図1に模式的に示すように、本発明の太陽電池100は、光電変換部50の一主面上に集電極70を備える。集電極70は、光電変換部50側から順に、第一導電層71と第二導電層72とを含む。第一導電層71と第二導電層72との間には開口部を有する絶縁層90が形成されている。第二導電層72の一部は、絶縁層90の開口部9hを介して、第一導電層71に導通されている。
以下、本発明の一実施形態であるヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、「ヘテロ接合太陽電池」と記載する場合がある)を例として、本発明をより詳細に説明する。ヘテロ接合太陽電池は、一導電型の単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系薄膜を有することで、拡散電位が形成された結晶シリコン系太陽電池である。シリコン系薄膜としては非晶質のものが好ましい。中でも、拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン基板の間に、薄い真性の非晶質シリコン層を介在させたものは、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている。
図2は、本発明の一実施形態に係る結晶シリコン系太陽電池の模式的断面図である。結晶シリコン系太陽電池101は、光電変換部50として、一導電型単結晶シリコン基板1の一方の面(光入射側の面)に、導電型シリコン系薄膜3aおよび光入射側透明電極層6aをこの順に有する。一導電型単結晶シリコン基板1の他方の面(光入射側と反対の面)には、導電型シリコン系薄膜3bおよび裏面側透明電極層6bをこの順に有することが好ましい。光電変換部50表面の光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を含む集電極70が形成されている。第一導電層71と第二導電層72との間には、開口部を有する絶縁層90が形成されている。絶縁層90は、光電変換部側から、絶縁層91及び絶縁層92を含む。また透明電極層6aの第一導電層非形成領域上にも絶縁層90が形成されている。
一導電型単結晶シリコン基板1と導電型シリコン系薄膜3a,3bとの間には、真性シリコン系薄膜2a,2bを有することが好ましい。裏面側透明電極層6b上には裏面金属電極8を有することが好ましい。
まず、本発明の結晶シリコン系太陽電池における、一導電型単結晶シリコン基板1について説明する。一般的に単結晶シリコン基板は、導電性を持たせるために、シリコンに対して電荷を供給する不純物を含有している。単結晶シリコン基板は、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばボロン)を含有させたp型がある。すなわち、本発明における「一導電型」とは、n型またはp型のどちらか一方であることを意味する。
ヘテロ接合太陽電池では、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。そのため、光入射側のヘテロ接合は逆接合であることが好ましい。一方で、正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きい。以上の観点から、ヘテロ接合太陽電池に用いられる単結晶シリコン基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。単結晶シリコン基板1は、光閉じ込めの観点から、表面にテクスチャ構造を有することが好ましい。
テクスチャが形成された一導電型単結晶シリコン基板1の表面に、シリコン系薄膜が製膜される。シリコン系薄膜の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成条件としては、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.004〜0.8W/cm2が好ましく用いられる。シリコン系薄膜の形成に使用される原料ガスとしては、SiH4、Si2H6等のシリコン含有ガス、またはシリコン系ガスとH2との混合ガスが好ましく用いられる。
導電型シリコン系薄膜3は、一導電型または逆導電型のシリコン系薄膜である。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型が用いられる場合、一導電型シリコン系薄膜、および逆導電型シリコン系薄膜は、各々n型、およびp型となる。p型またはn型シリコン系薄膜を形成するためのドーパントガスとしては、B2H6またはPH3等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiH4やH2で希釈された混合ガスを用いることが好ましい。導電型シリコン系薄膜の製膜時に、CH4、CO2、NH3、GeH4等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。
シリコン系薄膜としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む薄膜)等が挙げられる。中でも非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型単結晶シリコン基板を用いた場合の光電変換部50の好適な構成としては、透明電極層6a/p型非晶質シリコン系薄膜3a/i型非晶質シリコン系薄膜2a/n型単結晶シリコン基板1/i型非晶質シリコン系薄膜2b/n型非晶質シリコン系薄膜3b/透明電極層6bの順の積層構成が挙げられる。この場合、前述の理由から、p層側を光入射面とすることが好ましい。
真性シリコン系薄膜2a,2bとしては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。単結晶シリコン基板上に、CVD法によってi型水素化非晶質シリコンが製膜されると、単結晶シリコン基板への不純物拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。また、膜中の水素量を変化させることで、エネルギーギャップにキャリア回収を行う上で有効なプロファイルを持たせることができる。
p型シリコン系薄膜は、p型水素化非晶質シリコン層、p型非晶質シリコンカーバイド層、またはp型非晶質シリコンオキサイド層であることが好ましい。不純物拡散の抑制や直列抵抗低下の観点ではp型水素化非晶質シリコン層が好ましい。一方、p型非晶質シリコンカーバイド層およびp型非晶質シリコンオキサイド層は、ワイドギャップの低屈折率層であるため、光学的なロスを低減できる点において好ましい。
ヘテロ接合太陽電池101の光電変換部50は、導電型シリコン系薄膜3a,3b上に、透明電極層6a,6bを備えることが好ましい。透明電極層は、透明電極層形成工程により形成される。透明電極層6a,6bは、導電性酸化物を主成分とする。導電性酸化物としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独または混合して用いることができる。導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましく用いられる。ここで「主成分とする」とは、含有量が50重量%より多いことを意味し、70重量%以上が好ましく、90%重量以上がより好ましい。透明電極層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。
透明電極層には、ドーピング剤を添加することができる。例えば、透明電極層として酸化亜鉛が用いられる場合、ドーピング剤としては、アルミニウムやガリウム、ホウ素、ケイ素、炭素等が挙げられる。透明電極層として酸化インジウムが用いられる場合、ドーピング剤としては、亜鉛や錫、チタン、タングステン、モリブデン、ケイ素等が挙げられる。透明電極層として酸化錫が用いられる場合、ドーピング剤としては、フッ素等が挙げられる。
ドーピング剤は、光入射側透明電極層6aおよび裏面側透明電極層6bの一方もしくは両方に添加することができる。特に、光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することが好ましい。光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することで、透明電極層自体が低抵抗化されるとともに、透明電極層6aと集電極7との間での抵抗損を抑制することができる。
光入射側透明電極層6aの膜厚は、透明性、導電性、および光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。透明電極層6aの役割は、集電極7へのキャリアの輸送であり、そのために必要な導電性があればよく、膜厚は10nm以上であることが好ましい。膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層6aでの吸収ロスが小さく、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。また、透明電極層6aの膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層内のキャリア濃度上昇も防ぐことができるため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。
透明電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法等の物理気相堆積法や、有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積(MOCVD)法等が好ましい。いずれの製膜方法においても、熱やプラズマ放電によるエネルギーを利用することもできる。
透明電極層作製時の基板温度は、適宜設定される。例えば、シリコン系薄膜として非晶質シリコン系薄膜が用いられる場合、200℃以下が好ましい。基板温度を200℃以下とすることにより、非晶質シリコン層からの水素の脱離や、それに伴うシリコン原子へのダングリングボンドの発生を抑制でき、結果として変換効率を向上させることができる。
裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8が形成されることが好ましい。裏面金属電極8としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等が挙げられる。裏面金属電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。
透明電極層6a上に、集電極70が形成される。集電極70は、第一導電層71と、第二導電層72とを含む。
第一導電層71と第二導電層72との間には、開口部を有する絶縁層90が形成される。絶縁層90は、光電変換部50の第一導電層非形成領域上にも形成される。絶縁層90は、最表面に第二絶縁層を有する。絶縁層90は、少なくとも第一導電層非形成領域において光電変換部50側から第一絶縁層91と第二絶縁層92をこの順に有する。絶縁層90は、第一導電層上においても第一絶縁層91と第二絶縁層92をこの順に有することが好ましい。絶縁層は、第一絶縁層91および第二絶縁層92の屈折率を各々n1,n2としたとき、n1>n2を満たす。すなわち光電変換部側から外側に向けて屈折率が小さいほうが好ましい。
本発明の集電極70において、第二導電層72の一部は、第一導電層71に導通されている。ここで「一部が導通されている」とは、典型的には絶縁層に開口部が形成され、その開口部に第二導電層の材料が充填されていることによって、導通されている状態であり、また絶縁層90の一部の膜厚が、数nm程度と非常に薄くなる(すなわち局所的に薄い膜厚の領域が形成される)ことによって、第二導電層72が第一導電層71に導通しているものも含む。例えば、第一導電層71の低融点材料がアルミニウム等の金属材料である場合、その表面に形成された酸化被膜(絶縁層に相当)を介して第一導電層71と第二導電層との間が導通されている状態が挙げられる。
絶縁層90に、第一導電層と第二導電層とを導通させるための開口部を形成する方法は特に制限されず、レーザー照射、機械的な孔開け、化学エッチング等の方法が採用できる。一実施形態では、第一導電層中の低融点材料を熱流動させることによって、その上に形成された絶縁層に開口部を形成する方法が挙げられる。
第一導電層中の低融点材料の熱流動により開口を形成する方法としては、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層90を形成後、低融点材料の熱流動開始温度T1以上に加熱(アニール)して第一導電層の表面形状に変化が生じさせ、その上に形成されている絶縁層90に開口(き裂)を形成する方法;あるいは、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層90を形成する際にT1以上に加熱することにより、低融点材料を熱流動させ、絶縁層の形成と同時に開口を形成する方法が挙げられる。
以下、第一導電層中の低融点材料の熱流動を利用して、絶縁層に開口を形成する方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、下記の実施形態に限定されない。
図3は、太陽電池の光電変換部50上への集電極70の形成方法の一実施形態を示す工程概念図である。この実施形態では、まず、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、図3(A))。例えば、ヘテロ接合太陽電池の場合は、前述のように、一導電型シリコン基板上に、シリコン系薄膜および透明電極層を備える光電変換部が準備される。
光電変換部の一主面上に、低融点材料711を含む第一導電層71が形成される(第一導電層形成工程、図3(B))。第一導電層71上には、絶縁層90が形成される(絶縁層形成工程、図3(C))。絶縁層90は、第一導電層71上に形成される。また光電変換部50の第一導電層71が形成されていない領域(第一導電層非形成領域)の少なくとも一部上にも形成される。特に、ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、第一導電層非形成領域上のほぼ全面にも絶縁層90が形成されることが好ましい。
絶縁層が形成された後、加熱によるアニール処理が行われる(アニール工程、図3(D))。アニール処理により、第一導電層71がアニール温度Taに加熱され、低融点材料が熱流動することによって表面形状が変化し、それに伴って第一導電層71上に形成された絶縁層90に変形が生じる。絶縁層90の変形は、典型的には、絶縁層への開口部9hの形成である。開口部9hは、例えばき裂状に形成される。
アニール処理により絶縁層に開口部を形成した後に、めっき法により第二導電層72が形成される(めっき工程、図3(E))。第一導電層71は絶縁層90により被覆されているが、絶縁層90に開口部9hが形成された部分では、第一導電層71が露出した状態である。そのため、第一導電層がめっき液に曝されることとなり、この開口部9hを起点として金属の析出が可能となる。このような方法によれば、集電極の形状に対応する開口部を有するレジスト材料層を設けずとも、集電極の形状に対応する第二導電層をめっき法により形成することができる。
さらに、絶縁層90は、光電変換部側から屈折率が大きい第一絶縁層91と屈折率が小さい第二絶縁層92をこの順に有し、光電変換部の一主面側(光入射側)の第一導電層非形成領域の少なくとも一部上にも形成される。従って、第一導電層上の開口部を通じて容易にめっきが可能になると共に、光電変換部上の反射防止効果を得ることも出来る。
(第一導電層)
第一導電層71は、めっき法により第二導電層が形成される際の導電性下地層として機能する層である。そのため、第一導電層は電解めっきの下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。なお、本明細書においては、体積抵抗率が10−2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、102Ω・cm以上であれば、絶縁性であると定義する。
第一導電層71の膜厚は、コスト的な観点から20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。一方、第一導電層71のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
第一導電層71は、熱流動開始温度T1の低融点材料を含むことが好ましい。熱流動開始温度とは、加熱により材料が熱流動を生じ、低融点材料を含む層の表面形状が変化する温度であり、典型的には融点である。高分子材料やガラスでは、融点よりも低温で材料が軟化して熱流動を生じる場合がある。このような材料では、熱流動開始温度=軟化点と定義できる。軟化点とは、粘度が4.5×106Pa・sとなる温度である(ガラスの軟化点の定義に同じ)。
低融点材料は、アニール処理において熱流動を生じ、第一導電層71の表面形状に変化を生じさせるものであることが好ましい。そのため、低融点材料の熱流動開始温度T1は、アニール温度Taよりも低温であることが好ましい。また、本発明においては、光電変換部50の耐熱温度よりも低温のアニール温度Taでアニール処理が行われることが好ましい。したがって、低融点材料の熱流動開始温度T1は、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
光電変換部の耐熱温度とは、当該光電変換部を備える太陽電池(「太陽電池セル」または「セル」ともいう)あるいは太陽電池セルを用いて作製した太陽電池モジュールの特性が不可逆的に低下する温度である。例えば、図2に示すヘテロ接合太陽電池101では、光電変換部50を構成する単結晶シリコン基板1は、500℃以上の高温に加熱された場合でも特性変化を生じ難いが、透明電極層6や非晶質シリコン系薄膜2,3は250℃程度に加熱されると、熱劣化を生じたり、ドープ不純物の拡散を生じ、太陽電池特性の不可逆的な低下を生じたりする場合がある。そのため、ヘテロ接合太陽電池においては、第一導電層71は、熱流動開始温度T1が250℃以下の低融点材料を含むことが好ましい。
低融点材料の熱流動開始温度T1の下限は特に限定されない。アニール処理時における第一導電層の表面形状の変化量を大きくして、絶縁層90に開口部9hを容易に形成する観点からは、第一導電層の形成工程において、低融点材料は熱流動を生じないことが好ましい。例えば、塗布や印刷により第一導電層が形成される場合は、乾燥のために加熱が行われることがある。この場合は、低融点材料の熱流動開始温度T1は、第一導電層の乾燥のための加熱温度よりも高温であることが好ましい。かかる観点から、低融点材料の熱流動開始温度T1は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
低融点材料は、熱流動開始温度T1が上記範囲であれば、有機物であっても、無機物であってもよい。低融点材料は、電気的には導電性であっても、絶縁性でも良いが、導電性を有する金属材料であることが望ましい。低融点材料が金属材料であれば、第一導電層の抵抗値を小さくできるため、電気めっきにより第二導電層が形成される場合に、第二導電層の膜厚の均一性を高めることができる。また、低融点材料が金属材料であれば、光電変換部50と集電極70との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
低融点材料としては、低融点金属材料の単体もしくは合金、複数の低融点金属材料の混合物を好適に用いることができる。低融点金属材料としては、例えば、インジウムやビスマス、ガリウム等が挙げられる。
第一導電層71は、上記の低融点材料に加えて、低融点材料よりも相対的に高温の熱流動開始温度T2を有する高融点材料を含有することが好ましい。第一導電層71が高融点材料を有することで、第一導電層と第二導電層とを効率よく導通させることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。例えば、低融点材料として表面エネルギーの大きい材料が用いられる場合、アニール処理により第一導電層71が高温に曝されて、低融点材料が液相状態になると、図4に概念的に示すように、低融点材料の粒子が集合して粗大な粒状となり、第一導電層71に断線を生じる場合がある。これに対して、高融点材料はアニール処理時の加熱によっても液相状態とならないため、第一導電層形成材料中に高融点材料を含有することによって、図4に示すような低融点材料の粗大化による第一導電層の断線が抑制され得る。
高融点材料の熱流動開始温度T2は、アニール温度Taよりも高いことが好ましい。すなわち、第一導電層71が低融点材料および高融点材料を含有する場合、低融点材料の熱流動開始温度T1、高融点材料の熱流動開始温度T2、およびアニール処理におけるアニール温度Taは、T1<Ta<T2を満たすことが好ましい。高融点材料は、絶縁性材料であっても導電性材料であってもよいが、第一導電層の抵抗をより小さくする観点から導電性材料が好ましい。また、低融点材料の導電性が低い場合は、高融点材料として導電性の高い材料を用いることにより、第一導電層全体としての抵抗を小さくすることができる。導電性の高融点材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの金属材料の単体もしくは、複数の金属材料を好ましく用いることができる。
第一導電層71が低融点材料と高融点材料とを含有する場合、その含有比は、上記のような低融点材料粗大化による断線の抑止や、第一導電層の導電性、絶縁層への開口部の形成容易性(第二導電層の金属析出の起点数の増大)等の観点から、適宜に調整される。その最適値は、用いられる材料や粒径の組合せに応じて異なるが、例えば、低融点材料と高融点材料の重量比(低融点材料:高融点材料)は、5:95〜67:33の範囲である。低融点材料:高融点材料の重量比は、10:90〜50:50がより好ましく、15:85〜35:65がさらに好ましい。
第一導電層71の材料として、金属粒子等の粒子状低融点材料が用いられる場合、アニール処理による絶縁層への開口の形成を容易とする観点から、低融点材料の粒径DLは、第一導電層の膜厚dの1/20以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましい。低融点材料の粒径DLは、0.25μm以上が好ましく、0.50μm以上がより好ましい。また、第一導電層71が、スクリーン印刷等の印刷法により形成される場合、粒子の粒径は、スクリーン版のメッシュサイズ等に応じて適宜に設定され得る。例えば、粒径は、メッシュサイズより小さいことが好ましく、メッシュサイズの1/2以下がより好ましい。なお、粒子が非球形の場合、粒径は、粒子の投影面積と等面積の円の直径(投影面積円相当径、Heywood径)により定義される。
低融点材料の粒子の形状は特に限定されないが、扁平状等の非球形が好ましい。また、球形の粒子を焼結等の手法により結合させて非球形としたものも好ましく用いられる。一般に、金属粒子が液相状態となると、表面エネルギーを小さくするために、表面形状が球形となりやすい。アニール処理前の第一導電層の低融点材料が非球形であれば、アニール処理により熱流動開始温度T1以上に加熱されると、粒子が球形に近付くため、第一導電層の表面形状の変化量がより大きくなる。そのため、第一導電層71上の絶縁層90への開口部の形成が容易となる。
前述のごとく、第一導電層71は導電性であり、体積抵抗率が10−2Ω・cm以下であればよい。第一導電層71の体積抵抗率は、10−4Ω・cm以下であることが好ましい。第一導電層が低融点材料のみを有する場合は、低融点材料が導電性を有していればよい。第一導電層が、低融点材料および高融点材料を含有する場合は、低融点材料および高融点材料のうち、少なくともいずれか一方が導電性を有していればよい。例えば、低融点材料/高融点材料の組合せとしては、絶縁性/導電性、導電性/絶縁性、導電性/導電性が挙げられるが、第一導電層をより低抵抗とするためには、低融点材料および高融点材料の双方が導電性を有する材料であることが好ましい。
第一導電層71の材料として上記のような低融点材料と高融点材料との組合せ以外に、材料の大きさ(例えば、粒径)等を調整することにより、アニール処理時の加熱による第一導電層の断線を抑制し、変換効率を向上させることも可能である。例えば、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、粒径が1μm以下の微粒子であれば、融点よりも低温の200℃程度あるいはそれ以下の温度T1’で焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じるため、本発明の「低融点材料」として用いることができる。このような焼結ネッキングを生じる材料は、焼結ネッキング開始温度T1’以上に加熱されると、微粒子の外周部付近に変形が生じるため、第一導電層の表面形状を変化させ、絶縁層90に開口部を形成することができる。また、微粒子が焼結ネッキング開始温度以上に加熱された場合であっても、融点T2’未満の温度であれば微粒子は固相状態を維持するため、図4に示すような材料の粗大化による断線が生じ難い。すなわち、金属微粒子等の焼結ネッキングを生じる材料は、本発明における「低融点材料」でありながら、「高融点材料」としての側面も有しているといえる。
このような焼結ネッキングを生じる材料では、焼結ネッキング開始温度T1’=熱流動開始温度T1と定義できる。図5は、焼結ネッキング開始温度について説明するための図である。図5(A)は、焼結前の粒子を模式的に示す平面図である。焼結前であることから、粒子は互いに点で接触している。図5(B)および図5(C)は、焼結が開始した後の粒子を、各粒子の中心を通る断面で切ったときの様子を模式的に示す断面図である。図5(B)は焼結開始後(焼結初期段階)、図5(C)は、(B)から焼結が進行した状態を示している。図5(B)において、粒子A(半径rA)と粒子B(半径rB)との粒界は長さaABの点線で示されている。
焼結ネッキング開始温度T1’は、rAとrBの大きい方の値max(rA,rB)と、粒界の長さaABとの比、aAB/max(rA,rB)が、0.1以上となるときの温度で定義される。すなわち、少なくとも一対の粒子のaAB/max(rA,rB)が0.1以上となる温度を焼結ネッキング開始温度という。なお、図5では単純化のために、粒子を球形として示しているが、粒子が球形でない場合は、粒界近傍における粒子の曲率半径を粒子の半径とみなす。また、粒界近傍における粒子の曲率半径が場所によって異なる場合は、測定点の中で最も大きな曲率半径を、その粒子の半径とみなす。例えば、図6(A)に示すように、焼結を生じた一対の微粒子A,B間には、長さaABの粒界が形成されている。この場合、粒子Aの粒界近傍の形状は、点線で示された仮想円Aの弧で近似される。一方、粒子Bの粒界近傍は、一方が破線で示された仮想円B1の弧で近似され、他方が実線で示された仮想円B2の弧で近似される。図6(B)に示されるように、rB2>rB1であるため、rB2を粒子Bの半径rBとみなす。なお、上記の仮想円は、断面もしくは表面の観察像の白黒2値化処理により境界を定め、粒界近傍の境界の座標に基づいて最小二乗法により中心座標および半径を算出する方法により、決定できる。なお、上記の定義により焼結ネッキング開始温度を厳密に測定することが困難な場合は、微粒子を含有する第一導電層71を形成し、加熱により絶縁層に開口部(き裂)が生じる温度を焼結ネッキング開始温度とみなすことができる。後述するように、絶縁層形成時に加熱が行われる場合は、絶縁層形成時の基板の加熱により開口部(き裂)が生じる温度を焼成ネッキング開始温度とみなすことができる。
第一導電層の形成材料には、上記の低融点材料(および高融点材料)に加えて、バインダー樹脂等を含有するペースト等を好ましく用いることができる。また、スクリーン印刷法により形成された第一導電層の導電性を十分向上させるためには、熱処理により第一導電層を硬化させることが望ましい。したがって、ペーストに含まれるバインダー樹脂としては、上記乾燥温度にて硬化させることができる材料を用いることが好ましく、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等が適用可能である。この場合、硬化とともに低融点材料の形状が変化し、図3(D)に示すように、アニール処理時に、低融点材料近傍の絶縁層に開口(き裂)が生じやすくなるためである。なお、バインダー樹脂と導電性の低融点材料の比率は、いわゆるパーコレーションの閾値(導電性が発現する低融点材料含有量に相当する比率の臨界値)以上になるように設定すればよい。
第一導電層71は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法等の公知技術によって作製できる。第一導電層71は、櫛形等の所定形状にパターン化されていることが好ましい。パターン化された第一導電層の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。スクリーン印刷法では、金属粒子からなる低融点材料を含む印刷ペースト、および集電極のパターン形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、集電極パターンを印刷する方法が好ましく用いられる。
一方、印刷ペーストとして、溶剤を含む材料が用いられる場合には、溶剤を除去するための乾燥工程が必要となる。前述のごとく、この場合の乾燥温度は、低融点材料の熱流動開始温度T1よりも低温であることが好ましい。乾燥時間は、例えば5分間〜1時間程度で適宜に設定され得る。
第一導電層は、複数の層から構成されてもよい。例えば、光電変換部表面の透明電極層との接触抵抗が低い下層と、低融点材料を含む上層からなる積層構造であっても良い。このような構造によれば、透明電極層との接触抵抗の低下に伴う太陽電池の曲線因子向上が期待できる。また、低融点材料含有層と、高融点材料含有層との積層構造とすることにより、第一導電層のさらなる低抵抗化が期待できる。
以上、第一導電層が印刷法により形成される場合を中心に説明したが、第一導電層の形成方法は印刷法に限定されるものではない。例えば、第一導電層は、パターン形状に対応したマスクを用いて、蒸着法やスパッタ法により形成されてもよい。
(絶縁層)
第一導電層71上には、絶縁層90が形成される。ここで、第一導電層71が所定のパターン(例えば櫛形)に形成された場合、光電変換部50の表面上には、第一導電層が形成されている第一導電層形成領域と、第一導電層が形成されていない第一導電層非形成領域とが存在する。
本発明において、絶縁層90は、第一導電層形成領域と第一導電層非形成領域に形成される。この際、第一導電層形成領域と第一導電層非形成領域の各々において、少なくとも一部に形成されていればよい。絶縁層90は、第一導電層形成領域においては、上述のように開口部を有する。また絶縁層90は、第一導電層非形成領域においては、ほぼ全面に形成されていることが好ましい。ここで「ほぼ全面」とは、90%以上が絶縁層で覆われていることを意味し、95%以上が覆われていることが好ましく、100%すなわち第一導電層非形成領域の全面に形成されていることが特に好ましい。これにより、後述のAR効果がより期待できる。また絶縁層が第一導電層非形成領域にも形成されることで、めっき法により第二導電層が形成される際に、光電変換部をめっき液から化学的および電気的に保護することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、透明電極層の表面に絶縁層が形成されることで、透明電極層とめっき液との接触が抑止され、透明電極層上への金属層(第二導電層)の析出を防ぐことができる。また、生産性の観点からも、第一導電層形成領域と第一導電層非形成領域との全体に絶縁層が形成されることがより好ましい。
光電変換部の最表面層として通常、透明電極層(屈折率:1.90〜2.10程度)または導電型半導体層(屈折率:3.00〜4.00程度)が用いられる。例えばヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層(一般には屈折率:1.90〜2.10程度)を有する場合、界面での光反射防止効果を高めて太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させるために、絶縁層の屈折率は、空気(屈折率=1.00)と透明電極層との中間的な値であることが好ましい。また、太陽電池セルが封止されてモジュール化される場合、絶縁層の屈折率は、封止剤(屈折率:1.4〜1.5程度)と透明電極層の中間的な値であることが好ましい。
本発明において絶縁層90は、酸化シリコンを主成分とし、最表面に第二絶縁層を有する。また光電変換部の第一導電層非形成領域において、光電変換部側から第一絶縁層91と第二絶縁層92をこの順に有する。生産性の観点から第一導電層上においても第一絶縁層91と第二絶縁層92をこの順に有することが好ましい。
また第一絶縁層91と第二絶縁層92の屈折率を各々n1,n2としたときn2<n1を満たす。また光電変換部の最表面層の屈折率をntとしたとき1.4<n2<n1<ntを満たす。上記範囲の屈折率を有する絶縁層を用いることにより、光電変換部側から順に段階的に屈折率が小さくなるため、反射防止効果が得られる。
ここで、通常、反射は異なる屈折率を有する材料の界面を光が透過する際に発生する。光電変換部の最表面層/絶縁層の界面と、絶縁層の界面/空気(もしくは封止剤)の界面で生じうる。従って、本発明における絶縁層は、少なくとも光電変換部の最表面層との界面の屈折率がn1、空気(もしくは封止剤)との界面の屈折率がn2であればよい。すなわち絶縁層は、完全な2層でなくとも、光電変換部側から段階的に屈折率が小さくなっているものであっても良い。
かかる観点から、絶縁層90の屈折率としては、n1=1.70〜1.90が好ましく、n2=1.40〜1.70が好ましい。上記範囲とすることにより、反射防止効果をより高めることができる。またn1=1.75〜1.80がより好ましく、n2=1.50〜1.60がより好ましい。
また本発明においては、最表面に第二絶縁層を有する絶縁層を用いることにより、第一導電層上の絶縁層に開口部が形成された場合であっても、開口部上に効率よく第二導電層を形成することができる。特に、ヘテロ接合太陽電池等、光電変換部の最表面層として透明電極層を有するものを用いた場合、第一導電層非形成領域上における光電変換部をめっき液から保護しつつ、効率よく第一導電層上の開口部を通じて第二導電層をめっきにより形成することができる。中でもめっき効率をより向上させる観点から、n2=1.50〜1.60がより好ましく、n2=1.50〜1.55がより好ましい。
本発明においては、前記第一絶縁層と第二絶縁層の酸素原子とシリコン原子の組成比(O/Si)が、各々、1.1≦OA/SiA<1.5及び1.5≦OB/SiB≦1.9を満たすことが好ましい。この範囲とすることにより、反射防止効果をより高めることが期待できる。中でも、1.0≦OA/SiA≦1.4及び1.6≦OB/SiB≦1.8がより好ましい。なお、上記組成比は、XPS測定(X線光電子分光測定)により測定することができる。
絶縁層の屈折率は、絶縁層の材料、組成等により所望の範囲に調整され得る。例えば、酸化シリコンの場合は、酸素含有量を小さくすることにより、屈折率が高くなる。なお、本明細書における屈折率は、特に断りがない限り、波長600nmの光に対する屈折率であり、分光エリプソメトリーにより測定される値である。また、絶縁層の屈折率に応じて、反射防止特性が向上するように絶縁層の光学膜厚(屈折率×膜厚)が設定されることが好ましい。
本発明における絶縁層90の材料としては、酸化シリコンを主成分としたものを用いる。ここで「主成分とする」とはある材料を50%より多く含むことを意味する。また、絶縁層90として酸化シリコンを主成分としたものを用いることにより、めっき液に対する化学的安定性を高めることができる。これにより、第二導電層形成時のめっき工程中に、絶縁層が溶解しにくく、光電変換部表面へのダメージが生じにくくなる。
また、第一導電層非形成領域上にも絶縁層90が形成されるため、光電変換部50との付着強度を大きくすることができる。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、光電変換部50表面の透明電極層6aとの付着強度が大きいことが好ましい。この際、酸化シリコンを主成分とする絶縁層を有することにより、透明電極層との付着強度を大きくすることができ、これにより、めっき工程中に、絶縁層が剥離しにくくなり、透明電極層上への金属の析出を防ぐことができる。
酸化シリコンは、光吸収が少ないため、光電変換部50の光入射面側に形成される場合、所定の屈折率に調整することにより、より多くの光を光電変換部へ取り込むことが可能となる。これにより、第二導電層形成後に絶縁層を除去することなく、そのまま太陽電池として使用することができる。そのため、太陽電池の製造工程を単純化でき、生産性をより向上させることが可能となる。また絶縁層90は、透明性に加えて、十分な耐候性、および熱・湿度に対する安定性を有する材料を用いることがより望ましい。
絶縁層90は、透過率が90%以上であることが好ましく、95%以上がより好ましい。上述のように、酸化シリコンは、化学的安定性、光電変換部との密着性、透明性の観点から、絶縁層により多く含まれることが好ましい。すなわち、本発明における絶縁層は、酸化シリコンを、70%以上有することが好ましく、90%以上有することがより好ましく、100%有することがより好ましい。なお本発明における絶縁層は、本発明の機能を損なわない限り、酸化シリコン以外に別の材料が含まれていても良い。
本発明における絶縁層は、めっき効率を向上させる点や、めっき液の除去を容易とする点から、基板12表面の濡れ性が制御されることが好ましい。表面の濡れ性は、水に対する接触角θにより評価することができる。基板12表面の水との接触角θは、20°以上90°以下であることが好ましい。
一般的に、ITO等の透明電極層や、酸化シリコン等の絶縁層は親水性である。また、一般的に、シリコン基板は表面に酸化被膜が形成されているために親水性である。そのため、基板12の表面、すなわち光電変換部50の表面や絶縁層90の表面の水との接触角は、10°程度あるいはそれ以下である場合が多い。しかしながら、基板12表面に残留するめっき液の量や、第一導電層非形成領域への金属の析出をより低減する観点から、基板表面の水との接触角θは大きい方が好ましく、20°以上が好ましい。
基板表面の水との接触角を上記範囲にすることにより、めっき工程後にめっき槽から取り出された基板12表面に残留するめっき液の量を低減できるとともに、エアーブローによるめっき液の除去が容易となる。また、めっき槽からのめっき液の持ち出し量が低減するため、めっき液の利用効率を向上させることができる。中でも30°以上がより好ましく、40°以上が特に好ましい。
本発明においては、所定の屈折率を有する絶縁層90を用いることにより、基板12の表面の接触角を容易に前述の範囲とすることができる。例えば絶縁層90の製膜条件を調整し、膜中のシリコン原子の含有量を増加させることで絶縁層表面のめっき液に対する濡れ性を低下させ、水に対する接触角を大きくすることができる。
一方、本発明者らの検討結果によれば、第二導電層形成時のめっき効率(基板上へめっきされた金属の重量/(電流×時間))及び均一性を向上させる観点から、水との接触角θは、90°以下が好ましく、80°以下がより好ましく、70°以下がさらに好ましい。基板表面の接触角θが前記範囲であれば、基板表面への金属析出が阻害されることがないため、基板ホルダ14等の不所望の箇所への金属の析出が抑制され、十分なめっき効率が実現されると推定される。ここでレジスト等により第一導電層以外の部分に絶縁層を形成し、第一導電層の全面にめっき層を形成した従来のものと異なり、本発明においては、第一導電層上に開口部を有する絶縁層が形成され、該開口部にめっき層が形成される。
このため、第一導電層が微細な凹凸構造を有し、微細凹凸構造上に開口部が形成された場合、水接触角が大きいと、めっきされ難くなる場合がある。しかしながら、絶縁層形成後の基板表面の水との接触角を上記範囲とすることにより、開口部を有する場合であってもめっき効率を向上させることができる。
残留めっき液量の低減や、めっき効率等を最適化するための基板表面の接触角θの最適値は、基板12の表面形状によっても異なる。例えば、図2に示すヘテロ接合太陽電池のように、結晶シリコン基板1の表面形状に由来する数μmから数十μmオーダーの表面テクスチャ構造を有する場合、基板12表面の水との接触角θは、30°〜90°の範囲がより好ましく、40°〜80°の範囲がさらに好ましく、50°〜70の範囲が特に好ましい。一方、基板12が表面テクスチャを有していない場合、水との接触角は、20°〜60°がより好ましく、30°〜50°がさらに好ましい。また、薄膜太陽電池のように、絶縁性基板の表面形状や、薄膜の結晶構造に由来するオーダーの表面テクスチャ構造を有する場合、基板12表面の水との接触角θは、25°〜70°の範囲がより好ましく、35°〜60°の範囲がさらに好ましい。
なお、「基板表面」とは、めっき工程においてめっき液と接触する可能性がある表面のことを指す。すなわち、「基板表面」は、(1)光電変換部表面、(2)第一導電層表面、もしくは(3)絶縁層表面を意味する。第一導電層形成領域および第一導電層非形成領域の両方の表面に絶縁層90が形成されている場合、「基板表面」とは絶縁層の表面を指す。なお、光電変換部50の表面に透明電極層を有する形態においては、少なくとも透明電極層の露出部に絶縁層が形成されることが好ましい。
接触角は、接触角計を用いて、基板と、空気と水との接触線とがなす角を測定することにより求められる。なお、図2に示す結晶シリコン系太陽電池のように、基板表面に、数μmから数十μmオーダーの表面テクスチャ構造(凹凸構造)を有する場合、図8(A1)および(A2)に示すように、表面構造程度のスケールの微視的な領域では、場所によって、基板面と接触線の角度が変化する。そのため、基板表面にテクスチャ構造を有する場合、接触角は、表面が均一とみなせる程度(例えば、表面構造の大きさの10倍程度)の視野で観察したときに得られる、基板と接触線との角度により定義される(図8(B)参照)。
本発明においては、少なくとも第一導電層非形成領域上における絶縁層90は、光電変換部側から第一絶縁層91と第二絶縁層92を有するため、光電変換部側から表面側に向かって屈折率が小さくなる。すなわち光電変換部側が撥水性、表面側が親水性になる傾向がある。これにより、絶縁層90の表面上に不具合(例えば、ピンホール)が生じた場合でも、その下により撥水性の第一絶縁層を有するため、不具合部分の下に存在する光電変換部へのめっき工程でのダメージが抑制されるとともに、当該不具合部分への金属の析出を抑制することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層6aを有する構成では、光電変換部の表面をめっき液から保護する効果がより期待できる。ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層を有する構成では、絶縁層90により、透明電極層6aの表面がめっき液から保護される。そのため、第一導電層非形成領域の透明電極層上への金属の析出による遮光損や、電流リーク等の不具合が抑制され、太陽電池の変換効率向上が期待できる。すなわち、絶縁層が撥水性を有することにより、光電変換部の表面をめっき液から保護する効果がより期待できる。
絶縁層90の膜厚は、絶縁層の材料や形成方法に応じて適宜設定される。絶縁層90の膜厚は、アニール処理における第一導電層の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等によって、絶縁層に開口部が形成され得る程度に薄いことが好ましい。かかる観点から、絶縁層90の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。また、第一導電層非形成部における絶縁層90の光学特性や膜厚を適宜設定することで、光反射特性を改善し、太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させ、変換効率をより向上させることが可能となる。このような効果を得るためには、絶縁層90の屈折率が、光電変換部50表面の屈折率よりも低いことが好ましい。また、絶縁層90に好適な反射防止特性を付与する観点から、膜厚は30nm〜250nmの範囲内で設定されることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内で設定されることがより好ましい。なお、第一導電層形成領域上の絶縁層の膜厚と第一導電層非形成領域上の絶縁層の膜厚は異なっていてもよい。例えば、第一導電層形成領域では、アニール処理による開口部の形成を容易とする観点で絶縁層の膜厚が設定され、第一導電層非形成領域では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように絶縁層の膜厚が設定されてもよい。
上述のように、生産性の観点から、第一導電層非形成領域と第一導電層上のいずれも、絶縁層として第一絶縁層と第二絶縁層を形成することが好ましい。なお、本発明の機能を損なわない限り、絶縁層は3層以上でもよく、例えばn2<n3<n1を満たす第三絶縁層を第一絶縁層と第二絶縁層の間に形成してもよい。
また、本発明の絶縁層は、第一絶縁層を形成後に、放電を止めるなどにより一旦製膜を止めて第二絶縁層を形成してもよく、また第一絶縁層と第二絶縁層を連続して製膜しても良い。第一絶縁層と第二絶縁層を連続して製膜する方法としては、例えば、後述のCVD法により、第一絶縁層製膜時に放電を切ることなく、製膜雰囲気(ガス流量比など)を変更することにより形成することができる。
絶縁層は、公知の方法を用いて形成できる。プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法やスピンコート法、スクリーン印刷法等の湿式法が挙げられる。本発明においては、無機材料である酸化シリコンを主成分とする絶縁層を用いるため、プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法が好ましく用いられる。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。
中でも、より緻密な構造の膜を形成する観点から、絶縁層90はプラズマCVD法で形成されることが好ましい。この方法により、200nm程度の厚いものだけでなく、30〜100nm程度の薄い膜厚の絶縁層を形成した場合も、緻密性の高い構造の膜を形成することができる。
例えば、図2に示す結晶シリコン系太陽電池のように、光電変換部50の表面にテクスチャ構造(凹凸構造)を有する場合、テクスチャの凹部や凸部にも精度よく膜形成できる観点からも、絶縁層はプラズマCVD法により形成されることが好ましい。緻密性が高い絶縁層を用いることにより、めっき処理時の透明電極層へのダメージを低減できることに加えて、透明電極層上への金属の析出を防止することができる。このように緻密性が高い絶縁膜は、図2の結晶シリコン系太陽電池におけるシリコン系薄膜3のように、光電変換部50内部の層に対しても、水や酸素などのバリア層として機能し得るため、太陽電池の長期信頼性の向上の効果も期待できる。
なお、第一導電層71と第二導電層72との間にある絶縁層90、すなわち第一導電層形成領域上の絶縁層90の形状は、必ずしも連続した層状でなくてもよく、島状であっても良い。なお、本明細書における「島状」との用語は、表面の一部に、絶縁層90が形成されていない非形成領域を有する状態を意味する。
本発明において、絶縁層90は、第一導電層71と第二導電層72との付着力の向上にも寄与し得る。例えば、下地電極層であるAg層上にめっき法によりCu層が形成される場合、Ag層とCu層との付着力は小さいが、酸化シリコン等の絶縁層上にCu層が形成されることにより、第二導電層の付着力が高められ、太陽電池の信頼性を向上することが期待される。
(第一導電層)
上述のように、第一導電層として例えば低融点材料を有する場合、第一導電層71上に縁層が形成された後第二導電層72が形成される前にアニール処理が行われる。アニール処理時に、第一導電層71が低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温に加熱され、低融点材料が流動状態となるために、第一導電層の表面形状が変化する。この変化に伴って、その上に形成される絶縁層9に開口部9hが形成される。したがって、その後のめっき工程において、第一導電層71の表面の一部が、めっき液に曝されて導通するため、図3(E)に示すように、この導通部を起点として金属を析出させることが可能となる。
なお、この場合、開口部は主に第一導電層71の低融点材料711上に形成される。低融点材料が絶縁性材料の場合、開口部の直下は絶縁性であるが、低融点材料の周辺に存在する導電性の高融点材料にもめっき液が浸透するために、第一導電層とめっき液とを導通させることが可能である。
アニール処理時におけるアニール温度(加熱温度)Taは、低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温、すなわちT1<Taであることが好ましい。アニール温度Taは、T1+1℃≦Ta≦T1+100℃を満たすことがより好ましく、T1+5℃≦Ta≦T1+60℃を満たすことがさらに好ましい。アニール温度は、第一導電層の材料の組成や含有量等に応じて適宜設定され得る。
また、前述のごとく、アニール温度Taは、光電変換部50の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。光電変換部の耐熱温度は、光電変換部の構成により異なる。例えば、ヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池のように透明電極層や非結晶質シリコン系薄膜を有する場合の耐熱温度は250℃程度である。そのため、光電変換部が非晶質シリコン系薄膜を備えるヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池の場合、非晶質シリコン系薄膜およびその界面での熱ダメージ抑制の観点から、アニール温度は250℃以下に設定されることが好ましい。より高性能の太陽電池を実現するためにはアニール温度は200℃以下にすることがより好ましく、180℃以下にすることがさらに好ましい。これに伴って、第一導電層71の低融点材料の熱流動開始温度T1は、250℃未満であることが好ましく、200℃未満がより好ましく、180℃未満がさらに好ましい。
一方、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に逆導電型の拡散層を有する結晶シリコン太陽電池は、非晶質シリコン薄膜や透明電極層を有していないため、耐熱温度は800℃〜900℃程度である。そのため、250℃よりも高温のアニール温度Taでアニール処理が行われてもよい。
なお、絶縁層への開口部の形成方法は、上記のように、絶縁層形成後にアニール処理を行う方法に限定されない。例えば、図3(破線矢印)で示されるように、絶縁層90の形成と同時に開口部9hを形成することもできる。
例えば、基板を加熱しながら絶縁層が形成されることで、絶縁層の形成と略同時に開口部が形成される。ここで、「絶縁層の形成と略同時」とは、絶縁層形成工程の他に、アニール処理等の別途の工程が行われていない状態、すなわち、絶縁層の製膜中、あるいは製膜直後の状態を意味する。製膜直後とは、絶縁層の製膜終了後(加熱停止後)から、基板が冷却され室温等に戻るまでの間も含むものとする。また、低融点材料上の絶縁層に開口部が形成される場合、低融点材料上の絶縁層の製膜が終わった後であっても、その周辺に絶縁層が製膜されることに追随して、低融点材料周辺の絶縁層に変形が生じ、開口部が形成される場合も含むものとする。
絶縁層の形成と略同時に開口部を形成する方法としては、例えば、絶縁層形成工程において、第一導電層71の低融点材料711の熱流動開始温度T1よりも高い温度Tbに基板を加熱しながら、第一導電層71上に絶縁層90を製膜する方法が用いられる。低融点材料が流動状態となっている第一導電層上に絶縁層90が製膜されるため、製膜と同時に製膜界面に応力が生じ、例えばき裂状の開口が絶縁層に形成される。
なお、絶縁層形成時の基板温度Tb(以下、「絶縁層形成温度」)とは、絶縁層の製膜開始時点の基板表面温度(「基板加熱温度」ともいう)を表す。一般に、絶縁層の製膜中の基板表面温度の平均値は、通常製膜開始時点の基板表面温度以上となる。したがって、絶縁層形成温度Tbが、低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温であれば、絶縁層に開口部等の変形を形成することができる。
例えば、絶縁層90がCVD法やスパッタ法等の乾式法により形成される場合は、絶縁層製膜中の基板表面温度を低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温とすることにより、開口部を形成することができる。また、絶縁層90がコーティング等の湿式法により形成される場合は、溶媒を乾燥する際の基板表面温度を低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温とすることにより、開口部を形成することができる。なお、湿式法により絶縁層が形成される場合の「製膜開始時点」とは、溶媒の乾燥開始時点を指す。絶縁層形成温度Tbの好ましい範囲は、前記アニール温度Taの好ましい範囲と同様である。
基板表面温度は、例えば基板表面に温度表示材(サーモラベルやサーモシールとも呼ばれる)や熱電対を貼り付けて測定することができる。また、加熱部(ヒーターなど)の温度は、基板の表面温度が所定範囲となるように適宜に調整することができる。
絶縁層形成工程においてアニール処理を行う場合、絶縁層の材料および組成、製膜条件(製膜方法、基板温度、導入ガスの種類および導入量、製膜圧力、パワー密度等)を適宜調整することにより、絶縁層に開口部を形成することができる。
プラズマCVD法により絶縁層90が形成される場合、緻密な膜を形成する観点から、絶縁層形成温度Tbは、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、絶縁層製膜時の基板表面の最高到達温度は、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
プラズマCVDによる製膜速度は、より緻密な膜を形成する観点から、1nm/秒以下が好ましく、0.5nm/秒以下がより好ましく、0.25nm/秒以下がさらに好ましい。プラズマCVDにより、酸化シリコンが形成される場合の製膜条件としては、基板温度145℃〜250℃、圧力30Pa〜300Pa、パワー密度0.01W/cm2〜0.16W/cm2が好ましい。
絶縁層の形成と略同時に開口部が形成された後、開口部の形成が不十分な箇所がある場合等は、さらに前述のアニール工程が行われてもよい。
(第二導電層)
上記のように、開口部9hを有する絶縁層90が形成された後、第一導電層形成領域の絶縁層90上に第二導電層72がめっき法により形成される。この際、第二導電層として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
太陽電池の動作時(発電時)には、電流は主として第二導電層を流れる。そのため、第二導電層での抵抗損を抑制する観点から、第二導電層のライン抵抗は、できる限り小さいことが好ましい。具体的には、第二導電層のライン抵抗は、1Ω/cm以下であることが好ましく、0.5Ω/cm以下であることがより好ましい。一方、第一導電層のライン抵抗は、電気めっきの際の下地層として機能し得る程度に小さければよく、例えば、5Ω/cm以下にすればよい。
第二導電層は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法を用が好適である。電解めっき法では、金属の析出速度を大きくすることができるため、第二導電層を短時間で形成することができる。
酸性銅めっきを例として、電解めっき法による第二導電層の形成方法を説明する。図7は、第二導電層の形成に用いられるめっき装置10の概念図である。光電変換部上に第一導電層および絶縁層が形成され、開口部を有する絶縁層が形成された基板12と、陽極13とが、めっき槽11中のめっき液16に浸されている。基板12上の第一導電層71は、基板ホルダ14を介して電源15と接続されている。陽極13と基板12との間に電圧を印加することにより、絶縁層90で覆われていない第一導電層の上、すなわち絶縁層に生じた開口部を起点として、選択的に銅を析出させることができる。
酸性銅めっきに用いられるめっき液16は銅イオンを含む。例えば硫酸銅、硫酸、水を主成分とする公知の組成のものが使用可能であり、これに0.1〜10A/dm2の電流を流すことにより、第二導電層である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。
第二導電層は、複数の層から構成させても良い。例えば、Cu等の導電率の高い材料からなる第一のめっき層を、絶縁層の開口部を介して第一導電層上に形成した後、化学的安定性に優れる第二のめっき層を第一のめっき層の表面に形成することにより、低抵抗で化学的安定性に優れた集電極を形成することができる。
めっき工程の後には、めっき液除去工程を設けて、基板12の表面に残留しためっき液を除去することが好ましい。めっき液除去工程を設けることによって、アニール処理などにより形成された絶縁層90の開口部9h以外を起点として析出し得る金属を除去することができる。開口部9h以外を起点として析出する金属としては、例えば絶縁層90のピンホール等を起点とするものが挙げられる。めっき液除去工程によってこのような金属が除去されることによって、遮光損が低減され、太陽電池特性をより向上させることが可能となる。
めっき液の除去は、例えば、めっき槽から取り出された基板12の表面に残留しためっき液をエアーブロー式のエアー洗浄により除去した後、水洗を行い、さらにエアーブローにより洗浄液を吹き飛ばす方法により行うことができる。水洗の前にエアー洗浄を行い基板12表面に残留するめっき液量を低減することによって、水洗の際に持ち込まれるめっき液の量を減少させることができる。そのため、水洗に要する洗浄液の量を減少させることができるとともに、水洗に伴って発生する廃液処理の手間も低減できることから、洗浄による環境負荷や費用が低減されるとともに、太陽電池の生産性を向上させることができる。なお、本発明の機能を損なわない限り、絶縁層90上に撥水処理を行ってもよい。
以上、ヘテロ接合太陽電池の光入射側に集電極7が設けられる場合を中心に説明したが、裏面側にも同様の集電極が形成されてもよい。ヘテロ接合太陽電池のように結晶シリコン基板を用いた太陽電池は、電流量が大きいため、一般に、透明電極層/集電極間の接触抵抗の損失による発電ロスが顕著となる傾向がある。これに対して、本発明では、第一導電層と第二導電層を有する集電極は、透明電極層との接触抵抗が低いため、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
また、本発明は、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
結晶シリコン太陽電池としては、一導電型(例えばp型)結晶シリコン基板の一主面上に逆導電型(例えばn型)の拡散層を有し、拡散層上に前記集電極を有する構成が挙げられる。このような結晶シリコン太陽電池は、一導電型層の裏面側にp+層等の導電型層を備えるのが一般的である。このように、光電変換部が非晶質シリコン層や透明電極層を含まない場合は、低融点材料の熱流動開始温度T1およびアニール温度Taは、250℃より高くてもよい。
シリコン系薄膜太陽電池としては、例えば、p型薄膜とn型薄膜との間に非晶質の真性(i型)シリコン薄膜を有する非晶質シリコン系薄膜太陽電池や、p型薄膜とn型薄膜との間に結晶質の真性シリコン薄膜を有する結晶質シリコン系半導体太陽電池が挙げられる。また、複数のpin接合が積層されたタンデム型の薄膜太陽電池も好適である。このようなシリコン系薄膜太陽電池では、透明電極層や非晶質シリコン系薄膜の耐熱性を勘案して、低融点材料の熱流動開始温度T1およびアニール温度Taは250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
本発明の太陽電池は、実用に供するに際して、モジュール化されることが好ましい。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、集電極にタブ等のインターコネクタを介してバスバーが接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止剤およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。
以下、図2に示すヘテロ接合太陽電池に関する実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、実施例1のヘテロ接合太陽電池を、以下のようにして製造した。なお、実施例1においては、集電極の外観をより比較しやすくするため、通常よりも強い電流にてめっきを行った。
(実施例1−1)
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmのn型単結晶シリコンウェハを用い、このシリコンウェハを2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜が除去された後、超純水によるリンスが2回行われた。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャが形成された。その後に超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
エッチング後のウェハがCVD装置へ導入され、その光入射側に、真性シリコン系薄膜2aとしてi型非晶質シリコンが5nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度:150℃、圧力:120Pa、SiH4/H2流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cm2であった。なお、本実施例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。
i型非晶質シリコン層2a上に、逆導電型シリコン系薄膜3aとしてp型非晶質シリコンが7nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層3aの製膜条件は、基板温度が150℃、圧力60Pa、SiH4/B2H6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm2であった。なお、上記でいうB2H6ガス流量は、H2によりB2H6濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜2bとしてi型非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコン層2bの製膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層2aの製膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層2b上に、一導電型シリコン系薄膜3bとしてn型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン層3bの製膜条件は、基板温度:150℃、圧力:60Pa、SiH4/PH3流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cm2であった。なお、上記でいうPH3ガス流量は、H2によりPH3濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
この上に透明電極層6aおよび6bとして、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)が100nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm2のパワー密度を印加して透明電極層の製膜が行われた。裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8として、スパッタ法により銀が500nmの膜厚で形成された。光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を有する集電極7が以下のように形成された。
第一導電層71の形成には、低融点材料としてのSnBi金属粉末(粒径DL=25〜35μm、融点T1=141℃)と、高融点材料としての銀粉末(粒径DH=2〜3μm、融点T2=971℃)とを、20:80の重量比で含み、さらにバインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を含む印刷ペーストが用いられた。この印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=80μm)を有する#250メッシュ(開口幅:l=75μm)のスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、90℃で乾燥が行われた。
第一導電層71が形成されたウェハが、CVD装置に投入され、第一絶縁層91として酸化シリコン層(屈折率:1.70)が、プラズマCVD法により45nmの厚みで光入射面側に形成された。
絶縁層91の製膜条件は、基板温度:145℃、圧力33Pa、SiH4/CO2流量比:9/28、投入パワー密度:0.16W/cm2(周波数27MHz)であった。
絶縁層91製膜後に放電を切ることなく、SiH4/CO2流量比:3/21に変更することで、第二絶縁層92(屈折率1.50)が45nmの厚みで製膜された。以上のようにして、第一絶縁層91と第二絶縁層92を有する絶縁層90が形成された。実施例1−1においては、第一導電層上と第一導電層非形成領域上のいずれにも第一絶縁層91と第二絶縁層92が形成されていた。その後、絶縁層形成後のウェハが熱風循環型オーブンに導入され、大気雰囲気において、180℃で60分間、アニール処理が実施された。
以上のようにアニール工程までが行われた基板12が、図7に示すように、めっき槽11に投入された。めっき液16には、硫酸銅五水和物、硫酸、および塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、150g/l、および70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。
このめっき液を用いて、通常のめっき条件よりも電流が強い、温度40℃、電流10A/dm2の条件でめっきが行われ、第一導電層71上の絶縁層上に、10μm程度の厚みで第二導電層72として銅が均一に析出した。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった。
その後、レーザー加工機によりセル外周部のシリコンウェハが0.5mmの幅で除去され、本発明のヘテロ接合太陽電池が作製された。
(実施例1−2)
絶縁層91(屈折率1.70)が製膜された直後に放電を止め(投入パワー密度0W/cm2)、チャンバー内を高真空にする工程を追加したのち、絶縁層92(屈折率1.50)を製膜した点を除いて、実施例1−1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。 実施例1−2においても、実施例1−1と同様、第一導電層71上の絶縁層上に、10μm程度の厚みで第二導電層72として銅が均一に析出し、第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった(図10(a))。
(参考例1−1)
絶縁層90として、第一絶縁層91を形成せず、第二絶縁層92(屈折率1.50)の条件にて90nmの厚みで1層のみ形成した点を除いて、実施例1−1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
(参考例1−2)
絶縁層90として、第一絶縁層91(屈折率1.70)の条件にて90nmの厚みで1層のみ形成し、第二絶縁層92を形成しなかった点を除いて、実施例1−1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
(参考例1−3)
絶縁層90として、第一絶縁層91と第二絶縁層92の製膜順を入れ替えた(光電変換部側から、第二絶縁層92、第一絶縁層91の条件にて製膜した)点を除いて、実施例1−1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
以上のようにして作製した太陽電池の、絶縁層の水接触角と集電極の外観についてまとめたものを表1に示す。なお、外観評価は、以下のように評価した。
◎:局所的な肥大もなく均一に膜が形成されている
○:局所的な肥大は存在するが、全体にCuが析出
△:局所的な肥大が存在し、下地のAgペーストが一部見えている
高電流下でのめっきにおいて、屈折率n=1.70単層である参考例1−2では局所的にCuが肥大化し、Agが剥き出しの部分が散見され集電極の形状が悪い結果となった。対して、屈折率n=1.50を際表面に設置した積層構造では屈折率n=1.50単層のものと比較しても遜色なく第一導電層形成領域全体を銅が被覆しており、導電層非形成領域上への銅の析出が抑えられている。
参考例1−2、1−3に対し、実施例1−1,1−2と参考例1−1では、水接触角が約30度小さくなった。また集電極の外観は、屈折率n=1.70単層である参考例2では、局所的にCuが一部肥大化してAgが一部むき出しとなった(不図示)。また参考例3においても、局所的にCuが一部肥大化すること(図10(b))が観測された。一方、屈折率n=1.5を最表面に設置した実施例1、2では、屈折率n=1.50の単層である参考例1と比較しても遜色なく、均一にめっきされていた(図10(c))。
上記の結果より、高電流下のめっきにおいては、屈折率n=1.70では絶縁層90表面の疎水性が高くなっているため、集電極上の微細な凹凸形状に空気の溜りが発生しやすく集電極とメッキ液の接触面積が減少する事で被メッキエリアに印加される電流密度が設定値よりも高くなったためと考えられる。
また実施例1−1、実施例1−2及び参考例1−1では水接触角が小さくなったのに対し、参考例1−2および参考例1−3では水接触角が大きくなった。これは、シリコン酸化膜の屈折率は、膜中のシリコン原子の含有量に比例しているため、単層、2層とも最表面の組成が水接触角に影響を与えているためと考えられる。
(実施例2)
次に、実施例1により作製した太陽電池のうち、実施例1−2、参考例1−1と同条件にて絶縁層を形成したものを用い、通常のめっき条件で太陽電池および太陽電池モジュールを作製した。
(実施例2−1)
温度40℃、電流3A/dm2の条件でめっきが行われた以外は、実施例1−2と同様にして太陽電池が作製された。第一導電層71上の絶縁層上に、10μm程度の厚みで第二導電層72として銅が均一に析出した。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった。
(参考例2−1)
温度40℃、電流3A/dm2の条件でめっきが行われた以外は、参考例1−1と同様にして太陽電池が作製された。
(比較例2−1)
実施例2−1において、第一導電層形成後に絶縁層90、第二導電層を形成することなくヘテロ接合太陽電池が作製された。
上記のようにして作製した実施例2−1、参考例2−1、比較例2−1の太陽電池セルの各々につき、EVA(屈折率:1.45)で封止してモジュール化した。太陽電池特性(開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)および変換効率(Eff)を表2に示す。
実施例2−1、参考例2−1と、比較例2−1との比較から、本発明の太陽電池は、銀ペースト電極からなる集電極を有する従来の太陽電池に比べて、変換効率(Eff)が向上している。これは、実施例2−1と参考例2−1の太陽電池においては、集電極の抵抗が低くなり、曲線因子(FF)が向上したためと考えられる。
また比較例2−1、参考例2−1および実施例2−1を比較すると、絶縁層なしの比較例2−1→絶縁層1層(屈折率:1.50)→絶縁層2層(屈折率n1/n2=1.70/1.50)と、光電変換部の表面側から屈折率が段階的に低くなるように絶縁層90を設計することで短絡電流(Jsc)が向上した。
また、モジュールを作製した際、比較例2−1に示すような絶縁層なしの場合はJscの変化はほぼない。これに対して、参考例2−1に示した絶縁層(n=1.50)ではモジュール化によりJscが0.14mA/cm2向上し、実施例2−1においてはJscが0.26mA/cm2向上した。これは、透明電極層6a上の、絶縁層91、92にて屈折率を調整した結果、各層での反射率が低下したためと考えられる。
[実施例3]
次に、実施例1−2、参考例1−1、参考例1−2と同条件にて絶縁層90を、鏡面シリコンウェハ上に製膜して各々実施例3−1、参考例3−1、参考例3−2とし、絶縁層付き基板を作製した。該基板のXPS測定(X線光電子分光測定)を実施し、絶縁層90中の組成分析を実施し、膜中の酸素原子とシリコン原子の比率を求めた。なお、実施例3においては、絶縁層の一主面側表面を0とし、光電変換部側(深さ方向)への膜厚について求めたものを表3に示す。例えば、「0−45(nm)」とは、絶縁層の一主面側表面から深さ方向へ45nmの領域における、膜中の酸素原子とシリコン原子の比率を表す。
表3に示したように、屈折率n=1.50(参考例3−1)及び1.70(参考例3−2)の単層では、酸素原子とシリコン原子の比率(O/Si)は、各々、1.72及び1.33となった。また屈折率n=1.70/n=1.50の積層構造(実施例3−1)でも、同程度の比率となった。以上の結果から、絶縁層90は、めっきの均一性の観点からその再表面の水接触角が90°以下が望ましく、その濡れ性の調整を絶縁層の製膜条件(屈折率)にて実施することで、太陽電池の電流特性が向上することがわかる。
以上、実施例を用いて説明したように、めっき効率を損なうことなく、透明電極上の保護層にてAR効果による、太陽電池の変換効率を向上することができるため、高出力の太陽電池を低コストで提供することが可能となる。