JP2014167917A - イオン発生素子、電気機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 発生したイオンの消滅を抑えて効率的でバランスの良いイオン放出を行うことが可能なイオン発生素子、及びこれを備えた電気機器を提供する。
【解決手段】 本発明に係るイオン発生素子は、絶縁が確保できる距離を隔てて隣接して配置されたプラスイオンを発生するプラス放電部とマイナスイオンを発生するマイナス放電部とを備えたイオン発生素子であって、前記プラス放電部およびマイナス放電部は針状電極であり、前記絶縁が確保できる所定間隔を8mm以上とする。
【選択図】 図8

Description

本発明は、プラスイオンとマイナスイオンを空間に放出することで、空気中に浮遊する細菌やカビ菌、有害物質などを分解することが可能なイオン発生素子、イオン発生装置、及びこれを備えた電気機器に関するものである。なお、上記の電気機器に該当する例としては、主に閉空間(家屋内、ビル内の一室、病院の病室や手術室、車内、飛行機内、船内、倉庫内、冷蔵庫の庫内等)で使用される空気調和機、除湿器、加湿器、空気清浄機、冷蔵庫、ファンヒータ、電子レンジ、洗濯乾燥機、掃除機、殺菌装置など、を挙げることができる。
一般に、事務所や会議室など、換気の少ない密閉化された部屋では、室内の人数が多いと、呼吸により排出される二酸化炭素、タバコの煙、埃などの空気汚染物質が増加するため、人間をリラックスさせる効能を有するマイナスイオンが空気中から減少していく。特に、タバコの煙が存在すると、マイナスイオンは通常の1/2〜1/5程度にまで減少することがあった。そこで、空気中のマイナスイオンを補給するため、従来から種々のイオン発生装置が市販されている。
しかしながら、従来の放電現象を利用したイオン発生装置は、主として負電位の直流高電圧方式でマイナスイオンを発生させるものであり、その目的はリラックス効果を訴求するものであった。そのため、このようなイオン発生装置では、空気中にマイナスイオンを補給することはできるものの、空気中の浮遊細菌等を積極的に除去することはできなかった。
その他のイオン発生装置に関して、過去の公報による実例を調査した結果は以下の通りである。
特許文献1では、放電線や鋭角部を持った放電板に交流高電圧を印加し、マイナスイオンを発生させたり、マイナスイオンとプラスイオンを発生させるイオン発生器が述べられている。ただし、発生の手法や手段については、交流高電圧ユニットとの記載のみしかない。利用分野は空気調和器であり、効果として人に対する快適性、リラックス性を挙げている。
特許文献2では、絶縁体をはさみ、放電電極、誘電電極で一対となる電極を構成し、その両端に高圧高周波電圧を印加する高圧電源を具備している。高圧電源は、電極両端にダイオードが配置され、その向きにより、負電位の電源または正電位の電源を選択することが記載されているが、その切換機能については記載がない。なお、本技術の利用分野としては、オゾン発生装置や帯電装置、イオン発生装置等のコロナ放電機器と記載されている、また、本技術の効果としては、イオンの発生が挙げられている。
特許文献3では、針状の放電極と導電性の接地グリッドまたは接地リングを一対とした電極を、清浄空気の流れを横切る方向に2次元的な広がりで多数配置され、ある放電極にはマイナスにバイアスされた交流正弦波の高電圧が印加され、ある放電極にはプラスにバイアスされた交流正弦波の高電圧が印加され、プラスイオンを出す複数の放電極とマイナスイオンを出す複数組の放電極を構成している。バイアス電圧を調整するコントロール手段を持ち、プラスイオン、マイナスイオンの量を調整している。利用分野としてはクリーンルームの除電設備が挙げられており、効果としてその除電効果を謳っている。
特許文献4では、正極放電、負極放電させる電源で印加電圧が可変と記載されている。電極はイオン化線と集塵板であり、ホコリに帯電させて集塵板に集塵する構成である。利用分野は空調機器の電気集塵装置で、その内部を放電時に発生するオゾンによって殺菌することが明記されている。
放電現象を利用したイオン発生電極の種類は、大きく2種類に区分される。その1つは、特許文献1、3、4のような金属線や鋭角部を持った金属板や針などでその対向極は大地であったり、対地電位の金属板やグリッドなどが用いられ、空気が絶縁体の役割を果たすものである。もう1つは、特許文献2や後述する特許文献5、6のように、固体誘電体を挟んだ放電電極と誘導電極を形成したものである。その特徴として、前者は空気を絶縁物としているために、後者と比較して、電極間の距離を広く取る必要があり、そのため、放電に必要な電圧は高く設定する必要がある。逆に、後者は、絶縁抵抗の高く、高誘電率を持つ絶縁体を間に挟んでいるため、電極間距離は狭く(薄く)することが可能で、そのため印加電圧を前者と比較して低く設定できる。
イオン発生装置に関し、プラスイオン、マイナスイオンの両極性のイオンを放出する効果として、空気中にプラスイオンであるH(HO)と、マイナスイオンであるO (HO)(m、nは自然数)を略同等量発生させることにより、両イオンが空気中の浮遊カビ菌やウィルスの周りを取り囲み、その際に生成される活性種の水酸基ラジカル(・OH)の作用により、前記浮遊カビ菌等を不活化することが可能なイオン発生装置に関する発明をなした(例えば、特許文献5、6を参照)。
なお、上記の発明については、本願出願人によって既に実用化され、実用機には、セラミックの誘電体を挟んで外側に放電電極、内側に誘導電極を配設した構造のイオン発生装置、及びこれを搭載した空気清浄機や空気調和機などがある。
また、マイナスイオンの効果としては、一般的に家庭内の電気機器などでプラスイオン過多となった空間にマイナスイオンを多量に供給し、自然界での森の中のようなプラスとマイナスのイオンバランスのとれた状態にしたいときや、リラクゼーション効果を求めたりする場合に有効となることが知られている。特許文献1でも、リラクゼーション効果について述べられている。
特開平4−90428号公報 特開平8−217412号公報 特開平3−230499号公報 特開平9−610号公報 特開2003−47651号公報 特平2002−319472号公報
本発明は、プラスイオンとマイナスイオンを発生させ、空気中に浮遊しているカビ菌やウィルスを不活化させることを目的とし、その効果をより向上させるためのものである。一般に、放電現象を利用したイオン発生器は、イオン発生とともにオゾンを発生するのが常であり、特許文献4には、オゾンの酸化能力を利用して、機器内の殺菌を行うことが記載されている。オゾンはその濃度が高くなると人体に影響を及ぼすことが一般的に知られており、本願出願人とすれば、オゾンの発生量を極小化させながら、イオン量を最大限に引き出すことが難易度の高い課題である。
また、本願出願人は、特許文献3が対象とする設備装置ではなく、家庭用電気製品に搭載可能な小型のイオン発生装置において、特許文献5、6などを出願済みで、そのイオン発生装置を使用すれば、プラスイオン、マイナスイオンをほぼ同量発生させることができる。
同時に発生するプラスイオン、マイナスイオンの中和を低減させるため、送風によりイオンを風に乗せて空間に拡散させることが一般的である。しかしながら、プラスイオンとマイナスイオンを同時に発生させることで、発生とともに両極性のイオンの一部は中和して消滅しているという課題があった。特許文献3は、放電極が清浄空気の流れを横切る方向に2次元的な広がりをもって多数配置されている。すなわち、針が伸びる方向に風が流れている。小型化かつ安全性や省エネのため、印加電圧低減を考え、誘電体の表面に設けられた放電電極と、前記誘電体内部に埋没された誘導電極とで一対の電極をなす構成を本願出願人は主として採用するが、この場合、上記した特許文献3の風の方向では、イオンの拡散に不向きなため、誘電体の表面に平行に風をあてる。開発したイオン発生器を様々な商品に搭載する場合、イオン発生器に対する風の方向は理想的な方向に限定することが有効であるが、場合によっては限定できない場合も考えられる。
本発明は、プラスイオンとマイナスイオンにより空気中に浮遊するホルムアルデヒドまたはアンモニアを実質的に無害化する方法およびイオン発生素子を提供することを目的とする。
本発明に基づくホルムアルデヒドまたはアンモニアの無害化方法は、円柱状の誘電体と、前記誘電体の外周表面に設けられた放電電極と、前記誘電体を挟んで前記放電電極と一定の距離を保って対向するように配置された誘導電極とを備えるイオン発生素子を用いて、正イオンと、負イオンとを放出し、前記正イオン及び前記負イオンを空気中に浮遊するホルムアルデヒドまたはアンモニアに付着させ、前記正イオン及び前記負イオンが反応して生成する活性種により前記ホルムアルデヒドまたはアンモニアを実質的に無害化する。
また、本発明に基づくイオン発生素子は、円柱状の誘電体と、前記誘電体の外周表面に設けられた放電電極と、前記誘電体を挟んで前記放電電極と一定の距離を保って対向するように配置された誘導電極とを備え、前記放電電極から発生した正イオン及び負イオンを空気中に浮遊するホルムアルデヒドまたはアンモニアに付着させ、前記正イオン及び前記負イオンが反応して生成する活性種により前記ホルムアルデヒドまたはアンモニアを実質的に無害化する。
本発明によると、正イオンと、負イオンとを放出して、空気中に浮遊するホルムアルデヒドまたはアンモニアを酸化若しくは分解することによって、実質的に無害化することができる。
本発明に係るイオン独立放出方式の基礎実験例を示す模式図である。 本発明に係るイオン発生装置の第1実施形態を示す概略図である。 本発明に係るイオン発生装置の第2実施形態を示す概略図である。 本発明に係るイオン発生装置の第3実施形態を示す概略図である。 電圧印加回路20の一実施形態を示す回路図である。 本発明に係るイオン独立放出方式の他の基礎実験例を示す模式図である。 本発明に係るイオン独立放出方式の他の基礎実験例の実験結果を示す図である。 本発明に係るイオン発生装置の第5実施形態を示す概略図である。 本発明に係るイオン発生装置の第6実施形態を示す概略図である。 本発明に係るイオン発生装置の第7実施形態を示す概略図である。 本発明に係るイオン発生装置の第8実施形態を示す概略図である。 電圧印加回路20の他の実施形態を示す回路図である。 電圧印加回路20の更に他の実施形態を示す回路図である。 図12、図13に示す電圧印加回路20の動作電圧波形を示す波形図である。 図12、図13に示す電圧印加回路20の他の動作電圧波形を示す波形図である。 図12、図13に示す電圧印加回路20の他の動作電圧波形を示す波形図である。 図12、図13に示す電圧印加回路20の他の動作電圧波形を示す波形図である。 図12、図13に示す電圧印加回路20の他の動作電圧波形を示す波形図である。 図12に示すトランスを搭載したイオン発生装置の部品配置を示す配置図である。 図13に示すトランスを搭載したイオン発生装置の部品配置を示す配置図である。
本発明に係るイオン発生装置は、発生したプラスイオンとマイナスイオンがイオン発生素子の電極近傍で中和して消滅することを抑え、発生した両極性のイオンを有効的に空間に放出するために、単一のイオン発生素子でプラスイオンとマイナスイオンを所定周期で交互に発生させる方式ではなく、複数のイオン発生素子でプラスイオンとマイナスイオンを個別に発生させ、各々を独立して室内に放出する方式(以下、イオン独立放出方式と呼ぶ)を採用した構成としている。
上記イオン独立放出方式の採用に先立ち、以下に述べる基礎実験を行った。なお、本実験で用いるイオン発生素子の形態としては、針状電極を用いた構成としてもよいが、ここでは、誘電体の表面に設けられた放電電極と、誘電体内部に埋没された誘導電極とで一対の電極を成す構成を考える。
図1は本発明に係るイオン独立放出方式の基礎実験例を示す模式図である。本図の(a1)はイオン発生素子の外観図、(a2)はイオン発生素子の断面図、(a3)は放電電極と誘導電極間の電圧印加波形、(a4)及び(b)〜(d)は測定条件図、(e)はイオン発生素子の配置例である。
まず、今回の実験では、本図(a1)、(a2)のイオン発生素子1を用い、その放電電極0aと誘導電極0bの間に交流インパルス電圧(本図(a3))を印加してプラスイオンとマイナスイオンを所定周期で交互に発生させた場合(本図(a4))と、同じイオン発生素子1を用い、交流インパルス電圧をマイナスにバイアスした波形を印加してマイナスイオンのみを発生させた場合(不図示)とで、それぞれイオン放出量を計測し、各々にどのような差違があるかを検証した。その結果、前者におけるプラスイオンとマイナスイオンの合計検出量は、後者におけるマイナスイオン検出量の50〜60[%]程度でしかなかった。
次に、上記の結果に着目し、上記と同一のイオン発生素子1a、1bを2つ並べ、各々プラスイオンのみ、マイナスイオンのみを個別に発生させた場合の合計イオン放出量を計測した(本図(b)〜(d))。
その結果、本図(b)の測定条件で得られたプラスイオンとマイナスイオンの合計検出量は、上記した2つのイオン発生素子を用いて別々にイオン放出量を計測した場合に得られるプラスイオン検出量とマイナスイオン検出量の合計値とほぼ等しい値となった。このことから、単一のイオン発生素子でプラスイオンとマイナスイオンを所定周期で交互に発生させる方式ではなく、イオン独立放出方式を採用したイオン発生素子が有効であることが分かった。
ところで、本図(b)では、第1の放電部(イオン発生素子1a)と第2の放電部(イオン発生素子1b)の並びがファン2からの送風に対して直交する方向に配置されており、一方のイオン発生素子上を通過した空気流が他方のイオン発生素子上を通過することはない。
一方、本図(c)、(d)のように、本図(b)から90度置き方を変え、イオン発生素子1aとイオン発生素子1bの並びがファン2からの送風に対して平行する方向に配置すると、風上に位置する放電部で発生するイオン量が減衰することが確認された。具体的に述べると、本図(c)では、風上のイオン発生素子1aで発生するプラスイオンが風下のイオン発生素子1b上を通過するため、該プラスイオンがイオン発生素子1bのマイナス電位で中和され、プラスイオンの量が減衰した。同様に、本図(d)では、風上のイオン発生素子1bのマイナスイオンが減衰した。このことより、イオン独立放出方式を採用したとしても、放電部の配置によってはイオンが有効に放出されず、片方のイオンが減衰し、プラスイオンとマイナスイオンの放出バランスが崩れることが分かった。
ここで、イオンの計測はゲルディエン2重円筒型を利用したイオンカウンタ3を用いて実測したものであり、実測値としては計測点での濃度[個/cc]が得られる。同じ条件、同じ計測点で得られたイオン濃度の大小が計測されるため、濃度の高い低いことを文章中ではイオン量が多い少ないという表現にしている。
イオン発生装置を機器内部に搭載する場合、機器より送風は誘電体上の放電電極表面に対し、X軸方向Y軸方向いずれから送風されることになっても、風上の放電部で発生したイオンが風下の逆極性の放電部上で中和されることを防止するために、送風の方向X軸もしくはY軸方向に対して、イオン発生素子1a、1bを対角線上、すなわち斜めに配置し、その中和を低減させることが望ましい(図1(e)を参照)。ただし、面積的には不利であるので、送風方向が決まっている場合には逆に対角線上に配置しないが望ましい。
また、プラスイオンを発生させる放電電極とマイナスイオンを発生させる放電電極の放電電極間距離と発生した両イオンの中和量との関係を調べる基礎実験を行った。図6は本発明に係るイオン独立放出方式の他の基礎実験例を示す模式図である。本図の(a)はフィルム電極の表側の電極配置図、(b)はフィルム電極の裏側の電極配置図、(c)は放電電極と誘導電極間の電圧印加波形、(d)は測定条件図である。
図6において、60はポリイミドフィルムに銅を印刷しエッチングすることにより、表側の面、裏側の面それぞれに2つずつの電極を形成したフィルム電極である。表側の面には、図6(a)に示すように、略長方形内を格子状とした放電電極61a、62aが互いに放電電極間距離dの間隔を隔てた位置に形成され、裏側の面には、図6(b)に示すように、略長方形ベタ状の誘導電極61b、62bが放電電極61a、62aと対向する位置に形成されている。なお、誘導電極61b、62bは、放電電極61a、62aの端部で異常放電が発生するのを防止するために、放電電極61a、62aよりも内側に小さく形成されている。
また、各電極に設けられている黒丸で示す部分はハンダパッド63であり、ここへハンダ付けしたリード線等を介して、各電極に高電圧を印加して放電させイオンを発生させる。放電電極61a、誘導電極61b間には図6(c)に示す交番振動減衰波形の交流インパルス電圧がプラスにバイアスされて印加され、放電電極62a、誘導電極62b間には同じ交流インパルス電圧がマイナスにバイアスされて印加される。これにより、放電電極61aからはプラスイオンが発生し、放電電極62aからはマイナスイオンが発生する。なお、印加される交流インパルス電圧の第1波の波高値Vopは約3kVである。
そして、放電電極間距離dを変化させたフィルム電極60を複数個製作し、それぞれのフィルム電極60について、図6(d)に示すように、フィルム電極60をファン2とイオンカウンタ3との間に置き、前記交流インパルス電圧をプラス、およびマイナスにバイアスした波形を印加して発生するプラス、マイナス両イオンのそれぞれのイオン濃度を測定した。測定は、プラスイオンのみを発生させた場合、マイナスイオンのみを発生させた場合、プラス、マイナス両イオンを同時発生させた場合の3種類の場合について行った。なお、このとき、イオン発生素子60とイオンカウンタ3との間は25cmであり、両者とも測定台から4.5cmの上方位置に配置されている。
そして、その測定結果を示したものが図7である。なお、測定時の温度は27℃であり、湿度は27%であった。この測定結果から、放電電極間距離dを5mm以上にすれば、放電電極61a、62a間でのスパーク(火花放電)は発生しないことが知見できた。また、放電電極間距離dを8mmにしたものは、プラスイオン、マイナスイオンとも、一方のみを発生させたときのイオン個数と両方を同時に発生させたときのイオン個数とが等しくなっている。このことから、この測定で使用したフィルム電極の条件では放電電極間距離dを8mm以上にすれば、発生したプラス、マイナス両イオンの中和を防止することができるということが知見できた。放電電極間距離dは大きい方がスパーク防止、両イオンの中和防止には有利であるが、大きくするとイオン発生素子のサイズも大きくなるので、上述の条件であれば放電電極間距離dは8mm程度にすることが良いと考えられる。尚、当測定に用いたフィルム電極は放電電極間距離dの距離を変化させたサンプルを製作する際、エッチングにより放電電極間距離dの距離を確保したが、この部分のみ電極表面を覆うコーティング層がなくなっており、放電電極同士が対向する端面の一部は銅が露出した状態にある。従って以下に記載する実際の電極ではコーティング層の存在により、放電電極間距離dの値は更に小さくできることが推定できる。
図1(e)に示すように、イオン発生素子1a、1bを対角線上、すなわち斜めに配置し、その中和を低減させることが望ましいという上述の基礎実験の結果から、これ(対角線上の配置)を具現化した第1の実施形態を図2に示す。図2は本発明に係るイオン発生装置の第1実施形態を示す概略構成図であり、本図(a)、(b)は、それぞれイオン発生装置の平面図及び側面図を模式的に示している。
本図に示すように、本発明に係るイオン発生装置は、イオンを発生する放電部を複数(本実施形態では2つ)備えたイオン発生素子10と、イオン発生素子10に対して所定の電圧印加を行う電圧印加回路20と、を有して成る。
イオン発生素子10は、誘電体11(上部誘電体11aと下部誘電体11b)と、第1放電部12(放電電極12a、誘導電極12b、放電電極接点12c、誘導電極接点12d、接続端子12e、12f、及び接続経路12g、12h)と、第2放電部13(放電電極13a、誘導電極13b、放電電極接点13c、誘導電極接点13d、接続端子13e、13f、及び接続経路13g、13h)と、コーティング層14と、を有して成り、第1の放電電極12aと誘導電極12bとの間、及び第2の放電電極13aと誘導電極13bとの間に後述の電圧印加を行い、放電電極12a、13a近傍において放電を行うことにより、それぞれプラスイオン、マイナスイオンを発生させる。
誘電体11は、略直方体状の上部誘電体11aと下部誘電体11bを貼り合わせて成る(例えば縦15[mm]×横37[mm]×厚み0.45[mm])。誘電体11の材料として無機物を選択するのであれば、高純度アルミナ、結晶化ガラス、フォルステライト、ステアタイト等のセラミックを使用することができる。また、誘電体11の材料として有機物を選択するのであれば、耐酸化性に優れたポリイミドやガラスエポキシなどの樹脂が好適である。ただし、耐食性の面を考えれば、誘電体11の材料として無機物を選択する方が望ましく、さらに、成形性や後述する電極形成の容易性を考えれば、セラミックを用いて成形するのが好適である。
また、放電電極12a、13aと誘導電極12b、13bとの間の絶縁抵抗は均一であることが望ましいため、誘電体11の材料としては、密度ばらつきが少なく、その絶縁率が均一であるものほど好適である。
なお、誘電体11の形状は、略直方体状以外(円板状や楕円板状、多角形板状等)であってもよく、さらには円柱状であってもよいが、生産性を考えると、本実施形態のように平板状(円板状及び直方体状を含む)とするのが好適である。
第1、第2放電部12、13は、お互いが一直線上に並ばないように、基材の誘電体11の形状に対して対角線上(斜め)に配列されて成る。より機能的に表現すると、第1、第2放電部12、13は、本実施形態のイオン発生素子10に対していずれの方向から空気流が送られたとしても、その配列方向が該空気流に対して直交するように、言い換えれば、一方の放電部上を通過した空気流が他方の放電部上を通過しないように、配列されて成る。このような構成とすることにより、イオン独立放出方式の効果を活かし、両放電部12、13で発生したイオンの減衰を抑えて効率的でバランスの良いイオン放出を行うことが可能となる。
放電電極12a、13aは、上部誘電体11aの表面に該上部誘電体11aと一体的に形成されている。放電電極12a、13aの材料としては、例えばタングステンのように、導電性を有するものであれば、特に制限なく使用することができるが、放電によって溶融等の変形を起こさないことが条件となる。
また、誘導電極12b、13bは、上部誘電体11aを挟んで、放電電極12a、13aと平行に設けられている。このような配置とすることにより、放電電極12a、13aと誘導電極12b、13bの距離(以下、電極間距離と呼ぶ)を一定とすることができるので、両電極間の絶縁抵抗を均一化して放電状態を安定させ、プラスイオン及び/またはマイナスイオンを好適に発生させることが可能となる。なお、誘電体11を円柱状とした場合には、放電電極12a、13aを円柱の外周表面に設けるとともに、誘導電極12b、13bを軸状に設けることによって、前記電極間距離を一定とすることができる。
誘導電極12b、13bの材料としては、放電電極12a、13aと同様、例えばタングステンのように、導電性を有するものであれば、特に制限なく使用することができるが、放電によって溶融等の変形を起こさないことが条件となる。
放電電極接点12c、13cは、放電電極12a、13aと同一形成面(すなわち上部誘電体11aの表面)に設けられた接続端子12e、13e、及び接続経路12g、13gを介して、放電電極12a、13aと電気的に導通されている。従って、放電電極接点12c、13cにリード線(銅線やアルミ線など)の一端を接続し、該リード線の他端を電圧印加回路20に接続すれば、放電電極12a、13aと電圧印加回路20を電気的に導通させることができる。
誘導電極接点12d、13dは、誘導電極12b、13bと同一形成面(すなわち下部誘電体11bの表面)に設けられた接続端子12f、13f、及び接続経路12h、13hを介して、誘導電極12b、13bと電気的に導通されている。従って、誘導電極接点12d、13dにリード線(銅線やアルミ線など)の一端を接続し、該リード線の他端を電圧印加回路20に接続すれば、誘導電極12b、13bと電圧印加回路20を電気的に導通させることができる。
さらに、放電電極接点12c、13cと誘導電極接点12d、13dは全て、誘電体11の表面であって放電電極12a、13aが設けられた面(以下、誘電体11の上面と呼ぶ)以外の面に設けることが望ましい。このような構成であれば、誘電体11の上面に不要なリード線などが配設されないので、ファン(不図示)からの空気流が乱れにくく、本発明に係るイオン独立発生方式の効果を最大限に発揮させることが可能となるからである。
以上のことを考慮して、本実施形態のイオン発生装置10では、放電電極接点12c、13c及び誘導電極接点12d、13dが全て、誘電体11の上面に相対する面(以下、誘電体11の下面と呼ぶ)に設けられている。
なお、本実施形態のイオン発生素子10において、第1の放電電極12a、第2の放電電極13aは鋭角部を持ち、その部分で電界を集中させ、局部的に放電を起こす構成としている。もちろん、電界集中ができれば、本図記載の電極以外のパターンを用いてもよい。以下、図3、図4も同様の扱いである。
図3は本発明に係るイオン発生装置の第2実施形態を示す概略平面図である。断面図の構造は図2(b)と同じと考えてよい。図3は面積制約上、基材の誘電体11の形状に対して第1、第2の放電部位を対角線上に配置していない実施形態である。
第1の放電電極12aは、電界集中させ放電を起こす第1放電部位12jと、この周囲もしくは一部を取り囲む第1導電部位12kと、前述の接続端子部12eと、に分類されるが、これらは全て同一パターン上にあり、印加される電圧は等しくなる。第2の放電電極13aも同様に、第2放電部位13j、第2導電部位13k、接続端子部12eを有する。
第1放電部位12jは、プラス電位にてプラスイオンが発生するが、すぐ隣にはマイナス電位の第2放電部位13jが存在する。
ここで特徴としているのが、放電を起こす第1、第2放電部位12j、13jに対し、この周囲もしくは一部を取り囲む第1、第2導電部位12k、13kを配置したことにある。このように、第1放電部位12jと同電圧の第1導電部位12kが第1放電部位12jの周囲または一部を取り囲んでいるため、第1放電部位12jから発生したプラスイオンは、逆極性でマイナス電位の第2放電部位13jに達する前に、プラス電位の第1導電部位12kによって反発され、第2放電部位13jに達することを緩和することができる。第2放電部位13kについても同様である。なお、発生するイオンがほとんど中和しない送風方向や第1の放電電極12aと第2の放電電極13aとの距離の場合は、上記特徴部分である第1導電部位12k、第2導電部位13kを設けなくても構わない。
図4は本発明に係るイオン発生装置の第3実施形態を示す概略平面図である。断面図の構造は図2(b)と同じと考えてよい。本図(a)、(b)に示すイオン発生装置は、上記した第2実施形態の特徴を有する上、前述のように、基材の誘電体11の形状に対して、対角線上に配置したものである。先にも述べたように、電極の形状としては針状の電極としてもよいが、基本的には誘電体の表面に設けられた放電電極と、誘電体内部に埋没された誘導電極とで一対の電極を形成している場合を記載している。
本発明の第4実施形態としては、前出した図2、図3、図4のイオン発生装置において、第1の放電電極12a、第1の誘導電極12b、第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bの誘電体11への配置を考えるとき、第1、第2の電極間の絶縁を確保できる距離を隔てて隣接することになるが、印加電圧を考え、これらの中で2つの電極間の電位差が最も小さくなる第1の放電電極12aと第2の放電電極13aを絶縁が確保できる距離を隔てて隣接させることを特徴としている。言い換えれば、最も電位差が小さくなる組み合わせの電極を絶縁が確保できる距離を隔てて隣接させる構造としている。電位差や波形については、以下に記述する。
また、図2、図3、図4の電極形状は一例であり、図8〜図11のような電極形状であってもよい。図8〜図11は本発明に係るイオン発生装置の第5〜第8実施形態を示す概略平面図である。図8〜図11において、図3と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、断面図の構造は図2(b)と同じと考えてよい。
図8に示すイオン発生装置10は、第1の放電電極12a、第2の放電電極13aが端面に近づきすぎないように各電極の大きさを小さくしたものであり、図9に示すイオン発生装置10は、放電箇所を調整するために、図8に示すイオン発生装置10の第1の放電電極12a、第2の放電電極13aの個数を減少させたものである。また、図10、図11に示すイオン発生装置10は、放電箇所を調整するために、図9に示すイオン発生装置10の第1の放電電極12a、第2の放電電極13aの形状を図2に示すイオン発生装置10の第1の放電電極12a、第2の放電電極13aのイメージに近づけたものである。
続いて、電圧印加回路20の構成及び動作について説明する。
図5は電圧印加回路20の一実施形態を示す回路図である。まず、本図(a)に示す電圧印加回路20について説明する。本図に示す電圧印加回路20は、1次側駆動回路として、入力電源201と、入力抵抗204、整流ダイオード206、トランス駆動用スイッチング素子212、コンデンサ211、ダイオード207、を有して成る。入力電源201が交流商用電源の場合、入力電源201の電圧により、入力抵抗204、整流ダイオード206を介して、コンデンサ211に充電され、規定電圧以上になればトランス駆動用スイッチング素子212がオンして、トランス202の1次側巻線202aに電圧印加される。その直後、コンデンサ211に充電されたエネルギーはトランス202の1次側巻線202aとトランス駆動用スイッチング素子212を通じて放電され、コンデンサ211の電圧はゼロに戻り、再び充電がされ、規定周期で充放電を繰り返す。トランス駆動用スイッチング素子212は、上記の説明では無ゲート2端子サイリスタ(サイダック[新電元工業の製品])を採用した説明となっているが、若干異なる回路を用いて、サイリスタ(SCR)を用いてもよい。また、入力電源201は直流電源の場合であっても、上記と同様の動作が得られる回路とすれば、これを問わない。すなわち、当回路の1次側駆動回路としては、特に限定するものではなく、同様の動作が得られる回路であればよい。
トランス202の2次側回路として、トランス202の2次巻線202b、202cの2つを備え、これらがそれぞれ図2、図3、図4、図8〜図11のいずれかの第1の放電電極12a、第1の誘導電極12b、第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bに接続されている。1次側回路のトランス駆動用スイッチング素子212がオンすることにより、1次側のエネルギーがトランスの2次巻線202b、202cに伝達され、インパルス状電圧が発生する。第1の放電電極12aには、トランス202の2次巻線202bだけでなく、ダイオード209のカソードが接続され、ダイオード209のアノードは、抵抗205を介して、接地または入力電源201の片側(基準電位)に接続される。入力電源201が交流商用電源であるとき、日本国内では入力交流商用電源の片方が接地されているため、接地端子がない電気機器などは入力電源201の片側につなげば同じ機能を得ることができる。コンセントが逆に挿入されても、100Vが重たんされるだけで、接地されるのは同じである。また、抵抗205は保護用であり、これがなくても(短絡していても)動作には支障がない。また、第2の放電電極13aには、トランスの2次巻線202cだけでなく、ダイオード208のアノードが接続され、ダイオード208のカソードは、抵抗205を介して、接地または入力電源201の片側に接続される。
次に、本図(b)に示す別構成の電圧印加回路20について説明する。トランス202の1次側回路の説明は前述と同様である。トランス202の2次側回路として、トランス202の2次巻線は202b、202cの2つを備え、こられがそれぞれ、図2の第1の放電電極12a、第1の誘導電極12b、第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bに接続されている。第1の放電電極12aには、トランス202の2次巻線202bだけでなく、ダイオード209のカソード及びダイオード210のアノードが接続され、ダイオード209のアノードは切換リレー203の1つの選択端子203aに、またダイオード210のカソードは切換リレー203の別の選択端子203bに接続される。切換リレー203の共通端子203cは、抵抗205を介して、接地または入力電源201の片側に接続される。
次に、動作電圧波形について説明する。トランス202の2次巻線202b、202cの両端には、図5(c)のような交番電圧のインパルス波形が印加される。2次巻線202b、202cに接続されるダイオード209及びダイオード208の向きは、前述のように逆向きであり、第1の放電電極12a、第1の誘導電極12b、第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bの電圧を接地端子、場合によっては入力電源201の片側(基準電位:ダイオード208、209が接続される側)を基準にみた電圧波形は、図5(d)、(e)、(f)、(g)に示すように、図5(c)の波形がそれぞれ正負にバイアスされた波形となる。
図5(a)に示す実施形態の場合、第1の放電電極12a、第1の誘導電極12bは接地端子、場合によっては入力電源201の片側(基準電位:ダイオード208、209が接続される側)を基準に見た電位は共にプラスであり、発生したマイナスイオンは放電電極12a上で中和し、プラスイオンは反発し放出される。また、第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bは接地端子、場合によっては入力電源201の片側(基準電位:ダイオード208、209が接続される側)を基準に見た電位は共にマイナスであり、マイナスイオンが放出される。
また、図5(b)に示す実施形態の場合、第1の放電電極12a、第1の誘導電極12bは、切換リレー203が選択端子203a側にあるとき、接地端子、場合によっては入力電源201の片側(基準電位:ダイオード208、209が接続される側)を基準に見た電位は共にプラスであり、プラスイオンが発生する。また、切換リレー203が選択端子203b側にあるとき、接地端子、場合によっては入力電源201の片側(基準電位:ダイオード208、209が接続される側)を基準に見た電位はともにマイナスであり、マイナスイオンが発生する。第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bは接地端子、場合によっては入力電源201の片側(基準電位:ダイオード208、209が接続される側)を基準に見た電位は共にマイナスであり、マイナスイオンが発生する。
プラスイオンとしてはH+(HO)であり、マイナスイオンとしてはO (HO)(m、nは自然数でHO分子が複数個付いていることを意味する)である。
このように、切換リレー203の選択端子が203a側にあるとき、第1の放電部12から発生するイオンはプラスイオンとなり、第2の放電部13から発生するマイナスイオンとでプラス、マイナス略同量のイオンが発生する。空気中にH+(HO)とO (HO)を略同量放出させることにより、これらのイオンが空気中の浮遊カビ菌やウィルスの周りを取り囲み、その際生成される活性種の水酸基ラジカル(・OH)の作用により不活化することが可能となる。
上記記載について詳細に述べる。第1、第2の放電部12、13を構成する電極間に交流電圧を印加することにより、空気中の酸素ないしは水分が電離によりエネルギーを受けてイオン化し、H+(HO)(mは任意の自然数)とO (HO)(nは任意の自然数)を主体としたイオンを生成し、これらをファン等により空間に放出させる。これらH+(HO)及びO (HO)は、浮遊菌の表面に付着し、化学反応して活性種であるH又は(・OH)を生成する。H又は(・OH)は、極めて強力な活性を示すため、これらにより、空気中の浮遊細菌を取り囲んで不活化することができる。ここで、(・OH)は活性種の1種であり、ラジカルのOHを示している。
正負のイオンは浮遊細菌の細胞表面で式(1)〜式(3)に示すように化学反応して、活性種である過酸化水素H又は水酸基ラジカル(・OH)を生成する。ここで、式(1)〜式(3)において、m、m'、n、n'は任意の自然数である。これにより、活性種の分解作用によって浮遊細菌が破壊される。従って、効率的に空気中の浮遊細菌を不活化、除去することができる。
(HO)+O (HO)→・OH+1/2O+(m+n)HO ・・・(1)
(HO)+H(HO)m'+O (HO)+O (HO)n'
→2・OH+O+(m+m'+n+n')HO ・・・(2)
(HO)+H(HO)m'+O (HO)+O (HO)n'
→H+O+(m+m'+n+n')HO ・・・ (3)
以上のメカニズムにより、上記正負イオンの放出により、浮遊菌等の不活化効果を得ることができる。
また、上記式(1)〜式(3)は、空気中の有害物質表面でも同様の作用を生じさせることができるため、活性種である過酸化水素H又は水酸基ラジカル(・OH)が、有害物質を酸化若しくは分解して、ホルムアルデヒドやアンモニアなどの化学物質を、二酸化炭素や、水、窒素などの無害な物質に変換することにより、実質的に無害化することが可能である。
したがって、送風ファンを駆動することにより、イオン発生素子1によって発生させた正イオンと負イオンを本体外に送り出することができる。そして、これらの正イオンと負イオンの作用により空気中のカビや菌を不活化し、その増殖を抑制することができる。
その他、正イオンと負イオンには、コクサッキーウィルス、ポリオウィルス、などのウィルス類も不活化する働きがあり、これらウィルスの混入による汚染が防止できる。
また、正イオンと負イオンには、臭いの元となる分子を分解する働きがあることも確かめられており、空間の脱臭にも利用できる。
また、切換リレー203の選択端子が203b側にあるとき、第1の放電部12から発生するイオンはマイナスイオンとなり、第2の放電部13から発生するマイナスイオンとで双方の電極からマイナスイオンが発生する。家庭内の電気機器などでプラスイオン過多となった空間にマイナスイオンを多量に供給し、自然界での森の中のようなプラスとマイナスのイオンバランスのとれた状態にしたいときや、リラクゼーション効果を求めたりする場合に有効となる。
また、電圧印加回路20は、図2〜図4、図8〜図11のいずれかに示す第1の放電電極12aと第1の誘導電極12bとの間にプラス極性から始まる交番電圧波形を印加し、第2の放電電極13aと第2の誘導電極13bとの間にマイナス極性から始まる交番電圧波形を印加すればよいのであるから、図5に示す構成以外に、例えば、図12、図13に示す構成を採用することが可能である。
図12は、図5(b)の回路をより安価に、かつ部品点数を減らした構成である。説明の便宜上、図5に示す実施形態と同一の部分には同一の符号を付している。図12に示す電圧印加回路20は、1次側駆動回路として、入力電源201と、入力抵抗204、整流ダイオード206、トランス駆動用スイッチング素子212、コンデンサ211、フライホイールダイオード213、を有して成る。入力電源201が交流商用電源の場合、入力電源201の電圧により、入力抵抗204、整流ダイオード206を介して、コンデンサ211に充電され、規定電圧以上になればトランス駆動用スイッチング素子212がオンして、トランス202の1次側巻線202aに電圧印加される。その直後、コンデンサ211に充電されたエネルギーはトランス駆動用スイッチング素子212とトランス202の1次側巻線202aを通じて放電され、コンデンサ211の電圧はゼロに戻り、再び充電がされ、規定周期で充放電を繰り返す。
トランス202の2次側回路として、トランス202の2次巻線202b、202cの2つを備え、これらがそれぞれ図2、図3、図4、図8〜図11のいずれかの第1の放電電極12a、第1の誘導電極12b、第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bに接続されている。1次側回路のトランス駆動用スイッチング素子212がオンすることにより、1次側のエネルギーがトランスの2次巻線202b、202cに伝達され、インパルス状電圧が発生する。なお、各2次巻線と各電極とは、第1の放電電極12aと第1の誘導電極12b間に印加される電圧の極性と、第2の放電電極13aと第2の誘導電極13bとの間に印加される電圧の極性とが逆になるように接続されている。
また、第1の放電電極12aには、トランス202の2次巻線202bだけでなく、ダイオード209のカソードが接続され、ダイオード209のアノードは、リレー214を介して、接地または入力電源201の片側(ラインAC2:基準電位)に接続される。入力電源201が交流商用電源であるとき、日本国内では入力交流商用電源の片方が接地されているため、接地端子がない電気機器などは入力電源201の片側につなげば同じ機能を得ることができる。また、第2の放電電極13aには、トランス202の2次巻線202cだけでなく、ダイオード208のアノードが接続され、ダイオード208のカソードは、接地または入力電源201の片側(ラインAC2)に接続される。
次に、動作電圧波形について説明する。トランス202の2次巻線202b、202cの両端には、交番電圧のインパルス波形が印加される。このとき、第1の放電電極12aを基準に見た第1の誘導電極12bの電圧波形は、図14(a)に示すように、プラス極性から始まる交番電圧波形となり、第2の放電電極13aを基準に見た第2の誘導電極13bの電圧波形は、図14(b)に示すように、マイナス極性から始まる交番電圧波形となる。
また、2次巻線202cは順方向の向きのダイオード208を介してラインAC2(場合によっては接地端子)に接続されているので、ラインAC2を基準に見た第2の放電電極13aの電圧波形は図15(a)に示すように、また、第2の誘導電極13bの電圧波形は図15(b)に示すように、図14(b)の波形が負にバイアスされた波形となる。従って、第2放電部13からはマイナスイオンが発生する。マイナスイオンとしてはO (HO)(nは自然数でHO分子が複数個付いていることを意味する)である。
一方、2次巻線202bは、リレー214がオンしているときは、逆方向の向きのダイオード209を介してラインAC2に接続されているので、ラインAC2を基準に見た第1の放電電極12aの電圧波形は図16(a)に示すように、また、第1の誘導電極12bの電圧波形は図16(b)に示すように、図14(a)の波形が正にバイアスされた波形となる。従って、第1放電部12からは第2放電部13で発生するマイナスイオンと略同量のプラスイオンが発生する。プラスイオンとしてはH(HO)(mは自然数でHO分子が複数個付いていることを意味する)である。
また、図17(a)は、図14に示す波形を時間軸を変えて示したものであり、図17(b)は図16に示す波形を時間軸を変えて示したものである。各電極に印加される電圧波形は、このような短い時間で減衰するインパルス波形となっているが、これはトランスのインダクタンスや抵抗、電極の静電容量による電気振動減衰とフライホイールダイオード213の効果によるものである。即ち、2次巻線202b、202cに流れる電流により1次巻線202aに誘起される電圧により流れる電流を1次巻線202a、フライホイールダイオード213、トランス駆動用スイッチング素子212を通じて還流させることにより、2次巻線202b、202cに発生する電圧振動を急速に減衰させている。
また、図18(a)は、リレー214がオンであるときのラインAC2を基準に見た第1の放電電極12a、第2の放電電極13aの電圧波形を示す波形図であり、図15(a)、図16(a)と同じである。図18(b)は、リレー214がオフである時のラインAC2を基準に見た第1の放電電極12a、第2の放電電極13aの電圧波形を示す波形図である。リレー214がオンであるときは、図18(a)に示すように、ラインL1で示す第1の放電電極12aの電圧波形はプラス側にバイアスされ、ラインL2で示す第2の放電電極13aの電圧波形はマイナス側にバイアスされている。そして、リレー214がオフしているときは、図18(b)に示すように、ラインL2で示す第2の放電電極13aの電圧波形はマイナス側にバイアスされていて変化はないが、ラインL1で示す第1の放電電極12aの電圧波形はバイアスされずに交番波形に変化している。これは、リレー214がオフしているときは、2次巻線202bがフローティング状態となるためであり、第1波がマイナスで第2波目以降が交番する波形であることでプラスイオンとマイナスイオン両方が少量ながら放出される。
従って、リレー214がオフであるときは、第1放電部12から発生する少量のプラスイオンとマイナスイオンと第2放電部13から発生する多量のマイナスイオンとで全体としては微量のプラスイオンと多量のマイナスイオンでマイナスイオンリッチの状態になる。一方、リレー214がオンであるときは、第1放電部12から発生するプラスイオンと第2放電部13から発生するマイナスイオンとでプラス、マイナス略同量のイオンが発生する状態になる。
従って、空気中にH(HO)とO (HO)を略同量放出させることにより、これらのイオンが空気中の浮遊カビ菌やウィルスの周りを取り囲み、その際生成される活性種の水酸基ラジカル(・OH)の作用により不活化する状態を求める場合と、家庭内の電気機器などでプラスイオン過多となった空間にマイナスイオンを多量に供給し、自然界での森の中のようなプラスとマイナスのイオンバランスのとれた状態にしたいときやリラクゼーション効果を求めたりする場合とを、リレー214をオン/オフさせることで切り換えることができる。
また、図12に示すトランス202は図19のような巻線配置で構成されている。図19は、図12に示すトランス202が搭載されたイオン発生装置の部品配置を示した配置図である。図19において、220は放電用の各電極(不図示)が形成されている電極パネル部、221は電極パネル部220を固定する電極枠、222はモールド材、223はトランス202が固定されるとともに回路部品が実装される基板、224は入出力用のコネクタやその他の回路部品が搭載されている回路部品搭載部である。
トランス202は、1次巻線202aの両側に2次巻線202b、202cが配置された構成である。トランス202の巻線配置をこのようにすると、2次巻線202b、202c間の距離を確保することになり、一方の2次巻線で発生した磁界が直接、他方の2次巻線に及ぼす影響を軽減することができる。従って、互いの磁界が影響を及ぼし合うことにより、各2次巻線に発生する電圧が変動することが軽減され、各2次巻線から発生する電圧が印加されるイオン発生素子からのイオン発生量が変動することを防止することができる。
図13は電圧印加回路20の更に他の実施形態を示す回路図である。説明の便宜上、図12に示す実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図13に示す電圧印加回路20が図12に示す電圧印加回路20と相違する点は、1個のトランス202とフライホイールダイオード213の代わりに、2個のトランス215、216とそれぞれの1次巻線に接続された2個のフライホイールダイオード217、218を用いている点である。また、1次側駆動回路としてのトランス駆動用スイッチング素子212とコンデンサ211との位置が入れ替わっている。
入力電源201が交流商用電源の場合、入力電源201の電圧により、入力抵抗204、整流ダイオード206、フライホイールダイオード217、218を介して、コンデンサ211に充電され、規定電圧以上になればトランス駆動用スイッチング素子212がオンして、トランス215の1次側巻線215aとトランス216の1次側巻線216aとの直列回路に電圧印加される。その直後、コンデンサ211に充電されたエネルギーはトランス駆動用スイッチング素子212とトランス215の1次側巻線215aとトランス216の1次側巻線216aとの直列回路を通じて放電され、コンデンサ211の電圧はゼロに戻り、再び充電がされ、規定周期で充放電を繰り返す。
トランス215、216の2次側回路としての2次巻線215b、216bがそれぞれ図2、図3、図4、図8〜図11のいずれかの第1の放電電極12a、第1の誘導電極12b、第2の放電電極13a、第2の誘導電極13bに接続されている。1次側回路のトランス駆動用スイッチング素子212がオンすることにより、1次側のエネルギーが2次巻線215bと2次巻線216bに伝達され、インパルス状電圧が発生する。なお、各2次巻線と各電極とは、第1の放電電極12aと第1の誘導電極12b間に印加される電圧の極性と、第2の放電電極13aと第2の誘導電極13bとの間に印加される電圧の極性とが逆になるように接続されている。
また、第1の放電電極12aには、トランス215の2次巻線215bだけでなく、ダイオード209のカソードが接続され、ダイオード209のアノードは、リレー214を介して、接地または入力電源201の片側(ラインAC2)に接続される。また、第2の放電電極13aには、トランス216の2次巻線216bだけでなく、ダイオード208のアノードが接続され、ダイオード208のカソードは、接地または入力電源201の片側(ラインAC2)に接続される。
このような構成の図13に示す電圧印加回路20の動作電圧波形については、図12に示す電圧印加回路20の動作電圧波形(図14〜図17)と同じなので、その説明は省略する。図13に示す電圧印加回路20の特徴的な点は、第1の放電電極12aと第1の誘導電極12b間に電圧を印加するトランス215と、第2の放電電極13aと第2の誘導電極13bとの間に電圧を印加するトランス216とを独立させているとともに、それぞれのトランスの1次巻線にフライホイールダイオード217、218をそれぞれ設けている点である。
このようにすると、2次巻線215bに流れる電流により1次巻線215aに誘起される電圧により流れる電流は1次巻線215aとフライホイールダイオード217を還流するだけなので、トランス216に影響を及ぼすことはない。また、同様に、2次巻線216bに流れる電流により1次巻線216aに誘起される電圧により流れる電流は1次巻線216aとフライホイールダイオード218を還流するだけなので、トランス215に影響を及ぼすこともない。従って、一方の放電部に負荷変動等が生じても、その変動が他方の放電部に印加される電圧に影響を及ぼすことがなくなり、他方の放電部から発生するイオン量が変動することを防止することができる。
なお、図13に示す電圧印加回路20は、トランス215の1次巻線215aとトランス216の1次巻線216aとを直列に接続しているが、これらを並列に接続した回路構成にすることも可能である。
また、図13に示すトランス215、216は図20のような巻線配置で構成されている。図20は、図13に示すトランス215、216が搭載されたイオン発生装置の部品配置を示した配置図である。説明の便宜上、図19と同一の部分には同一の符号を付している。図20において、220は放電用の各電極(不図示)が形成されている電極パネル部、221は電極パネル部220を固定する電極枠、222はモールド材、223はトランス215、216が固定されるとともに回路部品が実装される基板、224は入出力用のコネクタやその他の回路部品が搭載されている回路部品搭載部である。
トランス215、216は、2次巻線216b、1次巻線216a、1次巻線215a、2次巻線215bがこの順に並ぶように配置されている。トランス215、216をこのように配置すると、2次巻線216b、215b間の距離を確保することになり、一方の2次巻線で発生した磁界が直接、他方の2次巻線に及ぼす影響を軽減することができる。従って、互いの磁界が影響を及ぼし合うことにより、各2次巻線に発生する電圧が変動することが軽減され、各2次巻線から発生する電圧が印加されるイオン発生素子からのイオン発生量が変動することを防止することができる。
なお、図12、図13に示すトランス駆動用スイッチング素子212は、上記の説明では無ゲート2端子サイリスタ(サイダック[新電元工業の製品])を採用した説明となっているが、若干異なる回路を用いて、サイリスタ(SCR)を用いてもよい。また、入力電源201は直流電源の場合であっても、上記と同様の動作が得られる回路とすれば、これを問わない。すなわち、当回路の1次側駆動回路としては、特に限定するものではなく、同様の動作が得られる回路であればよい。
また、イオン発生素子は、基材に対しX軸方向Y軸方向いずれから送風されても、発生したイオン同士の中和を抑え、有効に放出させるために、上記の実施形態のイオン発生素子を、1つの基材上に取り付け、または印刷されるプラスイオンを発生する第1の放電部と、マイナスイオンを発生する第2の放電部と、を少なくとも1つずつ有し、第1、第2の放電部はともに、前記基材の同一平面上であって、その対角線上(斜め)に分離独立して配置されている構造としてもよい。この際の電極としては針状の電極としてもよく、また誘電体の表面に設けられた放電電極と誘電体内部に埋没された誘導電極とで一対の電極をなす構成としてもよい。その際、送風は誘電体上の放電電極表面に対し、X軸方向Y軸方向いずれから送風されても、風上の放電部から発生したイオンが風下の逆極性の放電部上で中和されることを防止するために、送風の方向(X軸もしくはY軸方向)に対して、第1の放電部と第2の放電部を対角線上すなわち斜めに配置し、その中和を低減させることができる。
また、第1の放電部、第2の放電部が取り付けまたは印刷される基材の面積に制約がある場合、第1の放電部と第2の放電部の絶縁距離を確保するために上記のような対角線上(斜め)に配置することが困難な場合が考えられる。その際は、たとえばプラスイオンを発生する第1放電部位の周囲もしくは一部を囲う第1放電部位と同電圧の第1導電部位を配置した構成とし、マイナスイオンを発生する第2の放電部も同様の構成とし、同一平面上で前記第1導電部位と第2導電部位を対向して分離独立して配置してもよい。第1放電部位から放出されたイオンは、第2放電部位の逆電位に中和される前に、第1放電部位を囲む同電圧の第1導電部位により反発されて、風とともに放出される。第2放電部位についても同様である。この際の電極としては、少なくとも一つの放電部の電極を針状の電極としてもよく、また誘電体の表面に設けられた放電電極と、誘電体内部に埋没された誘導電極とで一対の電極を成す構成としてもよい。
また、イオン発生素子において、1つの基材上に取り付け、または印刷されるプラスイオンを発生する第1の放電部と、マイナスイオンを発生する第2の放電部と、を少なくとも1つずつ有し、第1、第2の放電部は、前記基材である誘電体の表面に設けられた第1、第2の放電電極と、前記誘電体の内部に埋設された第1、第2の誘導電極と、を各々一対として各個に形成され、前記基材の同一平面上に、互いに分離独立して配置させてもよい。この構成によると、単一のイオン発生素子でプラスイオンとマイナスイオンを所定周期で交互に発生させる方式に比べて発生したイオン同士の中和を抑えることができる。
そして、第1の放電部と第2の放電部は、第1の放電電極と第2の放電電極が一定距離をおくように配置されていると、第1、第2の放電電極間でスパーク(火花放電)が発生することを防止して信頼性を高めることができるとともに、発生したイオン同士の中和をより一層抑えることができる。
また、イオン発生装置は、誘電体の表面に設けられた放電電極と、誘電体内部に埋没された誘導電極とで一対の電極をなす構成で、電圧印加回路が第1の放電部と第2の放電部に印加する電圧波形は、オゾンの発生を低減するため、特許文献2、3のような一般的な交流正弦波ではなく、イオン発生素子に交流インパルス電圧を印加してもよい。これにより、安定したイオン発生を得ながら、オゾンは低い値に抑えることができる。また、第1の放電部には、交流インパルス電圧をプラスにバイアスした電圧波形を印加することでプラスイオンが発生され、第2の放電部に同電圧をマイナスにバイアスした電圧波形を印加することでマイナスイオンが発生される構成としてもよい。
さらに、電圧印加回路は、たとえば、イオン発生素子の第1の放電部に交流インパルス電圧をプラスにバイアスした電圧波形を印加することでプラスイオンを発生させる場合と、同電圧をマイナスにバイアスした電圧波形を印加し、マイナスイオンのみを発生させることを切り換えることができる第1の電圧印加手段と切換手段を有し、前記イオン発生素子の第2の放電部に同交流インパルス電圧をマイナスにバイアスした電圧波形を印加することで、マイナスイオンを発生させる第2の電圧印加手段と、を有することで、プラスマイナス両方のイオンを発生する場合と、マイナスイオンのみを出す状態とを選択、切換できる構成としてもよい。イオン発生装置の使用環境や状況、使用目的により、自動または手動で発生するイオンの極性種を切り換えることができる。プラスイオンとマイナスイオンを発生させるときは、空気中に浮遊しているカビ菌やウィルスを不活化させることが目的であり、マイナスイオンのみを発生させるときは、家庭内の電気機器などでプラスイオン過多となった状態をイオンバランスのとれた状態にしたいときや、リラクゼーションを求めたりする場合に有効となる。これらの切換機能を1つの電極、1つのイオン発生装置にて実現できる。また、切換リレー等の切換手段の動作により、上記の効果と室内のイオンバランスの調整やリラクゼーションを求める効果とを1つのイオン発生素子、またはイオン発生装置で切換可能という効果をもつことができる。
また、上述の切換機能をより安価にかつ少ない部品点数で実現するための方策として、電圧印加回路は、イオン発生素子の第1の放電部に交流インパルス電圧をプラスにバイアスした電圧波形を印加することでプラスイオンを発生させる場合と、同電圧をバイアスしていない交番電圧波形を印加してプラスイオンとマイナスイオンを発生させる場合とを切り換えることができる第3の電圧印加手段とバイアス切換手段と、イオン発生素子の第2の放電部に同交流インパルス電圧をマイナスにバイアスした電圧波形を印加することで、マイナスイオンを発生させる第2の電圧印加手段と、を有することで、略等量のプラスマイナス両方のイオンを発生する状態と、少量のプラスイオンとプラスイオン量に対し多量のマイナスイオンを発生する状態とを選択、切換できる構成としてもよい。イオン発生装置の使用環境や状況、使用目的により、自動または手動で発生するイオンの極性種を切り換えることができる。略等量のプラスイオンとマイナスイオンを発生させるときは、空気中に浮遊しているカビ菌やウィルスを不活化させることが目的であり、マイナスイオンの方を多量に発生させるときは、家庭内の電気機器などでプラスイオン過多となった状態をイオンバランスのとれた状態にしたいときや、リラクゼーションを求めたりする場合に有効となる。これらの切換機能を1つのイオン発生装置にて実現することができる。
また、第1の放電部に印加される交流インパルス電圧は、第1の放電電極を基準にした第1の誘導電極の電圧がプラス極性から始まる交番電圧波形であり、第2の放電部に印加される交流インパルス電圧は、第2の放電電極を基準にした第2の誘導電極の電圧がマイナス極性から始まる交番電圧波形であると良い。言い換えれば、第1の放電電極を基準にした第1の誘導電極の電圧の第1波の波高値をプラス極性側に高くし、第2の放電電極を基準にした第2の誘導電極の電圧の第1波の波高値をマイナス極性側に高くする。
また、電圧印加回路は、カソードが基準電位(=接地電位:実施例の項で記載)に接続されアノードが第2の放電電極に接続される第1のダイオードと、アノードが基準電位に接続されカソードが第1の放電電極に接続される第2のダイオードとを有し、第2のダイオードを基準電位に接続するか否かを切り換え可能としてもよい。これにより、第2の放電電極に印加される交流インパルス電圧はマイナスにバイアスされ、第1の放電電極に印加される交流インパルス電圧はプラスにバイアスされるか、または、バイアスされずに交番電圧波形が印加されるかを選択できるようにできる。
また、電圧印加回路は、カソードが基準電位に接続されアノードが第2の放電電極に接続される第1のダイオードと、第1の放電部からプラスイオンを発生させるときはアノードが基準電位に接続されカソードが第1の放電電極に接続される第2のダイオードと、第1の放電部からマイナスイオンを発生させるときはカソードが前記基準電位に接続されアノードが第1の放電電極に接続される第3のダイオードとを有してもよい。これにより、第2の放電電極に印加される交流インパルス電圧はマイナスにバイアスされ、第1の放電電極に印加される交流インパルス電圧はプラスまたはマイナスにバイアスされるようにすることができる。
また、電圧印加回路は、駆動側の1次巻線と第1の放電部に交流インパルス電圧を印加する第1の2次巻線と第2の放電部に交流インパルス電圧を印加する第2の2次巻線とから成る第1のトランスを有し、第1のトランスの第1、第2の2次巻線は前記1次巻線の両側にそれぞれ配置されていてもよい。これにより、第1、第2の2次巻線間の距離を確保することができ、一方の2次巻線で発生した磁界が直接、他方の2次巻線に及ぼす影響を軽減することができる。
また、電圧印加回路は、駆動側の1次巻線と第1の放電部に交流インパルス電圧を印加する2次巻線とから成る第2のトランスと、駆動側の1次巻線と第2の放電部に交流インパルス電圧を印加する2次巻線とから成る第3のトランスとを有し、第2のトランスの2次巻線、第2のトランスの1次巻線、第3のトランスの1次巻線、第3のトランスの2次巻線の順に配置されていてもよい。第2のトランスの2次巻線と第3のトランスの2次巻線との間の距離を確保することができ、一方の2次巻線で発生した磁界が直接、他方の2次巻線に及ぼす影響を軽減することができる。
さらに、第2のトランスの1次巻線と第3のトランスの1次巻線とが並列に接続されていてもよい。第2のトランスの1次巻線と第3のトランスの1次巻線とに印加される電圧が等しくなるので、第2のトランスと第3のトランスの特性を等しいものにすることにより、第1の放電部と第2の放電部に印加される交流インパルス電圧の絶対値を等しくすることができる。
また、第2のトランスの1次巻線と第3のトランスの1次巻線とが直列に接続されていると、第2のトランスの1次巻線と第3のトランスの1次巻線とに流れる電流が等しくなるので、第2のトランスと第3のトランスの特性を等しいものにすることにより、第1の放電部と第2の放電部に印加される交流インパルス電圧の絶対値を等しくすることができる。
また、第2のトランスの1次巻線と第3のトランスの1次巻線とにそれぞれフライホイールダイオードが接続されていると、第2のトランスの2次巻線に流れる電流により第2のトランスの1次巻線に誘起される電圧により流れる電流は第2のトランスの1次巻線とそれに接続されたフライホイールダイオードを還流するので、第3のトランスに影響を及ぼすことがなくなる。また、同様に、第3のトランスの2次巻線に流れる電流により第3のトランスの1次巻線に誘起される電圧により流れる電流は第3のトランスの1次巻線とそれに接続されたフライホイールダイオードを還流するので、第2のトランスに影響を及ぼすことがなくなる。従って、一方の放電部に負荷変動等が生じても、その変動が他方の放電部に印加される電圧に影響を及ぼすことがなくなり、他方の放電部から発生するイオン量が変動することを防止することができる。
上述したイオン発生素子において、第1、第2の放電部の放電電極と誘導電極に所定の電圧波形を印加するための放電電極接点と誘導電極接点は、誘電体表面であって、放電や発生したイオンを阻害しないように、放電電極と反対側の表面に配置させてもよい。その接点数は、第1、第2合わせて計4個となるが、その位置関係は最も電位差の低い第1の放電電極の接点と第2の放電電極の接点が一定距離をおいて隣り合わせになる配置となり、より信頼性が向上する。
同じく、第1の放電部と第2の放電部の基材上への配置も、最も電位差の小さい第1の放電電極と第2の放電電極が一定距離をおいて配置させる構成とすれば、より信頼性が向上する。
また、上述のイオン発生素子は、プラスイオンとしてH(HO)を発生し、マイナスイオンとしてO (HO)(m、nは自然数であり、HO分子が複数個付いていることを意味する)を発生する構成であってもよい。このように空気中にH(HO)とO (HO)を略同等量発生させることにより、両イオンを空気中の浮遊細菌等に付着させ、その際に生成される活性種の水酸基ラジカル(・OH)の作用により、前記浮遊細菌を不活化することが可能となる。
なお、上記したいずれかのイオン発生素子やイオン発生装置と、該イオン発生素子またはイオン発生装置で発生したイオンを空気中に送出する送出手段(ファンなど)とを備える電気機器とすれば、機器本来の機能に加えて、搭載したイオン発生装置で空気中のイオン量やイオンバランスを変化させ、室内環境を所望の雰囲気状態とすることが可能となる。
たとえば、上記したイオン発生素子またはイオン発生装置は、空気調和機、除湿器、加湿器、空気清浄機、冷蔵庫、ファンヒータ、電子レンジ、洗濯乾燥機、掃除機、殺菌装置などの電気機器に搭載するとよい。このような電気機器であれば、機器本来の機能に加えて、搭載したイオン発生装置で空気中のイオン量やイオンバランスを変化させ、室内環境を所望の雰囲気状態とすることが可能となる。
また、上記の実施形態では、イオンを発生する放電部を複数有して成る単一のイオン発生素子でプラスイオンとマイナスイオンを個別に発生させ、各々を独立して室内に放出する構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、複数のイオン発生素子でプラスイオンとマイナスイオンを個別に発生させ、各々を独立して室内に放出する構成としても構わない。
0a 放電電極
0b 誘導電極
1、1a、1b イオン発生素子
2 ファン
3 イオンカウンタ
10 イオン発生素子
11 誘電体
11a 上部誘電体
11b 下部誘電体
12、13 第1、第2放電部
12a、13a 放電電極
12b、13b 誘導電極
12c、13c 放電電極接点
12d、13d 誘導電極接点
12e、13e 接続端子
12f、13f 接続端子
12g、13g 接続経路
12h、13h 接続経路
12j、13j 放電部位
12k、13k 導電部位
14 コーティング層
20 電圧印加回路
201 交流電源

Claims (2)

  1. 絶縁が確保できる距離を隔てて隣接して配置されたプラスイオンを発生するプラス放電部とマイナスイオンを発生するマイナス放電部とを備えたイオン発生素子であって、
    前記プラス放電部およびマイナス放電部は針状電極であり、前記絶縁が確保できる所定間隔を8mm以上としたことを特徴とするイオン発生素子。
  2. 請求項1に記載のイオン発生素子で発生したイオンを空気中に送出する送出手段を備えてなることを特徴とする電気機器。
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