JP2014175441A - 結晶シリコン系太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

結晶シリコン系太陽電池およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】変換効率に優れる結晶シリコン系太陽電池を提供する。
【解決手段】本発明の結晶シリコン系太陽電池は、導電型単結晶シリコン基板1の一方の面に、p型シリコン系層41および第一の透明電極層61をこの順に有し、導電型単結晶シリコン基板1の他方の面にn型シリコン系層42および第二の透明電極層62をこの順に有する。p型シリコン系層41は第一の透明電極層61と直接接しており、n型シリコン系層42は第二の透明電極層62と直接接している。第一の透明電極層61および第二の透明電極層62は、キャリア密度が、1×1020cm−3〜4×1020cm−3であり、表面自由エネルギーが、80mN/m以上であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、単結晶シリコン基板表面にヘテロ接合を有する結晶シリコン系太陽電池、およびその製造方法に関する。
単結晶シリコン基板上に、導電型シリコン系薄膜を備える結晶シリコン系太陽電池は、ヘテロ接合太陽電池と呼ばれている。中でも、導電型シリコン系薄膜と単結晶シリコン基板との間に真性の非晶質シリコン薄膜を有するヘテロ接合太陽電池は、変換効率の最も高い結晶シリコン系太陽電池の形態の一つとして知られている。
ヘテロ接合太陽電池では、導電型シリコン系薄膜の表面に、さらに透明電極層が形成される。この透明電極層は、光透過性が高く、かつ低抵抗であることが好ましく、その材料としては、結晶性のインジウム錫複合酸化物(ITO)や酸化亜鉛等の透明導電性金属酸化物が用いられる。また、透明電極層上には、導電性ペーストの印刷や、めっきによって金属集電極が形成される。
太陽電池の変換効率向上においては、光電変換層への光取り込み量を増大させるとともに、光電変換層内で生じた正孔および電子を効率的に外部回路へ取り出すことが重要である。単結晶シリコン基板を用いたヘテロ接合太陽電池では、特に、導電型シリコン系薄膜の表面に到達した正孔や電子を、透明電極層を介して集電極から外部回路へ取り出す際のロスを低減させることが重要である。そのため、導電型シリコン系薄膜と透明電極層の界面特性の向上や、透明電極層と集電極との密着性を高める試みがなされている。
例えば、特許文献1では、光入射側にパターン形状の金属集電極が形成され、裏面側には略全面に金属電極が形成されたヘテロ接合太陽電池が開示されている。当該構成によれば、光取り込み量を増大させるとともに、シリコン基板で吸収されなかった入射光を裏面側の金属電極で反射させて再利用できる。このような表裏非対称の構成では、基板に反りを生じるため、基板の割れや、集電極の膜剥がれ等の不具合を生じるとの問題に鑑み、特許文献1では、所定の結晶特性を有する酸化亜鉛透明電極層が用いられている。このような構成によれば、シリコン基板の表裏に付与される応力を制御して、基板の反りを抑制するとともに、酸化亜鉛層表面に微細な凹凸が形成されるため、透明電極層と集電極との密着性が高められる。
また、特許文献2では、導電型シリコン系薄膜上に、高キャリア密度のITO薄膜および低キャリア密度のITO薄膜の2層からなる透明電極層を形成することが開示されている。当該構成では、導電型シリコン系薄膜と透明電極層との電気的な接合状態を改善しつつ、透明電極層の膜中キャリア量を減少させ、透明電極層による光吸収ロスを低減することができる。
WO2011/002086号国際公開パンフレット WO2012/020682号国際公開パンフレット
特許文献1で提案されているように、透明電極層の結晶性を調整する方法は、基板の表裏の応力を調整して基板の反りを抑制しているため、透明電極層の製膜条件の微妙な変化によって結晶特性が変化し、基板に反りを生じる場合がある。そのため、太陽電池の生産性を高め、かつ集電極の剥がれ等の不具合を抑制するためには、集電極の構成を表裏対称とすることが好ましい。
一方、裏面側にも光入射側と同様にパターン状の集電極が形成された太陽電池では、シリコン基板内で吸収されなかった入射光を裏面電極で反射して再利用することができない。そのため、透明電極層やシリコン系薄膜等による光吸収ロスを低減して、光利用効率を高めることが重要であり、特に、シリコン基板内の裏面側での光吸収量を増大させる必要がある。
単結晶シリコン基板では、厚み方向の光入射側で短波長側の光が優先的に吸収され、光入射側で吸収されなかった長波長側の光(主に波長900nmより長波長の近赤外光)が厚み方向の裏面側で吸収される傾向がある。そのため、光入射側および裏面側の両方にパターン状の集電極が形成されたヘテロ接合太陽電池では、透明電極層やシリコン系薄膜による長波長側の光の吸収ロスを低減することが、変換効率を向上する上で重要となる。長波長の光は、膜中キャリアによって吸収されやすいため、透明電極層やシリコン系薄膜の膜中キャリア密度を低減することが、変換効率向上に繋がると考えられる。
上記特許文献2では、低キャリア密度のITO薄膜の膜厚を相対的に大きくすることで、膜中のキャリア量を低減することが提案されている。しかしながら、シリコン系薄膜との界面接合改善のために設けられた高キャリア密度のITO薄膜による光吸収が無視できない量であり、変換効率をさらに向上させる際の障壁となっている。また、特許文献2のヘテロ接合太陽電池に用いられるITO透明電極層は、その上に形成される金属電極との密着性が必ずしも十分とはいえず、この点からも、変換特性の更なる向上の余地がある。
上記に鑑み、本発明は、光吸収が小さく、かつシリコン系薄膜および集電極との界面接合性や密着性に優れる透明電極層を備え、変換効率に優れるヘテロ接合太陽電池を提供することを目的とする。
上記の課題に鑑みて鋭意検討の結果、キャリア密度および表面自由エネルギーが所定範囲内のITO透明電極層を形成することによって、ヘテロ接合太陽電池の変換効率が向上することが見出された。
本発明は、導電型単結晶シリコン基板の一方の面に、p型シリコン系層および第一の透明電極層をこの順に有し、導電型単結晶シリコン基板の他方の面にn型シリコン系層および第二の透明電極層をこの順に有する結晶シリコン系太陽電池に関する。p型シリコン系層は第一の透明電極層と直接接しており、n型シリコン系層は第二の透明電極層と直接接している。第一の透明電極層および第二の透明電極層上のそれぞれに、さらに集電極を有することが好ましい。
第一の透明電極層および第二の透明電極層は、いずれも、酸化インジウムと酸化錫の合計に対する酸化錫の含有量が7重量%〜12重量%であるインジウム錫複合酸化物(ITO)からなることが好ましい。また、第一の透明電極層および第二の透明電極層は、いずれも、キャリア密度が、1×1020cm−3〜4×1020cm−3であることが好ましく、表面自由エネルギーが、80mN/m以上であることが好ましい。
上記第一の透明電極層および第二の透明電極層は、いずれも非晶質のインジウム錫複合酸化物からなることが好ましい。また、第一の透明電極層および第二の透明電極層のホール移動度は、50cm/Vs以上が好ましい。
第一および第二の透明電極層は、基板温度100℃以下のマグネトロンスパッタリング法により形成されることが好ましい。
一実施形態において、n型シリコン系層は、導電型単結晶シリコン基板側から、n型非晶質シリコン系薄膜およびn型微結晶シリコン系薄膜を、この順に有する。
本発明では、透明電極層のキャリア密度が所定範囲とされることで、透明電極層による光吸収ロスが低減され、結晶シリコン系太陽電池の短絡電流密度が改善される。また、透明電極層が所定の表面自由エネルギーを有するため、透明電極層と集電極との密着性が高められることに加えて、低キャリア密度でも、シリコン系薄膜との接合性が改善される。そのため、本発明によれば、高変換効率の結晶シリコン系太陽電池が提供される。また、透明電極層を非晶質膜とすることによって、基板の反りが改善され、特性低下が抑止されるとともに、太陽電池の生産性が高められる。
本発明の一実施形態に係る結晶シリコン系太陽電池の模式的断面図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る結晶シリコン系太陽電池の模式的断面図である。結晶シリコン系太陽電池は、導電型単結晶シリコン基板1とp型シリコン系層41との間、および導電型単結晶シリコン基板1とn型シリコン系層42との間のそれぞれに、第一の真性シリコン系層21、および第二の真性シリコン系層22を有することが好ましい。また、一般的には、透明電極層61、62上には集電極71、72が形成される。上記集電極上には、さらに保護層(不図示)が形成されていることが好ましい。
導電型単結晶シリコン基板としては、Si原子に対して電子を導入する不純物(例えば、リン原子)を含有するn型単結晶シリコン基板と、Si原子に対して正孔を導入する不純物(例えば、ホウ素原子)を有するp型単結晶シリコン基板とがある。本明細書において、「導電型」とは、n型、又はp型のどちらか一方であることを意味する。単結晶シリコン基板の表面には、光閉じ込めの観点から、テクスチャ(凹凸構造)が形成されていることが好ましい。テクスチャは、例えば、結晶シリコン基板の(100)面と(111)面のエッチングレートが異なることを応用した異方性エッチングによって形成される。
導電型単結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン系太陽電池では、単結晶シリコン基板1へ入射した光が最も多く吸収される光入射側のへテロ接合が逆接合であることが好ましい。光入射側のヘテロ接合が逆接合であれば、強い電場が設けられ、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。正孔と電子とを比較した場合、一般に、電子の方が、移動度が大きい。そのため、導電型単結晶シリコン基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。
一実施形態において、導電型単結晶シリコン基板の厚みは250μm以下であることが好ましい。シリコン基板の厚みを小さくすることで、シリコンの使用量が減少するため、低コスト化を図ることができるとともに、シリコン基板を確保し易いとの利点を有する。一方で、シリコン基板の厚みが過度に小さいと、機械的強度の低下が生じたり、外光(太陽光)が十分に吸収されず、短絡電流密度の減少を生じる場合がある。そのため、導電型単結晶シリコン基板1の厚みは、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましい。なお、シリコン基板の表面にテクスチャが形成されている場合、シリコン基板の厚みは、光入射側および裏面側それぞれの凹凸構造の凸部頂点を結んだ直線間の距離で表される。
本発明の結晶シリコン系太陽電池は、単結晶シリコン基板1の一方の面に、p型シリコン系層41および透明電極層61をこの順に有し、単結晶シリコン基板1の他方の面に、n型シリコン系層42および透明電極層62をこの順に有する。単結晶シリコン基板1への不純物の拡散を抑えつつ、単結晶シリコン表面のパッシベーションを有効に行う観点からは、単結晶シリコン基板1とp型シリコン系層41との間、および単結晶シリコン基板1とn型シリコン系層42との間のそれぞれに、第一の真性シリコン系層41、および第二の真性シリコン系層42を有することが好ましい。なお、本明細書において、「真性」層との用語は、導電型不純物を含まない完全に真性であるものに限られず、シリコン系層が真性層として機能し得る範囲で微量のn型不純物やp型不純物を含む「弱n型」あるいは「弱p型」の実質的に真性な層をも包含する。
真性シリコン系層21,22は、非晶質シリコン系薄膜であることが好ましく、中でもシリコンと水素で構成される水素化非晶質シリコン薄膜がより好ましい。真性水素化非晶質シリコンが単結晶シリコン基板1上にCVD製膜されることで、単結晶シリコン基板への不純物の拡散を抑制しつつ、基板表面のパッシベーションを有効に行うことができる。また、真性シリコン系層21,22の膜中水素濃度を膜厚方向で変化させることで、キャリア回収を行う上で有効なエネルギーギャッププロファイルを形成可能である。
真性シリコン系層21,22の膜厚は、2nm〜8nmの範囲が好ましい。真性シリコン系層の膜厚を2nm以上とすることにより、パッシベーション層としての効果がより期待できる。また膜厚を8nm以下とすることにより、高抵抗化により生じうる変換特性の低下をより抑制できる。
p型シリコン系層41の材料としては、非晶質シリコン、酸化非晶質シリコン、非晶質シリコンカーバイド等が挙げられる。酸化シリコンやシリコンカーバイドは、ワイドギャップの低屈折率材料であるため、入射光の反射や吸収によるロスを低減できるとの利点を有する一方で、真性シリコン系層21および透明電極層61とのコンタクト性が低くなる場合がある。後に詳述するように、本発明においては、p型シリコン系層41上に低キャリア密度の透明電極層61が形成される。このような低キャリア密度の透明電極層とのコンタクトを高め、変換効率を向上する観点から、p型シリコン系層41の材料としては、非晶質シリコンが特に好ましい。
p型シリコン系層41の膜厚は、5nm〜50nmの範囲が好ましい。ヘテロ接合太陽電池では、特に、光入射側に配置される導電型層の膜厚を小さくすることが好ましい。例えば、p層側(第一の透明電極層61側)が光入射面である場合、p型シリコン系層41の膜厚は、15nm以下がより好ましく、10nm以下さらに好ましく、8nm以下が特に好ましい。
n型シリコン系層42は、n型非晶質シリコン系薄膜あるいはn型微結晶シリコン系薄膜の単層により構成されてもよく、複数の薄膜からなるものであってもよい。中でもn型シリコン系層42は、図1に示すように、n型非晶質シリコン系薄膜421およびn型微結晶シリコン系薄膜422の2層により構成されることが望ましい。n型微結晶シリコンは、その上に製膜される透明電極層との界面で良好なオーミック接合を形成できるため、太陽電池の変換特性(特に曲線因子)の向上に寄与し得る。一方で、微結晶シリコン系薄膜を製膜するには、一般に、高パワーを供給して、高密度の水素プラズマを発生させる必要がある。これに対して、真性シリコン系層22上にn型非晶質シリコン系薄膜421が5nm〜20nm程度の膜厚で製膜された後、その上にn型微結晶シリコン系薄膜422が製膜される場合は、n型微結晶シリコン系層の製膜に要するパワーを低減ができる。そのため、n型シリコン系層42が、n型非晶質シリコン系薄膜421とn型微結晶シリコン系薄膜422の2層で構成される場合、n型シリコン系層42と透明電極層62とのコンタクト性が高められるとともに、真性シリコン系層22やシリコン基板1へのドープ不純物の拡散や製膜ダメージが低減される。
n型非晶質シリコン系薄膜421の材料としては、隣接層との良好な接合特性が得られやすいことから、非晶質シリコンや非晶質シリコンナイトライドが好ましい。n型微結晶シリコン系薄膜422の材料としては、例えば、微結晶シリコン、微結晶シリコンカーバイド、微結晶シリコンオキサイドが挙げられる。n層内部の欠陥の生成を抑制する観点からは、ドープ不純物以外の不純物が積極的に添加されていないn型微結晶シリコン薄膜が好適に用いられる。一方で、n型微結晶シリコン系薄膜422としてn型微結晶シリコンカーバイドや、n型微結晶シリコンオキサイドを用いることで、ワイドギャップ化および低屈折化による光学的なメリットが得られうる。
n型シリコン系層42の膜厚は、5nm〜50nmの範囲が好ましい。n型シリコン系層42がn型非晶質シリコン系薄膜421およびn型微結晶シリコン系薄膜422の2層で構成される場合、n型非晶質シリコン系薄膜421の膜厚は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。n型非晶質シリコン系薄膜421の膜厚を前記範囲とすることで、その上にn型微結晶シリコン系薄膜422が製膜される際のパワー密度を低く抑えることができる。n型微結晶シリコン系薄膜422の膜厚は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。n型微結晶シリコン系薄膜422の膜厚を前記範囲とすることで、その上に製膜される透明電極層62とのコンタクト性を高めることができる。一方、n型シリコン系層中のドープ不純物による光吸収ロスを抑制する観点から、n型非晶質シリコン系薄膜421の膜厚は、20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。また、n型微結晶シリコン系薄膜422の膜厚は、30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。
単結晶シリコン基板1上へのシリコン系層の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系層の形成条件としては、例えば、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.003〜0.5W/cmが好ましく用いられる。シリコン系層の形成に使用される原料ガスとしては、SiH、Si等のシリコン含有ガス、またはそれらのガスとHを混合したものが好適に用いられる。p型またはn型のシリコン系層を形成するためのドーパントガスとしては、例えば、BまたはPH等が好ましく用いられる。この場合、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiHやH等で希釈された混合ガスを用いることもできる。また、CH、CO、NH、GeH等の異種元素を含むガスを上記ガスに添加して、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、シリコンゲルマニウム等のシリコン合金を形成することで、エネルギーギャップを変更することもできる。
p型シリコン系層41およびn型シリコン系層42上には、それぞれ、第一の透明電極層61および第二の透明電極層62が形成される。第一および第二の透明電極層61,62の膜厚は、透明性と導電性の観点から、40nm〜120nmが好ましく、50nm〜110nmがより好ましく、60nm〜110nmがさらに好ましい。透明電極層61,62は、集電極へのキャリアの輸送に必要な導電性を有していればよい。一方で、膜厚を上記範囲にすることにより、透明電極層自身の光吸収による透過率の減少や、それに伴う太陽電池の変換効率(特に短絡電流密度)の低下をより抑制することができる。
第一の透明電極層61および第二の透明電極層62は、それぞれp型シリコン系層41およびn型シリコン系層42と直接接することが好ましい。後述するように、透明電極層61,62が所定の表面自由エネルギーを有している場合、導電型シリコン系薄膜41,42と透明電極層61,62とが接することによって、良好な界面接合が形成され得る。
透明電極層61,62の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)が特に好ましく用いられる。ITOは、高い導電率と透明性を有するため、透明電極層による光吸収ロス低減や抵抗ロス低減による変換効率向上の観点から好ましい材料である。
ITO透明電極層61,62における酸化錫の含有量は、酸化インジウムと酸化錫の合計に対して、7重量%〜12重量%が好ましく、8重量%〜11重量%がより好ましい。酸化錫の含有量を7重量%以上とすることで、透明電極層に高い導電性が付与されるとともに、非晶質の膜が得られ易いとの利点を有する。また、酸化錫の含有量を12重量%以下とすることで、高透過率のITO透明電極層が得られやすい。さらに、本発明においては、酸化錫の含有量を上記範囲とすることで、所期の表面自由エネルギーを有するITOを形成できる。
透明電極層61,62のキャリア密度は、1×1020cm−3〜4×1020cm−3の範囲内であることが好ましい。キャリア密度を4×1020cm−3以下とすることで、広い波長範囲において高い透過性を有する透明電極層が得られ、光吸収ロス低減による短絡電流密度の向上が可能となる。また、キャリア密度を1×1020cm−3以上とすることで、透明電極層を低抵抗化し、変換効率(特に曲線因子)の向上が可能となる。透明電極層61,62のキャリア密度は、1.5×1020cm−3〜3.5×1020cm−3の範囲がより好ましく、2×1020cm−3〜3×1020cm−3の範囲がさらに好ましい。
透明電極層61,62は、膜厚方向の全体にわたって、キャリア密度が上記範囲であることが好ましい。膜厚方向で局所的にキャリア密度が高い領域や低い領域が存在すると、その領域での光吸収ロスや抵抗ロスがボトルネックとなって、変換特性が低下する場合がある。そのため、透明電極層61,62のキャリア密度の膜厚方向の分布は、3×1020cm−3以下が好ましく、2×1020cm−3以下がより好ましく、1×1020cm−3以下がさらに好ましく、7×1019cm−3以下が特に好ましく、5×1019cm−3以下が最も好ましい。なお、透明電極層のキャリア密度の分布は、例えば分光エリプソメトリー等の光学測定により得られる近赤外領域の誘電関数を、Drudeモデルによりフィッティングすることで求められる。すなわち、Drudeモデルによるフィッティングにより、キャリアの緩和時間と抵抗率分布の膜厚方向プロファイルを得ることができ、その結果からキャリア密度を計算することができる。キャリア密度の膜厚方向の分布は、膜厚方向のプロファイルを5nmの膜厚領域ごとに平均した場合に、その平均値の膜厚方向の最大値と最小値の差が上記範囲内であることが好ましい。
透明電極層61,62のホール移動度は、50cm/Vs以上が好ましく、55cm/Vs以上がより好ましく、60cm/Vs以上がさらに好ましい。ホール移動度が上記範囲であれば、キャリア密度が4×1020cm−3以下であっても、透明電極層を低抵抗化できる。
透明電極層61,62の表面自由エネルギーは、80mN/m以上であることが好ましい。表面自由エネルギーが80mN/m以上であれば、透明電極層61,62表面に、印刷法やめっき法等により集電極71,72を形成する際の、導電性ペーストやめっき液に対する濡れ性が向上し、透明電極層と集電極との密着性を高められる。また、表面自由エネルギーが80mN/m以上であれば、透明電極層のキャリア密度が4×1020cm−3以下の場合でも、曲線因子や開放端電圧に優れる太陽電池が得られる。これは、表面自由エネルギーを大きくすることで、導電型シリコン系層41,42と透明電極層61,62との電気的なコンタクト性が高められるためであると推定される。本発明によれば、前述の特許文献2のような高キャリア密度のITO薄膜を有していない場合でも、曲線因子や開放端電圧が改善された太陽電池が得られる。また、透明電極層61,62のそれぞれが1層のITO薄膜からなるため、製膜中にガス流量等の製膜条件を変更する必要がなく、生産性が高められる。さらには、高キャリア密度のITO層を必要としないため、前述のように、透明電極層での光吸収ロスが低減され、太陽電池の短絡電流密度が高められる。
透明電極層61,62の表面自由エネルギーの上限は特に制限されない。表面自由エネルギーが大きくなると、透明電極層と集電極との密着性が高められる傾向がある。一方、表面自由エネルギーが大き過ぎる場合は、太陽電池の曲線因子や開放端電圧が低下する場合がある。そのため、透明電極層61,62の表面自由エネルギーは、130mN/m以下が好ましく、120mN/m以下がより好ましく、110mN/m以下がさらに好ましい。
第一の透明電極層61および第二の透明電極層62の製膜方法は特に限定されないが、生産性向上や、膜厚制御等の観点から、マグネトロンスパッタリング法が好ましい。製膜時の基板温度は、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。スパッタ製膜時の基板温度を低くすることで、低キャリア密度で表面自由エネルギーの大きいITO膜が得られやすい。また、基板温度の低下に伴って、非晶質のITO膜が形成され易くなる傾向がある。
製膜に際しては、アルゴン等の不活性ガスと酸素の混合ガスが、製膜室内に導入されることが好ましい。酸素の導入量は、全ガス導入量に対して0.5体積%〜10体積%が好ましく、0.8体積%〜5体積%がより好ましく、1体積%〜4体積%がさらに好ましい。上記範囲内で酸素導入量を大きくすると、透明電極層のキャリア密度が低下し、表面自由エネルギーが上昇する傾向がある。一方、酸素導入量が大き過ぎると、逆に表面自由エネルギーが低下する傾向がある。
製膜時の相対的な酸素のガス流量比だけでなく、全ガス導入量が変更されると、透明電極層のキャリア密度や表面自由エネルギーが変化する傾向があり、全ガス導入量が小さくなると、表面自由エネルギーが高められる傾向がある。これは、ガス導入量の低下によってスパッタ反応レートが低下し、膜中に取り込まれる酸素量が減少するためであると推定される。すなわち、ITO膜中に取り込まれる酸素量が減少すると、膜中の酸素欠損が増大し、この酸素欠損が、表面自由エネルギー(濡れ性)を高めるドライビングフォースになると考えられる。
ITO透明電極層の表面自由エネルギーを前述の範囲とするためのガス導入量の最適値は、製膜装置の容量や、基板温度、パワー密度等の他の要因によって左右されるため、一概に定めることはできないが、製膜系(製膜室)の排気能力に対するキャリアガスの相対的な導入量を小さくすることが好ましい。例えば、製膜室への全ガス導入量が、放電可能最小ガス流量の5倍以下となるように、不活性ガスの導入量が調整されることが好ましい。ここで、「放電可能最小ガス流量」とは、製膜室と排気手段(例えば真空ポンプ)とを排気抵抗を介さずに接続した場合(例えば排気調圧バルブを全開とした場合)に、製膜系にスパッタ放電を生じさせるための最小圧力を維持するのに必要となる導入ガス流量である。
ITO透明電極層61,62製膜時の製膜室内圧力は、0.1Pa〜0.5Paが好ましい。また、酸素分圧は、1×10−3Pa〜2×10−2Paが好ましく、2×10−3Pa〜1×10−2Paがより好ましく、4×10−3Pa〜8×10−3Paがさらに好ましい。パワー密度は0.2mW/cm〜1.2mW/cmが好ましい。非晶質のITO膜を得るためには、1.0mW/cm以下の低パワー密度で製膜が行われることが好ましい。また、透明電極層61,62製膜時のパワー密度を小さくすることで、製膜時の下地となるシリコン薄膜や単結晶シリコン基板へのダメージが低減され、太陽電池の開放端電圧や曲線因子の低下が抑制される傾向がある。また、製膜圧力を高くすることによっても、非晶質のITO膜が得られ易くなる傾向がある。
第一の透明電極層61および第二の透明電極層62は、非晶質膜であることがより好ましい。「非晶質膜」とは、X線回折では結晶由来のピークが観測されないものを指し、ITO膜では、X線回折によって、(220)面、(222)面、(400)面、(440)面のいずれの回折ピークも観察されないものが、非晶質膜である。なお、TEM等の高分解能観察によって結晶粒を観察できるものであっても、結晶子サイズが小さくX線結晶回折ピークが観察されないものは非晶質膜に包含される。
一般に、単結晶シリコン基板の厚みが、例えば250μm以下と小さい場合には、透明電極層形成後に、太陽電池に反りが生じて変換特性(特に開放端電圧)が低下する傾向がある。また、透明電極層形成後の集電極形成や変換効率の測定等の工程において、吸着法によりセルを処理台上に固定する場合に、セルの反り量が大きいと吸着不良を生じ、セルの割れや、隙間への異物吸い寄せ等の不具合を生じ、生産効率が低下する傾向がある。
これに対して、透明電極層が非晶質膜であれば、セルの反りが抑制されて、高い変換効率が維持されやすい。これは、非晶質のITO膜は、結晶性のITO膜に比して残留応力が小さい、あるいは残留応力を有していないため、基板の表裏での応力差が生じ難いことに関連すると推定される。特に、ヘテロ接合太陽電池では、光入射側と裏面側とで、膜厚の異なる透明電極層が形成される場合がある。例えば、反射防止層の機能を持たせて太陽電池内への光取り込み量を増大させるために、光入射側の透明電極層の膜厚dは100nm程度に設定されることが多い。一方、裏面側の透明電極層は、主に電気の取出し効率を高めるために、抵抗値等の電気的な設計の観点から、その膜厚dが決定されることが多い。このように、基板の表裏で透明電極層の膜厚が異なる場合、透明電極層が結晶性の場合は基板の反りを生じやすいが、第一の透明電極層61,および第二の透明電極層62の両者が非晶質のITO膜であれば、基板の反りが抑制される傾向がある。
第一の透明電極層61上および第二の透明電極層62上には、それぞれ集電極71,72が形成されることが好ましい。集電極は、インクジェット印刷、スクリーン印刷等の印刷法や、めっき法等により形成され得る。生産性の観点からは、集電極はスクリーン印刷により形成されることが好ましい。スクリーン印刷では、例えば、金属粒子と樹脂バインダーからなる導電ペーストがスクリーン印刷によって印刷される。
集電極が形成された後、集電極に用いられた導電ペーストの固化も兼ねて、セルのアニールが行われてもよい。アニールによって、透明電極層の透過率/抵抗率比の向上、接触抵抗や界面準位の低減といった各界面特性の向上等も得られる。
本発明の結晶シリコン系太陽電池は、実用に供するに際して、モジュール化されることが好ましい。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、集電極にタブ等のインターコネクタを介してバスバーが接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止剤およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
(膜厚)
透明電極の膜厚は、SEM(フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡S4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、10万倍の倍率で観察して求めた。
(キャリア密度)
無アルカリガラス(商品名「OA−10」、日本電気硝子社製)上に、各実施例および比較例の透明電極層と同一の製膜条件でITO膜を形成した。このサンプルを1cm四方に折り割り、その4つの角に金属インジウムを電極として融着して、ホール測定用のサンプルを作製した。この測定用サンプルに、磁力3500ガウスで、基板の対角方向に1mAの電流を流した際の電位差を基に、van der pauw法によりホール移動度を測定し、キャリア密度を算出した。
(表面自由エネルギー)
水、ジエチレングリコール、およびヨウ化メチレンを、透明電極層上に滴下し、それぞれの液滴と透明電極層表面との接触角θから、Owens−Wendt法により透明電極層の表面自由エネルギーを算出した。具体的には、下記の式(1),(2)にそれぞれの液滴の接触角θを代入して、連立方程式を解くことで、固体(透明電極層)の表面自由エネルギーγを決定した。
Figure 2014175441
式(1),(2)において、γは表面自由エネルギーであり、Lは液体、Sは固体を表す記号であり、dおよびhは、それぞれ表面自由エネルギーの分散成分と水素結合成分を表す記号である。
(透明電極の結晶性)
上記ホール測定用のサンプルと同一の無アルカリガラス上にITO膜が形成されたサンプルを用いて、X線回折法により、ピークの有無を識別することによって、透明電極層の結晶性を評価した。X線回折測定は、2θ/θ法により行い、2θの測定範囲を20〜80°とした。
(Ag集電極の密着性)
各実施例および比較例のp型側の透明電極層上に、銀ペースト(藤倉化成製 ドータイトFA−333)を、30mm角の範囲にスクリーン印刷法で形成後に、乾燥を行い、厚み30μmの銀層を形成して、付着強度評価用サンプルを作製した。カッターナイフにより、銀層に2mm幅の格子状に切り込みを入れ、試験用テープ(住友スリーエム製 550P))を貼り付け、垂直方向に一気に引き剥がした。
引き剥がしたテープ粘着面への銀層の付着率が40%未満のものを〇、40%以上60%未満のものを以下のものを△、60%以上のものを×とした。
(光電変換特性)
ソーラーシミュレータにより、AM1.5の光を100mW/cmの光量で照射して、開放端電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)および変換効率(Eff)を測定した。
[実施例1]
実施例1では、図1に模式的に示すヘテロ接合太陽電池が作製された。
シリコン基板として、異方性エッチングによって、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが表面に形成された厚み200μmのn型単結晶シリコン基板が用いられた。
この単結晶シリコン基板がCVD装置へ導入され、光入射面に真性非晶質シリコン層が3nmの膜厚で製膜された。製膜条件は、基板温度が150℃、圧力が120Pa、SiH/H流量比が3/10、パワー密度が0.011W/cmであった。
この真性非晶質シリコン層上に、p型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層の製膜条件は、基板温度が150℃、圧力が60Pa、SiH/B流量比が1/3、パワー密度が0.01W/cmであった。なお、Bガスとしては、HによりB濃度が5000ppmに希釈されたガスが用いられた。
単結晶シリコン基板の裏面側にも、同様の条件で真性非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。その上に、n型非晶質シリコン薄膜が10nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン薄膜の製膜条件は、基板温度が150℃、圧力60Pa、SiH/希釈PH流量比が1/2、高周波パワー密度が0.011W/cmであった。上記希釈PHガスとしては、HによりPH濃度が5000ppmに希釈されたガスが用いられた。
p型非晶質シリコン層上に、第一の透明電極層61として、ITOが、75nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化錫含有量が10重量%のITOが用いられ、キャリアガスとしてアルゴンと酸素が、それぞれ25sccm、0.3sccmの流量で導入され、基板温度25℃、圧力0.2Pa、パワー密度0.7W/cmの条件で製膜が行われた。
n型非晶質シリコン層上にも、第一の透明電極層と同様の製膜条件で、膜厚80nmのITOからなる第二透明電極層がスパッタ法により製膜された。
第一の透明電極層および第二の透明電極層のそれぞれの上に、集電極として、銀ペースト(藤倉化成製 ドータイトFA−333)がスクリーン印刷され、櫛形電極が形成された。集電極の間隔は10mmとした。集電極形成後に150℃で1時間アニール処理が施された。
[実施例2〜4、比較例1〜7]
実施例1の第一の透明電極層および第二の透明電極層の形成において、製膜条件(ターゲット中の酸化錫含有量、基板温度、圧力、パワー密度、ガス導入量)が表1に示すように変更された。それ以外は実施例1と同様にして、ヘテロ接合太陽電池が作製された。
[実施例5]
実施例5では、実施例2と同様の条件で第一の透明電極層および第二の透明電極層が形成されたが、単結晶シリコン基板の裏面側の真性非晶質シリコン層と第二の透明電極層との間に、n型非晶質シリコン薄膜とn型微結晶シリコン薄膜の2層からなるn層が形成された点において、実施例2と異なっていた。実施例5では、真性非晶質シリコン層上に、実施例2と同様に膜厚10nmのn型非晶質シリコン薄膜が形成され、その上に膜厚20nmの微結晶シリコン薄膜が製膜された。n型微結晶シリコン薄膜の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力800Pa、SiH/PH/H流量比が1/5/180、投入パワー密度0.08W/cmであった。
[比較例8]
比較例8では、第一の透明電極層が2層構成とされた。まず、ターゲットとして酸化錫含有量が10重量%のITOが用いられ、キャリアガスとして、アルゴンと酸素が、それぞれ50sccm、0.2sccmの流量で導入され、基板温度150℃、圧力0.2Pa、パワー密度0.7W/cmの条件で膜厚10nmのITO層Aが製膜された。その後、酸素流量が0.8sccmに変更され、膜厚65nmのITO層Bが製膜された。
各実施例および比較例における透明電極層の製膜条件、膜特性(キャリア密度、ホール移動度、表面自由エネルギー、結晶性、および銀層との密着性)、および太陽電池の変換特性を表1に示す。
Figure 2014175441
上記実施例および比較例の結果によれば、透明電極層の表面自由エネルギーが80mN/m以上である実施例1〜5の太陽電池は、いずれも、銀電極との密着性に優れ、かつ、各比較例よりも高い変換効率を示した。特に、各実施例では、比較例に比して、曲線因子および開放端電圧が向上している。これは、導電型シリコン層と透明電極層との界面接合状態、および銀電極との密着性の向上によるものと考えられる。
実施例1〜4および比較例1を対比すると、酸素流量の増加に伴ってキャリア密度が低下する傾向がみられる。これは、酸素流量の増加に伴って、ITO中の酸素欠損が減少することに起因すると考えられる。また、キャリア密度の減少に伴って、透明電極層による光吸収ロスが低減するため、短絡電流密度は増大する傾向がみられる。
一方、表面自由エネルギーは、キャリア密度とは異なる傾向がみられた。酸素流量が0.7sccmまでの範囲(実施例1〜3)では、酸素流量の増加に伴って表面自由エネルギーが低下する傾向がみられるものの、酸素流量が1.0sccm(実施例4)では、表面自由エネルギーが増大し、さらに酸素流量が2.0sccmまで増大されると(比較例1)表面自由エネルギーは再び低下していた。
アルゴンの導入量が50sccmに増大された比較例2では、酸素導入量が実施例3と実施例4の中間値であり、アルゴンと酸素の流量比が実施例1と実施例2の中間値であるが、実施例1〜4に比して、キャリア密度が増大し、表面自由エネルギーが低下する傾向がみられた。これは、供給ガス量の増大にともなって、ITO膜中に酸素が取り込まれ易くなり、酸素欠損が減少したことに関連していると推定される。
酸化錫含有量が5重量%のITO透明電極層が製膜された比較例4では、その他の製膜条件が実施例3と同一であるが、膜が結晶化されており、実施例3に比して、キャリア密度が増大し、表面自由エネルギーが低下していた。一方、比較例5では、製膜パワー密度を低下させることで、150℃の高温でも非晶質のITO膜が得られているが、表面自由エネルギーが小さく、太陽電池の開放端電圧および曲線因子の低下がみられた。
また、150℃で製膜が行われたこと以外は実施例2と同一の条件で透明電極層の製膜が行われた比較例6でも、キャリア密度の上昇および表面自由エネルギーの低下が生じ、変換特性が低下していた。比較例7では、導入ガス量を増大することによって、比較例6に比してキャリア密度が低下し、短絡電流密度が改善されているが、開放端電圧および曲線因子が低く、各実施例に比して変換効率が劣っている。
以上の結果から、透明電極層中の酸化錫含有量、製膜条件(特に供給ガス量)を調整することにより、表面自由エネルギーを所定範囲に調整可能であり、曲線因子および開放端電圧が向上されたヘテロ接合太陽電池が得られることが分かる。供給ガス量を低減させ、かつ室温等の低温で製膜が行われることにより、スパッタ粒子の運動エネルギー低下や、製膜表面の酸化防止等の効果が得られ、導電型シリコン系層と透明電極層との界面状態が改善されるとともに、集電極との密着性が高められ、これらの要因も曲線因子および開放端電圧の向上に寄与していると推定される。
比較例8では、比較例1〜7に比して曲線因子が向上し、変換効率が改善されている。これは、比較例8では、透明電極層の形成において、低酸素流量で高キャリア密度のITO膜Aが製膜され、その上に高酸素流量で低キャリア密度のITO膜Bが製膜されたため、高酸素流量で低キャリア密度のITO膜が1層のみ形成された比較例7よりも、透明電極層と導電型シリコン層との界面接合が改善されたことに起因すると考えられる。一方、比較例8では、膜全体のキャリア密度は4×1020cm−3未満であるにも関わらず、実施例1〜4に比して短絡電流密度が低下していた。これは、高キャリア密度のITO膜Aでの光吸収が大きく、透明電極層による光吸収ロスが増大したためと考えられる。さらに、比較例8では、透明電極層の表面自由エネルギーが小さいために、実施例1〜3に比して開放端電圧および曲線因子が低下していた。
この結果から、高キャリア密度のITO膜と低キャリア密度のITO膜の2層構成からなる透明電極層は、導電型シリコン層との界面接合の改善において有用であるものの、透明電極層での光吸収ロス低減、集電極との密着性等を総合的に考慮すると、実施例のように、所定の表面自由エネルギーを有する1層のITO膜からなる透明電極層が、変換効率向上に優れているといえる。
一方、真性非晶質シリコン層側(シリコン基板側)から、n型非晶質シリコン薄膜とn型微結晶シリコン薄膜の2層からなるn層が形成された実施例5では、透明電極層が同一の条件で形成された実施例2に比して、曲線因子が向上しており、変換効率も向上していた。実施例5では、実施例2に比してn層の合計膜厚増大による短絡電流密度の低下や、n型微結晶シリコン薄膜の欠陥に起因すると推定される開放電圧の低下がみられる。しかしながら、これらの低下量はわずかであり、界面接合の改善による曲線因子の向上が、短絡電流密度や開放電圧の低下を補って余りあるため、変換効率が向上していると考えられる。
1 : 単結晶シリコン基板
21,22 : 真性シリコン系薄膜
41 : p型シリコン系薄膜
42 : n型シリコン系薄膜
421 : n型非晶質シリコン系薄膜
422 : n型微結晶シリコン系薄膜
61,62 : 透明電極層
71,72 : 集電極

Claims (7)

  1. 導電型単結晶シリコン基板の一方の面に、p型シリコン系層および第一の透明電極層をこの順に有し、前記導電型単結晶シリコン基板の他方の面にn型シリコン系層および第二の透明電極層をこの順に有する結晶シリコン系太陽電池であって、
    前記p型シリコン系層と前記第一の透明電極層とが直接接しており、
    前記n型シリコン系層と前記第二の透明電極層とが直接接しており、
    前記第一の透明電極層および前記第二の透明電極層は、いずれも、
    酸化インジウムと酸化錫の合計に対する酸化錫の含有量が7重量%〜12重量%であるインジウム錫複合酸化物からなり、
    キャリア密度が、1×1020cm−3〜4×1020cm−3であり、
    表面自由エネルギーが、80mN/m以上である、
    結晶シリコン系太陽電池。
  2. 前記第一の透明電極層および前記第二の透明電極層が、いずれも非晶質のインジウム錫複合酸化物からなる、請求項1に記載の結晶シリコン系太陽電池。
  3. 前記第一の透明電極層および前記第二の透明電極層は、いずれも、ホール移動度が50cm/Vs以上である、請求項1または2に記載の結晶シリコン系太陽電池。
  4. 前記n型シリコン系層は、前記導電型単結晶シリコン基板側から、n型非晶質シリコン系薄膜およびn型微結晶シリコン系薄膜を、この順に有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶シリコン系太陽電池。
  5. 前記第一の透明電極層および前記第二の透明電極層上のそれぞれに、さらに集電極を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶シリコン系太陽電池。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶シリコン系太陽電池を備える太陽電池モジュール。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶シリコン系太陽電池を製造する方法であって、
    前記第一の透明電極層、および前記第二の透明電極層が、いずれも基板温度100℃以下のマグネトロンスパッタリング法により形成される、結晶シリコン系太陽電池の製造方法。
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