JP2009012986A - Iii族窒化物結晶の製造方法およびiii族窒化物結晶基板 - Google Patents

Iii族窒化物結晶の製造方法およびiii族窒化物結晶基板 Download PDF

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Abstract

【課題】下地基板の表面の転位密度を低減させて、その下地基板上に転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物結晶を成長させるIII族窒化物結晶の製造方法およびIII族窒化物結晶基板を提供する。
【解決手段】本III族窒化物結晶の製造方法は、溶液3中でIII族元素と窒素とを反応させてIII族窒化物結晶20を成長させるIII族窒化物結晶の製造方法であって、少なくとも表面層10aおよび表面層10aに隣接する表面側部分10bがIII族窒化物種結晶で形成されている下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程と、メルトバックされた下地基板10上にIII族窒化物結晶20を成長させる工程と、III族窒化物結晶20の表面層20aのメルトバックおよびIII族窒化物結晶20の成長を1サイクルとする結晶メルトバック成長サイクルを1サイクル以上含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、III族窒化物結晶の製造方法およびIII族窒化物結晶基板に関する。かかるIII族窒化物結晶およびIII族窒化物結晶基板は、発光素子、電子素子、半導体センサなどの各種半導体デバイスに好ましく用いられる。
各種半導体デバイスに用いられるIII族窒化物結晶およびIII族窒化物結晶基板は、その半導体デバイスの特性を向上させる観点から、転位密度が低く結晶性の高いものが求められる。
かかるIII族窒化物結晶およびIII族窒化物結晶基板の製造方法として、たとえば、特開2005−72572号公報(特許文献1)は、表面にIII族窒化物結晶の薄膜が形成されたテンプレート基板上に、フラックス法によりIII族窒化物結晶を成長させ、成長させたIII族窒化物結晶の表面処理をメルトバックまたはメカノケミカル研磨によって行なう方法を提案する。ここで、特開2005−72572号公報においては、メルトバックまたはメカノケミカル研磨により結晶の表面粗さをおよび表面加工層を低減して、平坦で結晶性の高い表面を有するIII族窒化物結晶およびIII族窒化物結晶基板を得ることを目的としている。
また、特開2006−131454号公報(特許文献2)は、表面にIII族窒化物結晶の薄膜が形成されたテンプレート基板上に、フラックス法によりIII族窒化物結晶を育成させる際に、育成温度より低い保持温度で保持する保持工程および育成温度でIII族窒化物結晶を育成する育成工程を有することを提案する。ここで、特開2006−131454号公報は、フラックス法によりIII族窒化物結晶を育成する際、育成の初期においてメルトバックの発生を防止することにより、結晶性の高いIII族窒化物結晶を安定して育成することを目的とする。
しかし、いずれの方法も、III族窒化物結晶の成長のために用いられる基板(テンプレート基板)自体の結晶性を高めるものではなく、いずれの方法により製造されたIII族窒化物結晶およびIII族窒化物結晶基板においても、更なる結晶性の向上が求められている。
特開2005−72572号公報 特開2006−131454号公報
本発明者らは、転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物結晶を成長させるために、下地基板の表面または表面層の結晶性を高める方法について検討を試みた。下地基板の表面または表面層の結晶性を高めるためには、下地基板が形成される際に生じる表面の荒れおよび表面加工層により結晶性が低下した表面層を如何にして除去するかが課題となる。
特開2005−72572号公報および特開2006−131454号公報においては、フラックス法においてIII族窒化物結晶を成長される際に生じるメルトバックがIII族窒化物結晶の安定な成長を阻害してその結晶性を低下させることが記載されている。さらに、特開2006−131454号公報においては、フラックス法によるIII族窒化物結晶の育成において、下地基板のメルトバックを防止する方法が記載されている。
しかし、上記文献の記載にも拘わらず、発明者は、フラックス法において生じ得るメルトバック現象を下地基板の結晶性が低下した表面層の除去に適用するために検討を重ねた。
そして、III族窒化物結晶の製造に際して、メルトバックにより下地基板の結晶性が低下した表面層の除去を可能とし、メルトバックされた下地基板の上にIII族窒化物結晶を成長させることにより結晶性が高い結晶を得ることを可能とする製造方法、製造条件を初めて提案するに至ったものである。
すなわち、本発明は、上記状況に鑑みて、下地基板の表面の転位密度を低減させて、かかる転位密度が低減した下地基板上に転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物結晶を成長させることができるIII族窒化物結晶の製造方法およびかかる製造方法により得られるIII族窒化物結晶基板を提供することを目的とする。
本発明は、溶液中でIII族元素と窒素とを反応させてIII族窒化物結晶を成長させるIII族窒化物結晶の製造方法であって、少なくとも表面層および表面層に隣接する表面側部分がIII族窒化物種結晶で形成されている下地基板の表面層をメルトバックする工程と、メルトバックされた下地基板上にIII族窒化物結晶を成長させる工程とを含むIII族窒化物結晶の製造方法である。ここで、下地基板の表面層をメルトバックする工程の後に続けてIII族窒化物結晶を成長させる工程を行なうことができる。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法において、さらに、III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程と、メルトバックされたIII族窒化物結晶をさらに成長させる工程とを1サイクルとする結晶メルトバック成長サイクルを1サイクル以上含むことができる。ここで、III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程の後に続けてIII族窒化物結晶をさらに成長させる工程を行なうことができる。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法において、下地基板の表面層をメルトバックする工程において、下地基板がそのメルトバック前の表面から0.1μm以上の深さまで溶解され得る。また、III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程において、III族窒化物結晶がそのメルトバック前の表面から0.1μm以上の深さまで溶解され得る。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法において、溶液は1種類以上のアルカリ金属元素を含むことができる。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法においては、下地基板の表面層をメルトバックする工程において溶液に供給される窒素含有ガスの分圧を、III族窒化物結晶を成長させる工程において溶液に供給される窒素含有ガスの分圧に比べて低くすることができる。また、III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程において溶液に供給される窒素含有ガスの分圧を、III族窒化物結晶をさらに成長させる工程において溶液に供給される窒素含有ガスの分圧に比べて低くすることができる。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法において、下地基板の表面層をメルトバックする工程における溶液の温度を、III族窒化物結晶を成長させる工程における溶液の温度に比べて高くすることができる。また、III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程における溶液の温度を、III族窒化物結晶をさらに成長させる工程における溶液の温度に比べて高くすることができる。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法において、下地基板の表面層をメルトバックする工程は、溶液をIII族窒化物結晶を成長させる工程における溶液の温度まで昇温させる際に行なうことができる。また、III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程は、溶液をIII族窒化物結晶をさらに成長させる工程における溶液の温度まで昇温させる際に行なうことができる。
また、本発明は、上記の製造方法により製造されたIII族窒化物結晶を加工して得られる転位密度が1×107cm-2未満のIII族窒化物結晶基板である。
本発明によれば、下地基板の表面の転位密度を低減させて、かかる転位密度が低減した下地基板上に転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物結晶を成長させることができるIII族窒化物結晶の製造方法およびかかる製造方法により得られるIII族窒化物結晶基板を提供することができる。
(実施形態1)
本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法の一実施形態は、図1および図2を参照して、溶液3中でIII族元素と窒素とを反応させてIII族窒化物結晶20を成長させるIII族窒化物結晶20の製造方法であって、少なくとも表面層10aおよび表面層10aに隣接する表面側部分10bがIII族窒化物種結晶で形成されている下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程(図1(b)、図2の下地基板の表面層のメルトバック工程S11)と、メルトバックされた下地基板10上にIII族窒化物結晶20を成長させる工程(図1(c)、図2の下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程S12)とを含む。ここで、下地基板10の表面層10aのメルトバックとは、下地基板10の表面層10aが溶液3に溶解して除去されることをいう。かかる方法により、下地基板の表面における転位密度が低減し、転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物結晶が得られる。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程(下地基板の表面層のメルトバック工程S11)の後に続けてメルトバックされた下地基板10上にIII族窒化物結晶20を成長させる工程(下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程S12)を行なうことが好ましい。メルトバックにより、表面に加工変質層、結晶成長終了時の条件変動による品質劣化層、または不純物が存在する下地基板の表面状態を改善し、その上にIII族窒化物結晶を成長させることにより、転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物結晶が容易に得られる。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において用いられる下地基板10は、少なくともメルトバックされる表面層10aおよびその表面層10aに隣接する表面側部分10bがIII族窒化物種結晶で形成されていればよい。メルトバックにより表面層10aが除去された転位密度の低いIII族窒化物種結晶で形成されている表面側部分10b上にIII族窒化物結晶を成長させることにより、転位密度の低いIII族窒化物結晶を成長させることができるからである。この場合、表面側部分10bに隣接する下地側部分10cは、特に制限はないが、III族窒化物種結晶と結晶整合性が高いサファイア、SiCなどで形成されていることが好ましい。また、転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物種結晶が得られる観点から、下地側部分10cもIII族窒化物種結晶で形成されていること、すなわち、下地基板10の全体がIII族窒化物種結晶で形成されていることが好ましい。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、図1(b)を参照して、下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程において、メルトバック前の表面10pから溶解させる深さDは、0.1μm以上が好ましく、1.0μmがより好ましく、10.0μm以上がさらに好ましい。メルトバックにおいて溶解させる深さDが0.1μm未満であると、表面粗さの低減および/または表面変質層の除去などの表面状態の改善が不十分となるからである。
図1(b)を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において下地基板10の表面層10aをメルトバックするために用いられる溶液3は、1種類以上のアルカリ金属元素を含む溶液(具体的には融液)であることが好ましい。アルカリ金属はIII族窒化物をよく溶解するフラックス(溶媒)だからである。また、溶液3は、2種類以上のアルカリ金属元素を含む溶液(具体的には融液)であることがより好ましい。フラックスとして2種類以上のアルカリ金属元素を用いることにより、III族窒化物の溶解が促進されるからである。たとえば、Naに微量のLiが添加された融液などが好ましく用いられる。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程(図1(b))において溶液3に供給される窒素含有ガス5の分圧は、III族窒化物結晶20を成長させる工程(図1(c))において溶液3に供給される窒素含有ガス5の分圧に比べて低いことが好ましい。ここで、窒素含有ガス5は、特に制限はないが、溶液と下地基板上に形成されているIII族窒化物結晶との、熱化学的な平衡状態に近い未飽和状態を実現でき、かつ取扱いが容易である観点から、窒素ガス(N2ガス)が好ましく用いられる。下地基板の表面層をメルトバックする工程における溶液において窒素を未飽和状態とすることにより、下地基板の表面層のメルトバックを促進するためである。かかる観点から、下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程(図1(b))において溶液3に供給される窒素含有ガス5の分圧は、III族窒化物結晶20を成長させる工程(図1(c))において溶液3に供給される窒素含有ガス5の分圧に比べて、0.5MPa以上低いことがより好ましく、1.5MPa以上低いことがさらに好ましい。
窒素含有ガスの分圧調整の方法には、制限はなく、窒素含有ガスの圧力を単独で調整してもよいし、窒素含有ガスと窒素以外のガスとを混合して窒素含有ガスの分圧を調整してもよい。ここで、窒素以外のガスは、特に制限はないが、III族元素および窒素に対して化学的に安定である観点から、アルゴンガス(Arガス)が好ましく用いられる。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程(図1(b))における溶液3の温度は、III族窒化物結晶20を成長させる工程(図1(c))における溶液3の温度に比べて高いことが好ましい。下地基板の表面層をメルトバックする工程における溶液において窒素を未飽和状態とすることにより、下地基板の表面層のメルトバックを促進するためである。かかる観点から、下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程(図1(b))における溶液3の温度は、III族窒化物結晶20を成長させる工程(図1(c))における溶液3の温度に比べて、25℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高いことがさらに好ましい。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、下地基板10の表面層10aをメルトバックする工程(図1(b))は、溶液3をIII族窒化物結晶20を成長させる工程(図1(c))における溶液3の温度まで昇温させる際に行なうことができる。溶液3を短時間で昇温させることにより、溶液中への窒素の溶解が昇温に追随できず、昇温中および昇温後しばらくの間は、溶液3の窒素が未飽和状態となり、下地基板10の表面層10aのメルトバックが促進される。かかる観点から、好ましくは5時間以内、より好ましくは2時間以内で、溶液3の温度を室温(たとえば20℃)から800℃以上に昇温することにより、下地基板10の表面層10aのメルトバックが促進される。
本実施形態の場合、昇温中、および昇温完了直後の温度と窒素含有ガスの分圧との関係について、それぞれの温度において、その時の分圧で十分な時間(たとえば10時間以上)保持した場合には、III族窒化物結晶の成長が進行するような、高い分圧の窒素含有ガスが供給されていてもよい。その様な高い分圧の窒素含有ガスが供給されていても、昇温速度が速ければ、溶液3への窒素の溶解が追随できず、溶液は未飽和状態となり、メルトバックを進行させることが可能になる。
(実施形態2)
本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法の他の一実施形態は、図1および図2を参照して、上記実施形態1の製造方法の工程に、さらに、III族窒化物結晶20の表面層をメルトバックする工程(図1(d)、図2のIII族窒化物結晶の表面層のメルトバック工程S21)と、メルトバックされたIII族窒化物結晶をさらに成長させる工程(図1(e)、図2のIII族窒化物結晶のさらなる成長工程S22)とを1サイクルとする結晶メルトバック成長サイクルCを1サイクル以上含む。ここで、III族窒化物結晶20の表面層20aのメルトバックとは、III族窒化物結晶20の表面層20aが溶液3に溶解して除去されることをいう。
本実施形態においては、実施形態1の製造方法の工程に加えて、III族窒化物結晶の表面層のメルトバック工程S21およびIII族窒化物結晶のさらなる成長工程S22とを1サイクルとする結晶メルトバック成長サイクルCを1サイクル以上繰り返すことにより、III族窒化物結晶の各成長工程における表面20pの転位密度を低減して、III族窒化物結晶の結晶性をさらに高くすることができる。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、III族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックする工程(III族窒化物結晶の表面層のメルトバック工程S21)の後に続けてメルトバックされたIII族窒化物結晶20をさらに成長させる工程(III族窒化物結晶のさらなる成長工程S22)を行なうことが好ましい。メルトバックにより表面の転位密度が低減したIII族窒化物結晶の表面状態を劣化させることなくその上にさらにIII族窒化物結晶を成長させることにより、さらに転位密度が低く結晶性の高いIII族窒化物結晶が容易に得られる。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、図1(d)を参照して、III族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックする工程において、メルトバック前の表面20pから溶解させる深さDは、0.1μm以上が好ましく、1.0μmがより好ましく、10.0μm以上がさらに好ましい。メルトバックにおいて溶解させる深さDが0.1μm未満であると、メルトバック後のIII族窒化物結晶20の表面20qにおける転位密度の低減が不十分となるからである。
図1(d)を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においてIII族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックするために用いられる溶液3は、1種類以上のアルカリ金属元素を含む溶液(具体的には融液)であることが好ましい。アルカリ金属はIII族窒化物をよく溶解するフラックス(溶媒)だからである。また、溶液3は、2種類以上のアルカリ金属元素を含む溶液(具体的には融液)であることがより好ましい。フラックスとして2種類以上のアルカリ金属元素を用いることにより、III族窒化物の溶解が促進されるからである。たとえば、Naに微量のLiが添加された融液などが好ましく用いられる。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、III族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックする工程(図1(d))において溶液に供給される窒素含有ガス5の分圧は、III族窒化物結晶20をさらに成長させる工程(図1(e))において溶液に供給される窒素含有ガス5の分圧に比べて低いことが好ましい。ここで、窒素含有ガス5は、特に制限はないが、溶液と下地基板上に形成されているIII族窒化物結晶との、熱化学的な平衡状態に近い未飽和状態を実現でき、かつ取扱いが容易である観点から、窒素ガスが好ましく用いられる。下地基板の表面層をメルトバックする工程における溶液において窒素を未飽和状態とすることにより、III族窒化物結晶の表面層のメルトバックを促進するためである。かかる観点から、III族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックする工程(図1(d))において溶液に供給される窒素含有ガス5の分圧は、III族窒化物結晶20をさらに成長させる工程(図1(e))において溶液に供給される窒素含有ガス5の分圧に比べて、0.5MPa以上低いことがより好ましく、1.5MPa以上低いことがさらに好ましい。
窒素含有ガスの分圧調整の方法には、制限はなく、窒素含有ガスの圧力を単独で調整してもよいし、窒素含有ガスと窒素以外のガスとを混合して窒素含有ガスの分圧を調整してもよい。ここで、窒素以外のガスは、特に制限はないが、III族元素および窒素に対して化学的に安定である観点から、アルゴンガス(Arガス)が好ましく用いられる。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、III族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックする工程(図1(d))における溶液3の温度は、III族窒化物結晶20をさらに成長させる工程(図1(e))における溶液3の温度に比べて高いことが好ましい。III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程における溶液においてIII族元素および窒素を未飽和状態とすることにより、III族窒化物結晶の表面層のメルトバックを促進するためである。かかる観点から、III族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックする工程(図1(d))における溶液3の温度は、III族窒化物結晶20をさらに成長させる工程(図1(e))における溶液3の温度に比べて、25℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高いことがさらに好ましい。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法においては、III族窒化物結晶20の表面層20aをメルトバックする工程(図1(d))は、溶液3をIII族窒化物結晶20をさらに成長させる工程(図1(e))における溶液3の温度まで昇温させる際に行なわれることが好ましい。溶液3を短時間で昇温させることにより、溶液3中への窒素の溶解が昇温に追随できず、昇温中および昇温後しばらくの間は、溶液の窒素が未飽和状態となり、III族窒化物結晶20の表面層20aのメルトバックが促進される。かかる観点から、好ましくは5時間以内、より好ましくは2時間以内で、溶液3の温度を室温(たとえば20℃)から800℃以上に昇温することにより、III族窒化物結晶20の表面層20aのメルトバックが促進される。
(実施形態3)
本発明にかかるIII族窒化物結晶基板の一実施形態は、図3および図4を参照して、実施形態1または実施形態2の製造方法により製造されたIII族窒化物結晶を加工して得られる、転位密度が1×107cm-2未満のIII族窒化物結晶基板20sである。実施形態1または実施形態2の製造方法により、転位密度が1×107cm-2未満と低く結晶性の高いIII族窒化物結晶が得られるため、かかるIII族窒化物結晶を加工することにより転位密度が1×107cm-2未満と低く結晶性の高いIII族窒化物結晶基板が得られる。
ここで、III族窒化物結晶20を加工する方法には、特に制限はなく、図3および図4を参照して、バンドソー、内周刃スライサー、外周刃スライサー、またはレーザなどにより、III族窒化物結晶20を所定の厚さに切り出し、その主面を研削および/または研磨することにより、III族窒化物結晶基板20sが得られる。
(実施例1)
1.下地基板の準備工程
下地基板として、特許第3139445号に開示されている方法に基づいて自立性のあるGaN種結晶基板を準備した。具体的には、以下の通りである。直径2インチ(50.8mm)で厚さ300μmのサファイア基板の(0001)主面上に、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法により、厚さ1μmのGaN膜を形成した。このGaN膜上に、CVD(化学気相堆積)法により、SiO2膜からなるマスクを形成した。フォトリソグラフィーとウエットエッチングにより、マスクがストライプ状になるように、マスクを部分的に除去した。残されたストライプ状マスクの長手方向は、GaN膜を形成するGaN結晶の<11−20>方向であり、マスクのピッチは7μm、マスクの幅は5μmとなるようにした。
このストライプ状マスク付きの基板をHVPE(ハイドライド気相成長)装置内に配置した。H2ガス雰囲気中で1000℃に昇温し、GaClガスを20sccm、NH3ガスを1000sccmで25分間HVPE装置内に供給することにより、マスクの開口部から成長したGaN結晶をマスク上に横方向成長させた。さらに、10時間成長させることにより、全面に平坦で、厚さ400μmのGaN結晶を成長させた。
このGaN結晶を冷却後HVPE装置から取り出し、サファイア基板側である裏面側からイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザ(YAGレーザ)の第3高調波(波長355nm)を全面に照射することにより、サファイア基板とGaN結晶の界面に存在するGaN膜の結晶を分解し、サファイア基板とGaN結晶を分離した。さらに、GaN結晶の両側の主表面を研磨することにより、直径50.8mmで厚さ360μmのGaN自立種結晶を得た。このGaN自立種結晶を燐酸と硫酸の混合溶液に漬け、250℃に加熱して1時間エッチングし、光学顕微鏡により転位に対応するエッチピットの密度を計測した結果、転位密度は1×107cm-2〜1×108cm-2であることが確認された。この転位密度の評価後、GaN自立種結晶の主表面を、表面のエッチピットが消滅するように、再度平坦に研磨し、下地基板として直径50.8mmで厚さ350μmのGaN自立種結晶基板(以下、GaN自立下地基板という)を得た。
2.下地基板の表面層のメルトバック工程
図1(b)を参照して、下地基板10である上記GaN自立下地基板の表面層10aを、アルカリ金属元素を含む溶液3中でメルトバックした。具体的には、以下の通りである。
内径52mm、高さ40mmのアルミナ製の坩堝(反応容器1)内の底に上記のGaN自立下地基板(下地基板10)を配置し、さらに、60gの金属Gaと52.8gの金属Naを入れた後、坩堝(反応容器1)内に1.5MPaのN2ガス(窒素含有ガス5)を供給し、この坩堝(反応容器1)を室温(たとえば25℃)から850℃まで5時間かけて加熱して、その後850℃で1時間保持することにより、GaN自立下地基板をGa−Na融液(溶液3)中でメルトバックした。
冷却後に一旦坩堝(反応容器1)を取り出し、エタノールで残留する金属Naなどを除去し、さらに塩酸で残留する金属GaおよびGa−Na合金を除去し、GaN自立下地基板(下地基板10)を観察した結果、メルトバック前の表面10pから0.5μmの深さまで溶解していた。
3.下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程
メルトバック後のGaN自立下地基板(下地基板10)をアセトンおよびイソプロパノール中で超音波洗浄し、図1(c)を参照して、フラックス法によりGaN自立下地基板(下地基板10)上にGaN結晶(III族窒化物結晶20)を成長させた。具体的には、以下の通りである。
内径52mmで高さが40mmのアルミナ製の坩堝(反応容器1)内の底にGaN自立下地基板(下地基板10)を配置し、さらに、60gの金属Gaと52.8gの金属Naを入れて、3MPaのN2ガス(窒素含有ガス5)を坩堝(反応容器1)内に供給し、この坩堝(反応容器1)を室温(たとえば25℃)から850℃まで5時間かけて加熱し、その後120時間、融液(溶液)温度とN2ガス圧力を保持することで、Ga−Na融液(溶液3)中に窒素を溶解させて、GaN結晶(III族窒化物結晶20)を成長させた。
冷却後に一旦坩堝(反応容器1)を取り出し、エタノールで残留する金属Naなどを除去し、さらに塩酸で残留する金属GaおよびGa−Na合金を除去し、成長したGaN結晶(III族窒化物結晶20)を取り出した。こうして、GaN自立下地基板(下地基板10)上に成長した厚さ350μmのGaN結晶(III族窒化物結晶20)が得られた。このGaN結晶は表面が平坦であったので、燐酸と硫酸の混合溶液に浸漬し、250℃に加熱して1時間エッチングした。光学顕微鏡により転位に対応するエッチピットの密度を計測した結果、GaN結晶(III族窒化物結晶20)の転位密度は5×106cm-2とGaN自立下地基板(下地基板10)に比べて大幅に低減していることが確認された。
(比較例1)
1.下地基板の準備工程
下地基板として、実施例1と同様の手順で気相法による直径2インチ(50.8mm)で厚さ350μmのGaN自立下地基板を準備した。
2.下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程
上記GaN自立下地基板をメルトバックすることなく、フラックス法により実施例1と同様の条件で、GaN自立下地基板上にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。具体的には、融液(溶液)温度850℃でN2ガス圧力3MPaの条件で120時間結晶成長を行ない、厚さ350μmのGaN結晶が得られた。このGaN結晶の転位密度は5×107cm-2〜1×108cm-2であり、下地基板に比べて同程度または増加していることが確認された。
(実施例2)
1.下地基板の準備工程
下地基板として、実施例1と同様の手順で気相法による直径2インチ(50.8mm)で厚さ350μmのGaN自立下地基板を準備した。
2.下地基板の表面層のメルトバック工程
上記GaN自立下地基板の表面層を、実施例1と同様の条件で、メルトバックした。
3.下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程
メルトバック後のGaN自立下地基板を反応容器から取り出すことなく、実施例1と同様の条件で、GaN自立下地基板上にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。具体的には、実施例1のメルトバック条件である温度850℃、N2ガス圧力1.5MPaで1時間保持し、その後連続して温度を850℃で保持したままで、圧力を実施例1の結晶成長条件である3MPaに変えた後、GaN結晶を成長させた。その結果、実施例1と同様に、120時間で厚さ350μmのGaN結晶がGaN自立下地基板上に成長した。このGaN結晶の転位密度は5×106cm-2であり、下地基板の転位密度に比べて低減していることが確認された。
4.III族窒化物結晶のメルトバックおよび成長サイクル
上記GaN結晶を反応容器から取り出して洗浄した後、このGaN結晶に対して、実施例1と同様の条件で、III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程およびIII族窒化物結晶をさらに成長させる工程とを1サイクルとするIII族窒化物結晶のメルトバック成長サイクルを4サイクル繰り返した。この結果、成長したGaN結晶の厚さは1.75mmとなり、そのGaN結晶の表面の転位密度は1×106cm-2と大きく低減した。
5.III族窒化物結晶基板の製造工程
この下地基板と一体化したGaN結晶を、内周刃スライサーを用いて、下地基板の主面に平行な面でスライスし、スライス後の表面を研磨することで、厚さ300μmのGaN基板を5枚得ることができた。これらのIII族窒化物結晶基板の転位密度は、1×106cm-2〜5×106cm-2であり、一層低減していることが確認された。
(実施例3)
1.下地基板の準備工程
下地基板として、実施例1と同様の手順で気相法による直径2インチ(50.8mm)で厚さ350μmのGaN自立下地基板を準備した。
2.下地基板の表面層のメルトバック工程
上記GaN自立下地基板の表面層を、溶液としてGa−Na−Li融液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、メルトバックした。具体的には、内径52mmで高さ40mmのアルミナ製の坩堝(反応容器)内の底に上記GaN自立下地基板を配置し、さらに、60gの金属Gaと52.8gの金属Naと0.49gの金属Liを入れて、1.5MPaのN2ガス(窒素含有ガス)を坩堝内に供給して、この坩堝を室温(たとえば25℃)から850℃まで5時間かけて加熱し、その後850℃で10時間保持することにより、GaN自立下地基板をGa−Na−Li融液中でメルトバックした。
冷却後に一旦坩堝を取り出し、エタノールで残留する金属Na、金属Liなどを除去し、さらに塩酸で残留する金属GaおよびGa−Na−Li合金を除去し、GaN自立下地基板を観察した結果、メルトバック前の表面から1μmの深さまで溶解していた。
3.下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程
メルトバック後のGaN自立下地基板を実施例1と同様にして洗浄し、溶液としてGa−Na−Li融液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてGaN自立下地基板上にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。具体的には、以下の通りである。
内径52mmで高さが40mmのアルミナ製の坩堝(反応容器)内の底にGaN自立下地基板を配置し、さらに、60gの金属Gaと52.8gの金属Naと0.49gの金属Liを入れて、3MPaのN2ガス(窒素含有ガス)を坩堝内に供給し、この坩堝を室温(たとえば25℃)から850℃まで5時間かけて加熱し、その後120時間、融液(溶液)温度とN2ガス圧力を保持することで、Ga−Na−Li融液(溶液)中に窒素を溶解させて、GaN結晶を成長させた。
冷却後に一旦坩堝を取り出し、エタノールで残留する金属Na、金属Liなどを除去し、さらに塩酸で残留する金属GaおよびGa−Na−Li合金を除去し、成長したGaN結晶を取り出した。こうして、GaN自立下地基板上に成長した厚さ350μmのGaN結晶が得られた。このGaN結晶を、燐酸と硫酸の混合溶液に浸漬し、250℃に加熱して1時間エッチングした。光学顕微鏡により転位に対応するエッチピットの密度を計測した。この結果、GaN結晶の転位密度は3×106cm-2であり、実施例1に比べて、さらに低減していることが確認された。
(実施例4)
1.下地基板の準備工程
下地基板として、実施例1と同様の手順で気相法による直径2インチ(50.8mm)で厚さ350μmのGaN自立下地基板を準備した。
2.下地基板の表面層のメルトバック工程
上記GaN自立下地基板の表面層を、融液(溶液)温度を875℃としN2ガス(窒素含有ガス)の圧力を3MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にしてメルトバックした。具体的には、内径52mmで高さ40mmのアルミナ製の坩堝(反応容器)内の底に上記GaN自立下地基板を配置し、さらに、60gの金属Gaと52.8gの金属Naを入れて、3.0MPaのN2ガス(窒素含有ガス)を坩堝内に供給して、この坩堝を室温(たとえば25℃)から875℃まで5時間かけて加熱し、その後875℃で10時間保持することにより、GaN自立下地基板をGa−Na融液(溶液)中でメルトバックした。このメルトバックの条件は、GaN結晶の成長条件に比べて、N2ガス(窒素含有ガス)の圧力が同じで融液(溶液)温度が25℃高い条件であった。
冷却後に一旦坩堝を取り出し、エタノールで残留する金属Naなどを除去し、さらに塩酸で残留する金属Ga、Ga−Na合金などを除去し、GaN自立下地基板を観察した結果、メルトバック前の表面から1μmの深さまで溶解していた。
3.下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程
メルトバック後のGaN自立下地基板を実施例1と同様にして洗浄し、実施例1と同様にして融液(液体)温度850℃、N2ガス(窒素含有ガス)圧力3MPaの条件でGaN自立下地基板上にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。その結果、120時間で厚さ350μmのGaN結晶がGaN自立下地基板上に成長した。このGaN結晶の転位密度は5×106cm-2であり、下地基板に比べて低減していることが確認された。
(実施例5)
1.下地基板の準備工程
下地基板として、実施例1と同様の手順で気相法による直径2インチ(50.8mm)で厚さ350μmのGaN自立下地基板を準備した。
2.下地基板の表面層のメルトバック工程
上記GaN自立下地基板の表面層を、融液(溶液)温度を900℃としN2ガス(窒素含有ガス)の圧力を3MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にしてメルトバックした。具体的には、内径52mmで高さ40mmのアルミナ製の坩堝(反応容器)内の底に上記GaN自立下地基板を配置し、さらに、60gの金属Gaと52.8gの金属Naを入れて、3.0MPaのN2ガス(窒素含有ガス)を坩堝内に供給して、この坩堝を室温(たとえば25℃)から900℃まで5時間かけて加熱し、その後900℃で10時間保持することにより、GaN自立下地基板をGa−Na融液(溶液)中でメルトバックした。このメルトバックの条件は、GaN結晶の成長条件に比べて、N2ガス(窒素含有ガス)の圧力が同じで融液(溶液)温度が50℃高い条件であった。
冷却後に一旦坩堝を取り出し、エタノールで残留する金属Naなどを除去し、さらに塩酸で残留する金属Ga、Ga−Na合金などを除去し、GaN自立下地基板を観察した結果、メルトバック前の表面から10μmの深さまで溶解していた。
3.下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程
メルトバック後のGaN自立下地基板を実施例1と同様にして洗浄し、実施例1と同様にして融液(液体)温度850℃、N2ガス(窒素含有ガス)圧力3MPaの条件でGaN自立下地基板上にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。その結果、120時間で厚さ350μmのGaN結晶がGaN自立下地基板上に成長した。このGaN結晶の転位密度は2×106cm-2であり、下地基板に比べて低減していることが確認された。
(実施例6)
1.下地基板の準備工程
下地基板として、実施例1と同様の手順で気相法による直径2インチ(50.8mm)で厚さ350μmのGaN自立下地基板を準備した。
2.下地基板の表面層のメルトバック工程
上記GaN自立下地基板の表面層を、融液(溶液)温度850℃N2ガス(窒素含有ガス)圧力3MPaにおいて融液(溶液)温度850℃まで急速に昇温することによりメルトバックした。具体的には、内径52mmで高さ40mmのアルミナ製の坩堝(反応容器)内の底に上記GaN自立下地基板を配置し、さらに、60gの金属Gaと52.8gの金属Naを入れて、3.0MPaのN2ガス(窒素含有ガス)を坩堝内に供給して、この坩堝を室温(たとえば25℃)から850℃まで2時間で昇温し、その後850℃で3時間保持することにより、GaN自立下地基板をGa−Na融液(溶液)中でメルトバックした。
冷却後に一旦坩堝を取り出し、エタノールで残留する金属Naなどを除去し、さらに塩酸で残留する金属Ga、Ga−Na合金などを除去し、GaN自立下地基板を観察した結果、メルトバック前の表面から0.1μmの深さまで溶解していた。
ここで、融液(溶液)温度850℃でN2ガス(窒素含有ガス)圧力3MPaというメルトバック条件は、結晶成長条件と同じであるが、急速に融液(溶液)温度を昇温することで、溶液中の窒素が未飽和となり、結晶成長よりもメルトバックが起こったものと考えられる。
3.下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程
メルトバック後のGaN自立下地基板を実施例1と同様にして洗浄し、実施例1と同様にして融液(液体)温度850℃、N2ガス(窒素含有ガス)圧力3MPaの条件でGaN自立下地基板上にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。その結果、120時間で厚さ350μmのGaN結晶がGaN自立下地基板上に成長した。このGaN結晶の転位密度は5×106cm-2であり、下地基板に比べて低減していることが確認された。
(実施例7)
実施例1〜6においてそれぞれ得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)を内周刃スライサーを用いて下地基板の主面に平行な面でスライスして、その表面を研磨することにより、直径2インチ(50.8mm)で厚さ300μmの自立したGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)が得られた。これらのGaN結晶基板の転位密度は、いずれも1×107cm-2未満であった。したがって、これらのGaN結晶基板は、各種半導体デバイスの好適な基板として用いることが可能である。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法を示す概略断面図である。ここで、(a)は準備された下地基板を示し、(b)は下地基板の表面層のメルトバック工程を示し、(c)は下地基板上へのIII族窒化物結晶の成長工程を示し、(d)はIII族窒化物結晶の表面層のメルトバック工程を示し、(e)はIII族窒化物結晶のさらなる成長工程を示す。 本発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法を示すフローチャートである。 本発明にかかるIII族窒化物結晶基板を製造する一例を示す概略断面図である。(a)は下地基板上に成長されたIII族窒化物結晶を示し、(b)はIII族窒化物結晶を加工して得られるIII族窒化物結晶基板を示す。 本発明にかかるIII族窒化物結晶基板を製造する他の例を示す概略断面図である。(a)は下地基板上に成長されたIII族窒化物結晶を示し、(b)はIII族窒化物結晶を加工して得られるIII族窒化物結晶基板を示す。
符号の説明
1 反応容器、3 溶液、5 窒素含有ガス、10 下地基板、10a,20a 表面層、10b 表面側部分、10c 下地側部分、10p,20p メルトバック前の表面、10q,20q メルトバック後の表面、20 III族窒化物結晶、20s III族窒化物結晶基板。

Claims (14)

  1. 溶液中でIII族元素と窒素とを反応させてIII族窒化物結晶を成長させるIII族窒化物結晶の製造方法であって、
    少なくとも表面層および前記表面層に隣接する表面側部分がIII族窒化物種結晶で形成されている下地基板の前記表面層をメルトバックする工程と、メルトバックされた前記下地基板上に前記III族窒化物結晶を成長させる工程とを含むIII族窒化物結晶の製造方法。
  2. 前記下地基板の前記表面層をメルトバックする工程の後に続けて前記III族窒化物結晶を成長させる工程を行なう請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  3. さらに、前記III族窒化物結晶の表面層をメルトバックする工程と、メルトバックされた前記III族窒化物結晶をさらに成長させる工程とを1サイクルとする結晶メルトバック成長サイクルを1サイクル以上含む請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  4. 前記III族窒化物結晶の前記表面層をメルトバックする工程の後に続けて前記III族窒化物結晶をさらに成長させる工程を行なう請求項3に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  5. 前記下地基板の前記表面層をメルトバックする工程において、前記下地基板が、そのメルトバック前の表面から0.1μm以上の深さまで溶解される請求項1から請求項4までのIII族窒化物結晶の製造方法。
  6. 前記III族窒化物結晶の前記表面層をメルトバックする工程において、前記III族窒化物結晶が、そのメルトバック前の表面から0.1μm以上の深さまで溶解される請求項3から請求項5までのIII族窒化物結晶の製造方法。
  7. 前記溶液は1種類以上のアルカリ金属元素を含む請求項1から請求項6までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  8. 前記下地基板の前記表面層をメルトバックする工程において前記溶液に供給される窒素含有ガスの分圧は、前記III族窒化物結晶を成長させる工程において前記溶液に供給される前記窒素含有ガスの分圧に比べて、低いことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  9. 前記III族窒化物結晶の前記表面層をメルトバックする工程において前記溶液に供給される窒素含有ガスの分圧は、前記III族窒化物結晶をさらに成長させる工程において前記溶液に供給される前記窒素含有ガスの分圧に比べて、低いことを特徴とする請求項3から請求項8までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  10. 前記下地基板の前記表面層をメルトバックする工程における前記溶液の温度は、前記III族窒化物結晶を成長させる工程における前記溶液の温度に比べて、高いことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  11. 前記III族窒化物結晶の前記表面層をメルトバックする工程における前記溶液の温度は、前記III族窒化物結晶をさらに成長させる工程における前記溶液の温度に比べて、高いことを特徴とする請求項3から請求項10までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  12. 前記下地基板の前記表面層をメルトバックする工程は、前記溶液を前記III族窒化物結晶を成長させる工程における前記溶液の温度まで昇温させる際に行なわれる請求項1から請求項7までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  13. 前記III族窒化物結晶の前記表面層をメルトバックする工程は、前記溶液を前記III族窒化物結晶をさらに成長させる工程における前記溶液の温度まで昇温させる際に行なわれる請求項3から請求項7までおよび請求項12のいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  14. 請求項1から請求項13までの製造方法により製造されたIII族窒化物結晶を加工して得られる、転位密度が1×107cm-2未満のIII族窒化物結晶基板。
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