JP2014208773A - 耐熱性スチレン系樹脂組成物、その製造方法、及びこれを用いる成形体 - Google Patents

耐熱性スチレン系樹脂組成物、その製造方法、及びこれを用いる成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】脱揮工程におけるゲル物の生成を抑制し、高分子量の樹脂であっても流動性に優れ、得られる成形体の透明性と耐熱性とが良好である耐熱性スチレン系樹脂組成物、その製造方法、及びこれを用いてなる成形体を提供すること。
【解決手段】複数の分岐を有し、且つ複数の重合性二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)と、スチレン系モノマー(a2)と、メタクリル酸(a3)とを共重合してなる多分岐状共重合体(A1)、及びスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)とを共重合してなる共重合体(A2)を含有することを特徴とする耐熱性スチレン系樹脂組成物、その製造方法、及びこれを用いてなる成形体。
【選択図】図3

Description

本発明は、分岐末端に二重結合を有する特定の多分岐マクロモノマーとスチレン系モノマー及びメタクリル酸との共重合体を含有する樹脂組成物に関し、詳しくは、従来のスチレン−メタクリル酸共重合体よりも耐熱性に優れ、更にゲル不溶分が少なく外観に優れたシート、フィルムや高強度・高溶融張力のため発泡体生産時や二次成形時に割れ、引裂け等の不良発生が少ない材料として好適に用いられる該樹脂組成物、その製造方法及びこれを用いた成形体に関するものである。
スチレン−メタクリル酸共重合樹脂は耐熱性に優れており、耐熱性を必要とする二軸延伸スチレン系シートや、耐熱発泡容器、住宅の断熱材用途の発泡ボード等の原料として広く用いられている。該樹脂は、工業的には塊状重合法や溶液重合法により生産されている。この方法は重合工程と脱揮工程から構成され、脱揮工程では高温、高真空下で未反応の単量体及び重合溶媒を脱揮するが、メタクリル酸の脱水反応でゲルが生成し、このゲルが製品の外観や生産性を低下させる。例えば、二軸延伸スチレン−メタクリル酸共重合樹脂シートは、コンビニエンスストア向けの耐熱食品容器の透明な蓋材等に多く用いられることから、ゲルがシートに混入した場合、美観を損ねることに繋がり、しばしば問題となる。更に、耐熱発泡容器ポリスチレンペーパーや耐熱ポリスチレンボード等の発泡体は、多量のゲルによる製品の表面荒れや二次成型時の割れを起こすことが問題となる。また、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂の耐熱性を上げるには、メタクリル酸添加量を増加させれば良いが、メタクリル酸の増加は樹脂の流動性低下に繋がるため、生産困難となる。そのため、添加量には自ずと制限がある。
スチレン−メタクリル酸共重合樹脂製造時のゲルの抑制には、脱揮工程の温度を低下させ、脱水反応を抑制することが効果的である。しかし、温度を低下させると、樹脂の流動性が低下するため脱揮工程において樹脂の排出が困難になることや、未反応モノマーや溶剤分の残留量が増加させ品質低下を招く。また、樹脂の流動性低下は、剪断発熱を招くため、結果的にゲル化を促進してしまうといった問題がある。樹脂の流動性を向上させるには、樹脂の分子量を低下させれば良いが、分子量の低下は成型品の強度低下に繋がる。加えて、分子量の低下は、溶融張力低下を招くため、発泡分野における生産性低下を招き好ましくない。
分子量を維持したまま、流動性を向上させる方法として、スチレン樹脂の場合、ジビニルベンゼン等の2個以上のビニル基を有する化合物を共重合させてポリスチレン鎖に分岐構造を導入して得た質量平均分子量20万〜200万のポリスチレン樹脂が記載されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、該共重合体の重合工程においてポリマー鎖同士の架橋点が多く存在することによりゲル化を起こしやすいため、工業的に生産しにくく、2個以上のビニル基を有する化合物の添加量は自ずと制限されたものとなる。
添加剤の使用により、樹脂の分子量を低下させずに流動性を高める方法として、生産工程においてミネラルオイルなどの可塑剤を使用する方法がある。しかし、大量の可塑剤の添加は耐熱性の低下や透明性の低下を招くといった問題がある。また、ゲルの発生抑制のために、特定構造を有する重合開始剤を用いる方法や、重合途中から長鎖アルコールを添加するといった方法等が提案されているが(例えば、特許文献2〜4参照)、当該方法はゲルの発生抑制を目的とするため、樹脂の流動性や耐熱性の向上には必ずしも寄与しないものであり、根本的な解決法ではない。
近年、コンビニエンスストアでのレンジアップ時間の短縮化により、高出力(高ワット数)の電子レンジが使用されること、また、液状の成分を多く含む弁当をレンジアップさせるような用途も増加しているため、食品容器の蓋材及び発泡シートを用いた底材には、より高い耐熱性が求められている。
特開平07−166013号公報 特開2009−126930号公報 特開2006−282962号公報 特開2010−270179号公報
これらの事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、脱揮工程におけるゲル物の生成を抑制し、高耐熱あるいは高分子量の樹脂であっても流動性に優れ、得られる成形体の耐熱性と外観が良好である耐熱性スチレン系樹脂組成物、その製造方法、及びこれを用いてなる成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、多分岐状マクロモノマーとスチレン系モノマーとメタクリル酸とを共重合させることにより得られる多分岐状スチレン−メタクリル酸樹脂と線状スチレン−メタクリル酸樹脂とを含む耐熱性スチレン系樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、複数の分岐を有し、且つ複数の重合性二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)と、スチレン系モノマー(a2)と、メタクリル酸(a3)とを共重合してなる多分岐状共重合体(A1)、及びスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)とを共重合してなる共重合体(A2)を含有することを特徴とする耐熱性スチレン系樹脂組成物とその製造方法、並びにこれを用いてなる成形体を提供するものである。
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物は、製造時におけるゲル物発生を抑えると同時に、スチレン−メタクリル酸樹脂の弱点である脆性を改善でき、当該樹脂組成物が有する高溶融張力によって特に発泡分野における生産性向上が図れると共に、従来のスチレン−メタクリル酸樹脂よりも多くのメタクリル酸を含むことが可能であるため耐熱性に優れることから、シートやフィルムに加工した後、これを二次成形し、発砲容器、蓋材等に好適に用いることができる。
GPC−MALLSにより分子量を測定したクロマトグラフである。 GPC−MALLSから求められる樹脂組成物の分子量を横軸、慣性半径を縦軸とした両対数グラフである。 耐熱性スチレン系樹脂組成物を連続塊状重合するための簡略装置図である。
以下に本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
〔耐熱性スチレン系樹脂組成物〕
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物は、複数の分岐を有し、且つ複数の重合性二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)とを共重合させることにより得られる多分岐状共重合体(A1)を必須とし、共重合時に同時に生成するスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)とを共重合してなる線状樹脂である共重合体(A2)を含有し、更に、スチレン系モノマー(a2)の単独重合体や、メタクリル酸(a3)の単独重合体を含有していても良い。
更に、予め製造したスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)とを共重合してなる線状樹脂である共重合体(A2)、スチレン系モノマー(a2)の単独重合体、メタクリル酸(a3)の単独重合体を、多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸モノマーを共重合させた樹脂に混合して用いても良い。
また、本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物において、スチレン系モノマー(a2)由来構造部分とメタクリル酸(a3)由来構造部分との存在割合が、(a2)/(a3)で表される質量比として75/25〜97/3の範囲であると、より耐熱性と成形性とのバランスに優れる点で好ましい。
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物は、GPC−MALLS法により求められる重量平均分子量が15万〜75万であることが好ましく、更に、生産性、加工性の観点から、20万〜60万の範囲であることがより好ましい。また、前記多分岐状共重合体(A1)のGPC−MALLSで求められる重量平均分子量が100万〜1000万の範囲であり、前記共重合体(A2)のGPC−MALLSで求められる重量平均分子量が10万〜45万の範囲であることが好ましい。
〔GPC−MALLS〕
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物をGPC−MALLSにより分子量を測定すると、例えば、図1に示すクロマトグラフが得られる。図1中、低分子量側のピークがP1であり、高分子量側のピークがP2である。ピークP1には、線状の樹脂と、低分岐度の樹脂が含まれていると推測される。そして、ピークP2には主として多分岐状の高分岐度の樹脂が含まれていると推測される。なお、ピークP2の領域は、ピークP2の最高点からベースライン(図1中、volume軸にほぼ平行に引かれた点線)に降ろした垂線と、ベースラインと、該最高点から左側の分子量カーブとで囲まれた領域(1)と、該領域(1)を、前記垂線を対称軸として右側に折り返したときに形成される分子量カーブ(図1中、垂線の右側に点線で示した仮想の分子量カーブ)と、垂線と、ベースラインとで囲まれた領域(2)とにより形成される領域である。そして、ピークP1の領域は、分子量カーブと、ベースラインとで囲まれた領域から前記領域(1)と領域(2)からなるピークP1の領域を差し引いた部分である。
〔ピークP1の領域中の樹脂とピークP2の領域中の樹脂の配合比〕
耐熱性スチレン系樹脂組成物中のピークP1の領域中の樹脂とピークP2の領域中の樹脂の質量比は、強度と加工性とのバランスに優れる点で(ピークP2の領域中の樹脂)/(ピークP1の領域中の樹脂)=30/70〜70/30が好ましく、より好ましくは、40/60〜60/40である。この比率は、多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)、メタクリル酸(a3)との使用割合の調整や、連鎖移動剤の種類及びその使用量によって、容易に制御可能である。
〔耐熱性スチレン系樹脂組成物の両対数グラフの傾き〕
また、耐熱性スチレン系樹脂組成物のGPC−MALLSから求められる分子量を横軸、慣性半径を縦軸とした両対数グラフにおける分子量25万〜1000万の領域での傾きは、強度と成形加工性とを優れたバランスで発現させる点で、0.25〜0.45であることが最も好ましい。傾きが0.45よりも大きくなると、線状樹脂により近い物性となり、逆に0.25よりも小さくなると、分岐度増加に伴う分子量増大により流動性が低下することがある。
〔多分岐状マクロモノマー(a1)〕
本発明で使用する複数の分岐を有し、且つ複数の重合性二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)としては、上記諸特性に優れた耐熱性スチレン系樹脂組成物を容易に得られる点、特に多分岐状共重合体(A1)の重量平均分子量を1000万以下に制御してゲル物発生を抑制し、流動性を確保する観点から、多分岐状マクロモノマー(a1)の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000〜15,000、より好ましくは3,000〜8,000の範囲のものを用いる。
多分岐状マクロモノマー(a1)における分岐構造としては、特に制限はないが、電子吸引基と、該電子吸引基に結合する結合手以外の3つの結合手すべてが炭素原子に結合している4級炭素原子によって枝分かれしているもの、及びエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有する構造単位の繰り返しによって分岐構造を形成するものが好ましい。
前記多分岐状マクロモノマー(a1)が前述の4級炭素によって分岐構造を形成するものである場合、前記電子吸引基含有量としては、多分岐状マクロモノマー(a1)1g当たり2.5×10−4mmol〜5.0×10−1mmolの範囲であることが好ましく、更に好ましくは5.0×10−4mmol〜5.0×10−2mmolの範囲である。
前記多分岐状マクロモノマー(a1)には1分子あたり2個以上の重合性二重結合を有していることを必須とする。前記重合性二重結合の含有量としては、該マクロモノマー(a1)1g当たり0.1〜5.5mmolの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mmolの範囲である。0.1mmolより少ない場合は、高分子量の多分岐状共重合体(A1)が得られにくくなり、5.5mmolを超える場合は、多分岐状共重合体(A1)の分子量が過度に増大する傾向がある。また、前記重合性二重結合は多分岐状マクロモノマー(a1)の先端部に存在することが好ましい。
本発明において使用できる多分岐状マクロモノマー(a1)としては、エステル結合、エーテル結合又はアミド結合を有する構造単位を繰り返すことによって形成する分岐構造と、分岐末端に1分子中2個以上の重合性二重結合とを有する多分岐状マクロモノマー(a1−i)を挙げることができる。
エステル結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状マクロモノマー(a1−i−1)は、分子鎖を形成するエステル結合のカルボニル基に隣接する炭素原子が4級の炭素原子である多分岐状ポリエステルポリオールに、ビニル基またはイソプロペニル基などの重合性二重結合を導入したものを好ましい態様として挙げることができる。多分岐状ポリエステルポリオールに重合性二重結合を導入するには、エステル化反応や付加反応によって行なうことができる。
前記多分岐状ポリエステルポリオールは、そのヒドロキシ基の一部にあらかじめエーテル結合やその他の結合によって置換基が導入されていてもよいし、また、そのヒドロキシ基の一部が酸化反応やその他の反応で変性されていてもよい。また、多分岐状ポリエステルポリオールは、そのヒドロキシ基の一部が、あらかじめエステル化されていてもよい。
前記多分岐状マクロモノマー(a1−i−1)としては、例えばヒドロキシ基を1個以上有する化合物に、カルボキシ基に隣接する炭素原子が4級の炭素原子であり、且つヒドロキシ基を2個以上有するモノカルボン酸を反応させて多分岐状のポリマーとし、次いで該ポリマーの末端基であるヒドロキシ基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和酸、イソシアネート基含有アクリル系化合物などを反応させて得られるものが挙げられる。尚、エステル結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状ポリマーについては、タマリア(Tamalia)氏等による「Angew.Chem.Int.Ed.Engl.29」p138〜177(1990)に記載されている。
前記ヒドロキシ基を1個以上有する化合物としては、a)脂肪族ジオール、脂環式ジオール、又は芳香族ジオール、b)トリオール、c)テトラオール、d)ソルビトール及びマンニトール等の糖アルコール、e)アンヒドロエンネア−ヘプチトール又はジペンタエリトリトール、f)α−メチルグリコシド等のα−アルキルグルコシド、g)エタノール、ヘキサノールなどの一官能性アルコール、h)重量平均分子量が多くとも8,000であるアルキレンオキシド或いはその誘導体と、上記a)〜g)のいずれかから選択された1種以上の化合物中のヒドロキシ基とを反応させることにより生成されたヒドロキシ基含有ポリマーなどを挙げることができる。
前記a)肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリテトラヒドロフラン、ジメチロールプロパン、ネオペンチルプロパン、2−プロピル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール;1,4−キシリレンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオールなどが挙げられる。前記b)トリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、グリセロール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。前記c)テトラオールとしては、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロール、ジトリメチロールエタンなどを挙げることができる。
前記カルボキシル基に隣接する炭素原子が4級の炭素原子であり、且つヒドロキシ基を2個以上有するモノカルボン酸としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸などがあげられる。前記モノカルボン酸を使用することにより、エステル分解反応が抑制され、多分岐状ポリエステルポリオールを形成することができる。
また、前記多分岐状ポリエステルポリオールを製造する際に、触媒を使用するのが好ましく、前記触媒としては、例えば、ジアルキルスズオキシド、ハロゲン化ジアルキルスズ、ジアルキルスズビスカルボキシレート、あるいはスタノキサンなどの有機錫化合物、テトラブチルチタネートなどのチタネート、ルイス酸、パラトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸などが挙げられる。
エーテル結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状マクロモノマー(a1−i−2)としては、例えば、ヒドロキシ基を1個以上有する化合物に、ヒドロキシ基を1個以上有する環状エーテル化合物を反応させることにより多分岐状のポリマーとし、次いで該ポリマーの末端基であるヒドロキシ基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和酸、イソシアネート基含有アクリル系化合物、4−クロロメチルスチレンなどのハロゲン化メチルスチレンを反応させて得られるものが挙げられる。また、該多分岐状ポリマーの製法としては、Williamsonのエーテル合成法に基づいて、ヒドロキシ基を1個以上有する化合物と、2個以上のヒドロキシ基とハロゲン原子、−OSOOCH又は−OSOCHを含有する化合物とを反応する方法も有用である。
ヒドロキシ基を1個以上有する化合物としては、前記で挙げたものを何れも使用することができ、ヒドロキシ基を1個以上有する環状エーテル化合物としては、例えば、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、2,3−エポキシ−1−プロパノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−1−ブタノールなどが挙げられる。Williamsonのエーテル合成法に於いて使用されるヒドロキシ基を1個以上有する化合物としても、前記したものでよいが、芳香環に結合したヒドロキシ基を2個以上有する芳香族化合物が好ましい。前記化合物としては、例えば、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,4−キシリレンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオールなどが挙げられる。また、2個以上のヒドロキシ基とハロゲン原子、−OSOOCH又は−OSOCHを含有する化合物としては、例えば、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−エチル−2−(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。なお、上記多分岐状のポリマーを製造する際には、通常触媒を使用することが好ましく、前記触媒としては、例えば、BFジエチルエーテル、FSOH、ClSOH、HClOなどを挙げることができる。
また、アミド結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状マクロモノマー(a1−i−3)としては、例えば、分子中に窒素原子を介してアミド結合を繰り返し構造に有するものがあり、Dentoritech社製のゼネレーション2.0(PAMAMデントリマー)が代表的なものである。
本発明で用いることのできるスチレン系モノマー(a2)としては、例えば以下の物が挙げられる。スチレン及びその誘導体;例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンの如きアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン、更にニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等がある。
〔多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)の重合方法〕
前記多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)を、必要に応じて併用されるその他のモノマーとを共重合させることにより、多分岐状の樹脂と、重合条件により同時に生成する線状の樹脂及び低分岐樹脂との混合物である樹脂混合物が得られる。この時、前述の多分岐状マクロモノマー(a1)をスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)との総量に対して好ましくは50ppm〜1%、より好ましくは100ppm〜3000ppm(質量基準)の比率で用いることにより、多分岐状の樹脂の生成が容易であり、ゲル化の抑止をすることが簡便であると共に、本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物を効率よく得ることができる。
また、スチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)との使用割合が、(a2)/(a3)で表される質量比として98/2〜80/20の範囲であると、得られる組成物の耐熱性により優れると共に、二次成形時の成形性も良好となる点から、好ましい。
重合反応には種々の汎用されているスチレン系モノマーの重合方法を応用することができる。重合方式には特に限定はないが、塊状重合、懸濁重合、あるいは溶液重合が好ましい。中でも生産効率の点で特に連続塊状重合が好ましく、例えば一個以上の攪拌式反応器と可動部分の無い複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器を組み込んだ連続塊状重合を行うことにより、優れた樹脂を得ることができる。重合開始剤を使用せずに熱重合させることもできるが、種々のラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合に必要な懸濁剤や乳化剤などのような重合助剤は、通常のポリスチレンの製造に使用されるものを使用できる。
重合反応での反応物の粘性を低下させるために、反応系に有機溶剤を添加してもよく、その有機溶剤としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベンゼン、ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン等が挙げられる。特に多分岐状マクロモノマーの添加量を多くしたい場合には、ゲル化を抑制する観点からも有機溶剤を使用することが好ましい。これにより、先に示した多分岐状マクロモノマー(a1)の添加量を飛躍的に増量させ分岐構造を多く導入することができ、且つ、ゲル化が生じにくくなる。
前記ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ジシナモイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシイシプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、N,N’−アゾビスイソブチルニトリル、N,N’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
更に、得られる樹脂組成物の分子量が過度に大きくなりすぎないように連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、連鎖移動基を1つ有する単官能連鎖移動剤でも連鎖移動基を複数有する多官能連鎖移動剤でも使用できる。単官能連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール中のヒドロキシ基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの等が挙げられる。
また、得られる樹脂組成物のゲル発生抑制のために、長鎖アルコールやポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル等も使用することが可能である。
<重合工程>
重合工程では、多分岐状マクロモノマー(a1)、スチレン系モノマー(a2)、メタクリル酸をモノマー成分として用い、これらを共重合させることによって、これら3成分の共重合体である多分岐状共重合体(A1)を含む耐熱性スチレン系樹脂組成物を得ることができる。本発明における当該樹脂組成物を得るための重合装置の反応容器についての一例を図3に示す。すなわち、反応液はポンプ(1)によって攪拌式反応器(I)に送られ、次いでポンプ(2)によって循環重合ライン(II)に送られ、循環重合ライン(II)内をポンプ(3)によって循環し、循環後は非循環重合ライン(III)に送られる。ここで、循環重合ライン(II)は(4)〜(6)から成る3つの反応器から構成され、非循環重合ライン(III)は(7)〜(9)から成る3つの反応器から構成される。また、必要に応じて、攪拌式反応器(I)と循環重合ライン(II)の間や、循環式重合ライン(II)と非循環式重合ライン(III)との間からモノマーや溶剤を追加添加することも可能である。
<脱揮工程>
重合工程の後に、未反応モノマーや溶剤分を揮発するための脱揮槽1及び脱揮槽2が連結される。脱揮槽1、脱揮槽2はそれぞれ4.0kPa、1.3kPaの減圧下状態に調整しておくことが好ましく、耐熱性スチレン系樹脂組成物は、脱揮槽1、脱揮槽2を通過後ペレット化される。
<二軸延伸シート>
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物は、押出機での溶融押出後、延伸機で縦横ニ軸に延伸することにより二軸延伸シートへと加工することができる。例えば、押出機に耐熱スチレン系樹脂組成物を供給し、T−ダイよりシート状に溶融押出した後、延伸前のシートが所定厚みになるようにキャスティングし、二軸延伸可能な温度、例えば110〜145℃にシートを冷却し、種々の延伸方法により、縦方向(流れ方向)及び横方向(流れ方向に対するクロス方向)に延伸し、通常冷却する事により得られる。シートの二軸延伸可能な温度への冷却方法としては、タッチロール、エアーナイフ等による冷却手段が挙げられる。
延伸方法としては、上記耐熱性スチレン系樹脂組成物を溶融押出してシート状にした後、同時ニ軸延伸あるいは逐次ニ軸延伸を行う。逐次ニ軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。特にニ軸延伸スチレン系シートの採取方法としてはロールを用いた縦延伸後、テンターを用いた横延伸を行なわれる。テンター法は広幅な製品がとれ、生産性が高いことがメリットである。
ロールを用いた縦延伸方法としては、低速ロールと高速ロールを同方向に回転させて樹脂をフラットに通紙し、延伸する方法と、低速ロールと高速ロールを逆回転させて樹脂をクロスに通紙し、延伸する方法とがあり、1段あるいは多段、フラットあるいはクロスの任意の組み合わせとすることができる。
具体的な延伸条件として、延伸倍率は目的に応じ異なるが、通常面倍率で1.5〜15倍、より好ましくは4〜10倍である。逐次延伸の場合の流れ方向の延伸倍率は1.2〜5倍で、好ましくは1.5〜3.0倍であり、流れ方向に対しそのクロス方向の延伸倍率は1.2〜5倍で、好ましくは1.5〜3.0倍である。同時ニ軸延伸の各方向の延伸倍率は1.5〜5倍である。また、この際の温度条件は、ASTMD−1504に準拠し測定される配向緩和応力が0.2〜2.0MPa、より好ましくは0.4〜1.0MPaとなるように行うのが良い。配向緩和応力が0.2MPa未満では、シートの耐衝撃性が不十分なものとなりやすく、2.0MPaを超える場合、シートが延伸切れを起こし易く、また二次成形性の悪いものとなる可能性があるためである。一方、0.4〜1.0MPaの範囲であると、得られたシートの折り割れ性が良好であるばかりでなく、シートの成形性自体も極めて良好となるのでより好ましい。
また、この際の、例えば、延伸前の原反シートを延伸温度110〜145℃で縦方向に上記の倍率で延伸し、次いで、延伸温度110〜145℃で上記縦方向に対してクロスする横方向に上記倍率で延伸が行われる。
耐熱性スチレン系樹脂組成物からなるニ軸延伸シートの厚さは、特に限定されないが、通常0.08〜1mmであり、なかでも0.1〜0.7mmであることが好ましい。なお、前記ニ軸延伸シートは、必要により、共押出やドライラミネートなどによって、同種または異種の熱可塑性樹脂を積層しても良い。
得られたニ軸延伸シートは、従来の二軸延伸ポリスチレンシートと同様な条件で、所定の形状の金型で圧空成形すれば所望の容器、蓋材等を容易に得ることができる。
<発泡シート>
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物は、発泡剤を含浸させて発泡シート用耐熱性スチレン系樹脂組成物とし、押出機に供給し、加熱溶融させて混練した後、サーキュラーダイ、Tダイなどから押し出すとともに発泡させることによる通常の発泡成形法により発泡シート化が可能である。この発泡剤は、本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物はとは別に押出機中に供給する方法でも構わない。発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、へキサンなどの低級炭化水素や塩化メチル、ジクロロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタンなどのハロゲン炭化水素、水、二酸化炭素、窒素などを用いることが望ましい。
ここで成形する押出発泡シートは、厚みが0.5mm〜6mm、好ましくは1.0mm〜4.0mmであり、かさ密度が0.025g〜0.35g/cm、好ましくは0.04g〜0.25g/cmである。0.5mm未満であると、二次発泡時にシート破損する可能性が高く、また、このシートを用いた容器などの二次加工製品の実用性機械的強度が充分に得られないこともある。6mmより厚みがある場合には、二次加工において支障をきたすことがある。さらに、かさ密度においては、0.025g/cm未満では二次発泡時でのシート破損する可能性があり、二次加工製品の強度が低下する場合がある。また、0.35g/cmより大きい場合では押出発泡シートの特性が発現しない可能性がある。
押出発泡シートにおいて、発泡セル径の均一性が高いものが二次加工製品の成形用素材として好適であることから、耐熱性スチレン系樹脂組成物にタルクや炭酸カルシウムなどの造核剤を配合したものを用いることが好ましい。また、得られる発泡シートの表面に、シリコーンや帯電防止剤などを塗布することにより表面特性を向上させることも可能である。さらに、発泡シートの強度を補強するために、従来行われる発泡シートの表裏層にインフレーションフィルム加工することも可能である。
<発泡容器の成形>
前述の耐熱性スチレン系樹脂組成物からなる押出発泡シートを、真空成形、圧空成形などの熱成形により二次成形することで発泡容器を得ることができる。当該耐熱性スチレン系樹脂組成物は流動性に優れるため、その発泡シートは、従来の耐熱性スチレン系樹脂組成物からなる押出発泡シートの成形温度範囲(発泡体表面温度)よりも、例えば、10〜30℃程度低い温度でも成形することが可能であり、また、加熱時間の短縮も可能である。
更に、ニーズの多様化によって生じてきている高意匠性の発泡容器や、丼等に使用される深さのある容器へも好適に用いることができ、特に深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が0.1〜1.2の範囲の発泡容器を、生産性効率を高く維持したままで成形することができる。
以下に実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。本発明はもとより、これらの実施例の範囲に限定されるべきものではない。以下、「部」「%」は特に断りのない限り、質量基準である。
〔GPC−MALLS測定〕
耐熱性スチレン系樹脂組成物のGPC−MALLS測定を、Shodex HPLC、検出器Wyatt Technology DAWN EOS、Shodex RI−101、カラムShodex KF−806L×2、溶媒THF、流量1.0ml/minの条件にて行った。また、GPC−MALLSの測定の解析は、Wyatt社の解析ソフトASTRAにより行い、耐熱性スチレン系樹脂組成物について重量平均分子量を求めた他、GPC−MALLSから求められる該樹脂組成物の分子量を横軸、慣性半径を縦軸とした両対数グラフにおける分子量25万〜1000万の領域での傾き(当該分子量範囲で得られた直線状の部分のみの測定値を元に、前記ソフトにて自動計算される近似直線の傾き)を求めた。
〔メルトマスフローレイト測定法〕
JIS K7210に準拠して測定した。測定条件は、230℃、37Nである。
〔ビカット軟化温度の測定法〕
JIS K7206に準拠して測定した。
〔溶融張力の測定方法〕
東洋精機製 キャピログラフ1Dを使用した。測定温度230℃、押込み速度は、毎時10mm、ストランドの巻取り速度は毎時20mとした。オリフィスは、L/D=30のものを使用した。
〔発泡シートの成形性評価〕
耐熱性スチレン系樹脂組成物を用いた押出発泡シート作成後、容器形状へと二次成型を行った。容器は、深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が、0.2となるよう成型した。成形条件は、発泡シートの予備加熱時間を5秒、加熱ヒーターの温度を、上部/下部=280〜300℃/320〜340℃とした。
◎:容器の型が完全に再現している、○:一部型が不再現、△:容器底面の縁に小さな穴が発生、×:容器底に大きな穴が発生
〔発泡容器の耐熱性評価〕
耐熱性スチレン系樹脂組成物を用いた押出発泡シートの二次成型品を、120℃に保ったオーブン内に10分間入れた後、容器外観を目視により下記4段階にて評価した。
◎:変化無し、○:一部表面焼けが見られるものの、実質的に問題なし、△:表面焼けが全面で発生、×:穴が発生
〔発泡容器の強度評価〕
耐熱性スチレン系樹脂組成物を用いた押出発泡シートの二次成型品の天地圧縮強度を測定した。
◎:問題なし、○:実用面での問題がないレベル、△:難あり、×:不可
(参考例1)多分岐状マクロモノマー(Mm−1)の合成
<多分岐ポリエーテルポリオール1の合成>
攪拌機、温度計、滴下ロート及びコンデンサーを備えた2リットルフラスコに、室温下、エトキシ化ペンタエリスリトール(5モル−エチレンオキシド付加ペンタエリスリトール)50.5g、BFジエチルエーテル溶液(50%)1gを加え、110℃に加熱した。これに3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン450gを、反応による発熱を制御しつつ、25分間でゆっくり加えた。発熱が収まったところで、反応混合物をさらに120℃で3時間撹拌し、その後、室温に冷却した。得られた多分岐ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は3,000、水酸基価は530であった。
<メタクリロイル基及びアセチル基を有する多分岐ポリエーテル1の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター及び気体導入管を備えた反応器に、上述の<多分岐ポリエーテルポリオール1の合成>で得られた多分岐ポリエーテルポリオール50g、メタアクリル酸13.8g、トルエン150g、ヒドロキノン0.06g、パラトルエンスルホン酸1gを加え、混合溶液中に3ミリリットル/分の速度で7%酸素含有窒素(v/v)を吹き込みながら、常圧下で撹拌し、加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり30gになるように加熱量を調節し、脱水量が2.9gに到達するまで加熱を続けた。反応終了後、一度冷却し、無水酢酸36g、スルファミン酸5.7gを加え、60℃で10時間撹拌した。その後、残っている酢酸及びヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液50gで4回洗浄し、さらに1%硫酸水溶液50gで1回、水50gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.02gを加え、減圧下、7%酸素含有窒素(v/v)を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基およびアセチル基を有する多分岐ポリエーテル60gを得た。得られた多分岐ポリエーテルの重量平均分子量は3,900であり、多分岐ポリエーテルポリオールへのイソプロペニル基およびアセチル基導入率は、それぞれ30モル%および62モル%であった。
(参考例2)多分岐状マクロモノマー(Mm−2)の合成
<スチリル基及びアセチル基を有する多分岐ポリエーテル1の合成>
攪拌機、乾燥管を備えたコンデンサー、滴下ロート及び温度計を備えた反応器に、上述の<多分岐ポリエーテルポリオール1の合成>で得られた多分岐ポリエーテルポリオール50g、テトラヒドロフラン100g及び水素化ナトリウム4.3gを加え、室温下、撹拌した。これに4−クロロメチルスチレン26.7gを1時間かけて滴下し、得られた反応混合物を50℃でさらに4時間撹拌した。反応終了後、一度冷却し、無水酢酸34g、スルファミン酸5.4gを加え、60℃で10時間撹拌した。その後、減圧下でテトラヒドロフランを留去し、得られた混合物をトルエン150gで溶解させ、残っている酢酸を除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液50gで4回洗浄し、さらに1%硫酸水溶液50gで1回、水50gで2回洗浄した。得られた有機層から減圧下で溶媒を留去し、スチリル基およびアセチル基を有する多分岐ポリエーテル70gを得た。得られた多分岐ポリエーテルの質量平均分子量は4,800であり、多分岐ポリエーテルポリオールへのスチリル基およびアセチル基導入率は、それぞれ38モル%および57モル%であった。
(参考例3)多分岐状マクロモノマー(Mm−3)の合成
<メタクリロイル基及びアセチル基を有する多分岐状マクロモノマーの合成>
4口フラスコにスターラー、圧力計、冷却器及び受け皿を取り付け、これに308.9gのエトキシル化ペンタエリスリトールと0.46gの硫酸を加えた。その後、140℃まで加温し、460.5gの2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を10分間で加えた。2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピオン酸が完全に溶解して、透明溶液になってから、30〜40mmHgに減圧し、攪拌しながら、酸価が7.0mgKOH/gになるまで4時間反応させた。その後、この反応液に921gの2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と0.92gの硫酸を15分かけて加え、透明溶液になってから、30〜40mmHgに減圧し、攪拌しながら3時間反応させて、ポリエステルポリオールを得た。7%酸素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、上記で生成したポリエステルポリオールを10g、ジブチル錫オキシド1.25g、イソプロペニル基を有するメチルメタクリレート100g、およびヒドロキノン0.05gを加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら、撹拌下に加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり15〜20gになるように加熱量を調節し、1時間ごとにデカンター内の留出液を取り出し、これに相当する量のメチルメタクリレートを加えながら4時間反応させた。反応終了後、メチルメタクリレートを減圧下で留去し、残っているヒドロキシ基をキャッピングするために無水酢酸10g、スルファミン酸2gを加えて室温下、10時間撹拌した。濾過でスルファミン酸を除去し、減圧下で無水酢酸および酢酸を留去した後に、残留物を酢酸エチル70gに溶解し、ヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液20gで4回洗浄した。さらに7%硫酸水溶液20gで2回、水20gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.0045gを加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基およびアセチル基を有する多分岐状マクロモノマー(Mm−3)11gを得た。得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−3)の重量平均分子量は3,000、数平均分子量は2,100、二重結合導入量は2.00mmol/gであり、イソプロペニル基およびアセチル基導入率は、それぞれ55モル%および36モル%であった。
(参考例4)多分岐状マクロモノマー(Mm−4)の合成
<スチリル基を有するPAMAMデンドリマーの合成>
攪拌機、乾燥管を備えたコンデンサー、滴下ロート及び温度計を備えた反応器にPAMAMデンドリマー(ゼネレーション2.0:Dentritech社製)のメタノール溶液(20%)50gを加え、減圧下、撹拌しながらメタノールを留去した。続いて、テトラヒドロフラン50g及び微粉化した水酸化カリウム3.0gを加え、室温下、撹拌した。これに4−クロロメチルスチレン7.0gを10分間かけて滴下し、得られた反応混合物を50℃でさらに3時間撹拌した。反応終了後、冷却し、固体を濾過した後に、テトラヒドロフランを減圧下、留去し、スチリル基を有するPAMAMデンドリマー13gを得た。得られたデンドリマーのスチリル基含有率は2.7ミリモル/グラムであった。
(参考例5)多分岐状マクロモノマー(Mm−5)の合成
<スチリル基及びアセチル基を有する多分岐ポリエーテルポリオール2>
攪拌機、コンデンサー、遮光性滴下ロート及び温度計を備え、窒素シールが可能な遮光性反応容器に、窒素気流下、無水1,3,5−トリヒドロキシベンゼン0.5g、炭酸カリウム29g、18−クラウン−6 2.7g及びアセトン180gを加え、撹拌しながら、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン21.7gとアセトン180gからなる溶液を2時間かけて滴下、加えた。その後、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼンが消失するまで、撹拌下、加熱、還流させた。その後、4−クロロメチルスチレン9.0gを加え、これが消失するまで、さらに撹拌下、加熱、還流させた。その後、反応混合物に無水酢酸4g、スルファミン酸0.6gを加え、室温下、一晩撹拌した。冷却後、反応混合物中の固体を濾過で除き、溶媒を減圧下で留去した。得られた混合物をジクロロメタンに溶解し、水で3回洗浄した後、ジクロロメタン溶液をヘキサンに滴下し、多分岐ポリエーテルを沈殿させた。これを濾過し、乾燥させて、スチリル基及びアセチル基を有する多分岐ポリエーテルポリオール12gを得た。質量平均分子量は3,200で、スチリル基の含有率は3.5ミリモル/グラムであった。
実施例1
スチレンモノマー92部、メタクリル酸モノマーを8部、参考例1で得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−1)をスチレンモノマーとメタクリル酸モノマーの合計量に対し500ppm、トルエン11部からなる混合溶液を調製し、更に、有機過酸化物としてt−ブチルパーオキシベンゾエートをスチレンモノマーとメタクリル酸モノマーの合計量に対し300ppm、連鎖移動剤として、α−メチルスチレンダイマーを300ppm加え、図1に示す装置を用いて下記条件で連続的に塊状重合させた。攪拌式反応器(I)は110〜130℃、循環重合ライン(II)、非循環重合ライン(III)は、それぞれ120〜160℃とした。反応液からは、最終反応器である非循環重合ライン(III)後に設置され脱揮槽1及び脱揮槽2において、未反応モノマー及び溶剤分が回収される。脱揮槽1及び脱揮槽2は、240〜280℃とした。その後単管を通過しストランド化及びペレタイザーにてペレット化を行い、各組成物を得た。
得られた耐熱性スチレン系樹脂組成物をタンデム型発泡押出装置に供給し発泡シートを作製後、発泡シートを真空成型し、二次成型性と耐熱性と強度の評価を行った。
実施例2
マクロモノマーを1000ppmとしたこと、連鎖移動剤を600ppmとした以外は実施例1と全て同一とした。
実施例3
マクロモノマーを2000ppmとしたこと、連鎖移動剤を1200ppmとしたこと以外は実施例1と全て同一とした。
実施例4
スチレンモノマーを88部、メタクリル酸モノマーを12部とした以外は、実施例2と全て同一とした。
実施例5
スチレンモノマーを82部、メタクリル酸モノマーを18部とした以外は、実施例2と全て同一とした。
実施例6
マクロモノマーを参考例2で得られたMm−2に変更した以外は、実施例2と全て同一とした。
実施例7
マクロモノマーを参考例3で得られたMm−3に変更した以外は、実施例2と全て同一とした。
実施例8
マクロモノマーを参考例4で得られたMm−4に変更した以外は、実施例2と全て同一とした。
実施例9
マクロモノマーを参考例5で得られたMm−5に変更した以外は、実施例2と全て同一とした。
比較例1
マクロモノマーを0ppmとした以外は、実施例2と全て同一とした。樹脂の流動性が低く、脱揮工程において生じたゲルが原因で、発泡シート表面に荒れが生じた。また、ゲル分が多いことと、溶融張力が低いことが原因で、二次成型時に容器底面部に裂けが発生し、大きな穴が生じた。また、分子量が低く、容器強度が低かった。
比較例2
スチレンモノマーを100部、メタクリル酸モノマーを0部としたこと、マクロモノマーを0ppmとした以外は、実施例2と全て同一とした。メタクリル酸を添加しない場合耐熱性が低く、実用上問題があった。
比較例3
スチレンモノマーを88部、メタクリル酸モノマーを12部、マクロモノマーを0ppmとした以外は、実施例2と全て同一とした。樹脂の流動性が低いため、脱揮工程において樹脂の払出しを行うことができず、ペットサンプルを得ることができなかった。
比較例4
スチレンモノマーを82部、メタクリル酸モノマーを18部、マクロモノマーを0ppmとした以外は、実施例2と全て同一とした。樹脂の流動性が低いため、脱揮工程において樹脂の払出しを行うことができず、ペットサンプルを得ることができなかった。

Claims (9)

  1. 複数の分岐を有し、且つ複数の重合性二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)と、スチレン系モノマー(a2)と、メタクリル酸(a3)とを共重合してなる多分岐状共重合体(A1)、及びスチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)とを共重合してなる共重合体(A2)を含有することを特徴とする耐熱性スチレン系樹脂組成物。
  2. 耐熱性スチレン系樹脂組成物中のおける、スチレン系モノマー(a2)由来構造部分とメタクリル酸(a3)由来構造部分との存在割合が、(a2)/(a3)で表される質量比として75/25〜97/3である請求項1記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
  3. 前記多分岐状共重合体(A1)のGPC−MALLSで求められる重量平均分子量が100万〜1000万の範囲であり、前記共重合体(A2)のGPC−MALLSで求められる重量平均分子量が10万〜45万の範囲の範囲であり、且つ耐熱性スチレン系樹脂組成物のGPC−MALLSで求められる重量平均分子量が15万〜75万の範囲である請求項1又は2記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
  4. 複数の分岐を有し、且つその先端部に複数の重合性二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)と、スチレン系モノマー(a2)と、メタクリル酸(a3)とを、連続塊状重合することを特徴とする耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
  5. スチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)の合計質量に対する多分岐状マクロモノマー(a1)の使用割合が、質量比で50ppm〜1%の範囲である請求項4記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
  6. スチレン系モノマー(a2)とメタクリル酸(a3)との使用割合が、(a2)/(a3)で表される質量比として98/2〜80/20の範囲である請求項4又は5記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜3の何れか1項記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
  8. 発泡成形してなる請求項7記載の成形体。
  9. 食品用包装材として用いる請求項7又は8記載の成形体。
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