JP2014156665A - 弾性繊維用処理剤、弾性繊維の処理方法及び弾性繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】弾性繊維に優れた制電性を付与する一方で、スカムの発生及び着色を防止し、優れた捲形状のパッケージを得ることができる弾性繊維用処理剤、これを用いた弾性繊維の処理方法及びかかる処理方法によって得られる弾性繊維を提供する。
【解決手段】弾性繊維用処理剤として、鉱物油、シリコーン油及びエステル油から選ばれる一つ又は二つ以上を90〜99.99質量%及び有機リン酸エステルアルカリ金属塩を0.01〜10質量%(合計100質量%)の割合で含有し、且つ該有機リン酸エステルアルカリ金属塩が、特定の有機リン酸エステルAのアルカリ金属塩/特定の有機リン酸エステルBのアルカリ金属塩=10/90〜50/50(質量比)の割合から成るものを用いた。
【選択図】図1

Description

本発明は弾性繊維用処理剤、弾性繊維の処理方法及び弾性繊維に関し、更に詳しくは、弾性繊維に優れた制電性を付与する一方で、スカムの発生及び着色を防止し、優れた捲形状のパッケージを得ることができる弾性繊維用処理剤、これを用いた弾性繊維の処理方法及びかかる処理方法によって得られる弾性繊維に関する。
従来、弾性繊維用処理剤として、シリコーン油、鉱物油、エステル等の潤滑剤に有機リン酸エステルのアミン塩を添加したもの(例えば特許文献1参照)、またジメチルシリコーンと鉱物油と有機リン酸エステルアルカリ金属塩とから成るもの(例えば特許文献2参照)等が提案されている。
しかし、これら従来の弾性繊維用処理剤には、充分な制電性の付与、スカムの発生及び着色の防止、優れた捲形状のパッケージの作製を図る上で、いずれかの点に重大な欠点があるという問題がある。
特開2004−339669号公報 特開平04―146276号公報
本発明が解決しようとする課題は、弾性繊維に優れた制電性を付与する一方で、スカムの発生及び着色を防止し、優れた捲形状のパッケージを得ることができる弾性繊維用処理剤、これを用いた弾性繊維の処理方法及びかかる処理方法によって得られる弾性繊維を提供する処にある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、弾性繊維用処理剤としては、特定の潤滑剤と特定の有機リン酸エステルアルカリ金属塩を所定割合で含有して成るものが正しく好適であることを見出した。
すなわち本発明は、鉱物油、シリコーン油及びエステル油から選ばれる一つ又は二つ以上を90〜99.99質量%及び有機リン酸エステルアルカリ金属塩を0.01〜10質量%(合計100質量%)の割合で含有し、且つ該有機リン酸エステルアルカリ金属塩が、下記の化1で示される有機リン酸エステルAのアルカリ金属塩/下記の化2で示される有機リン酸エステルBのアルカリ金属塩=10/90〜50/50(質量比)の割合から成るものである弾性繊維用処理剤に係る。また本発明は、かかる弾性繊維用処理剤を用いる弾性繊維の処理方法及びかかる処理方法により得られる弾性繊維に係る。
Figure 2014156665
化1において、
:炭素数10〜22の直鎖又は分岐炭化水素基
X:炭素数2〜4のアルキレン基
a:1〜8の整数
b:1又は2
Figure 2014156665
化2において、
:炭素数10〜22の分岐炭化水素基
c:1又は2
まず、本発明に係る弾性繊維処理剤(以下、本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤は、鉱物油、シリコーン油及びエステル油から選ばれる一つ又は二つ以上と、特定の有機リン酸エステルアルカリ金属塩を特定の割合で含有して成るものである。
本発明の処理剤の粘度は、特に制限されないが、30℃における動粘度が2〜50mm/sであるものが好ましい。尚、本発明において動粘度は、JIS−K2283(石油製品動粘度試験方法)に記載されたキャノンフェンスケ粘度計を用いた方法で測定される値である。
本発明の処理剤に供する鉱物油の粘度は、特に制限されないが、30℃における動粘度が2〜50mm/sであるものが好ましく、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の処理剤に供するシリコーン油としては、1)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位から成るポリジメチルシロキサン類、2)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を有するジアルキルシロキサン単位とから成るポリジアルキルシロキサン類、3)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とから成るポリシロキサン類等が挙げられるが、なかでもポリジメチルシロキサンが好ましい。かかるシリコーン油は1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の処理剤に供するエステル油としては、1)ブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソペンタコサニルイソステアラート等の脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、2)1,6−ヘキサンジオールジデカノアート、トリメチロールプロパンモノオレアートモノラウラート、トリメチロールプロパントリラウラート、ひまし油等の脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、3)アジピン酸ジラウリル、アゼライン酸ジオレイル等の脂肪族1価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル等が挙げられるが、なかでもオクチルステアラートやイソトリデシルステアラート等の脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルであって総炭素数15〜40のエステル、トリメチロールプロパントリラウラート、ひまし油等の脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルであって総炭素数15〜40のエステルが好ましい。かかるエステル油は1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の処理剤に供する有機リン酸エステルアルカリ金属塩において、化1で示される有機リン酸エステルAとしては、Rがデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基、9−ヘキサデセニル基、cis−オクタデセニル基、11−オクタデセニル基、cis,cis−9,12−オクタデカジエニル基等の直鎖炭化水素基、又はイソトリデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基等の分岐炭化水素機であり、Xが1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールから水酸基を除いた残基である場合のものが挙げられる。また化2で示される有機リン酸エステルBとしては、Rがイソトリデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基等の分岐炭化水素基である場合のものが挙げられる。これらの有機リン酸エステルアルカリ金属塩は、1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の処理剤に供する有機リン酸エステルアルカリ金属塩のカウンターのアルカリ金属としては、Li、Na、K等が挙げられる。カウンターに、アルカリ金属ではなく、アミンを用いると、着色を誘発するので好ましくない。
また有機リン酸エステルアルカリ金属塩は、前記の化1で示される有機リン酸エステルAのアルカリ金属塩/前記の化2で示される有機リン酸エステルBのアルカリ金属塩=10/90〜50/50(質量比)の割合で使用する。かかる割合の範囲内で、有機リン酸エステルアルカリ金属塩は鉱物油、シリコーン油、エステル油との相溶性が良好となり、それ自体の安定性が保たれ、充分な制電性を付与することができる。
以上説明した本発明の処理剤に供する鉱物油、シリコーン油、エステル油、有機リン酸エステルアルカリ金属塩は、いずれも公知の方法によって容易に得ることができる。
本発明の処理剤には、本発明の効果を損なわれない範囲内にて、必要に応じ他の成分を併用することもできる。かかる他の成分としては、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン等の変性シリコーンオイルやシリコーンレジン、非イオン性界面活性剤や高級アルコールに代表されるつなぎ剤、イオン性界面活性剤に代表される帯電防止剤、濡れ性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、平滑剤、帯電防止剤、防腐剤等、繊維処理剤として公知の成分が挙げられる。
本発明の処理剤の調製それ自体には、公知の方法を適用できる。
次に、本発明に係る弾性繊維の処理方法(以下、本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法は、以上説明したような本発明の処理剤を、希釈することなくニートの状態で、弾性繊維の紡糸工程において、弾性繊維に付着させる方法である。付着方法としては、ローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。弾性繊維に対する処理剤の付着量は、1〜10質量%となるようにする。弾性繊維の形態は特に制限されず、フィラメント系弾性繊維、スパン系弾性繊維のいずれにも使用できる。適用できる紡糸方法としては、乾式紡糸法、溶融紡糸法、湿式紡糸法等が挙げられるが、なかでも乾式紡糸法により製造するのが好ましい。
最後に、本発明に係る弾性繊維(以下、本発明の弾性繊維という)について説明する。本発明の弾性繊維は、本発明の処理方法により得られる弾性繊維である。弾性繊維の種類、繊度に制限はなく、種類としてはポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられるが、なかでもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。
以上説明した本発明によると、弾性繊維に優れた制電性を付与する一方で、スカムの発生及び着色を抑え、優れた捲形状のパッケージを得ることができるという効果がある。
本発明の実施例で作製したポリウレタン系弾性繊維のパッケージを略示する正面図。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
試験区分1(弾性繊維用処理剤の調製)
・実施例1
表1に記載した有機リン酸エステル(P1−2)1部と、表1に記載した有機リン酸エステル(P2−6)2部を混合して均一にしたものに、表2の脚注に記載した鉱物油(A−1)47部を加えて均一になるまで混合した後、表2の脚注に記載したシリコーン油(B−1)50部を加えて均一になるまで混合し、実施例1の処理剤を調製した。
・実施例2〜4、比較例1〜7
実施例1と同様にして、表1に記載した有機リン酸エステル、表2の脚注に記載した鉱物油、エステル油、シリコーン油の順に混合し、実施例2〜4、比較例1〜7の処理剤を調製した。
試験区分2(弾性繊維用処理剤の評価)
処理剤の着色防止性、スカム発生防止性、パッケージの捲形状及び制電性を次のように評価し、結果を表3にまとめて示した。
・着色防止性の評価
厚さ1mm、1辺20mmの正方形のポリウレタンフィルムを作製し、色彩色差計(MINOLTA社製の色彩色差計CR−300)でb値を測定した後、40℃の処理剤100ml中に1週間浸漬した。その後、ポリウレタンフィルムを取り出し、良く処理剤を拭いた後、同じ部分のb値を同色差計で測定した。浸漬前後のb値の差から着色防止性を下記の基準で評価した。
○:b値の差が1未満。
×:b値の差が1以上。
・乾式紡糸法ポリウレタン系弾性繊維の製造
先ず、分子量2900のテトラメチレンエーテルグリコール、ビス−(p−イソシアネートフェニル)−メタン及びエチレンジアミンからなるポリウレタンのN、N’−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略記する)溶液(35%)を重合し、ポリマ溶液Aとした。
次に、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)との反応によって生成せしめたポリウレタン(デュポン社製の商品名メタクロール(登録商標)2462)と、p−クレゾールとジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製の商品名メタクロール(登録商標)2390)との2対1(質量比)の混合物を用い、この混合物のDMAc溶液(35%)を調製し、添加剤溶液Bとした。
前記のポリマ溶液を96部、前記の添加剤溶液を4部の割合で均一に混合し、紡糸原液とした。
こうして得られた紡糸溶液を用いて、公知のスパンデックスで用いられる乾式紡糸方法により、単糸数56本からなる560dtexのポリウレタン系弾性糸を紡糸し、巻き取り前のオイリングローラーから、試験区分1で調製した表2に記載の実施例1〜4、比較例1〜7の処理剤を、そのままニートの状態でローラー給油した。かくしてローラー給油したものを、巻き取り速度500m/分で、長さ115mmの円筒状紙管に、巻き幅104mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて巻き取り、乾式紡糸法によるポリウレタン系弾性繊維のパッケージを得た。各例の処理剤の付着量の調節は、オイリングローラーの回転数を調整することで行なった。こうして得られた乾式紡糸法によるポリウレタン系弾性繊維のパッケージを下記の測定及び評価に供した。
・捲形状の評価
図1は前記のパッケージを略示する正面図であるが、図1において、前記のパッケージの円周方向(径方向)における最長部分の高さをLとし、最短部分の高さをLとして、下記の数1により耳高の値を求め、また前記のパッケージの円筒方向(軸方向)における最長部分の幅をWとし、チーズ突出部分の幅をWとして、下記の数2によりバルジを求め、次の基準で評価した。
○:耳高が2mm未満、且つバルジが6mm未満。
×:耳高が2mm以上、又はバルジが6mm以上。
Figure 2014156665
Figure 2014156665
・スカム発生防止性の評価
前記のパッケージをミニチュア整経機に10本仕立て、25℃×65%RHの雰囲気下に糸速度100m/分で500km巻き取った。このとき、ミニチュア整経機のクシガイドでのスカムの脱落及び蓄積状態を肉眼観察し、次の基準で評価した。
○:スカムの付着が殆どなかった。
×:スカムの付着及び蓄積が多く、糸の安定走行に問題があった。
・制電性の評価
二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置し、このクロムメッキ梨地ピンに対し、前記のパッケージ(1kg巻き)から引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるようにした。このクロムメッキ梨地ピンの下部1cmの位置に静電電位測定器(春日電機社製の商品名KSD−0103)を配置し、25℃で60%RHの条件下に、50m/分の速度で送り出し、100m/分の速度で巻き取った場合の発生電気を測定して、次の基準で評価した。
○:発生電気が100ボルト未満(安定に操業できる)
×:発生電気が100ボルト以上(整経工程で糸の寄りつきが起こり、操業に問題が起きる)
Figure 2014156665




















Figure 2014156665
表2において、
A−1:30℃で10mm/sの鉱物油
A−2:30℃で18mm/sの鉱物油
B−1:ジメチルシロキサン(信越シリコーン製、KF96−10cs)
B−2:ジメチルシロキサン(信越シリコーン製、KF96−20cs)
C−1:イソトリデシルステアレート
Figure 2014156665
表1〜表3からも明らかなように、本発明によれば、弾性繊維に優れた制電性を付与する一方で、スカムの発生及び着色を防止し、優れた捲系ぞ油のパッケージを得ることができる。
パッケージの円周方向(径方向)における最長部分の高さ
パッケージの円周方向(径方向)における最短部分の高さ
パッケージの円筒方向(軸方向)における最長部分の幅
パッケージの円筒方向(軸方向)におけるチーズ突出部分の幅

Claims (3)

  1. 鉱物油、シリコーン油及びエステル油から選ばれる一つ又は二つ以上を90〜99.99質量%及び有機リン酸エステルアルカリ金属塩を0.01〜10質量%(合計100質量%)の割合で含有し、且つ該有機リン酸エステルアルカリ金属塩が、下記の化1で示される有機リン酸エステルAのアルカリ金属塩/下記の化2で示される有機リン酸エステルBのアルカリ金属塩=10/90〜50/50(質量比)の割合から成るものであることを特徴とする弾性繊維用処理剤。
    Figure 2014156665
    (化1において、
    :炭素数10〜22の直鎖又は分岐炭化水素基
    X:炭素数2〜4のアルキレン基
    a:1〜8の整数
    b:1又は2)
    Figure 2014156665
    (化2において、
    :炭素数10〜22の分岐炭化水素基
    c:1又は2)
  2. 請求項1記載の弾性繊維用処理剤を、希釈することなくニートの状態で、弾性繊維の紡糸工程において、弾性繊維に対し1〜10質量%となるよう付着させることを特徴とする弾性繊維の処理方法。
  3. 請求項2記載の弾性繊維の処理方法により得られる弾性繊維。
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