JP2010042980A - Iii族窒化物結晶の製造方法およびiii族窒化物結晶 - Google Patents
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Abstract
【課題】大きな厚みを有し、かつ高品質のIII族窒化物結晶を成長するIII族窒化物結晶の製造方法およびIII族窒化物結晶を提供する。
【解決手段】III族窒化物結晶13の製造方法は、以下の工程を備えている。まず、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面11aを有する下地基板11が準備される。そして、気相成長法により下地基板11の主表面11a上にIII族窒化物結晶13が成長される。下地基板11の主表面11aは、{01−10}面から−5°以上5°以下傾斜した面であることが好ましい。
【選択図】図6
【解決手段】III族窒化物結晶13の製造方法は、以下の工程を備えている。まず、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面11aを有する下地基板11が準備される。そして、気相成長法により下地基板11の主表面11a上にIII族窒化物結晶13が成長される。下地基板11の主表面11aは、{01−10}面から−5°以上5°以下傾斜した面であることが好ましい。
【選択図】図6
Description
本発明はIII族窒化物結晶の製造方法およびIII族窒化物結晶に関し、たとえば窒化アルミニウム(AlN)結晶の製造方法およびAlN結晶に関する。
AlN結晶は、6.2eVのエネルギバンドギャップ、約3.3WK-1cm-1の熱伝導率および高い電気抵抗を有しているため、光デバイスや電子デバイスなどの基板材料として注目されている。
このようなAlN結晶などのIII族窒化物半導体結晶の成長方法には、たとえば昇華法が用いられる。昇華法として、下地基板を用いない自然核生成により成長する方法と、下地基板を用いて成長する方法とが挙げられる。自然核生成による成長では、大きなIII族窒化物半導体結晶を安定して成長することが困難であった。
下地基板を用いて成長する方法は、たとえば米国特許第5,858,086号明細書(特許文献1)、米国特許第6,296,956号明細書(特許文献2)および米国特許第6,001,748号明細書(特許文献3)などに開示されている。
上記特許文献1〜3には、以下の工程が実施されることが記載されている。すなわち、坩堝の下部に原料が設置され、坩堝の上部にSiC基板などの下地基板が原料と互いに向かい合うよう設置される。そして、原料が昇華する温度まで原料が加熱される。この加熱により、原料が昇華して昇華ガスが生成され、原料よりも低温に設置されている下地基板の表面にAlN結晶が成長される。
上記特許文献2および3では、0.5mm/hrの成長速度でAlN結晶を成長させている。このような成長速度を実現するためには、原料の温度を高温に加熱する必要がある。しかし、原料の温度を高温にしようとすると、下地基板の温度も高温になる。このため、下地基板としてのSiC基板は、劣化してしまう。このため、十分な厚みのAlN結晶を成長させることができないという問題があった。
一方、上記特許文献1では、原料の加熱温度が1800℃と低い。このように原料の温度を低温にすると、図14に示す以下の問題があった。なお、図14は、低温でAlN結晶213を成長させた状態を概略的に示す断面図である。
すなわち、図14に示すように、下地基板211の主表面211a上にAlNのグレイン(結晶粒)が成長するが、このグレインの向きは矢印212のように不規則である。このため、AlN結晶213の成長面である主表面213aは均質にならず、凹部213bが形成される。また下地基板211の主表面211a上にAlN結晶が成長しない非成長領域213dが存在する場合がある。このように成長させたAlN結晶213の主表面213aに凹部213bが形成されたり、非成長領域213dが形成されると、成長方向に平行にスライスして複数枚のAlN基板を十分に形成することができない。
また、図14に示すように、グレインの向きが不規則であるので、方位ずれが発生しやすくなったり、多結晶が発生しやすい。特に、凹部213b下のAlN結晶213には、欠陥213cが発生しやすく、結晶性が悪いという問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大きな厚みを有し、かつ高品質のIII族窒化物結晶を成長するIII族窒化物結晶の製造方法およびIII族窒化物結晶を提供することである。
本発明者は、鋭意研究の結果、図14に示すようにIII族窒化物結晶としてのAlN結晶213を成長したときに凹部213bおよび欠陥213cが発生するのは、AlN結晶213の成長面が(0001)面(c面)であることに起因することを見出した。また、本発明者は、その理由を鋭意研究した結果、III族窒化物結晶のc面の結晶性が安定でないことに起因することを見出した。
本発明者は上記要因を確かめるべく、鋭意研究した結果、c面を成長面としてAlN結晶を成長すると、(10−11)面と等価な面が現れることを発見した。この(10−11)面は、c面から[10−10]方向に傾斜している。これらから、AlN結晶などのIII族窒化物結晶において、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面の結晶性が安定であることを見出した。
そこで、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、以下の工程を備えている。まず、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有する下地基板が準備される。そして、気相成長法により下地基板の主表面上にIII族窒化物結晶が成長される。
本発明のIII族窒化物物結晶の製造方法によれば、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面上にIII族窒化物結晶を成長している。下地基板の主表面上に成長したIII族窒化物結晶の成長面の結晶方位は、下地基板の主表面の結晶方位を引き継ぐ。このため、III族窒化物結晶の成長面は、結晶性が安定した面になるので、グレインが不規則に成長した面が形成されることを抑制することができる。つまり、均質な成長面を有しながらIII族窒化物結晶を成長することができる。したがって、低温でIII族窒化物結晶を成長しても、高品質な結晶を成長することができる。よって、低温でIII族窒化物結晶を成長することにより、高品質で大きな厚みを有するIII族窒化物結晶を製造することができる。
上記III族窒化物結晶の製造方法において好ましくは、下地基板の主表面は、{01−10}面から−5°以上5°以下傾斜した面である。
本発明者は、III族窒化物結晶の結晶性の非常に安定な面が{01−10}面から−5°以上5°以下傾斜した下地基板の主表面上で得られやすいことを見出した。このため、高品質で大きな厚みを有するIII族窒化物結晶をより安定して製造することができる。
上記III族窒化物結晶の製造方法において好ましくは、上記成長する工程では、1600℃以上1900℃以下でIII族窒化物結晶を成長する。
1600℃以上の場合、III族窒化物結晶の原料を容易に気相にして下地基板に供給すことができる。また、1600℃以上の場合、{01−10}面が安定であるため、より高品質なIII族窒化物結晶が得られる。1900℃以下の場合、下地基板が気化分解されるなどの劣化を効果的に抑制することができる。このため、大きな厚みを有するIII族窒化物結晶を成長することができる。
上記III族窒化物結晶の製造方法において好ましくは、上記準備する工程では、下地基板としてSiC基板を準備する。
SiC基板は、III族窒化物結晶と格子定数の差が小さく、かつ耐熱性の高い材料であるので、高品質で厚みの大きなIII族窒化物結晶をより安定して製造することができる。
上記III族窒化物結晶の製造方法において好ましくは、上記準備する工程は、(0001)面を主表面として成長された下地用III族窒化物結晶を準備する工程と、この下地用III族窒化物結晶から下地基板を切り出す工程とを含んでいる。
これにより、III族窒化物結晶を下地基板として用いることができる。下地基板のIII族窒化物結晶は、成長させるIII族窒化物結晶と格子定数差がないか、または非常に小さい。このため、より高品質で、かつ厚みの大きなIII族窒化物結晶を安定して製造することができる。
上記III族窒化物結晶の製造方法において好ましくは、上記成長する工程では、1mm以上の厚みを有するIII族窒化物結晶を成長する。
1mm以上の厚みを有するIII族窒化物結晶を成長する場合に、上述した本発明の効果が顕著に現れる。また、成長したIII族窒化物結晶から、複数枚のIII族窒化物結晶を製造することができる。また、複数枚のIII族窒化物結晶のコストを低減することができる。
上記III族窒化物結晶の製造方法において好ましくは、上記準備する工程は、下地基板の主表面を平坦にする工程を含んでいる。
これにより、下地基板の主表面において、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面以外の面が現れることを抑制することができる。このため、下地基板の主表面に、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面が広く形成された下地基板を準備することができる。したがって、主表面において安定な面以外の面が形成された領域を低減することができるので、高品質で大きな厚みを有するIII族窒化物結晶をより安定して製造することができる。
上記III族窒化物結晶の製造方法において好ましくは、上記III族窒化物結晶から無極性面を主表面として有するように切り出す工程をさらに備えている。
III族窒化物結晶は高品質で大きな厚みを有しているので、無極性面を主表面として有する複数のIII族窒化物結晶を切り出すことができる。これにより、無極性面を主表面として有する複数枚のIII族窒化物結晶を製造することができる。
本発明のIII族窒化物結晶は、上記いずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法により製造されたIII族窒化物結晶であって、5×106cm-2以下の転位密度を有している。
本発明のIII族窒化物結晶は、上記III族窒化物結晶の製造方法により製造されている。このため、グレインが不規則である成長面が形成されることを抑制しているので、上記のような転位密度の低いIII族窒化物結晶を実現することができる。
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法およびIII族窒化物結晶によれば、結晶性の安定した面である(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面上にIII族窒化物結晶を成長するので、大きな厚みを有し、かつ高品質のIII族窒化物結晶を成長することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。また、本明細書中においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶を概略的に示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶10について説明する。
図1は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶を概略的に示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶10について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶10は、主表面10aを有している。この主表面10aは、たとえば無極性面である。ここで、無極性面とは、c面などの極性面に対して直交した方向の面であり、たとえば{1−100}面(m面)および{11−20}面(a面)が挙げられる。
III族窒化物結晶10は、好ましくは5×106cm-2以下、より好ましくは5×105cm-2以下の転位密度を有している。この場合、このIII族窒化物結晶10を用いてデバイスを作製したときに特性を向上することができる。なお、転位密度は、たとえば溶融KOH(水酸化カリウム)中のエッチングによりできるピットの個数を数えて、単位面積で割るという方法によって測定することができる。
III族窒化物結晶10は、たとえばAlxGa(1-x)N(0≦x≦1)結晶であり、AlN結晶であることが好ましい。
図2は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法を示すフローチャートである。続いて、図2を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶10の製造方法について説明する。
図3は、本実施の形態における下地基板を概略的に示す断面図である。図2および図3に示すように、まず、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面11aを有する下地基板11を準備する(ステップS10)。下地基板11の主表面11aは、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面以外の面を含む領域を有していてもよいが、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面が広い領域に規則的に現れていることが好ましい。下地基板11の主表面11aは、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面がほとんどの領域に規則的に現れていることが非常に好ましい。
なお、<1−100>方向とは、[1−100]方向、[10−10]方向、[−1100]方向、[−1010]方向、[01−10]方向および[0−110]方向を含んでいる。
図4は、本実施の形態における下地基板11の結晶方位を示す模式図である。図5は、図4の結晶方位を簡略化した模式図である。ここで、図4および図5を参照して、下地基板11の主表面11aについて説明する。
図4および図5に示すように、下地基板11の主表面11aは、(0001)面から<1−100>方向に傾斜している。言い換えると、下地基板11の主表面11aは、(0001)面が{1−100}面に向かって傾斜している。このような主表面11aとして、図4に示すように、たとえば(10−11)面(s面)が挙げられる。
なお、{1−100}面とは、{1−100}面、{10−10}面、{−1100}面、{−1010}面、{01−10}面および{0−110}面を含んでいる。
下地基板11の主表面11aは、c面から<1−100>(m軸)方向に0.1°以上80°未満傾斜させることが好ましい。言い換えると、図5に示すように、(0001)面から{1−100}面に向かって傾斜している角度xが、0.1°以上80°未満であることが好ましい。この場合、結晶性がより一層安定である。特に、下地基板11の主表面11aは、{01−10}面から−5°以上5°以下傾斜した面であることが好ましく、{01−10}面から−0.5°以上0.5°以下傾斜した面であることがより好ましい。言い換えると、図5に示すように、(10−11)面などの{01−10}面から{1−100}面に向かって傾斜している角度yが−5°以上5°以下であることが好ましく、−0.5°以上0.5°以下であることがより好ましい。この場合、成長させるIII族窒化物結晶の成長面がよりに安定になる。特に、下地基板11の主表面11aは、{10−11}面近傍であることが好ましい。この場合、成長させるIII族窒化物結晶の成長面が非常に安定になる。
なお、上記主表面11aは、(0001)面から<1−100>方向に傾斜していれば特に限定されず、<1−100>方向以外の任意の方向にさらに傾斜していてもよい。この任意の方向にさらに傾斜している場合には、この任意の方向への傾斜角はたとえば−5°以上5°以下の範囲であることが好ましい。
下地基板11は、成長させるIII族窒化物結晶と同じ組成の結晶であっても異なる組成の結晶であってもよく、たとえばSiC、サファイヤなどを用いてもよい。なお、下地基板11の結晶系は六方晶であることが好ましい。SiC基板は、成長させるIII族窒化物結晶との格子定数の差が小さく、かつ耐高温の強い材質である。下地基板11としてSiC基板を用いる場合には、4H(Hexagonal)−SiC(4は1周期の積層数)、6H−SiC(6は1周期の積層数)などが、3C(Cubic)−SiCなどよりも好適に用いられる。
この下地基板11の主表面11aは、たとえば2インチ以上の大きさを有している。これにより、大口径のIII族窒化物結晶を成長させることができる。
図6は、本実施の形態においてIII族窒化物結晶を成長させた状態を概略的に示す断面図である。次に、図2および図6に示すように、気相成長法により下地基板11の主表面11a上にIII族窒化物結晶13を成長する(ステップS20)。
気相成長法は特に限定されず、昇華法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライド気相成長)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法などを用いることができる。このステップS20では、昇華法が好適に用いられる。
成長するステップS20では、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上の厚みT13を有するIII族窒化物結晶を成長する。つまり、本実施の形態では、III族窒化物バルク結晶を成長することが好ましい。II族窒化物バルク結晶を成長する場合に、本発明の効果が顕著に現れるため好適である。厚みT13の上限は特にないが、容易に製造できる観点から、たとえば50mm以下である。
成長するステップS20では、好ましくは1600℃以上1950℃未満、より好ましくは1600℃以上1900℃以下、より一層好ましくは1650℃以上1900℃未満でIII族窒化物結晶13を成長する。1600℃以上の場合、たとえば昇華法によりIII族窒化物結晶13を成長する場合には、原料を容易に昇華させることができる。1650℃以上の場合、原料をより容易に昇華させることができる。1950℃未満の場合、下地基板11が気化分解されるなどの劣化を効果的に防止できるので、III族窒化物結晶13の厚みT13をより大きく成長することができる。1900℃未満の場合、下地基板11の劣化を効果的に防止できる。
上記成長する温度とは、たとえば、昇華法によりIII族窒化物結晶13を成長させる場合には、下地基板11の温度を意味する。
このステップS20により成長したIII族窒化物結晶13の成長面は、下地基板11の主表面11aの結晶方位を引き継ぐ。このため、III族窒化物結晶13は、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面13aを有している。
図7は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶13から複数のIII族窒化物結晶10を切り出した状態を概略的に示す断面図である。次に、図2および図7に示すように、III族窒化物結晶13から主表面10aを有するIII族窒化物結晶10を切り出す(ステップS30)。
このステップS30では、III族窒化物結晶13から無極性面を主表面10aとして有するように切り出すことが好ましい。本実施の形態では、III族窒化物結晶13の成長面(主表面13a)が(0001)面から<1−100>方向に傾斜している。このため、無極性面を主表面10aとして有するように切り出すためには、下地基板11の主表面11aと交差する方向(図7では直交する方向)に切り出している。
切り出す方法は特に限定されないが、切断やへき開などにより、III族窒化物結晶13から複数のIII族窒化物結晶へ分割することができる。III族窒化物結晶13は単結晶からなるので、容易に分割することができる。なお、切断とは、電着ダイヤモンドホイールの外周刃を持つスライサーなどで機械的にIII族窒化物結晶13を分割することをいう。へき開とは、結晶格子面に沿ってIII族窒化物結晶13を分割することをいう。
上記ステップS10〜S30を実施することによって、図1に示すIII族窒化物結晶10を製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法によれば、下地基板11の(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面11a上にIII族窒化物結晶13を成長させている(ステップS20)。下地基板11の主表面11a上に成長したIII族窒化物結晶13の成長面の結晶方位は、下地基板11の主表面11aの結晶方位を引き継ぐ。このため、III族窒化物結晶13の成長面は結晶性の安定な面になるので、グレインが不規則な成長面が形成されることを抑制することができる。したがって、低温でIII族窒化物結晶13を成長しても、高品質な結晶を成長することができる。よって、低温でIII族窒化物結晶13を成長することにより、高品質で大きな厚みT13を有するIII族窒化物結晶13を製造することができる。特に、本実施の形態では、低温で成長させてもIII族窒化物結晶は高品質になるので、III族窒化物結晶13を再現性よく安定して製造することができる。
このIII族窒化物結晶13から切り出すことにより、高品質のIII族窒化物結晶10を製造することができる。このような高品質なIII族窒化物結晶10は、たとえば5×106cm-2以下の小さな転位密度を有している。
またIII族窒化物結晶13の主表面13aは、(0001)面上に形成されたIII族窒化物結晶の主表面よりも、凹凸などの形成が低減された状態である。このため、たとえば(0001)面上に形成されたIII族窒化物結晶から切り出す場合よりも、本実施の形態のようにIII族窒化物結晶13から切り出す場合の方が、多くのIII族窒化物結晶10を切り出すことができる。また同じ数のIII族窒化物結晶10を切り出す場合には、凹部の形成を抑制できるので、成長させるIII族窒化物結晶13の厚みを小さくすることができる。したがって、III族窒化物結晶10を製造するために要するコストを低減することができる。
以上より本実施の形態により製造されたIII族窒化物結晶13は、たとえば発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)などの電子素子、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、SAWデバイス(Surface Acoustic Wave Device;表面弾性波素子)、振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、圧電アクチュエータ等のデバイス用の基板などに好適に用いることができる。
(実施の形態2)
図8は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法を示すフローチャートである。図8を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法は、基本的には実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、下地基板11を準備するステップS10は、主表面11aを平坦にするステップS12を含んでいる点において異なる。
図8は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法を示すフローチャートである。図8を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法は、基本的には実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、下地基板11を準備するステップS10は、主表面11aを平坦にするステップS12を含んでいる点において異なる。
図9は、本実施の形態における平坦化される前の下地基板を概略的に示す断面図である。図8および図9に示すように、まず、凹凸が形成された主表面を有する下地基板11を準備する(ステップS11)。この主表面の凹凸をミクロに見ると、図9において傾斜している領域11a1は、たとえばc面が現れている。
次に、下地基板11の主表面を平坦化する(ステップS12)。このステップS12では、下地基板11の主表面において、図9における領域11a1を取り除いて、裏面11bと平行な(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面を広い領域に規則的に現れるようにする。
平坦化する方法は特に限定されないが、たとえば下地基板11の主表面を熱昇華させることによっても可能である。熱昇華は、たとえば1200℃以上2300℃以下の温度で、下地基板11の主表面を熱処理する。これにより、図3に示す(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面が広い領域に規則的に現れた主表面11aを有する下地基板11を準備することができ、好適である。
その他のステップS20、S30は、実施の形態1とほぼ同様であるので、その説明は繰り返さない。
本実施の形態によれば、下地基板11を準備するステップS10は、下地基板11の主表面を平坦にするステップS12を含んでいる。これにより、下地基板11の主表面11aに(0001)面から<1−100>方向に傾斜した面を広い領域に規則的に現れるように形成することができる。このため、主表面11aにおいて安定な面以外の面が形成された領域を低減することができるので、高品質で大きな厚みを有するIII族窒化物結晶13をより安定して製造することができる。したがって、このIII族窒化物結晶13から切り出して製造される高品質のIII族窒化物結晶10をより安定して製造することができる。
(実施の形態3)
図10は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法を示すフローチャートである。図10を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法について説明する。
図10は、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法を示すフローチャートである。図10を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法について説明する。
図10に示すように、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1におけるIII族窒化物結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、(0001)面を主表面として成長された下地用III族窒化物結晶を準備するステップS13と、下地用III族窒化物結晶から下地基板を切り出すステップS14とをさらに含んでいる点において異なる。つまり、本実施の形態では、下地基板11は、III族窒化物結晶よりなる。
図11は、本実施の形態における下地用III族窒化物結晶上を成長させた状態を概略的に示す断面図である。図10および図11を参照して、まず、(0001)面を主表面30aとして成長された下地用III族窒化物結晶31を準備する(ステップS13)。このステップS13は、たとえば以下のように実施される。
まず、下地用III族窒化物結晶31を成長させるための下地基板30を準備する。この下地基板30は特に限定されず、III族窒化物結晶、SiC、サファイヤなどを用いることができる。その後、この下地基板30の主表面30a上に下地用III族窒化物結晶31を成長する。III族窒化物結晶31の成長方法は特に限定されず、昇華法、HVPE法、MBE法、MOCVD法などの気相成長法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法などを採用することができる。これにより、下地用III族窒化物結晶31を準備することができる。
下地用III族窒化物結晶31は、成長させるIII族窒化物結晶13と同一の組成比であることが特に好ましい。
図12は、本実施の形態における下地基板を切り出す状態を概略的に示す断面図である。次に、図10および図12に示すように、下地用III族窒化物結晶31から下地基板11を切り出す(ステップS14)。
このステップS14では、下地用III族窒化物結晶31から、上述したような主表面11aを有する下地基板11を切り出す。切り出す方法は特に限定されないが、切断やへき開などにより、下地用III族窒化物結晶31から下地基板へ分割することができる。
本実施の形態では、下地基板30の主表面30aが(0001)面であるので、下地用III族窒化物結晶31の成長面である主表面31aも(0001)面である。(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面11aを有するように切り出すためには、下地基板11の主表面11aと交差する方向(図12では直交する方向)に切り出している。
このステップS13、S14により、図3に示す下地基板11を準備することができる。また、下地基板11を切り出すステップS14後に、実施の形態2で説明した主表面11aを平坦化するステップS12をさらに実施してもよい。
その他のステップS20、S30は、実施の形態1とほぼ同様であるので、その説明は繰り返さない。
以上説明したように、本実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造方法によれば、下地基板11としてIII族窒化物結晶を用いている。これにより、下地基板11と成長させるIII族窒化物結晶13とを同一の組成または近い組成にすることができる。このため、下地基板11と成長させるIII族窒化物結晶13との格子定数差は、ない、あるいは非常に小さい。したがって、より高品質で、かつ厚みの大きなIII族窒化物結晶13を安定して製造することができる。したがって、このIII族窒化物結晶13から切り出して製造される高品質のIII族窒化物結晶10をより安定して製造することができる。
本実施例では、下地基板の(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面上にIII族窒化物結晶を成長させることの効果について調べた。
具体的には、図13に示す結晶成長装置100を用いて、昇華法によりAlN結晶を成長し、厚みおよび品質を調べた。なお、図13は、本実施例に用いた結晶成長装置を示す概略図である。
図13に示すように、結晶成長装置100は、坩堝115と、加熱体119と、反応容器122と、高周波加熱コイル123とを主に備えている。坩堝115の周りには、坩堝115の内部と外部との通気を確保するように加熱体119が設けられている。この加熱体119の周りには、反応容器122が設けられている。この反応容器122の外側中央部には、加熱体119を加熱するための高周波加熱コイル123が設けられている。また、反応容器122の上部および下部には、坩堝115の上方および下方の温度を測定するための放射温度計121a、121bが設けられている。
なお、上記結晶成長装置100は、上記以外の様々な要素を含んでいてもよいが、説明の便宜上、これらの要素の図示および説明は省略する。
(実施例1)
まず、(10−11)面から<1−100>方向に0.5°傾斜した主表面11aを有するSiC基板を下地基板11として準備した(ステップS10)。図13に示すように、この下地基板11を、反応容器122内の坩堝115の上部に載置した。
まず、(10−11)面から<1−100>方向に0.5°傾斜した主表面11aを有するSiC基板を下地基板11として準備した(ステップS10)。図13に示すように、この下地基板11を、反応容器122内の坩堝115の上部に載置した。
次に、III族窒化物結晶の原料としてAlN粉末を準備し、この原料17を坩堝115の下部に収容した。
次に、気相成成長法として昇華法により、下地基板の主表面上にIII族窒化物結晶13としてAlN結晶を成長した(ステップS20)。具体的には、反応容器122内に窒素ガスを流しながら、高周波加熱コイル123を用いて坩堝115内の温度を上昇させ、下地基板11の温度を1800℃、原料17の温度を2000℃にして原料17を昇華させ、下地基板11の主表面11a上で再結晶化させて、成長時間を30時間として、下地基板11上にAlN結晶を成長させた。
なお、ステップS20のAlN結晶の成長中においては、反応容器122内に窒素ガスを流し続け、反応容器122内のガス分圧が10kPa〜100kPa程度になるように、窒素ガスの排気量を制御した。
以上のステップS10〜S20を実施することにより、図6に示すように、下地基板11の主表面11a上に形成された実施例1のIII族窒化物結晶13を製造した。
(実施例2)
実施例2は、基本的には実施例1と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例1と異なっていた。
実施例2は、基本的には実施例1と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例1と異なっていた。
具体的には、実施例2は、実施の形態3のIII族窒化物結晶の製造方法にしたがってAlN結晶を製造した。
まず、下地用III族窒化物結晶の下地基板30として(0001)面を主表面として有するSiC基板を準備した。このSiC基板上に10mmの厚みを有するAlN単結晶を下地用III族窒化物結晶31として成長した(ステップS13)。このAlN単結晶の端面に形成した(10−11)面を主表面11aとして有するように下地基板11を切り出した(ステップS14)。これにより、(10−11)面を主表面11aとして有する下地基板11を準備した。
次に、実施例1と同様に、下地基板11の主表面11aにAlN結晶を成長させて(ステップS20)、実施例2のIII族窒化物結晶13を製造した。
(実施例3)
実施例3は、基本的には実施例2と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例2と異なっていた。具体的には、(10−12)面から<1−100>方向に0.5°傾斜した面を主表面11aとして有する下地基板11を準備した。
実施例3は、基本的には実施例2と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例2と異なっていた。具体的には、(10−12)面から<1−100>方向に0.5°傾斜した面を主表面11aとして有する下地基板11を準備した。
次に、実施例1と同様に、下地基板11の主表面11aにAlN結晶を成長させて(ステップS20)、実施例3のIII族窒化物結晶13を製造した。
(実施例4)
実施例4は、基本的には実施例2と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例2と異なっていた。具体的には、(10−12)面を主表面11aとして有する下地基板11を準備した。
実施例4は、基本的には実施例2と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例2と異なっていた。具体的には、(10−12)面を主表面11aとして有する下地基板11を準備した。
次に、実施例1と同様に、下地基板11の主表面11aにAlN結晶を成長させて(ステップS20)、実施例4のIII族窒化物結晶13を製造した。
(比較例1)
比較例1は、基本的には実施例1と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例1と異なっていた。
比較例1は、基本的には実施例1と同様であったが、下地基板を準備するステップS10のみ実施例1と異なっていた。
具体的には、下地基板として、(0001)面から<11−20>方向に3.5°傾斜した主表面を有するSiC基板を準備した。
次に、実施例1と同様に、この下地基板の主表面上にAlN結晶を成長させて、比較例1のIII族窒化物結晶を製造した。
(評価方法)
実施例1〜4および比較例1のIII族窒化物結晶について、外観を観察し、厚みおよび転位密度を測定した。
実施例1〜4および比較例1のIII族窒化物結晶について、外観を観察し、厚みおよび転位密度を測定した。
厚みは、各々のIII族窒化物結晶において最も厚みの小さい厚みを測定した。つまり、III族窒化物結晶の表面に形成されている最も大きな凹部から、下地基板との界面までの距離を測定した。
転位密度の測定は、以下のように測定した。まず、KOH:NaOH(水酸化ナトリウム)を1:1の割合で白金坩堝中で250℃で溶融させた融液中に、各々のIII族窒化物結晶を30分間浸漬してIII族窒化物結晶のエッチングを行った。その後、各々のIII族窒化物結晶を洗浄して、顕微鏡にて表面に発生したエッチピットの単位面積当たりの個数をカウントした。その結果を下記の表1に示す。
(評価結果)
表1に示すように、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有する下地基板を用いた実施例1のIII族窒化物結晶の成長表面は、均質な(10−11)面から<1−100>方向に0.5°傾斜した面からなり、多結晶の発生等はなかった。また、III族窒化物結晶の厚みは、5mmと厚かった。さらに、転位密度はIII族窒化物結晶の全面で5×105cm-2以下と低かった。
表1に示すように、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有する下地基板を用いた実施例1のIII族窒化物結晶の成長表面は、均質な(10−11)面から<1−100>方向に0.5°傾斜した面からなり、多結晶の発生等はなかった。また、III族窒化物結晶の厚みは、5mmと厚かった。さらに、転位密度はIII族窒化物結晶の全面で5×105cm-2以下と低かった。
また(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有する下地基板を用いた実施例2のIII族窒化物結晶の成長表面は、均質な(10−11)面からなり、多結晶の発生等はなかった。また、III族窒化物結晶の厚みは、10mmと厚かった。さらに、転位密度はIII族窒化物結晶の全面で1×105cm-2と低かった。
また(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有する下地基板を用いた実施例3のIII族窒化物結晶の成長表面は、均質な(10−12)面から<1−100>方向に0.5°傾斜した面からなり、多結晶の発生等はなかった。また、III族窒化物結晶の厚みは、5mmと厚かった。さらに、転位密度はIII族窒化物結晶の全面で5×105cm-2と低かった。
また(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有する下地基板を用いた実施例4のIII族窒化物結晶の成長表面は、均質な(10−12)面からなり、多結晶の発生等はなかった。また、III族窒化物結晶の厚みは、10mmと厚かった。さらに、転位密度はIII族窒化物結晶の全面で1×105cm-2と低かった。
一方、(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有していなかった下地基板を用いた比較例1のIII族窒化物結晶の成長表面は、3次元状の丘形状が形成されていたり、凹凸(段差)が大きく形成されており、多結晶の発生があった。また、III族窒化物結晶の厚みは4mmであり、実施例1〜4と比較して低かった。さらに、方位ずれが生じた領域近傍の転位密度は1×107cm-2であり、実施例1〜4よりも高かった。
以上より、本実施例によれば、下地基板の(0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面上にIII族窒化物結晶を成長させることによって、大きな厚みを有し、かつ高品質のIII族窒化物結晶を製造することが確認できた。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10,13,31 III族窒化物結晶、10a,11a,13a,30a,31a 主表面、11,30 下地基板、11a1 領域、11b 裏面、17 原料、100 結晶成長装置、115 坩堝、119 加熱体、121a,121b 放射温度計、122 反応容器、123 高周波加熱コイル。
Claims (9)
- (0001)面から<1−100>方向に傾斜した主表面を有する下地基板を準備する工程と、
気相成長法により前記下地基板の前記主表面上にIII族窒化物結晶を成長する工程とを備えた、III族窒化物結晶の製造方法。 - 前記下地基板の前記主表面は、{01−10}面から−5°以上5°以下傾斜した面である、請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
- 前記成長する工程では、1600℃以上1900℃以下で前記III族窒化物結晶を成長する、請求項1または2に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
- 前記準備する工程では、前記下地基板としてSiC基板を準備する、請求項1〜3のいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
- 前記準備する工程は、
(0001)面を主表面として成長された下地用III族窒化物結晶を準備する工程と、
前記下地用III族窒化物結晶から前記下地基板を切り出す工程とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。 - 前記成長する工程では、1mm以上の厚みを有する前記III族窒化物結晶を成長する、請求項1〜5のいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
- 前記準備する工程は、前記下地基板の前記主表面を平坦にする工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
- 前記III族窒化物結晶から無極性面を主表面として有するように切り出す工程をさらに備えた、請求項1〜7のいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のIII族窒化物結晶の製造方法により製造されたIII族窒化物結晶であって、
5×106cm-2以下の転位密度を有する、III族窒化物結晶。
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