは、優れた透気特性を有しており、非水電解液二次電池用セパレータとして優れたSD特性を有することができた。
一方、比較例1,2のように、融点が150℃未満の樹脂バインダーを用いると、ΔPa1、ΔPa2の値が高くなり、非水電解液二次電池用セパレータとして良好なSD特性が得ることができなかった。
また、比較例3は、前記粒子(a)が前記樹脂バインダー(b)に対して過多であり、良好な塗工溶液が作製できず、そのため、被覆層(II層)の塗工性、密着性が不十分であった。
また、比較例4,5のように分散液に含まれている前記粒子(a)樹脂バインダー(b)の割合が多くなると、透気特性は不十分であった。
また、比較例5は、透気性は不十分なものの、150℃以上の融点をもつ樹脂バインダーを用いているため、SD特性は良好であった。
本発明の積層多孔フィルムは、透気特性が要求される種々の用途に応用することができる。リチウム電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に使用できる。
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
31 アルミ板
32 セパレータ
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向

Claims (6)

  1. ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)、かつ、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)を含む被覆層(II層)が積層されており、25℃での透気度が2000秒/100ml以下であることを特徴とする積層多孔フィルム。
  2. 前記樹脂バインダー(b)が、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸から少なくとも1種以上選ばれる熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔フィルム。
  3. 前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は、96質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層多孔フィルム。
  4. β晶活性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
  6. 請求項5に記載の非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池。
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