JP2010100449A - Iii族窒化物結晶の成長方法 - Google Patents

Iii族窒化物結晶の成長方法 Download PDF

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昌紀 森下
Koji Uematsu
康二 上松
Haruko Tanaka
晴子 田中
Hiroaki Yoshida
浩章 吉田
Shinsuke Fujiwara
伸介 藤原
Yusuke Mori
勇介 森
Takatomo Sasaki
孝友 佐々木
Shiro Kawamura
史朗 川村
Yasuo Kitaoka
康夫 北岡
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Abstract

【課題】結晶成長速度を小さくしても、再現性よく転位密度が低いIII族窒化物結晶の成長方法を提供する。
【解決手段】III族窒化物結晶10の成長方法は、液相法によるIII族窒化物結晶10の成長方法であって、下地基板1を準備する工程と、下地基板1の主面1mに、III族金属とアルカリ金属とを含む溶媒3に窒素含有ガス5を溶解させた溶液6を接触させて、主面1m上にIII族窒化物結晶10を成長させる工程と、を備え、III族窒化物結晶10を成長させる工程において、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、液相法、特にフラックス法によるIII族窒化物結晶の成長方法に関する。
III族窒化物結晶は、各種半導体デバイスの基板などに広く用いられている。近年、各種半導体デバイスを効率的に製造するために、大型で転位密度の低いIII族窒化物結晶が求められている。
III族窒化物結晶を成長させる方法としては、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法などの気相法、高圧溶液法、フラックス法などの液相法などがある。ここで、液相法は、気相法に比べて、その結晶成長において有毒なガスを使用しないため環境保護の面で優れている。
かかる液相法においてIII族窒化物結晶を成長させる方法として、たとえばH. Yamane, 他3名,“Preparation of GaN Single Crystals Using a Na Flux”, Chem. Mater., Vol.9, No.2, (1997), p.413-416(非特許文献1)は、Naフラックス法によるGaN結晶の成長方法を開示する。また、特開2003−206198号公報(特許文献1)は、板状のIII族窒化物種結晶を用いたNaフラックス法によるIII族窒化物結晶の成長方法を開示する。また、F. Kawamura, 他7名,“Growth of a Two-Inch GaN Single Crystal Substrate Using the Na Flux Method”, Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45, No.43, (2006), p.L1136-L1138(非特許文献2)は、Naフラックス法により転位密度が108cm-2程度のGaN基板上にGaN結晶を成長させることにより、2.3×105cm-2程度の転位密度のGaN結晶が得られることを開示する。
しかし、非特許文献1に開示された成長方法では、結晶成長速度が低く、また種結晶を用いていないため、大型の結晶を成長させることが困難である。また、特許文献1には、種結晶および成長させた結晶の転位密度についての記載および示唆がない。また、非特許文献2に開示されたNaフラックス法については、種結晶および成長させた結晶の転位密度についての記載があるが、成長させた結晶の転位密度の評価が部分的であった。
特開2003−206198号公報 H. Yamane, 他3名,"Preparation of GaN Single Crystals Using a Na Flux", Chem. Mater., Vol.9, No.2, (1997), p.413-416 F. Kawamura, 他7名,"Growth of a Two-Inch GaN Single Crystal Substrate Using the Na Flux Method", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45, No.43, (2006), p.L1136-L1138
上記のように、上記非特許文献2には、Naフラックス法により転位密度が108cm-2のオーダーのGaN基板上に転位密度が2.3×105cm-2のGaN結晶を成長させることが記載されている。本発明者らは、上記非特許文献2に開示されたNaフラックス法について詳細に検討した。この結果、そのNaフラックス法により成長させたGaN結晶は、上記のような転位密度が1×106cm-2以下の領域の他に、転位密度が1×106cm-2を大きく上回る領域を有しており、結晶全体の平均転位密度は1×106cm-2を上回るものであり、HVPE(ハイドライド気相成長)法により成長される市販のGaN結晶と同等程度の転位密度であった。
さらに、本発明者らは、Naフラックス法により転位密度が1×106cm-2以下のGaN基板上にGaN結晶を成長させた。かかるGaN結晶は、その転位密度を750℃でHClガスによって結晶表面をエッチングすることにより現れたピットの単位面積あたりの個数(エッチピット密度)により測定したところ、上記の非特許文献2の場合と同様に、転位密度が1×106cm-2以下の領域と転位密度が1×106cm-2を大きく上回る領域とを有しており、結晶全体の平均転位密度が1×106cm-2を上回っていた。
このことは、Naフラックス法によりGaN結晶などのIII族窒化物結晶を成長させると、そのIII族窒化物結晶は、基板の転位を引き継ぐだけでなく、結晶成長中において転位が増殖されていることを意味する。
そこで、本発明者らは、液相法において結晶成長中の転位の増殖が抑制される成長方法を提供することを目的として、Naフラックス法について詳細に検討したところ、III族窒化物結晶の結晶成長速度を十分小さく、たとえば2μm/hr以下とすることにより、結晶成長中の転位の増殖が抑制され、転位密度が低いIII族窒化物結晶が得られることを見出した。
しかし、Naフラックス法において、結晶成長速度を小さくすると、結晶成長が不安定になり、再現性よく転位密度の低いIII族窒化物結晶を得ることが困難である。
そこで、本発明は、結晶成長速度を小さくしても、再現性よく転位密度が低いIII族窒化物結晶の成長方法を提供することを目的とする。
本発明は、液相法によるIII族窒化物結晶の成長方法であって、下地基板を準備する工程と、下地基板の主面にIII族金属とアルカリ金属とを含む溶媒に窒素含有ガスを溶解させた溶液を接触させて、主面上にIII族窒化物結晶を成長させる工程と、を備え、III族窒化物結晶を成長させる工程の少なくとも初期において、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させるIII族窒化物結晶の成長方法である。ここで、速度変化率を0.1μm/hr2以下とすることができる。
本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法のIII族窒化物結晶を成長させる工程の少なくとも初期において、結晶成長速度を0μm/hrから徐々に、たとえば1μm/hr2以下さらに0.1μm/hr2以下の速度変化率で、増大させる方法として、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に徐々に変化させることができる。また、結晶成長速度が2μm/hr以下で成長した第1結晶領域の結晶成長厚さを1μm以上とすることができる。また、主面を(0001)Ga表面とし、第1結晶領域における転位密度を1×107cm-2以下とすることができる。さらに、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に徐々に変化させる方法として、雰囲気温度を5℃/hr以下の温度変化率で徐々に低減させること、または、雰囲気圧力を0.1MPa/hr以下の圧力変化率で徐々に増大させることができる。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法において、III族窒化物結晶を成長させる工程は、昇温サブ工程と、結晶成長準備サブ工程と、結晶成長サブ工程と、降温サブ工程と、を含むことができる。ここで、昇温サブ工程および結晶成長準備サブ工程において、下地基板と溶媒とを接触させないことができる。
また、本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法において、III族窒化物結晶を成長させる工程より得られたIII族窒化物結晶から、結晶成長速度が2μm/hrを超えて成長した第2結晶領域を除去して、結晶成長速度が2μm/hr以下で成長した第1結晶領域を表面に露出させる工程をさらに含むことができる。
さらに、本発明かかるIII族窒化物結晶の成長方法において、アルカリ金属としてNaおよびLiの少なくともいずれかを含むことができる。また、III族窒化物結晶をGaN結晶とすることができる。
本発明によれば、結晶成長速度を小さくしても、再現性よく転位密度が低いIII族窒化物結晶の成長方法を提供することができる。
図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法は、液相法によるIII族窒化物結晶10の成長方法であって、下地基板1を準備する工程と、下地基板1の主面1mに、III族金属とアルカリ金属とを含む溶媒3に窒素含有ガス5を溶解させた溶液6を接触させて、主面1m上にIII族窒化物結晶10を成長させる工程と、を備え、III族窒化物結晶10を成長させる工程において、結晶成長速度を0μm/hrから、1μm/hr2以下、好ましくは0.1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させる。ここで、速度変化率は、一定時間における速度の平均変化率(平均速度変化率)で表される。
本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法によれば、III族窒化物結晶10を成長させる工程において、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下、好ましくは0.1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させることにより、III族窒化物結晶の結晶成長速度を再現性よく安定して小さくすることができ、結晶成長中の転位の増殖が抑制され、転位密度が低いIII族窒化物結晶が得られる。
<結晶成長装置>
図1〜図3を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法に用いられる結晶成長装置は、たとえば、外容器29と、外容器29の内部に配置された断熱材27と、断熱材27の内部に配置されたヒータ25と、ヒータ25の内側に配置された内容器21とを備える。この内容器21内には、その中でIII族窒化物結晶10を成長させるための結晶成長容器23が配置されている。また、結晶成長容器23の開口部が蓋24で覆われていてもよい。
ここで、結晶成長容器23および蓋24の材料は、溶媒3および窒素含有ガス5と反応せず、機械的強度および耐熱性が高いものであれば特に制限はないが、pNB(熱分解窒化硼素)、Al23(酸化アルミニウム、アルミナともいう)などが好ましい。また、内容器21の材料は、機械的強度および耐熱性の高いものであれば特に制限はないが、ステンレス、耐熱鋼などが好ましい。また、外容器29の材料は、機械的強度および耐熱性の高いものであれば特に制限はないが、ステンレスなどが好ましい。また、断熱材27の材料は、機械的強度、耐熱性および断熱性の高いものであれば特に制限はないが、ウール状のグラファイトなどが好ましい。
また、本実施形態で用いられる結晶成長装置は、第1の配管41によって内容器21に繋がれている窒素含有ガス供給装置31と、第2の配管43によって外容器29に繋がれている加圧用ガス供給装置33と、第3の配管45によって外容器29に繋がれている真空排気装置35とを備える。ここで、第1の配管41には、窒素含有ガス5の供給流量を調節するためのバルブ41vが設けられ、バルブ41vより内容器21側の部分41aには第1の圧力計41pが設けられている。また、第2の配管43には、加圧用ガス7の供給流量を調節するためのバルブ43vが設けられ、バルブ43vより外容器29側の部分43aには第2の圧力計43pが設けられている。また、第3の配管45には、排気流量を調節するためのバルブ45vが設けられている。
さらに、第1の配管41のバルブ41vより内容器21側の部分41aと第3の配管45のバルブ45vより外容器29側の部分45aとを繋ぐ第4の配管47が設けられている。この第4の配管47にはバルブ47vが設けられている。なお、図1には、参考のため、第1の配管41のバルブ41vより窒素含有ガス供給装置31側の部分41b、第2の配管43のバルブ43vより加圧用ガス供給装置33側の部分43b、第3の配管45のバルブ45vより真空排気装置35側の部分45bも図示した。
また、図2および図3を参照して、本実施形態で用いられる結晶成長装置は、外部モータ(図示せず)によって、内容器21を傾けることにより下地基板1の主面1mと液化した溶媒3(融液)に窒素含有ガス5が溶解した溶液6とを接触しないようにすることができ(図2)、また、内容器21を水平にすることにより下地基板1の主面1mと液化した溶媒3(融液)に窒素含有ガス5が溶解した溶液6とを接触させることができる。
<下地基板を準備する工程>
図1〜図3を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法は、下地基板1を準備する工程を備える。ここで、準備される下地基板1は、その主面1m上にIII族窒化物結晶10を成長させることができるものであれば特に制限はないが、成長させるIII族窒化物結晶10と下地基板1との間の結晶格子および格子定数の整合性を高める観点から、一主面1mを有するIII族窒化物種結晶1aを含むことが好ましく、成長させるIII族窒化物結晶10とIII族窒化物種結晶1aとが同じ化学組成を有することがより好ましい。ここで、III族窒化物結晶と化学組成が同じとは、結晶を構成する原子の種類および比率が同じことをいう。
ここで、一主面1mを有するIII族窒化物種結晶1aを含む下地基板1とは、たとえば、基礎基板1b上にIII族窒化物種結晶1aが形成されているテンプレート基板、全体がIII族窒化物種結晶1aで形成されている自立基板などが挙げられる。また、III族窒化物結晶10としてAlxGayIn1-x-yN結晶(0≦x、0≦y、x+y≦1)をホモエピタキシャル成長させる場合には、下地基板1のIII族窒化物種結晶1aとしてAlxGayIn1-x-yN種結晶(0≦x、0≦y、x+y≦1)が用いられる。
ここで、下地基板1の主面1mは、特に制限はないが、高品質かつ大型の下地基板を入手し易い観点から、(0001)III族金属原子表面であることが好ましい。
また、下地基板1は、主面1mにおける転位密度は、特に制限はないが、1×107cm-2以下が好ましく、1×106cm-2以下がより好ましい。下地基板1の主面1mにおける転位密度を小さくすることにより、主面1m上に成長させるIII族窒化物結晶10が受け継ぐ転位を少なくすることができる。ここで、主面1mにおける転位とは、主面1mを貫通する転位をいい、主面1mにおいて点状に現われる。また、主面1mにおける転位密度とは、主面1mにおける平均の転位密度を意味する。かかる下地基板1の主面1mにおける転位密度は、下地基板1の主面1mをHClガスでエッチングして現れたピットの単位面積あたりの数(エッチピット密度)を微分干渉顕微鏡を用いて測定できる。
また、下地基板1の主面1mの面積は、特に制限はないが、1cm2以上であることが好ましく、10cm2以上であることがより好ましい。本実施形態の成長方法による結晶成長においては、主面の面積が大きい下地基板を用いることにより、大型で結晶成長表面10gにおける転位密度が低いIII族窒化物結晶が得られる。
本実施形態で準備される下地基板1は、HVPE法、MOCVD法などの気相法、溶液法、フラックス法などの液相法など、どのような方法によって成長されたものであってもよい。
<III族窒化物結晶を成長させる工程>
図1〜図3を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法は、下地基板1の主面1mに、III族金属とアルカリ金属とを含む溶媒3に窒素含有ガス5を溶解させた溶液6を接触させて、主面1m上にIII族窒化物結晶10を成長させる工程を備え、このIII族窒化物結晶を成長させる工程において、結晶成長速度を0μm/hrから増大させる。
本実施形態のIII族窒化物結晶を成長させる工程においては、III族金属と、アルカリ金属とを含む溶媒3が用いられる。溶媒3には、III族金属に加えてアルカリ金属が含まれているため、III族金属を含み不純物濃度(たとえば溶媒全体に対して1モル%未満の濃度)以上にはアルカリ金属を含まない溶媒に比べて、III族窒化物結晶の結晶成長温度および/または結晶成長圧力を低減することができる。これは、溶媒3に含まれているアルカリ金属が、溶媒3への窒素含有ガス5の溶解を促進させるためと考えられる。アルカリ金属は、特に制限はないが、III族窒化物結晶の結晶成長温度および/または結晶成長圧力を低減する効果が大きい観点から、NaおよびLiの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
溶媒3に含まれるIII族金属MIIIとアルカリ金属MAとのモル比は、III族窒化物結晶の結晶成長温度および/または結晶成長圧力を低減させ、転位の増殖を抑制して転位密度の低いIII族窒化物結晶を成長させるのに適正な結晶成長速度(たとえば、0.1μm/hr以上2μm/hr以下)とする観点から、たとえば、MIII:MA=90:10〜10:90が好ましく、MIII:MA=50:50〜20:80がより好ましい。MIII:MA=90:10よりIII族金属MIIIのモル比が大きくても、MIII:MA=10:90よりアルカリ金属MAのモル比が大きくても、結晶成長速度が低下しすぎてしまう。
本実施形態のIII族窒化物結晶を成長させる工程の少なくとも初期においては、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させる。このように結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させることにより、結晶成長の少なくとも初期段階において、III族窒化物結晶10の転位が増殖しない2μm/hr以下の結晶成長速度がかならず現れる。この2μm/hr以下の結晶成長速度で成長する結晶領域を大きくする観点から、結晶成長速度の速度変化率は、0.1μm/hr2以下が好ましく、0.05μm/hr2以下がより好ましく、0.01μm/hr2以下がさらに好ましい。ここで、結晶成長速度の速度変化率は、各結晶成長時間における平均結晶成長速度を結晶成長時間で除することにより測定することができる。
この2μm/hr以下の結晶成長速度で成長した結晶領域(以下、第1結晶領域ともいう)は、転位が増殖することなく結晶成長した領域であるため、下地基板の転位密度と同等以下の低い転位密度を有する。このため、成長させたIII族窒化物結晶において複数の結晶成長厚さの位置にある平面における転位密度を測定することにより第1結晶領域の結晶成長厚さを知ることができる。
ここで、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下好ましくは0.1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させる方法としては、特に制限はないが、たとえば結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に徐々に変化させることができる。本実施形態のフラックス法においては、結晶成長が起こる条件は、溶媒3に含まれるIII族金属MIIIとアルカリ金属MAとのモル比、雰囲気温度および雰囲気圧力によって決まる。たとえば、III族金属MIIIとアルカリ金属MAとのモル比がMIII:MA=90:10〜10:90のとき、雰囲気温度が600℃〜900℃で雰囲気圧力が0.2MPa〜10MPaのとき結晶成長が起こりやすい。結晶成長が起こる雰囲気温度を結晶成長温度、結晶成長が起こる圧力を結晶成長圧力というとき、雰囲気温度が結晶成長温度範囲より高くても低くても結晶成長は起こらず、雰囲気圧力が結晶成長圧力範囲より高くても低くても結晶成長は起こらない。
また、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に徐々に変化させる方法としては、特に制限はないが、結晶成長の条件操作が容易な観点から、雰囲気温度を結晶成長温度範囲より高い温度から5℃/hr以下の温度変化率で徐々に低減させること、または、雰囲気圧力を結晶成長圧力範囲より低い圧力から0.1MPa/hr以下の圧力変化率で徐々に増大させることが好ましい。
図1〜図6を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶を成長させる工程は、たとえば、以下の複数のサブ工程によって行なわれる。
(昇温サブ工程)
まず、結晶成長容器23内に、下地基板1とIII族金属およびアルカリ金属を含む溶媒3とを配置して、窒素含有ガス5を供給することにより雰囲気圧力を所定圧力(図4〜図6のいずれかのP1)として、ヒータ25を用いて雰囲気温度を室温T0から所定温度(図4もしくは図6のTまたは図5のT1)まで所定時間H1をかけて昇温する(昇温サブ工程S1)。ここで、所定温度Tおよび所定温度T1はいずれも室温T0より高い。また、下地基板1は、その主面1mを上に向けて結晶成長容器23の底に配置する。結晶成長容器23には、特に制限はないが、耐熱性の観点から、Al23製の坩堝などが好ましく用いられる。III族窒化物結晶としてGaN結晶を成長させる場合には、下地基板1としてGaN基板が好ましく用いられる。なお、結晶成長容器23の開口部を蓋24で覆うことが、溶媒3中のアルカリ金属の蒸発を抑制する観点から好ましい。
また、溶媒は室温T0(たとえば25℃)では固体であるが、昇温によって液化する。液化した溶媒3に窒素含有ガス5が溶解した溶液6が得られる。III族金属とアルカリ金属とを含む溶媒3には、制限はないが、純度の高いIII族窒化物結晶を成長させる観点から、それぞれ純度が高いものが好ましい。たとえば、高純度のGaN結晶を成長させるためには、高純度の金属Gaと高純度の金属Naとを用いることが好ましい。この場合、金属Gaの純度は、99モル%以上が好ましく、99.999モル%以上がより好ましい。金属Naの純度は、99モル%以上が好ましく、99.99モル%以上がより好ましい。
ここで、図3を参照して、III族金属とアルカリ金属とを含む溶媒3の量は、特に制限はないが、液化した溶媒3(融液)の深さが下地基板1の主面1mから1mm以上50mm以下であることが好ましい。かかる深さが1mmより小さいと溶媒3(融液)の表面張力のため下地基板1の全面を溶媒3(融液)が覆わない恐れがあり、50mmより大きいと溶媒3(融液)の液面からの窒素の供給が不足してしまうためである。
また、昇温サブ工程S1においては、雰囲気圧力および雰囲気温度(たとえば、図4における所定圧力P1および所定温度T、図5における所定圧力P1および所定温度T1、図6における所定圧力P1および所定温度T)は、III族窒化物結晶が成長しない条件を満たすものとする。
なお、昇温サブ工程中は、内容器21への窒素含有ガス5の供給量および外容器29への加圧用ガス7の供給流量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
(結晶成長準備サブ工程)
次に、結晶成長容器23への窒素含有ガス5の供給流量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定圧力(図4〜図6のいずれかのP2)かつ雰囲気温度を所定温度(図4もしくは図6のTまたは図5のT1)で所定時間H2保持する(結晶成長準備サブ工程S2)。ここで、所定圧力P2は所定圧力P1より高い。これにより、下地基板1と、溶媒3に窒素含有ガス5が溶解した溶液6の状態を一定にして、結晶開始の初期条件を一定にすることができる。
結晶成長準備サブ工程S2においては、雰囲気圧力および雰囲気温度(たとえば、図4における所定圧力P2および所定温度T、図5における所定圧力P2および所定温度T1、図6における所定圧力P2および所定温度T)は、III族窒化物結晶が成長しない条件を満たすものとする。
なお、結晶成長準備サブ工程中においても、内容器21への窒素含有ガス5の供給流量および外容器29への加圧用ガス7の供給流量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
(結晶成長サブ工程)
次に、図4を参照して、結晶成長容器23への窒素含有ガス5の供給流量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定圧力P3かつ雰囲気温度を所定温度Tで所定時間H3保持して、III族窒化物結晶10を成長させる(結晶成長サブ工程S3)。ここで、所定圧力P3は所定圧力P2より高い。
図4は、所定温度Tで結晶成長をさせる場合のシーケンス制御(第1シーケンス制御)を示すチャートである。かかる結晶成長においては、結晶成長準備サブ工程における結晶成長が起こらない条件(所定圧力P2かつ所定温度T)から結晶成長サブ工程における結晶成長が起こる条件(所定圧力P3かつ所定温度T)に変化させることにより、結晶成長サブ工程の開始とともに結晶成長速度が0μm/hrから増大することにより結晶成長する。このとき、結晶成長の初期段階における速度変化率は、所定圧力P3と所定圧力P2との圧力差|P3−P2|により異なるが、|P3−P2|を0.5MPa以下とすることにより結晶成長速度が0μm/hrから1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させることができる。この結晶成長の初期段階において、結晶成長速度が0μm/hrより大きく2μm/hr以下で成長する第1結晶領域10aが再現性よく出現する。かかる第1結晶領域10aは、転位を増殖することなく結晶成長した領域であるため、下地基板1と同等以下の低い転位密度を有する。
また、図5を参照して、結晶成長容器23への窒素含有ガス5の供給流量およびヒータ25による加熱量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定圧力P3で保持維持するとともに、雰囲気温度を所定温度T1から所定温度T2まで所定時間H3をかけて連続的に徐々に低減させて、III族窒化物結晶10を成長させる(結晶成長サブ工程S3)。ここで、所定温度T2は、所定温度T1より低く、室温T0より高い。
図5は、雰囲気温度を所定温度T1から所定温度T2に徐々に低減させて結晶成長を成長させる場合のシーケンス制御(第2シーケンス制御)を示すチャートである。かかる結晶成長においては、結晶成長サブ工程において結晶成長が起こらない条件(所定圧力P3かつ所定温度T1)から結晶成長が起こる条件(所定圧力P3かつ所定温度T2)に徐々に変化することにより、結晶成長サブ工程において結晶成長速度が0μm/hrから1μm/hr2以下さらには0.1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大することにより結晶成長する。この結晶成長の初期段階において、結晶成長速度が0μm/hrより大きく2μm/hr以下で成長する第1結晶領域10aが再現性よく出現する。かかる第1結晶領域10aは、転位を増殖することなく結晶成長した領域であるため、下地基板1と同等以下の低い転位密度を有する。
なお、図5においては、結晶成長が起こらない条件(所定圧力P3かつ所定温度T1)から結晶成長が起こる条件(所定圧力P3かつ所定温度T2)への変化が結晶成長サブ工程全体で行われているが、結晶成長の初期段階において、結晶成長速度が0μm/hrより大きく2μm/hr以下で成長する第1結晶領域10aが再現性よく出現させる観点から、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件への変化は結晶成長サブ工程の少なくとも初期において行われれば足りる。
このような第2のシーケンス制御において、雰囲気温度の温度変化率は、特に制限はないが、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下さらには0.1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させやすい観点から、5℃/hr以下が好ましく、1℃/hr以下がより好ましく、0.5℃/hr以下がさらに好ましい。
ここで、上記第1シーケンス制御においては、結晶成長準備サブ工程から結晶成長サブ工程に移る際に雰囲気圧力を不連続に一度に変化させることによって、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に変化させている。これに対し、上記第2シーケンス制御においては、結晶成長サブ工程中に雰囲気温度を連続的に徐々に変化させることよって、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に変化させている。このため、第2シーケンス制御は、第1シーケンス制御に比べて、2μm/hr以下の結晶成長速度で成長する第1結晶領域10aをより再現性よく出現させることができる。
また、図6を参照して、結晶成長容器23への窒素含有ガス5の供給流量およびヒータ25による加熱量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定温度Tで保持維持するとともに、雰囲気圧力を所定圧力P3から所定圧力P4まで所定時間H3をかけて連続的に徐々に増大させて、III族窒化物結晶10を成長させる(結晶成長サブ工程S3)。ここで、所定圧力P4は所定圧力P3より高い。
図6は、雰囲気圧力を所定圧力P3から所定圧力P4に徐々に増大させて結晶成長を成長させる場合のシーケンス制御(第3シーケンス制御)を示すチャートである。かかる結晶成長においては、結晶成長サブ工程において結晶成長が起こらない条件(所定圧力P3かつ所定温度T)から結晶成長が起こる条件(所定圧力P4かつ所定温度T)に徐々に変化することにより、結晶成長サブ工程において結晶成長速度が0μm/hrから1μm/hr2以下さらには0.1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大することにより結晶成長する。この結晶成長の初期段階において、結晶成長速度が0μm/hrより大きく2μm/hr以下で成長する第1結晶領域10aが再現性よく出現する。かかる第1結晶領域10aは、転位を増殖することなく結晶成長した領域であるため、下地基板1と同等以下の低い転位密度を有する。
なお、図6においては、結晶成長が起こらない条件(所定圧力P3かつ所定温度T)から結晶成長が起こる条件(所定圧力P4かつ所定温度T)への変化が結晶成長サブ工程全体で行われているが、結晶成長の初期段階において、結晶成長速度が0μm/hrより大きく2μm/hr以下で成長する第1結晶領域10aが再現性よく出現させる観点から、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件への変化は結晶成長サブ工程の少なくとも初期において行われれば足りる。
このような第3のシーケンス制御において、雰囲気圧力の圧力変化率は、特に制限はないが、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下さらには0.1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させやすい観点から、0.1MPa/hr以下が好ましく、0.01MPa/hr以下がより好ましく、0.005MPa/hr以下がさらに好ましい。
ここで、上記第1シーケンス制御においては、結晶成長準備サブ工程から結晶成長サブ工程に移る際に雰囲気圧力を不連続に一度に変化させることによって、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に変化させている。これに対し、上記第3シーケンス制御においては、結晶成長サブ工程中に雰囲気圧力を連続的に徐々に変化させることよって、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に変化させている。このため、第3シーケンス制御は、第1シーケンス制御に比べて、2μm/hr以下の結晶成長速度で成長する第1結晶領域をより再現性よく出現させることができる。
なお、結晶成長サブ工程中においても、内容器21への窒素含有ガス5の供給量および外容器29への加圧用ガス7の供給量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
(降温サブ工程)
次に、結晶成長容器23へのヒータ25による加熱量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定圧力(図4もしくは図5のP3または図6のP4)で保持するとともに、雰囲気温度を所定温度(図4もしくは図6のTまたは図5のT2)から室温T0まで所定時間H4をかけて降温する(降温サブ工程S4)。
なお、降温サブ工程中においても、内容器21への窒素含有ガス5の供給流量および外容器29への加圧用ガス7の供給流量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
さらに、結晶成長容器23を所定圧力(図4もしくは図5のP3または図6のP4)から大気圧に減圧して、下地基板1の主面1m上に成長したIII族窒化物結晶10を取り出すことができる。
(下地基板の主面と溶液との接触)
上記の昇温サブ工程、結晶成長準備サブ工程、結晶成長サブ工程および降温サブ工程のすべてのサブ工程を、図3に示すように、下地基板1の主面1mと液化した溶媒3に窒素含有ガス5を溶解させた溶液6とを接触させた状態で行なうことができる。
ここで、結晶成長サブ工程において、結晶成長速度を確実に0μm/hrから増大させるため、昇温サブ工程および結晶成長準備サブ工程において、結晶成長が起こりえないようにする観点から、図2に示すように、下地基板1の主面1mと溶媒3に窒素含有ガス5を溶解させた溶液6とを接触させないことが好ましい。下地基板1の主面1mと溶液6とを接触させない方法として、特に制限はないが、図2に示すように、内容器21を傾けて結晶成長容器23を傾けることができる。
(第1結晶領域の結晶成長厚さ)
本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法によれば、III族窒化物結晶10の結晶成長の初期段階において、2μm/hr以下の結晶成長速度で成長した結晶領域(第1結晶領域10a)が再現性よく出現する。かかる第1結晶領域の結晶成長厚さ(結晶成長方向の厚さをいう、以下同じ)は、結晶成長条件により大きくすることができ、第1結晶領域を容易に入手する観点から、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。
(第1結晶領域の転位密度)
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法において、半導体デバイスに広く適用される結晶を成長させる観点から、下地基板1の主面1mは(0001)Ga表面が好ましい。また、高特性の半導体デバイスの特性を製造する観点から、第1結晶領域における転位密度は、1×107cm-2以下が好ましく、1×106cm-2以下がより好ましく、5×105cm-2以下がさらに好ましい。ここで、第1結晶領域における転位密度は、その主面をHClガスでエッチングして現れたピットの単位面積あたりの数を微分干渉顕微鏡を用いて測定することができる。
(第1結晶領域を表面に露出させる工程)
また、図3を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法において、III族窒化物結晶を成長させる工程より得られたIII族窒化物結晶10から、結晶成長速度が2μm/hrを超えて成長した第2結晶領域10bを除去して、結晶成長速度が2μm/hr以下で成長した第1結晶領域10aを表面に露出させる工程をさらに含むことができる。転位密度が低い第1結晶領域を表面に露出させることにより、第1結晶領域上にさらにIII族窒化物結晶を成長させることにより、転位密度が低いIII族窒化物結晶が得られる。
本実施形態の成長方法により得られたIII族窒化物結晶を加工して半導体デバイス用基板として用いることができる。しかし、本実施形態の成長方法は、結晶の成長速度が低いことから、厚いIII族窒化物結晶を得るには有利ではない。このため、本実施形態の成長方法により得られたIII族窒化物結晶10から、2μm/hrを超える結晶成長速度で成長して転位密度が増大した第2結晶領域10bを除去して、2μm/hr以下の結晶成長速度で成長して転位密度が低く維持されている第1結晶領域10aを表面に露出させて、この第1結晶領域10a上に結晶成長速度が高い成長方法(たとえば、HVPE法など)を用いて成長させた厚さの厚いIII族窒化物結晶を加工して、多数の半導体デバイス用基板を製造することが有利である
(実施例1)
1.下地基板の準備
図1および図2を参照して、下地基板1として、HVPE法で作製した主面1mが(0001)Ga原子表面で直径が2インチ(50.8mm)で厚さ500μmの自立性のGaN基板を5枚準備した(基板の準備工程)。各GaN基板の主面1mにおける転位密度は、基板の主面をHClガスでエッチングして現れたピットの単位面積あたりの数を微分干渉顕微鏡を用いて測定したところ、5×105cm-2であった。ここで、転位密度の測定においては、GaN基板の主面1mの100μm×100μmの正方形領域における貫通転位の密度を、ピッチ5mmの格子点上の81箇所で測定し、それらの平均を算出した。かかる転位密度の測定方法をEPD(エッチピット密度)測定法とも呼ぶ。
2.GaN結晶の成長
(下地基板および溶媒の配置)
図2を参照して、まず、各GaN基板(下地基板1)を、その平坦な主面1mを上に向けて、内径130mmで深さ100mmのAl23製の坩堝(結晶成長容器23)の底に配置した。また、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内に、純度99.9999モル%の金属Gaと純度99.99モル%の金属Na(溶媒3)を、金属Ga(III族金属MIII)と金属Na(アルカリ金属MA)のモル比がMIII:MA=3:7の割合で、溶融したときの溶媒3の表面からGaN基板(下地基板1)の主面1mまでの深さが5mmになる量を入れた。次いで、GaN基板(下地基板1)ならびに金属Gaおよび金属Na(溶媒3)が収容されたAl23製の坩堝(結晶成長容器23)を内容器21内に配置した。次いで、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)の上にAl23製の蓋24を配置した。ここで、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)は内容器21との通気が確保されており、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力は内容器21内の雰囲気圧力と等しくなる。また、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)は内容器21内に配置されているため、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気温度は内容器21内の雰囲気温度と等しくなる。
(真空排気)
次に、図1を参照して、真空ポンプ(真空排気装置35)を用いて、内容器21および外容器29の内部を真空排気した。真空排気後の内容器21および外容器29の真空度は、1×10-3Paであった。
(昇温サブ工程)
次に、図1、図2および図4を参照して、内容器21を傾けた状態で、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ1MPa(所定圧力P1)および0.95MPaとなるように、それぞれ窒素含有ガス5および加圧用ガス7を供給して、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を1MPa(所定圧力P1)とした。内容器21内に供給される窒素含有ガス5には、純度が99.99999モル%の高純度の窒素ガスを用いた。一方、外容器29に供給される加圧用ガス7には、純度が99.9999モル%の窒素ガスを用いた。次いで、図1、図2および図4を参照して、内容器21を傾けた状態で、抵抗加熱方式のヒータ25を用いて、内容器21および外容器29の内部を2時間(所定時間H1)加熱して、内容器21内の雰囲気温度を30℃(室温T0)から865℃(所定温度T)に昇温した(昇温サブ工程S1)。かかる昇温サブ工程S1において、金属Gaおよび金属Naが融解したGa−Na融液(溶媒3)が形成され、Ga−Na融液(溶媒3)に高純度の窒素ガス(窒素含有ガス5)が溶解した溶液6が形成された。
ここで、雰囲気圧力が1MPa(所定圧力P1)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。また、図2に示すように、昇温サブ工程1Sにおいては、内容器21が傾けてあり、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内のGaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とは接触していなかった。このため、昇温サブ工程においては、結晶成長は起こっていないものと考えられる。
(結晶成長準備サブ工程)
次に、図1、図2および図4を参照して、内容器21を傾けた状態で、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ2MPa(所定圧力P2)および1.95MPaとなるように、それぞれ窒素含有ガス5および加圧用ガス7を供給して、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を2MPa(所定圧力P2)かつ雰囲気温度を865℃(所定温度T)で50時間(所定時間H2)保持した(結晶成長準備サブ工程S2)。
ここで、雰囲気圧力が2MPa(所定圧力P2)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。また、図2に示すように、結晶成長準備サブ工程S2においては、内容器21が傾けてあり、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内のGaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とは接触していなかった。このため、結晶成長準備サブ工程S2においては、結晶成長は起こっていないものと考えられる。
(結晶成長サブ工程)
次に、図1、図3および図4を参照して、内容器21を水平にした状態、すなわち、GaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とを接触させた状態で、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ3MPa(所定圧力P3)および2.95MPaとなるように、それぞれ窒素含有ガス5および加圧用ガス7を供給して、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)かつ雰囲気温度を865℃(所定温度T)で200時間(所定時間H3)保持して、GaN結晶(III族窒化物結晶10)を成長させた(結晶成長サブ工程S3)。
(降温サブ工程)
次に、図1、図3および図4を参照して、ヒータ25による加熱を止めて、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)に保持しながら雰囲気温度を865℃(所定温度T)から30℃(室温T0)まで、8時間(所定時間H4)かけて降温した(降温サブ工程S4)。次いで、内容器21内のAl23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)から大気圧に低減して、GaN基板(下地基板1)上に成長したGaN結晶(III族窒化物結晶10)を取りだした。このとき、外容器29内の雰囲気圧力は、内容器21内の雰囲気圧力に比べて、0〜0.05MPa低くなるように調整した。
(GaN結晶)
上記5つのGaN基板(下地基板1)についてそれぞれ得られた5つのGaN結晶(サンプルNo.1−1、1−2、1−3、1−4および1−5)の結晶成長厚さをサンプル断面の光学顕微鏡観察もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定し、その結晶成長厚さを結晶成長時間である200時間(所定時間H3)で除することにより、平均結晶成長速度Vを算出した。また、GaN結晶の結晶成長厚さ200μmおよび50μmの位置にある平面における転位密度を、GaN基板(下地基板1)の平均転位密度の測定と同様の方法で測定した。結果を表1にまとめた。
また、結晶成長時間をそれぞれ10時間、15時間または20時間としたこと以外は上記と同様にして、各5つのGaN結晶を成長させた。まず、結晶成長時間が15時間の5つのGaN結晶の厚さの平均値、最小値および最大値から10時間の5つのGaN結晶の成長厚さの平均値、最大値および最小値をそれぞれ引いた値を結晶成長時間差である5時間で除することにより結晶成長サブ工程開始10〜15時間後の平均結晶成長速度V1の平均値、最小値および最大値をそれぞれ算出した。
次いで、結晶成長時間が20時間の5つのGaN結晶の厚さの平均値、最小値および最大値から15時間の5つのGaN結晶の成長厚さの平均値、最大値および最小値をそれぞれ引いた値を結晶成長時間差である5時間で除することにより結晶成長サブ工程開始15〜20時間後の平均結晶成長速度V2の平均値、最小値および最大値をそれぞれ算出した。
さらに、結晶成長サブ工程開始15〜20時間後の平均結晶成長速度V2の平均値、最小値および最大値から結晶成長サブ工程開始10〜15時間後の平均結晶成長速度V1の平均値、最大値および最小値をそれぞれ引いた値を結晶成長時間差である5時間で除することにより、平均速度変化率ΔVの平均値、最小値および最大値を算出した。
ここで、平均速度変化率ΔVの算出に、結晶成長サブ工程開始10〜15時間後の平均結晶成長速度V1および結晶成長サブ工程開始15〜20時間後の平均結晶成長速度V2を用いたのは、結晶成長サブ工程開始0〜10時間後においては、結晶成長を開始したサンプルと結晶成長を開始していないサンプルとの間のバラツキが大きく速度変化率の算出に適さないと考えたからである。また、結晶成長サブ工程開始後10〜20時間であれば、ほぼ大部分のサンプルについて結晶成長開始されサンプル間のバラツキが小さく、また結晶成長開始直後とみなせることから、速度変化率の算出に適すると考えたからである。
Figure 2010100449
Figure 2010100449
表1を参照して、一定の雰囲気温度(所定温度T)で結晶成長させた場合は、同一のサンプルにおいて結晶成長厚さ50μmおよび200μmの位置にある平面における転位密度は同じであったが、サンプル間で転位密度のバラツキが大きく、GaN結晶の転位密度が下地基板の転位密度と同等の5×105cm-2のものは1サンプルのみであった。また、各サンプル間における平均結晶成長速度(成長させた結晶全体において平均した結晶成長速度という、以下同じ)および第1結晶領域(転位密度が下地基板の転位密度と同等以下であり2μm/hr以下の結晶成長速度で成長したと考えられる領域)の厚さのバラツキが大きく、結晶成長厚さが50μm以上の第1結晶領域の再現率は20%であった。また、表2を参照して、平均速度変化率は、平均値が0.4μm/hr2、最小値が0.3μm/hr2、最大値が0.6μm/hr2であり、1μm/hr2以下であった。すなわち、平均速度変化率を1μm/hr2以下とすることにより、結晶成長厚さが50μm以上の第1結晶領域が発現することがわかった。
(実施例2)
1.下地基板の準備
実施例1と同様にして、下地基板1として、主面1mが(0001)Ga原子表面で直径が2インチ(50.8mm)で厚さが500μmの自立性のGaN基板を5枚準備した。各GaN基板の主面1mにおける転位密度は、5×105cm-2であった。
2.GaN結晶の成長
実施例1と同様にして、内容器21内のAl23製の坩堝(結晶成長容器23)内にGaN基板(下地基板1)ならびに金属Gaおよび金属Na(溶媒3)を配置し、内容器21および外容器29の内部を真空排気した。真空排気後の内容器21および外容器29の真空度は、1×10-3Paであった。
(昇温サブ工程)
次に、図1、図2および図5を参照して、内容器21内の雰囲気温度を30℃(室温T0)から880℃(所定温度T1)に昇温したこと以外は、実施例1と同様の昇温サブ工程を行なった。ここで、雰囲気圧力が1MPa(所定圧力P1)かつ雰囲気温度が880℃(所定温度T1)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。また、図2に示すように、昇温サブ工程においては、内容器21が傾けてあり、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内のGaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とは接触していなかった。このため、昇温サブ工程においては、結晶成長は起こっていないものと考えられる。
(結晶成長準備サブ工程)
次に、図1、図2および図5を参照して、保持した雰囲気温度が880℃(所定温度T1)であること以外は、実施例1と同様の結晶成長準備サブ工程をおこなった。ここで、雰囲気圧力が2MPa(所定圧力P2)かつ雰囲気温度が880℃(所定温度T1)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。また、図2に示すように、結晶成長準備サブ工程においては、内容器21が傾けてあり、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内のGaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とは接触していなかった。このため、結晶成長準備サブ工程においては、結晶成長は起こっていないものと考えられる。
(結晶成長サブ工程)
次に、図1、図3および図5を参照して、内容器21を水平にした状態、すなわち、GaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とを接触させた状態で、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ3MPa(所定圧力P3)および2.95MPaとなるように、それぞれの容器内の雰囲気圧力が3MPa(所定圧力P3)となるようにそれぞれ窒素含有ガス5および加圧用ガス7を供給しながら、内容器21へのヒータ25による加熱量を減少させて、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)に保持するとともに、雰囲気温度を880℃(所定温度T1)から850℃(所定温度T2)まで200時間(所定時間H3)かけて(すなわち0.15℃/hrの温度変化率で)低減させて、GaN結晶(III族窒化物結晶10)を成長させた。
ここで、結晶成長サブ工程における初期条件(雰囲気圧力が3MPa(所定圧力P3)かつ雰囲気温度が880℃(所定温度T1)の条件)は結晶成長が起こらない条件であり、終期条件(雰囲気圧力が3MPa(所定圧力P3)かつ雰囲気温度が850℃(所定温度T2)の条件)は結晶成長が起こる条件である。すなわち、本実施例においては、結晶成長サブ工程中に結晶成長速度が0μm/hrから増大している。
(降温サブ工程)
次に、図1、図3および図5を参照して、ヒータ25による加熱を止めて、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)に保持しながら雰囲気温度を850℃(所定温度T2)から30℃(室温T0)まで、8時間(所定時間H4)かけて降温した。次いで、実施例1と同様に、内容器21内のAl23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)から大気圧に低減して、GaN基板(下地基板1)上に成長したGaN結晶(III族窒化物結晶10)を取りだした。このとき、外容器29内の雰囲気圧力は、内容器21内の雰囲気圧力に比べて、0〜0.05MPa低くなるように調整した。
(GaN結晶)
実施例1と同様にして、上記5つのGaN基板(下地基板1)についてそれぞれ得られた5つのGaN結晶(サンプルNo.2−1、2−2、2−3、2−4および2−5)の結晶成長速度を算出し、GaN結晶の結晶成長厚さ200μmおよび50μmの位置にある平面における転位密度を測定して、結果を表3にまとめた。また、実施例1と同様にして、平均速度変化率の平均値、最小値および最大値を算出して、結果を表4にまとめた。
Figure 2010100449
Figure 2010100449
表3を参照して、雰囲気温度をT1からT2まで低減させながら結晶成長させた場合は、各サンプル間における平均結晶成長速度のバラツキは大きかった。また、結晶成長厚さ200μmの位置の平面における転位密度はいずれのサンプルも1×106cm-2を超えていたが、結晶成長厚さ50μmの位置の平面における転位密度は4つのサンプルで下地基板と同等の1×105cm-2であった。そして、結晶成長厚さが50μm以上の第1結晶領域の再現率は80%と非常に高かった。このことから、本実施例においては、第1結晶領域が再現性よく発現したことがわかる。また、表4を参照して、平均速度変化率は、平均値が0.04μm/hr2、最小値が0.01μm/hr2、最大値が0.07μm/hr2であり、0.1μm/hr2以下であった。すなわち、平均速度変化率を0.1μm/hr2以下とすることにより、結晶成長厚さが50μm以上の第1結晶領域の再現率が非常に高くなることがわかった。
(実施例3)
1.下地基板の準備
実施例1と同様にして、下地基板1として、主面1mが(0001)Ga原子表面で直径が2インチ(50.8mm)で厚さが500μmの自立性のGaN基板を5枚準備した。各GaN基板の主面1mにおける転位密度は、5×105cm-2であった。
2.GaN結晶の成長
実施例1と同様にして、内容器21内のAl23製の坩堝(結晶成長容器23)内にGaN基板(下地基板1)ならびに金属Gaおよび金属Na(溶媒3)を配置し、内容器21および外容器29の内部を真空排気した。真空排気後の内容器21および外容器29の真空度は、1×10-3Paであった。
(昇温サブ工程)
次に、図1、図2および図6を参照して、実施例1と同様の昇温サブ工程を行なった。ここで、雰囲気圧力が1MPa(所定圧力P1)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。また、図2に示すように、昇温サブ工程においては、内容器21が傾けてあり、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内のGaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とは接触していなかった。このため、昇温サブ工程においては、結晶成長は起こっていないものと考えられる。
(結晶成長準備サブ工程)
次に、図1、図2および図6を参照して、実施例1と同様の結晶成長準備サブ工程をおこなった。ここで、雰囲気圧力が2MPa(所定圧力P2)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。また、図2に示すように、結晶成長準備サブ工程においては、内容器21が傾けてあり、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内のGaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とは接触していなかった。このため、結晶成長準備サブ工程においては、結晶成長は起こっていないものと考えられる。
(結晶成長サブ工程)
次に、図1、図3および図6を参照して、内容器21を水平にした状態、すなわち、GaN基板(下地基板1)の主面1mと溶液6とを接触させた状態で、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ2.5MPa(所定圧力P3)および2.45MPaとなるように、それぞれ窒素含有ガス5および加圧用ガス7を供給した。
次いで、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気温度を865℃(所定温度T)に保持するとともに、内容器21内に窒素含有ガス5を供給しながら、内容器21内の雰囲気圧力を2.5MPa(所定圧力P3)から3.5MPa(所定圧力P4)まで200時間(所定時間H3)かけて(すなわち0.005MPa/hrの圧力変化率で)増大させて、GaN結晶(III族窒化物結晶10)を成長させた。このとき、外容器29内の雰囲気圧力は、内容器21内の雰囲気圧力に比べて0.05MPa低くなるように調整した。
ここで、結晶成長サブ工程における初期条件(雰囲気圧力が2.5MPa(所定圧力P3)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件)は結晶成長が起こらない条件であり、終期条件(雰囲気圧力が3.5MPa(所定圧力P4)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件)は結晶成長が起こる条件である。すなわち、本実施例においては、結晶成長サブ工程中に結晶成長速度が0μm/hrから増大している。
(降温サブ工程)
次に、図1、図3および図5を参照して、ヒータ25による加熱を止めて、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3.5MPa(所定圧力P4)に保持しながら雰囲気温度を865℃(所定温度T)から30℃(室温T0)まで、8時間(所定時間H4)かけて降温した。次いで、実施例1と同様に、内容器21内のAl23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)から大気圧に低減して、GaN基板(下地基板1)上に成長したGaN結晶(III族窒化物結晶10)を取りだした。このとき、外容器29内の雰囲気圧力は、内容器21内の雰囲気圧力に比べて、0〜0.05MPa低くなるように調整した。
(GaN結晶)
実施例1と同様にして、上記5つのGaN基板(下地基板1)についてそれぞれ得られた5つのGaN結晶(サンプルNo.3−1、3−2、3−3、3−4および3−5)の結晶成長速度を算出し、GaN結晶の結晶成長厚さ200μmおよび50μmの位置にある平面における転位密度を測定して、結果を表5にまとめた。また、実施例1と同様にして、平均速度変化率の平均値、最小値および最大値を算出して、結果を表6にまとめた。
Figure 2010100449
Figure 2010100449
表5を参照して、雰囲気圧力をP3からP4まで増大させながら結晶成長させた場合は、各サンプル間における平均結晶成長速度のバラツキは大きかった。また、結晶成長厚さ200μmの位置の平面における転位密度はいずれのサンプルも1×106cm-2を超えていたが、結晶成長厚さ50μmの位置の平面における転位密度は4つのサンプルで下地基板と同等の1×105cm-2であった。そして、結晶成長厚さが50μm以上の第1結晶領域の再現率は80%と非常に高かった。このことから、本実施例においては、第1結晶領域が再現性よく発現したことがわかる。また、表6を参照して、平均速度変化率は、平均値が0.03μm/hr2、最小値が0.01μm/hr2、最大値が0.06μm/hr2であり、0.1μm/hr2以下であった。すなわち、平均速度変化率を0.1μm/hr2以下とすることにより、結晶成長厚さが50μm以上の第1結晶領域の再現率が非常に高くなることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
本発明にかかる成長方法により得られたIII族窒化物結晶およびこの結晶を基板として他の成長方法により得られるIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(高電子移動度トランジスタ)などの電子素子、微小電子源(エミッタ)、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視-紫外光検出器などの半導体センサ、SAW(表面弾性波)デバイス、振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、圧電アクチュエータなどのデバイス用の基板として広く用いられる。
本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法の一実施形態を示す概略断面図である。 図1のII部分を傾けた場合の拡大概略断面図である。 図1のIII部分の拡大概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法におけるシーケンス制御の一例を示すチャートである。 本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法におけるシーケンス制御の他の例を示すチャートである。 本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法におけるシーケンス制御のさらに他の例を示すチャートである。
符号の説明
1 下地基板、1a III族窒化物種結晶、1b 基礎基板、1m 主面、3 溶媒、5 窒素含有ガス、6 溶液、7 加圧用ガス、10 III族窒化物結晶、10a 第1結晶領域、10b 第2結晶領域、10g 結晶成長表面、10t 平面、21 内容器、23 結晶成長容器、24 蓋、25 ヒータ、27 断熱材、29 外容器、31 窒素含有ガス供給装置、33 加圧用ガス供給装置、35 真空排気装置、41 第1の配管、41a バルブより内容器側の部分、41b バルブより窒素含有ガス供給装置側の部分、41p,43p 圧力計、41v,43v,45v,47v バルブ、43 第2の配管、43a,45a バルブより外容器側の部分、43b バルブより加圧用ガス供給装置側の部分、45 第3の配管、45b バルブより真空排気装置側の部分、47 第4の配管。

Claims (12)

  1. 液相法によるIII族窒化物結晶の成長方法であって、
    下地基板を準備する工程と、
    前記下地基板の主面に、III族金属とアルカリ金属とを含む溶媒に窒素含有ガスを溶解させた溶液を接触させて、前記主面上に前記III族窒化物結晶を成長させる工程と、を備え、
    前記III族窒化物結晶を成長させる工程の少なくとも初期において、結晶成長速度を0μm/hrから1μm/hr2以下の速度変化率で徐々に増大させるIII族窒化物結晶の成長方法。
  2. 前記速度変化率が0.1μm/hr2以下である請求項1に記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  3. 前記III族窒化物結晶を成長させる工程の少なくとも初期において、前記結晶成長速度を0μm/hrから徐々に増大させる方法として、結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に徐々に変化させる請求項1または請求項2に記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  4. 前記結晶成長速度が2μm/hr以下で成長した第1結晶領域の結晶成長厚さが1μm以上である請求項1から請求項3までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  5. 前記主面は(0001)Ga表面であり、
    前記第1結晶領域における転位密度が1×107cm-2以下である請求項1から請求項4までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  6. 前記結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に徐々に変化させる方法として、雰囲気温度を5℃/hr以下の温度変化率で徐々に低減させる請求項3から請求項5までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  7. 前記結晶成長が起こらない条件から結晶成長が起こる条件に徐々に変化させる方法として、雰囲気圧力を0.1MPa/hr以下の圧力変化率で徐々に増大させる請求項3から請求項5までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  8. 前記III族窒化物結晶を成長させる工程は、昇温サブ工程と、結晶成長準備サブ工程と、結晶成長サブ工程と、降温サブ工程と、を含む請求項1から請求項7までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  9. 前記昇温サブ工程および前記結晶成長準備サブ工程において、前記下地基板の主面と前記溶液とを接触させない請求項8に記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  10. 前記III族窒化物結晶を成長させる工程より得られた前記III族窒化物結晶から、前記結晶成長速度が2μm/hrを超えて成長した第2結晶領域を除去して、前記結晶成長速度が2μm/hr以下で成長した第1結晶領域を表面に露出させる工程をさらに含む請求項1から請求項9までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  11. 前記アルカリ金属は、NaおよびLiの少なくともいずれかを含む請求項1から請求項10までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  12. 前記III族窒化物結晶はGaN結晶である請求項1から請求項11までのいずれかに記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
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US10538858B2 (en) 2014-03-18 2020-01-21 Sciocs Company Limited Method for manufacturing group 13 nitride crystal and group 13 nitride crystal

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