JP2012076255A - 積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、および非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)、かつ、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)を含む被覆層(II層)が積層されており、25℃での透気度が2000秒/100ml以下積層多孔フィルム。
【選択図】なし
Description
また、特許文献2には、用いているポリオレフィン製の接着樹脂の軟化温度がSD用樹脂粒子よりも低い為、SD開始温度と微細孔が閉塞されシャットダウンが完了する温度範囲が広くなり、SD特性に欠けるという問題があった。
また、特許文献3に記載の方法では、SD特性付与を目的していないのみならず、用いているポリエチレン粒子の融点が100℃以下と低い為、通常電池として使用する温度範囲においても透気性を失うという問題があった。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムで用いるポリオレフィン系樹脂として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキサンなどを重合した単独重合体または共重合体が挙げられる。この中でも、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠した。
β晶活性は、延伸前の膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、透気特性を有する積層多孔フィルムを得ることができる。
具体的には、示差走査型熱量計で積層多孔フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断している。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170℃〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性が有ると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
また、仮に、ポリプロピレン系樹脂からなる層以外に、ポリプロピレン系樹脂を含有する層などを積層させる場合には、両層ともにβ晶活性を有することが好ましい。
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
また、仮にポリプロピレン系樹脂からなる層以外に、ポリプロピレン系樹脂を含有する層などを積層させる場合には、各層のβ晶核剤の添加量は同じであっても、異なっていても良い。β晶核剤の添加量を変更することで各層の多孔構造を適宜調整することができる。
本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および積層多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。具体的には、「プラスチックス配合剤」のP154〜P158に記載されている酸化防止剤、P178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜P294に記載されている滑剤などが挙げられる。
次に本発明のポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造される積層多孔フィルムのみに限定されるものではない。
無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。
(I)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(II)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(III)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
(IV)多孔層を作製した後、無機・有機粒子などのコーティング塗布や、金属粒子の蒸着などを行うことにより積層多孔フィルムとする方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(II)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
まずポリオレフィン系樹脂と、必要であれば熱可塑性樹脂、添加剤の混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、および所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
Tダイの種類としては特に限定されない。例えば本発明の積層多孔フィルムが2種3層の積層構造をとる場合、Tダイは2種3層用マルチマニホールドタイプでも構わないし、2種3層用フィードブロックタイプでも構わない。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では生産速度という観点から好ましくなく、また3.0mmより大きければ、ドラフト率が大きくなるので生産安定性の観点から好ましくない。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、膜状物中のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで、膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができるために好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
延伸前の膜状物中のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリオレフィン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
ついで、得られた無孔膜状物を少なくとも二軸延伸することがより好ましい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよいが、各延伸工程で延伸条件(倍率、温度)を簡便に選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。なお、膜状物及びフィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。また、長手方向への延伸を「縦延伸」、長手方向に対して垂直方向への延伸を「横延伸」と称する。
一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜8倍、更に好ましくは2〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がさらに好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
本発明は、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)、かつ、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)を含む被覆層(II層)が積層されていることが特徴である。
本発明の被覆層(II層)には、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)が含まれていることが重要である。前記粒子(a)の融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満であることによって、非水電解液二次電池用セパレータとして使用時に、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔を閉塞し、電池内部のイオン伝導を遮断することができる。
なお、本実施の形態において「平均粒径」とは、SEMを用いる方法に準じて測定された値である。
本発明の被覆層(II層)には、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)が含まれていることが重要である。前記樹脂バインダー(b)を用いることで、前記粒子(a)が溶融してSD特性を発現する温度範囲において、当該樹脂バインダー(b)が溶融しないため、SD特性の開始温度からSD温度までの温度範囲をより狭くすることができ、優れたSD特性が得られるため好ましい。
本発明の積層多孔フィルムは、前記融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)と前記融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)とを溶媒に溶解または分散させた分散液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に塗布することによって、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の表面に被覆層(II層)を形成して製造することができる。また、前記融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)は、エマルジョンに分散した溶液を用いても構わない。
本発明の積層多孔フィルムの厚みは5〜100μmが好ましい。より好ましくは8〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、5μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能が十分に確保することができる。
一方、上限については70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。空孔率が70%以下であれば、積層多孔フィルムの強度が低下しにくく、ハンドリングの観点からも好ましい。なお、空孔率は実施例に記載の方法で測定されている。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該フィルムを通過するのに必要な数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルムの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ、様々な用途に使用することができる。例えば電池用セパレータとして使用した場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
ΔPa1(%)=[(Pa1−Pa0)/Pa0]×100
近年の電池の高容量化に伴い、電池内部の温度は急上昇するため、イオン伝導の遮断も急速に行う必要がある。そのため、SD特性が開始する温度と、微細孔を閉塞しイオン伝導が遮断されるSD温度との範囲は狭い範囲であることが好ましい。
前記透気度上昇率ΔPa1が100%未満であれば、25℃からSD温度より20℃低い温度までの温度範囲内ではSD特性が発現せずに、SD温度より20℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にSD特性が発現していることを示唆している。すなわち、SD温度より20℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にイオン伝導の遮断を行い、発火に至る加熱を沈静化させるために好ましい。一方で、前記ΔPa1が100%以上であれば、緩慢にイオン伝導が遮断されるため、ジュール発熱が生じて加熱が促進され、発火に至るおそれがあるために好ましくない。
ΔPa2(%)=[(Pa1−Pa2)/Pa2]×100
前記ΔPa2が300%未満であれば、SD温度より10℃低い温度からSD温度より20℃低い温度までの温度範囲内ではSD特性がまだ十分に発現せずに、SD温度より10℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にSD特性が発現していることを示唆している。すなわち、SD温度より10℃低い温度からSD温度までの温度範囲内で急速にイオン伝導の遮断を行い、発火に至る加熱を沈静化させるために好ましい。一方で、前記ΔPa2が300%以上であれば、前記ΔPa1と同様に、緩慢にイオン伝導が遮断されるため、ジュール発熱が生じて加熱が促進され、発火に至るおそれがあるために好ましくない。
続いて、本発明の前記積層多孔フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に30箇所測定し、その平均値を厚みとした。
JIS P8117に準拠して透気度(秒/100ml)を25℃で測定した。
得られた積層多孔フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚み1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態のサンプルを設定温度である送風定温恒温器(タバイエスペック社製、タバイギヤオ−ブンGPH200)に入れ表示温度が設定温度になった時点から30秒間保持した後、サンプルを取り出し、JIS P8117に準拠して高温での透気度(秒/100ml)を測定した。
前記(3)の測定方法にそって、得られた積層多孔フィルムを100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃にて30秒間保持した後の透気度の測定を行い、透気度が50000(秒/100ml)以上になる最初の温度をSD温度とした。また、SD温度での透気度をSD透気度とした。
透気度上昇率ΔPa1は、25℃での透気度(Pa0)とSD温度より20℃低い温度での透気度(Pa1)から以下の式よりΔPa1を算出。以下の基準で評価した。
ΔPa1(%)=[(Pa1−Pa0)/Pa0]×100
◎:ΔPa1が、0%以上30%未満
△:ΔPa1が、30%以上100%未満
×:ΔPa1が、100%以上
透気度上昇率ΔPa2は、SD温度より20℃低い温度での透気度(Pa1)とSD温度より20℃低い温度での透気度(Pa2)から以下の式よりΔPa2を算出。以下の基準で評価した。
ΔPa2(%)=[(Pa1−Pa2)/Pa2]×100
◎:ΔPa2が、0%以上100%未満
○:ΔPa2が、100%以上200%未満
△:ΔPa2が、200%以上300%未満
×:ΔPa2が、300%以上
SD特性は、以下の基準で評価した。
◎:SD透気度が50000秒/100ml以上、かつ、
ΔPa1、ΔPa2の判定がいずれも△以上
×:SD透気度が50000秒/100ml以上、かつ、
ΔPa1、ΔPa2の判定のうちいずれが×
(8)示差走査型熱量測定(DSC)
得られた積層多孔フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)をもちいて、25℃から240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃〜25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。この再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ晶活性の有無をいかの基準にて評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β晶活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、β晶活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
得られた積層多孔フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚み1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態のサンプルを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点でサンプルを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたサンプルについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:マックサイエンス社製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β晶活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、積層多孔フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴に積層多孔フィルムが設置されるように調整し、サンプルを作成しても構わない。
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、密度:0.90g/cm3、MFR:3.0g/10分)100質量部に対して、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを0.2質量部添加した後、同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混練してストランドダイより押出した後、ストランドを水中で冷却固化し、カッターによりストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを作製した。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶活性は80%であった。
前記無孔膜状物を、縦延伸機を用いて縦方向に4.6倍延伸し、横延伸機にて100℃で横方向に2倍延伸後、熱固定/弛緩処理を行うことで厚みが19μm、25℃での透気度が256秒/100mlのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得た。
融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)45.9質量部、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.4質量部を水53.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は98質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)47.1質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.2質量部を水52.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は99質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
前記粒子(a)として、ケミパールW100(三井化学社製、固形分:40%、融点:128℃、平均粒径:3μm)45.9質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.4質量部を水53.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は98質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)73.2質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ケミパールEP−150H(三井化学社製、固形分:45%、融点:115℃)7.2質量部を水19.6質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は90質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
前記粒子(a)として、ケミパールW100(三井化学社製、固形分:40%、融点:128℃、平均粒径:3μm)73.2質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ケミパールEP−150H(三井化学社製、固形分:45%、融点:115℃)7.2質量部を水19.6質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は90質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)73.2質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ケミパールEP−150H(三井化学社製、固形分:45%、融点:115℃)3.4質量部を水23.4質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は95質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥したが、被覆層(II層)の塗工性が不十分で、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)との密着性も不十分であった。
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)42.4質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.9質量部を水56.7質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は95質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
前記粒子(a)として、ケミパールW300(三井化学社製、固形分:40%、融点:132℃、平均粒径:3μm)37.3質量部、前記樹脂バインダー(b)として、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)1.7質量部を水61.0質量部に分散させた分散液を得た。この時、前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は90質量%であった。
得られた分散液を製造例1で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのコロナ処理面にグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが4μmになるように塗布した後、75℃で乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
一方、比較例1,2のように、融点が150℃未満の樹脂バインダーを用いると、ΔPa1、ΔPa2の値が高くなり、非水電解液二次電池用セパレータとして良好なSD特性が得ることができなかった。
また、比較例3は、前記粒子(a)が前記樹脂バインダー(b)に対して過多であり、良好な塗工溶液が作製できず、そのため、被覆層(II層)の塗工性、密着性が不十分であった。
また、比較例4,5のように分散液に含まれている前記粒子(a)樹脂バインダー(b)の割合が多くなると、透気特性は不十分であった。
また、比較例5は、透気性は不十分なものの、150℃以上の融点をもつ樹脂バインダーを用いているため、SD特性は良好であった。
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
31 アルミ板
32 セパレータ
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向
Claims (6)
- ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、融点もしくはガラス転移温度が100℃以上150℃未満の粒子(a)、かつ、融点もしくはガラス転移温度が150℃以上の樹脂バインダー(b)を含む被覆層(II層)が積層されており、25℃での透気度が2000秒/100ml以下であることを特徴とする積層多孔フィルム。
- 前記樹脂バインダー(b)が、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸から少なくとも1種以上選ばれる熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔フィルム。
- 前記粒子(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占める前記粒子(a)の割合は、96質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層多孔フィルム。
- β晶活性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
- 請求項5に記載の非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池。
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