JP2014205587A - 結晶成長用るつぼおよび結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが可能な結晶成長用るつぼ、および当該結晶成長用るつぼが用いられる結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】結晶成長用るつぼ10は、種結晶を保持するための種結晶保持部11と、種結晶保持部11上に接続され、内面12a側に結晶成長を行うための空間12bを有する結晶成長部12とを備えている。結晶成長部12は、結晶格子10aが積層された結晶構造を有している。内面12aには、上記結晶構造の断面部が露出した溝部20が形成されている。
【選択図】図3
【解決手段】結晶成長用るつぼ10は、種結晶を保持するための種結晶保持部11と、種結晶保持部11上に接続され、内面12a側に結晶成長を行うための空間12bを有する結晶成長部12とを備えている。結晶成長部12は、結晶格子10aが積層された結晶構造を有している。内面12aには、上記結晶構造の断面部が露出した溝部20が形成されている。
【選択図】図3
Description
本発明は、結晶成長用るつぼおよび結晶の製造方法に関するものであり、より特定的には、るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが可能な結晶成長用るつぼ、および当該結晶成長用るつぼが用いられる結晶の製造方法に関するものである。
ガリウムヒ素(GaAs)やインジウムリン(InP)などの化合物半導体の単結晶の製造方法としては、たとえばVB(Vertical Bridgman)法やVGF(Vertical Gradient Freeze)法など、るつぼ内において溶融させた原料を種結晶上で凝固させることにより単結晶を製造する方法がある。これらの方法では、たとえば熱分解窒化硼素(PBN:Pyrolytic Boron Nitride)からなるるつぼが用いられる。
PBNは、減圧熱分解CVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成される窒化硼素であり、高純度で耐熱性が高く、高温条件でも化学的に安定な材料である。そのため、PBNは、半導体単結晶の製造に用いられるるつぼの構成材料として広く用いられている。また、PBNは、窒素(N)原子および硼素(B)原子からなる六方晶構造の結晶格子(六方格子)が積層された構造を有しており、また結晶格子の面内方向と積層方向とにおいて熱伝導率や機械的強度が大きく異なる性質を有している(面内方向では積層方向に比べて熱伝導率が30〜70倍)。
PBNからなるるつぼの例としては、たとえば特開平9−295887号公報(以下、特許文献1という)では、成長結晶のファセット発生方向に対応する内面を、るつぼの深さ方向に垂直な円形断面から内側に凹ませた(つまり内面を内側に突出させた)るつぼが開示されている。また、たとえば特開2011−251891号公報(以下、特許文献2という)では、内面に溝部が形成されたるつぼを使用し、成長結晶のファセットの発生方向に当該溝部が位置するように種結晶をるつぼ内に配置する方法が開示されている。また、特開平10−87306号公報(以下、特許文献3という)では、るつぼの内面の一部にPBNの積層断面が露出したるつぼが開示されている。また、たとえば特開2009−215112号公報(以下、特許文献4という)では、るつぼの内面において、結晶成長方向に対してほぼ垂直な方向に円周状の溝部が形成されたるつぼが開示されている。
VB法やVGF法では、GaAsからなる種結晶および原料、ならびに酸化硼素(B2O3)からなる封止剤をPBNからなるるつぼ内に配置し、溶融させた原料を種結晶上において凝固させることによりGaAs単結晶を成長させる。また、成長させたGaAs単結晶は、封止剤であるB2O3を介してるつぼの内面に強固に固着された状態となっている。
成長させたGaAs単結晶を冷却すると、PBNとGaAsとの熱膨張率の差(GaAsの方がPBNよりも大きい)に起因して、るつぼの内面がGaAs単結晶やB2O3の熱収縮により引っ張り応力を受ける。これにより、GaAs単結晶の表面またはるつぼの内面に損傷が生じる場合がある。成長結晶(GaAs単結晶)の表面に損傷が生じると、所望の大きさのウェハを作製することが困難になり、その結果ウェハの製造歩留まりが低下するという問題がある。また、るつぼの内面において大きな段差が形成される程度にまで損傷が生じると、るつぼの繰り返し使用が困難になるという問題がある。また、GaAs単結晶は、るつぼをメタノールなどの溶媒中に浸漬させて封止剤を除去することにより取り出される。この場合、GaAs単結晶がるつぼ内面に強固に固着しているため、取り出しのために長時間を要するという問題もある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが可能な結晶成長用るつぼ、および当該結晶成長用るつぼが用いられる結晶の製造方法を提供することである。
本発明に従った結晶成長用るつぼは、種結晶を保持するための種結晶保持部と、種結晶保持部上に接続され、内面側に結晶成長を行うための空間を有する結晶成長部とを備えている。結晶成長部は、結晶格子が積層された結晶構造を有している。上記内面には、上記結晶構造の断面部が露出した溝部が形成されている。
本発明者は、るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが可能なるつぼの構成について鋭意検討を行い、その結果以下のような知見を得て、本発明に想到した。
たとえばPBNなどのように結晶格子が積層された結晶構造では、当該結晶格子の面内方向における強度が積層方向における強度よりも大きい。そのため、るつぼの内面に上記結晶格子の積層断面が露出していない場合には、成長結晶の取り出しの際にるつぼ内面が剥離しにくく、その結果るつぼ内面に大きな引っ張り応力が加わる。これにより、成長結晶の表面やるつぼの内面に損傷が発生し易くなり、また成長結晶の取り出しに長時間を要する。
これに対して、本発明に従った結晶成長用るつぼは、結晶成長部の内面側に結晶成長を行うための空間を有しており、かつ当該内面に上記結晶構造の断面部が露出した溝部が形成されている。これにより、成長結晶の取り出しの際に当該溝部を起点としたるつぼ内面の剥離が生じ易くなるため、るつぼ内面に過大な引っ張り応力が加わることが抑制される。その結果、るつぼから成長結晶を取り出す際に成長結晶の表面やるつぼ内面における損傷の発生を抑制することができる。さらに、当該溝部を起点としたるつぼ内面の剥離が起こり易くなることにより、るつぼからの成長結晶の取り出しに要する時間も短縮される。したがって、本発明に従った結晶成長用るつぼによれば、るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが可能な結晶成長用るつぼを提供することができる。
上記結晶成長用るつぼにおいて、溝部は、結晶成長部の軸方向に沿うように形成されていてもよい。また、溝部は、上記軸方向に垂直な方向に沿うように形成されていてもよい。
一般に、結晶成長部の上記軸方向に沿って結晶が成長するため、溝部を上記軸方向に沿って形成することで溝部が結晶成長に与える影響を小さくすることができる。また、本発明者の検討によれば、溝部の幅や深さなどを適宜調整することにより、上記軸方向に垂直な方向に沿って溝部を形成した場合でも、同様に溝部が結晶成長に与える影響を小さくすることができる。
上記結晶成長用るつぼにおいて、溝部は、機械加工により形成されていてもよい。これにより、上記結晶成長用るつぼにおいて溝部を容易に形成することができる。
上記結晶成長用るつぼにおいて、溝部の幅は、1000μm以下であってもよい。溝部の幅が1000μmを超える場合には、溝部の底において成長結晶とるつぼとの固着が強くなり、溝部を起点としたるつぼ内面の剥離が起こりにくくなる。そのため、溝部の幅は、1000μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
上記結晶成長用るつぼにおいて、溝部の深さは、1μm以上200μm以下であってもよい。溝部の深さが200μmを超える場合には、るつぼ内面の剥離厚が大きくなり過ぎるため、るつぼ内面における損傷を抑制することが困難になる。一方で、溝部の深さが1μm未満である場合には、溝部がるつぼ内面における剥離の起点として機能することが困難になる。そのため、溝部の深さは、1μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
上記結晶成長用るつぼにおいては、複数の溝部が形成されていてもよい。また、溝部同士の間隔は、5mm以上200mm以下であってもよい。
溝部同士の間隔が5mm未満である場合には、るつぼ内面の機械的強度が弱くなり過ぎるため、結晶成長中などにるつぼ内面の剥離が生じる可能性がある。一方で、溝部同士の間隔が200mmを超える場合には、るつぼ内面の剥離が生じにくくなる。そのため、溝部同士の間隔は5mm以上200mm以下であることが好ましく、10mm以上120mm以下であることがより好ましい。
上記結晶成長用るつぼにおいては、溝部の各々は、互いに異なる方向において形成されていてもよい。そして、溝部の各々は、交差していてもよい。これにより、るつぼ内面の剥離をより起こり易くすることができる。
本発明に従った結晶の製造方法は、種結晶および原料を結晶成長用るつぼ内に配置する工程と、原料を溶融させた後に凝固させることにより、種結晶上に結晶成長させる工程とを備えている。結晶成長用るつぼは、上記本発明に従った結晶成長用るつぼである。
本発明に従った結晶の製造方法では、上記本発明に従った結晶成長用るつぼが用いられるため、成長結晶を損傷の発生を抑制しつつ容易に取り出すことができる。したがって、本発明に従った結晶の製造方法によれば、損傷の発生が抑制された高品質な結晶を製造することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明に従った結晶成長用るつぼによれば、るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが可能な結晶成長用るつぼを提供することができる。また、本発明に従った結晶の製造方法によれば、損傷の発生が抑制された高品質な結晶を製造することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
まず、本実施の形態に係る結晶成長炉の構成について説明する。図1を参照して、結晶成長炉1は、チャンバ2と、断熱材3と、ヒータ4と、保持台5と、石英アンプル6と、るつぼ10とを主に備えている。チャンバ2の内部には、断熱材3、ヒータ4、石英アンプル6およびるつぼ10が各々配置されている。
石英アンプル6は内部にるつぼ10が封入されており、保持台5上に配置されている。石英アンプル6の外部にはヒータ4が設置されている。ヒータ4は、るつぼ10を加熱するためのものであり、チャンバ2の外部に配置された電源(図示しない)に接続されている。ヒータ4の外部には、断熱材3が設けられている。また、るつぼ10は、後述する本実施の形態に係る結晶成長用るつぼである。
次に、本実施の形態に係る結晶成長用るつぼの構成について説明する。図2および図3を参照して、るつぼ10は、種結晶保持部11と、種結晶保持部11上に接続された結晶成長部12とを主に備えている。種結晶保持部11は、空間11aを有する円筒形状からなり、当該空間11aにおいて種結晶(図示しない)を保持する。
結晶成長部12は、種結晶保持部11上に接続されており、テーパ部13および直胴部14を含んでいる。テーパ部13は空間12bを含む円錐形状からなり、種結晶保持部11に接続されている。直胴部14は空間12bを含む円筒形状からなり、テーパ部13(種結晶保持部11側とは反対側)に接続されている。結晶成長部12の内面12a側に形成された空間12bは、種結晶保持部11に形成された空間11aと連なっており、当該空間11aにおいて保持された種結晶上に結晶成長を行うための部分となっている。
るつぼ10は、たとえばPBNからなり、減圧熱分解CVD法を用いて作製することができる。より具体的には、グラファイト部材(図示しない)上に熱分解CVD法により窒化硼素を堆積させ、その後、当該グラファイト部材を分離することによりるつぼ10を作製することができる。この場合、窒化硼素はグラファイト部材上に層状に堆積する。そのため、るつぼ10は当該グラファイト部材に沿うような形状を有しており、また図3に示すように結晶格子10aが厚み方向に積層された結晶構造を有している。また、この結晶格子10aは、N原子およびB原子を含むPBNの六方格子からなっている。なお、図3においては結晶格子10aの積層構造を便宜上巨視的な大きさで示しているが、当該積層構造はたとえばX線回折などにより解析可能な微視的な構造である。
るつぼ10は、たとえばPBNからなり、減圧熱分解CVD法を用いて作製することができる。より具体的には、グラファイト部材(図示しない)上に熱分解CVD法により窒化硼素を堆積させ、その後、当該グラファイト部材を分離することによりるつぼ10を作製することができる。この場合、窒化硼素はグラファイト部材上に層状に堆積する。そのため、るつぼ10は当該グラファイト部材に沿うような形状を有しており、また図3に示すように結晶格子10aが厚み方向に積層された結晶構造を有している。また、この結晶格子10aは、N原子およびB原子を含むPBNの六方格子からなっている。なお、図3においては結晶格子10aの積層構造を便宜上巨視的な大きさで示しているが、当該積層構造はたとえばX線回折などにより解析可能な微視的な構造である。
図3および図4を参照して、結晶成長部12の内面12aには、結晶格子10aが積層された結晶構造の断面部が露出した溝部20が形成されている。すなわち、結晶格子10aの各々は、溝部20において切断されている。そのため、るつぼ10では、溝部20を起点とした内面12aの剥離が生じ易くなっている。これにより、空間12bにおいて成長させた結晶を取り出す際に、成長結晶の熱収縮などにより内面12aに過大な引っ張り応力が加わることが抑制され、成長結晶の表面や内面12aにおける損傷の発生を抑制することができる。その結果、高品質な成長結晶が得られ、またるつぼの繰り返し使用回数を増大させることができる。さらに、溝部20を起点とした内面12aの剥離が起こり易くなることにより、成長結晶の取り出しも容易になる。このように、本実施の形態に係る結晶成長用るつぼ10は、るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが可能なものとなっている。
上記結晶成長用るつぼ10において、溝部20は少なくとも1本形成されている。溝部20の数が多くなると内面12aの剥離が起こり易くなる一方、溝部20を形成するための加工の手間が大きくなる。また、溝部20の数が多くなると溝部20同士の間隔が狭くなり、加工中に内面12aが損傷する場合がある。そのため、溝部20は、1本以上36本以下形成されていることが好ましく、4本以上16本以下形成されていることがより好ましい。また、溝部20は、内面12aの周方向において等間隔に形成されていることがさらに好ましく、図3および図4に示すように内面12aを周方向に4等分するように形成されていることが一層好ましい。
また、複数の溝部20が形成される場合には、溝部20同士の間隔は5mm以上200mm以下であってもよい。ここで、「溝部20同士の間隔」とは、一の溝部20とこれに隣接する他の溝部20との間における内面12aに沿った距離である。溝部20同士の間隔が5mm未満である場合には、るつぼ内面12aの機械的強度が弱くなり、加工中や結晶成長中に内面12aの剥離が生じる場合がある。一方で、溝部20同士の間隔が200mmを超える場合には、るつぼ内面12aの剥離が生じにくくなる。そのため、溝部20同士の間隔は5mm以上200mm以下であることが好ましく、10mm以上120mm以下であることがより好ましい。
上記結晶成長用るつぼ10において、溝部20は、図3に示すように結晶成長部12の軸方向に沿うようにテーパ部13および直胴部14の各々に形成されていてもよいし、テーパ部13にのみ形成されていてもよいし、直胴部14にのみ形成されていてもよい。また、テーパ部13および直胴部14では、上記軸方向に沿った全長にわたり溝部20が形成されていてもよいし、一部分にのみ溝部20が形成されていてもよい。
上記結晶成長用るつぼ10において、溝部20は、図3に示すように結晶成長部12の軸方向に沿うように形成されていてもよいし、内面12aの周方向に沿うように形成されていてもよいし、当該軸方向および周方向に交差する方向(斜め方向)に形成されていてもよい。また、複数の溝部20が形成される場合には、複数の溝部20の各々が互いに沿うように形成されていてもよいし、複数の溝部20の各々が互いに異なる方向に形成されていてもよい。
図4を参照して、上記結晶成長用るつぼ10において、溝部20の幅Wは、1000μm以下であってもよい。溝部20の幅Wが1000μmを超える場合には、溝部20の底において成長結晶とるつぼ10との固着が強くなり、溝部20を起点としたるつぼ内面12aの剥離が起こりにくくなる。そのため、溝部20の幅Wは、1000μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
上記結晶成長用るつぼ10において、溝部20の深さDは、1μm以上200μm以下であってもよい。溝部20の深さDが200μmを超える場合には、内面12aの剥離厚が大きくなり過ぎるため剥離の進行が遅くなり、その結果内面12aにおいて損傷が発生し易くなる。一方で、溝部20の深さDが1μm未満である場合には、溝部20が内面12aにおける剥離の起点として機能することが困難になる。そのため、溝部20の深さは、1μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
上記結晶成長用るつぼ10において、溝部20は、図3に示すように交差する2つの平面を含む形状(V字形状)を有してもよいが、特に限定されない。たとえば、溝部20は曲面を含む形状(丸底形状)を有していてもよいし、その他の形状を有していてもよい。このように、溝部20の形状(幅、深さ、長さ)、本数および方向を適宜調整することにより、内面12aからの剥離層を薄く均一にすることができる。その結果、るつぼ10から成長結晶を取り出す際の内面12aおよび成長結晶における損傷の発生をより効果的に抑制することができる。
上記結晶成長用るつぼ10において、溝部20は、内面12aに機械加工を施すことにより形成されている。より具体的には、たとえばカッターなどの刃具やリューターなどのバイトを用いて溝部20が形成されていてもよいし、その他の工具を用いた任意の方法により溝部20が形成されていてもよい。なお、上述のような機械加工により溝部20を形成した場合には、内面12a上に不純物が残留しないようにるつぼ10を適宜洗浄することが好ましい。
次に、GaAs単結晶を製造する場合を例として、本実施の形態に係る結晶の製造方法を説明する。図5を参照して、本実施の形態に係る結晶の製造方法は、工程(S10)〜(S40)を備えており、上記本実施の形態に係る結晶成長用るつぼ10を用いて実施される。
本実施の形態に係る結晶の製造方法では、まず、工程(S10)として、種結晶配置工程が実施される。この工程(S10)では、図6を参照して、種結晶保持部11の空間11aにおいて、たとえばGaAs単結晶からなる種結晶31が配置される。
次に、工程(S20)として、原料および封止剤配置工程が実施される。この工程(S20)では、図6を参照して、たとえばGaAs多結晶からなる原料32および酸化硼素(B2O3)からなる封止剤33が、種結晶31上に配置される。このようにして、種結晶31、原料32および封止剤33の各々がるつぼ10内に配置された後、当該るつぼ10が石英アンプル6内に封入される(図1参照)。
次に、工程(S30)として、結晶成長工程が実施される。この工程(S30)では、図1を参照して、まず、るつぼ10が封入された石英アンプル6が、保持台5の上に配置される。次に、ヒータ4により石英アンプル6が加熱されることで、るつぼ10内の原料および封止剤が溶融し液化する。その後、種結晶側からるつぼ10を徐々に冷却して原料を凝固させることにより、種結晶上にGaAs単結晶を成長させる。
次に、工程(S40)として、取出工程が実施される。この工程(S40)では、GaAs単結晶の成長が完了した後、るつぼ10がメタノールなどの溶媒中に浸漬される。これにより封止剤がメタノール中に溶解し、GaAs単結晶がるつぼ10から取り出される。以上のように工程(S10)〜(S40)が実施されることによりGaAs単結晶が製造され、本実施の形態に係る結晶の製造方法が完了する。
このように、本実施の形態に係る結晶の製造方法では、上記本実施の形態に係る結晶成長用るつぼ10が用いられるため、GaAs単結晶を損傷の発生を抑制しつつ容易に取り出すことができる。したがって、本実施の形態に係る結晶の製造方法によれば、損傷の発生が抑制された高品質なGaAs単結晶を製造することができる。
本発明の結晶成長用るつぼおよび結晶の製造方法による効果を確認する実験を行った。図2および図3を参照して、まず、PBNからなる結晶成長用るつぼ10を準備した(内径:160mm、長さ:300mm、厚み:約1000μm)。次に、図3および図4を参照して、結晶成長部12の軸方向に沿って、直胴部14の全長にわたり溝部20を4本形成した。溝部20は、内面12aを周方向に4等分する位置においてダイヤモンドナイフを用いて形成した(幅W:約150μm、深さD:約50μm)。次に、るつぼ10を酸素雰囲気下で加熱し、内面12a上にB2O3膜(膜厚:約10μm)を形成した。
次に、図6を参照して、るつぼ10の種結晶保持部11内にGaAs単結晶からなる種結晶31を配置した。そして、GaAs多結晶からなる原料32(重さ:25kg)およびB2O3からなる液体封止剤33(重さ:0.3kg)を種結晶31上に配置し、るつぼ10を石英アンプル6内に真空封入した(図1参照)。
次に、図1を参照して、るつぼ10を封入した石英アンプル6を結晶成長炉1内に設置し、ヒータ4により加熱した。そして、るつぼ10内の原料が溶融した後、るつぼ10の温度を種結晶側から徐々に低下させることによりGaAs単結晶を成長させた。結晶の成長速度は約8mm/hであり、結晶成長付近における温度勾配は約10℃/cmであった。
次に、結晶成長が完了後、るつぼ10をメタノール温浴中(温度:50℃)に浸漬した。これにより、GaAs単結晶とるつぼ10との間に介在する封止剤を溶解させ、成長結晶を取り出した。
また、比較例として、内面に溝部が形成されていない結晶成長用るつぼを用いて、上記実施例と同様に実験を行った。
以下、上記実験結果について説明する。
(実施例)
成長結晶の抜き取りに要した時間は1時間であった。また、成長結晶の表面にはるつぼ内面から剥離したPBN層が固着していたが、結晶表面の剥離は見られず、結晶径が小さくなった部分はなかった。また、るつぼ内面から剥離したPBN層の厚みは30〜50μmと均一であった。また、成長結晶の抜き取りによりるつぼの厚みは950μmから930μmにまで減少していたが、るつぼ内面に形成された段差は20μm以下と小さく、結晶成長の障害とならない程度のものであった。
(実施例)
成長結晶の抜き取りに要した時間は1時間であった。また、成長結晶の表面にはるつぼ内面から剥離したPBN層が固着していたが、結晶表面の剥離は見られず、結晶径が小さくなった部分はなかった。また、るつぼ内面から剥離したPBN層の厚みは30〜50μmと均一であった。また、成長結晶の抜き取りによりるつぼの厚みは950μmから930μmにまで減少していたが、るつぼ内面に形成された段差は20μm以下と小さく、結晶成長の障害とならない程度のものであった。
さらに、使用後のるつぼの内面を加工し再び結晶成長を行ったところ、成長結晶の抜き取りの際に剥離したPBN層の厚みは、30〜50μmと1回目同様であった。このように結晶成長およびるつぼ内面の加工を繰り返したところ、るつぼの厚み(最も薄い部分)が500μmになるまで10回繰り返して使用することができた。
(比較例)
成長結晶の抜き取りに要した時間は8時間であった。また、成長結晶の表面にはるつぼ内面から剥離したPBN層が固着しており、また結晶表面の一部が剥離してるつぼ内面に固着していた。結晶表面が剥離した部分は結晶径が小さくなっており、規定の直径を有するウェハが得られた部分は全体の約60%程度であった。また、るつぼ内面から剥離したPBN層の厚みは50〜180μmとばらつきが大きかった。また、結晶を抜き取った後のるつぼの厚みは最も薄い部分で800μmにまで減少しており、るつぼ内面の段差は最大で150μmとなっていた。
成長結晶の抜き取りに要した時間は8時間であった。また、成長結晶の表面にはるつぼ内面から剥離したPBN層が固着しており、また結晶表面の一部が剥離してるつぼ内面に固着していた。結晶表面が剥離した部分は結晶径が小さくなっており、規定の直径を有するウェハが得られた部分は全体の約60%程度であった。また、るつぼ内面から剥離したPBN層の厚みは50〜180μmとばらつきが大きかった。また、結晶を抜き取った後のるつぼの厚みは最も薄い部分で800μmにまで減少しており、るつぼ内面の段差は最大で150μmとなっていた。
使用後のるつぼはそのままでは再使用することができなかったため、内面全体に研磨加工を施した。これにより、るつぼの厚みは650μmにまで減少した。そして、このるつぼを用いて同様に結晶成長を行い成長結晶を抜き取ったところ、るつぼの厚みは500μm以下にまでさらに減少した。このるつぼは、強度が不十分であり、再使用することはできなかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の結晶成長用るつぼおよび結晶の製造方法は、るつぼおよび成長結晶における損傷の発生を抑制しつつ、成長結晶を容易に取り出すことが要求される結晶成長用るつぼ、および当該結晶成長用るつぼが用いられる結晶の製造方法において、特に有利に適用され得る。
1 結晶成長炉、2 チャンバ、3 断熱材、4 ヒータ、5 保持台、6 石英アンプル、10 結晶成長用るつぼ(るつぼ)、10a 結晶格子、11 種結晶保持部、11a,12b 空間、12 結晶成長部、12a るつぼ内面(内面)、13 テーパ部、14 直胴部、20 溝部、31 種結晶、32 原料、33 封止剤(液体封止剤)、W 幅、D 深さ。
Claims (9)
- 種結晶を保持するための種結晶保持部と、
前記種結晶保持部上に接続され、内面側に結晶成長を行うための空間を有する結晶成長部とを備え、
前記結晶成長部は、結晶格子が積層された結晶構造を有し、
前記内面には、前記結晶構造の断面部が露出した溝部が形成されている、結晶成長用るつぼ。 - 前記溝部は、前記結晶成長部の軸方向に沿うように形成されている、請求項1に記載の結晶成長用るつぼ。
- 前記溝部は、前記結晶成長部の軸方向に垂直な方向に沿うように形成されている、請求項1または2に記載の結晶成長用るつぼ。
- 前記溝部は、機械加工により形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶成長用るつぼ。
- 前記溝部の幅は、1000μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶成長用るつぼ。
- 前記溝部の深さは、1μm以上200μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶成長用るつぼ。
- 複数の前記溝部が形成されており、
前記溝部同士の間隔は、5mm以上200mm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結晶成長用るつぼ。 - 複数の前記溝部が形成されており、
前記溝部の各々は、互いに異なる方向において形成され、かつ、交差している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結晶成長用るつぼ。 - 種結晶および原料を結晶成長用るつぼ内に配置する工程と、
前記原料を溶融させた後に凝固させることにより、前記種結晶上に結晶成長させる工程とを備え、
前記結晶成長用るつぼは、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶成長用るつぼである、結晶の製造方法。
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JP2020090403A (ja) * | 2018-12-04 | 2020-06-11 | Tdk株式会社 | 単結晶育成用ルツボ、単結晶製造方法及び単結晶 |
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